JP4969902B2 - トランスファー装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ケース内と外部とを連通するブリーザ孔を備えたトランスファー装置に係り、詳しくは、ケース内にブリーザ孔を有するブリーザ室と分配歯車機構を収納する収納空間とを隔離する隔壁部材に連通孔を備えたトランスファー装置に関する。
一般に、四輪駆動タイプの車輌に搭載され、トランスミッションを介した駆動回転を前後輪に分配するトランスファー装置においては、ケース内部とケース外部とを連通するブリーザ孔を備え、ケース内外の圧力差をなくすことにより、トランスファー装置の保護を図っている(例えば特許文献1参照)。このようなトランスファー装置にあって、入力軸の回転を駆動車輪に伝達するための歯車機構が収納される収納空間に対して隔離されたブリーザ室を設け、ブリーザ孔を該ブリーザ室とケース外部とを連通するように設けて構成したものが提案されている(例えば特許文献1参照)。このように歯車機構の収納空間とブリーザ孔が連通するブリーザ室とを隔離することにより、歯車機構を潤滑する潤滑油がブリーザ孔より漏出することの防止を図っている。
特開2000−108703号公報
ところで、上述のように収納空間とブリーザ室とを隔離するトランスファー装置においては、該収納空間と該ブリーザ室とを通気するための連通孔を備える必要があるが、一方で、例えば車輌が傾斜した場合などに、該連通孔より潤滑油がブリーザ室に入り込んでしまう虞があり、この場合には、潤滑油の油抜きをする必要がある。そのため、上記連通孔は、収納空間及びブリーザ室の通気ができるものでありながら、ブリーザ室に入り込んだ潤滑油の油抜きができるものとして、ブリーザ室の端部、即ちブリーザ室の内側面の近傍に設ける必要がある。
しかし、トランスファー装置の歯車機構が配設された収納空間内においては、該潤滑油が、歯車機構の回転に伴って、歯車機構を潤滑しつつ収納空間内部で飛散するため、ブリーザ室の端部に設けられた連通孔を通過してブリーザ室内に飛散してきた潤滑油が上記ブリーザ室の内側面に衝突し、例えば霧状に撥ね上がって、エアと一緒にブリーザ孔を介して外部に漏出してしまう虞があった。
そこで本発明は、ブリーザ室の内側面に潤滑油が衝突することの防止を図ることにより、以って上記課題を解決したトランスファー装置を提供することを目的とするものである。
請求項1に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、入力軸(2)の回転を駆動車輪に伝達するための歯車機構(例えば6)をケース(20)に内包し、かつ該ケース(20)内と外部とを連通するブリーザ孔(27)を備えると共に、該ケース(20)内に封入された潤滑油を前記入力軸(2)の回転に基づく前記歯車機構(例えば6)の回転により撹拌又は/及び遠心力散布しつつ潤滑してなるトランスファー装置(1)において、
前記ブリーザ孔(27)に連通すると共に、隔壁部材(16)により前記歯車機構(例えば6)が収納される収納空間(14)から隔離され、前記歯車機構(例えば6)の軸心位置よりも上半分側に半ドーナッツ形状に形成され、かつ前記入力軸(2)の外周上方側に跨って配置されると共に、端部(35)が車輌が水平な状態における前記潤滑油の油面(32)よりも上方となるように配置されたブリーザ室(15)を前記ケース(20)内に設け、
前記隔壁部材(16)は、前記半ドーナッツ形状のブリーザ室(15)における前記歯車機構(例えば6)の回転方向(ω1方向)の下流側の端部(35)に設けられ、前記収納空間(14)と前記ブリーザ室(15)の端部(35)とを連通して、該ブリーザ室(15)の油抜き及び前記収納空間(14)と前記ブリーザ室(15)との通気を行う第1連通孔(18)と、前記収納空間(14)と前記ブリーザ室(15)における前記歯車機構(例えば6)の回転方向(ω1方向)の上流側の端部(36)とを連通して、該ブリーザ室(15)の油抜き及び前記収納空間(14)と前記ブリーザ室(15)との通気を行う第2連通孔(24)と、を有し、
