以下、本発明の一実施の形態について説明する。
なお、以下において、賃貸不動産の所有者から委託された不動産管理業務を営む業者を不動産管理会社、賃借料の延滞保証等の各種サービスを不動産管理会社に提供する業者を不動産賃貸保証会社、賃貸不動産の入居者に住替支援サービスを提供する業者を不動産住替支援会社と呼ぶ。
まず、本実施の形態に係る不動産賃貸管理業務支援システムの全体構成について説明する。
図1に、本実施の形態に係る不動産賃貸管理業務支援システムの概略構成を示す。
図示するように、この不動産賃貸管理業務支援システムには、インターネット等のネットワーク50を介して相互に接続された複数の情報処理装置10,20,30,40A,...,40Zが含まれる。
これらの情報処理装置10,20,30,40A,...,40Zのうち、少なくとも1台の情報処理装置10は、不動産賃貸保証会社が保守する賃貸保証業務支援装置であり、少なくとも他の1台の情報処理装置20は、不動産住替支援会社が保守する住替支援装置である。その他の情報処理装置30,40A,...,40Zには、第三者機関が保有するデータベースサーバ30、および、不動産賃貸保証会社と代理店契約を締結した不動産管理会社が保守する会員端末40A,...,40Z、等が含まれている。なお、これらの情報処理装置10,20,30,40A,...,40Zは、いずれも、CPUがハードディスク等の外部記憶装置からメモリにプログラムをロードして実行可能な通常のコンピュータとしてのハードウエア構成(外部記憶装置、メモリ、CPU、キーボード等の入力装置、ディスプレイおよびプリンタ等の出力装置、ネットワークインターフェース、等)を備えている。
このようなシステム構成において、賃貸保証業務支援装置10は、賃貸保証引受け可否を判断するための材料として賃貸不動産の入居者の信用力を定期的に格付する。また、住替支援装置20は、この格付け結果(ランク)を利用して、より現状にあった不動産への住み替えを賃貸不動産の入居者に提案する。以下、不動産賃貸保証業務支援装置10および住替支援装置20のそれぞれについて説明する。
賃貸保証業務支援装置10は、インストールされた所定のプログラム(不動産賃貸保証業務支援プログラム等)の実行によって、不動産賃貸保証業務支援サービスを提供するための機能構成を実現する。説明の便宜上、ここでは、不動産賃貸保証業務支援サービスのうち、特に与信審査支援サービスに関連する機能構成のみを抽出する。すなわち、賃貸保証業務支援装置10は、与信審査支援サービスの提供に際して参照されるデータテーブルが格納されたデータベース記憶部101と、与信審査支援サービス提供処理を実行する格付処理部102と、ネットワーク50を介した通信を制御するデータ送受信部103と、を実現する。なお、このような機能構成を実現する不動産賃貸管理業務支援プログラムは、光ディスク等の記憶媒体からハードディスクにインストールされたものであってもよいし、ネットワーク50を介してハードディスクにインストールされたものであってもよい。
ここで、データベース記憶部101内には、与信審査支援サービスの提供に必要な各種データが登録された以下のデータテーブル1011〜1016が格納されている。これらのデータテーブル1011〜1016のデータ構造を、図2(A)〜(D)および図3(A)に示す。
図2(A)に示すように、入居管理データテーブル1011には、入居者(または入居希望者)ごとに、入居者(または入居希望者)に付与された顧客ID10111、入居申込みの際等に提供された申告情報10112、賃貸料支払に関する信用力の判断材料として用いられる信用力評価情報10113、入居中の賃貸物件(または入居を希望する賃貸物件:以下、入居希望物件と呼ぶ)の物件ID10114、および賃貸保証引受けの可否を表す保証可否情報10115が登録される。ここで、申告情報10112は、例えば、氏名、生年月日、連絡先(住所、電話番号等)、職業情報(勤務先、勤務地、勤務歴等)等の本人特定情報の他、税込み年収額、家族構成等を含んでおり、これらの情報に変更が生じたときには、適宜なタイミングで最新の状態に更新される。また、信用力評価情報10113は、例えば、現在からさかのぼって所定の期間内(例えば過去1年間)における賃貸料支払状況の格付ランク(支払状況格付ランク)、現在の賃貸料支払能力の格付ランク(支払能力格付ランク)、申告情報10112から判断される安定性の格付ランク(安定性格付ランク)、等を含んでいる。
図2(B)に示すように、生活費予測データテーブル1016には、家族構成別に、家族構成パターン10161、および1年間の消費支出の予測額(生活費予測額)10162が登録されている。
