以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
最初に、本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図17を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における撮像装置の1例を示すブロック図である。
図1において、撮像装置10は、例えば携帯電話等に内蔵されたカメラモジュールであり、撮像光学系201、オートフォーカス(以下、AFと言う)機構100、カメラ回路300等で構成される。カメラ回路300は、撮像素子301、撮像部320、制御部310、記憶部340、SMA駆動部330等で構成される。撮像装置10は本発明における可動モジュールであり、AF機構100およびカメラ回路300は、本発明における駆動ユニットとして機能する。
撮像光学系201は、撮像素子301の撮像面上に被写体の光学像を結像させる。AF機構100は、撮像光学系201を光軸203方向に移動させて、ピント調節を行う。AF機構100は、撮像光学系201を移動させるための駆動源としてワイヤ状の形状記憶合金(Shape Memory Alloy。以下、SMAと言う)を備えている。AF機構100については図2以降に詳述する。
撮像素子301の撮像面上に結像された被写体の光学像は、撮像素子301によって光電変換され、撮像部320によってデジタル化された画像データに変換される。撮影前の画像データは、制御部310を介して表示部999にプレビュー画像として動画表示される。また、撮影後の画像データは、制御部310を介してメモリ等で構成される記憶部340に記憶されるとともに、適宜、表示部999に撮影画像として表示される。表示部999は、例えば携帯電話の液晶表示画面等である。
撮像部320は、撮像素子301の動作を制御して上述した画像データを得る。また、撮像部320は、制御部310と協働して、撮像素子301の撮像面上の一部のエリア(以下、AFエリアと言う)にある画素(以下、AF画素と言う)の画像データを用いてピント情報(以下、AFデータAFDと言う)を得るピント検出も行う。
SMA駆動部330は、SMAへの通電を制御することでAF機構100の駆動を制御して、撮像光学系201を光軸203方向に移動させることで、撮像光学系201のピント調節を行う。SMA駆動部330については、図6で詳述する。上述したピント検出およびピント調節を合わせてAF動作という。
制御部310は、例えばマイクロコンピュータ等で構成され、上述した撮像素子301および撮像部320による撮像動作、およびAF動作を含む撮像装置10の動作全体を制御する。制御部310は、例えば携帯電話等の撮像装置10が組み込まれる機器を制御するマイクロコンピュータであってもよい。
次に、上述したAF機構100の構成と動作について、図2乃至図6を用いて説明する。図2は、AF機構100の主要部の構成と動作の1例を示す模式図で、図2(a)はAF機構100を図2(b)の光軸203に垂直なA−A’面で切った上面図、図2(b)および(c)はAF機構100を図2(a)のB方向から見た側面図である。
図2において、AF機構100は、台板101、天板103、SMA支持部105、鏡胴111、レンズ駆動枠113、SMA151、テンションガイド153、SMA固定部155、付勢バネ131、駆動アーム121および変位入力部123等で構成される。撮像光学系201は、鏡胴111の内部に固定されている。撮像素子301は本例では台板101上に配置されているが、これは必須ではなく、撮像光学系201の結像位置に配置されればよい。
図2(a)において、SMA151は、例えば線径数十μm程度のワイヤ形状であり、駆動アーム121に取り付けられた2つの変位入力部123とテンションガイド153とに架線されている。SMA151の両端は、所定の張力で引っ張られた状態で電極を兼ねた2つのSMA固定部155によって、カシメ等の固定方法で、SMA支持部105に固定されている。
駆動アーム121の2ヶ所の平坦部121aの上には、レンズ駆動枠113の2本の梁131aがそれぞれ載せられており、駆動アーム121の平坦部121aの動きがレンズ駆動枠113に伝達される構成となっている。なお、レンズ駆動枠113の円周部113bは、付勢バネ131によって図2(a)の紙面手前側から紙面奥側に向かって付勢されており、これによって、レンズ駆動枠113の梁部113aが駆動アーム121の平坦部121aに押しつけられている。
図2(b)はSMA151に電流が通電されていない状態を示している。鏡胴111とレンズ駆動枠113とは例えば接着等で一体化されており、本発明における付勢部材である付勢バネ131によって光軸203方向の紙面上から下に付勢されて、台板101側に押しつけられている。駆動アーム121も、2ヶ所の平坦部121aとレンズ駆動枠113の2本の梁131aとを介して付勢バネ131によって光軸203方向の紙面上から下に付勢されている。
図2(c)はSMA151に電流が通電された状態を示している。駆動アーム121は、所謂パンタグラフ構造をしており、SMA151に電流が通電されるとSMA151の長さが収縮し、その収縮力が2つの変位入力部123に作用して駆動アーム121を圧縮する圧縮力Fxとなる。
圧縮力Fxによって、駆動アーム121は、上述した付勢バネ131による付勢力Fzに抗して、2ヶ所の平坦部121aと2本の梁131aとを介して鏡胴111とレンズ駆動枠113とを光軸203方向の紙面下から上に押し上げる。これによって、撮像光学系201は、光軸203方向の紙面下から上に、つまり無限遠側から最近接側へと繰り出される。
以上に述べたように、SMA151と付勢バネ131とは、鏡胴111、レンズ駆動枠113および駆動アーム121を介して撮像光学系201を駆動するアクチュエータとして機能する。ここに、撮像光学系201は本発明における被駆動部である。
ここで、上述したSMA151と駆動アーム121との関係を、図3および図4を用いて説明する。図3は、SMA151と駆動アーム121との関係を説明するための模式図で、図3(a)はSMA151の動作を、図3(b)は駆動アーム121の動作を示す図である。
図3(a)において、SMA151が長さLs1の状態から長さLs2の状態へと収縮したとする。SMA151は、SMA固定部155で固定された両端部と、テンションガイド153に架線されている中央部とは移動することができない。よって、SMA151の長さの変化は、SMA151が駆動アーム121の変位入力部123に接している部分151aおよび151bの位置の変化Xとなり、位置の変化Xによって、変位入力部123に上述した圧縮力Fxが加えられる。
図3(b)において、駆動アーム121の2つの変位入力部123がそれぞれ圧縮力Fxを受けてパンタグラフ形状の内側方向にXだけ押し込まれると、駆動アーム121は変形し、駆動アーム121の平坦部121aは、付勢バネ131による付勢力Fzに抗して、図3(b)の紙面下から上に、移動量Zだけ押し上げられる。
図4は、上述した駆動アーム121の移動量Z即ち撮像光学系201の繰り出し量Zと、SMA151の特性との関係を示す模式的なグラフであり、図4(a)は繰り出し量ZとSMA151の長さLsmaとの関係を、図4(b)はSMA151の長さLsmaと抵抗値Rsmaとの関係を、図4(c)は繰り出し量ZとSMA151の抵抗値Rsmaとの関係を示す。
図4(a)において、駆動アーム121の移動量Z即ち撮像光学系201の繰り出し量ZとSMA151の長さLsmaとは、SMA151の周囲の環境温度Taによらず、非線形ではあるが1対1の関係がある。SMA151に駆動電流が通電されていない時のSMA151の長さLsma=L0とし、この時の繰り出し量Z=Z0とする。SMA151に駆動電流が通電されてSMA151が発熱することで、SMA151の長さLsmaは短くなり、図3で示したように、SMA151の圧縮力Fxによって駆動アーム121を押し上げようとするが、SMAの長さLsma=Lhpまでは付勢バネ131の付勢力Fzの力量の方が大きいため、繰り出し量Z=Z0のままとなる。
