JP4974014B2 - 繊維製自動車足元マット - Google Patents

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Description

本発明は、繊維床材の敷き込まれた自動車の床面に置敷して使用される繊維製自動車足元マットに関するものである。
繊維製自動車足元マットには、タフテッドカーペット、ウイルトンカーペットおよびニードルパンチフエルトカーペットが主として使用されている。これらのカーペットの裏面には、車内に持ち込まれた雨傘から滴る水や濡れた飲料水等が滲み出ないようにするために、厚い裏材が裏打ちされている。その裏材には、ゴムその他の樹脂シートや不織布が主として使用されている。
これらの裏材の裏面には、繊維床材の表面に足元マットが確り係止するように、突起がスパイク状に設けられている。その突起は、樹脂シート裏材ではエンボスロールによって成形され(例えば、特許文献1参照)、不織布裏材では毛羽先を加熱した溶融塊として(例えば、特許文献2参照)或いは植設したパイルの先端を加熱溶融させて形成されている(例えば、特許文献3参照)。
雄型面ファスナーは、足元マットのズレ移動防止のため裏材とし使用されている(例えば、特許文献4参照)。
パイルの先端を加熱溶融させず、従って、パイルの先端を加熱して雄型面ファスナーとすることなく、単繊維繊度110dtex〜1100dtexの合成樹脂モノフィラメントをパイル糸としてカットパイルを形成したパイル経編地を足元マットの裏材に使用することは公知である(例えば、特許文献5参照)。
実開昭58−183180号公報 実開昭58−80080号公報 特開平6−141964号公報 特開昭59−69006号公報 特開2007−222516号公報
自動車産業界においては、燃費節減のために自動車の軽量化が呼ばれている。
しかし、従来裏材に使用されている樹脂シートや不織布は重く、自動車の軽量化には不向きである。
従来、裏材に突設されているズレ移動防止のための繊維毛羽やパイルの先端の溶融塊は、キノコ形を成す雄型面ファスナーのフックの先端部分と同様に、溶融していない繊維軸と溶融塊との境目に急激に脹らんだ鈎状段差を有し、雄型面ファスナーと同様に繊維床材の表面に強く係合する。
しかし、そのように強く係合するが故に、清掃のために足元マットを繊維床材から引き剥がすとき、繊維床材の表面繊維が引っ掻き出されて繊維床材の表面にピリングが発生し、又、足元マットの突起自体も、それが不織布から突き出た繊維毛羽であれば不織布本体から引っ張り出され(例えば、特許文献2参照)、それが不織布に植設されたパイルであれば不織布本体から抜き取られ(例えば、特許文献3参照)、或いは、突起先端の溶融塊が引き千切られ、繊維床材と裏材の双方にダメージを与える。
そして、足元マットの取扱い過程で、着用しているニット製品に足元マットの裏面が触れると、その溶融塊によって着用しているニット製品の編目が引っ掻き出されてダメージを受ける。
更に、溶融塊の係合力が強いが故に、繊維床材から引き出された繊維その他の繊維屑が裏材裏面に蓄積層を形成し、その繊維屑蓄積層の中に溶融塊が埋没してしまい、繊維床材に有効に係合し得なくなる。
加えて、溶融塊を有する裏材では、その溶融塊を形成しているパイル繊維の長さが、そのパイル繊維の太さに比して著しく長く、その長さが2mm以上になっているので、そのパイル繊維が押し倒されて溶融塊が、不織布本体へと押し込まれてしまい、溶融塊が繊維床材に有効に係合し得なくなる。
単繊維繊度110dtex〜1100dtexの合成樹脂モノフィラメントをパイル糸としてカットパイルを形成したパイル経編地を、そのカットパイルの先端を加熱溶融させずにそのまま裏材に使用した足元マット(例えば、特許文献5参照)では、その裏材のカットパイルのパイル長が長く、足元マットの裏材として使用以前のパイル経編地の巻き上げや積み重ね等の取扱過程において、カットパイルが押し倒されて直立せず、足元マットの使用時には自動車に敷き込まれている繊維床材に裏材のカットパイルが衝き刺さらず、その裏材によるズレ移動防止効果は期待されない。
