以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る昇降ウォール収納棚を例示する模式的正面図である。
図1に示す本実施形態に係る昇降ウォール収納棚1は、例えば、一般住宅のトイレルームまたはキッチンルームの壁面(図示せず)における天井近くの領域に設置されたものである。
昇降ウォール収納棚1においては、壁面に固定されたガイド部2が設けられている。ガイド部2は鉛直方向Vに沿って延びている。また、昇降ウォール収納棚1には、ガイド部2に案内されて鉛直方向に移動可能な可動部3が設けられている。可動部3は収納体4を支持しており、従って、収納体4は可動部3の移動に伴って鉛直方向に移動可能とされている。
ガイド部2においては、壁面に取り付けられたガイド部本体11が設けられている。そして、ガイド部本体11の上端部付近には、上端規制部材12が取り付けられており、上端規制部材12の直下であってガイド部本体11の下端部付近には、下端規制部材13が取り付けられている。また、上端規制部材12のやや下方には、上端位置係止部材14が取り付けられている。
一方、可動部3には、ガイド部2に案内される可動部本体16が設けられている。可動部本体16は、例えば鉛直方向に長い矩形の板状の部材であり、可動部3のプラットフォームとして機能すると共に、収納体4の支持体として機能している。すなわち、可動部本体16は、可動部3の他の構成部品を搭載しつつ、収納体4の幅方向中央部を支持し、ガイド部2のガイド部本体11に沿って上下動する。
また、可動部3においては、鉛直方向に延びるアーム17が設けられている。アーム17は、可動部本体16により、その中心軸を回動軸として回動可能に支持されており、第1の角度と第2の角度との間の角度範囲を回動する。なお、アーム17は、鉛直方向については可動部本体16に対して固定されている。また、アーム17の例えば上端部には、鉛直方向に対して交差する方向に延出した延出部18が設けられている。更に、可動部本体16には、アーム17を第1の角度になるように付勢する回動付勢手段19が設けられている。
ガイド部2に設けられた上端規制部材12は、可動部3に設けられたアーム17の延出部18の上方向への移動を規制することにより、可動部3の移動域の上端を規定する。一方、下端規制部材13は、延出部18の下方向への移動を規制することにより、可動部3の移動域の下端を規制する。すなわち、上端規制部材12及び下端規制部材13により、可動部3の移動域が設定されている。なお、可動部3が天井に衝突するおそれがない場合には、上端規制部材12は省略することもできる。
また、上端位置係止部材14は、延出部18が上端規制部材12に当接することにより、可動部3が移動域の上端に位置しており、且つ、アーム17の角度が第1の角度になっているときに、上端規制部材12との間で延出部18を挟む位置に設けられている。そして、上端位置係止部材14は、アーム17が第1の角度にあるときには、延出部18の下方への移動を規制し、アーム17が第2の角度にあるときには、延出部18の下方への移動を規制しない。これにより、アーム17が第1の角度にあるときに、延出部18は上端規制部材12と上端位置係止部材14との間で係止され、可動部3はその移動域の上端位置で固定される。上端規制部材12、下端規制部材13、上端位置係止部材14、アーム17、延出部18及び回動付勢手段19により、鉛直方向に離隔した上端位置及び下端位置において、可動部3をガイド部2に対して固定可能な固定手段が構成されている。
次に、本実施形態に係る昇降ウォール収納棚の動作について説明する。
収納体4に対して物を出し入れするときは、図1に実線で表したように、可動部3をその移動域の下端に位置させる。このとき、重力の作用により、可動部3におけるアーム17の延出部18は、ガイド部2における下端規制部材13の上面に当接し、それより下方への移動が規制される。これにより、可動部3は下端位置に固定される。この結果、収納体4が下端位置に固定され、踏み台や椅子等を利用することなく、物を出し入れすることができる。
一方、収納体4に対する物を出し入れが終了した後は、アーム17の角度を、回動付勢手段19の作用に逆らって第2の角度としつつ、可動部3を上方に移動させる。これにより、延出部18は、上端位置係止部材14の側方を通過し、上端規制部材12の下面に当接し、それより上方への移動が規制される。この状態で、アーム17の角度を第1の角度とすることにより、上端位置係止部材14が延出部18を係止し、下方への移動を規制する。これにより、延出部18が上端規制部材12と上端位置係止部材14との間で係止され、可動部3が上端位置で固定される。
そして、普段、物を収納しておくときは、図1に二点鎖線で表したように、可動部3を継続的に上端位置に固定しておく。このとき、可動部3には重力が作用するが、回動付勢手段19によりアーム17の角度が第1の角度とされるため、延出部18は常に上端位置係止部材14により係止される。従って、延出部18が上端規制部材12と上端位置係止部材14との間で固定され、可動部3が上端位置で固定される。この結果、収納体4も上端位置に固定され、天井近くの空間を有効利用することができる。そして、再び物を出し入れするときには、アーム17の角度を第2の角度とすることにより、延出部18を上端位置係止部材14を越えて下方に移動させ、可動部3を下端位置まで引き下げる。
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、1組のガイド部2及び可動部3により、収納体4の上下動を可能としている。このため、昇降ウォール収納棚1の構成が簡略で、必要な部品点数が少ない。また、本実施形態においては、可動部3の可動部本体16が収納体4の幅方向中央部を支持しているため、収納体4に傾きが生じにくい。すなわち、複数組のガイド部2及び可動部3を設けたり、複数の可動部の間で動作を同期するためのリンク機構を設けたりする必要がない。これに対して、前述の特許文献1に記載された技術においては、収納体の両側に2組のスライドガイドを設けており、また、収納体の傾きを抑制するために、スライドガイド間に更にリンク機構を設けているため、部品点数が多い。