駆動電流が更に大きくなってSMA151の長さLsma≦Lhpとなると、SMA151による圧縮力Fxが付勢バネ131の付勢力Fzよりも大きくなり、駆動アーム121を押し上げはじめる。撮像光学系201を無限遠に合焦させるための繰り出し量Z=Zinfとし、この時のSMA151の長さLsma=Linfとする。また、撮像光学系201を最近接距離に合焦させるための繰り出し量Z=Zntとし、この時のSMA151の長さLsma=Lntとする。繰り出し量Z=Z0からZ=Zinfまでの間は、撮像光学系201が合焦不可能な領域(以下、オーバー無限域と言う)である。
図4(b)において、SMA151に駆動電流が通電されていない時、つまりSMA151の長さLsma=L0の時のSMA151の抵抗値Rsma=R0とする。SMA151に駆動電流が通電されると、SMA151は、自身の持つ抵抗値Rsmaに起因するジュール熱によって発熱してSMA151の温度Tsmaが上昇する。SMA151単体の場合は、SMA151の温度Tsmaが上昇してSMA151の長さLsmaが短くなりはじめると、最初はSMA151の抵抗値Rsmaは増大し、ある長さよりも短くなるとSMA151の抵抗値Rsmaは減少に転じる。
しかし、AF機構100のように付勢バネ131によってSMA151に常に付勢力Fzがかけられている系では、上述したSMA151の抵抗値Rsmaの反転現象はほとんど見られず、SMA151の長さLsmaと抵抗値Rsmaとの間には、SMA151の周囲の環境温度Taによらず、非線形ではあるが1対1の関係があることが知られている。
SMA151の長さLsma=LhpでのSMA151の抵抗値Rsma=Rhpとする。同様に、撮像光学系201を無限遠に合焦させるためのSMA151の長さLsma=Linfでの抵抗値Rsma=Rinf、撮像光学系201を最近接距離に合焦させるためのSMA151の長さLntでの抵抗値Rsma=Rntとする。
図4(c)において、図4(a)および図4(b)に述べた関係から、撮像光学系201の繰り出し量ZとSMA151の抵抗値Rsmaとの間にも、SMA151の周囲の環境温度Taによらず、非線形ではあるが1対1の関係が成り立つ。SMA151に電流が通電されて発熱することで、SMA151の抵抗値Rsmaは下がり、長さLsmaが短くなり、繰り出し量Zが大きくなる、つまり、撮像光学系201が無限遠側から最近接距離側へと繰り出されることになる。SMA151の抵抗値RsmaがRmaxからRhpの間では、SMA151による圧縮力Fxよりも付勢バネによる付勢力Fzの方が大きいため、繰り出し量Z=Z0のままである。
SMA151の抵抗値Rsma=RhpからRinfまでの間は、撮像光学系201が合焦不可能なオーバー無限域にある状態であり、Rsma=RinfからRntまでの間は、撮像光学系201の合焦領域である。Rsma>Rntの領域は、最近接距離よりもさらに近側に合焦する領域であるが、この領域では一般的に、撮像光学系201の収差や周辺光量等により充分な光学性能が得られない。
図4(c)に示したように、駆動アーム121の移動量即ち撮像光学系201の繰り出し量ZとSMA151の抵抗値Rsmaとは、SMA151の周囲の環境温度Taによらず、非線形ではあるが1対1の関係が成り立つ。つまり、SMA151の抵抗値が所定の抵抗値になるように制御することで、SMA151の周囲の環境温度Taによらず、撮像光学系201の合焦位置を制御することができる。
図5は、撮像光学系201の繰り出し量Zと、SMA151の目標抵抗値Rsmaとの関係を示す図で、図5(a)は図4(c)に示した繰り出し量Zと目標抵抗値Rsmaとの関係を示すグラフのRsma=RinfからRntまでの間の一部を拡大したグラフ、図5(b)は図5(a)の関係を示す繰り出し位置テーブルZTの1例である。
本第1の実施の形態においては、撮像光学系201の合焦動作は、撮像光学系201を等間隔毎に繰り出す所謂ステップ駆動で行われるとする。ここで、ステップ駆動時の撮像光学系201の繰り出し位置を示すパラメータとして、AFステップ数n(nは0(ゼロ)または正の整数)を導入する。そして、AFステップ数nの時の撮像光学系201の繰り出し位置をZ(n)とし、撮像光学系201を繰り出し位置Z(n)に移動させるようにSMA151の抵抗値Rsmaを制御する時の目標抵抗値をRtg(n)とする。
図4(c)に示した繰り出し量Zと、上述した繰り出し位置Z(n)との関係を整理すると、AFステップ数n=0(ゼロ)での繰り出し位置Z(0)はSMA151に電流が通電されていない初期位置Z0である。同様に、AFステップ数n=1での繰り出し位置Z(1)は撮像光学系201を無限遠に合焦させる無限遠位置Zinfであり、AFステップ数n=ntでの繰り出し位置Z(nt)は撮像光学系201を最近接距離に合焦させる最近接位置Zntである。
図5(a)において、撮像光学系201を等間隔の移動幅ΔZ単位で繰り出すとして、例えばAFステップ数n=k−2、k−1、k、k+1の時の撮像光学系201の各々の位置Z(n)を、Z(k−2)、Z(k−1)、Z(k)およびZ(k+1)とする。この時、SMA151に駆動電流Is(n)を通電してSMA151の温度Tsmaを上昇させることで撮像光学系201を繰り出して行く場合の、撮像光学系201の各繰り出し位置Z(n)に対応するSMA151の目標抵抗値Rtg(n)は、それぞれ、Rtg(k−2)、Rtg(k−1)、Rtg(k)およびRtg(k+1)となり、図4(c)で説明したように、SMA151の周囲の環境温度Taによらず、非線形ではあるが1対1の関係がある。
図5(b)において、繰り出し位置テーブルZTは、AFステップ数nと、それに対応した撮像光学系201を各繰り出し位置Z(n)に移動させる時のSMA151の目標抵抗値Rtg(n)、およびSMA151の抵抗値Rs(n)を目標抵抗値Rtg(n)にするための目安のSMA駆動電流値Is(n)とで構成される。
n=1即ち撮像光学系201を無限遠に合焦させる時の目標抵抗値Rtg(1)=RinfでSMA駆動電流値Is(1)=Iinfであり、n=nt即ち撮像光学系201を最近接距離に合焦させる時の目標抵抗値Rtg(nt)=RntでSMA駆動電流値Is(nt)=Intである。同様に、n=k即ち撮像光学系201を繰り出し位置Z(k)に移動させる時の目標抵抗値はRtg(k)であり、SMA駆動電流値はIs(k)である。
ただし、撮像光学系201には、その焦点距離と絞り値に依存する被写界深度が存在するので、例えば無限遠位置Zinfを、撮像光学系201が無限遠から被写界深度の分だけ近い距離に合焦する位置として、それに対応する抵抗値Rinfも被写界深度に相当する分だけ低い抵抗値としてもよい。同様に、最近接位置Zntを最近接距離から被写界深度の分だけ遠い距離に合焦する位置として、それに対応する抵抗値Rntも被写界深度に相当する分だけ高い抵抗値としてもよい。
ここに、繰り出し位置テーブルZTは、例えば撮像光学系201のピント調整時に算出された目標抵抗値Rtg(n)と、その時に用いられたSMA駆動電流値Is(n)とを記憶する等の方法で作成される。繰り出し位置テーブルZTは、例えば図1の記憶部340中に設けられ、図11および図15に示すフローチャートの中で使用される。
上述した繰り出し位置テーブルZTの例は、SMA151の抵抗値Rs(n)と、それを目標抵抗値Rtg(n)にするための目安のSMA駆動電流値Is(n)とで構成されているが、これに限るものではなく、例えば、SMA151の抵抗値Rs(n)と、それを目標抵抗値Rtg(n)にするための目安のSMA駆動電圧値Vs(n)とで構成してもよい。
次に、上述したSMA151の抵抗値Rs(n)の検出方法を、図6を用いて説明する。図6は、SMA駆動部330の回路構成の1例を示すブロック図である。
図6において、SMA駆動部330は、駆動部331、SMA抵抗値算出部333、比較部335、駆動量算出部337、基準抵抗339等で構成される。SMA駆動部330の動作は、制御部310によって制御される。
まず、記憶部340上の図5(b)の繰り出し位置テーブルZTに記憶されている目安のSMA駆動電流Is(n)の値が、制御部310を介して駆動部331に送信され、SMA駆動電流Is(n)が、駆動部331によって基準抵抗339を介してSMA151に通電される。上述したように、目安のSMA駆動電圧値Vs(n)を用いて駆動電圧を制御することでもよい。
SMA抵抗値算出部333には基準抵抗339の両端の電位VdとVsmaとが入力され、電位VdとVsmaとから、後述する(1式)によってSMA151の現在の抵抗値Rs(n)が算出される。
