JP4972261B2 - 金属結合化合物および細胞培養培地組成物中でのそれらの使用 - Google Patents

金属結合化合物および細胞培養培地組成物中でのそれらの使用 Download PDF

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Description

【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、細胞の生物学および生化学の分野にある。本発明は、一般的には、金属結合化合物および/または金属結合化合物を含有している遷移元素錯体を含有している細胞および組織の培養培地組成物、ならびにそのような化合物および錯体の使用に関する。より詳細には、本発明は、金属結合化合物とともに錯体中に1つ以上の遷移元素陽イオンを含有している、細胞および組織の培養のための組成物に関する。
【0002】
(関連分野)
細胞培養培地は、制御された人工的なおよびインビトロの環境において細胞を維持しそして増殖させるために必要な栄養素を提供する。細胞培養培地の特徴および処方は、特定の細胞の要求に依存して変化する。重要なパラメーターとして、浸透圧モル濃度、pH、および栄養素の組成が挙げられる。
【0003】
培地処方物は、動物、植物、および細菌細胞を含む多数の細胞の型を培養するために使用されている。培養された細胞は、生理学的なプロセスの研究および有用な生物学的物質の産生を含む多くの用途を有する。このような有用な産物の例として、モノクローナル抗体、ホルモン、成長因子、酵素などが挙げられる。このような産物は、多くの商業的および治療的な適用を有し、そして組換えDNA技術の到来を伴って、細胞がこれらの産物を大量に産生するように操作され得る。培養された細胞はまた、ベクターおよび/またはワクチンとして使用され得るウイルスの単離、同定、および増殖のために慣用的に使用される。従って、インビトロで細胞を培養する能力は、細胞の生理学の研究にとって重要であるだけではなく、そうでなければコスト的に有効である手段によっては得ることができない有用な物質の産生にも必要である。
【0004】
細胞培養培地処方物は、文献において十分に議論されており、そして多数の培地が商業的に入手可能である。初期の細胞培養の作業においては、培地処方物は、血液の化学的な組成物および物理化学的な特性(例えば、浸透圧モル濃度、pHなど)に基づいており、そして「生理学的な溶液」と呼ばれていた(Ringer、S.、J.Physiol.,3:380−393(1989);Waymouth,C.,:Cell and Tissues in Culture、第1巻、Academic Press、London、99〜142頁(1965);Waymouth,C.,In Vitro 6:109−127(1970))。しかし、哺乳動物の体の種々の組織中の細胞は、酸素/二酸化炭素の分圧、ならびに栄養素、ビタミン、および微量エレメントの濃度に関して、種々の微細な環境に対して暴露される;従って、良好なインビトロの種々の細胞型の培養には、種々の培地処方物の使用を必要とし得る。代表的な細胞培養培地の成分として、アミノ酸、有機塩、および無機塩、ビタミン、微量金属、糖、脂質、ならびに核酸が挙げられる。これらの型および量は、所定の細胞または組織の型の特定の要求に応じて変化し得る。
【0005】
代表的には、細胞培養培地処方物は、ある範囲の添加物を用いて補充される。これらの添加物として、ウシの胎児の血清(FBS)(10〜20%v/v)または動物の胚、器官、もしくは腺に由来する抽出物(0.5〜10%v/v)のような定義されていない化合物が挙げられる。FBSは、動物細胞培養培地において最も一般的に適用されるサプリメントであるが、他の血清の供給源もまた、慣用的に使用され、これは、新生児のウシ、ウマ、およびヒトを含む。化学的に定義されていないこれらのタイプのサプリメントは、細胞培養培地においていくつかの有用な機能を提供する(Lambert,K.J.ら:Animal Cell Biotechnology、第1巻、Spier,R.E.ら編、Academic Press New York、85〜122頁(1985))。例えば、これらのサプリメントは、不安定であるかまたは水に不溶性である栄養素についてのキャリアまたはキレーターを提供する;毒性の部分に結合しそして中和する;ホルモンおよび成長因子、プロテアーゼインヒビター、および必須でありしばしば同定されていないかもしくは定義されていない低分子量の栄養素を提供する;物理的なストレスおよび損傷から細胞を保護する;そして特定の必須の金属イオン(例えば、Fe++およびFe+++)についてのキャリア(例えば、トランスフェリンおよびセルロプラスミン)を提供する。従って、血清および/または動物の抽出物は、一般的には、動物細胞の培養のための最適な培養培地を提供するための比較的コストの低いサプリメントとして使用される。
【0006】
残念なことに、組織培養への適用における血清または動物の抽出物の使用は、いくつかの欠点を有する(Lambert,K.J.ら:Animal Cell Biotechnology、第1巻、Spier,R.E.ら、Academic Press New York編、85〜122頁(1985))。例えば、これらのサプリメントの化学的な組成は、ロット間で、単一の製造業者によってもなお、変化し得る。さらに、動物またはヒト起源のサプリメントはまた、外因的な因子(例えば、マイコプラズマ、ウイルス、およびプリオン)によっても混入され得る。これらの因子は、これらの混入したサプリメントが細胞培養培地処方物中で使用される場合には、培養された細胞の健康状態を重篤に次第に傷つけ得る。さらに、これらの因子は、外因的な因子が混入している培地中で産生された物質が細胞治療および他の臨床的な適用において使用される場合に、健康状態の危険性を提起し得る。主要な懸念は、動物のスポンジ状の脳症およびヒトのクロイツフェルトヤコブ病を引き起こすプリオンの存在である。
【0007】
培養培地中の血清の存在は、さらなる問題を示し得る。細胞表面の化学(これは、多くの細胞型についてのインビトロの微細な環境の重要な部分である)が、血清または抽出タンパク質の吸着または取り込みを通じて不利に改変され得る。定義されていない成分(例えば、血清または動物の抽出物)の使用もまた、培養された細胞の栄養の必要条件およびホルモンの必要条件の真の定義および説明を妨げ、従って、培養物中での細胞の増殖および分化に対する特異的な成長因子または栄養素の効果を、制御された方法で研究する能力を排除する。さらに、定義されていないサプリメントは、研究者が異常な増殖および分化、ならびに培養された細胞中での特異的な疾患に関連する変化を研究することを妨げる。生物学的な物質の産業的な産生において細胞培養培地を使用することによって、培養培地の血清および動物の抽出物の補充がまた、複雑になり、そして血清または抽出タンパク質を除去する必要性に起因して、培養培地からの所望される物質の精製のコストを増大させ得る。
【0008】
(血清を含まない培地)
血清または動物の抽出物の使用の欠点を克服するために、多数の血清を含まない培地が開発されている。これらの培地(これは、しばしば、単一の細胞型の培養を支持するために特異的に処方される)は、血清または抽出物のサプリメントによって通常は提供される、定義された量の精製された成長因子、リポタンパク質、および他のタンパク質を組み込む。このような培養培地中の成分(およびその濃度)が正確にわかるので、これらの培地は一般的には、「定義された培養培地」と呼ばれ、そしてしばしば「血清を含まない培地」または「SFM」と呼ばれる。内皮細胞、角質細胞、単球/マクロファージ、繊維芽細胞、ニューロン、リンパ球、軟骨細胞、造血幹細胞、胚性幹細胞、昆虫細胞、CHO細胞、Vero細胞、293 HEK細胞、HeLa細胞、PER−C6(ヒトの胚性の網膜上皮細胞)、または肝細胞の培養を支持するために設計され多数のSFM処方物が、例えば、Life Technologies,Inc.(Rockville,MD)から商業的に入手可能である。
【0009】
SFMは、一般的には、いくつかの異なる利点を使用者に提供する。例えば、SFMの使用は、これらの細胞が血清を含有している培地または抽出物を含有している培地中で培養された場合にマスクされ得る、細胞の生理学に対する特異的な成長因子または他の培地成分の効果の調査を容易にする。さらに、SFMは、血清または抽出物を含有している培地よりも、はるかに少ない量のタンパク質を含み得(実際には、SFMは、しばしば、「低タンパク質培地」と呼ばれる)、それによってSFM中で培養された細胞によって産生される生物学的な物質を精製することをおおはばに簡単にし、そしてそのコストを低くする。
【0010】
いくつかの極端に単純なSFM(これは、本質的には、ビタミン、アミノ酸、有機塩および無機塩、ならびに緩衝液から構成される)が、細胞培養に使用されている。しかし、このような培地(しばしば、「基本培地」と呼ばれる)は、通常は、ほとんどの動物細胞によって必要とされる、栄養素、ホルモン、または生物学的な応答の改変因子の内容において重篤な不足が存在する。従って、ほとんどのSFMは、基本培地中にさらなる成分を取りこみ、それによって、培地の血清を含まない性質および低タンパク質含有量の性質を維持するように試みながら、培地をより栄養的にまたはホルモン的に複雑にする。このような成分の例として、ウシに由来する血清アルブミン(BSA)またはヒトに由来する血清アルブミン(HSA)、動物に由来する脂質(例えば、ヒトのExcyte(Bayer);ステロールなど)、インシュリン、トランスフェリン、および天然の(動物の)供給源または組換えの供給源に由来する特定の成長因子またはホルモンが挙げられる。
【0011】
しかし、このような動物に由来するサプリメントの細胞培養培地中での使用はまた、特定の欠点を有する。例えば、それから精製された培養培地および/または産物が免疫原性であり得る危険性が存在する。詳細には、サプリメントが、培養される細胞の供給源とは異なる動物に由来する場合である。従って、治療薬として使用される生物学的物質が、このような培養培地から精製される場合は、これらの免疫原性タンパク質またはペプチドの特定の量が同時に精製され得、そしてそのような治療薬を受容している動物中で、免疫学的な反応を生じるように誘導され得、そしてこれはアナフィラキシーを含む。
【0012】
この可能性のある問題を克服するために、培養される細胞と同じ種に由来するサプリメントが使用され得る。例えば、ヒトの細胞の培養は、サプリメントとしてHSAを使用して容易にされ得、一方、ウシの細胞の培養のための培地は、変わりにBSAを使用する。しかし、このアプローチは、培養培地中への混入および外因的な病原体を導入する危険性を伴う(例えば、HIV、クロイツェルトヤコブ病因子、またはHSA調製物による肝炎ウイルス、BSA調製物によるウシのスポンジ状脳症のプリオン)。これらは、動物およびヒトの治療薬の調製においてこのような培地の使用に対して明らかにネガティブに影響し得る。実際、このような安全性の理由のために、バイオテクノロジー業界および政府機関は、このような病原体を含む場合がある、ヒトまたは動物に由来する生成物を含有している細胞培養培地の使用をますます規制し、防止し、そして禁止さえしている。
【0013】
細胞培養培地に対して動物に由来するサプリメントの添加によって提起される可能性のある問題を克服する(nothwithstanding)ことによって、このようなサプリメントが、慣用的に使用される。規定された培地に対して頻繁に添加される1つのこのようなサプリメントは、トランスフェリンである、トランスフェリンは、インビボで、細胞に対して鉄を送達するように作用する。哺乳動物細胞による鉄の取り込みの機構は、概説されている(Qian、Z.M.およびTang,P.L.(1995)Biochim.Biophys.Acta 1269、205−214)。鉄がエネルギー生成および酸素性(oxidative)の呼吸を含む多数の代謝プロセスにおいて補因子として必要とされるので、血清を含まない培地はしばしば、インビトロでほとんどの細胞の良好な培養のために必要な鉄を送達するために、トランスフェリンを補充される。トランスフェリンの調製物中の種々の可能性のある外因性の因子についての関係は、トランスフェリンの置換物として使用され得る他の天然の鉄のキャリア化合物についての研究を刺激した。この研究は、天然の鉄のキャリアがしばしば血清に由来するという事実によって複雑にされ、そして従って、血清の補充の上記の制限を受ける。