そこで本発明は、短い突起が細かく突出していて裏面が強く均等にざらついており、その短く細かく均等に突出した強い突起が繊維床材表面に引っ掛かってズレ移動し難く、軽量化された足元マットを提供することを第1の目的とする。
本発明の第2の目的は、足元マット裏面の突起を短く細かく均等に突出させることによって変形し難く押し倒され難くすることにある。
本発明の第3の目的は、足元マット裏面の突起を極短くすることによって突起間に繊維屑が蓄積し難くすることにある。
本発明の第4の目的は、足元マット裏面の突起を引き抜きし難くすることにある。
本発明の第5の目的は、足元マット裏面の突起を極短くすることによって繊維床材に置敷しても容易に剥離し得るようにすることにある。
本発明に係る足元マットは、カーペット地11の裏側にパイル12を外向きにしてパイル経編地13を接着材を介して貼り合わせて構成され、そのパイル12が単繊維繊度50dtex〜1000dtexの熱可塑性合成繊維パイル糸条で構成されるカットパイルであり、そのパイル糸条14がパイル経編地13のベース経編地を構成する地糸15と一体になったニードルループ16を形成しており、そのパイル12のベース経編地から突出した長さhが2mm未満であり、パイル糸条の端末として形成されるカットパイル片18の先端が、その熱可塑性合成繊維の融点以下の温度で加熱されて熱収縮し、パイル糸条のニードルループ16を形成している部分20よりも太くなった膨脹部21を形成しており、その膨脹部21からニードルループ16に続くパイル片18の根元部分22において、パイル片18の太さが急激に変化した段差をつくることなくなだらかに変化していることを第1の特徴とする。
本発明に係る足元マットの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、パイル糸条14がパイル経編地13の複数コース17a・17b・17cにわたって連続する複数個のニードルループ16a・16b・16cを形成しており、その複数コースにわたって連続する複数個のニードルループ16a・16b・16cを形成しているパイル糸条14の両端が、地糸15の形成する異なるニードルループ19a・19cから突出したパイル片18a・18cを形成しており、その両端の構成する2つのパイル片18aとパイル片18cの間が離れている点にある。
本発明に係る足元マットの第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、パイル経編地13の目付けが300g/m2 以下であり、パイル経編地13とカーペット地11の間に介在する接着材による接着層23の目付けが400g/m2 以下である点にある。
本発明に係る足元マットの第4の特徴は、上記第1と第2と第3の何れかの特徴に加えて、接着層23が、不織布と、その不織布の表裏に塗着している接着剤とによって構成されており、不織布の表裏に塗着している接着剤が、それぞれカーペット地11とパイル経編地13に塗着している点にある。
本発明に係る足元マットの第5の特徴は、上記第4の特徴に加えて、接着層23に介在する不織布の目付けが40g/m2 以下である点にある。
本発明に係る足元マットの第6の特徴は、上記第1と第2と第3と第4と第5の何れかの特徴に加えて、パイル糸条14がモノフィラメント糸であり、パイル経編地13の目付けが150g/m2 以下であり、接着層23の目付けが200g/m2 以下である点にある。
本発明(請求項1)の足元マットでは、パイル12が単繊維繊度50dtex〜1000dtexの熱可塑性合成繊維で構成されるカットパイルであり、そのパイル糸条14がベース経編地の地糸15と一体になったニードルループ16を形成しており、そのパイル片の長さhが2mm未満であり、太い膨脹部21を形成していることから、パイル片18が押し倒され難く、又、パイル経編地13の中へと押し込まれて埋没することがない。
