JP6929179B2 - 水理特性評価方法 - Google Patents
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Description
切羽前方の地質や地下水状況(水理特性)を推定するために、切羽前方に向けて先進ボーリングを行う場合がある。先進ボーリングによる切羽前方の水理特性評価方法として、例えば、特許文献1には、切羽前方に向けて形成されたボーリング孔内にパッカー装置を挿入し、パッカー装置で区切られた測定区間毎に湧水量および地下水圧を測定し、この観測データに基づいて、切羽前方の地層の透水係数を推定する計測方法が開示されている。
また、特許文献2には、中空のボーリングロッドの先端部内側に設けた圧力計を利用して、削孔過程における地下水圧を測定する地下水圧計測方法が開示されている。
また、特許文献3には、切羽前方に向けて注水孔と排水孔とを間隔をあけて形成し、注水孔に注水するための注水圧と、注水孔への注水量と同量の排水を排水孔から行う場合の排水圧とを測定し、この測定結果に基づいて岩盤の透水特性を評価する評価方法が開示されている。なお、注水孔および排水孔では、それぞれパッカーによって評価対象区間を区切っている。
さらに、非特許文献1には、水平ボーリングの口元において測定した湧水量により切羽前方の透水係数を推定し、この透水係数の推定値と水平ボーリングによる地下水位の低下を考慮して、切羽前方にトンネルの掘削が到達した際のトンネルへの湧水量を予測する予測方法が開示されている。
また、特許文献2の計測方法は、ボーリングロッドに圧力計等の計測機器を設置するため、装置の構成が複雑となり高価であるが、特許文献1の計測方法のようにボーリングロッドを抜き出して、計測用パッカーを挿入することなく、ボーリング孔の先端付近で水圧を測定できる利点がある。しかし、特許文献1の計測方法と同様に、地下水圧の測定は、ボーリング孔内の水圧が安定するまで待機する必要があり、測定に時間がかかる。
また、特許文献3の評価方法は、2本のボーリング孔を形成する作業に手間がかかるとともに、パッカーによって評価対象区間を区切る必要があるため、特許文献1と同様に、パッカー装置を挿入する作業に手間がかかる。
さらに、非特許文献1の推定方法は、地表から別途設置した観測井戸等によって地下水位データを取得する必要があるが、急峻な山岳部の下方を掘進するトンネルでは、地表から観測井戸等を設置するのが困難である。
このような観点から、本発明は、複雑な装置を必要とせず、かつ、トンネル上方の地形に限定されることなく、先進ボーリングを利用して切羽前方における地質毎の透水係数および地下水位を簡易かつ正確に推定することを可能とした水理特性評価方法を提案することを課題とする。
なお、解析モデル作成工程では、前記ボーリング孔の削孔距離と前記排水量との関係から、地層の境界を推定して地質構造モデルを作成するのが望ましい。
また、前記削孔工程、前記湧水量測定工程および前記地下水圧測定工程を繰り返すことにより複数箇所において前記排水量及び前記水圧を測定した後、前記解析モデル作成工程および前記解析工程を実施すればよい。すなわち、逆解析は、予定されている先進ボーリングの全長にわたって実行してもよいし、所定の削孔距離毎に実行してもよい。
かかる水理特性評価方法によれば、ボーリングの口元で測定を行うため、ボーリグ孔内に測定器を配置するための複雑な装置を必要とせず、また、ボーリング孔内へ測定装置を設置するための手間を省略することができる。また、実測された排水量および水圧を利用して逆解析を行うので、パラメータ(透水係数および地下水位)の推定精度が高い。また、水圧変化が顕著な初期の値を用いて逆解析を行えば、水圧の回復を定常状態まで観測する場合に比べて測定期間を大幅に短縮することができる。