前記隔壁部材(16)に、前記第1連通孔(18)を覆うと共に、前記入力軸(2)の回転に基づく前記歯車機構(例えば6)の回転方向(ω1方向)の下流側に向けて開口したカバー部材(19)を設けた、
ことを特徴とするトランスファー装置(1)にある。
請求項に係る本発明は(例えば図3及び図5参照)、前記ケース(20)は、前記収納空間(14)内における前記第2連通孔(24)の前記歯車機構(例えば6)の回転方向(ω1方向)の上流側に配置され、該ケース(20)の強度を補強するリブ部(30)を有してなる、
ことを特徴とする請求項記載のトランスファー装置(1)にある。
請求項に係る本発明は(例えば図1参照)、前記歯車機構(例えば6)は、前記入力軸(2)の回転を前後輪に分配する分配歯車機構(6)である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のトランスファー装置(1)にある。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、隔壁部材に第1連通孔を覆うと共に、入力軸の回転に基づく歯車機構の回転方向の下流側に向けて開口したカバー部材を設けたので、歯車機構の回転に伴って飛散する潤滑油がブリーザ室の内側面に直接的に衝突することを防止することができ、潤滑油がブリーザ孔から漏出してしまうことを防ぐことができる。
また、第1連通孔は、半ドーナッツ形状のブリーザ室における歯車機構の回転方向の下流側の端部に設けられ、カバー部材の開口方向が下方側となるので、油抜きを行う際にもカバーが邪魔をすることなく確実に油抜きを行うことができ、かつ、歯車機構の回転に伴って飛散する潤滑油がブリーザ室の内側面に直接的に衝突することを防止することができる。
更に、半ドーナッツ形状のブリーザ室を隔離する隔壁部材は、歯車機構の回転方向の下流側の端部に第1連通孔と、上流側の端部に第2連通孔とを有しており、それぞれ収納空間とブリーザ室とを連通しているので、例えば車輌が傾斜するなどした場合に、一方の連通孔が油面よりも下方となった場合でも、一方の連通孔が油面よりも上方となり、収納空間及びブリーザ室の通気がより確実に確保できる。
請求項に係る本発明によると、ケースは、収容空間内における第2連通孔の歯車機構の回転方向の上流側に配置され、該ケースの強度を補強するリブ部を有しているので、ケースの強度を補強することができるものでありながら、第2連通孔よりも歯車機構の回転方向で上流側の潤滑油の流れが遮られ、第2連通孔より潤滑油が侵入することの防止を図ることを可能とすることができる。
請求項に係る本発明によると、歯車機構は、入力軸の回転を前後輪に分配する分配歯車機構であるので、例えばカウンタギヤなどの歯車よりも多くの潤滑が必要となり、収納空間において飛散する潤滑油の量が多くなるが、飛散する潤滑油がブリーザ室の内側面に直接的に衝突することを防止することができる。
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図5に沿って説明する。
本発明に係るトランスファー装置1は、例えばエンジン縦置き型の四輪駆動車に搭載されるものであり、エンジンより出力され不図示のトランスミッションで変速された回転が入力され、前輪と後輪とに分配する形で出力するように構成されている。
図1に示すように、トランスファー装置1は、入力軸2と、歯車機構(分配歯車機構)6と、リヤ出力軸3と、スリーブ軸7と、カウンタギヤ部5と、フロント出力部4とを備えており、これら各部を互いに接合して一体に構成するケース20(図2参照)に収納されている。さらに、トランスファー装置1は、入力軸2、歯車機構6、リヤ出力軸3、及びスリーブ軸7が同軸上に配設されて第1軸CT1を構成し、カウンタギヤ部5のカウンタ軸5bが第2軸CT2を構成し、フロント出力部4のフロント出力軸4bが第3軸CT3を構成している。これら第1軸CT1、第2軸CT2、第3軸CT3の3軸は、第2軸CT2が第1軸CT1の斜め下方側に配置され、第3軸CT3が第2軸CT2に対して第1軸CT1とは反対側にあって該第2軸CT2と平行な位置に配置され、つまり側面視略々くの字状に配置されている。なお、これら第1軸CT1、第2軸CT2、第3軸CT3の位置関係は、車輌の搭載性に合わせて設定されるべきであって、この配置に限るものではない。