従って、パイル片18の長さhが2mm未満であっても、足元マットの裏面が均等にざらついており、足元マットを繊維床材の上に置敷使用するとき、パイル片18が繊維床材表面に引っ掛かり、繊維床材の上でのズレ移動が回避される。
そして、パイル糸条14がパイル経編地13のベース経編地を構成する地糸15と一体になったニードルループ16を形成しているので、パイル糸条14が単繊維繊度50dtex以上で表面が滑り易い糸条であり、その形成するパイル片18の長さが2mm未満であることから引っ張り出し難く、そのパイル12が足元マット裏面から抜け出ることはない。
加えて、パイル糸条の端末として形成されるカットパイル片18の先端は、その熱可塑性合成繊維の融点以下の温度で加熱されて熱収縮し、パイル糸条のニードルループ16を形成している部分20よりも太くなった膨脹部21を形成しており、その膨脹部21からニードルループ16に続くパイル片18の根元部分22において、パイル片18の太さが急激に変化した段差をつくることなくなだらかに変化している。
そのため、その膨脹部21がキノコ形雄型面ファスナーのフックのように繊維床材の表面繊維に絡み付くことがない。
従って、置敷した足元マットを取り外そうとする場合には繊維床材から剥離し易く、その際、パイル片18の膨脹部21が繊維床材の表面繊維に絡まって繊維床材表面が毛羽立ったり、繊維床材表面にピリングが生じることもなくなる。
又、膨脹部21がキノコ形雄型面ファスナーのフックのように繊維に絡み付く強い係合力を有さず、パイル片の長さhが2mm未満で極短いことから足元マットの裏面に繊維屑に絡み付いて繊維屑蓄積層が形成されることはなく、又、パイル片の長さhが2mm未満で極短いことから膨脹部21が繊維屑蓄積層に埋没して足元マットの裏面のざらつきがなくなることはなく、そのざらつきによるズレ移動防止機能が損なわれるようなことは起こらず、そのズレ移動防止機能が長期にわたって維持される。
本発明(請求項2)の足元マットでは、複数コースにわたって連続する複数個のニードルループ16a・16b・16cを形成しているパイル糸条14の両端が、地糸15の形成する異なるニードルループ19a・19cから突出したパイル片18a・18cを形成しており、その両端の2つのパイル片18aとパイル片18cの間が離れているので、繊維床材に置敷するとき、繊維床材に向けて作用する足元マットの重量が個々のパイル片18a・18cに集中し、パイル片が繊維床材表面に衝き刺さり易くなる。
加えて、パイル片は、パイル長hが2mm未満であり、押圧荷重が作用しても座屈し難いことからしても、繊維床材表面に引っ掛かり易く、パイル片18が繊維床材表面に引っ掛かって係止され、その結果、足元マットが繊維床材表面でズレ移動し難くなる。
本発明(請求項3)によると、パイル経編地13の目付けが200g/m2 以下であり、接着層23の目付けが400g/m2 以下であるので、足元マットが大きく軽量化される。
本発明(請求項4)によると、パイル経編地13とカーペット地11の間の接着層23が、不織布と、その不織布の表裏に塗着している接着剤とによって構成されており、その接着剤の皮膜によって不織布の繊維間隙間が塞がれ、不織布と接着剤が一体になったフイルムを構成することになるので、足元マットの表面に濡れた水が裏面に滲み出し難く、樹脂シートを裏面に貼り合わせた従来品と同様に、車内に持ち込まれた雨傘から滴る水や濡れた飲料水等が滲み出し難い軽量化された遮水性足元マットが得られる。
本発明(請求項5)によると、接着層23に介在する不織布が目付け40g/m2 以下の極薄手のものであっても、それが接着剤と一体になったフイルムを形成する。
そして、不織布が極薄手であれば、接着剤の塗着量が僅かであっても不織布全体に滲み込みわたって遮水機能を発揮し、又、不織布が極薄手で接着剤の塗着量が僅かであれば、接着層23によって足元マットの可撓性が損なわれず、繊維床材の起伏に馴染み易く、繊維床材の起伏に合わせて置敷使用し易い軽量化された遮水性足元マットが得られる。