図2(C)に示すように、支払能力格付基準テーブル1013には、賃貸料支払能力の優良度を示すランクごとに、ランク記号10131、および賃貸料の支払にあてられる予測金額の範囲(賃貸料支払余力範囲)10132が登録されている。この支払能力格付基準テーブル1013によれば、例えば、賃貸料の支払にあてられる予測金額の上限がXXX1円以上と予測される場合、賃貸料支払能力は最上位「A」にランク付けされる。
図示していないが、滞納管理データテーブル1012には、入居者ごとに、入居者の顧客ID、各月に支払うべき賃貸料、および賃貸料支払履歴情報が登録されている。ここで、賃貸料支払履歴情報には、現在からさかのぼって所定の期間内における各月の賃貸料の支払状況(賃貸料支払の有無、賃貸料滞納の有無)を表す情報が登録されている。なお、新規の入居希望者が後述の初期与信において賃貸保証引受け可能と判断され、所定の手続きを完了した場合、その入居希望者について、入居管理データテーブル1011のID10111と共通のIDを含む新たなレコードが滞納管理データテーブル1012に追加され、以後、各月の賃貸料支払の有無に応じて賃貸料支払履歴情報が更新される。
図2(D)に示すように、支払状況格付基準データテーブル1015には、賃貸料支払状況の優良度合いを示すランクごとに、ランク記号10151、および現在からさかのぼって所定の期間内において発生した解決済み賃貸料滞納回数の範囲10152が登録されている。この支払状況格付基準データテーブル1015によれば、例えば、過去所定の期間内に賃貸料の滞納がない場合(賃貸料滞納回数:0)には、賃貸料支払状況は最上位「A」とランク付けされ、過去所定の期間内に解決した賃貸料滞納が1回である場合(賃貸料滞納回数:1回)には、賃貸料支払状況は第2位「B」とランク付けされる。また、未解決の賃貸料滞納が1回でもあれば、賃貸料支払状況の優良度は最下位「Z」にランク付けされる。
図3(A)に示すように、賃貸物件管理データテーブル1014には、不動産管理会社が取り扱う賃貸不動産物件ごとに、賃貸不動産物件に割り当てられた物件ID10141、不動産管理会社に付与された会員ID10142、賃貸料10143、入居のための初期費用概算額10144、賃貸不動産物件に関するデータ(賃貸物件情報)10145、および入居者の有無を表す契約状況情報10146、が登録されている。ここで用いられる賃貸物件情報10145には、所在地住所、建物情報(間取り、面積等)等が含まれる。
なお、ここで示したデータテーブル1011〜1016の格納情報は一例であり、必要に応じて、いずれかのデータテーブル1011〜1016に他の情報が格納されていてもよい。例えば、交通機関に関する情報(最寄り駅、最寄り駅からの交通手段および所要時間)、他の建物情報(戸建およびマンションの別、新築および中古の別、方位等)、設備条件(駐車場の有無等)等、不動産賃貸の意思決定に際して判断材料として用いられる他の情報が賃貸物件情報10145に含まれていてもよい。
一方、住替支援装置20は、インストールされた所定のプログラム(不動産住替支援プログラム等)の実行によって、住替支援サービスを提供するための機能構成を実現する。すなわち、住替支援装置20は、住替支援サービスの提供に際して参照されるデータテーブルが格納されたデータベース記憶部201、住替支援サービス提供処理を実行する住替支援処理部202、およびネットワーク50を介した通信を制御するデータ送受信部203、を実現する。住替支援処理部202には、入居者の信用力に応じた住替物件候補を選定する住替物件候補選定部2021と、入居者の信用力に応じた販売物件候補を選定する販売物件候補選定部2022と、が含まれる。なお、このような機能構成を実現する不動産住替支援プログラムは、光ディスク等の記憶媒体からハードディスクにインストールされたものであってもよいし、ネットワーク50を介してハードディスクにインストールされたものであってもよい。
ここで、データベース記憶部201内には、住替支援サービスの提供に必要な各種データが登録された以下のデータテーブル2011〜2013が格納されている。これらのデータテーブル2011〜2013のデータ構造を、図3(B)および図4(A)、(B)に示す。
図3(B)に示すように、間取り予測データテーブル2011には、家族構成別に、家族構成パターン20111、および住居の間取りの予測構成(間取り予測構成)20112が登録されている。
