JP4968135B2 - 孔壁崩落抑制方法、及び試験方法 - Google Patents

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  • Investigation Of Foundation Soil And Reinforcement Of Foundation Soil By Compacting Or Drainage (AREA)

Description

本発明は、泥水を使って地盤に掘削されたボーリング孔の孔内で、清水条件下の試験を実施する際に係り、特に孔壁の崩落を抑制する技術に関する。
ボーリング掘削の際にボーリング孔の孔内に注入される泥水は、掘削ビットの冷却及び潤滑を維持し、掘り屑がボーリング孔の孔内に沈殿するのを抑制するとともに、掘り屑をボーリング孔の孔外に運搬排除し、また孔壁の崩落を抑制する役割を担っており、ほとんどのボーリング掘削で使用されている(例えば、特許文献1)。
ところが、ボーリング掘削後、掘削孔内おいて各種試験を行う際に、試験によっては孔内が泥水で満たされたままでは測定することができないものがある。
例えば、光学カメラで孔壁を撮影するボアホールテレビの場合には、孔内が泥水で満たされたままでは、泥水の透明度が低いために孔壁を明瞭に撮影することができない。また、孔内周辺の地下水を採水してその性状を調査する場合には、採水した地下水に泥水が混入してしまうため正確な性状を分析することができない。さらに、孔内周辺の水理学的特性を調査するフローメーター検層を行う場合には、泥水中に含まれるベントナイトによって孔壁表層に不透水性のマッドケーキが形成されることにより、地盤から孔内への地下水の流入が抑制されるために正確な流速を測定できない。
そこで、従来よりこれら試験を実施する場合には、孔内の泥水を清水に置換して行っていた。
特開平9−239292号公報
しかしながら、孔内の泥水を清水に置換した場合には、孔壁が崩落してしまうおそれがある。そして、万一、孔壁が崩落してしまった場合には、孔内が土砂によって閉塞されてしまい、崩落が試験装置の設置前であれば所定深度に試験装置を下ろせなかったり、試験装置の設置後であれば試験装置が孔内に埋没して孔内から引き上げられないなどの問題が生ずる。また、孔壁の崩落が試験装置を引き上げた後であってもその後ボーリング孔を利用する場合には、再度掘削が必要となる等の不具合が生じてしまう。
したがって、上記のように清水でないと実施できない試験は、ボーリング孔の全域の地盤が、ある程度硬質であって、孔内の泥水を清水に置換しても孔壁の崩落が生じにくいような健全な岩盤等からなる場合でしか実施することができなかった。
また、その場合においても、試験を実施するにあたって、孔壁の崩落の可能性を想定した、例えば、試験装置を使い捨てることや再度掘削を行うことなどを前提とした施工計画を立てる必要があった。そして実際に孔壁崩落が生じてしまうと、試験のコストが増大するとともに工期が延長していた。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、泥水を使って地盤に掘削されたボーリング孔の孔内で清水条件下の試験を実施するに際に、孔壁の崩落を抑制する方法及び孔内で清水条件下にて行われる試験方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、泥水を使って地盤に掘削されたボーリング孔の孔内で、清水条件下の試験を実施する際に、孔壁の崩落を抑制する方法であって、
筒形状を有する本体部と、前記本体部の外周に設けられた膨縮自在なパッカーとを備えるケーシングを、泥水で満たされた前記ボーリング孔の孔内に所定深度まで挿入するケーシング設置工程と、
前記孔内に挿入された前記ケーシングが備えるパッカーを、前記ボーリング孔の孔壁に密着させるように膨張させるパッカー膨張工程と、
前記膨張したパッカーより上方の孔壁が泥水と接触した状態を保持しつつ、前記膨張したパッカーより下方及び前記本体部の内側の泥水を清水に置換する置換工程と、を備える。
本発明の孔壁の崩落を抑制する方法によれば、孔内に挿入されたケーシングが備えるパッカーを膨張させるようにボーリング孔の孔壁に密着させることから、ボーリング孔の孔内領域のうち、パッカーの設置位置より下側及びケーシング本体部の内側の領域(第1の領域)と、パッカーの設置位置より上側であってケーシング本体部の外側の領域(第2の領域)との間の流体の往来が遮断されることになる。これにより、置換工程で第1の領域の泥水を清水に置換しても、第2の領域の泥水はその領域に停留する。この結果、パッカーの設置位置より上側の孔壁は、泥水と接触する状態が保持されるので孔壁に崩落が生じることはなく、パッカーの設置位置より下方、すなわちケーシング先端より下方の孔内において、清水条件下の試験を行うことができる。