比較部335の一方の入力にはSMA抵抗値算出部333で算出された現在の抵抗値Rs(n)が入力され、他方の入力には制御部310を介して図5(b)の繰り出し位置テーブルZTに記憶されている目標抵抗値Rtg(n)が入力され、両者が比較される。駆動量算出部337には比較部335の比較結果が入力され、SMA151の現在の抵抗値Rs(n)と目標抵抗値Rtg(n)とからSMA151の駆動量(本例では、駆動部331の駆動電流Is(n)の制御値)が算出され、駆動部331にフィードバックされる。
ここで、SMA151の現在の抵抗値Rs(n)を求める。まず、基準抵抗339の抵抗値をRdとすると、基準抵抗339の両端の電位(Vd−Vsma)は、
Vd−Vsma=Is(n)×Rd
これから、現在のSMA駆動電流Is(n)は、
Is(n)=(Vd−Vsma)/Rd
また、基準抵抗339の下端の電位つまりSMA151の上端の電位Vsmaは、
Vsma=Is(n)×Rs(n)
よって、SMA151の現在の抵抗値Rs(n)は、
Rs(n)=Vsma/Is(n)
=(Vsma/(Vd−Vsma))×Rd・・・(1式)
となる。基準抵抗339の抵抗値Rdは既知であるから、基準抵抗339の両端の電位VdとVsmaとを測定することで、SMA151の現在の抵抗値Rs(n)を求めることができる。
続いて、本第1の実施の形態における撮像装置10の動作について、図7乃至図17を用いて説明する。図7は、撮像装置10の動作の流れを示すフローチャートのメインルーチンである。
図7において、ステップS101で、例えばユーザによって携帯電話がカメラモードにセットされる等の撮影のための操作が行われると、ステップS103で撮像装置10の電源がオンされ、ステップS200「状態検知サブルーチン」が実行されて、SMA151の断線、短絡等の不具合、およびSMA151近傍の環境温度Taの検知等のSMA151に関わる状態が確認される(状態検知工程)。ステップS200「状態検知サブルーチン」については図8で説明する。
次に、ステップS300「レンズ無限遠位置セットサブルーチン」が実行されて、撮像光学系201が無限遠位置にセットされ(レンズ無限遠位置セット工程)、ステップS111で撮像装置10での撮像が開始されて、表示部999にプレビュー画像の表示が開始される(プレビュー工程)。ここで表示されるプレビュー画像は、無限遠にピントが合った画像である。ステップS300「レンズ無限遠位置セットサブルーチン」については図11で説明する。
ステップS113で、ユーザによってレリーズスイッチがオンされたか否かが確認される。レリーズスイッチがオンされるまで、ステップS113で待機する(レリーズ検知工程)。レリーズスイッチがオンされたら(ステップS113;Yes)、ステップS400「AFサブルーチン」が実行されて、撮像光学系201が被写体への合焦位置まで移動される(AF工程)。ステップS400「AFサブルーチン」については図12で説明する。
ステップS121で撮影が行われて(撮影工程)、撮影された画像データが記憶部340に記憶され(画像データ記憶工程)、ステップS123で、撮影された画像が表示部999に適宜表示される(画像表示工程)。ステップS125で撮影を終了するか否かが確認される(撮影終了確認工程)。撮影を終了しない場合(ステップS125;No)には、ステップS200「状態検知サブルーチン」に戻ってSMA151の状態が確認され、以後、上述した動作が繰り返される。
撮影を終了する場合(ステップS125;Yes)には、ステップS131で撮像装置10の電源がオフされて、一連の動作が終了される。以上に述べた撮像装置10の動作は、制御部310によって制御される。
図8は、図7のステップS200「状態検知サブルーチン」を示すフローチャートである。
図8において、ステップS201で、撮像光学系201の繰り出し位置を示すAFステップ数nが、初期位置を示す「0(ゼロ)」に設定される(初期位置パラメータ設定工程)。ステップS203で、SMA151に、記憶部340に予め記憶されている所定の初期電流Is(0)が通電される(初期電流通電工程)。初期電流Is(0)は例えば数mA程度の電流値である。初期電流Is(0)を通電することで、SMA151の温度TsmaがSMA151の周囲の環境温度Taよりも高くなるが、例えば撮像光学系201のピント調整器にSMA151の温度Tsmaの上昇値ΔTsmaを検出する機能を持たせておき、ピント調整時に温度Tsmaの上昇値ΔTsmaを検出して記憶部340に記憶し、その分を補正すればよい。
ステップS205で、SMA151の初期抵抗値Rs(0)が、SMA抵抗値算出部333によって、上述した(1式)を用いて検出される(初期抵抗値算出工程)。ここに、Rs(0)は、図4のSMA151に駆動電流が通電されていない時のSMA151の抵抗値R0である。なお、所定の初期電流Is(0)の通電時間は、ステップS205でのSMA151の初期抵抗値Rs(0)の検出に必要な時間でよい。
詳細は図10(a)で後述するが、SMA151に駆動電流Is(n)が通電されていない時の初期抵抗値Rs(0)は、SMA151の周囲の環境温度Taと1対1の対応がある。従って、初期電流Is(0)が通電されて検出されたSMA151の初期抵抗値Rs(0)は、SMA151の周囲の環境温度Ta+初期電流Is(0)による温度上昇値ΔTsmaに対応しているとしてよい。
続いて、ステップS600「SMA断線検知サブルーチン」が実行されて、SMA151の断線や短絡等の不具合がないかどうかが確認される(SMA断線検知工程)。ステップS600「SMA断線検知サブルーチン」については、図9で説明する。SMA151の状態が正常であった場合には、ステップS207で、ステップS205で検出されたSMA151の抵抗値Rs(0)に基づいて、制御部310によって、図10(b)で後述する環境温度テーブルTaTから環境温度Taが読み出され、あるいは環境温度テーブルTaTの値から環境温度Taが算出される(環境温度算出工程)。
ステップS209で、ステップS207で環境温度テーブルTaTから読み出され、あるいは算出された環境温度Taから、制御部310によって、記憶部340に記憶されている初期電流Is(0)による温度上昇値ΔTsmaが減算される(環境温度補正工程)。これにより、初期電流Is(0)によるSMA151の温度上昇分を補正することができ、真の環境温度Taが得られる。続いて、図7のステップS200に戻る。
あるいは、ステップS203で、初期電流Is(0)をSMA151自身の発熱がほとんどない程度の微少電流とすることで、SMA151の温度TsmaがSMA151の周囲の環境温度Taと一致するようになせば、初期電流Is(0)による温度上昇値ΔTsmaの補正は不要となり、ステップS209は省略することができる。
この場合、初期電流Is(0)が微少電流であるために、基準抵抗339の両端の電位VdおよびVsmaは微少電位となるので、SMA抵抗値算出部333の検出ゲイン等を高くして検出精度を向上させる等の配慮が行われることが望ましい。ここに、制御部310は、本発明における状態検知部、断線検知部、温度検知部および温度補正部として機能する。
なお、ステップS200「状態検知サブルーチン」による環境温度Taの検出は、撮像装置10の温度特性の補正に用いるために、撮影が行われる毎に実行されることが望ましい。しかし、例えば複数枚の画像を連続的に撮影する連写等のように、撮影間で環境温度が大きく変化しない場合には、最初の撮影が行われる直前に環境温度Taの検出を行えばよい。
図9は、図8のステップS600「SMA断線検知サブルーチン」を示すフローチャートである。ここでは、図8のステップS207での環境温度Taの算出に先立って、SMA151の断線や短絡等による抵抗値の異常が確認される。
図9において、ステップS601で、図8のステップS205で検出されたSMA151の初期抵抗値Rs(0)が所定の抵抗値R1よりも小さいか否かが確認される。SMA151の初期抵抗値Rs(0)が所定の抵抗値R1よりも大きいか等しい場合(ステップS601;No)には、SMA151が断線していると判断されて、ステップS651でSMA断線フラグが立てられ、例えば、SMA151への通電を禁止するとともに、異常状態を警告する表示を行ったり警告音で告知する等の異常時の処理を行う「異常処理ルーチン」に移行する。「異常処理ルーチン」の詳細については省略する。
