JP4975658B2 - 微小ウェル内に分配するための容器 - Google Patents
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Description
また、微生物のエネルギー代謝をATPの分解を指標にして化学発光法により検出する技術も開発されている。しかしながらこの方法は試料中に含まれる微生物以外のATPの影響を受けやすく、微生物の識別が困難である。
また、特許文献4には、多数の微小空間で培養することで培養時間の短縮を図ると同時に、最確数分析の精度を向上させる方法が記載されている。
特許文献5には液体試料を多数のアリコットに分画する方法が記載されている。これは微小ウェル内に気泡が停滞しないようにウェル底部にも開放部を設けることで液体試料が分配しやすくなっている。しかしながら、分配のためにはデバイスを傾けながら全てのアリコットの上方開放部に液体試料を接触させる操作を要するため、液体試料の接種だけで全てのウェルに自然に分配されるのに比べると操作が煩雑である。さらにデバイス形態が煩雑であるためデバイスの製造工程が複雑にならざるを得ない。
更に、本発明は、該容器に、被検水性液体試料を供給して該試料を微小ウェル内に分配し、次いで培養することを特徴とする、被検水性液体試料中の微生物の検出方法を提供するものである。
また、本発明容器は形態が単純であり製造が容易である。
例えば、一定量の試料の中に微生物がいるかどうかを検査する場合、分配容器を用いて少量ずつに分配して検査することは知られているが、本発明の容器を用いれば、ただ一定量の試料を容器上部に供給するだけという極めてシンプルな操作で速やかに分配することができ、微生物検査に適している。このように本発明の容器は、微生物検査に用いることによりその特徴が大きく生かされる。この本発明の容器の特徴は、微小ウェルの内面の親水性を高めることにより初めて可能となったものである。
図1は、本発明に係る容器の一形態を示している。
本発明の容器は特に限定されないが、光学的な検出にも用いることができる透明な容器が好ましい。また、容器の材質は、製造面で大量生産が容易な樹脂素材を用いることが好ましいが、ガラス、陶器等を用いることもできる。樹脂素材としては、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が挙げられる。図1では容器の上面図は正方形となっているが、この形に限定されるわけではなく、三角形、長方形、台形、平行四辺形、その他の四角形、5個以上の頂点をもつ多角形であってもよく、また、円形、楕円形、半月形などの辺の一部または全部が曲線である形状であってもよい。容器はその内部に複数の微小ウェルを有している。上面図において微小ウェルの形状が正方形となっているが、この形に限定されるわけではなく、三角形、長方形、台形、平行四辺形、その他の四角形、5個以上の頂点をもつ多角形であってもよく、また、円形、楕円形、半月形などの辺の一部または全部が曲線である形状でもよい。特に水性液体試料を自然分配する場合は、ウェルとウェルの間隔が狭く、ウェルが密接して並んでいるものが好ましく、さらに微小ウェルの形状が四角形であるものが望ましい。すなわち、ウェルとウェルの間隔が広くなると、ウェル上面に供給した液体試料がウェルに分配された後に、ウェルとウェル隔壁の上部にわずかでも試料が残る可能性が高くなるので、隔壁は製造可能な範囲で狭くなるように設計するのが好ましい。また、微小ウェル壁面は容器底面に対して垂直である必要もない。さらに微小ウェル底面は平坦であっても丸みを帯びていてもよいし段差が存在してもよく、ウェル上部は水性液体試料が流入できるように開放されている(微小ウェル上部開放部)。特に水性液体試料を自然分配する場合は、容器に配置された微小ウェルの上部開放部に、水性液体試料が微小ウェルに分配される前に該試料を一次的に保持するための壁を設けたものが好ましい。ここで、微小ウェル上部開放部とは、水性液体試料を流入させるために開放されている部分であって、微小ウェルを区切っている微小ウェル壁面の最頂部から、容器底面と平行に水平方向に広がる平面部分をいう。
また、容器内に存在する微小ウェルの数に制限はない。容器の大きさが一定の場合には、微小ウェルの断面積が小さくなれば、その分微小ウェルの数を増やすことができる。微小ウェルの数を多くすることで、より広範囲の定量が可能になる。容器内に存在する微小ウェルの数は複数であるが、微生物培養用容器として10個以上が好ましく、特に100〜1000個が広範囲の定量が可能となり望ましい。
また、親水処理は、微小ウェル内表面のみに限らず、容器内表面全体、または容器全体について行ってもよい。
界面活性剤は本発明の目的を達成するのに必要な種類、濃度を適宜選択することができる。一般に、界面活性剤の濃度が高い方が微小ウェル内に水性液体試料が入りやすくなる。