また、本実施形態の昇降ウォール収納棚1においては、1組のガイド部2及び可動部3により収納体4を支持しているため、収納体4の幅に対する制約がない。すなわち、どのような幅の収納体4であっても、ガイド部2及び可動部3の設計を変更することなく、昇降ウォール収納棚1に組み込むことができる。
一般に、昇降式の収納棚は、トイレルームやキッチンなどの狭いスペースに造り付けられることが多く、その幅は周辺環境によって決定されることが多い。例えば、トイレルームにおいては、昇降式の収納棚は水洗タンクの上方に設置されることが多く、この場合、収納棚の幅は、トイレルームの壁と壁との間の間隔に合わせて設計される必要がある。その理由は、収納棚の幅がトイレルームの壁間の間隔よりも大きいと、この収納棚を設置することができず、小さすぎると、スペースを十分に有効利用できないと共に、視覚的にもすっきりしないからである。しかしながら、トイレルームの壁間の間隔は住戸によって異なる。この場合、特許文献1に記載されているような収納体の両側にスライドガイドを設けた収納棚では、設置スペースの大きさに合わせて、収納棚全体を個別に設計しなくてはならず、汎用性が乏しい。これに対して、本実施形態においては、収納体4の幅のみを設置スペースの大きさに合わせて設計すればよく、ガイド部2及び可動部3については、種々の大きさの設置スペースに対して、共通化することができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図2は、本実施形態に係る昇降ウォール収納棚を例示する模式的正面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る昇降ウォール収納棚1aは、前述の第1の実施形態に係る昇降ウォール収納棚1(図1参照)に、更にいくつかの部品を付加したものである。なお、図2に示す構成要素のうち、図1に示す構成要素と同様な構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態に係る昇降ウォール収納棚1aにおいては、第1の実施形態に係る昇降ウォール収納棚1(図1参照)の各構成要素に加えて、化粧板5が設けられている。化粧板5はガイド部2の前方に配置されており、可動部3がその移動域の上端位置にあるときには収納体4を覆い、可動部3がその移動域の下端位置にあるときには収納体4を露出させる。
また、ガイド部2のガイド部本体11の上端部には、可動部3の可動部本体16を引っ張ることにより、可動部3を上方に向けて付勢する上方付勢手段21が取り付けられている。上方付勢手段21は例えばコイルばねである。更に、下端規制部材13のやや上方には、下端位置係止部材22が設けられている。下端位置係止部材22は、延出部18が下端規制部材13に当接することにより可動部3が移動域の下端に位置しており、アーム17の角度が第1の角度になっているときに、下端規制部材13との間で延出部18を挟む位置に設けられている。そして、下端位置係止部材22は、アーム17が第1の角度にあるときには、延出部18の上方への移動を規制し、アーム17が第2の角度にあるときには、延出部18の上方への移動を規制しない。これにより、アーム17が第1の角度にあるときに、延出部18は下端規制部材13と下端位置係止部材22との間で係止され、可動部3はその移動域の下端位置で固定される。
更にまた、ガイド部本体11における上端位置係止部材14のやや下方には、最上部中間係止部材23が設けられている。最上部中間係止部材23は、アーム17が第1の角度にあるときには、延出部18を最上部中間係止部材23の配設位置に係止し、アーム17が第2の角度にあるときには、延出部18を係止しない。更にまた、下端位置係止部材22と最上部中間係止部材23との間には、1又は複数個の中間係止部材24が設けられている。中間係止部材24は、アーム17が第1の角度にあるときには、延出部18をその中間係止部材24の配設位置に係止し、アーム17が第2の角度にあるときには、延出部18を係止しない。
一方、可動部3の可動部本体16には、収納体4よりも下方、例えば、可動部本体16の下端部に、取っ手25が設けられている。また、アーム17の下端部には、レバー26が設けられている。そして、取っ手25とレバー26との間の距離は、15ミリメートル以下とされている。本実施形態における固定手段は、上端規制部材12、下端規制部材13、上端位置係止部材14、アーム17、延出部18及び回動付勢手段19の他に、下端位置係止部材22、最上部中間係止部材23、中間係止部材24及びレバー26を有している。
次に、本実施形態の動作及び効果について説明する。
本実施形態においては、ガイド部2の前方に化粧板5が設けられており、収納体4が上端位置にあるときは、化粧板5が収納体4を覆うようになっている。このため、収納体4が上端位置にあるときには、収納体4に収納されている物を隠すことができる。一方、収納体4が下端位置にあるときには、収納体4を露出させるため、収納体4に対する物の出し入れが可能となる。なお、昇降ウォール収納棚1aの設置状況に応じて、収納体4が上端位置にあるときに、その側面を覆う側板を設けてもよい。
通常、収納棚の外観は周辺環境に合わせることが多い。例えば、収納棚をトイレルームに設置する場合には、収納棚の色調を例えばトイレルームの壁紙の色調に合わせる。また、収納棚をシステムキッチンに組み込む場合には、収納棚のデザインをシステムキッチン全体のデザインに合わせることが好ましい。この場合、特許文献1に記載されているような収納棚では、外観のデザインを変える場合には収納棚全体を作り直さなくてはならない。これに対して、本実施形態によれば、ガイド部2及び可動部3を作り直すことなく、化粧板5のみ又は収納体4及び化粧板5のみを変えることにより、外観のデザインを周辺環境に合わせることができる。
