JP4743355B2 - 揚水管理システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下水位が高い砂礫層または砂層における大深度地下工事での揚水工法で必要最小限な揚水量を自動制御にて可能とする揚水管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
地下水位が高い砂礫層または砂層における大深度地下工事ではドライワークや盤膨れ防止のための地下水位低下工法として揚水工法が一般的に適用されている。この際に、周辺の井戸枯や地盤沈下防止、さらに下水道への排水量抑制を満足させるためには、不要な揚水を伴なうことのない必要最小限な揚水が要求される。
【0003】
すなわち、砂礫層または砂層にあっては地下水は遮断されることなく互いに高い透水性のもとで連絡し合い、一点での揚水は一次的に当該揚水点に向けて地下水位は不均衡の傾斜態様にあるが、いずれは経時をもって同一レベルに均衡する。
【0004】
しかし、工事現場にあっては、地下水位の厳密な制御が困難であることから、必要以上に揚水して、上記の井戸枯や地盤沈下をもたらす場合がある。
【0005】
しかして、厳密な調整のもとでの必要最小限の揚水をして必要以上の揚水を避けねばならない。
【0006】
この種の提案としては、特公昭61−25861号がある。
【0007】
この提案は刻々の変化する地下水位に応じて多数配置の揚水井戸を夫々制御して揚水するもので、地下水位を制御して低下せしめるにあたって、揚水井戸とは別に観測井戸を設け、この観測井戸に設けた水位検出器において常時現水位を検出し、比較器においては、現水位と目標水位を比較してその差を求め、演算器においては揚水井戸の揚水量が観測井戸水位変化に及ぼす影響関係と比較器よりの水位差より各揚水井戸の必要とする揚水量を演算し、これによって各揚水井戸は揚水量を制御されて揚水して地下水位を目標値に保つとしたものである。これを図5〜7に紹介すると以下の通りである。
【0008】
すなわち掘削部1の側壁の鋼管矢板2面には外側より土圧、水圧が作用する。揚水前の地下水位3は高く、大きな水位が鋼管矢板2に作用するが、揚水後の水位4は低くなり、作用する水圧を低減せしめることができる。また、この水圧は掘削部1周囲において釣合がとれて鋼管矢板2に不均衡な力の作用するのを防止している。
【0009】
観測井戸A1……A4は地下水位を検出チェックする必要のある鋼管矢板2の外縁部に間隔を保って設けてあり、その内部の所定の位置には水位を測定する水位検出器5が設置されている。当該観測井戸Anの水位は揚水井戸Wmに向って勾配をもった水位となり、揚水井戸Wmの揚水量によって変化するが、その関係は周囲の地盤の形状、地質、障害物等に影響され複雑であり、理論的には求められない。そこで、各揚水井戸Wmを実験的に揚水して、その揚水量と各観測井戸Anの水位変化量との関係である影響係数を求める。
【0010】
当該係数より上記水位検出器5で計測の水位と目標とすべき水位との間の差から揚水必要量を算出し、揚水井戸Wに設置の各種揚水量の3種の電磁バルブ6のうち適したいずれかを選択してバルブ断続制御のもと揚水する。つまり、揚水井戸とは別に水位観測用の観測井戸を設け、観測井戸の孔内水位を水位計で計測しながら揚水井戸の揚水管に取り付けられた必要とする揚水量に適した電磁弁を自動開閉(全開もしくは全閉)し、揚水井戸の稼動本数および揚水量を制御することで、地下水位を制御するシステムである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、叙上特公昭61−25861号の提案は、断続揚水制御を基本とするために、揚水井戸以外に観測井戸を複数本設置しなければならないこと、また、各井戸の揚水管を揚水量に応じて複数系統に分岐して、それぞれに電磁弁を取り付け、各井戸からの揚水量を制御するため、弁、配管の数量が増えるだけでなく、各井戸の微妙な揚水量調整ができないことから、揚水井戸が多数設置されていなければ制御が困難であることなどの制約条件があった。
【0012】
本発明は、叙上の不都合に鑑みなされたもので、その目的とするところは、地下水の性状に合致したところの地下工事の進捗状況に応じて設定した地下水位低下を満たす必要最小限な揚水量を自動制御にて連続的に揚水する揚水管理システムを提供せんとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の揚水管理システムは、地下水位を制御して低下せしめるにあたって、揚水井戸及び観測井戸に設けた水位検出器において常時現水位を検出し、比較器においては、現水位と目標水位を比較してその差を求め、演算器においては揚水井戸の揚水量が観測井戸水位変化に及ぼす影響関係と比較器よりの水位差より各揚水井戸の必要とする揚水量を演算し、これによって各揚水井戸は揚水量を制御されて揚水して地下水位を目標値に保つとしたものにおいて、揚水流量と地下水位の関係の推定に必要な地盤の浸透特性は、システム運転時の揚水井戸の揚水量と観測井戸内水位の計測値より逆解析し自動算定し、少数点配置の電動弁を付設の揚水井戸、揚水井戸に合わせて少数点配置の観測井戸の夫々の孔内水位を水圧計等で計測し、設定水位と計測水位の差を解消するよう電動弁の開度を全開100%に対して0.1%の精度でリアルタイムに自動制御し、揚水井戸のケーシング内外の水位差(井戸ロス)が大きい場合、地下水位の低下速度が遅い場合は、各井戸の揚水量を電磁流量計等にて計測し、揚水量の計測値から現状地下水位を推定し、設定水位との差を解消するよう電動弁の開度を全開100%に対して0.1%の精度でリアルタイムに自動制御するとしたものである。