口元構造1は、口元保護管2と、削孔用排水管3と、測定用排水管4と、圧力計5と、プリペンダー6とを備えている。口元構造1には、ボーリング孔BHを削孔するボーリングロッド7が挿通されている。なお、口元構造1の構成は限定されるものではない。例えば、測定用排水管4は必要に応じて設置すればよく省略してもよい。ボーリング孔BHが下向きに形成されている場合(先端側が孔口側よりも低い場合)には、削孔用排水管3のみを形成すればよく、測定用排水管4は設ける必要はない。
測定用排水管4は、口元保護管2の上部に取り付けられていて、上向きに立ち上げられている。測定用排水管4は、口元保護管2よりも細径の管材からなり、口元保護管2の内空と連通している。測定用排水管4にはバルブ10が設けられていて、測定用排水管4の内空を遮蔽可能である。また、測定用排水管4には、図示しない流量計が設置されている。
なお、測定用排水管4は、必要に応じて形成すればよく、省略してもよい。また、流量計は必要に応じて設置すればよい。例えば、ストップウォッチとバケツ等を利用して、手動により時間当たりの流量を計測する場合には、流量計は省略してもよい。また、削孔用排水管3および測定用排水管4の配管方法は限定されるものではなく、例えば、口元保護管2の基端側に接続された接続管に取り付けられていてもよい。また、測定用排水管4は、少なくとも一部分が上向きに立設されていれば、必ずしも口元保護管2の上部に取り付けられている必要はなく、口元保護管2の側部や下部に接続されていてもよい。また、削孔用排水管3および測定用排水管4の内径は限定されるものではない。
圧力計5は、口元保護管2に取り付けられていて、口元保護管2の内部(すなわちボーリング孔BH内)の圧力を測定する。なお、圧力計5の取り付け個所は、ボーリング孔BH内の水圧を測定することが可能であれば、限定されるものではなく、例えば、ボーリング孔BH内に配置してもよい。
プリペンダー6は、口元保護管2の基端において、ボーリングロッド7と口元保護管2との隙間を遮蔽するように設けられている。
ボーリング孔BHを穿孔する際には、削孔用排水管3のバルブ10を開いた状態とし、ボーリング孔BH内の水分(高圧水WHや湧水WG)を削孔用排水管3を通して排水するとともに、カッティングスを削孔用排水管3を通してボーリング孔BHから排出する。なお、測定用排水管4を備えている場合には、削孔工程S1では、測定用排水管4のバルブ10は閉じた状態にしておく。
湧水量の観測値は、ボーリング孔BHの深度(長さ)と対応させた状態で記録する。図3に示すように、湧水量の観測値は、ボーリング孔BHが透水性の高い(透水係数が大きい)地質構造K2に達したときに急激に増加する。一方、透水性の低い地質構造K1,K3を削孔している間は、湧水量に顕著な増加は見られない。
湧水量の測定が終了したら、削孔工程S1を再開する。
なお、ボーリング孔BHからの排水を停止すると、排水によって低下した岩盤内の水圧が徐々に回復し、所定の時間(例えば、数日から1週間以上の場合がある)を経過した段階で水圧が一定値(岩盤が持つ真の水圧)に安定する。一方、本実施形態では、岩盤が持つ真の水圧を測定するものではなく、測定初期の圧力回復過程のデータを測定するものとし、測定期間は水圧の安定を待つ場合よりも短い期間(本実施形態では1〜2日程度)とする。図4(b)に示した例では、測定開始(排水停止後)から2日間(=2880min)測定した。測定開始から2日後の水圧は、回復途中で十分な安定値には達していないものの、略安定した傾向を示す。なお、図4(b)は、図4(a)に示す地山に対して5回実施した水圧の測定(M1〜M5)のうち、3回目(M3)に実施した水圧の測定結果である。
まず、湧水量の観測データ(ボーリング孔BHの削孔距離と排水量との関係)を分析し、ボーリング孔BHに沿って分布する地質構造(K1〜K3)の位置や範囲(地層の境界等)を評価する。次に、評価結果に基づいて、解析モデルを作成する。例えば、湧水量が急激に増加する箇所が確認された場合は、その位置を高透水ゾーンと認定するとともに、その前後を低透水ゾーンと認定してモデルを推定する(図5参照)。このとき、ボーリング孔BHおよびバルブ10もモデル化する。推定したモデルは、解析用のメッシュに離散化する。