更に、本実施形態においては、ガイド部2に可動部3を上方に向けて付勢する上方付勢手段21が設けられているため、可動部3、収納体4及び収納体4に収納されている物に作用する重力を相殺することができる。これにより、使用者は、小さい力で可動部3を上下動させることができる。
このとき、上方付勢手段21の付勢力は、収納体4に標準的な状態で物が収納されているときに、重力と釣り合うように調整されている。このため、収納体4に収納されている物の質量が標準的な状態よりも小さいときには、可動部3に作用する重力が上方付勢手段21の付勢力よりも小さくなり、可動部3に上向きの力が作用する。この場合には、使用者が可動部3から手を離すと、可動部3は上方に移動してしまう。
そこで、本実施形態においては、ガイド部2に下端位置係止部材22を設けている。これにより、可動部3に上向きの力が作用している場合でも、可動部3が下端位置にあるときにアーム17を第1の角度とすることにより、下端位置係止部材22が延出部18を係止し、延出部18が下端位置係止部材22よりも上方に移動することを規制できる。この結果、延出部18を下端規制部材13と下端位置係止部材22との間に固定し、可動部3を下端位置に固定することができる。なお、アーム17を第2の角度とすれば、延出部18を下端位置係止部材22を越えてより上方に移動させることができる。
また、本実施形態においては、ガイド部2に最上部中間係止部材23が設けられているため、アーム17の角度を第1の角度として、延出部18を最上部中間係止部材23により係止させると、可動部3をその移動域の上端位置の少し手前で停止させることができる。このとき、収納体4の底板と化粧板5の下端との間に、隙間が形成される。この隙間の大きさは、例えば、使用者の指の太さよりも大きく拳の厚さよりも小さい大きさに設定されており、例えば、30乃至50ミリメートルに設定されている。これにより、使用者が、可動部3を上端位置に向けて引き上げたときに、収納体4は上部中間係止部材23による係止位置で一旦停止するため、使用者が、誤って収納体4の底板と化粧板5の下端との間に指を挟むことを防止できる。そして、使用者は、この隙間に指を入れていないことを確認した後、アーム17を第2の角度とすることにより、可動部3をこの位置から更に上方に引き上げて、上端位置に位置させればよい。なお、最上部中間係止部材23により収納体4の底板と化粧板5の下端との間に形成される隙間の大きさは、この隙間を介して収納体4に物を出し入れできるほどは大きくないため、作業者がこの隙間に指を入れることはない。このため、この位置から上端位置まで可動部3を引き上げるときに、誤って指を挟んでしまうことがない。
更に、本実施形態においては、ガイド部2に1又は複数個の中間係止部材24が設けられているため、可動部3を、その移動域の上端位置と下端位置との間の1又は複数の位置において、固定することができる。これにより、収納体4を、その移動域の中間位置で固定することができ、例えば、収納体4の下部のみに対して物を出し入れする際に、収納体4を下端位置まで引き下ろす必要がなくなる。従って、例えば、頻繁に使用する物を収納体4の下部に収納しておけば、これらの物を出し入れする際には、可動部3の移動距離が小さくて済み、便利である。
更にまた、本実施形態においては、可動部3の可動部本体16に取っ手25が設けられているため、使用者は、取っ手25を持つことにより、可動部3を上下動させることができる。また、アーム17の下端部にレバー26が設けられているため、使用者は、レバー26を操作することにより、アーム17の角度を調整することができる。そして、取っ手25とレバー26との間の距離が15ミリメートル以下とされているため、使用者は、取っ手25及びレバー26の双方を片手で同時に把持することができる。これにより、使用者は、片手により、レバー26を操作することによりアーム17の角度を調整しながら、取っ手25を介して可動部3を上下動させることができる。本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
次に、上述の第2の実施形態を具現化するための具体例について説明する。
図3乃至図5は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚を例示する斜視図である。
図3乃至図5は、可動部が下端位置にある状態を示している。なお、図を見易くするために、図4においては、化粧板の図示を省略している。また、図5においては、ガイド部並びにアーム、延出部及びレバーのみを図示している。
また、図6は、上部係止部材を例示する斜視図であり、
図7は、中間係止部材を例示する斜視図である。
図3乃至5に示すように、本具体例に係る昇降ウォール収納棚51においては、壁面(図示せず)に固定された支持パネル56が設けられており、支持パネル56には、ガイド部52が固定的に取り付けられている。また、昇降ウォール収納棚51には、ガイド部52に案内されて鉛直方向Vに移動可能な可動部53、及びその幅方向中央部が可動部53に支持された収納体54が設けられている。更に、支持パネル56からは4本の片持梁57が水平に起立しており、この4本の片持梁57により、化粧板55が支持パネル56に対して平行に支持されている。化粧板55は、可動部53がその移動域の上端位置にあるときには収納体54を覆い、可動部53がその移動域の下端位置にあるときには収納体54を露出させるように配置されている。
ガイド部52には、支持パネル56に取り付けられたガイド部本体61が設けられている。ガイド部本体61は金属又は合金からなり、その形状は鉛直方向に延びる板状であり、その両側部が支持パネル56から離れる方向(以下、「前方」という)に向けて屈曲しており、その屈曲部の先端は相互に近づく方向にもう一度屈曲している。これにより、上方から見て、ガイド部本体61の両側部には、それぞれ略コ字形状の屈曲部61aが形成されている。また、屈曲部61aの内面には、可動部53を摺動させるための樹脂製の滑子(図示せず)が設けられている。