図4(A)に示すように、販売物件管理テーブル2012には、不動産管理会社が売買を仲介する販売不動産物件(販売物件)ごとに、販売物件に割り当てられた物件ID20121、不動産管理会社の会員ID20122、および販売物件に関するデータ(販売物件情報)20123、が登録される。ここで用いる販売物件情報20123には、例えば、販売価格、所在地住所、間取り、面積等が含まれている。
図4(B)に示すように、賃貸物件管理テーブル2013には、不動産管理会社が取り扱う賃貸不動産物件(賃貸物件)ごとに、賃貸物件に割り当てられた物件ID20131、不動産管理会社の会員ID20132、賃貸料20133、入居のための初期費用概算額20134、賃貸不動産物件に関するデータ(賃貸物件情報)20135、入居者の有無を表す契約状況情報20136、および賃貸料の高低を段階的に表した格付けランク(賃貸料ランク)20137が登録されている。ここで用いられる賃貸物件情報20135には、例えば、所在地住所、建物情報(間取り、面積等)等が含まれる。
なお、ここで示したデータテーブル2011〜2013の格納情報は一例であり、必要に応じて、いずれかのデータテーブル2011〜2013に他の情報が格納されていてもよい。例えば、交通機関に関する情報(最寄り駅、最寄り駅からの交通手段および所要時間)、他の建物情報(戸建およびマンションの別、新築および中古の別、方位等)、設備条件(駐車場の有無等)等、不動産賃貸または購入の意思決定に際して判断材料として用いられる他の情報が賃貸物件情報20135または販売物件情報20123に含まれていてもよい。
つぎに、不動産賃貸保証業務支援装置10が実行する与信審査支援サービス提供処理について説明する。
ここでは、賃貸不動産の入居希望者について行われる初期与信、各賃貸不動産の入居者について定期的に行われる途上与信、および、賃貸料を滞納した入居者について行われる回収与信における各審査処理を個別に説明する。
(1−1)初期与信
図5(A)は、与信審査支援サービス提供処理のうち、初期与信審査に関連する処理のフローチャートである。
賃貸保証業務支援装置10は、いずれかの会員端末40A〜40Zから、新規の入居希望者が入居申込みの際に提供した定性情報(以下、申告情報と呼ぶ)および入居希望物件の物件IDを含む登録リクエストを受け付けると、以下の処理を実行する。
まず、格付処理部102は、この登録リクエストに応じて入居管理データテーブル1011に新規レコード(以下、初期与信対象レコードと呼ぶ)を追加し、この初期与信対象レコードに、新規の顧客ID10111、申告情報10112および入居希望物件の物件ID10114を登録する。また、格付処理部102は、申告情報から本人特定情報を取り出し、この本人特定情報を含む信用情報取得リクエストを、データ送受信部103を介して第三者機関データベース30に送信する。
格付処理部102は、本人特定情報によって特定される入居希望者の信用情報を取得すると(S40)、この信用情報と申告情報10112とに基づき以下の格付け処理(S41)を実行する。
格付処理部102は、予め定めたスコアリングモデルを用いて申告情報をスコアリングし、ランク記号とスコア合計値との対応表にしたがって申告情報の格付ランクを決定する。そして、このランク値を、初期与信対象レコードの信用力評価情報10113の安定性格付ランクとして、入居管理データテーブル1011に登録する(S41A)。
また、格付処理部102は、信用情報に含まれる借入金額を、申告情報に含まれる税込み年収額から差し引くことによって可処分所得予測額を算出する(S41B)。そして、申告情報に含まれる家族構成と合致する家族構成パターン10161に対応付けられた生活費予測額10162を生活費予測データテーブル1016から読み出し、可処分所得予測額と所定の係数との積から生活費予測額10162を差し引くことによって賃貸料支払余力総額を算出する(S41C)。さらに、この賃貸料支払余力総額が含まれる賃貸料支払余力範囲10132に対応付けられたランク記号10131を支払能力格付基準テーブル1013から読み出し、このランク記号10131を、初期与信対象レコードの信用力評価情報10113の支払能力格付ランクとして、入居管理データテーブル1011に登録する(S41D)。
その後、格付処理部102は、入居希望物件の物件IDに対応付けられた賃貸料10143を賃貸物件管理テーブル1014から読み出し、この賃貸料10143から求まる年間賃貸料Tと賃貸料支払余力総額Kとを比較する。その結果、賃貸料支払余力総額Kと年間賃貸料Tとの差分額(K−T)が所定値以上である場合には原則賃貸保証引受け可と判断し、それ以外の場合には原則賃貸保証引受け不可と判断する。そして、この判断結果を、賃貸料支払余力総額Kと年間賃貸料Tとの差分額(K−T)、支払能力格付ランク、安定性格付ランク、信用情報、および申告情報とともにディスプレイに出力する(S42)。