本発明(請求項6)において、パイル糸条14がモノフィラメント糸であれば、パイル片18の膨脹部21と根元部分22の間で太さをなだらかに変化させ易くなる。
そして、パイル経編地13の目付けを100g/m2 以下にし、接着層23の目付けを200g/m2 以下にすることによって、足元マットを可撓で繊維床材の起伏に馴染み易くし、大きく軽量化することが出来る。
本発明に係る繊維製自動車足元マットの裏面の一部切截斜視図である。 本発明に係る繊維製自動車足元マットのパイル経編地の拡大斜視図である。 本発明に係る繊維製自動車足元マットの裏面のパイル片の拡大図である。 本発明に係る繊維製自動車足元マットのパイル片の係合力測定装置の要部正面図である。
カーペット地11には、タフテッドパイル布帛、ウイルトンパイル布帛、ニードルパンチフエルトその他の不織布、織物、編物等の布帛を使用することが出来る。
カーペット地11の裏面には、ラテックス樹脂エマルジョンを塗布して目止めを行い、パイル24と基布25や糸条間を接着固定しておくとよい。
接着層23に不織布を介在させる場合、その不織布は、目止めのために塗布したラテックス樹脂エマルジョンの塗布面に重ね合わせて接着することが出来、そのラテックス樹脂エマルジョンが滲み込んで不織布がフイルム状になり遮水性を帯びる。
パイル経編地13は、そのようにカーペット地11に貼り合わせた不織布の上に接着剤を塗布して貼り合わせるとよい。
そうすると、接着剤がパイル経編地13を透過して滲み出さず、従って、パイル経編地13が目付け50g/m2 前後のポーラスな極薄布帛であっても綺麗に貼り合わせることが出来る。
そして、そのパイル経編地13を貼り合わせるために塗布した接着剤の皮膜によって、接着層23の蔽水性が高まる。
カーペット地11に貼り合わされた不織布は、その貼り合わせのために塗布されるラテックス樹脂エマルジョンによって遮水性が付与されているので、次にパイル経編地13を貼り合わせるために塗布する接着剤が不織布に滲み込み難くなり、その接着剤の塗布量を少なくすることが出来、又、そのように塗布量を少なくすると、接着剤がパイル経編地の外面に滲み出し難くなる。
パイル経編地13は、ダブルラッシェル経編機によって表裏2枚同時に編成される。
パイル糸条14は、その編成過程において、表裏2枚のパイル経編地のベース経編地を連結する連結糸として編み込まれる。
その表裏のベース経編地の間でパイル糸条(連結糸)が移動する間のコースの数を複数コースとすることによって、そのコース数に応じて複数コース17a・17b・17cにわたって連続する複数個のニードルループ16a・16b・16cを形成することが出来る。表裏のベース経編地の間で移動するパイル糸条(連結糸)を2本1番(つがい)とせず1本とする場合、その1本のパイル糸条が表裏何れか一方でニードルループを形成するときは、他方のベース経編地にはニードルループを形成することがない。
そのため、表裏双方のパイル経編地には、パイル糸条によるニードルループ16のあるコース17とパイル片の形成されない無パイルコース26が飛び飛びに形成される。
その結果、パイル片18が飛び飛びに形成され、パイル片18が繊維床材の表面繊維に押し込まれ易くなり、又、パイル片18aとパイル片18cの間に繊維屑等が絡まり付き難くなる。パイル片18の分布密度は、4〜100本/cm2 に、好ましくは25〜60本/cm2 にする。
パイル片18の先端にニードルループ部分20よりも太くなった膨脹部21を形成するには、パイル糸条14と地糸15の融点を変え、例えば、パイル糸条14にナイロンを用いるときは、地糸15にはナイロンよりも高融点のポリエステル繊維を使用し、パイル経編地13のパイル面をパイル糸条14の軟化点以上で融点以下の温度で加熱する。