ガイド部本体61の上端部の前面からは、相互に対向する1対の起立板62が前方に向けて起立しており、起立板62の間にはコイルばね63が保持されている。コイルばね63は、可動部53を上方に向けて付勢する上方付勢部材である。また、ガイド部本体61における起立板62の下方には、上方から下方に向かって、上部係止部材64、中間係止部材65及び66、下部係止部材67(以下、総称して「係止部材」ともいう)がこの順に取り付けられている。下部係止部材67はガイド部本体61の下端付近に配置されている。これらの係止部材の詳細な構成は後述する。
一方、可動部53には可動部本体71が設けられている。可動部本体71は、金属又は合金からなる板材からなり、鉛直方向に延びており、その幅方向の両側部が、支持パネル56に向かう方向(以下、「後方」という)に屈曲しており、その屈曲部の先端は相互に近づく方向にもう一度屈曲している。これにより、上方から見て、可動部本体71の両側部には、それぞれ略コ字形状の屈曲部71aが形成されている。そして、この屈曲部71aの外側には、金属又は合金板を略コ字形状に折り曲げて形成されたレール部材(図示せず)が連結されている。レール部材は鉛直方向に延び、ガイド部本体61の屈曲部61aに嵌合している。また、レール部材には、ガイド部本体61の屈曲部61aに対して摺動する樹脂製の滑子(図示せず)及び転接する樹脂製のローラ(図示せず)が設けられている。これにより、可動部本体71は、その両側部をガイド部本体61の屈曲部61aに包まれるように保持され、屈曲部61aに案内されて、鉛直方向に移動する。
また、可動部本体71の上端部には、可動部本体71が上端位置にあるときに起立板62と衝突することを避けるために、矩形の切込71bが形成されている。また、可動部本体71の切込71b付近には、コイルばね63の先端部が連結されている。更に、可動部本体71の下端部には、前方に向けて突出した取っ手72が取り付けられている。
更に、可動部本体71の後方には、金属又は合金からなり、その中心軸が鉛直方向に延びるアーム73が設けられている。アーム73は、可動部本体71により、その中心軸を回動軸として回動可能に支持されており、第1の角度と第2の角度との間の角度範囲を回動する。なお、アーム73は、鉛直方向に関しては、可動部本体71に対して固定されている。そして、アーム73の上端部は直角に折れ曲がっており、水平方向に延出した延出部74となっている。一方、アーム73の下端部も直角に折れ曲がっており、レバー75となっている。
上方から見て、アーム73から延出部74が延びる方向と、アーム73からレバー75が延びる方向とは、例えば135度離隔している。例えば、アーム73の角度が第1の角度であるときは、延出部74はアーム73から後方に延びており、レバー75はアーム73から前方に対して45度傾斜した方向に延びている。また、アーム73の角度が第2の角度であるときは、延出部74はアーム73から後方に対して45度傾斜した方向に延びており、レバー75はアーム73から前方に延びている。このとき、アーム73の回動角度は45度である。
更に、可動部本体71の背面には、アーム73を第1の角度になるように付勢する回動付勢手段としてのコイルばね(図示せず)が設けられている。取っ手72の下面には切込76(図17参照)が形成されており、アーム73の下端部はこの切込76を挿通している。これにより、レバー75は取っ手72の下方に配置されている。取っ手72とレバー75との間の距離は例えば約5ミリメートルである。
そして、可動部本体71の前面におけるコイルばね63が連結されている部分と取っ手72との間に、収納体54が取り付けられている。収納体54においては、背面板、天板、底板及び両側板からなり前面が開放された箱体81と、箱体81の内部を区画する仕切板82とが設けられており、物(図示せず)を収納する棚として機能する。
以下、上部係止部材64、中間係止部材65及び66、並びに下部係止部材67の構成について説明する。これらの係止部材は、例えば樹脂によりそれぞれ一体的に形成されている。
図6に示すように、上部係止部材64は鉛直方向に延びており、その上端部及び下端部に2ヶ所のネジ孔64aが形成されている。ネジ孔64aは、この上部係止部材64をガイド部本体61に対して固定するためのネジ(図示せず)が螺合するものである。そして、上部係止部材64の一方の側面には、上方から下方に向かって、突出部64b、64c及び64dがこの順に形成されている。突出部64bと突出部64cとの間は凹部64eとなっており、突出部64cと突出部64dとの間は凹部64fとなっている。突出部64cの突出量と突出部64dの突出量とは相互に等しく、突出部64bの突出量は、突出部64c及び64dの突出量よりも大きい。また、凹部64eの深さと凹部64fの深さとは相互に等しい。突出部64bの下面、突出部64cの上面及び下面、並びに突出部64dの上面、すなわち、凹部64e及び64fの両側面は水平である。これに対して、突出部64dの下面は、鉛直方向に対して例えば約45度傾斜している。
そして、上部係止部材64は、凹部64e、突出部64c、凹部64f及び突出部64dがアーム73(図5参照)の通過域の後方に位置するように配置されている。これにより、アーム73の角度が第2の角度であるときは、延出部74はアーム73から、後方に対して上部係止部材64から離れる向きに45度傾斜した方向に引き出されるため、延出部74は突出部64c及び64dには接触しない。従って、延出部74は凹部64e及び64fに係合することはなく、突出部64e及び64dの側方を通過することができる。
一方、アーム73の角度が第1の角度であるとき、延出部74(図5参照)はアーム73から後方に引き出されるため、延出部74が凹部64eに整合する位置にあれば凹部64eに係合され、凹部64fに整合する位置にあれば凹部64fに係合される。このとき、凹部64e及び64fの側面は水平であるため、延出部74に鉛直方向の力が印加されても、使用者がアーム73の角度を第2の角度としない限りは、係合状態が解かれることはない。