界面活性剤としては非イオン性の界面活性剤、イオン性の界面活性剤が挙げられるが、一般に非イオン性の界面活性剤の方が微生物に対する毒性が少ないので好ましい。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。市販品としては、Tween20、Tween80、TritonX-100等が挙げられる。イオン性の界面活性剤としてはデオキシコール酸等が挙げられるが、微生物の増殖に影響を与えないものであれば用いることができる。
さらに、微小ウェルの親水性と水性液体試料中の界面活性剤の濃度を調節しすることで各微小ウェルに容易に水性液体試料を分配することが可能になる。
界面活性剤の濃度は、水性液体試料や、微小ウェルの親水性によって適宜調整すればよいが、例えば、Tween20の場合、0.001〜1%が好ましい。
図2容器には、容器に配置された微小ウェルの上部開放部に、水性液体試料が微小ウェルに分配される前に該試料を一次的に保持するための壁が設けられている。
図2−Aは微小ウェル内を酸素プラズマ処理しておらず、水性液体試料に界面活性剤を添加していない場合を示している。水性液体試料は微小ウェル上部開放部の上に広がった状態で維持され、微小ウェル内に水性液体試料が流入してくることはない。
図2−Bは微小ウェル内を酸素プラズマ処理した場合で、水性液体試料を導入したときを示している。図2−Bは全ての微小ウェルの上部開放部の上全体に水性液体試料が広がるのに必要な量の水性液体試料を導入した場合を示しており、この場合、微小ウェル上部開放部の上に広がってから微小ウェル内に流入し始めるので、微小ウェル間で均一な分配が可能になる。
ここで、全ての微小ウェルの上部開放部の上全体に水性液体試料が広がるために必要な水性液体試料の量が、全ての微小ウェルの容積を合計した量よりも多い場合には、全ての微小ウェルに水性液体試料を分配しても、過剰な水性液体試料が微小ウェル上に残存してしまうために、微小ウェル内の溶液を他の微小ウェルの溶液から独立させることができない(図3)。従って、容器横断面全体に水性液体試料が広がるために必要な水性液体試料の量は、全ての微小ウェルの容積を合計した容積と同じか、少なくなるようにすることが望ましい。
更に、微生物がトラップされた固形物にも本発明の方法は適用できる。本発明の容器において、液体培地を分配した微小ウェルの上部開放部に接するように微生物がトラップされたメンブレンを入れることで適用することもできる。
微小ウェル内溶液は、微生物の存在で種々の指示薬により検出され得る。指示薬として酸化還元指示薬や、ガスセンサー等が挙げられる。酸化還元指示薬としては、例えば微生物の代謝活性により還元されて蛍光を発するレサズリンや、同様に還元されて発色するWST等が挙げられる。これらの指示薬は水性液体試料に予め添加しておいてもよいし、微小ウェル内に予め設置しておくこともできる。
指示薬の検出は既存の吸光検出器や蛍光検出器等の光学検出器で検出することも可能であるし、指示薬および微小ウェルの形状に適した専用の検出器を適用することでも検出し得る。
(1)微小ウェルを有するポリスチレン製の容器を射出成型で作製した(図4)。この容器は内に1.2mm四方の断面と10mmの高さを有する正四角柱構造の微小ウェルを49個有している。
ポリスチレン製の384穴プレート、1536穴プレート、(1)の容器のそれぞれに、親水性ポリマーコート、酸素プラズマ処理の表面処理を施した。酸素プラズマ処理方法は、酸素プラズマ処理装置(ヤマト科学株式会社、PR301)のチャンバーに、処理を施す容器を入れ、チャンバー内を真空にして、酸素を18〜24cc導入した。高周波出力を60〜80Wとして、1分間酸素プラズマ処理を施した。親水性ポリマーコートは、住友ベークライト社 S−BIO(登録商標)Prime Surface(登録商標)を用いた。
それぞれの表面処理による、ポリスチレン表面の水との接触角を測定した結果を表1に示す。
分配する培地は、酵母エキス2.5g/L、ペプトン5.0g/L、ブドウ糖1.0g/L、TES0.1M、リン酸緩衝液0.01M、レサズリン0.01mg/mLとして調製をした。また、界面活性剤を含有させた培地は、Tween20を最終濃度が0.05%となるように添加した。
実施例1に記載した容器を用い、界面活性剤を含有しない培地と含有している培地を、ウェルの上部開放部に滴下して、ウェル内部に分配することが可能であるかを確認した結果を表2に示す。
実施例1(1)の容器に、酸素プラズマ処理装置(ヤマト科学株式会社、PR301)を用いて、高周波出力20wとして30秒間酸素プラズマ処理を施した(弱めの処理)。樹脂の水に対する接触角が経時的に変化することを利用して、水に対して異なる接触角を有する容器を作製した。接触角の測定は、接触角計(Model G-1-1000、エルマ販売株式会社)を使用して、θ/2法により3重測定を実施して、その平均値を算出した。
次に、得られた異なる接触角を有する容器への分配性について評価した。分配する培地として酵母エキス2.5g/L、ペプトン5.0g/L、ブドウ糖1.0g/L、TES0.1M、リン酸緩衝液0.01M、レサズリン0.01mg/mL、Tween20を最終濃度0.05%となるように調製したものを用いた。