また、試験の終了後、孔内の清水を再び泥水に置換し、パッカーを収縮させてケーシングをボーリング孔から引き抜くことにより、ボーリング孔の孔内を元の泥水のみの状態に戻すことができる。これにより、ボーリング孔を利用することができる。
第3の発明は、前記パッカーは、前記本体部の先端部に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、泥水を使って地盤に掘削されたボーリング孔の孔内で清水条件下の試験を実施する方法であって、筒形状を有する本体部と、前記本体部の外周に設けられた膨縮自在なパッカーとを備えるケーシングを、前記孔内に所定深度まで挿入するケーシング設置工程と、前記ボーリング孔の孔内に挿入された前記ケーシングが備えるパッカーを、前記ボーリング孔の孔壁に密着させるように膨張させるパッカー膨張工程と、前記膨張したパッカーより下方及び前記ケーシングの内側の前記泥水を清水に置換する置換工程と、前記清水に置換された前記ボーリング孔の孔内の領域で、清水条件下の試験を行う試験工程と、を備える。
本発明によれば、泥水を使って地盤に掘削されたボーリング孔の孔内で清水条件下の試験を実施する際に、孔壁の崩落を抑制することが可能な方法、及び孔内で清水条件にて行われる試験方法を提供できる。
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
本実施形態に係るケーシングは、ボアホールテレビ、採水、又はフローメーター検層等のボーリング孔の孔内が清水に満たされた状態でなければ実施することができない試験(以下、清水条件下試験という)を行う際に用いられるものである。
図1は、本実施形態に係るケーシング10の断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るケーシング10は、本体である鋼管12と、鋼管12の先端部の外周に設けられた膨縮自在のパッカー14とを備えたものである。
鋼管12としては、例えば、市販されるケーシングパイプ等を用いることができるが、寸法として、掘削したボーリング孔の孔径よりも小さい外径と、清水条件下試験で使用する試験装置を挿通させることが可能な内径と、パッカー14を所定深度に設置するための長さとを有するものを選定する。
鋼管12は、例えば、パッカー14を備えるパッカー付鋼管121と、パッカー付鋼管121の端部と連結可能な延長用鋼管122とから構成され、延長用鋼管122の連結数を増加させることにより、ケーシング10の長さを延長して所定深度にパッカー14を配置できるようになっている。ここで、鋼管12間の連結部123は、連結時には鋼管12の外側の泥水が鋼管12の内部に浸入してこないような密閉構造となっている。
パッカー14は、例えば、天然ゴム等の伸縮性素材からなるとともに、外形が鋼管12の周囲を取り囲むような円筒形状を有し、かつ、内部が中空の袋体となっている。
また、パッカー14には、ボーリング孔の孔口から延長し、当該袋体の内部に連通するようにホース16が接続されている。このホース16の孔口側の基端には、流体の注入又は吸出しを制御するためのポンプ18が設けられている。このポンプ18によって、ホース16を通じて水などの流体を袋体の内部に注入し又は内部から吸い出すことにより、パッカー14の膨縮を制御できるようになっている。
ポンプ18としては、パッカー14をボーリング孔の孔壁に充分に密着させるように膨張させることができる出力を有するものであれば、例えば、手押しポンプ、又は注入圧や注入流量等を自動的に制御可能な機能を備える機械式ポンプ等どのようなものを用いてもよい。ただし、パッカー14を膨張させたときにパッカー14が孔壁に密着したかどうかを判断するため、注入圧を監視できる圧力計を備えるものを用いることが好ましい。
なお、円筒形を有するパッカー14の外径は、収縮時に掘削したボーリングの孔径よりも小さくなるように、また膨張時にボーリングの孔径よりも大きくなるように設計されている。
次に、ケーシング10を用いて、清水条件下試験を行う手順について説明する。
図2は、本実施形態に係る清水条件下試験を行う手順を示す工程図である。
なお、本手順は、既にボーリング孔20がボーリング掘削により形成され、その孔内が泥水により満たされた状態から開始するものとする。
図2に示すように、本実施形態に係る試験方法は、ケーシング設置工程S10、パッカー膨張工程S20、置換工程S30、試験工程S40とを備える。
ケーシング設置工程S10では、ケーシング10を、泥水で満たされたボーリング孔20に所定深度まで挿入する。