これに対して、アーム73がコイルばねの付勢力のみで第1の角度となっている状態で、延出部74が上部係止部材64の下方から上部係止部材64に接近すると、延出部74は突出部64dの下面に当接する。この状態で、延出部74に更に上向きの力が印加されると、突出部64dの下面は鉛直方向に対して傾斜しているため、延出部74に印加された上向きの力が水平方向の力に変換され、この変換された力がコイルばねの付勢力に打ち勝てば、アーム73は回動して第2の角度となる。これにより、延出部74は突出部64dを乗り越える。その後、アーム73はコイルばねの付勢力により第1の角度に戻されるため、延出部74は凹部64fに係合される。
そして、アーム73の角度がどのような角度であっても、延出部74は突出部64bを乗り越えることはできない。従って、延出部74は、突出部64bにより、それよりも上方へ移動することを規制される。これにより、突出部64bは可動部53(図4参照)の移動域の上端を規定する。
このように、上部係止部材64の突出部64bは、前述の第1及び第2の実施形態において説明した上端規制部材12(図2参照)に相当する機能を持ち、突出部64cは上端位置係止部材14(図2参照)に相当する機能を持ち、凹部64fは最上部中間係止部材23(図2参照)に相当する機能を持つ。
一方、図7に示すように、中間係止部材65においては、その上端部及び下端部に2ヶ所のネジ孔65aが形成されている。ネジ孔65aは、この中間係止部材65をガイド部本体61に対して固定するためのネジ(図示せず)が螺合するものである。そして、中間係止部材65の一方の側面においては、その上部に突出部65bが形成され、その下部に突出部65cが形成され、突出部65bと突出部65cとの間は凹部65dとなっている。また、中間係止部材65の他方の側面においては、その上部に突出部65eが形成され、その下部に突出部65fが形成され、突出部65eと突出部65fとの間は凹部65gとなっている。突出部65bの突出量と突出部65cの突出量とは相互に等しく、突出部65fの突出量は突出部65eの突出量よりも大きい。また、突出部65bの上面、突出部65cの下面及び突出部65eの上面は、鉛直方向に対して例えば約45度傾斜している。これに対して、突出部65bの下面、突出部65cの上面、突出部65eの下面及び突出部65fの上面、すなわち、凹部65d及び65gの両側面は、水平である。
中間係止部材65は、突出部65b、凹部65d及び突出部65cが、アーム73(図5参照)の通過域の後方に位置するように配置されている。そして、アーム73の角度が第2の角度であるときは、延出部74(図5参照)は後方に対して中間係止部材65から離れる向きに傾斜した方向に引き出されるため、突出部65b及び65cには接触しない。従って、延出部74は凹部65dに係合されることはなく、突出部65b及び65cの側方を通過する。
一方、アーム73の角度が第1の角度であるときは、延出部74はアーム73から後方に引き出されるため、その鉛直方向の位置が凹部65dに整合する位置であれば、凹部65dに係合される。このとき、凹部65dの側面は鉛直方向に対して垂直であるため、延出部74に鉛直方向の力が印加されても、使用者がアーム73の角度を第2の角度としない限りは、係合状態が解かれることはない。
これに対して、アーム73がコイルばねの付勢力のみで第1の角度となっている状態で、延出部74が中間係止部材65の上方から中間係止部材65に接近すると、延出部74は突出部65bの上面に当接する。この状態で、延出部74に更に下向きの力が印加されると、突出部65bの上面は鉛直方向に対して傾斜しているため、アーム73が第2の角度まで回動し、延出部74が突出部65bを越え、凹部65dに係合する。逆に、延出部74が中間係止部材65の下方から中間係止部材65に接近したときも、突出部65cの下面は鉛直方向に対して傾斜しているため、延出部74は突出部65cを乗り越えて、凹部65dに係合する。このように、アーム73がコイルばねの付勢力のみで第1の角度とされているときは、延出部74は凹部65dに入ることはできるが、凹部65dから出ることはできない。延出部74が凹部65dから出ることができるのは、作業者がアーム73の角度を第2の角度とした場合のみである。
中間係止部材66の形状及び配置は、中間係止部材65と同様である。また、下部係止部材67は、中間係止部材65を左右方向に裏返して使用する。すなわち、突出部65e、凹部65g及び突出部65fが、アーム73の通過域の後方に位置するようにする。これにより、延出部74が凹部65gに整合する位置にあり、アーム73の角度が第1の角度であるときは、延出部74はアーム73から後方に引き出されて、凹部65gに係合される。また、アーム73の角度が第2の角度であるときは、延出部74はアーム73から後方に対して傾斜した方向に引き出されて、凸部65eの側方を通過可能となる。更に、アーム73がコイルばねの付勢力のみで第1の角度とされているときには、延出部74は、突出部65eの上方から下方に向かって突出部65eを乗り越えて凹部65gに進入することはできるが、凹部65bから突出部65eを乗り越えて上方に進出することはできない。
更に、アーム73の角度がいかなる角度であっても、延出部74は突出部65fを乗り越えることはできない。すなわち、延出部74は、突出部65fにより、それよりも下方へ移動することを規制されている。これにより、突出部65fは可動部53(図4参照)の移動域の下端を規定する。このように、下部係止部材67の突出部65fは、前述の第1及び第2の実施形態において説明した下端規制部材13(図2参照)に相当する機能を持ち、突出部65eは下端位置係止部材22(図2参照)に相当する機能を持つ。
上述の如く、本具体例に係る昇降ウォール収納棚51においては、アーム73の延出部74は、上から順に、上部係止部材64の凹部64e、凹部64f、中間係止部材65の凹部65d、中間係止部材66の凹部65d、及び下部係止部材67の凹部65gの合計5ヶ所の凹部に係合され得る。これにより、収納体54の位置を、5段の位置の中から選択することができる。