即ち、パイル片18の先端が熱収縮しつつ溶融し、雄型面ファスナーのフックの先端部分のようにキノコ形溶融塊を形成せず、図3に図示するように膨脹部21と根元部分22の境目の根元部分側で窪み、曲率中心が膨脹部21の外部側から内部側に入れ代わって膨出し、境目の根元部分側の窪んだ凹部31から、曲率中心の入れ代わる変曲点32を通って膨出した凸部33へとS字形断面を形成して続き、円柱形を成す膨脹部21の柱面34へと続き、頂部35が球面形状を成すように、パイル片18の先端が溶融することなく軟化して熱収縮し、概して膨脹部21の太さaが根元部分22の太さbの1.2倍〜3倍となり、膨脹部21の長さcが膨脹部21の太さaよりも長く概して膨脹部21の太さaの1.2倍〜3倍となり、概して楕円形断面形状の膨脹部21が生成されるようにする。
そのようにパイル片18の太さが急激に変化した段差をつくることなくなだらかに変化して膨脹部21が根元部分22からなだらかに続くパイル経編地13のパイル面は、フック先端がキノコ形を成す雄型面ファスナーと異なり、JIS−L−3416(2000;7.4.2)に規定される雌型面ファスナーとの剥離強さは0.2N/cm程度で殆ど測定されず、繊維床材の表面繊維に絡まり付くことはない。
因みに、市販の雄型面ファスナーのJIS−L−3416(2000;7.4.2)に規定される雌型面ファスナーとの剥離強さを測定してみたところ1.4N/cm前後であった。
繊維床材の上での足元マットのズレ移動防止のためには、地糸15のニードルループやシンカーループによって構成されるパイル経編地13のベース編地の表面に膨脹部21が僅かに露顕する程度であってもよい。
具体的に言えば、根元部分22から膨脹部21までのパイル片18のパイル長hを0.3mm以上で概して0.8mm前後(0.5〜1.1mm)にするとよく、そのようにパイル長hを極短くすると、パイル片18が押し倒されず、ズレ移動防止機能が長期にわたって維持される。
本発明において、パイル糸条の単繊維繊度を50dtex〜1000dtexとするのは、単繊維繊度が50dtex未満であれば、パイル片18の先端が繊維床材表面に引っ掛かり難く、又、加熱して出来る膨脹部21が細かくベース編地の内部に入り込んで足元マットのズレ移動防止に有効には機能せず、一方、パイル糸条の単繊維繊度が500dtexを超えるときは、カットパイル片の長さが2mm未満のパイル経編地13の編成が困難になる。
これらの点を考慮し、パイル糸条の単繊維繊度を150dtex〜300dtexに、概して200dtex前後(170dtex〜230dtex)にすることが望ましい。
[実施例]
22ゲージ6枚筬ダブルラッシェル経編機において、繊度84dtex/24fのポリエステルマルチフィラメント糸を地糸と挿入糸に使用し、繊度175dtexのナイロンモノフィラメント糸をパイル糸に使用して編成されたダブルラッシェル経編地をセンターカットしたパイル長3mm、ウェール間隔24/25.4mm、コース間隔40/25.4mm、パイル片分布密度38本/cm2 のパイル経編地原反のパイル面を加熱し、パイル片の先端を熱収縮させて膨脹部を形成し、パイル片のベース経編地からの突出長さ(h)が0.3mmのパイル経編地を、ホットメルトパウダー接着剤(熱融着性樹脂粉末)を散布積層して加熱溶融させたタフテッドカーペットの裏面に貼り合わせ、繊維製自動車足元マットを得た。
[面接合強度比較試験]
実施例で得られた繊維製自動車足元マットを裁断して縦横寸法60mm×50mmの試験片36を採取し、縦横寸法60mm×60mmの鋼板37にパイル経編地のパイル面を表向きにして両面粘着材を介して貼り合わせ、引張試験機の下部クランプ38に鋼板37を載せて固定した。
試験片36と同様に、雌型面ファスナーを裁断して縦横寸法60mm×50mmの試験片39を採取し、縦横寸法60mm×60mmの鋼板40に雌型面ファスナーの雌型フック面を表向きにして両面粘着材を介して貼り合わせ、試験片39の雌型フック面を下向きにして引張試験機の上部クランプに紐を介して鋼板40を吊り降ろした。