第1軸CT1は、入力軸2、歯車機構6、リヤ出力軸3、及びスリーブ軸7を同軸上に備えており、入力軸2は不図示のトランスミッションと接続され、リヤ出力軸3は不図示のリヤプロペラシャフトと不図示のリヤディファレンシャルギヤとを介して後部左右の駆動車輪に接続されている。また、スリーブ軸7は、入力軸2を被覆するようにスリーブ状に形成されており、一体に形成されたギヤ7aを有している。
第2軸CT2は、カウンタギヤ部5のカウンタ軸5bを備えており、該カウンタ軸5bは一体に形成されたギヤ5aを有し、上述のギヤ7aと噛合している。
第3軸CT3は、フロント出力部4のフロント出力軸4bを備えており、該フロント出力軸4bは一体に、もしくは、別体でのスプライン嵌合などで形成されたギヤ4aを有し、上述のギヤ5aと噛合している。また、該フロント出力軸4bは、不図示のフロントプロペラシャフトと不図示のフロントディファレンシャルギヤとを介して前側左右の駆動車輪に接続されている。
歯車機構6は、プラネタリギヤで構成されており、スリーブ軸7と接続されたギヤ6aをサンギヤとして、リヤ出力軸3と接続された内歯のギヤ6dをリングギヤとして、ギヤ6bをピニオンとして備え、さらに入力軸2と接続されピニオン6bを支持するキャリヤ6cを備えている。また、該ピニオン6bは、サンギヤ6a及びリングギヤ6dにそれぞれ噛合している。
つづいて本発明に係るトランスファー装置1の動作について図1に沿って説明する。
本トランスファー装置1においては、例えばエンジンより出力され、トランスミッションで変速された出力回転が、入力軸2に入力される。該入力軸2に入力された回転は、歯車機構6に伝達され、該歯車機構6に伝達された回転は、キャリヤ6cからピニオン6bと、リングギヤ6dとを介してリヤ出力軸3に伝達され、また、キャリヤ6cからピニオン6bと、サンギヤ6aとを介してスリーブ軸7に伝達される。
該リングギヤ6dと該サンギヤ6aへの回転は、車輌の直進走行状態では、サンギヤ6a、ピニオン6b、及びリングギヤ6dは一体回転し、リングギヤ6dとサンギヤ6aとのそれぞれにかかる抵抗が変化して差動が生じた場合には、この差動をピニオン6bに対するリングギヤ6dとサンギヤ6aとの差回転が吸収する。
このようにリヤ出力軸3に伝達された回転は、図示を省略したリヤプロペラシャフトとリヤディファレンシャルギヤを介して後部左右の駆動車輪へ伝達される。また、スリーブ軸7に伝達された回転は、カウンタギヤ部5を介してフロント出力部4に伝達され、該フロント出力部4のフロント出力軸4bから、図示を省略したフロントプロペラシャフトとフロントディファレンシャルギヤを介して前部左右の駆動車輪へ伝達される。以上の動作により、トランスファー装置1に入力された駆動回転は、前後左右の駆動車輪へ伝達され、四輪駆動状態とされる。
次に、本発明の実施の形態に係るトランスファー装置1について図2ないし図5に沿って説明する。
図2に示すように、トランスファー装置1のトランスファーケース20は、フロントケース11と、センターケース12a及びエンドケース12bからなるリヤケース12とで構成され、フロントケース11、センターケース12a、及びエンドケース12bがボルト25,26などにより締結されて、一体ケースを構成している。該トラスファーケース20は、概ね中空状に構成されており、その中空部分に入力軸2、リヤ出力軸3、歯車機構6、及びスリーブ軸7が回転自在に収納されている。
スリーブ軸7は、トランスファーケース20の前方側(図2中X1方向側)の中空部分において、ベアリング13と、センターケース12aに嵌合しスナップリング22によって軸方向に位置決めされたベアリング21とによって、回転自在に支持されている。該スリーブ軸7の後方側(図2中X2方向側)には、上述の歯車機構6のサンギヤ6a(図1参照)が接続されており、また、スリーブ軸7のベアリング13及びベアリング21の間の部分には、上述のギヤ7aが形成されている。
リヤ出力軸3は、前方側(図2中X1方向側)が歯車機構6のリングギヤ6d(図1参照)と接続されており、エンドケース12b内においてベアリング(図示せず)によって回転自在に支持されている。