次に、本具体例の動作について説明する。
図8及び図9は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚を例示する斜視図であり、収納体が上から4段目の位置にある場合を示す。なお、図9においては、ガイド部並びにアーム、延出部及びレバーのみを図示している。
図10及び図11は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚を例示する斜視図であり、収納体が上から3段目の位置にある場合を示す。なお、図11においては、ガイド部並びにアーム、延出部及びレバーのみを図示している。
図12及び図13は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚を例示する斜視図であり、収納体が上から2段目の位置にある場合を示す。なお、図13においては、ガイド部並びにアーム、延出部及びレバーのみを図示している。
図14乃至図16は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚を例示する斜視図であり、収納体が上から1段目、すなわち、最上段にある場合を示す。なお、図15においては、化粧板の図示を省略しており、図16においては、ガイド部並びにアーム、延出部及びレバーのみを図示している。
また、図17は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚の取っ手及びレバーを下方から見た斜視図である。
更に、図18(a)乃至(c)は、アームの動作を例示する斜視図であり、(a)は収納体が最上段にある状態を示し、(b)は収納体が最上段から2段目に移行する途中の状態を示し、(c)は収納体が2段目にある状態を示す。
なお、前述の図3乃至図5は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚において、収納体が上から5段目、すなわち、最下段にある場合を示している。
先ず、昇降ウォール収納棚51の使用方法について説明する。
使用者は、収納体54に対して物を出し入れするときは、図3に示すように、収納体54を最下段に位置させる。これにより、収納体54の前面が化粧板55の下方において露出し、使用者は、踏み台や椅子等を利用することなく、物を出し入れすることができる。または、収納体54の下部のみに対して物を出し入れするときは、図8に示すように、収納体54を上から4段目に位置させてもよく、図10に示すように、収納体54を上から3段目に位置させてもよい。これにより、収納体54の下部の前面が露出する。
一方、普段、物を収納しておくときは、図14に示すように、収納体54を最上段に位置させる。これにより、収納体54が化粧板55の背後に隠れ、美感が向上すると共に、昇降ウォール収納棚51の下方の空間を他の用途に利用することができる。また、収納体54を3乃至5段目から最上段に移動させるときは、図12に示すように、収納体54を上から2段目に一旦停止させることが好ましい。このとき、収納体54の底板と化粧板55の下端との間に隙間83が形成される。この隙間83の大きさは、例えば30乃至50ミリメートルであり、使用者の指の太さよりも大きい。これにより、収納体54を最上段まで引き上げる際に、使用者が収納体54と化粧板55との間に誤って指を挟むことを防止できる。
そして、収納体54の位置をある段から他の段に変えるときには、使用者は、取っ手72を把持しつつレバー75を操作して、コイルばねの付勢力に逆らってアーム73の角度を第2の角度とし、アーム73の延出部74をそれまで係合されていた凹部から解放する。次に、アーム73の角度を第2の角度に維持しつつ、収納体54を任意の段まで移動させる。その後、レバー75を離すと、コイルばねの付勢力によりアーム73の角度が第1の角度となり、延出部74が対応する凹部に係合されることにより、収納体54がその段に固定される。なお、収納体54を、目的とする段の手前からその段に入れる場合には、レバー75から手を離したまま、取っ手72にある程度の力をかけて、収納体54を目的とする段まで移動させてもよい。これによっても、収納体54をその目的とする段に位置させることができる。
また、図17に示すように、使用者が取っ手72を把持しつつレバー75を操作するときには、例えば、片方の手100の親指100a以外の指を取っ手72の上面に掛け、親指100aをレバー75に掛ければよい。これにより、使用者は、親指以外の指を支点として親指100aを動かすことにより、レバー75を操作することができる。すなわち、使用者は片手で取っ手72及びレバー75の双方を操作することができる。なお、図17には、取っ手72及びレバー75を右手によって操作する例を示しているが、左手によって操作することもできる。
次に、上述の各状態における昇降ウォール収納棚51の動作について説明する。
先ず、収納体54が最下段にある状態について説明する。
図3乃至図5に示すように、収納体54が最下段にあるときは、アーム73はコイルばねにより付勢されて第1の角度となっており、アーム73の延出部74は、ガイド部52の下部係止部材67(図7参照)の凹部65gに係合されている。このとき、可動部53及び収納体54並びに収納されている物(以下、総称して「昇降部分」ともいう)に作用する重力がコイルばね63の付勢力よりも大きければ、延出部74は凹部65gの下面に当接し、それより下方への移動が規制される。一方、昇降部分に作用する重力がコイルばね63の付勢力よりも小さければ、延出部74は凹部65gの上面に当接し、それより上方への移動が規制される。これにより、可動部53がその移動域の下端位置に固定され、収納体54が最下段に固定される。