SMA151の初期抵抗値Rs(0)が所定の抵抗値R1よりも小さい場合(ステップS601;Yes)、ステップS611で、SMA151の初期抵抗値Rs(0)が所定の抵抗値R2よりも大きいか否かが確認される。SMA151の初期抵抗値Rs(0)が所定の抵抗値R2よりも小さいか等しい場合(ステップS611;No)には、SMA151が短絡しているあるいはリーク電流が大きいと判断されて、ステップS631でAF不可フラグが立てられ、例えば機械的手段によって撮像光学系201を所定の固定位置(例えば数mの距離に合焦する常焦点位置)に移動する等の処理を行う「レンズ位置固定ルーチン」に移行する。「レンズ位置固定ルーチン」の詳細については省略する。
SMA151の初期抵抗値Rs(0)が所定の抵抗値R2よりも大きい場合(ステップS611;Yes)、ステップS621で、SMA正常フラグが立てられ、図8のステップS600に戻る。
上述した所定の抵抗値R1およびR2は、SMA151がとりうる抵抗値の範囲よりも少し高い抵抗値および少し低い抵抗値である。例えばSMA151がとりうる抵抗値が30Ωから35Ωであった場合には、R1=50Ω、R2=20Ωというようにすればよい。
図10は、SMA151の初期抵抗値Rs(0)とSMA151の周囲の環境温度Taとの関係を示す図で、図10(a)は初期抵抗値Rs(0)と環境温度Taとの関係を示すグラフを示し、図10(b)は環境温度テーブルTaTの1例を示す。
SMA151に電流が通電されていない時の初期長さLs(0)と初期抵抗値Rs(0)とは、図4(b)に示した1対1の関係を保ったままで、SMA151の周囲の環境温度Taによって変化することが知られている。従って、環境温度Taと初期抵抗値Rs(0)との間にも1対1の関係が成り立つ。この関係の一例を示すのが、図10(a)に示したグラフである。ここでは、横軸に環境温度Taを、縦軸に初期抵抗値Rs(0)をとり、環境温度Taと初期抵抗値Rs(0)との関係を示してある。
環境温度Taの最大値(この例では+60℃)での初期抵抗値Rs(0)(この例では30Ω)は、撮像光学系201の無限遠位置に対応する無限遠位置抵抗値Rinfよりも大きくなるように設定される必要がある。この関係が逆転すると、環境温度Taの最大値近傍では、SMA151にSMA駆動電流Is(n)が通電されない状態で、撮像光学系201が無限遠位置Zinfを通り越して有限距離に合焦する位置に移動してしまうからである。本第1の実施の形態においてオーバー無限域が設けられているのは、上述した理由による。
図10(b)において、環境温度テーブルTaTは図10(a)のグラフに示した関係をテーブル化したもので、SMA151の初期抵抗値Rs(0)とそれに対応するSMA151の周囲の環境温度Taとからなる換算テーブルである。この例では、テーブルの範囲として例えば撮像装置10の動作保証温度範囲である−20℃から+60℃までをとり、その間の初期抵抗値Rs(0)を等間隔(例えば、35Ωから30Ωを1Ω間隔)で分割し、各初期抵抗値Rs(0)に対応する環境温度Taをテーブル化している。テーブルの分割間隔は、必要な環境温度Taの検出精度を考慮して決定すればよい。
あるいは、図8のステップS205で環境温度テーブルTaTに存在しない初期抵抗値Rs(0)が検出された場合は、図8のステップS207で、例えば環境温度テーブルTaTに存在する検出された初期抵抗値Rs(0)の上下の初期抵抗値Rs(0)から比例配分する等の方法により、SMA151の周囲の環境温度Taを算出してもよい。さらに、環境温度テーブルTaTの代わりに、初期抵抗値Rs(0)を環境温度Taに換算する換算式を記憶しておいてもよい。
図11において、ステップS301で、撮像光学系201の繰り出し位置を示すAFステップ数nが、無限遠位置を示す「1」に設定される(無限遠位置パラメータ設定工程)。ステップS303で、図5(b)の繰り出し位置テーブルZTから、撮像光学系201が無限遠に合焦する時の繰り出し位置Z(1)=Zinfに相当するSMA151の無限遠位置抵抗値Rinfと、SMA151の抵抗値が無限遠位置抵抗値Rinfとなるための目安のSMA駆動電流値Iinfとが読み込まれる(無限遠位置抵抗値読込工程)。
ステップS305で、以下の制御での制御目標となる目標抵抗値Rtg(n)がステップS303で読み込まれた無限遠位置抵抗値Rinfに設定され(無限遠位置目標抵抗値設定工程)、ステップS307で、SMA151の駆動電流Is(n)がステップS303で読み込まれた目安のSMA駆動電流値Iinfに設定される(無限遠位置駆動電流値設定工程)。
続いて、ステップS500「レンズ駆動サブルーチン」が実行されて、SMA151の抵抗値Rs(n)が無限遠位置抵抗値RinfとなるようにSMA151に通電される駆動電流Is(n)が制御されることで、撮像光学系201が無限遠位置Zinfに移動され(撮像光学系無限遠位置セット工程)、図7のステップS300に戻る。ステップS500「レンズ駆動サブルーチン」については図12で説明する。
図12は、図11および後述する図15のステップS500「レンズ駆動サブルーチン」を示すフローチャートである。
図12において、ステップS501で、撮像光学系201の繰り出し位置を示すAFステップ数nおよびSMA151周辺の環境温度Taに基づいて、安定時間tst(n)が安定時間テーブルSTTから読み出される(安定時間読出工程)。環境温度Taは、図7のステップS200「状態検知サブルーチン」でSMA151の初期抵抗値Rs(0)を検出することで、正確に検出されている。
上述したように、安定時間tst(n)は、撮像光学系201がAFステップ数n−1の位置からAFステップ数nの位置に移動された時の、撮像光学系201の繰り出し位置Z(n)が安定するのに要する時間である。安定時間tst(n)および安定時間テーブルSTTについては、図13および図14で後述する。
ステップS503で、タイマTM(n)に、ステップS501で読み出された安定時間tst(n)がセットされる。ステップS505で、タイマTM(n)から、ステップS507からステップS551の3通りの工程の内の何れかが実行されるのに必要な所定の時間t1が減算される。
ステップS507で、SMA151に駆動電流Is(n)が通電されることでSMA151が発熱し(駆動電流通電工程)、ステップS509で、SMA151の抵抗値Rs(n)が上述した図6の回路で(1式)を用いて検出される(抵抗値検出工程)。ステップS511で、ステップS509で検出されたSMA151の抵抗値Rs(n)が、目標抵抗値Rtg(n)よりも許容誤差Rp小さい値(Rtg(n)−Rp)より大きいか否かが確認される。
大きい場合(ステップS511;Yes)、ステップS513で、SMA151の抵抗値Rs(n)が、目標抵抗値Rtg(n)よりも許容誤差Rp大きい値(Rtg(n)+Rp)より小さいか否かが確認される。小さい場合、即ちSMA151の抵抗値Rs(n)が目標抵抗値Rtg(n)±許容誤差Rpの範囲内にある場合(ステップS513;Yes)、SMA151の抵抗値Rs(n)が目標値に達したと見なして、ステップS521でSMA151の駆動電流Is(n)の値を固定して、ステップS551に進む。
ステップS513で、SMA151の抵抗値Rs(n)が、目標抵抗値Rtg(n)よりも許容誤差Rp大きい値(Rtg(n)+Rp)より大きい場合(ステップS513;No)、SMA151の温度が低すぎると判断され、ステップS531で、SMA151の温度を上昇させるために、SMA151の駆動電流Is(n)が現在の値から既定値Istだけ大きく設定されて、ステップS551に進む。
SMA151の抵抗値Rs(n)が、目標抵抗値Rtg(n)よりも許容誤差Rp小さい値(Rtg(n)−Rp)より小さい場合(ステップS511;No)、SMA151の温度が高すぎると判断され、ステップS541で、SMA151の温度を下降させるために、SMA151の駆動電流Is(n)が現在の値から既定値Istだけ小さく設定されて、ステップS551に進む。
ステップS551で、タイマTM(n)が0(ゼロ)以下になった、即ちステップS503でタイマTM(n)がセットされてから安定時間tst(n)が経過したか否かが確認される。経過した場合(ステップS551;Yes)には、図11および図15のステップS500に戻る。