担当者は、これらを判断材料として参照しながらいわゆる初期与信審査を行い、賃貸保証引受けの可否を総合的に判断する。例えば、原則賃貸保証引受け可と判断された場合であっても、担当者は、表示中の信用情報に異動情報等が含まれることを確認すれば、賃貸保証引受け不可と最終判断することもある。また、原則賃貸保証引受け不可と判断された場合であっても、担当者は、表示中の賃貸料支払余力総額Kと年間賃貸料Tとの差分額(K−T)が所定の許容範囲以内(すなわち、賃貸料支払余力総額K≒年間賃貸料T)であり、表示中の安定性格付ランクが所定ランク以上であることを確認すれば、賃貸保証引受け可と最終判断することもある。
担当者が、賃貸保証引受け可否の最終判断結果を、初期与信対象レコードの保証可否情報10115として入居管理データテーブル1011に登録し、その後、所定手続の完了を確認してから、入居希望者の顧客IDおよび入居希望物件の物件IDを含む入居者登録指示を賃貸保証業務支援装置10に入力すると、格付処理部102は、この入居者登録指示に応じて、賃貸物件管理テーブル1014の登録レコードのうち、入居希望物件の物件IDに合致する物件ID10141を含むレコードの契約状況情報10146を「入居済」に更新するとともに、このレコードの賃貸料10143を読み出し、この賃貸料10143と入居希望者の顧客IDとを含む新規レコードを滞納管理データテーブル1012に追加する。以後、この入居希望者(入居者)の賃貸料支払い状況は、滞納管理データテーブル1012により管理される。
(1−2)途上与信
図5(B)は、与信審査支援サービス提供処理のうち、途上与信審査に関連する処理のフローチャートである。
賃貸保証業務支援装置10は、定期的に、各入居者について以下の処理を実行する。なお、ここでは、入居管理データテーブル1011の申告情報10112を最新の状態に保つためのメンテナンス作業は事前に終了していることとする。
格付処理部102は、入居管理データテーブル1011からいずれかの1つのレコードを途上与信対象レコードとして選択し(S50)、この途上与信対象レコードから最新の申告情報10112を読み出す。そして、この申告情報10112から本人特定情報を取り出し、この本人特定情報を含む信用情報取得リクエストを第三者機関データベース30に送信する。
格付処理部102は、本人特定情報に合致する最新の信用情報を第三者機関データベース30から取得すると(S51)、この最新の信用情報と申告情報10112とに基づき以下の格付け処理(S52)を実行する。
格付処理部102は、予め定めたスコアリングモデルを用いて最新の申告情報をスコアリングし、ランク記号とスコア合計値との対応表にしたがって最新の申告情報の格付ランクを決定する。そして、途上与信対象レコードの信用力評価情報10113に含まれる安定性格付ランクを、このランク値で更新する(S52A)。
また、格付処理部102は、最新の信用情報に含まれる借入金額を、最新の申告情報に含まれる税込み年収額から差し引くことによって最新の可処分所得予測額を算出する(S52B)。そして、最新の申告情報に含まれる家族構成と合致する家族構成パターン10161に対応付けられた生活費予測額10162を生活費予測データテーブル1016から読み出し、最新の可処分所得予測額と所定の係数との積から生活費予測額10162を差し引くことによって現在の賃貸料支払余力総額を算出する(S52C)。さらに、この現在の賃貸料支払余力総額が含まれる賃貸料支払余力範囲10132に対応付けられたランク記号10131を支払能力格付基準テーブル1013から読み出し、途上与信対象レコードの信用力評価情報10113に含まれる支払能力格付ランクを、このランク記号10131で更新する(S52D)。
その後、格付処理部102は、途上与信対象レコードの顧客ID10111に合致する顧客IDに対応付けられた賃貸料支払履歴情報を滞納管理データテーブル1012から読み出し、この賃貸料支払履歴情報に基づき、現在からさかのぼって所定の期間内に発生した解決済み賃貸料滞納回数を集計する。そして、この集計値を含む範囲10152に対応付けられたランク記号10151を支払状況格付基準データテーブル1015から読み出し、途上与信対象レコードの信用力評価情報10113に含まれる支払状況格付ランクを、このランク記号10151で更新する(S52E)。
