JP4970398B2 - 耕耘爪 - Google Patents

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Description

本発明は、ロータリ耕耘装置の爪軸に装着して使用される耕耘爪に関するものである。
従来、多数の耕耘爪が装着された爪軸を回転させることにより、土壌を耕起し、反転し、砕土するロータリ耕耘装置があり、このロータリ耕耘装置に採用される耕耘爪として、爪軸に取り付けられる基部と、この基部から延びる直刃部と、この直刃部から延びる湾曲部とを有し、直刃部から湾曲部にかけて回転方向と逆向きに湾曲されていると共に前記湾曲部は基部の一側面から他側面に向かう側に湾曲状に曲げられており、直刃部から湾曲部にかけて回転方向前側に刃部を有する、なた爪と称される耕耘爪がある(特許文献1参照)。
特許第3098188号公報
従来の耕耘爪は低振動・低馬力が重視された設計とされており、反転性はそれほど重視されていなかった。
また、従来、稲わらは焼却処理が行われているが、住宅街に近い圃場では、稲わらの焼却によって生じる煙が問題となって、稲わらの焼却処理ができなくなってきている。
また、稲わらを回収するにしても、手間隙がかかり実現性がない。
一方、秋に圃場を耕す秋起こし作業が行われるが、この秋起こし作業は、圃場の膨軟化、土中への空気の挿入、害虫の駆除等から必ず行わなければならない作業であり、この秋起こし作業のときに、稲わらを土中に埋め込んでしまえば、自然と稲わらが腐ってたい肥化されるので、焼却や回収の必要がない。
そこで、耕耘爪の設計にあたり反転性を重視した設計をしてやればよいが、ただ単に、反転性をよくすると、振動・消費馬力が大きくなるという問題が生じる。
そこで、本発明は、耕耘爪の爪形状を追求し、振動・消費馬力の増大を抑えつつ反転性を向上させることができる耕耘爪を提供することを目的とする。
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、爪軸に取り付けられ、この爪軸を回転させて該爪軸の軸芯を中心として回転させることで土壌を耕耘する耕耘爪であって、
爪軸に取り付けられる基部と、この基部から延びる直刃部と、この直刃部から延びる湾曲部とを有し、直刃部から湾曲部にかけて回転方向と逆向きに湾曲されていると共に前記湾曲部は基部の一側面から他側面側へと湾曲状に曲げられており、直刃部から湾曲部にかけて回転方向前側に刃部を有する耕耘爪において、
基部の一側面から湾曲部の湾曲方向先端部までの爪軸に沿った距離である爪高さを略70mmとし、
湾曲部の曲げ半径である先曲げRを略80mmとし、
刃部の刃縁の先端部と爪軸軸芯とを結ぶ線に直交し且つ前記先端部から前記回転方向と逆側に延びる線と、湾曲部の折れ曲がり開始線と平行で且つ前記先端部から耕耘爪の峰側に延びる線とのなす角度である切削角を略37°としたことを特徴とする。
本発明によれば、振動・消費馬力の増大を抑えつつ反転性を向上させることができる耕耘爪を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1は、例えば、トラクタ装着型のロータリ耕耘装置の爪軸2に取り付けられて、この爪軸2を回転させて該爪軸2の軸芯Oを中心として図1の矢示A方向に回転させることで土壌を耕耘(耕起し、反転し、砕土)する耕耘爪(なた爪、なた刃)である。
この耕耘爪1は、板材によって形成されており、爪軸2に取り付けられる基部3と、この基部3から延びる直刃部4と、この直刃部4から延びる湾曲部5とを有し、直刃部4から湾曲部5にかけて耕耘爪1の回転方向Aと逆向きに湾曲されている。
基部3には、耕耘爪1を爪軸2に固定されたホルダにボルト等によって固定するためのボルト挿通孔3aが板厚方向に貫通形成されている。
また、直刃部4の板厚方向は、基部3の板厚方向と略一致しており、湾曲部5は基部3の板厚方向の一側面から他側面側へと(基部3及び直刃部4の一側方に)湾曲状に曲げられており、直刃部4から湾曲部5にかけて回転方向A前側に刃部6を有する。
図中、線Bは直刃部4と湾曲部5との境界、すなわち湾曲部5の折れ曲がり開始線を示している。
また、前記湾曲部5の内側(湾曲側)のすくい面7は、直刃部4から湾曲部5の湾曲方向先端部11側に至る大部分で曲面状であるが、湾曲方向先端部11側の一部で平坦状の平面部7aとされている。
耕耘爪1は、基部3の板厚方向が爪軸2の軸芯方向と一致する状態で爪軸2に取り付けられる。