安定時間tst(n)が経過していない場合(ステップS551;No)には、ステップS505に戻り、安定時間tst(n)が経過するまでステップS505乃至ステップS551の動作を継続する。
ここに、ステップS511およびS513は抵抗値判定工程、ステップS531およびS541は駆動電流フィードバック工程である。
ステップS531およびS541では、SMA151の駆動電流Is(n)を既定値Istだけ大きくあるいは小さくして段階的に制御する方法を示したが、図6の比較部335でのSMAの現在の抵抗値Rs(n)と目標抵抗値Rtg(n)との比較結果に基づいて、駆動量算出部337でSMA151の駆動電流Is(n)の変更値を演算し、演算結果に基づいてSMA151の駆動電流Is(n)を制御してもよい。
図13は、上述した安定時間tst(n)を説明するための模式図で、図13(a)は撮像光学系201がステップ駆動で繰り出される場合の駆動波形と撮像光学系201の移動波形を示し、図13(b)はステップ駆動を一定間隔で行う場合と図12に示した安定時間の経過を待ってステップ駆動を行う場合の駆動に要する時間の比較図である。
図13(a)において、撮像光学系201に駆動波形DPが通電されて、AFステップ数n=k−2の位置Z(k−2)からAFステップ数n=k−1の位置Z(k−1)へと移動される場合、撮像光学系201は、実際にはメカニカルな応答遅れやバウンド等で移動波形MWのように移動する。この応答遅れやバウンド等が収束して撮像光学系201の位置が安定するまでの時間tst(n)を安定時間とする。安定時間tst(n)は、撮像光学系201の現在の位置Z(n)、環境温度Ta等に依存して変化する。従って、ステップ駆動を一定間隔Δt毎に行う場合には、各条件を考慮して一定間隔Δtを最長の安定時間+図7のステップS400「AFサブルーチン」に必要な時間ts400以上の値に設定する必要があり、撮像光学系201を合焦位置まで移動するのに時間がかかる。
図13(b)において、上述したステップ駆動を一定間隔Δt毎に行う場合(図の実線の駆動波形DP)に対して、図12で示したように、撮像光学系201のステップ駆動の各位置での安定時間tst(n)の経過を待って図7のステップS400「AFサブルーチン」を行い、すぐに次のステップ駆動を行うようにする(図の1点鎖線の駆動波形DPst)ことで、例えば撮像光学系201をAFステップ数n=k−2の位置Z(k−2)からAFステップ数n=k+1の位置Z(k+1)へと移動させる間に、時間tshだけ駆動に要する時間を短縮することができる。
図14は、安定時間テーブルSTTの1例を示す図である。図13で述べたように、安定時間tst(n)は、撮像光学系201の現在の位置Z(n)、環境温度Ta等に依存して変化する。そのため、安定時間テーブルSTTは、環境温度Ta毎に設定されたAFステップ数nとその位置での安定時間tst(n)で構成される。
本例では、図10と同様に、テーブルの範囲として例えば撮像装置10の動作保証温度範囲である−20℃から+60℃までをとり、その間の環境温度Taを等間隔(例えば10℃毎)に分割し、各環境温度Ta毎にAFステップ数nとそれに対応する安定時間tst(n)をテーブル化している。環境温度Taの分割幅は、安定時間tst(n)に求められる精度を考慮して決定すればよい。
環境温度Taが安定時間テーブルSTTにない温度の場合には、安定時間tst(n)を安定時間テーブルSTTから比例配分等で演算して求めてもよいし、最も近い環境温度Taの安定時間テーブルSTTを用いてもよい。安定時間テーブルSTTは、図12で用いられる。
図15は、図7のステップS400「AFサブルーチン」を示すフローチャートである。本サブルーチンで行われるAF動作は、AF動作専用のセンサを別設するのではなく、所謂山登り方式と呼ばれる方法を用いる。山登り方式とは、撮像光学系201を無限遠側から最近接側へと略等間隔にステップ的に移動させながら画像のコントラストを検出し、コントラストが最大となる位置、つまり合焦位置を探す方式である。
図1で示したピント情報、ここでは画像のコントラストを示すAFデータAFD(n)は、通常は撮像素子301上のAFエリア内の隣接するAF画素の画像データの差分の和として定義される。もちろん、撮像素子301の全画素の画像データの差分の和等の他の方法で求められてもよい。
図15において、ステップS401で、図7のステップS300「レンズ無限遠位置セットサブルーチン」が実行されて撮像光学系201が無限遠位置(AFステップ数n=1)にセットされた状態で、無限遠位置でのAFデータAFD(1)が取得される(無限遠AFデータ取得工程)。
ステップS411で、AFステップ数nに「1」が加算され(パラメータ変更工程)、ステップS413で、AFステップ数nに基づいて、図5(b)で説明した繰り出し位置テーブルZTからAFステップ数nに相当する目標抵抗値Rtg(n)と目安のSMA駆動電流値Is(n)とが読み出される(目標抵抗値読出工程)。続いて、図12のステップS500「レンズ駆動サブルーチン」が実行されて、撮像光学系201が無限遠側から最近接側に1ステップ繰り出される(撮像光学系繰出工程)。
ここでは、ステップS413で、繰り出し位置テーブルZTから目標抵抗値Rtg(n)と目安のSMA駆動電流値Is(n)とを読み出すとした。しかし、図12で説明したように、ステップS500「レンズ駆動サブルーチン」では、図6の比較部335でのSMAの現在の抵抗値Rs(n)と目標抵抗値Rtg(n)との差に応じて、駆動量算出部337でSMA151の駆動電流Is(n)の変更値を算出し、算出された駆動電流Is(n)の変更値に基づいてSMA151の駆動電流Is(n)を制御してもよい。
この場合には、目安のSMA駆動電流値Is(n)を読み出す必要はなく、繰り出し位置テーブルZTは、AFステップ数nと、それに対応した撮像光学系201を各繰り出し位置Z(n)に移動させる時のSMA151の目標抵抗値Rtg(n)とで構成されればよい。
ステップS421で、画像のコントラストを示すAFデータAFD(n)が取得され(AFデータ取得工程)、ステップS423で、ステップS421で取得されたAFデータAFD(n)が撮像光学系201の1ステップ前の位置でのAFデータAFD(n−1)よりも小さいか否かが確認される(AFデータ比較工程)。
AFデータAFD(n)がAFデータAFD(n−1)に等しいか、よりも大きい場合(ステップS423;No)、ステップS411に戻って、AFステップ数nに「1」が加算され、以後、AFデータAFD(n)がAFデータAFD(n−1)よりも小さくなる、即ち画像のコントラストが最大となる撮像光学系201の合焦位置を通り過ぎるまで、山を一歩一歩登るように、撮像光学系201を無限遠側から最近接側に1ステップずつ繰り出し、AFデータAFD(n)を取得してAFデータAFD(n−1)と比較する動作を繰り返す。
AFデータAFD(n)がAFデータAFD(n−1)よりも小さい場合(ステップS423;Yes)、撮像光学系201が合焦位置を通り過ぎたと判断されて、ステップS431以降、撮像光学系201を合焦位置に戻す動作が行われる。
従来のAF動作では、撮像光学系201が合焦位置を通り過ぎた場合には、ギアやカム等に起因するバックラッシュの補正のために、撮像光学系201を一旦合焦位置よりも初期位置Z(0)側に繰り込んでから、再度合焦位置である繰り出し位置Z(n−1)へと移動させるのが一般的である。この方法では、一旦繰り込んでから再度繰り出すために、撮像光学系201の移動に時間がかかる。
しかし、本第1の実施の形態では、撮像光学系201の繰り出し位置Z(n)から合焦位置である繰り出し位置Z(n−1)へと一気に戻すことができるので、撮像光学系201の移動に必要な時間は非常に短い。
ただし、従来のギアやカムを用いた駆動機構におけるバックラッシュと同様に、図2乃至図4で説明したAF機構100には、撮像光学系201を無限遠側から最近接側に繰り出す場合と、最近接側から無限遠側に繰り込む場合とで、SMA151の目標抵抗値Rtg(n)と撮像光学系201の繰り出し位置Z(n)との関係にヒステリシスが存在する。ヒステリシスについては、図16で後述する。