その後、格付処理部102は、途上与信対象レコードの物件ID10114に合致する物件ID10141に対応付けられた賃貸料10143を賃貸物件管理テーブル1014から読み出し、この賃貸料10143から求まる年間賃貸料Tと現在の賃貸料支払余力総額Kとを比較する。その結果、現在の賃貸料支払余力総額Kと年間賃貸料Tとの差分額(K−T)が所定値以上であり、かつ、支払状況格付ランクが最上位「A」を示している場合には原則賃貸保証引受け維持可と判断し、それ以外の場合には原則賃貸保証引受け維持不可と判断する。そして、この判断結果を、現在の賃貸料支払余力総額Kと年間賃貸料Tとの差分額(K−T)、支払能力格付ランク、支払状況格付ランク、安定性格付ランク、最新の信用情報、および最新の申告情報とともにディスプレイに出力する(S53)。
担当者は、これらを判断材料として参照しながらいわゆる途上与信審査を行い、賃貸保証引受け維持の可否を総合的に判断する。例えば、原則賃貸保証引受け維持可と判断された場合であっても、担当者は、最新の信用情報に異動情報等が含まれることを確認すれば、賃貸保証引受け維持不可と最終判断することもある。また、原則賃貸保証引受け維持不可と判断された場合であっても、担当者は、表示中の賃貸料支払余力総額Kと年間賃貸料Tとの差分額(K−T)が所定の許容範囲以内(すなわち、賃貸料支払余力総額K≒年間賃貸料T)であり、表示中の安定性格付ランクが所定ランク以上であれば、賃貸保証引受け維持可と判断することもある。
担当者が、賃貸保証引受け可否の最終判断結果で途上与信対象レコードの保証可否情報10115を更新すると、格付処理部102は、入居管理データテーブル1011からすべてのレコードを途上与信対象レコードとして選択したか否かを判断する(S54)。その結果、入居管理データテーブル1011に未選択レコードが存在していれば(S54でNO)、格付処理部102は、それらの未選択レコードのなかからいずれかのレコードを新たな途上与信対象レコードとして選択して(S55)、S51以降の処理を繰り返す。一方、賃貸人管理データテーブル1011に未選択レコードが存在していなければ(S54でYES)、格付処理部102は、入居管理データテーブル1011のすべてのレコードを含む定期住替支援リクエストを住替支援装置20に送信する。
(1−3)回収与信
図6(A)は、与信審査支援サービス提供処理のうち、回収与信審査に関連する処理のフローチャートである。
いずれかの入居者(以下、滞納入居者と呼ぶ)が賃貸料を滞納した場合、賃貸保証業務支援装置10は、以下の処理を実行する。
格付処理部102は、顧客IDを含む申告情報表示指示を担当者から受け付けると、滞納入居者の顧客IDに対応付けられた申告情報10112を入居管理データテーブル1011から読み出し、この申告情報10112をディスプレイに表示する。担当者は、滞納入居者からヒアリングを行いながら、滞納入居者の現状と表示中の申告情報10112との相違を確認する。このとき、滞納入居者の現状と表示中の申告情報10112とに相違が発生していれば、担当者は、滞納入居者の現状に対応する新たなデータで、入居管理データテーブル1011の申告情報10112を更新する(S60)。
その後、担当者が、滞納入居者の顧客IDを含む再与信指示を賃貸保証業務支援装置10に入力すると、格付処理部102は、この指示に応じて、滞納入居者の顧客ID10111を含むレコード(回収与信対象レコード)の申告情報10112を入居管理データテーブル1011から読み出す。そして、この申告情報10112から本人特定情報を取り出し、この本人特定情報を含む信用情報取得リクエストを第三者機関データベース30に送信する。
格付処理部102は、本人特定情報に合致する最新の信用情報を第三者機関データベース30から取得すると(S61)、この最新の信用情報と最新の申告情報10112とに基づき以下の格付処理(S62)を実行する。
格付処理部102は、予め定めたスコアリングモデルを用いて最新の申告情報をスコアリングし、ランク記号とスコア合計値との対応表にしたがって最新の申告情報の格付ランクを決定する。そして、途上与信対象レコードの信用力評価情報10113に含まれる安定性格付ランクを、このランク値で更新する(S62A)。