【0014】
(金属結合化合物)
天然に由来する金属のキャリアの使用の制限を克服するために、特定の金属結合化合物が、培養された細胞に対して、金属(特に、亜鉛、鉄、マンガン、およびマグネシウム)を補充することにおける使用のために研究されている。単純なキャリア(例えば、キレート化剤(例えば、EDTA))およびその特定の酸または塩(例えば、クエン酸、ピコリン酸、および安息香酸またはヒドロキサム酸の誘導体)が、特定の血清を含まない増殖培地中で有用であることが示されている(米国特許第5,045,454号および同第5,118,513号;Testaら、Brit.J.Haematol.60:491−502(1985);Ganeshaguruら、Biochem.Pharmacol.29:1275−1279(1980);Whiteら,Blood 48:923−929(1976))。
【0015】
これらの参考文献は、いくつかの金属キャリアを開示しているが、データの解釈は、いくつかの実験上の要素によって複雑にされる。データは、制限された数の細胞株から集められ、そして単一の継代の結果を示す。さらに、培地は、血清で補充された。血清は、本質的には、トランスフェリンおよび他の可能性のある鉄のキャリアを含む。血清を補充した培地中で培養されている細胞の増殖に対する「キャリーオーバー効果」が、血清またはトランスフェリンの非存在下での1回または2回の継代後にもなお、存在する(例えば、Keenan,J.およびClynes,M.(1996) In Vitro Cell Dev.Biol−Animal 32,451−453を参照のこと)。他の公知の金属結合化合物が、体から鉄を除去するために、そして送達しないように医学的に使用されている。残念なことに、これらの多くの単純な鉄キレート化化合物は、培養された細胞に対して十分な鉄の利用能力または培養された細胞による取りこみを提供しない。
【0016】
従って、インビトロで培養された細胞に対して遷移金属を送達し得る化合物が、当該分野で必要とされている。より詳細には、血清を含まない、低タンパク質の培養培地(これは、真核生物細胞および原核生物細胞の培養に適切である)中での使用のための鉄のキャリアが、当該分野で必要とされている。このような培地処方物は、細胞の生理学に対する成長因子および他の刺激の効果の研究を容易にし、バイオテクノロジー業界において培養された動物細胞によって産生される生物学的な物質の容易でありそしてよりコスト的に有効な精製を可能にし、そして最も重要には、外因的な動物およびヒトの病原体の導入の危険性を排除する。本発明は、動物細胞培養培地処方物についての、このような種々の化合物、または詳細には、鉄のキャリアを提供する。
【0017】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、必須の金属(例えば、Fe++またはFe+++イオン)を細胞に対して提供するために使用され得る1つ以上の動物以外に由来する金属結合化合物を含む培養培地を提供することによって、インビトロで培養された細胞に対して遷移金属を送達し得る化合物についての当該分野での必要性を満たす。本発明によって提供される化合物は、培地に対して単独で添加され得るかまたは培地への添加の前に1つ以上の遷移元素イオンと錯体化させられ得る、金属結合化合物を含有する。本明細書中に記載される化合物は、インビトロで培養された細胞に対する遷移金属の送達を容易にするために使用された。詳細には、本発明の化合物は、鉄を送達するおよびトランスフェリンを置きかえるそれらの能力について選択された。化合物は、少なくとも3回の継代培養についてトランスフェリンの非存在下で試験された。これらの化合物は、少なくとも3個の共通して使用された細胞株:CHO、Sp2/0、および293 HEK細胞の増殖を支持するそれらの能力について試験されている。
【0018】
本発明はまた、本発明の1つ以上の金属結合化合物および/または1つ以上の遷移元素を、1つ以上の本発明の金属結合化合物との錯体中に含有している組成物(詳細には、細胞培養培地)に関する。本発明のこのような細胞培養培地は、植物細胞、動物細胞(詳細には、ヒトの細胞)、昆虫細胞、細菌細胞、酵母細胞、およびより一般的には、任意の型の真核生物細胞または原核生物細胞を増殖させるためまたは培養するために使用され得る。従って、本発明の金属結合化合物は、任意の型または種の培養培地に対して添加され得、そして好ましくは、このような培地中の天然に由来する金属キャリア(例えば、動物に由来するタンパク質または抽出物(例えば、トランスフェリン))を置きかえるために使用される。本発明はまた、このような組成物の使用の方法に関する。これには、例えば、真核生物細胞(特に、動物細胞)のインビトロでの培養のための方法を含む。本発明はまた、このような培養培地および1つ以上の細胞を含有している組成物に関し、そして1つ以上の上記の組成物を含有しているキットに関する。
【0019】
本発明の培養培地は、好ましくは、血清を含まず、そして少なくとも1つの金属結合化合物および/または少なくとも1つの遷移元素錯体を含み得る。上記の錯体は、少なくとも1つの遷移元素またはその塩もしくはイオンを、少なくとも1つの金属結合化合物との錯体中に含む。ここでは、培地は、トランスフェリンまたは他の動物に由来するタンパク質もしくは抽出物のような天然に由来する金属のキャリアの非存在下で、インビトロでの細胞の培養を支持し得る。金属結合化合物は、培地に対する金属結合化合物の添加の前に、遷移金属と錯体化され得る。他の実施形態においては、金属結合化合物は、培地への金属結合化合物の添加の前に、遷移金属とともに錯体中にない。
【0020】
本発明の1つの局面に従うと、遷移元素は、好ましくは、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マグネシウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルビジウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、およびアクチニウム、またはそれらの塩もしくはイオンからなる群より選択される。そして好ましくは、鉄の塩である。適切な鉄の塩として、FeCl3、Fe(NO33、もしくはFeSO4、またはFe+++もしくはFe++イオンを含む他の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の金属結合化合物として、遷移元素と相互作用し得るかまたはそれに対して結合し得、そして細胞によるそれらの取りこみを促進し得る、任意の分子が挙げられる。このような相互作用/結合は、共有または非共有の性質であり得る。本発明のこの局面で使用される金属結合化合物は、好ましくは、以下からなる群より選択される:ポリオール、ヒドロキシピリジン誘導体、1,3,5−N,N’,N’’−トリス(2,3−ジヒドロキシベンゾイル)アミノメチルベンゼン、エチレンジアミン−N,N’−テトラメチレンホスホン酸、トリスクシン(trisuccin)、酸性のサッカライド(例えば、グルコン酸第一鉄)、グリコサミノグリカン、ジエチレントリアミン五酢酸、ニコチン酸−N−酸化物、2−ヒドロキシニコチン酸、1−、2−、または3−置換2,2’−ビピリジン、ヒドロキサメート誘導体(例えば、アセトヒドロキサム酸)、アミノ酸誘導体、デフェロキサミン、フェリオキサミン(ferrioxamine)、鉄塩基性ポルフィンおよびその誘導体、DOTA−リジン、テキサフィリン(texaphyrin)、サフィリン(sapphrin)、ポリアミノカルボン酸、α−ヒドロキシカルボン酸、ポリエチレンカルバメート、エチルマルトール、3−ヒドロキシ−2−ピリジン、およびIRC011。1つの好ましい実施形態においては、金属結合化合物は、ソルビトールまたはデキストランのようなポリオールであり、そして特に、ソルビトールである。関連する実施形態においては、金属結合化合物は、ヒドロキシピリジン誘導体(例えば、2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物、3−ヒドロキシ−4−ピロン、3−ヒドロキシピピリド−2−オン、3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−ヒドロキシピリド−2−オン、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−メチル−3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、エチルマルトール、またはピリドキサルイソニコチニルヒドラゾンであり、そして好ましくは、2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物である。本発明のこの局面に従う特に好ましい実施形態においては、遷移金属錯体は、ソルビトール−鉄錯体または2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物鉄錯体であり得る。本発明の金属結合化合物はまた、Ca++およびMg++のような2価の陽イオンに結合し得る。
【0022】
関連する局面においては、本発明は、1つ以上の遷移元素と結合し得るかまたは相互作用し得る少なくとも1つの金属結合化合物、およびさらに、以下からなる成分の群より選択される1つ以上の成分を含有している細胞培養培地に関する:少なくとも1つのアミノ酸(例えば、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、またはL−バリン、N−アセチル−システイン)、少なくとも1つのビタミン(例えば、ビオチン、コリン塩化物、D−Ca++−パントテン酸塩(エステル)、葉酸、i−イノシトール、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、またはビタミンB12)、少なくとも1つの無機塩(例えば、カルシウム塩、CuSO4、FeSO4、Fe(NO33、FeCl3、KCl、マグネシウム塩、マンガン塩、酢酸ナトリウム、NaCl、NaHCO3、Na2HPO4、Na2SO4、セレン塩、ケイ素塩、モリブデン塩、バナジウム塩、ニッケル塩、スズ塩、または亜鉛塩)、アデニン、エタノールアミン、D−グルコース、少なくとも1つのサイトカイン、ヘパリン、ヒドロコルチゾン、リポ酸、フェノールレッド、ホスホエタノールアミン、プトレシン、ピルビン酸ナトリウム、トリ−ヨードサイロニン、硫酸デキストラン、Pluronic F68、およびチミジン。本発明の培養培地は、必要に応じて、緩衝化剤を含み得る。適切な緩衝化剤として、N−[2−ヒドロキシエチル]−ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸](HEPES)、MOPS、MES、リン酸塩、炭酸塩、および細胞培養の適用における使用に適切な他の緩衝化剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な緩衝化剤は、培養された細胞に対して実質的な細胞毒性を伴わない緩衝化能力を提供する緩衝化剤である。適切な緩衝化剤の選択は、細胞培養の当業者の範囲内である。
【0023】