そのため、単に図12のステップS500「レンズ駆動サブルーチン」で、SMA151の抵抗値Rs(n)が1ステップ前のSMA151の目標抵抗値Rtg(n−1)になるように制御しても、撮像光学系201を合焦位置に戻すことはできない。
そこで、ステップS431で、1ステップ前のSMA151の目標抵抗値Rtg(n−1)とSMA151周辺の環境温度Taとに基づいて、図17で後述するヒステリシス補正テーブルHCTから抵抗補正値Rcor(n−1)と電流補正値Icor(n−1)とが読み出される(ヒステリシス補正値読出工程)。環境温度Taは、図7のステップS200「状態検知サブルーチン」でSMA151の初期抵抗値Rs(0)を検出することで、正確に検出されている。ここに、抵抗補正値Rcor(n−1)は本発明におけるヒステリシス補正値である。
ステップS433で、SMA151の目標抵抗値Rtg(n)=Rs(n−1)+Rcor(n−1)に設定され(目標抵抗値補正工程)、ステップS435で、SMA151の駆動電流Is(n)=Is(n−1)−Icor(n−1)に設定される(駆動電流補正工程)。続いて図12のステップS500「レンズ駆動サブルーチン」が実行されて、撮像光学系201が、ヒステリシスも考慮されて、一気に合焦位置に戻され(撮像光学系繰込工程)、図7のステップS400に戻る。
ここでは、ステップS431でヒステリシス補正テーブルHCTから抵抗補正値Rcor(n−1)と電流補正値Icor(n−1)とを読み出し、ステップS433でSMA151の目標抵抗値Rtg(n)=Rs(n−1)+Rcor(n−1)に補正し、ステップS435でSMA151の駆動電流Is(n)=Is(n−1)−Icor(n−1)に補正するとした。
しかし、図12で説明したように、ステップS500「レンズ駆動サブルーチン」では、図6の比較部335でのSMAの現在の抵抗値Rs(n)と目標抵抗値Rtg(n)との差に応じて、駆動量算出部337でSMA151の駆動電流Is(n)の変更値を算出し、算出された駆動電流Is(n)の変更値に基づいてSMA151の駆動電流Is(n)を制御してもよい。
この場合には、抵抗補正値Rcor(n−1)だけが必要で、電流補正値Icor(n−1)を読み出す必要はなく、後述するヒステリシス補正テーブルHCTは、各環境温度Taでの、AFステップ数nと、それに対応した補正抵抗値Rcor(n−1)とで構成されればよい。またステップS435も不要である。
図16は、撮像光学系201を繰り出す場合と繰り込む場合とでの、SMA151の目標抵抗値Rtg(n)と撮像光学系201の繰り出し位置Z(n)とのヒステリシスについて説明するための模式的なグラフで、AF動作での制御目標となるSMA151の目標抵抗値Rtg(n)と撮像光学系201の位置Z(n)の関係を示す。
図16において、本第1の実施の形態では、SMA151に駆動電流Is(n)が通電されてSMA151が発熱して収縮することで、撮像光学系201が無限遠側から最近接側へと繰り出される。繰り出し時のSMA151の目標抵抗値Rtg(n)と撮像光学系201の繰り出し位置Z(n)の関係は、図の軌跡FWを描く。ここで、撮像光学系201がAFステップ数n=k−1の位置Z(k−1)からAFステップ数n=kの位置Z(k)に移動されて、図15のステップS423で、AFデータAFD(k)がAFデータAFD(k−1)よりも小さいと判断されると、撮像光学系201を位置Z(k)から合焦位置である位置Z(k−1)に繰り込む必要がある。
この時、図2に示した駆動アーム121の歪み等の主としてメカニカルな要因によるヒステリシスにより、撮像光学系201の繰り込み時のSMA151の目標抵抗値Rtg(n)と撮像光学系201の位置Z(n)の関係は、繰り出し時とは異なる軌跡BWを描く。
そのため、撮像光学系201を位置Z(k)から位置Z(k−1)に繰り込むためには、SMA151の目標抵抗値Rtg(n)を位置Z(k−1)の繰り出し時の目標抵抗値Rtg(k−1)よりもさらに抵抗補正値Rcor(k−1)だけ大きい値にする必要がある。従って、その時のSMA駆動電流値Is(n)も、繰り出し時のSMA駆動電流値Is(k−1)よりもさらに電流補正値Icor(k−1)だけ小さく設定する必要がある。また、上述したヒステリシスは、AF機構100を構成する各部品の線膨張係数等にも依存するので、環境温度Taにも依存する。
図17は、ヒステリシス補正テーブルHCTの1例を示す図である。
図17において、ヒステリシス補正テーブルHCTは、図16で述べた撮像光学系201の繰り出し時と繰り込み時とのヒステリシスを補正するための補正テーブルで、各環境温度TaでのAFステップ数nと抵抗補正値Rcor(n)および電流補正値Icor(n)とで構成される。ヒステリシス補正テーブルHCTは、例えば図1の記憶部340に記憶されている。
本例では、図10および図14と同様に、テーブルの範囲として例えば撮像装置10の動作保証温度範囲である−20℃から+60℃までをとり、その間の環境温度Taを等間隔(例えば10℃毎)に分割し、各環境温度Ta毎にAFステップ数nと、それに対応する抵抗補正値Rcor(n)および電流補正値Icor(n)とをテーブル化している。環境温度Taの分割幅は、ヒステリシスの許容幅等を考慮して決定すればよい。ヒステリシス補正テーブルHCTは、図15で用いられる。
上述したように、図6の比較部335でのSMAの現在の抵抗値Rs(n)と目標抵抗値Rtg(n)との差に応じて、駆動量算出部337でSMA151の駆動電流Is(n)の変更値を算出し、算出された駆動電流Is(n)の変更値に基づいてSMA151の駆動電流Is(n)を制御する場合には、ヒステリシス補正テーブルHCTには電流補正値Icor(n)は不要である。
以上に示した本第1の実施の形態によれば、SMA151に所定の初期電流Is(0)を通電してSMA151の初期抵抗値Rs(0)を検出することで、SMA151の状態、すなわち断線や短絡あるいはリーク等の状態を検出することができるので、撮像装置10の異常な動作を防止することができる。また、状態によっては、例えば撮像光学系を強制的に常焦点位置にセットすることで、SMA151に異常があっても撮影を可能にすることができる。
また、SMA151に所定の初期電流Is(0)を通電してSMA151の初期抵抗値Rs(0)を検出することで、サーミスタ等の温度センサと温度センサを用いて温度を検知する温度検知回路とを別設することなく、SMA151の周囲の環境温度Taを検出することができ、環境温度Taを後述する撮像装置10のAF動作の温度特性の補正に用いることができるので、撮像装置10の高画質化、コストダウンおよび省スペース化に寄与することができる。
また、以上に示した本第1の実施の形態によれば、SMA151の抵抗値Rs(n)が無限遠位置抵抗値RinfとなるようにSMA151に通電される駆動電流Is(n)を制御することにより、画像データをプレビュー表示する際に、撮像光学系201を無限遠位置Z0に正確に移動することができるので、撮像光学系201の繰り出し位置を検出するためのセンサや検出回路を別設する必要がなく、撮像装置10の高画質化、コストダウンおよび省スペース化に寄与することができる。
さらに、撮像光学系201を無限遠位置Z0に移動することで、プレビュー時に無限遠にピントの合った動画像を表示することができるので、撮影のための構図決定時等に使い勝手のよい撮像装置10をユーザに提供することができる。さらに、SMA151に駆動電流Is(n)を通電することでSMA151が予熱されているために、続いて行われるステップS400「AFサブルーチン」での撮像光学系201の駆動の応答性が向上するので、使い勝手のよい撮像装置10をユーザに提供することができる。
加えて、以上に示した本第1の実施の形態によれば、撮像光学系201をステップ駆動する際に、駆動波形が入力されてから実際に撮像光学系201の移動が完了してその位置が安定するまでの安定時間tst(n)を安定時間テーブルSTTとして準備しておき、撮像光学系201のステップ駆動の各位置での安定時間tst(n)の経過を待って「AFサブルーチン」を行い、すぐに次のステップ駆動を行うようにすることで、従来のステップ駆動を一定間隔Δt毎に行う場合に比べて、撮像光学系201を合焦位置まで移動するのにかかる時間を短縮することができるので、使い勝手のよい撮像装置10をユーザに提供することができる。