入力軸2は、スリーブ軸7の中空部分に同軸状に配置され、該スリーブ軸7との間に介在するボールベアリング23によって、回転自在に支持されている。また、入力軸2は、前方側(図2中X1方向側)が不図示のトランスミッションの出力軸にスプライン係合し得るように形成されていると共に、後方側(図2中X2方向側)が歯車機構6のキャリヤ6c(図1参照)と接続されている。さらに、入力軸2は、後方側(図2中X2方向側)の端部がリヤ出力軸3と回転自在となるように嵌合しており(図示せず)、リヤ出力軸3にも回転自在に支持されている。つまり入力軸2は、出力軸3及びスリーブ軸7(及びそれらを支持するベアリング13,21,23等)を介してトランスファーケース20に対して回転自在に支持されている。
一方、図示を一部省略したカウンタギヤ部5においては、フロントケース11内で第2軸CT2を形成するカウンタ軸5b(図1参照)が、ベアリング39a,39bによってフロントケース11に対して回転自在に支持されている。そして、カウンタ軸5bのベアリング39a,39bの間の外周側には一体にギヤ5aが形成されており、上述のスリーブ軸7のギヤ7aと噛合していると共に、上述のフロント出力部4のフロント出力軸4bのギヤ4aに噛合している(図1参照)。また、カウンタ軸5bには、前方側(図2中X1方向側)でギヤ式のオイルポンプが接続されており(図示せず)、油室33、油路38,31、及びシールリング44,45によってシールされた入力軸2とスリーブ軸7との間の空間で構成される油路40を経由して、歯車機構6に潤滑油が供給され、リングギヤ6dに設けられた孔より詳しくは後述する収納空間14内に遠心力散布されるように構成されている。
つづいて、本発明の要部となるブリーザ室とその周辺部分について詳細に説明する。なお、図3に示すトランスファー装置1の縦断面図は、図2に示す横断面図においてA−A線で示すA−A矢視断面図である。従って、歯車機構6は、図3における紙面手前側に配置されていることになる。
図1及び図2に示すように、歯車機構6は、センターケース12aの中空部分において形成された収納空間14内に収納され、サンギヤ6aがスリーブ軸7に、リングギヤ6dがリヤ出力軸3に、キャリヤ6cが入力軸2にそれぞれ接続されており、これにより、トランスファーケース20に対して回転自在に支持されている。また、入力軸2の回転に基づいた少なくともリングギヤ6dの回転方向がω1方向(図3参照)となるように構成されている。
図3に示すように、収納空間14は、内部に歯車機構6(図1参照)を収納しており、該収納空間14の内部は、油面32に示すように歯車機構6の略々回転中心部分まで潤滑油に浸されている。また、収納空間14の内部には、後述するボルト34が配置される位置よりもω1方向の上流側の位置に該収納空間14内に突き出すように備えられた油切りリブ(リブ部)30を有する。
ブリーザ室15は、センターケース12aにおいて、収納空間14の前方側(図2中X1方向側)に隣接し、上記ベアリング21の外周側に位置し、軸心位置よりも略々上半分側に形成された半環状の凹部、つまり半ドーナッツ形状の凹部であり、外周側を収納空間14の内径よりも小さい内径の内周面15aに、内周側をベアリング21の外径よりも大きな外径の外周面15bに、前方側(図2中X1方向側)をリブ部37,37…(図5参照)を備えた側面15cに、ω1方向下流側を端面15dに、反対の上流側を端面15eにより囲まれており、後方側即ち収納空間14側がプレート(隔壁部材)16により該収納空間14と隔離されている。また、ブリーザ室15には、トランスファー装置1の上方で外部と連通するブリーザ孔27が備えられ、該ブリーザ孔27の外部側の開口部には、例えばホースなどと結合することが可能となるように結合部材29が接続されている。