この耕耘爪1を、トラクタに装着されたロータリ耕耘装置の爪軸2に装着して、トラクタを走行させながら該爪軸2を回転駆動させると、耕耘爪1は爪軸2の軸芯Oを中心として、図1の矢示A方向に回転し、直刃部4から土中に突入して土を進行方向に切断すると共に湾曲部5が土中に突入して土を左右方向(爪軸2の軸芯方向)所定幅で切削して耕起し、この耕起された土は、湾曲部5のすくい面7で抱きかかえられ、湾曲部5が土中から抜け出た後に、進行方向後方側に放てき反転される。
本実施形態の耕耘爪1は、爪高さ8が略70mmとされ、先曲げR9が略80mmとされ、切削角10が略37°とされている。
爪高さ8は、基部3の一側面(湾曲部の湾曲側とは反対側の側面)から湾曲部5の湾曲方向先端部11までの爪軸2の軸芯O方向に沿った距離である。
また、先曲げR9は湾曲部5の曲げ半径(曲率半径)である。
また、切削角10は、刃部6の刃縁6aの先端部Cと爪軸軸芯Oとを結ぶ線Dに直交し且つ刃部6の刃縁6aの先端部Cから耕耘爪1の回転方向Aと逆側に延びる線Eと、湾曲部5の折れ曲がり開始線Bと平行で且つ刃部6の刃縁6aの先端部Cから耕耘爪1の峰12側(刃が形成されていない側)に延びる線Fとのなす角度である。
前記構成の耕耘爪1にあっては、爪高さ8を略70mmとし、先曲げR9を略80mmとし、切削角10を略37°とすることにより、従来の耕耘爪1と比較して、振動・消費馬力の増大を抑えつつ耕土の反転性を向上させることができた。
したがって、本実施形態の耕耘爪1を用いて秋起こしを行うことにより、稲わらが土中に埋め込まれ、春の田植え前までに稲わらが腐る。これにより、わらの焼却処理の必要がなく、また回収の必要もなくなる。また、秋起こしのときに、同時に稲わらの処理をするので、作業の追加も必要としない。また、耕耘爪1の厚み・幅は変更しないので、基部3の寸法は従来と変更がなく、したがって爪軸2を変更する必要もなく、本実施形態の耕耘爪1は交換用爪としても使える。
次に、従来の耕耘爪1から改良を施して本発明の耕耘爪1に至った理由を、下記の表1を参照して述べる。
耕耘爪1の諸元のうち爪の性能を決める上で重要な要素は、爪高さ8、先曲げR9、切削角10であるので、これらの諸元の寸法を変更することにより、爪の反転性能等にどう影響を与えるかの試験を、耕耘爪1を爪軸2に取り付けて実際に土壌を耕耘する実地試験で行った。
表1は、試験を行った50A及び改1〜7の耕耘爪1の爪高さ8、先曲げR9、切削角10の寸法と、これら50A及び改1〜7の耕耘爪1についてA〜Iの異なる地域で試験を行った結果の稲わらの埋込み評価点とを、比較する耕耘爪1ごとに4つの表に分けて示している。
また、A,B,D,F〜Iの各地域において、1,2は、各地域内での異なる試験場所(第1地区、第2地区)を示している。
また、表1のNo2〜3の各表における優地域数の数値は、同じ試験場所での評価点の比較において、耕耘爪1が優良評価点(評価点の数値が高いもの)を受けた試験場所の合計数である。
表1において、50Aは従来の耕耘爪1を示し、改1〜7は、従来の耕耘爪1に対して爪高さ8、先曲げR9又は切削角10の寸法を変更した耕耘爪1を示しており、本発明の耕耘爪1は改7とされている。
また、表1の各表において、爪高さ8、先曲げR9の単位はミリメートルであり、切削角10の単位は度である。
50A及び改1〜7の耕耘爪1についてのA〜I地域での稲わら埋込み評価点は、現行の耕耘爪1を100としたときの指数で表しており、数値が大きいほど稲わらが良好に埋め込まれる(反転性がよい)ことを示している。
Figure 0004970398
耕耘爪1の反転性を向上させるには、反転面積を増やしてやればよく、そのためには、爪高さ8を増やして反転のための面積(すくい面7の面積)を増やすことが最も有効である。
次に、先曲げR9を小さくして、すくい面7(反転面積部分)の曲面部分を少なくして平面部を増やすのがよい。
そこで、先ず、表1のNo1に示すように、すくい面7(反転面)を増やすように爪高さ8を現行より20mm増やした改1の耕耘爪1と、爪高さ8を現行より20mm増やすと共に先曲げR9を現行より20mm大きくした改2の耕耘爪1とを比較した。
爪高さ8を増やすということは、湾曲部5を耕耘爪1の長手方向に延長させる(材料を増やす)ことである。
試験結果から、改2の耕耘爪1に比べて改1の耕耘爪1の方が反転性はよかった。
これは、先曲げR9は小さい方が反転性を向上させるのによいということを表している。