また、以上に示した本第1の実施の形態によれば、撮像光学系201の繰り出し時と繰り込み時とのヒステリシスを補正するために、環境温度Ta毎に、抵抗補正値Rcor(n)と、必要に応じて電流補正値Icor(n)とをヒステリシス補正テーブルHCTとして準備しておく。環境温度Taは、図7のステップS200「状態検知サブルーチン」でSMA151の初期抵抗値Rs(0)を検出することで、正確に知ることができる。
そして、撮像光学系201を合焦位置を通り過ぎた位置から合焦位置まで戻す際に、SMA151の目標抵抗値Rtg(n)と、必要に応じてSMA駆動電流値Is(n)とを、ヒステリシス補正テーブルHCTの抵抗補正値Rcor(n)と電流補正値Icor(n)とを用いて補正する。こうすることで、撮像光学系201を、合焦位置を通り過ぎた位置から一気に合焦位置に戻すことができるので、従来のように撮像光学系201を一度初期位置Z(0)まで戻す必要がなく、撮像光学系201を合焦位置まで移動するのにかかる時間を短縮することができるので、使い勝手のよい撮像装置10をユーザに提供することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について、図18および図19を用いて説明する。図18は、本発明の第2の実施の形態におけるシャッタユニットの模式図で、図18(a)はシャッタが閉じた状態を、図18(b)はシャッタが全開した状態を示す。本実施の形態においては、シャッタユニットは、シャッタ羽根の駆動源としてコイルバネ状のSMAを備えている。
図18において、シャッタユニット400は、シャッタ羽根401および402、回動軸401aおよび402a、連結ピン403、SMA404、付勢バネ405、シャッタ地板406およびSMA駆動制御部410等で構成されている。シャッタ地板406には、シャッタ開口406aが設けられている。
ここに、SMA駆動制御部410は、本発明における駆動部、形状記憶合金抵抗値算出部、温度検知部、記憶部および温度補正部として機能する。また、シャッタユニット400は本発明における可動モジュール、回動軸401aおよび402a、連結ピン403、SMA404、付勢バネ405、シャッタ地板406およびSMA駆動制御部410は本発明における駆動ユニット、シャッタ羽根401および402は本発明における被駆動部である。
図18(a)において、シャッタ羽根401および402は、それぞれ回動軸401aおよび402aを中心として回動可能に支持されており、連結ピン403によって互いに連結されている。シャッタ羽根402とシャッタ地板406との間には、SMA404と付勢バネ405とが、互いの力の作用方向が逆方向となるようにそれぞれ連結されている。SMA404と付勢バネ405とは、シャッタ羽根402を駆動するアクチュエータとして機能する。
SMA駆動制御部410によってSMA404に通電が行われてSMA404が収縮すると、シャッタ羽根401が付勢バネ405の付勢力に抗して回動軸401aの回りに図の反時計回りに回動し、連結ピン403によって連結されているシャッタ羽根402も連動して回動軸402aの回りに図の時計回りに回動する。これによって、シャッタが開口し、シャッタが全開すると、図18(b)の状態となる。
SMA404への通電が遮断されてSMAの収縮力がなくなると、付勢バネ405の付勢力によってシャッタ羽根401が回動軸401aの回りに図の時計回りに回動し、連結ピン403によって連結されているシャッタ羽根402も連動して回動軸402aの回りに図の反時計回りに回動する。これによって、シャッタが閉じて図18(a)の状態に戻る。上述した動作は、SMA駆動制御部410によって駆動、制御される。
図19は、本第2の実施の形態におけるシャッタユニット400をデジタルカメラに用いる場合の動作の流れの1例を示すフローチャートである。
図19において、ステップS701でデジタルカメラの電源がオンされると、ステップS703で、第1の実施の形態における図8のステップS200「状態検知サブルーチン」と同様に、SMAの初期抵抗値Rs(0)を算出する方法で環境温度Taの測定が行われる(状態検知工程)。測定された環境温度Taは、以後のシャッタユニット400の各動作、例えば後述するステップS715でシャッタ羽根401および402を開口直前の基準位置へ移動させる場合のヒステリシスの温度依存性を補正する場合等で利用され、シャッタの高性能化に寄与する。
続いて、ステップS705で、SMA404に通電されてシャッタ羽根401および402が全開され、ステップS707でプレビュー動作が開始される(プレビュー工程)。デジタルカメラの場合は、第1の実施の形態での携帯電話の場合とは異なり、プレビュー時にもAF動作が行われるのが一般的である。ステップS709でユーザによってシャッタボタンが半押しされてAFスイッチがオンされると、ステップS711でAF動作および測光(AE)動作が行われて、撮影レンズの位置と露出値とが固定される(AF/AEロック工程)。
ステップS713で、ユーザによってシャッタボタンが全押しされてレリーズスイッチがオンされたか否かが確認される(レリーズ検知工程)。レリーズスイッチがオンされるまで、ステップS713で待機する。レリーズスイッチがオンされたら(ステップS713;Yes)、ステップS715で一旦シャッタが閉じられる。ただし、ここではSMA404への通電がオフされてシャッタ羽根401および402が初期位置に戻されるのではなく、開口直前の基準位置に移動される(シャッタ羽根基準位置セット工程)。
シャッタ羽根401および402の開口直前の基準位置への移動は、第1の実施の形態の図11「レンズ無限遠位置セットサブルーチン」と同様に、SMAの抵抗値Rs(1)が開口直前の基準位置の目標抵抗値Rtg(1)となるようにSMA駆動電流Is(n)を制御することで行われる。さらに、開口直前の基準位置の目標抵抗値Rtg(1)は、第1の実施の形態の図15「AFサブルーチン」と同様に、シャッタ羽根401および402を開口する方向の動作と、シャッタ羽根401および402を閉じる方向の動作とのヒステリシスを考慮して決定される。
ステップS717で、ステップS711で決定された露出値から求められる絞り値までシャッタが再度開口され、ステップS719で、ステップS711で決定された露出値から求められる露出時間の間撮影が行われ、ステップS721で、SMA404への通電がオフされて、シャッタ羽根401および402が初期位置に戻される。ここに、ステップS717、S719およびS721は撮影工程である。
ステップS723で、撮影を終了するか否かが確認される(撮影終了確認工程)。撮影を終了しない場合(ステップS723;No)には、ステップS703に戻って環境温度Taが測定され、以後、上述した動作が繰り返される。
撮影を終了する場合(ステップS723;Yes)には、ステップS725でデジタルカメラの電源がオフされて、一連の動作が終了される。
以上に述べたように、本第2の実施の形態によれば、SMA404に所定の初期電流Is(0)を通電してSMA404の初期抵抗値Rs(0)を検出することで、サーミスタ等の温度センサおよび温度センサを用いて温度を検知する温度検知回路を別設することなく、SMA404の周囲の環境温度Taを検出することができるので、シャッタユニット400の高性能化、コストダウンおよび省スペース化に寄与することができる。
また、ユーザによってレリーズスイッチがオンされてシャッタを一旦閉じる場合に、SMA404の抵抗値Rs(1)がシャッタ開口直前の基準位置の目標抵抗値Rtg(1)となるようにSMA404の駆動電流Is(n)を制御することにより、シャッタ羽根401および402の位置を検出するためのセンサや検出回路を別設することなく、シャッタ羽根401および402を開口直前の基準位置まで正確に閉じることができるので、ステップS717でシャッタを再度開口させるまでのレリーズタイムラグをなくすことができ、シャッタユニット400の高性能化、コストダウンおよび省スペース化に寄与することができる。
さらに、SMA404に駆動電流Is(n)が通電されてSMA404が予熱されているので、続いて行われるステップS717でシャッタを再度開口させる場合の応答性が向上するので、使い勝手のよいシャッタユニット400を提供することができる。