プレート16は、収納空間14とブリーザ室15とを隔離し、該ブリーザ室15に沿うように半中空円板状に形成されている。また、ω1方向側の端部35には、収納空間14とブリーザ室15とを連通する第1連通孔18が設けられ、ω1方向の上流側の端部36には、車輌が水平な状態で正常時における潤滑油の油面32よりも上方となるように、収納空間14とブリーザ室15とを連通する第2連通孔24が設けられている。さらに、プレート16は、ブリーザ室15の端面15dよりもω1方向側においては、ボルト17により、また端面15eよりもω1方向の上流側においては、ボルト34によりそれぞれセンターケース12aと固着されている。また、プレート16は、図4に示すように、第1連通孔18を覆うように、ω1方向側に開口した開口部28を有し、半ドーム型の形状のカバー(カバー部材)19を備えている。
次に、上述した本発明の要部となるブリーザ室とその周辺部分における作用について説明する。
図3に示すように、収納空間14において、略々回転中心部分まで潤滑油に浸されている歯車機構6は、入力軸2の回転に基づいてω1方向へと回転することにより潤滑油を攪拌し、さらに表面に付着した潤滑油を遠心力により飛散させる。また、上述したように歯車機構6のリングギヤ6dには孔が設けてあり、該歯車機構6の回転に伴う遠心力によって該孔から噴出すように飛散させる。以上のように、収納空間14内において潤滑油は、歯車機構6の遠心力によって飛散させられており、歯車機構6の回転方向ω1に沿って、図5に白抜き矢印で示すように、潤滑油の流れ41が発生している。
歯車機構6の回転している状態において第1連通孔18では、飛散した潤滑油の飛沫がω1方向の上流側から潤滑油の流れ41に沿って飛散してくるが、カバー19により遮られるため、第1連通孔18を通過してブリーザ室15内に飛散してきた潤滑油が該ブリーザ室15の内側面(特に端面15d)に衝突し、例えば霧状となって撥ね上がることはない。また、カバー19は、ω1方向側(回転方向の下流側)であって下方に向きの開口部28を有しており、収容空間14とブリーザ室15との間を通気をすることは可能となっていると共に、例えば車輌が傾斜した場合などにブリーザ室15に入ってしまった潤滑油を邪魔することなく油抜きできるようになっている。
また、第2連通孔24部分においては、潤滑油の流れ41に沿って潤滑油の飛沫が飛散してきて第2連通孔24を通過しても、ブリーザ室15内に流れ41の方向に対して垂直に衝突する壁面がなく、潤滑油が霧状となりにくい。更に、油面32よりも下方で歯車機構6により攪拌されている潤滑油の流れ41は、油切りリブ30により遮られる。これにより、油切りリブ30の近くのω1方向側にある第2連通孔24付近には、上記攪拌されている潤滑油がかかり難く、つまり潤滑油の流れの影響が弱くなり、第2連通孔24よりの潤滑油の侵入の防止を図ることが可能となる。
また、例えば車輌が傾斜するなどした場合、収納空間14内部において、歯車機構6の略々回転中心を通る直線状である油面32の位置が移動(回動)する。即ち、上記半中空円板状のプレート16におけるω1方向の下流側の端部35側の油面が上昇した場合はω1方向の上流側の端部36側の油面が下降し、該端部36側の油面が上昇した場合は該端部35側の油面が下降する。この場合にあっても、上述した第1及び第2連通孔18,24は、歯車機構6の回転中心に対して略々対称な位置に配設されているので、該端部35に設けられた第1連通孔18が油面より下方となっても該端部36に設けられた第2連通孔24は油面よりも上方となり、反対に該第2連通孔24が油面より下方となっても該第1連通孔18は油面よりも上方となる。従って、一方の連通孔が油面32よりも下方となり、通気ができない状態となっても、必ず一方の連通孔が油面32よりも上方となり、この油面32よりも上方に位置する連通孔により収納空間14及びブリーザ室15の通気をすることが可能となる。
一方、歯車機構6の回転している状態において、収納空間14では、該歯車機構6の回転に伴って歯車機構6の回転方向ω1と同じ方向でプレート16に沿った空気の流れが発生する。この空気の流れによって、第1連通孔18を覆っているカバー19においては、ω1方向(回転方向の下流)側に向けて形成された開口部28近傍の空気が、ω1方向の下流側に吸引される。該開口部28近傍の空気がω1方向の下流側に吸引されると、該開口部28近傍は、カバー19内及び第1連通孔18内に対して若干の負圧となり、ブリーザ室15から該第1連通孔18を介して開口部28に向かって空気の流れが生じる。このような空気の流れが生じることで、ω1方向の下流側の端部35近傍に飛散してくる潤滑油は、空気の流れに抗して第1連通孔18を通ってブリーザ室15に入り込み難くなる。