ただし、爪高さ8をあまり増やすと耕耘爪1を爪軸2に取り付けたときに、耕耘爪1同士の間隔が接近することとなり、耕耘爪1間で土を抱き込んでしまう惧れがある。これを避けるためには爪軸2に取り付けることができる耕耘爪1の本数を減らすことが考えられるが、そうすると砕土性が落ちることとなるので、爪高さ8を増やし且つ爪軸2に取り付けることができる耕耘爪1の本数を減らさないようにするために、現行よりも爪高さ8の増加量は20mmより低くすることとした。
次に、表1のNo2に示すように、爪高さ8を現行より10mm増やした75mmとすると共に切削角10を現行より2°大きくした改3の耕耘爪1と、爪高さ8を75mmとすると共に切削角10を現行より3°小さくした改4の耕耘爪1とを比較した。
試験の結果から、改3の耕耘爪1に比べ切削角10の小さい改4の耕耘爪1の方が反転性が良好なのに加え振動が非常に少なかった。
そこで、改4をベースとして、爪高さ8、先曲げR9、切削角10の寸法を変更することとした。
表1のNo3に示すように、先曲げR9を改4よりも20mm小さい80mmとすると共にこれに伴って切削角10が40°となる改5の耕耘爪1と、先曲げR9を80mmとすると共に切削角10を改4よりも4°小さい37°とした改6の耕耘爪1とを比較した。
試験の結果、改5、改6ともに改4よりも反転性はよかった。
これは、前述したとおり、先曲げR9は小さい方が反転性に有利であることを示している。
また、切削角10については、大きい方が反転性がよいということが優地域数の値で表れているが、切削角10が大きいと高馬力で振動が大きい。振動が大きいのは避けたいので、改5より切削角10の小さい改6を採った。
なお、表1のNo3において、稲わら埋込み評価点の合計値では改6の耕耘爪1の値が高いが、これはG地域の2での試験結果の値が異常値であったためであると思われる。
したがって、改6の耕耘爪1は、反転性が良好でありながら、馬力が落ちず、振動も少ない。ただし、現行から3つの諸元を変更したことで、現行よりも省馬力、振動の面では不利になっている。
そこで、表1のNo4に示すように、爪高さ8を改6の耕耘爪1よりも5mm小さくした改7の耕耘爪1を作った。
試験結果から、改7の耕耘爪1は、改6の耕耘爪1に対して反転性能をあまり損なわず、馬力、振動を改善することができたと言えるものであった。
以上のことから、改7の耕耘爪1が、従来の耕耘爪1と比較して、振動・消費馬力の増大を抑えつつ耕土の反転性を向上させることができるものといえる。
なお、表1のNo3のG地域の1における改5の耕耘爪1の稲わら埋込み評価点、No4のG地域の1及びI地域の2における改7の耕耘爪1の稲わら埋込み評価点は現行のものよりも低いが、これはそれぞれの耕耘爪1の試験場所の状態が悪かったためであることが考えられる。
(a)は耕耘爪の側面図、(b)は直刃部の中途部から湾曲部の先端部までの底面図である。
符号の説明
2 爪軸
3 基部
4 直刃部
5 湾曲部
6 刃部
6a 刃縁
8 爪高さ
9 先曲げR
10 切削角
11 湾曲方向先端部
A 回転方向
B 湾曲部の折れ曲がり開始線
C 刃部の刃縁先端部
D 刃部の刃縁先端部と爪軸軸芯とを結ぶ線
E 刃部の刃縁先端部と爪軸軸芯とを結ぶ線に直交し且つ刃部の刃縁先端 部から回転方向と逆側に延びる線
F 湾曲部の折れ曲がり開始線と平行で且つ刃部の刃縁先端部から耕耘爪 の峰側に延びる線
O 爪軸の軸芯

Claims (1)

  1. 爪軸(2)に取り付けられ、この爪軸(2)を回転させて該爪軸(2)の軸芯(O)を中心として回転させることで土壌を耕耘する耕耘爪であって、
    爪軸(2)に取り付けられる基部(3)と、この基部(3)から延びる直刃部(4)と、この直刃部(4)から延びる湾曲部(5)とを有し、直刃部(4)から湾曲部(5)にかけて回転方向(A)と逆向きに湾曲されていると共に前記湾曲部(5)は基部(3)の一側面から他側面側へと湾曲状に曲げられており、直刃部(4)から湾曲部(5)にかけて回転方向(A)前側に刃部(6)を有する耕耘爪において、
    基部(3)の一側面から湾曲部(5)の湾曲方向先端部(11)までの爪軸(2)に沿った距離である爪高さ(8)を略70mmとし、
    湾曲部(5)の曲げ半径である先曲げR(9)を略80mmとし、
    刃部(6)の刃縁(6a)の先端部(C)と爪軸軸芯(O)とを結ぶ線(D)に直交し且つ前記先端部(C)から前記回転方向(A)と逆側に延びる線(E)と、湾曲部(5)の折れ曲がり開始線(B)と平行で且つ前記先端部(C)から耕耘爪の峰(12)側に延びる線(F)とのなす角度である切削角(10)を略37°としたことを特徴とする耕耘爪。
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