加えて、シャッタ開時と閉時とのシャッタ開口直前の基準位置を示す目標抵抗値Rtg(1)のヒステリシスを抵抗補正値Rcor(n)を用いて補正することで、シャッタ羽根401および402を、全開位置から一気にシャッタ開口直前の基準位置に戻すことができるので、レリーズタイムラグをなくすことができ、使い勝手のよいシャッタユニット400を提供することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について、図20および図21を用いて説明する。図20は、本発明の第3の実施の形態における手振れ補正ユニットの模式図で、図20(a)は手振れ補正が行われていない状態を、図20(b)は手振れ補正が行われている状態を示す。本第3の実施の形態では、ワイヤ状のSMAを駆動源として備え、撮影光学系内に組み込まれた補正レンズを移動させて手振れ補正を行う方法を例示するが、例えば撮像素子を移動させる方法であっても同じである。
図20において、手振れ補正ユニット500は、基台510、ガイドロッド501、補正レンズ502、保持枠503、SMA507、付勢バネ508およびSMA駆動制御部520等で構成される。ここに、SMA駆動制御部520は、本発明における駆動部、形状記憶合金抵抗値算出部、温度検知部、記憶部および温度補正部として機能する。また、手振れ補正ユニット500は本発明における可動モジュール、基台510、ガイドロッド501、保持枠503、SMA507、付勢バネ508およびSMA駆動制御部520は本発明における駆動ユニット、補正レンズ502は本発明における被駆動部である。
図20(a)は、SMA507への通電が停止されている状態を示している。図20(a)において、補正レンズ502を保持する保持枠503のスライド部503aは、基台510に固定されたガイドロッド501にスライド可能に係合している。スライド部503aと基台510との間には、SMA507と付勢バネ508とが、互いの力の作用方向が逆方向となるようにそれぞれ連結されている。SMA507への通電は停止されているので、保持枠503即ち補正レンズ502は、付勢バネ508の付勢力によって図の下方に引っ張られ、初期位置であるSMA通電オフ位置P0(ゼロ)に停止している。
図20(b)は、SMA507へスタンバイ電流Is(1)が通電されて、補正レンズ502が撮影光学系の光軸中心位置(センタリング位置)に移動された状態を示している。図20(b)において、SMA507に、SMA507の抵抗値Rs(1)が基準位置であるセンタリング位置の目標抵抗値Rtg(1)となるようにスタンバイ電流Is(1)が通電制御されてSMA507が収縮すると、保持枠503即ち補正レンズ502が付勢バネ508の付勢力に抗してガイドロッド501に沿って図の上方向に移動し、センタリング位置P1に停止する。
センタリング位置P1から、SMA507の抵抗値Rs(n)をモニタしながら駆動電流Is(n)を制御することで、補正レンズ502の位置を任意の手振れ補正位置に移動することができる。この時には、図の下から上に移動する場合と上から下に移動する場合とのヒステリシスを補正する必要がある。さらに、補正レンズ502の上下方向の位置によって移動に要する時間が異なるので、第1の実施の形態における図12と同様に、移動時間を最短にするための安定時間の設定が必要となる。
なお、説明を簡単にするために、ここでは図の上下方向のみの1軸方向の手振れ補正ユニット500を例示したが、本例と同様の機構を、移動方向が直交するように、手振れ補正ユニット500に積み重ねることで、2軸方向の手振れ補正ユニットを実現することができる。
図21は、本第3の実施の形態における手振れ補正ユニット500をデジタルカメラや携帯電話のカメラユニット等の撮像装置に用いる場合の動作の流れの1例を示すフローチャートである。なお、ここでは手振れ補正に関わる動作の流れのみを示し、AFや露出制御については省略する。
図21において、ステップS801で撮像装置の電源がオンされると、ステップS803で、第1の実施の形態における図8のステップS200「状態検知サブルーチン」および第2の実施の形態における図19のステップS703と同様に、SMAの初期抵抗値Rs(0)を算出する方法で環境温度Taの測定が行われる(状態検知工程)。測定された環境温度Taは、以後の手振れ補正ユニット500の各動作、例えば後述するステップS811で補正レンズ502を手振れ補正位置へ移動させる場合のヒステリシスや移動時間の温度依存性を補正する場合等で利用され、手振れ補正ユニット500の高性能化に寄与する。
続いて、ステップS805で、SMA507に、SMA507の基準位置抵抗値Rs(1)が基準位置であるセンタリング位置の目標抵抗値Rtg(1)となるようにスタンバイ電流Is(1)が通電制御されることで、補正レンズ502が、SMA通電オフ位置P0(ゼロ)からセンタリング位置P1に移動される(補正レンズセンタリング工程)。ステップS807でプレビュー動作が開始される(プレビュー工程)。ステップS809でシャッタボタンが全押しされてレリーズスイッチがオンされたか否かが確認される(レリーズ検知工程)。レリーズスイッチがオンされるまで、ステップS809で待機する。
レリーズスイッチがオンされたら(ステップS809;Yes)、ステップS811で、SMA507の抵抗値Rs(n)が、図示しない手振れ補正量算出部によって算出された補正レンズ502の移動量に対応するSMA507の目標抵抗値Rtg(n)に等しくなるように、SMA507の駆動電流Is(n)が制御されて手振れが補正されながら、撮影が行われ、画像データが生成される(手振れ補正撮影工程)。
ステップS813で、撮影を終了するか否かが確認される(撮影終了確認工程)。撮影を終了しない場合(ステップS813;No)には、ステップS803に戻って環境温度Taが測定され、以後、上述した動作が繰り返される。撮影を終了する場合(ステップS813;Yes)には、ステップS815で撮像装置の電源がオフされて、一連の動作が終了される。
以上に述べたように、本第3の実施の形態によれば、SMA507に所定の初期電流Is(0)を通電してSMA507の初期抵抗値Rs(0)を検出することで、サーミスタ等の温度センサおよび温度センサを用いて温度を検知する温度検知回路を別設することなく、SMA507の周囲の環境温度Taを検出することができるので、手振れ補正ユニット500の高性能化、コストダウンおよび省スペース化に寄与することができる。
また、SMA507の基準位置抵抗値Rs(1)がセンタリング位置の目標抵抗値Rtg(1)となるようなスタンバイ電流Is(1)を通電制御して、補正レンズ502をSMA通電オフ位置P0(ゼロ)からセンタリング位置P1に移動することで、補正レンズ502の位置を検出するためのセンサや検出回路を別設することなく、補正レンズ502をセンタリング位置P1に移動することができるので、手振れ補正ユニット500の高性能化、コストダウンおよび省スペース化に寄与することができる。
さらに、手振れ補正のために補正レンズ502を図の下から上に移動する場合と、上から下に移動する場合とのMA507の目標抵抗値Rtg(n)のヒステリシスを、抵抗補正値Rcor(n)を用いて補正することで、補正レンズ502を目的の位置に素早く移動させることができるので、応答性のよい手振れ補正ユニット500を提供することができる。
加えて、手振れ補正のために補正レンズ502を移動させる際に、補正レンズ502の位置によって移動に要する時間が異なるので、第1の実施の形態における図12と同様に、移動時間を最短にするための安定時間を設定して、最短の安定時間待ちで補正レンズ502を移動させることによって、補正レンズ502を目的の位置に素早く移動させることができるので、応答性のよい手振れ補正ユニット500を提供することができる。
以上に述べたように、本発明によれば、形状記憶合金を駆動源として被駆動部を移動させる駆動ユニットおよび可動モジュールにおいて、被駆動部が移動される位置と、その位置に対応した被駆動部がその位置に静止するまでの安定時間とに基づいて被駆動部を移動させるタイミングを制御することで、被駆動部を最短の駆動時間で移動させることができるので、環境温度や被駆動部の位置に関わらず、高速駆動可能な駆動ユニットおよび可動モジュールを提供することができる。
尚、本発明に係る駆動ユニットを構成する各構成の細部構成および細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。