別の局面においては、本発明は、以下:アデニン、エタノールアミン、D−グルコース、N−[2−ヒドロキシエチル]−ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸](HEPES)、ヒドロコルチゾン、リポ酸、フェノールレッド、ホスホエタノールアミン、プトレシン、ピルビン酸ナトリウム、トリ−ヨードサイロニン、チミジン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、N−アセチル−システイン、ビオチン、塩化コリン、D−パントテン酸Ca++、葉酸、i−イノシトール、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、カルシウム塩、組換えインシュリン、硫酸デキストラン、Pluronic F68、CuSO4、FeSO4、FeCl3、KCl、マグネシウム塩、マンガン塩、酢酸ナトリウム、NaCl、NaHCO3、Na2HPO4、Na2SO4、セレン塩、ケイ素の塩(silicon salt)、モリブデン塩、バナジウム塩、ニッケル塩、スズ塩、および亜鉛塩、からなる群より選択される成分の1つ以上、ならびに少なくとも1つの金属結合化合物に対して錯体化された少なくとも1つの遷移元素またはそれらの塩もしくはイオンを含有している1つ以上の遷移元素錯体を含有している、細胞培養培地中の遷移元素に結合し得る金属結合化合物に関し、ここでは、それぞれの成分は、インビトロでの細胞の培養を支持する量で存在する。本発明のこの局面における使用のために好ましい遷移元素、金属結合化合物、および遷移元素錯体として、本明細書中で詳細に記載されるものが挙げられる。
【0024】
別の局面においては、本発明は、培地を、少なくとも1つの金属結合化合物および/または少なくとも1つの遷移元素錯体と混合することによって得られる細胞培養培地に関し、上記の錯体は、少なくとも1つの金属結合化合物に対して錯体化された少なくとも1つの遷移元素またはその塩もしくはイオンを含有しており、ここでは、上記の培地は、インビトロでの細胞の培養を支持し得る。本発明のこの局面における使用のために好ましい遷移元素、金属結合化合物、および遷移元素錯体として、本明細書中で詳細に記載されるものが挙げられる。
【0025】
本発明に従うと、本発明の細胞培養培地を形成することにおける使用に適切な培地は、1つ以上の成分を含み得、そして例えば、以下:アデニン、エタノールアミン、D−グルコース、ヘパリン、緩衝化剤、ヒドロコルチゾン、リポ酸、フェノールレッド、ホスホエタノールアミン、プトレシン、ピルビン酸ナトリウム、トリ−ヨードサイロニン、チミジン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、またはL−バリン、N−アセチル−システイン、ビオチン、塩化コリン、D−パントテン酸Ca++、葉酸、i−イノシトール、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、またはビタミンB12、硫酸デキストラン、Pluronic F68、組換えインシュリン、カルシウム塩、CuSO4、FeSO4、FeCl3、Fe(NO33、KCl、マグネシウム塩、マンガン塩、酢酸ナトリウム、NaCl、NaHCO3、Na2HPO4、Na2SO4、セレン塩、ケイ素の塩、モリブデン塩、バナジウム塩、ニッケル塩、スズ塩、および亜鉛塩、からなる群より選択される1つ以上の成分を混合することによって、得られ得、ここでは、それぞれの成分は、インビトロでの細胞の培養を支持する量で添加される。
【0026】
本発明に従うと、本発明によって提供されるかまたは本発明によって得られる培養培地は、1×培地処方物であり得るか、または濃縮された培地処方物(例えば、10×、20×、25×、50×、100×、500×、または1000×培地処方物)であり得る。
【0027】
以下を含むがこれらに限定されない、真核生物細胞および原核生物細胞の両方が、本発明によって提供されるかまたは本発明によって得られる培地中で培養され得る:哺乳動物細胞(ヒトの細胞を含む)、鳥類の細胞、昆虫細胞、魚の細胞、両生類の細胞、および爬虫類の細胞(これらの細胞の任意のものまたは全てが、正常な細胞であり得るかまたは異常な細胞であり得る(例えば、形質転換された細胞、樹立された細胞、または疾患組織のサンプルに由来する細胞))。細胞はまた、植物細胞または微生物の細胞(例えば、細菌細胞および下等真核生物の細胞(例えば、真菌および酵母))を含み得る。
【0028】
別の局面においては、本発明は、細胞(例えば、上記に記載されている細胞)を培養する方法に関し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)細胞を、本発明の細胞培養培地と接触させる工程;および(b)細胞を、細胞の培養または増殖を支持するために適切な条件下で培養する工程。
【0029】
別の局面においては、本発明は、インビトロでの細胞の培養のためのキットに関する。本発明に1つのこのような局面に従うキットは、本発明の培養培地の1つ以上、1つ以上の金属結合化合物、および/または1つ以上の遷移元素錯体を含み得る。本発明の別の局面に従うキットは、1つ以上の細胞培養培地(そのうちの1つは基本培地であり得る)、および少なくとも1つの金属結合化合物、および/または少なくとも1つの遷移元素錯体を含み得、上記の錯体は、少なくとも1つの金属結合化合物に対して錯体化された、少なくとも1つの遷移元素またはその塩もしくはイオンを含有している。本発明のこの局面に従うキットにおける使用のために好ましい遷移元素、金属結合化合物、および遷移元素錯体として、本明細書中で詳細に記載されるものが挙げられる。
【0030】
別の局面においては、本発明は、本発明の培養培地、および1つ以上の細胞(上記に記載されている細胞を含む)を含有している組成物に関する。
【0031】
本発明の他の好ましい実施態様は、本発明の以下の図面および記載、ならびに特許請求の範囲を参照して、当業者に明らかである。
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、真核生物細胞および原核生物細胞の両方の増殖のための培地処方物に対する補充物を提供する。このような補充物は、培地処方物の特定の成分を置き換え得る。好ましくは、このような補充物は、生物学的な供給源(例えば、動物供給源、植物供給源、細菌供給源など)に由来する成分を置き換え得る。好ましい局面においては、本発明の1つ以上の金属結合化合物によって置き換えられる成分として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:タンパク質、細胞抽出物または組織抽出物、血清、脂質、増殖因子など。本発明の化合物は、増殖を支持するための遷移金属を必要とする任意の細胞の培養における増殖を、支持するかまたは増強するために使用され得る。
【0033】
(定義)
以下の記載においては、細胞生物学および細胞培養培地の分野で慣習的に使用される多数の用語が、広範囲に利用される。明細書および特許請求の範囲、ならびにこのような用語により与えられる範囲の、明確でありそして一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0034】
用語「成分」は、化学的な起源であるかまたは生物学的な起源であるかどうかにはかかわらず、細胞の成長または増殖を維持または促進するために細胞培養培地中で使用され得る、任意の化合物をいう。用語「成分(component)」、「栄養素」、および「成分(ingredient)」は、互換的に使用され得、そしてこのような化合物に対して言及される全ての意味である。細胞培養培地中で使用される代表的な成分として、アミノ酸、塩、金属、糖、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質などが挙げられる。エキソビボでの細胞の培養を促進するかまたは維持する他の成分が、特定の必要性に従って当業者によって選択され得る。
【0035】
用語「細胞」は、本明細書中で使用される場合は、全ての型の真核生物細胞および原核生物細胞を含むと見られる。
【0036】
「細胞培養」または「培養」によって、人工的なインビトロの環境下での細胞の維持が意味される。しかし、用語「細胞培養」が包括的な用語であり、そして個々の細胞の培養だけではなく、組織、器官、器官システム、または全生物体の培養をも含むように使用され得ること、このために用語「組織培養」、「器官培養」、「器官系培養」、「または器官型培養」は、時折、用語「細胞培養」と互換的に使用され得るが理解されるべきである。
【0037】
「培養」によって、細胞の活性な状態または静止状態における、増殖、分化、または持続的な生存に好ましい条件下でのインビトロでの細胞の維持が意味される。この意味においては、「培養」は、「細胞培養」または上記に記載されているその同義語のいずれかと互換的に使用され得る。
【0038】
「培養容器」によって、細胞を培養するための無菌の環境を提供し得る、ガラス、プラスチック、または金属の容器が意味される。
【0039】
句「細胞培養培地」、「組織培養培地」、「培養培地」(それぞれの場合における複数の「培地」(media))、および「培地処方物」は、細胞または組織を培養するための栄養のある溶液をいい、そして互換的に使用され得る。
【0040】
本発明の金属結合化合物および/または本発明の金属結合化合物とともに形成された遷移金属錯体は、真核生物および/または原核生物の細胞、組織、器官などを培養または増殖させるための培地を含む、任意の培地とともに使用され得る。このような培地として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最少必須培地(MEM)、イーグル基本培地(BME)、RPMI−1640、Ham’s F−10、Ham’s F−12、α最少必須培地(αMEM)、グラスゴーの最少必須培地(G−MEM)、およびIscove’s改変ダルベッコ培地(IMDM)。商業的に入手可能である(例えば、Life Technologies,Inc.;Rockville,Marylandから)かまたはそうでなければ当該分野で公知である、以下を含むがこれらに限定されない他の培地が、本発明に従って同等に使用され得る:293 SFM、CD−CHO培地、VP SFM、BGJb培地、Brinster’s BMOC−3培地、細胞培養凍結培地、CMRL培地、EHAA培地、eRDF培地、Fischer’s培地、Gamborg’s B−5培地、GLUTAMAXTM培地、Grace’s昆虫細胞培地、HEPES培地、Richter’s改変MEM、IPL−41昆虫細胞培地、Leibovitz’s L−15培地、McCoy’s 5A培地、MCDB 131培地、Media 199、改変イーグル培地(MEM)、Medium NCTC−109、Schneider’s Drosophila培地、TC−100昆虫培地、Waymouth’s MB 752/1培地、William’s培地E、タンパク質を含まないハイブリドーマ培地II(PFHM II)、AIM V培地、ケラチノサイトSFM、定義された(defined)ケラチノサイトSFM、STEMPRO(登録商標)SFM、STEMPRO(登録商標)完全メチルセルロース培地、HepatoZYME−SFM、NeurobasalTM培地、Nerobasal−A培地、HibernateTMA培地、Hibernate E培地、内皮SFM、ヒト内皮SFM、ハイブリドーマSFM、PFHM II、Sf 900培地、Sf 900 II SFM、EXPRESS FIVE(登録商標)培地、CHO−S−SFM、AMINOMAX−II完全培地、AMINOMAX−C100完全培地、AMINOMAX−C100基本培地、PB−MAXTM核型分析(karyotyping)培地、KARYOMAX骨髄核型分析培地、KNOCKOUT D−MEM、およびCO2非依存性培地。本発明の実施における使用に適切な培地のさらなる例は、米国特許第5,135,866号および同第5,232,848号、ならびに国際公開番号第WO88/02774号、同第98/15614号、同第98/08934号、および欧州特許第0 282 942号(これらの全てが、本明細書中で参考として援用されている)に見出され得る。
【0041】
用語「接触させる(こと)」は、細胞が培養される培地を含む培養容器中に、インビトロで培養されるべき細胞を配置することをいう。用語「接触させる(こと)」は、培地と細胞を混合すること、培養容器中で細胞上に培地をピペッティングし、そして培養培地中に細胞を浸すことを含む。
【0042】
用語「混合する(こと)」は、細胞培養培地処方物中に成分を混合するかまたは混ぜることをいう。
【0043】