そして、収納体54を最下段から上方に移動させるときは、使用者がレバー75を操作してアーム73の角度を第2の角度とした状態で、取っ手72を介して可動部53を押し上げる。これにより、延出部74は凹部65gによる係合が解かれ、突出部65eの側方を通過して突出部65eよりも上方へ移動し、収納体54が上方に移動する。なお、アーム73の角度をどのような角度としても、延出部74が下突出部65fを乗り越えてそれより下方に移動することはない。これにより、可動部53及び収納体54がガイド部52から脱落することが防止される。
図7乃至図11に示すように、収納体54が上から4段目又は3段目にあるときは、延出部74は、中間係止部材66又は65の凹部65dに係合されている。このとき、昇降部分に作用する重力がコイルばね63の付勢力よりも大きければ、延出部74は凹部65dの下面に当接し、それより下方への移動が規制される。一方、昇降部分に作用する重力がコイルばね63の付勢力よりも小さければ、延出部74は凹部65dの上面に当接し、それより上方への移動が規制される。これにより、収納体54が上から4段目又は3段目に固定される。
そして、収納体54を4段目又は3段目から上方に移動させるときは、アーム73の角度を第2の角度としつつ、可動部53を押し上げる。これにより、延出部74は突出部65bの側方を通過して突出部65bよりも上方へ移動し、収納体54が上方に移動する。一方、収納体54を4段目又は3段目から下方に移動させるときは、アーム73の角度を第2の角度としつつ、可動部53を押し下げる。これにより、延出部74は突出部65cの側方を通過して突出部65cよりも下方へ移動し、収納体54が下方に移動する。
図12及び図13に示すように、収納体54が上から2段目にあるときは、延出部74は、上部係止部材64(図6参照)の凹部64fに係合されている。このとき、昇降部分に作用する重力がコイルばね63の付勢力よりも大きければ、延出部74は凹部64fの下面に当接し、それより下方への移動が規制される。一方、昇降部分に作用する重力がコイルばね63の付勢力よりも小さければ、延出部74は凹部64fの上面に当接し、それより上方への移動が規制される。これにより、収納体54が上から2段目に固定される。
そして、収納体54を2段目から上方に移動させるときは、アーム73の角度を第2の角度としつつ、可動部53を押し上げる。これにより、延出部74は突出部64cの側方を通過して突出部64cよりも上方へ移動し、収納体54が上方に移動する。一方、収納体54を2段目から下方に移動させるときは、アーム73の角度を第2の角度としつつ、可動部53を押し下げる。これにより、延出部74は突出部64dの側方を通過して突出部64dよりも下方へ移動し、収納体54が下方に移動する。
図14乃至図16に示すように、収納体54が最上段にあるときは、延出部74は、上部係止部材64(図6参照)の凹部64eに係合されている。このとき、昇降部分に作用する重力がコイルばね63の付勢力よりも大きければ、延出部74は凹部64eの下面に当接し、それより下方への移動が規制される。一方、昇降部分に作用する重力がコイルばね63の付勢力よりも小さければ、延出部74は凹部64eの上面に当接し、それより上方への移動が規制される。これにより、収納体54が最上段に固定される。なお、アーム73の角度をどのような角度としても、延出部74が突出部64bを乗り越えてそれより上方に移動することはない。これにより、可動部53及び収納体54がガイド部52から外れることが防止される。
例えば、図18(a)に示すように、収納体54(図15参照)が最上段に固定されているときには、アーム73の角度は、コイルばねの付勢力により第1の角度となっており、延出部74はアーム73から後方に引き出され、上部係止部材64の凹部64eに係合されている。このとき、レバー75は、アーム73から、水平方向であって前方に対して約45度傾斜した方向に引き出されている。
そして、図18(b)に示すように、収納体54を最上段から引き下ろすときには、使用者はレバー75の延出方向を前方に向ける。これにより、アーム73が回動して第2の角度となり、延出部74の引き出し方向が、水平方向であって後方に対して上部係止部材64から離れる向きに約45度傾斜した方向となる。この状態で取っ手72(図17参照)を介して収納体54を引き下ろすと、延出部74は凹部64eから外れ、突出部64cの側方を通過する。このとき、使用者がレバー75から手を離しても、延出部74が突出部64cに当接することによりアーム73の回動が規制されるため、アーム73の角度は第2の角度に保持される。
そして、図18(c)に示すように、延出部74が凹部64fに相当する位置に達すると、延出部74は突出部64cに当接しなくなるため、アーム73はコイルばねの付勢力により回動し、第1の角度になる。これにより、延出部74がアーム73から後方に引き出されるようになり、凹部64fに係合される。この結果、収納体54は2段目に固定される。
また、コイルばねの付勢力によりアーム73の角度が第1の角度とされた状態で、延出部74が上部係止部材64の突出部64dを越えて凹部64fに進入するとき、中間係止部材65若しくは66の突出部65b若しくは65cを越えて凹部65dに進入するとき、又は、下部係止部材67の突出部65eを越えて凹部65gに進入するときは、延出部74は、その移動方向(鉛直方向)に対して傾斜した面に当接するため、延出部74に印加された鉛直方向の力が水平方向の力に変換される。そして、この水平方向の力がコイルばねの付勢力を上回れば、延出部74は各突出部を乗り越えることができる。これに対して、延出部74が各凹部に係合されているときは、各凹部の両側面は延出部74の移動方向に対して直交しているため、延出部74に鉛直方向の力を印加しても、延出部74は凹部から進出することができない。
次に、本具体例の効果について説明する。
本具体例においては、ガイド部52及び可動部53を1組のみ設けているため、昇降ウォール収納棚51の構成を簡略化することができ、必要な部品点数を減らすことができる。これにより、コストを低減することができると共に、故障が発生しにくくなる。また、可動部53が収納体54の幅方向中央部を支持しているため、収納体54が傾きにくく、安定した動作を実現できる。