また、第2連通孔24付近においても、第1連通孔18と同様に、歯車機構6の回転に伴って歯車機構6の回転方向ω1と同じ方向でプレート16に沿った空気の流れが発生しており、この空気の流れによって、第2連通孔24の収納空間14側の開口部分近傍の空気がω1方向の下流側へ吸引されて該第2連通孔24の開口部分近傍が負圧になる。第2連通孔24の開口部分近傍が負圧になることで、ブリーザ室15側から第2連通孔24を介して収納空間14側へ向かう空気の流れが生じる。このような空気の流れが生じることで、ω1方向の上流側の端部36近傍に飛散してくる潤滑油は、空気の流れに抗して第2連通孔24を通ってブリーザ室15に入り込み難くなる。
なお、収納空間14の内圧がブリーザ室15の内圧よりも高くなると、収納空間14からブリーザ室15へ空気の流れが生じる。この際にあって、第1連通孔18は、ω1方向の下流側向きで下方に向けて開口した開口部28を有するカバー19に覆われているため、収納空間14内で飛散している潤滑油を吸い込み難くしている。
また一方の第2連通孔24において収納空間14からブリーザ室15へ空気の流れが生じる場合であっても、上述のように、歯車機構6の回転している状態において、油面32よりも下方で歯車機構6により攪拌されている潤滑油の流れは油切りリブ30により遮られ、攪拌されている潤滑油が第2連通孔24にかかり難く、第2連通孔24より潤滑油が侵入し難い。また、潤滑油の流れ41に沿って潤滑油の飛沫が飛散してきて第2連通孔24を通過したとしてもブリーザ室15内に流れ41の方向に対して垂直に衝突する壁面がなく、潤滑油は霧状となり難くて、潤滑油がブリーザ孔27から漏出することはない。
以上のように本発明に係るトランスファー装置1によると、プレート16に第1連通孔18を覆うと共に、入力軸2の回転に基づく歯車機構6の回転方向の下流側に向けて開口したカバー19を設けたので、歯車機構6の回転に伴って飛散する潤滑油のブリーザ室15の内側面に直接的に衝突することを防止することができ、潤滑油がブリーザ孔から漏出してしまうことを防ぐことができる。
また、第1連通孔18は、半ドーナッツ形状のブリーザ室15における歯車機構6の回転方向の下流側の端部35に設けられ、カバー19の開口方向が下方側となるので、油抜きを行う際にもカバー19が邪魔をすることなく確実に油抜きを行うことができ、かつ、歯車機構6の回転に伴って飛散する潤滑油がブリーザ室15の内側面に直接的に衝突することを防止することができる。
また、プレート16は、歯車機構6の回転方向の下流側の端部35に第1連通孔18を設け、上流側の端部36に第2連通孔24を設け、それぞれ収納空間14とブリーザ室15とを連通するので、つまり該第1及び第2連通孔18,24は、歯車機構6の回転中心に対して略々対称な位置に配設されており、例えば車輌が傾斜するなどした場合に、一方の連通孔が油面32よりも下方となった場合でも、一方の連通孔が油面32よりも上方となり、収納空間14及びブリーザ室15の通気がより確実に確保できる。
また、センターケース12aは、収納空間14内における第2連通孔24の歯車機構6の回転方向の上流側に配置され、該センターケース12aの強度を補強する油切りリブ30を有しているので、センターケース12aの強度を補強することができるものでありながら、第2連通孔24よりも歯車機構6の回転方向で上流側の潤滑油の流れが遮られ、第2連通孔24よりの潤滑油の侵入の防止を図ることを可能とすることができる。
また、歯車機構6は、入力軸2の回転を前後輪に分配する分配歯車機構であるので、例えばカウンタギヤなどの歯車よりも多くの潤滑が必要となり、収納空間14において飛散する潤滑油の量が多くなるが、飛散する潤滑油のブリーザ室15の内周面に直接的に衝突することを防止することができる。