細胞培養培地は、多数の成分から構成され、そしてこれらの成分は培地によって変化する。細胞培養培地中で使用されるそれぞれの成分は、特有の生理学的および化学的な特徴を有する。成分の適合性および安定性は、水溶液中での成分の「可溶性」によって決定される。用語「可溶性」および「可溶である」は、他の成分と溶液を形成する成分の能力をいう。従って、成分は、それらが測定可能である沈殿物または検出可能な沈殿物を形成することなく溶液中に維持され得る場合には、適合性である。従って、用語「適合性の成分」は、本明細書中で使用される場合は、濃縮された処方物または1×の処方物のいずれかとして、溶液中に混合される場合に、「安定」でありそして「可溶性」である特定の細胞培地成分の組み合わせをいう。
【0044】
「適合性の成分」によって、溶液中でともに維持され得、そして「安定な」組合せを形成し得る、培地の栄養素もまた意味される。「適合性の成分」を含有している溶液は、成分が実質的に沈殿、分解(degrade)、または分解(decompose)して、培地から細胞が利用可能である成分の1つ以上の濃度が、もはや細胞の最適な増殖を支持しないレベルにまで減少するようにはならない場合には、「安定である」と言われる。成分はまた、分解が検出され得ないか、または分解が1×細胞培地処方物中の同じ成分の分解と比較した場合に、よりゆっくりとして速度で生じる場合に、「安定である」と考えられる。例えば、1×培地処方物中では、グルタミンは、カルボン酸ピロリドンおよびアンモニアに分解することが公知である。2価の陽イオンとの組合せたグルタミンは、「適合性の成分」と考えられる。なぜなら、グルタミンがほとんどまたは全く崩壊しないことが、グルタミンおよび2価の陽イオンの両方が存在している溶液または組合せにおいて経時的に検出され得るからである。米国特許第5,474,931号を参照のこと。グルタミンを安定化することに加えて、FeCl3と錯体化させたグルタミンが、トランスフェリンに代えて置き換えられ得ることが本発明者らによって実証されている。
【0045】
用語「1×処方物」は、作業濃度で細胞培養培地中に見出されるいくつかまたは全ての成分を含む、任意の水溶液をいうことが意味される。「1×処方物」は、例えば、細胞培養培地、またはその培地のための成分の任意のサブグループをいい得る。1×溶液中の成分の濃度は、インビトロで細胞を維持するかまたは培養するために使用される細胞培養処方物中で見出されるその成分の濃度とほぼ同じである。細胞のインビトロでの培養のために使用される細胞培養培地は、定義により1×処方物である。多数の成分が存在する場合には、1×処方物中のそれぞれの成分は、細胞培養培地中のそれらの成分の濃度とほぼ同等の濃度を有する。例えば、RPMI−140培養培地は、数ある成分の中でも、0.2g/LのL−アルギニン、0.05g/LのL−アスパラギン、および0.02g/LのL−アスパラギン酸を含む。これらのアミノ酸の「1×処方物」は、溶液中のこれらの成分のほぼ同じ濃度を含む。従って、「1×処方物」と言及する場合には、溶液中のそれぞれの成分が、記載される細胞培養培地中で見出される濃度と同じかまたはほぼ同じ濃度を有すると意図される。細胞培養培地の1×処方物中の成分の濃度は、当業者に周知である。例えば、Methods For Preparation of Media Supplements and Substrate For Serum−Free Animal Cell Culture、Allen R.Liss,N.Y.(1984)、Handbook of Microbiological Media、第2版、Ronald M.Atlas編、Lawrence C.Parks(1997)CRC Press,Boca Raton,FLおよびPlant Culture Media、第1巻:Formulations and Uses E.F.George,D.J.M.Puttock,およびH.J.George(1987)、Exegetics Ltd.Edington,Westbury,Wilts,BA13 4QG England(これらのそれぞれが本明細書中でその全体が参考として援用されている)を参照のこと。しかし、浸透圧および/またはpHは、特に、より少ない成分が1×処方物中に含まれる場合に、培養培地と比較して1×処方物においては異なり得る。
【0046】
「10×処方物」は、その溶液中のそれぞれの成分が、細胞培養培地中の同じ成分よりも約10倍濃縮されている溶液を言うように意味される。例えば、RPMI−1640培養培地の10×処方物は、数ある成分の中でも、2.0g/LのL−アルギニン、0.5g/LのL−アスパラギン、および0.2g/LのL−アスパラギン酸(上記の1×処方物と比較)を含み得る。「10×処方物」は、多数のさらなる成分を、1×培養培地中に見出される濃度の約10倍の濃度で、含み得る。容易に明らかであるように、「25×処方物」、「50×処方物」、「100×処方物」、「500×処方物」、および「1000×処方物」は、1×細胞培養培地と比較した場合に、それぞれ、約25倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍の濃度で成分を含む溶液を示す。この場合もまた、培地処方物および濃縮溶液の、浸透圧およびpHは、変化し得る。
【0047】
用語「微量元素」、または「微量元素部分」は、培養培地中に存在する他の部分または成分の量もしく濃度と比較して、非常に少ない量(すなわち、「微量」)または濃度でのみ細胞培養培地中に存在する部分をいう。本発明においては、これらの用語は、Ag+、Al3+、Ba2+、Cd2+、Co2+、Cr3+、Ge4+、Se4+、Br-、I-、Mn2+、F-、Si4+、V5+、Mo6+、Ni2+、Rb+、Sn2+、およびZr4+、ならびにそれらの塩を含む。例えば、以下の塩が、本発明の培養培地中の微量元素として使用され得る:AgNO3、AlCl3・6H2O、Ba(C2322、CdSO4・8H2O、CoCl2・6H2O、Cr(SO43・1H2O、GeO2、Na2SeO3、H2SeO3、KBr、KI、MnCl2・4H2O、NaF、Na2SiO3・9H2O、NaVO3、(NH46Mo724・4H2O、NiSO4・6H2O、RbCl、SnCl2、およびZrOCl2・8H2O。微量元素部分の適切な濃度は、日常的な実験のみを使用して当業者によって決定され得る。
【0048】
用語「アミノ酸」は、アミノ酸またはそれらの誘導体(例えば、アミノ酸アナログ)、ならびにそれらのD型およびL型をいう。このようなアミノ酸の例として、グリシン、L−アラニン、L−アスパラギン、L−システイン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−フェニルアラニン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−リジン、L−ロイシン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−メチオニン、L−プロリン、L−ヒドロキシプロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、およびL−バリン、N−アセチルシステインが挙げられる。
【0049】
「血清を含まない」培地は、血清(例えば、ウシ胎仔血清(FBS)、仔ウシの血清、ウマの血清、ヤギの血清、ヒトの血清など)を含有していない培地であり、そして一般的には、文字SFMによって示される。
【0050】
用語「血清を含まない培地条件」および「血清を含まない条件」は、任意の型の血清を排除する細胞培養条件をいい、そして互換的に使用され得る。
【0051】
句「タンパク質を含まない」培養培地は、タンパク質を含まない(例えば、血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)または接着因子、栄養分であるタンパク質(例えば、成長因子)、または金属イオンキャリアタンパク質(例えば、トランスフェリン、セルロプラスミン)などを含まない)培養培地をいう。句「低タンパク質」の培養培地は、本明細書中で使用される場合は、低量のタンパク質(代表的には、標準的な量のタンパク質を含有している培養培地(例えば、5〜10%の血清を補充した標準的な基本培地)中で見られる全タンパク質の量または濃度の、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、または約0.1%未満)のみを含有している培地をいう。
【0052】
「遷移元素」または「遷移金属」(これらは、互換的に使用され得る)は、外部の殻でなく内部の価電子殻(ellectron valence shell)が部分的にしか満たされておらず、その結果、その元素が所定の系列の元素において最も陽性の物質と最も弱い陽性でない物質との間での遷移的関係(transitional link)としてふるまう、元素を意味する。遷移元素は、代表的には、高い融点、高密度、高い双極子モーメントまたは磁気モーメント、複数の原子価、および安定な錯体イオンを形成する能力によって特徴付けられる。このような遷移元素の例として、以下が挙げられる:スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネシウム(Tc)、ルテニウム(rubidium)(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、およびアクチニウム(Ac)。本発明のものを含む培養培地組成物中での使用のための遷移元素としての特に興味深いのは、鉄、鉄のキレート、鉄の塩、および鉄の錯体(Fe++またはFe+++)である。
【0053】
(概要)
本発明は、一般的には、1つ以上の金属結合化合物、および/または金属結合化合物を含有している1つ以上の遷移元素錯体を含有している、細胞および組織の培養培地組成物に関する。さらに、本発明は、インビトロでの種々の細胞の培養におけるこのような培養培地組成物の使用に関する。本発明の1つの局面は、1つ以上の金属結合化合物遷移元素陽イオン(特に、生存している生物体の代謝プロセスに必要な1つ以上の多価の遷移元素陽イオン(例えば、Fe++イオンまたはFe+++イオン))を含有している、細胞および組織の培養組成物に関する。本発明によって提供される組成物は、1つ以上の非タンパク質である金属結合化合物と錯体化されている1つ以上の遷移元素イオンを含み得る。本発明はまた、細胞、特に、哺乳動物(例えば、ヒト)の細胞を含む1つ以上の動物細胞を培養するための方法に関し、この方法は、細胞を、本発明の培養培地の1つ以上と接触させる工程を包含する。本発明はまた、本発明の培養培地および1つ以上の細胞を含有している組成物、ならびに本発明の組成物または培養培地の1つ以上を含有しているキットに関する。
【0054】
本発明の化合物は、複数回の継代を通じて細胞の増殖を支持し得る。これは、細胞培養の適用における使用について先行技術によって意図される化合物が、多数の継代について細胞の増殖を維持することが実証されていないので、有意である。当業者は、数回の継代が、細胞培養培地から血清に由来するトランスフェリンのすべての痕跡を取り除くことが必要であることを認識している。
【0055】
(培養培地組成物)
任意の細胞培養培地が、本発明の方法によって調製され得る。本発明に従って調製され得る特に好ましい培地として、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、酵母細胞、または当業者に公知であるかもしくは本明細書中に開示されている任意の型の細胞の増殖を支持する任意の細胞培養培地が挙げられる。一般的には、入手可能であるかまたは当該分野で公知の任意の培地が、本発明に従って(すなわち、金属結合化合物および/またはその遷移金属錯体の添加によって)改変され得る。本発明の好ましい局面においては、金属結合化合物および/またはその遷移元素錯体は、血清、トランスフェリン、セルロプラスミンなどのような、生物学的に誘導された(例えば、動物に由来する)遷移元素キャリアを置き換える。
【0056】