また、格付処理部102は、最新の信用情報に含まれる借入金額を、最新の申告情報に含まれる税込み年収額から差し引くことによって最新の可処分所得予測額を算出する(S62B)。そして、最新の申告情報に含まれる家族構成と合致する家族構成パターン10161に対応付けられた生活費予測額10162を生活費予測データテーブル1016から読み出し、最新の可処分所得予測額と所定の係数との積から生活費予測額10162を差し引くことによって現在の賃貸料支払余力総額を算出する(S62C)。さらに、この現在の賃貸料支払余力総額を含む賃貸料支払余力範囲10132に対応付けられたランク記号10131を支払能力格付基準テーブル1013から読み出し、回収与信対象レコードの信用力評価情報10113に含まれる支払能力格付ランクを、このランク記号10131で更新する(S62D)。
その後、格付処理部102は、回収与信対象レコードの顧客ID10111に合致する顧客IDに対応付けられた賃貸料支払履歴情報を滞納管理データテーブル1012から読み出し、この賃貸料支払履歴情報に基づき、現在からさかのぼって所定の期間内に発生した解決済み賃貸料滞納回数を集計する。そして、この集計値を含む範囲10152に対応付けられたランク記号10151を支払状況格付基準データテーブル1015から読み出し、回収与信対象レコードの信用力評価情報10113に含まれる支払状況格付ランクを、このランク記号10151で更新する(S62E)。
その後、格付処理部102は、回収与信対象レコードの物件ID10114に合致する物件ID10141に対応付けられた賃貸料10143を賃貸物件管理テーブル1014から読み出し、この賃貸料10143から求まる年間賃貸料Tと現在の賃貸料支払余力総額Kとを比較する。その結果、現在の賃貸料支払余力総額Kと年間賃貸料Tとの差分(K−T)が所定値以上であり、支払状況格付ランクが所定ランク以上である場合には、原則賃貸保証引受け維持可と判断し、それ以外の場合には原則賃貸保証引受け維持不可と判断する。そして、この判断結果を、現在の賃貸料支払余力総額Kと年間賃貸料Tとの差分額(K−T)、支払能力格付ランク、支払状況格付ランク、安定性格付ランク、最新の信用情報、および最新の申告情報とともにディスプレイに出力する(S63)。
担当者は、これらを判断材料として参照しながらいわゆる回収与信審査を行い、途上与信の場合と同様、賃貸保証引受け維持の可否を総合的に判断する。
担当者が、賃貸保証引受け可否の最終判断結果で回収与信対象レコードの保証可否情報10115を更新すると、格付処理部102は、入居管理データテーブル1011から回収与信対象レコードを読み出し、この回収与信対象レコードの保証可否情報10115が賃貸保証引き受け不可を示していれば、この回収与信対象レコードを含む回収後住替支援リクエストを住替支援装置20に送信する。
つぎに、住替支援装置20が実行する住替支援サービス提供について説明する。
ここでは、途上与信に連動して行われる住替支援サービス、および回収与信に連動して行われる住替支援サービスを個別に説明する。
(2−1)途上与信に連動して行われる住替支援サービス
図6(B)は、途上与信に連動して行われる住替支援サービス提供処理のフローチャートである。
住替支援装置20は、賃貸保証業務支援装置10から定期住替支援リクエストを受け付けると、以下の処理を実行する。
まず、販売物件選定部2022は、定期住替支援リクエストに含まれるレコードから、いずれか1つのレコードを住替支援対象レコードとして選択し(S70)、この住替支援対象レコードが既定の購入提案条件を満たしているか否か判断する(S71)。ここでは、例えば、申告情報10112の職業情報より定まる勤続年数が1年以上であり、かつ、信用力評価情報10113に含まれるすべての格付ランクが最上位「A」を示していることを購入提案条件とする。
その結果、住替支援対象レコードが購入提案条件を満たしていれば(S71でYES)、販売物件選定部2022は、住替支援対象レコードの申告情報10112に含まれる税込み年収および年齢に基づき、最長ローンを組んだ場合における借入限度額を算出するとともに、住替支援対象レコードの申告情報10112の家族構成に合致する家族構成パターン20111に対応付けられた間取り予測構成20112を、提案間取りとして間取り予測データテーブル2011から読み出す(S72)。そして、提案間取りに合致する間取りおよび借入限度額以下の販売価格を含む販売物件情報20123を販売物件管理テーブル2012で検索する。該当する販売物件情報20123が存在していた場合、販売物件選定部2022は、それらの販売物件情報20123を含むレコードを販売物件管理テーブル2012から読み出し、そのレコードのリストを、販売物件候補リストとして住替支援対象レコードに対応付けて保存する(S73)。