引張試験機において、足元マットの試験片36のパイル面と雌型面ファスナーの試験片39の雌型フック面を重ね合わせて圧着し、上部クランプを300mm/minの速度で上昇させ、重ね合わせた足元マットの試験片36のパイル面と雌型面ファスナーの試験片39の雌型フック面との剥離時の面接合強度を測定したところ、その面接合強度は1.27Nであった。
次に、繊維製自動車足元マットの試験片36と同様に、雌型面ファスナーを裁断して縦横寸法60mm×50mmの試験片(39)を採取し、縦横寸法60mm×60mmの鋼板(37)に雄型面ファスナーの雄型フック面を表向きにして両面粘着材を介して貼り合わせ、引張試験機の下部クランプ(38)に鋼板(37)を載せて固定し、雌型面ファスナーの試験片39の雌型フック面を重ね合わせて圧着し、上部クランプを300mm/minの速度で上昇させ、重ね合わせた雌型面ファスナーの試験片(36)のパイル面と雌型面ファスナーの試験片39の雌型フック面との剥離時の面接合強度を測定したところ、その面接合強度は88.0Nであった。
[ズレ移動抵抗比較試験]
実施例で得られた繊維製自動車足元マットを裁断して縦横寸法290mm×210mmの試験片を採取し、タフテッドカーペットのパイル面を上向きにしてニードルパンチフエルトカーペットの上に載置し、その試験片の中央部に質量が8kgであり底面縦横寸法が200mm×100mmの金属板を載置し、試験片を寸法290mmの長さ方向に、試験片に接合したケブラー紐を介して水平に引っ張って200mm移動させ、その移動過程における最大引張荷重を測定したところ371.2Nであった。
実施例で得られた繊維製自動車足元マットの試験片と同様に、表面に突出高さ4mm、突出根元太さ(直径)3mmの円錐形突起を1.2本/cm2 の突設密度をもって等間隔に縦横に突設したスチレンブタジエンラバー製裏材をタフテッドカーペットの裏面に貼り合わせた繊維製自動車足元マットを裁断して縦横寸法290mm×210mmの試験片を採取し、タフテッドカーペットのパイル面を上向きにしてニードルパンチフエルトカーペットの上に載置し、その試験片の中央部に質量が8kgであり底面縦横寸法が200mm×100mmの金属板を載置し、試験片を寸法290mmの長さ方向に、試験片に接合したケブラー紐を介して水平に引っ張って200mm移動させ、その移動過程における最大引張荷重を測定したところ129.9Nであった。
実施例で得られた繊維製自動車足元マットの試験片と同様に、火炎をあてて毛羽焼きを施し、その毛羽の溶融塊を生成したニードルパンチフエルトを裏材としてタフテッドカーペットの裏面に貼り合わせた繊維製自動車足元マットを裁断して縦横寸法290mm×210mmの試験片を採取し、タフテッドカーペットのパイル面を上向きにしてニードルパンチフエルトカーペットの上に載置し、その試験片の中央部に質量が8kgであり底面縦横寸法が200mm×100mmの金属板を載置し、試験片を寸法290mmの長さ方向に、試験片に接合したケブラー紐を介して水平に引っ張って200mm移動させ、その移動過程における最大引張荷重を測定したところ160.5Nであった。
上記面接合強度比較試験とズレ移動抵抗比較試験の結果を示すように、本発明の繊維製自動車足元マットの裏面のパイル経編地13は、一見して雄型面ファスナーの観を呈しているが、雌型面ファスナーとの係合力は皆無に等しく、繊維床材表面に置敷き使用後に容易に繊維床材から引き離すことが出来、そのベース経編地から突出しているパイル片10の長さ(h)が2mm未満で極短くても、そのパイル片10が極短いがために座屈したり傾倒(倒れ)することがないためと思われるところ、在来の円錐形突起を有するスチレンブタジエンラバー製裏材や毛羽焼きニードルパンチフエルト製裏材を裏打ちした繊維製自動車足元マットに比して優れたズレ移動抵抗を示し、パイル片10が繊維床材表面に毛羽やピリングを発生させず、肌身に触れても痛みを感じさせず、スチレンブタジエンラバー製裏材や毛羽焼きニードルパンチフエルト製裏材を裏打ちした従来品に比して軽量化された繊維製自動車足元マットが得られる。