本発明に従って調製され得る動物細胞培養培地の例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:DMEM、RPMI−1640、MCDB 131、MCDB 153、MDEM、IMDM、MEM、M199、McCoy’s 5A、Williams’Media E、Leibovitz’s L−15 Medium、Grace’s Insect Medium、IPL−41 Insect Medium、TC−100 Insect Medium、Schneider’s Drosophila Medium、Wolf & Quimby’s Amphibian Culture Medium、細胞特異的無血清培地(SFM)(例えば、ケラチノサイト、内皮細胞、肝細胞、メラニン細胞などの培養を支持するために設計された培地)、F10 Nutrient Mixture、およびF12 Nutrient Mixture。本発明による調製に適切な他の培地が、市販される(例えば、Life Technologies,Inc.;Rockville、Maryland およびSigma;St.Louis,Missouriから)。これらの培地の処方は当該分野で周知であり、そして例えば、GIBCO/BRL Catalogue and Reference Guide(Life Technologies,Inc.;Rockville,Maryland)、およびSigma Animal Cell Catalogue(Sigma;St.Louis,Missouri)中に見出され得る。
【0057】
本発明に従って調製され得る植物細胞培養培地の例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Anderson’s Plant Culture Media、CLC Basal Media、Gamborg’s Media、Guillard’s Marine Plant Culture Media、Provasoli’s Marine Media、Kao and Michayluk’s Media、Murashige and Skoog Media、McCown’s Woody Plant Media、Knudson Orchid Media、Lindemann Orchid Media、ならびにVacinおよびWent Media。市販されるこれらの培地、ならびに多くの他の通常使用される植物細胞培養培地についての処方は、当該分野で周知であり、そして例えば、Sigma Plant Cell Culture Catalogue(Sigma;St.Louis,Missouri)中に見出され得る。
【0058】
本発明に従って調製され得る細菌細胞培養培地の例として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Trypticase Soy Media、Brain Heart Infusion Media、Yeast Extract Media、Peptone−Yeast Extract Media、Beef Infusion Media、Thioglycollate Media、Indole−Nitrate Media、MR−VP Media、Simmons’ Citrate Media、CTA Media、Bile Esculin Media、Bordet−Gengou Media、Charcoal Yeast Extract(CYE) Media、Mannnitol−salt Media、MacConkey’s Media、Eosin−methylene blue(EMB)培地、Thayer−Martin Media、Salmonella−Shigelle Media、およびUrease Media。市販されるこれらの培地、ならびに多くの他の通常使用される細菌細胞培養培地についての処方は、当該分野で周知であり、そして例えば、DIFCO Manual(DIFCO;Norwood,Massachusetts)およびManual of Clinical Microbiology(American Society for Microbiology,Washington,DC)中に見出され得る。
【0059】
本発明に従って調製され得る真菌細胞培養培地(特に、酵母細胞培養培地)の例として、Sabouraud MediaおよびYeast Morphology Media(YMA)が挙げられるがこれらに限定されない。市販されるこれらの培地、ならびに多くの他の通常使用される酵母細胞培養培地についての処方は、当該分野で周知であり、そして例えば、DIFCO Manual(DIFCO;Norwood,Massachusetts)およびManual of Clinical Microbiology(American Society for Microbiology,Washington,DC)中に見出され得る。
【0060】
当業者が認識するように、本発明の上記の培地の任意のものが、指示薬または選択試薬(例えば、色素、抗生物質、アミノ酸、酵素、基質など)、増量剤(例えば、チャコール)、塩、ポリサッカライド、イオン、界面活性剤、安定剤などのような1つ以上のさらなる成分を含み得る。
【0061】
(金属結合化合物)
本発明の金属結合化合物は、錯化されていない形態(すなわち、遷移元素に結合していない)で培地処方物中に含まれ得る。あるいは、培地中に含まれるのに適切な遷移元素錯体は、1つ以上の遷移元素またはそのイオンと、1つ以上の金属結合化合物との混合によって、培地処方物中に含まれる前に形成され得る。培地処方物への添加の前に錯化される場合は、本発明の金属結合化合物は、好ましくは、1つ以上の遷移元素と錯化される。好ましい遷移元素として、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルビジウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、およびアクチニウム(Ac)の塩またはイオンが挙げられる。本発明の錯体、組成物、および培地中での使用に特に好ましい遷移元素は、鉄(特に、第一鉄(Fe++)または第二鉄(Fe+++)陽イオン)、亜鉛(特に、Zn++)、銅(特に、Cu++)、およびマンガン(特に、Mn++)である。このような遷移元素、金属、その塩およびイオンは、例えば、Sigma Aldrich Chemical Co.(St.Louis,MO)から市販される。
【0062】
本発明の遷移元素錯体および組成物を調製することにおいて有利に使用され得る金属結合化合物として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリオール(例えば、ソルビトールおよびデキストラン)、ヒドロキシピリジン誘導体(2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド、3−ヒドロキシ−4−ピロン、3−ヒドロキシピリド−2−オン(3−hydroxypypyrid−2−one)、3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−ヒドロキシピリド−2−オン、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−メチル−3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、ニコチン酸−N−オキシド、2−ヒドロキシ−ニコチン酸、ピリドキサールイソニコチニルヒドラゾンなどを含む;米国特許第4,665,064号、同第4,861,767号、同第4,908,371号、同第5,256,676号、同第5,624,901号、および同第5,688,815号を参照のこと)、LICAMS(1,5,10−N,N’,N’’−トリス(5−スルホ−2,3−ジヒドロキシベンゾイル)アミノメチルベンゼン)、MECAM(1,3,5−N,N’,N’’−トリス(2,3−ジヒドロキシベンゾイル)アミノメチルベンゼン)、EDTP(エチレンジアミン−N,N’−テトラメチレンホスホン酸)、トリスクシン、酸性のサッカライド(例えば、グルコン酸第一鉄)、およびグリコサミノグリカン(米国特許第5,707,604号を参照のこと)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸;米国特許第5,746,995号を参照のこと)、アシルヒドロキサメート誘導体(例えば、アセトヒドロキサム酸)(米国特許第5,430,058号、同第5,506,266号、および同第5,756,825号を参照のこと)、アミノ酸誘導体(米国特許第5,061,815号、同第5,278,329号、および同第5,430,164号を参照のこと)、デフェロキサミン、フェリオキサミン、鉄塩基性ポルフィンおよびその誘導体、DOTA−リジン、テキサフィリン、サフィリン、ポリアミノカルボン酸(米国特許第5,057,302号、同第5,227,474号、同第5,419,894号、および同第5,494,935号を参照のこと)、α−ヒドロキシカルボン酸(米国特許第5,583,243号を参照のこと)、ポリエチレンカルバメート(米国特許第5,424,057号を参照のこと)、マルトール、エチルマルトール、黒穂菌フェリクローム、IRC011(Rivkinら、Blood 90:4180−4187(1997)を参照のこと)、またはそれらの組合せ、誘導体、および錯体。本発明の遷移元素錯体を処方することにおける使用に特に好ましいものは、ポリオール(特に、ソルビトール)およびヒドロキシピリジン誘導体(特に、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド)である。以下の実施例に詳細に記載されるように、これらの化合物(特に、ソルビトールおよび2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド)は、哺乳動物細胞の培養に有用な培養培地中の鉄保有化合物としてトランスフェリンを置き換えるために成功裏に使用されている。本発明に従って使用される金属結合化合物は、市販され得る(例えば、Sigma,St.Louis,MOおよび他の周知の商業的な供給源から)か、または本明細書中に言及されている技術および特許刊行物によって提供される指針(それらの開示はその全体が本明細書中で参考として援用されている)に従って合成によって調製され得る。
【0063】
本発明の1つの局面に従って、本発明の金属結合化合物は、培地処方物に対して添加される。好ましい実施態様においては、本発明の金属結合化合物は、ほとんどの細胞型について適切である、約1μMから約500μMまでの作業濃度で、培地処方物に対して添加される。本発明の別の局面に従って、遷移元素錯体は、1つ以上の遷移元素、塩、またはイオン(好ましくは、鉄(特に、Fe++またはFe+++陽イオンまたは塩の形態で))を、1つ以上の金属結合化合物(好ましくは、1つ以上のポリオール(特に、ソルビトール))または1つ以上のヒドロキシピリジン誘導体(特に、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド)と混合することによって調製される。これらの成分は、好ましくは、1:1から1:6のモル比(鉄キャリア:Fe++またはFe+++)で混合されるが、他の適切なモル比が、当業者によって容易に決定され得る。一旦、本発明の遷移元素錯体が形成されると、それらは、本発明の培地を形成するように任意の培地に対して直接添加され得る。錯体は、目的の細胞の培養に適切な最終濃度で添加され得る。好ましい実施態様においては、ほとんどの細胞型について適切である約1μMから約500μMまでの作業濃度が、使用される。過度の実験を伴わない所定の細胞株についての最適な濃度の決定は、細胞培養の当業者の能力のうちである。あるいは、培地中に補充される錯体は、培地に対する添加の少なくとも12ヶ月前に、有利には2〜8℃で保存され得る。
【0064】
本発明の培地処方物は、1つ以上の金属結合化合物および/または遷移元素と錯化した1つ以上の金属結合化合物を含む。これらの完全培地は、以下にさらに詳細に記載されるような種々の動物細胞の培養における使用に適切である。しかし、培養される細胞によるより速い増殖および生物製剤の増強された産生を支持するために、所定の培地の栄養素の含有量をさらに高くすること、ならびに培養条件の面倒な動物細胞の培養のためにより適切な環境を提供することが、好ましくあり得る。このような富化を達成するために、動物以外の供給源に由来する1つ以上のさらなる栄養素(例えば、酵母または細菌細胞の抽出物(例えば、ペプトンを含む)または酵素消化物、植物ペプチドまたは脂質など)が、本発明の培地に添加され得る。