具体的には、クレーン等を用いて、先ずパッカー付鋼管121から垂直に吊上げて孔内部に建て込み、パッカー付鋼管121に延長用鋼管122を連結することによりケーシング10を延長させながら、パッカー14が孔内の所定の深度に到達するまで孔内に建て込んでいく。なお、パッカー14の設置深度が浅く、パッカー付鋼管121のみを孔内に挿入することでパッカー14を所定の深度に到達することができる場合には、延長用鋼管122を連結しなくてもよい。また、ケーシング10の延長と同時にパッカー14に接続するホース16も孔口から延長していく。また、ケーシング10をボーリング孔20の孔内に建て込む際には、パッカー14は収縮した状態にしておく。
パッカー膨張工程S20では、所定深度に配置したパッカー14を、ボーリング孔20の孔壁に密着させるように膨張させる。
具体的には、孔外に設置されたポンプ18により、ホース16を通じてパッカー14内に流体(例えば、水や空気)を注入していく。この時、ポンプ18の圧力を監視しておき、この圧力が、パッカー14が孔壁に密着したことを示す所定圧以上に上昇した時に流体の注入を止め、その後その圧力が所定圧を下回らないように保持させる。
置換工程S30では、膨張したパッカー14より下側及びケーシング10の内側の泥水を清水に置換する。
具体的には、ボーリング孔20に泥水吸出用パイプ22を、ケーシング10の内側を通してその先端がボーリング孔20の孔底付近まで到達するように挿入し、泥水吸出用パイプ22の孔口側からバキュームポンプ等を用いて泥水を吸い上げる。これと同時に、ボーリング孔20の孔内上部から清水注入用パイプ24により清水を注入する。これにより、比重の大きい泥水は孔内の下部から泥水吸出用パイプ22を通じて吸い出され、孔内上部に注入された清水が下部へと移動していき、次第にケーシング10の内側及びパッカー14の設置位置より下側の泥水が清水に置換されていく。
以上のS10〜S30の工程により、パッカー14の設置位置より上側の孔壁が泥水と接触した状態を保持しつつ、ケーシング10の内側及び膨張したパッカー14の位置より下側を清水に置換することができる。
試験工程S40では、試験装置26をケーシング10の内側からパッカー14より下方の清水に置換した位置まで下降させ、清水条件下試験を行う。
なお、清水条件下試験が終了後、さらにボーリング孔20を掘進する場合には、以下のようにする。
図3は、第1の掘進形態を示す図である。
図3に示すように、ボーリング孔20をさらに掘進する場合には、試験装置26を撤去し(工程S50)、パッカー14の設置位置より下側及びケーシング10の内側の清水を再び泥水に置換し(工程S60)、パッカー14を収縮させてケーシング10をボーリング孔20から引き抜いて(工程S70)、孔内を元の泥水のみの状態に戻す。これにより、当初ボーリング孔20を掘削する際に用いた掘削機28を再度用いて掘削を再開することができる(工程S80)。
なお、工程S60においての清水から泥水への置換は、例えば、泥水吸出用パイプ22を、孔内に泥水を注入するパイプとして、清水注入用パイプを、清水を吸い出すパイプとして逆に用いることにより、実施することができる。
また、図4は、パッカー14を収縮させることなく実施可能な第2の掘進形態を示す図である。
図4に示すように、パッカー14より下方の地盤が、清水条件下でも孔壁の崩落が生じにくいような健全な岩盤等からなるような場合には、試験終了後に試験装置26を撤去し(工程S50)、ボーリング孔20の内部の清水を泥水に置換することなく、ケーシング10の内側に挿通可能な形状を有する専用の掘削機280を、ケーシング10の内側を挿通してボーリング孔20の孔底まで下ろすことにより掘進してもよい(工程S82)。
また、図5は、ケーシング自体を用いて掘進する第3の掘進形態を示す図である。
図5に示すように、図2で説明したケーシング設置工程S10で、ケーシング10の先端の鋼管12に、予め、鋼管12と同径の円筒形を有し、その周縁部に掘削ビットを備えるリングビット30を装着したパッカー付鋼管221を用いてボーリング孔20に建て込んでおく。
そして試験終了後、パッカー14の設置位置よりボーリング孔20の孔内の清水を泥水に置換し(工程S60)、パッカー14を収縮させて、リングビット30がボーリング孔20の孔底に接触するまで、ケーシング10を、延長用鋼管122を連結しながらボーリング孔20の孔内に下ろしていき、リングビット30と孔底との接触を保ちながらケーシング10を周方向に回転させることにより、ボーリング孔20を掘進する(工程S84)。これにより、ケーシング10をボーリング孔20から引き抜くことなく、また、専用の掘削機280を使用することなく掘進することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、本体である鋼管12と、鋼管12の外周に膨縮自在なパッカー14とを備えるケーシング10を、泥水で満たされたボーリング孔20の内部に所定深度まで挿入し、ケーシングに備えるパッカー14を孔壁に密着させるように膨張させて設置することより、ボーリング孔20の孔内領域のうち、パッカー14の設置位置より下側及び鋼管12の内側の領域(第1の領域)と、パッカー14の設置位置より上側であって鋼管12の外側の領域(第2の領域)との間の流体の往来が遮断されることになる。これにより、置換工程S30で第1の領域の泥水を清水に置換しても、第2の領域の泥水はその領域に停留する。この結果、パッカー14の設置位置より上側の孔壁は、泥水と接触する状態が保持されるので孔壁に崩落が生じることはなく、パッカー14の設置位置より下方、すなわちケーシング10の先端より下方の孔内において、清水条件下の試験を行うことができる。