また、本具体例においては、1組のガイド部52及び可動部53により収納体54を支持しているため、収納体54の幅に対する制約がない。すなわち、設置スペースに応じて、様々な幅の収納体54及び化粧板55を作製した場合でも、ガイド部52及び可動部53は共通化することができる。更に、周辺環境に合わせて様々なデザインの収納体54及び化粧板55を作製した場合でも、ガイド部52及び可動部53は共通化することができる。このように、本具体例によれば、ガイド部52及び可動部53を共通化したまま、周辺環境に合わせて、昇降ウォール収納棚の幅及びデザインをフレキシブルに設計することができる。
更に、本具体例においては、可動部53を上方に向けて付勢するコイルばね63を設けているため、昇降部分に作用する重力を相殺することができる。これにより、使用者は、小さい力で昇降部分を上下動させることができる。
更にまた、本具体例においては、アーム73の通過域に沿って、上部係止部材64、中間係止部材65及び66、下部係止部材67を配置し、これらの係止部材に合計5つの凹部を形成している。そして、これらの凹部を、アーム73の角度が第1の角度であるときには延出部74が係合され、アーム73の角度が第2の角度であるときには延出部74が係合されない位置に配置している。これにより、延出部74をこれらの凹部のいずれかに係合させることにより、収納体54の位置を5段の段のうち任意の段に固定することができる。このように、最上段(1段目)と最下段(5段目)との間に3段目及び4段目の中間段を設けることにより、例えば、頻繁に使用する物を収納体54の下部に収納しておけば、これらの物を出し入れする際に収納体54を最下段まで引き下ろす必要がなくなる。
更にまた、本具体例においては、可動部本体71にコイルばねを設け、アーム73をその角度が第1の角度になるように付勢しているため、使用者がレバー75から手を離しても、延出部74が凹部に係合させ続けることができる。これにより、収納体54を各段に安定して固定することができる。
更にまた、本具体例においては、収納体54を上から2段目に位置させたときに、収納体54の底板と化粧板55の下端との間に、狭い隙間83が形成されるようにしている。この隙間83の大きさは、使用者の指の太さよりは大きいが拳の厚さよりは小さく、従って、指を挟むことはないが、この隙間83を介して物を出し入れすることはできない程度の大きさとしている。これにより、使用者が収納体54を最上段まで引き上げるときに、収納体54を2段目で一旦停止させることにより、誤って指を挟むことを防止できる。
更にまた、本具体例においては、取っ手72とレバー75とを相互に近接させて配置しているため、使用者は、取っ手72及びレバー75を片手で把持することができる。これにより、使用者は、昇降ウォール収納棚51を片手で操作することができる。
次に、本具体例に係る昇降ウォール収納棚51の設置例について説明する。
図19は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚51をトレイルームに設置した例を示す図であり、
図20は、本具体例に係る昇降ウォール収納棚51をキッチンに設置した例を示す図である。
図19に示すように、本具体例に係る昇降ウォール収納棚51は、トイレルーム201に設置することができる。例えば、トイレルーム201の奥側にトイレ装置202が設置されている場合には、このトイレ装置202の水洗タンク203の上方に、昇降ウォール収納棚51を設置することができる。このとき、昇降ウォール収納棚51のガイド部(図示せず)及び化粧板55は、トイレルーム201の奥側の壁204に対して固定する。これにより、水洗タンク203上の空間を有効利用することができる。なお、化粧板55の色調は、トイレルーム201の壁紙の色調に合わせることが好ましい。
また、図20に示すように、本具体例に係る昇降ウォール収納棚51は、キッチン301に設置することもできる。例えば、キッチン301にシステムキッチン302が設置されている場合には、このシステムキッチン302の上部に、換気扇付きフード303、固定収納棚304及び305と並べて、昇降ウォール収納棚51を組み込むことができる。このとき、昇降ウォール収納棚51のガイド部(図示せず)及び化粧板55は、キッチン301の奥側の壁306に対して固定する。これにより、例えば、普段は収納体54を最上段に位置させておき、昇降ウォール収納棚51の直下の空間をシンク307を使用する際の作業空間として使用し、収納体54に物を出し入れするときのみ、収納体54を下方に引き出すことができる。この結果、椅子や脚立等を使用することなく、収納体54に物を出し入れすることができる。また、収納体54及び化粧板55のデザインをシステムキッチン302のデザインに合わせれば、全体として統一性のあるデザインを実現することができ、商品価値が向上する。
更に、本具体例に係る昇降ウォール収納棚は、洗面所又は納戸等に設置してもよい。この場合にも、簡略な構成の昇降ウォール収納棚を設置することができ、天井近くの空間を有効利用することができると共に、ガイド部及び可動部を共通化しつつ、設置スペース及び周辺環境に合わせて収納棚のサイズ及びデザインを自在に設計することができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの実施形態及びその具体例に限定されるものではない。すなわち、本発明の昇降ウォール収納棚を構成するいずれかの要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。例えば、収納体における仕切板の配置、又は、可動部の取っ手若しくはレバーの形状などについて当業者が適宜変更を加えたものであっても、本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。例えば、レバーを取っ手よりも上方に配置してもよい。