【0065】
培地の成分は、液体のキャリア中に溶解され得るか、または乾燥形態で維持され得る。表1に示される好ましい濃度で液体キャリア中に溶解される場合(すなわち、「1×処方物」)には、培地のpHは、約6.8〜7.5の間に調節されるべきであり、好ましくは約7.1〜7.4、そして最も好ましくは、約7.2〜7.4の間に調節されるはずである。培地の容量オスモル濃度もまた、約260〜450mOsm、好ましくは、約260〜280mOsm、そして最も好ましくは、約265〜275mOsmに調節されるべきである。液体キャリアの型および溶液中に成分を溶解させるために使用される方法は変化し、そして慣用的な実験を超えることを行うことなく、当業者によって決定され得る。代表的には、培地成分は任意の順序で添加され得る。
【0066】
本発明の1つの局面においては、培養培地または培養培地を処方するために使用される溶液もしくは組成物は、1×濃度で処方され得る。あるいは、本発明の成分を含有している溶液および培養培地は、1×培地処方物中の同じ成分の濃度よりも濃縮され得る。例えば、培地または成分は、10倍濃く濃縮され得るか(10×処方物)、20倍濃く濃縮され得るか(20×処方物)、25倍濃く濃縮され得るか(25×処方物)、50倍濃く濃縮され得るか(50×処方物)、100倍濃く濃縮され得るか(100×処方物)、500倍濃く濃縮され得るか(500×処方物)、または1000倍濃く濃縮され得る(1000×処方物)。成分がなお可溶性でありそして安定である限りは、より高度に濃縮された処方物が作製され得る。米国特許第5,474,931号を参照のこと。この特許は、高濃度で培養培地成分を可溶化させる方法に関する。
【0067】
培地成分が別々の濃縮された溶液として調製される場合は、適切な(十分な)量のそれぞれの濃縮物が、1×培地処方物を生じるように希釈剤と混合される。代表的には、使用される希釈剤は水であるが、水性の緩衝液、水性の生理食塩水溶液、または他の水溶液を含めた他の溶液が、本発明に従って使用され得る。
【0068】
本発明の培養培地は、代表的には、所望されない混入を防ぐために滅菌される。滅菌は、例えば、滅菌培養培地を産生するために、濃縮された成分の混合後の、約0.1〜0.45μmの孔の大きさの低分子量タンパク質結合膜フィルター(例えば、Millipore Bedfold、Massachusettsから市販される)を通した濾過によって、達成され得る。あるいは、成分の濃縮されたサブグループは、濾過滅菌され得、そして滅菌水溶液として保存され得る。これらの滅菌濃縮物は、次いで、濃縮された1×滅菌培地処方物を産生するように、滅菌希釈剤を用いて無菌条件下で混合され得る。オートクレーブまたは上昇させた温度に基づく他の滅菌方法は、好ましくない。なぜなら、本発明の培養培地の多数の成分が、熱不安定性であり得るからである。当業者に容易に明らかであるように、所定の成分の濃度が、開示される範囲を超えて増大させられ得るかまたは減少させられ得、そして増大させられたかまたは減少させられた濃度の効果が、慣用的な実験のみを使用して決定され得る。
【0069】
本発明の培地処方物の最適化は、Ham(Ham,R.G.、Methods for Preperation of Media、Supplements and Substrata for Serum−Free Animal Culture,Alan R.Liss,Inc.,New York,3〜21頁(1984))およびWaymouth(Waymouth,C.,Metods for Preparation of Media、Supplements and Substrata for Serum−Free Animal Culture,Alan R.Liss,Inc.,New York,23〜68頁(1984))によって記載されているアプローチを使用して行われた。培地成分の最適な最終濃度は、代表的には、経験的な研究によって、単一の成分の滴定研究において、または歴史的および現在の科学文献の解釈によってのいずれかで、同定される。動物細胞を使用する単一の成分の滴定研究においては、単一の培地成分の濃度は変更されるが、他の全ての構成成分および変数は一定のままであり、そして動物細胞の生存率、増殖、または持続的な健康状態に対する単一の成分の効果が、測定される。
【0070】
当業者に容易に明らかであるように、培養培地の成分のそれぞれが、溶液中の1つ以上の他の成分と反応し得る。従って、本発明は、最初の処方物ならびに任意の反応混合物(これらの成分が混合された後に形成される)を含む。
【0071】
本発明はまた、動物に由来する生成物(特に、動物に由来する遷移元素キャリア)を、動物以外に由来する遷移元素キャリアまたは錯体で置換するかまたは置きかえるための方法に関する。本発明のこの局面に従って置き換えられ得る、代表的な血液に由来する産物として、血清(例えば、ウシの胎児の血清および仔ウシの血清、ヒトの血清など)、血漿、トランスフェリン、セルロプラスミン、アルブミン(例えば、ウシの血清アルブミンまたはヒトの血清アルブミン)、抗体、フィブリノーゲン、第VIII因子などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明による1つ以上の錯体によって置き換えられ得る他の動物に由来する培地成分は、1つ以上の遷移元素キャリア(好ましくは、1つ以上の遷移元素(特に、鉄、亜鉛、および/またはマンガン)と錯化されている)を、動物に由来する1つ以上の遷移元素キャリアの代わりに置き換えること、そして当業者によく知られている方法(例えば、以下の実施例に記載されている方法)によって細胞増殖および培養に対するこのような置換の効果を試験することによって、当業者によって容易に決定され得る。
【0072】
従って、本発明は、細胞(特に、哺乳動物細胞)のインビトロでの培養における使用のための、遷移元素キャリアおよび/または錯体および組成物を提供する。このような錯体および組成物は、種々の細胞の培養のためにすぐ使用できる無血清培地組成物を必要としている、種々の医学的な(診断および治療を含む)、産業的な、法医学的な、および研究的な適用において試用され得る。
【0073】
本発明の遷移元素キャリアおよび/または錯体は、当業者に公知の任意の培地処方物と組合せて使用され得る。好ましい実施態様においては、遷移金属錯体は、無血清培地処方物に使用される。
【0074】
(細胞の供給源)
本発明の非タンパク質性金属結合化合物を含有している培地において培養され得る細胞は、真核生物細胞または原核生物細胞であり得る。いくつかの好ましい実施態様においては、本発明の培地中で培養され得る細胞は、真核生物起源のものであり、これは、植物、哺乳動物、鳥(鳥類)、昆虫、魚、両生類、爬虫類などから得られる細胞を含むが、これらに限定されない。本発明の培地中での培養に特に適切である哺乳動物細胞として、ヒト起源のものが挙げられる。これらは、組織サンプルに由来する初代細胞、二倍体の細胞株、形質転換された細胞、または確立された細胞株(例えば、HeLa)であり得る(これらのそれぞれが、必要に応じて罹患していてもよく、遺伝的に変更されていてもよい)。他の哺乳動物細胞(例えば、ハイブリドーマ、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、293細胞、PER−C6細胞、K562細胞、MOLT−4細胞。M1細胞、NS−1細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞、BHK細胞(BHK−21細胞を含む)、初代および/または不死化されたリンパ球、マクロファージ、樹状細胞、ケラチノサイト、肝細胞、神経細胞、腎臓細胞、線維芽細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、上皮細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、胚性幹細胞、ニューロン起源の幹細胞、肝臓起源の幹細胞、腎臓起源の幹細胞、皮膚起源の幹細胞、内皮起源の幹細胞、上皮起源の幹細胞、および中皮起源の幹細胞、ならびにそれらの誘導体もまた、本発明の化合物を含有している培地中での培養に適切である。詳細には、幹細胞およびインビトロでのウイルスの産生に使用される細胞が、本発明の培地中で培養され得る。本発明の培地中での培養に特に適切である昆虫細胞として、Spodoptera種に由来するもの(例えば、Spodoptera frugiperdaに由来するSf9またはSf21)またはTrichoplusa種に由来するもの(例えば、Trichoplusa niに由来する、HIGH FIVETMまたはMG1)が挙げられる。動物に由来するかまたは当該分野で慣用的である方法を使用してインビトロもしくはインビボで構築される、組織、器官、器官系、および生物体が、本発明の培養培地中で同様に培養され得る。
【0075】
(細胞の培養)
細胞は、本発明者によって決定される実験状態に従ってプレーティングされ得る。以下の実施例は、特定の哺乳動物細胞の培養に有用である培養条件の少なくとも1つの機能的なセットを実証する。しかし、所定の細胞型についての最適なプレーティングおよび培養条件が、慣用的な実験のみを使用して当業者によって決定され得ることが理解されるべきである。慣用的な培養条件について、本発明を使用して、細胞が、付着因子を伴わない培養容器の表面上にプレーティングされ得る。あるいは、容器は、天然の、組換えの、または合成の付着因子またはペプチドフラグメント(例えば、コラーゲンもしくはフィブロネクチン、または天然のもしくは合成のそのフラグメント)で予めコーティングされ得る。単離された細胞はまた、予め形成されたコラーゲンゲルまたは合成の生体ポリマー材料のような、天然または合成の3次元支持マトリックス中またはその上に、あるいは支持細胞層上に、播種され得る。本発明の培地を有する付着因子または支持マトリックスの使用は、血清補充の非存在下での多くの付着因子に依存する細胞の培養を増強する。
【0076】
それぞれの実験条件についての細胞の播種密度は、使用される特定の培養条件について最適化され得る。プラスチック培養容器中での慣用的な培養については、0.1〜1.0×105細胞/cm2の最初の播種密度または血清を補充した培地中での同じ細胞について慣用的に使用されるプレーティング濃度の約1.5倍が、好ましい。
【0077】
哺乳動物細胞は、代表的には、約37℃で細胞インキュベータ中で培養されるが、鳥類、線虫、および昆虫細胞の培養についての最適な温度は、代表的には、いくらか低く、そして当業者に周知である。インキュベーターの空気は、動物細胞の培養のためには加湿されるはずであり、そして空気中に約3〜10%のニ酸化炭素を含むはずである。培養培地のpHは、約7.1から7.6の範囲であるはずであり、好ましくは、約7.1〜7.4、そして最も好ましくは、約7.1〜7.3の範囲であるはずである。
【0078】
閉じられた培養物または回分培養物中の細胞は、約2〜3日ごと、または特異的な細胞の型によって必要とされる場合は、より多い頻度でもしくはより少ない頻度で、完全な培地の交換を受けるはずである(すなわち、使用した培地が新しい培地で置き換えられる)。還流培養物中の(例えば、バイオリアクターまたはファーメンター中の)細胞は、持続的に循環している主成分の上に新しい培地を受容させられる。
【0079】
細胞はまた、振盪装置、攪拌タンク、エアーリフト、または還流培養物中の懸濁物中で培養され得る。いくつかの細胞型(例えば、ハイブリドーマ、リンパ球および脊髄起源の細胞)は、懸濁培養物中で増殖することが形質的に可能である。接着培養物中で最初に培養され得る他の細胞(例えば、BHK、HeLa 293、CHO)は、懸濁培養物中で増殖するように誘導され得る。
【0080】
(細胞培養組成物)