なお、以上説明した本実施の形態に係るトランスファー装置1は、プレート16により収納空間14とブリーザ室15とを隔離するように説明したが、プレート16はセンターケース12aと一体に形成されたものであっても構わない。
また、本実施の形態において、カバー19の形状は、半ドーム型の形状として説明したが、歯車機構6の回転方向下流側に開口している形状であれば、例えば半三角錐型などどのような形状であっても構わない。
また、本実施の形態において、ブリーザ室15は半ドーナッツ形状として説明したが、第1連通孔18が歯車機構6の回転方向の下流側の端部に設けられたものであれば、ブリーザ室はどのような形状であっても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態において、プレート16には、第1連通孔18と第2連通孔24とを備えているとして説明をしたが、歯車機構6の回転方向下流側に開口したカバー部材を設けた連通孔、つまり第1連通孔18であれば連通孔は一つであっても構わない。
また、本実施の形態において、歯車機構6は、入力軸2の回転を前後輪に分配する分配歯車機構であるものを一例として説明したが、例えばカウンタギヤなど、収納空間14内で回転に伴って潤滑油を飛散させつつ歯車を潤滑するものであれば、どのような歯車機構であっても構わない。また、その分配歯車機構として、プラネタリギヤを用いたものを説明したが、例えばトルセンギヤなど、入力軸2から入力した駆動回転をリヤ出力軸3とスリーブ軸7とに分配できるものであれば、どのようなものでも構わない。
本発明の実施の形態に係るトランスファー装置を示すスケルトン図。 トランスファー装置の一部を示す横断面図。 図2のA−A矢視断面図。 隔壁部材に設けられたカバー部材を示す斜視図。 図3のB−B矢視断面図。
符号の説明
1 トランスファー装置
2 入力軸
6 分配歯車機構(歯車機構)
14 収納空間
15 ブリーザ室
16 隔壁部材(プレート)
18 第1連通孔
19 カバー部材(カバー)
20 ケース(トランスファーケース)
24 第2連通孔
27 ブリーザ孔
30 リブ部(油切りリブ)
32 油面
35 端部(ω1方向側)
36 端部(回転方向上流側)
ω1方向 歯車機構の回転方向

Claims (3)

  1. 入力軸の回転を駆動車輪に伝達するための歯車機構をケースに内包し、かつ該ケース内と外部とを連通するブリーザ孔を備えると共に、該ケース内に封入された潤滑油を前記入力軸の回転に基づく前記歯車機構の回転により撹拌又は/及び遠心力散布しつつ潤滑してなるトランスファー装置において、
    前記ブリーザ孔に連通すると共に、隔壁部材により前記歯車機構が収納される収納空間から隔離され、前記歯車機構の軸心位置よりも上半分側に半ドーナッツ形状に形成され、かつ前記入力軸の外周上方側に跨って配置されると共に、端部が車輌が水平な状態における前記潤滑油の油面よりも上方となるように配置されたブリーザ室を前記ケース内に設け、
    前記隔壁部材は、前記半ドーナッツ形状のブリーザ室における前記歯車機構の回転方向の下流側の端部に設けられ、前記収納空間と前記ブリーザ室の端部とを連通して、該ブリーザ室の油抜き及び前記収納空間と前記ブリーザ室との通気を行う第1連通孔と、前記収納空間と前記ブリーザ室における前記歯車機構の回転方向の上流側の端部とを連通して、該ブリーザ室の油抜き及び前記収納空間と前記ブリーザ室との通気を行う第2連通孔と、を有し、
    前記隔壁部材に、前記第1連通孔を覆うと共に、前記入力軸の回転に基づく前記歯車機構の回転方向の下流側に向けて開口したカバー部材を設けた、
    ことを特徴とするトランスファー装置。
  2. 前記ケースは、前記収納空間内における前記第2連通孔の前記歯車機構の回転方向の上流側に配置され、該ケースの強度を補強するリブ部を有してなる、
    ことを特徴とする請求項1記載のトランスファー装置。
  3. 前記歯車機構は、前記入力軸の回転を前後輪に分配する分配歯車機構である、
    ことを特徴とする請求項1または2記載のトランスファー装置。
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