一方、住替支援対象レコードが既定の購入提案条件を満たしていなければ(S71でNO)、販売物件選定部2022は、住替支援対象レコードを住替物件選定部2021に渡す。これを受けて、住替物件選定部2021は、住替支援対象レコードが既定の住替提案条件を満たしているか否かを判断する(S74)。具体的には、住替支援対象レコードの物件ID10114と合致する物件ID20131に対応付けられた賃貸料ランク20137を賃貸物件管理データテーブル2013から読み出し、この賃貸料ランク20137が住替支援対象レコードの信用力評価情報10113の支払能力格付ランクより上位に相当すれば、住替提案条件を満たすと判断する。
その結果、住替支援対象レコードが住替提案条件を満たしていれば(S74でYES)、住替物件選定部2021は、住替支援対象レコードの信用力評価情報10113の支払能力格付ランク以下に相当する賃貸料ランク20137と、入居者無しを表す契約状況情報20136とを含むレコードを賃貸物件管理データテーブル2013から検索する(S75)。
その結果、該当するレコードが存在していれば、住替物件選定部2021は、さらに、それらのレコードから、提案間取り以上の広さの間取りが賃貸物件情報20135に含まれているレコードを絞り込む(S76)。この絞り込みにより1つ以上のレコードが得られれば、それらのレコードのリストを、住替物件候補リストとして住替支援対象レコードに対応付けて保存する。一方、この絞り込みによりレコードが得られなければ、絞り込み前のレコードのリストを、住替物件候補リストとして住替支援対象レコードに対応付けて保存する(S77)。このとき、住替物件候補リストは、賃貸物件情報20135の間取りが広い順、または、住替支援対象レコードの申告情報10112の住所または勤務地から賃貸物件情報20135の所在地住所までの距離が近い順にソートされていることが好ましい。
その後、すべてのレコードを住替支援対象レコードとして選択したか否かを判断する(S78)。
その結果、未選択レコードが存在していれば(S78でNO)、それらの未選択レコードのなかからいずれかのレコードを新たな住替支援対象レコードとして選択して(S79)、S71以降の処理を繰り返す。
一方、未選択レコードが存在していなければ(S78でYES)、以上の処理により得られた販売物件候補リストまたは住替物件候補リストを住替支援対象レコードに対応付けて、出力装置から出力する。担当者は、これを参照することにより、信用力評価情報10113に含まれるすべての格付ランクが最上位「A」を示す入居者に対しては、その入居者の家族構成に適した間取りの物件の購入を提案し、現在の賃貸料支払余力総額が賃貸料を下回っている可能性のある入居者に対しては、途上与信の段階(すなわち、賃貸料の滞納発生前の段階)で、電話、ダイレクトメール等により、現在の賃貸料支払余力総額で居住可能な賃貸物件を、家族構成に適した間取り、勤務先または現住所からの距離等の条件ごとに紹介し、そこへの住替を提案する。このとき、担当者は、住替物件候補リストの各レコードに含まれる初期費用概算額10144を、住替物件候補へ入居するための初期費用見積りとして提供できる。
(2−2)回収与信に連動して行われる住替支援サービス
住替支援装置20は、賃貸保証業務支援装置10から回収後住替支援リクエストを受け付けると、以下に示すように、S74〜S77と同様な処理を実行する。
まず、住替物件選定部2021は、途上与信に連動して行われる住替支援サービスの場合と同様、回収後住替支援リクエストに含まれる住替支援対象レコードが既定の住替提案条件を満たしているか否かを判断する(S74)。
その結果、住替支援対象レコードが住替提案条件を満たしていれば(S74でYES)、住替物件選定部2021は、住替支援対象レコードの信用力評価情報10113の支払能力格付ランク以下に相当する賃貸料ランク20137と、入居者無しを表す契約状況情報20136とを含むレコードを賃貸物件管理データテーブル2013から検索する(S75)。さらに、住替支援対象レコードの申告情報10112の家族構成に合致する家族構成パターン20111に対応付けられた間取り予測構成20112を、提案間取りとして間取り予測データテーブル2011から読み出し、S75で検索したレコードから、提案間取り以上の広さの間取りが賃貸物件情報20135に含まれているレコードを絞り込む(S76)。この絞り込みにより1つ以上のレコードが得られれば、それらのレコードのリストを、住替物件候補リストとして住替支援対象レコードに対応付けて保存する。一方、この絞り込みによりレコードが得られなければ、絞り込み前のレコードのリストを、住替物件候補リストとして住替支援対象レコードに対応付けて保存する(S77)。