本発明の細胞培養培地はまた、本発明の培地および細胞を含有している細胞培養組成物を産生するために使用され得る。これらの細胞は、真核生物起源であり得るかまたは原核生物起源であり得る。このような組成物中で好ましく使用される細胞として、植物、哺乳動物、鳥(鳥類)、昆虫、または魚から得られる細胞が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物細胞は、ヒト起源のものを含むこのような組成物中での使用に特に適切である。これは、組織サンプル、二倍体の細胞株、形質転換された細胞、または確立された細胞株(例えば、HeLa)に由来する初代細胞であり得る(これらのそれぞれが、必要に応じて疾患のものであり得るかまたは遺伝的に変更され得る)。他の哺乳動物細胞(例えば、ハイブリドーマ、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、293細胞、PER−C6細胞、K562細胞、MOLT−4細胞、M1細胞、NS−1細胞、COS−7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC−5細胞、WI−38細胞、SP2/0細胞、BHK細胞(BHK−21細胞を含む)、初代および/または固定されたリンパ球、マクロファージ、樹状細胞、角質細胞、肝細胞、神経細胞、腎臓細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、上皮細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、胚性幹細胞、神経幹細胞、肝性幹細胞、腎性幹細胞、皮膚の幹細胞、内皮の幹細胞、上皮の幹細胞、および中皮幹細胞、ならびにそれらの誘導体)もまた、本発明の細胞培養組成物を形成することにおける使用に適切である。このような組成物を形成することにおける使用に特に適切な昆虫細胞として、Spodoptera種(例えば、Spodoptera frugiperdaに由来するSf9またはSf21)またはTrichoplusa種(例えば、Trichoplusa niに由来する、HIGH FIVETMまたはMG1)に由来するものがが挙げられる。動物に由来するかまたは当該分野で慣例的である方法を使用してインビトロもしくはインビボで構築され得る組織、器官、器官システム、および生物体が、本発明の細胞培養組成物を形成するために同様に使用され得る。これらの細胞培養組成物は、培地中で簡単に使用できる細胞の培養を必要としている種々の医薬品(診断用および治療用を含む)、産業用、法医学的、および研究の適用において使用され得る。
【0081】
(キット)
本発明はまた、多数の医薬品(診断用および治療用を含む)、産業用、法医学的、および研究の適用のための、本明細書中に記載されているそのような細胞を含む種々の細胞の培養における使用のためのキットを提供する。本発明のこの局面に従うキットは、1つ以上の容器(例えば、バイアル、チューブ、アンプル、瓶、袋、エンベロープなど)を閉じられた制限の中に有しているキャリア(例えば、箱、カートン、チューブなど)を含み得る。本発明のキットは、1つ以上の培地または培地成分、1つ以上の金属結合化合物、1つ以上の金属結合化合物を含有している1つ以上の遷移元素錯体、1つ以上の本発明の組成物、および1つ以上の細胞およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、1つ以上の成分を含み得る。本発明のこの局面に従うと、1つ以上の成分が同じ容器中に含まれ得るか、または細胞の培養における使用の前に混合される別々の容器中に存在し得る。キットはまた、例えば、1つ以上のサイトカイン、1つ以上の細胞外マトリックス成分、1つ以上の抗体、1つ以上のホルモン(ペプチドまたはステロイド)、1つ以上の酵素、1つ以上の増殖サプリメント、1つ以上の緩衝液もしくは緩衝化塩などを含む、細胞の培養における使用に適切な1つ以上のさらなる成分を含み得る。本発明のキットはまた、本発明の方法を実行するための1つ以上の説明書またはプロトコールを含み得る。
【0082】
本明細書中に記載されている方法および適用に対する他の適切な改変および適応が、容易に明らかでありそして本発明またはその任意の実施態様範囲を逸脱することなく行われ得ることが、関連分野の当業者によって理解される。本発明は詳細にここで記載されているが、同じものが、説明の目的のために本明細書中に含まれ、そして本発明を限定するようには意図されない、以下の実施例を参照してより明らかに理解される。
【0083】
(実施例1)
293細胞(ATCC、CRL 1573)の半コンフルエントな接着培養物を、懸濁培養物に容易に適合させる。細胞を、最初にトリプシン−EDTA(0.05%のトリプシン、0.53mMのNa4EDTA)の溶液を用いて分離させ、次いでトリプシンを阻害するために、10%のFBSを補充した従来の培地中に再懸濁する。再懸濁した細胞を、5分間200×gで遠心分離する。細胞のペレットを、293 SFM(Life Tschnologies,Rockville,MDから入手可能)(その処方は、本明細書中で参考として具体的に援用されている、第WO98/08934号に記載されている)中に再懸濁する。あるいは、細胞を、Versene(Na4EDTA、0.53mM)を用いて分離させ得、そして293 SFM中に再懸濁し得る。
【0084】
懸濁培養物への転換の後の293細胞の最初の播種密度は、1×106細胞/mLである。細胞を、8%のCO2−92%の空気に平衡化した37℃のインキュベーター中で150rpmでの回転式振盪装置上で振盪させる。細胞が1.5×106細胞/mLの密度に達した時に、細胞を293 SFMを用いて3.0×105細胞/mLの密度になるように稀釈する。293細胞が凝集する傾向にあるので、細胞を約45秒間激しくボルテックスして、継代および計数時に優先的に単一の細胞懸濁物を得るようにする。懸濁培養物中での数回の継代の後、最大の達成可能な密度を決定し得る。本明細書中に記載する293細胞は、懸濁培養物中で約3〜4×106細胞/mLにまで増殖し得る。
【0085】
細胞の増殖を支持する金属結合化合物の能力を、トランスフェリンまたは金属結合化合物を含まない、293 SFM(Life Technologies,Rockville,MD)中で維持した293細胞を使用して評価した。5μg/mLのヒトのホロ−トランスフェリンを含有しているストック培養物を、293 SFM中で調製した。金属結合化合物の評価のために、293細胞を、20mLの最終容量中の2×105細胞/mLの最初の生存可能な播種密度で、125mLの振盪フラスコ中で確立させた。全ての培養物を、8%のCO2を含有している加湿空気中で37℃で維持した。トランスフェリンのキャリーオーバー効果を排除するために、細胞を、全部で3回の継代について4日の間隔で継代培養した。それぞれの継代培養時に、細胞を、2×105細胞/mLの密度で播種した。ポジティブなコントロール培養物は5μg/mLのヒトのホロ−トランスフェリンを含んだが、ネガティブなコントロール培養物は、トランスフェリンまたは金属結合化合物のいずれをも含まずに確立させた。金属結合化合物のストックを、ddH2O中で0.1M〜0.2Mで調製し、そして必要な場合には5NのNaOHまたはHClを使用して可溶化した。鉄錯体を、1:1(v/v)で混合した0.2Mの金属結合化合物および鉄ストックを使用して確立させ、そして22℃で5〜10分間インキュベートした。金属結合化合物を含有している全ての溶液を、0.22μmのMillex−GVフィルターを使用して、トランスフェリンおよび血清を含まない培地への添加の前に濾過滅菌した。
【0086】
ほとんどの場合においては、金属結合化合物を、単独でかまたは、25μM、50μM、および100μMの塩化第二鉄もしくは硫酸第一鉄と組み合わせてかのいずれかで評価した。組合せて使用した場合は、金属結合化合物を、鉄イオンと等モル濃度で使用した。表中の値は、3回目の継代で決定した二連の培養物についてのコントロール増殖の平均の割合を示す。補充しなかった(すなわち、トランスフェリンまたは金属結合化合物のいずれをも含まない)培地は、3回の継代にわたって細胞の増殖を支持することができなかった。
【0087】
種々の金属結合化合物の存在下での増殖した293細胞の結果を、表1に示す。錯体化されていない培地処方物に対して添加した場合には、金属結合化合物を単独で列挙し、転移金属との錯体として添加した場合には、転移金属の供給源を金属結合化合物とともに列挙する。
【0088】
【表1】
Figure 0004972261
(実施例2)
金属結合化合物の、トランスフェリンの非存在下で細胞の増殖を支持する能力を、CD CHO培地(Life Technologies,Rockville,MD(その処方は、第WO98/08934号に記載されている))中で維持したCHO細胞を使用して評価した。5μg/mLのヒトのホロ−トランスフェリンを含有しているストック培溶物を、CD CHO培地中で調製した。金属結合化合物の評価のために、CHO細胞を、20mLの最終容量中の1×105細胞/mLの生存可能な最初の播種密度で125mLの振盪フラスコ中で確立させた。全ての培養物を、8%のCO2を含有している加湿空気中で37℃で維持した。トランスフェリンのキャリーオーバー効果を排除するために、細胞を、全部で3回の継代について4日の間隔で継代培養した。ポジティブなコントロール培養物は5μg/mLのヒトのホロ−トランスフェリンを含んだが、ネガティブなコントロール培養物は、トランスフェリンまたは金属結合化合物のいずれをも含まずに確立させた。金属結合化合物のストックを、ddH2O中で0.1M〜0.2Mで調製し、そして必要な場合には5NのNaOHまたはHClを使用して可溶化した。鉄錯体を、1:1(v/v)で混合した0.2Mの金属結合化合物および鉄ストックを使用して確立させ、そして22℃で5〜10分間インキュベートした。金属結合化合物を含有している全ての溶液を、0.22μmのMillex−GVフィルターを使用して、トランスフェリンおよび血清を含まない培地への添加の前に濾過滅菌した。
【0089】
ほとんどの場合においては、金属結合化合物を、単独でかまたは、25μM、50μM、および100μMの塩化第二鉄もしくは硫酸第一鉄と組み合わせてかのいずれかで評価した。表中の値は、3回目の継代で決定した二連の培養物についてのコントロール増殖の平均の割合を示す。補充しなかった(すなわち、トランスフェリンまたは金属結合化合物のいずれをも含まない)培地は、3回の継代にわたって細胞の増殖を支持することができなかった。
【0090】
種々の金属結合化合物のCHO細胞の培養においてトランスフェリンを置き換える能力を決定した。結果を表2に示す。錯体化されていない培地処方物に対して添加した場合には、金属結合化合物を単独で列挙し、転移金属ととの錯体として添加した場合には、転移金属の供給源を金属結合化合物とともに列挙する。
【0091】
【表2】
Figure 0004972261
(実施例3)
鉄金属結合化合物のトランスフェリンの非存在下で細胞増殖を支持する能力を、CD Hybridoma培地(Life Technologies,Rockville,MD)中で維持されたSp2/0細胞を使用して、評価した。5μg/mLのヒトのホロ−トランスフェリンを含有しているストック溶液を、CD Hybridoma培地中で調製した。金属結合化合物の評価のために、Sp2/0細胞を、20mLの最終容量で、75cm2の組織培養フラスコを使用して休止培養物中で、0.5×105細胞/mLの最初の生存可能な播種密度で確立させた。全ての培養物を、8%のCO2を含有している加湿空気中で37℃で維持した。トランスフェリンのキャリーオーバー効果を排除するために、細胞を、全部で3回の継代について4日の間隔で同じ播種密度で継代培養した。ポジティブなコントロール培養物は5μg/mLのヒトのホロ−トランスフェリンを含んだが、ネガティブなコントロール培養物は、トランスフェリンまたは金属結合化合物のいずれをも含まずに確立させた。金属結合化合物のストックを、ddH2O中で0.1M〜0.2Mで調製し、そして必要な場合には5NのNaOHまたはHClを使用して可溶化した。鉄錯体を、1:1(v/v)で混合した0.2Mの金属結合化合物および鉄ストックを使用して確立させ、そして22℃で5〜10分間インキュベートした。金属結合化合物を含有している全ての溶液を、0.22μmのMillex−GVフィルターを使用して、トランスフェリンおよび血清を含まない培地への添加の前に濾過滅菌した。