ここで、解析モデルに対して、各ゾーンの透水係数(地下水の流れやすさを表す物性値)や削孔前の初期の地下水位等の入力パラメータを与えて、ボーリング孔BHへの湧水量や排水を停止した際の水圧回復等を出力データとして計算することを一般的に順解析という。
本実施形態では、解析モデル作成工程S4において作成された解析モデルに対して、複数の入力パラメータの組み合わせについて繰り返し順解析を実施して、観測データと出力データとの誤差が最小となる入力パラメータの組み合わせを探索する。繰り返し実施される順解析の入力パラメータは、逆解析のアルゴリズムに従って更新される。本実施形態では、逆解析の中で用いる順解析プログラムとして、ボーリング孔BH内の流れと地盤内の地下水の流れを連成解析する解析コードを用いる。このような解析コードを使用すれば、ボーリングBH孔から大量の湧水WGが排水される場合であっても、前方の地下水位や透水係数分布を正しく推定することができる。なお、逆解析に用いる解析コード(アルゴリズム)は限定されるものではなく、例えば、通常の地下水流動解析コードを使用してもよい。本実施形態では、逆解析の中で実施する順解析を、ボーリング孔BHの存在やバルブ10の開閉状況を詳細にモデル化した非定常解析とすることで、誤差評価のための観測データと出力データとの比較を1:1の関係で実施できるようにした。
そして、入力パラメータ(透水係数、地下水位等)ごとに出力データと観測データとのマッチングを行い、誤差が最小となるパラメータ(透水係数、地下水位等)を地質構造(K1〜K3)毎に同定する。最適なパラメータを設定すれば、図6(a)および(b)に示すように、観測データを略再現可能となる。
また、逆解析に必要なデータを取得すればよいため、水圧が定常状態まで回復するまで観測する必要がない。また、地層毎の透水係数の計測や、地上からの観測井戸による地下水位の計測を必要としない。
また、実測された排水量および水圧を利用して逆解析を行うので、パラメータ(透水係数および地下水位等)の推定精度が高い。
また、水圧変化が顕著な初期の値を用いて逆解析を行うため、水圧の回復を定常状態まで観測する場合に比べて測定期間を大幅に短縮することができる。
例えば、地下水圧測定工程S3を実施するタイミングは限定されるものではなく、例えば、湧水量測定工程S2を実施した直後に行ってもよい。
2 口元保護管
3 削孔用排水管
4 測定用排水管
5 圧力計
6 プリペンダー
7 ボーリングロッド
8 ビット
9 充填材
10 バルブ
BH ボーリング孔
S1 削孔工程
S2 湧水量測定工程
S3 地下水圧測定工程
S4 解析モデル作成工程
S5 解析工程
Claims (3)
- 切羽前方に向けてボーリング孔を削孔する削孔工程と、
前記削孔を中断した状態で、前記ボーリング孔の口元において当該ボーリング孔からの排水量を測定する湧水量測定工程と、
前記ボーリング孔からの排水を停止させた状態で、前記ボーリング孔の口元において当該ボーリング孔内の水圧を測定する地下水圧測定工程と、
地質構造モデルを作成する解析モデル作成工程と、
前記地質構造モデルに対して、前記排水量および前記水圧の測定結果を利用して逆解析を行い、透水係数および地下水位を推定する解析工程と、を備えていることを特徴とする、水理特性評価方法。 - 解析モデル作成工程では、前記ボーリング孔の削孔距離と前記排水量との関係から、地層の境界を推定して地質構造モデルを作成することを特徴とする、請求項1に記載の水理特性評価方法。
- 前記削孔工程、前記湧水量測定工程および前記地下水圧測定工程を繰り返すことにより複数箇所において前記排水量および前記水圧を測定した後、前記解析モデル作成工程および前記解析工程を実施することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の水理特性評価方法。
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