その後、住替物件選定部2021は、住替物件候補リストを住替支援対象レコードに対応付けて、出力装置から出力する。担当者は、住替物件候補リストと住替支援対象レコードとの対応情報を参照することにより、滞納入居者に対して、例えば、電話、ダイレクトメール等を利用して、現在の賃貸料支払余力総額で居住可能な別の賃貸物件への住替を提案する。
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
本実施の形態によれば、住替支援装置20が、途上与信の判断材料とされた格付け(ランク)を利用して、入居者の現在の賃貸料支払余力総額で居住可能な住替物件候補リストを出力するので、担当者は、この住替物件候補リストの内容を参照することによって、途上与信の段階(すなわち賃貸料の滞納発生前の段階)で、現在の賃貸料支払余力総額が賃貸料を下回っている可能性のある入居者に対して、現在の賃貸料支払余力総額で居住可能な別の賃貸物件への住替を提案することができる。これにより、賃貸料の滞納を未然に防止することができる。
また、住替物件候補リストには、各住替物件候補の初期費用概算額が含まれているので、担当者は、例えば入居者からの求め等に応じて、住替物件候補へ入居するための初期費用概算額の見積りを迅速に提供することができる。このため、入居者は、初期費用を含めた予算立てを行った上で、いずれかの住替物件候補へ住替をするか否かを判断することができる。
また、現在の賃貸料支払余力総額で居住可能な賃貸物件のなかに、入居者の家族構成に適した間取りの賃貸物件が存在していれば、それらが優先的に住替物件候補リストとしてリストアップされるので、担当者は、入居者の家族構成に適した間取りの別の賃貸物件を優先的に紹介することができる。住替物件候補リストが、間取りの広い順、または、現住所または勤務地からの距離が近い順にソートして出力されるようにすれば、担当者は、そのような賃貸物件を優先的に紹介することができる。これにより、入居者は、現在の支払能力の範囲内でより有利な条件の賃貸物件を知ることができる。
また、住替支援装置20は、信用力評価情報10113に含まれるすべての格付ランクが最上位「A」を示す入居者(信用度の高い入居者)について、その入居者の家族構成に適した間取りの販売物件候補リストを出力するので、担当者は、電話、ダイレクトメール等を利用して、それらの入居者に対して、その入居者の家族構成に適した間取りの物件の購入を提案することができる。これにより、担当者は、信用度の高い入居者を見込み客として獲得することができる。
また、住替支援装置20は、賃貸料の滞納が発生した場合、回収与信の判断材料とされた格付け(ランク)を利用して、入居者の現在の賃貸料支払余力総額で居住可能な住替物件候補リストを出力するので、担当者は、この住替物件候補リストの内容を参照することによって、賃貸料支払が困難となった滞納入居者に対して、より安価な賃貸物件への住替を提案することができる。これにより、不動産の明け渡しをめぐるトラブルの発生を防止することができる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において数々の変形が可能である。
例えば、上記の実施の形態では、滞納入居者に対してより安価な賃貸物件への住替を提案しているが、この提案に付随して例えば自治体の助成制度の利用を提案するようにしてもよい。このようにする場合には、自治体の助成制度またはNPOの支援活動の内容が登録されたデータテーブルを住替支援装置20の管理データベースに準備しておき、住替物件選定部2021が、住替支援対象レコードの申告情報の住所に対応する自治体の助成制度またはNPOの支援活動の内容を読み出し、これを住替物件候補リストとともに表示するようにすればよい。これにより、担当者は、滞納入居者に対して、よい安価な住替物件への住替とともに助成制度の利用やNPOへの相談を提案することができる。
また、上記の実施の形態において、図1に示す賃貸保証業務支援装置10および住替支援装置20は、同じコンピュータ上に構築されるものでもよい。あるいは、複数のコンピュータがネットワークで相互接続されたコンピュータシステム上に構築されるものでもよい。
また、上記の実施の形態では、不動産管理業務を営む業者、賃借料の延滞保証等の各種サービスを提供する業者、および住替支援サービスを提供する業者を、それぞれ別の会社として説明したが、当然のことながら、本発明はこれに限定されない。これらの業務・サービスを同一の者が行ってもよいし、あるいは、これらの業務・サービスのそれぞれを複数の者の連携により行うようにしてもよい。