【0092】
ほとんどの場合においては、金属結合化合物を、単独でかまたは、25μM、50μM、および100μMの塩化第二鉄もしくは硫酸第一鉄と組み合わせて緒いずれかで評価した。表中の値は、3回目の継代で決定した二連の培養物についてのコントロール増殖の平均の割合を示す。補充しなかった(すなわち、トランスフェリンまたは金属結合化合物のいずれをも含まない)培地は、3回の継代にわたって細胞の増殖を支持することができなかった。
【0093】
種々の金属結合化合物のSp2/0細胞の培養においてトランスフェリンを置き換える能力を決定し、そして結果を表3に示す。錯体化されていない培地処方物に対して添加した場合には、金属結合化合物を単独で列挙し、転移金属ととの錯体として添加した場合には、転移金属の供給源を金属結合化合物とともに列挙する。
【0094】
【表3】
Figure 0004972261
本発明は、理解の明確さの目的のために説明および例示の方法によっていくらか詳細に本発明において記載されているが、同じものが、広範でありそして同等の範囲の条件、処方物、および他のパラメーターの中で本発明を改変または変更することによって、本発明の範囲または任意のその特異的な実施態様に影響を与えることなく行われ得ること、ならびにそのような改変または変更が、添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図されることが、当業者に明らかである。
【0095】
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、本発明が属する当業者のレベルの指標であり、そしてそれらは、それらのそれぞれの刊行物、特許、または特許出願が、詳細にそして個々の参考として援用されているかのように同じ程度で、本明細書中で参考として援用される。

Claims (38)

  1. 少なくとも1つの金属結合化合物または少なくとも1つの遷移元素錯体を含有している動物細胞培養培地であって、
    該金属結合化合物が、2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物、3−ヒドロキシ−4−ピロン、3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−ヒドロキシピリド−2−オン、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−メチル−3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、ピリドキサールイソニコチニルヒドラゾン、ニコチン酸−N−酸化物、および2−ヒドロキシニコチン酸からなる群より選択されるヒドロキシピリジン誘導体であり、
    該錯体が、少なくとも1つの金属結合化合物に対して錯体化された少なくとも1つの遷移元素またはその塩もしくはイオンを含有しており、ここで、該培地が、インビトロでの動物細胞の培養を支持し得る、動物細胞培養培地。
  2. 前記遷移元素が、以下からなる群より選択される、請求項1に記載の培地:スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マグネシウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルビジウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、およびアクチニウム、またはそれらの塩もしくはイオン。
  3. 前記遷移元素が鉄、または鉄の塩もしくはイオンである、請求項1に記載の培地。
  4. 前記ヒドロキシピリジン誘導体が、2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物である、請求項1に記載の培地。
  5. 前記遷移元素のイオンが、第一鉄イオンまたは第二鉄イオンである、請求項3に記載の培地。
  6. 前記遷移元素の塩がFeCl3である、請求項3に記載の培地。
  7. 前記遷移元素錯体がソルビトールーFeCl3である、請求項1に記載の培地。
  8. 前記遷移元素錯体が2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物である、請求項1に記載の培地。
  9. 前記培地が、以下からなる成分の群より選択される1つ以上の成分をさらに含有している、請求項1に記載の動物細胞培養培地:少なくとも1つのアミノ酸、少なくとも1つのビタミン、少なくとも1つの無機塩、少なくとも1つの有機塩、少なくとも1つの微量金属、少なくとも1つのヌクレオチド、少なくとも1つの緩衝化塩、少なくとも1つの糖、少なくとも1つの脂質、および少なくとも1つのホルモン。
  10. 前記細胞が、293細胞、PER−C6細胞、CHO細胞、COS細胞およびSp2/0細胞からなる群より選択される、請求項に記載の動物細胞培養培地。
  11. 前記培地が血清を含まない、請求項1に記載の動物細胞培養培地。
  12. 前記培地が規定された培地である、請求項1に記載の動物細胞培養培地。
  13. 前記遷移元素が鉄またはその塩もしくはイオンである、請求項11に記載の培地。
  14. 前記培地がトランスフェリンを含まない、請求項1に記載の培地。
  15. 前記培地が動物に由来する金属キャリアを含まない、請求項1に記載の培地。
  16. 動物細胞培養培地を、少なくとも1つの金属結合化合物または少なくとも1つの遷移元素錯体と組合せることによって得られる動物細胞培養培地であって、
    該金属結合化合物が、2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物、3−ヒドロキシ−4−ピロン、3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−ヒドロキシピリド−2−オン、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−メチル−3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、ピリドキサールイソニコチニルヒドラゾン、ニコチン酸−N−酸化物、および2−ヒドロキシニコチン酸からなる群より選択されるヒドロキシピリジン誘導体であり、
    該錯体が、少なくとも1つの金属結合化合物に対して錯体化された少なくとも1つの遷移元素またはその塩もしくはイオンを含有しており、ここで、該培地が、インビトロでの動物細胞の培養を支持し得る、動物細胞培養培地。
  17. 前記遷移元素が、以下からなる群より選択される、請求項16に記載の培地:スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マグネシウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルビジウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、およびアクチニウム、またはそれらの塩もしくはイオン。
  18. 前記遷移元素が鉄、または鉄の塩もしくはイオンである、請求項16に記載の培地。
  19. 前記ヒドロキシピリジン誘導体が、2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物である、請求項16に記載の培地。
  20. 前記遷移元素のイオンが、第一鉄イオンまたは第二鉄イオンである、請求項16に記載の培地。
  21. 前記遷移元素の塩がFeCl3である、請求項20に記載の培地。
  22. 前記遷移元素錯体がソルビトール−FeCl3である、請求項16に記載の培地。
  23. 前記遷移元素錯体が2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物である、請求項16に記載の培地。
  24. 以下の工程を包含する、動物細胞を培養する方法: (a)該細胞を、金属結合化合物または金属結合化合物を含有している遷移金属錯体を含有している動物細胞培養培地と接触させる工程であって、前記金属結合化合物が、2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物、3−ヒドロキシ−4−ピロン、3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−ヒドロキシピリド−2−オン、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−メチル−3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、ピリドキサールイソニコチニルヒドラゾン、ニコチン酸−N−酸化物、および2−ヒドロキシニコチン酸からなる群より選択されるヒドロキシピリジン誘導体である工程、;並びに(b)該細胞の培養を支持するために適切な条件下で該細胞を培養する工程。
  25. 前記動物細胞がヒトの細胞である、請求項24に記載の方法。
  26. 前記細胞が正常な細胞である、請求項24に記載の方法。
  27. 前記細胞が異常な細胞である、請求項24に記載の方法。
  28. 前記異常な細胞が、形質転換された細胞、確立された細胞、または疾患組織サンプルに由来する細胞である、請求項27に記載の方法。
  29. 以下からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含有している、インビトロでの動物細胞の培養のための、キット:
    1つ以上の動物細胞培養培地または培地成分、
    2−ヒドロキシピリジン−N−酸化物、3−ヒドロキシ−4−ピロン、3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−ヒドロキシピリド−2−オン、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリド−4−オン、1−メチル−3−ヒドロキシピリド−2−オン、3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、ピリドキサールイソニコチニルヒドラゾン、ニコチン酸−N−酸化物、および2−ヒドロキシニコチン酸からなる群より選択される1つ以上の金属結合化合物、
    1つ以上の遷移元素、
    1つ以上の遷移元素錯体、および1つ以上の動物細胞。
  30. 前記遷移元素が以下からなる群より選択される、請求項29に記載のキット:スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マグネシウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルビジウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、およびアクチニウム、またはそれらの塩もしくはイオン。
  31. 前記遷移元素が鉄、または鉄の塩もしくはイオンである、請求項29に記載のキット。
  32. 請求項1に記載の培養培地および少なくとも1つの動物細胞を含有している、動物細胞培養組成物。
  33. 前記哺乳動物細胞がヒトの細胞である、請求項32に記載の動物細胞培養組成物。
  34. 前記細胞が正常な細胞である、請求項32に記載の動物細胞培養組成物。
  35. 前記細胞が異常な細胞である、請求項32に記載の動物細胞培養組成物。
  36. 前記異常な細胞が、形質転換された細胞、確立された細胞、または疾患組織サンプルに由来する細胞である、請求項35に記載の動物細胞培養組成物。
  37. 前記培地が1×培地処方物である、請求項1に記載の培地。
  38. 前記培地が濃縮された培地処方物である、請求項1に記載の培地。
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