接触角と分配性の結果を表3に示す。接触角が53.0°以下の表面状態では、溶液の各ウェルへの分配が行うことができることを確認した。
実施例1(1)の容器を用いて、水性液体試料の分配性を評価した。
容器は未処理と酸素プラズマ処理のものを用意した。
界面活性剤の添加はTween20を最終濃度0.05%になるようにして水性液体試料に添加した。
水性液体試料の分配性に対する容器の酸素プラズマ処理、および試料への界面活性剤の添加の効果を調べた結果を表4に示す。
また、各微小ウェルへの水性液体試料の分配の均一性については、分配が可能であった全ての条件で均一な分配が可能であった。これは水性液体試料を容器に導入しても、水性液体試料がすぐに微小ウェル内に入り込むのではなく、全ての水性液体試料が微小ウェルの上方開放部上の容器横断面全体に広がった後、微小ウェル内への水性液体試料の移動が始まるためである。
酸素プラズマ処理を行った直後の容器を用いると、容器内に導入された水性液体試料は即座に微小ウェル内に入り込んでしまうために、全ての水性液体試料が微小ウェルの上方開放部上の容器横断面全体に広がるための猶予時間がなく、微小ウェル間で均一な分配を行うのは困難であった。しかし、本実施例で示すように、酸素プラズマ処理後一定期間放置すると親水性がある程度低下した状態で安定し、均一な分配を実現するのに適した条件となることが確認できた。
分配する培地は、4.0g/Lポテトエキス、20.0g/Lブドウ糖、0.1M TES(pH6.2)、0.05%Tween20、レサズリン0.01mg/mLとして調製をした。
培地と胞子液(A.nigerATCC16404)を混合して、その溶液を実施例1(1)の容器の上部開放部へ導入し、各ウェルへ分配させた後、蛍光プレートリーダーを使用して蛍光強度を経時的に測定した。また、96穴プレートを用いて300μLの上記培地中で同様に試験を行い比較例とした。測定結果を図5に示す。図5の結果から10000RFUに達する時間を検出時間とし、その結果を表5に示す。
分配する培地は、2.5g/L酵母エキス、5.0g/Lペプトン、1.0g/Lブドウ糖、0.05%Tween20、レサズリン0.01mg/mLとして調製をした。
培地と大腸菌(Eshcherichia coli ATCC8739)を混合して、その溶液を実施例1(1)の容器の上部開放部へ導入し、各ウェルへ分配させた後、蛍光プレートリーダーを使用して蛍光強度を経時的に測定した。また、96穴プレートを用いて300μLの上記培地中で同様に試験を行い比較例とした。測定結果を図6に示す。図6の結果から10000RFUに達する時間を検出時間とし、その結果を表6に示す。
実施例2と同様の培地をウェルの上部開放部に滴下して、各ウェルに分配させた。胞子液(A.nigerATCC16404)をろ過して、メンブレンフィルター上に胞子を回収した。そのメンブレンフィルターを培地で満たされたウェル上に乗せて、蛍光プレートリーダーを使用して蛍光強度を経時的に測定した(MF使用)。また、実施例4と同様に胞子液を同培地に混合したものの試験を行い比較例(MF未使用)とした。測定結果を図7に示す。図7の結果から15000RFUに達する時間を検出時間とし、その結果を表7に示す。
Claims (13)
- 断面積10mm2以下の微小ウェルを複数個と、当該微小ウェルの上部開放部に、当該微小ウェルに分配される前の水性液体試料を一次的に保持するための壁とを有し、当該微小ウェルの内表面の水との接触角が60°以下となるように当該内表面に親水処理が施されていることを特徴とする、水性液体試料を微小ウェル内に分配するための容器。
- 接触角が53°以下である請求項1記載の容器。
- 内表面が酸素プラズマ処理されたものである請求項1又は2記載の容器。
- 分配手段が、自然分配である請求項1〜3の何れか1項記載の容器。
- 微生物培養用容器である請求項1〜4の何れか1項記載の容器。
- 容器の材質が樹脂である請求項1〜5の何れか1項記載の容器。
- 容器の材質がポリスチレン又はポリシクロオレフィンである1〜6の何れか1項記載の容器。
- 請求項1〜7の何れか1項記載の容器に、水性液体試料を供給することを特徴とする、水性液体試料を微小ウェル内に分配する方法。
- 水性液体試料が、界面活性剤を含有するものである請求項8記載の方法。
- 界面活性剤が非イオン性の界面活性剤である請求項9記載の方法。
- 請求項1〜7の何れか1記載の容器に、被検水性液体試料を供給して該試料を微小ウェル内に分配し、次いで培養することを特徴とする、被検水性液体試料中の微生物の検出方法。
- 微小ウェルの上部開放部の上全体に水性液体試料が広がるように水性液体試料を供給することを特徴とする請求項8記載の方法。
- 微小ウェルの上部開放部の上全体に水性液体試料が広がるように水性液体試料を供給することを特徴とする請求項11記載の方法。
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