本発明の繊維製自動車足元マットは、繊維床材表面に置敷き使用されるアクセントラグ、水周りマット、バスマット、トイレマット、出入り口マット、ダストコントロールマット等として利用することが可能である。
11:カーペット地
12:パイル
13:パイル経編地
14:パイル糸条
15:地糸
16:ニードルループ
17:コース
18:パイル片
19:地糸のニードルループ
20:パイル糸のニードルループ部分
21:膨脹部
22:パイル片の根元部分
23:接着層
24:パイル
25:基布
26:無パイルコース
27:挿入糸
31:凹部
32:変曲点
33:凸部
34:柱面
35:頂部
36:試験片
37:鋼板
38:クランプ
39:試験片
40:鋼板

Claims (6)

  1. (イ) カーペット地(11)の裏側にパイル(12)を外向きにしてパイル経編地(13)を接着材を介して貼り合わせて構成され、
    (ロ) そのパイル(12)が単繊維繊度50dtex〜1000dtexの熱可塑性合成繊維パイル糸条で構成されるカットパイルであり、
    (ハ) そのパイル糸条(14)がパイル経編地(13)のベース経編地を構成する地糸(15)と一体になったニードルループ(16)を形成しており、
    (ニ) そのパイル(12)のベース経編地から突出した長さ(h)が2mm未満であり、
    (ホ) パイル糸条の端末として形成されるカットパイル片(18)の先端が、その熱可塑性合成繊維の融点以下の温度で加熱されて熱収縮し、パイル糸条のニードルループ(16)を形成している部分(20)よりも太くなった膨脹部(21)を形成しており、
    (ヘ) その膨脹部(21)からニードルループ(16)に続くパイル片(18)の根元部分(22)において、パイル片(18)の太さが急激に変化した段差をつくることなくなだらかに変化している繊維製自動車足元マット。
  2. (ト) パイル糸条(14)がパイル経編地(13)の複数コース(17a・17b・17c)にわたって連続する複数個のニードルループ(16a・16b・16c)を形成しており、
    (チ) その複数コースにわたって連続する複数個のニードルループ(16a・16b・16c)を形成しているパイル糸条(14)の両端が、地糸(15)の形成する異なるニードルループ(19a・19c)から突出したパイル片(18a・18c)を形成しており、その両端の構成する2つのパイル片(18a)とパイル片(18c)の間が離れている前掲請求項1に記載の繊維製自動車足元マット。
  3. (リ) パイル経編地(13)の目付けが300g/m2 以下であり、
    (ヌ) パイル経編地(13)とカーペット地(11)の間に介在する接着材による接着層(23)の目付けが400g/m2 以下である前掲請求項1と請求項2の何れかに記載の繊維製自動車足元マット。
  4. (ル) 接着層(23)が、不織布と、その不織布の表裏に塗着している接着剤とによって構成されており、
    (オ) 不織布の表裏に塗着している接着剤が、それぞれカーペット地(11)とパイル経編地(13)に塗着している前掲請求項1と請求項2と請求項3の何れかに記載の繊維製自動車足元マット。
  5. (ワ) 接着層(23)に介在する不織布の目付けが40g/m2 以下である前掲請求項4に記載の繊維製自動車足元マット。
  6. (カ) パイル糸条(14)がモノフィラメント糸であり、
    (ヨ) パイル経編地(13)の目付けが150g/m2 以下であり、
    (タ) 接着層(23)の目付けが200g/m2 以下である前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5の何れかに記載の繊維製自動車足元マット。
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