本実施形態はこのような特徴を有することにより、清水条件下試験を行なうべくボーリング孔が掘削された地盤の地質条件が、孔内全域の泥水を清水に置換した際に、孔内の下層は孔壁の安定が保たれるような健全な地盤であっても、孔内の上層は孔壁の崩落が生じるような軟弱地盤である場合に、ケーシング10を用いて、パッカー14を孔内の健全な地盤と軟弱地盤との間に設置することにより、軟弱地盤からなる上層における孔壁の崩落を抑制することができる。
また、地質条件が、ボーリング孔20の全域が健全な岩盤等からなる場合においても、ケーシング10を用いることにより、より一層孔壁の崩落の発生を抑制できるため、試験装置26の使い捨てによるコスト増や再度掘削による工期延長のリスクを低減する。
また、地質条件が、ボーリング孔20の全域が軟弱な岩盤等からなる場合においても、少なくともパッカー14が設置された位置よりも上層の孔壁の崩落を抑制することができる。また、パッカー14が設置された位置よりも下層の孔壁においても、清水で満たされる区間が、孔内全域の泥水を清水に置換したときと比べて短くなるので、孔壁の崩落を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、試験の終了後、孔内の清水を再び泥水に置換し、パッカー14を収縮させてケーシング10をボーリング孔20から引き抜くことにより、孔内を元の泥水のみの状態に戻すことができる。これにより、ボーリング孔20を利用することができる。
また、ケーシング10は、ボーリング孔20から引き抜いた後、別のボーリング孔や別深度で再度同じような試験を実施する場合に、何度も繰り返して使用可能である。これにより、施工コスト軽減に寄与することができる。
本実施形態に係るケーシング10の断面図である。 本実施形態に係る清水条件下試験を行う手順を示す工程図である。 第1の掘進形態を示す図である。 パッカー14を収縮させることなく実施可能な第2の掘進形態を示す図である。 ケーシング自体を用いて掘進する第3の掘進形態を示す図である。
符号の説明
10 ケーシング
12 鋼管
14 パッカー
16 ホース
18 ポンプ
20 ボーリング孔
22 泥水吸出用パイプ
24 清水注入用パイプ
26 試験装置
28,280 掘削機
30 リングビット
121,221 パッカー付鋼管
122 延長用鋼管
123 連結部
S10 ケーシング設置工程
S20 パッカー膨張工程
S30 置換工程
S40 試験工程

Claims (2)

  1. 泥水を使って地盤に掘削されたボーリング孔の孔内で、清水条件下の試験を実施する際に、孔壁の崩落を抑制する方法であって、
    筒形状を有する本体部と、前記本体部の外周に設けられた膨縮自在なパッカーとを備えるケーシングを、泥水で満たされた前記ボーリング孔の孔内に所定深度まで挿入するケーシング設置工程と、
    前記孔内に挿入された前記ケーシングが備えるパッカーを、前記ボーリング孔の孔壁に密着させるように膨張させるパッカー膨張工程と、
    前記膨張したパッカーより上方の孔壁が泥水と接触した状態を保持しつつ、前記膨張したパッカーより下方及び前記本体部の内側の泥水を清水に置換する置換工程と、を備えることを特徴とする孔壁崩落抑制方法。
  2. 泥水を使って地盤に掘削されたボーリング孔の孔内で清水条件下の試験を実施する方法であって、
    筒形状を有する本体部と、前記本体部の外周に設けられた膨縮自在なパッカーとを備えるケーシングを、前記孔内に所定深度まで挿入するケーシング設置工程と、
    前記ボーリング孔の孔内に挿入された前記ケーシングが備えるパッカーを、前記ボーリング孔の孔壁に密着させるように膨張させるパッカー膨張工程と、
    前記膨張したパッカーより下方及び前記ケーシングの内側の前記泥水を清水に置換する置換工程と、
    前記清水に置換された前記ボーリング孔の孔内の領域で、清水条件下の試験を行う試験工程と、を備えることを特徴とする試験方法。
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