【0014】
【作用】
電動弁のリアルタイムの自動制御は、連続的で究極の正確さでの揚水制御をもたらす。
【0015】
かかる制御は地下水の性状に合致し、必要最小限の揚水量の実現を達成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明システムの概要を図1に示す。
【0017】
揚水井戸W、観測井戸Aの構造は従来と同じであるが、揚水井戸W内、観測井戸A内に水圧計9等を設置し、揚水井戸Wからの配管7には電動弁8を設置する。水圧計9、電動弁8は現地に設置してある制御装置10に接続されている。制御装置10は水圧計9の出力信号を水位(計測水位)に換算して、設定水位を維持するように電動弁8を自動調整する。
【0018】
制御装置10への設定水位指示、管理は、有線もしくは電話回線を通じて室内のパソコン11等で行なう。パソコンから届く揚水井戸W内の設定水位を指示すると、現地の制御装置10が計測水位との差を解消するよう電動弁8の開閉を行なう。
【0019】
現地の制御装置10が、水位調整を行なうための電動弁8開閉の割合を判断するので、制御装置10とパソコン11を常時接続しておく必要はない。また、制御装置10内には、時間、バルブ開度、設定水位、計測水位等がバッテリバックアップ付メモリに保持される。保持されるデータには、過去数時間分の詳細なデータ(例えば1分間隔)と、メモリが許す限り過去に遡る比較的長い時間間隔(例えば30分間隔)のデータの2種類がある。パソコン11と制御装置10の交信を行なう際には、自動的にこのデータがパソコン11側に転送され、パソコン11側では、いつでも最新のデータを参照することが可能となる。
【0020】
次に制御装置10の電動弁自動調整方法について説明する。例えば、設定水位に対して計測水位が高い場合は電動弁8の開度を上げていき、設定水位に近づくにしたがって、開度を徐々に下げていく。最終的に設定水位と計測水位が同等となったときの電動弁8の開度を保持する。周辺地下水位の変動等で孔内水位が変動するとそれに応じて電動弁8の開度をリアルタイムに微調整する。ここに、電動弁8の開閉は、制御信号を電動弁8に送った場合の全開から全閉までに要する時間に対しての割合で管理し、開度30%に設定する場合は、一旦全開(100%)にした後、電動弁全開から全閉までに要する時間の70%の時間で弁を閉じる信号を出すものとする。
【0021】
全開から全閉に要する時間は流量によらず一定であること、上記手段により開度を調整した場合、開度と制御流量の関係の再現性が高いことを試験施工により確認している(0%から30%にもっていく場合にはスタート部での遊びが混入するため)ためである。
【0022】
試験施工による電動弁の開度と揚水量の関係を図2に示す。また、現地の井戸を用いた制御事例を図3に示す。本システムでの制御により設定水位をGL−19mとしたところ、制御開始後1時間足らずで設定水位を満足し、その後約2日間設定水位を維持していることがわかる。
【0023】
揚水井戸Wのケーシング内外の水位差(井戸ロス)が大きい場合、地下水位の低下速度が遅い場合は、揚水井戸W内の地下水位でなく、各揚水井戸Wからの揚水量を配管7に配設の電磁流量計12等により計測し電動弁8の開閉を制御する。この場合、揚水量と地下水位の関係を地盤の浸透特性を用いて推定しなければならないが、システム運転時の揚水量と観測井戸4内水位の計測値から地盤の浸透特性を逆解析し、揚水量と地下水位の関係を自動で算定する。このような場合の制御フローを図4に示す。ここで扱う地盤の浸透特性は、透水係数と貯留係数、影響圏半径であり、透水係数は水平方向、鉛直方向に分離して評価することが可能である。
【0024】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成されるので、何よりも地下水の動きに合致し、地下工事の進捗状況、周辺地下水位低下の制約に応じた必要最小限の揚水が可能となり、さらに地下水位低下工法の設計に必要な地盤浸透特性のデータの蓄積が可能となる。また、本発明システムは、揚水井戸1本、観測井戸1本の条件下から適用可能であり、井戸の配置、本数による制約をあまり受けないため、大規模大深度地下工事のみならず、中小規模の地下工事にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明システムの概略説明図である。
【図2】本発明システムにおける電動弁の開度(流量)と揚水量の関係図である。
【図3】本発明システムにおける制御事例のグラフである。
【図4】本発明システムの制御フロー図である。
【図5】従来のシステムの現場縦断面図である。
【図6】従来のシステムの現場平面図である。
【図7】従来のシステムの概略説明図である。
【符号の説明】
1 ; 掘削部
2 ; 鋼管矢板
3 ; 地下水位
4 ; 揚水後の水位
5 ; 水位検出器
6 ; 電磁バルブ
7 ; 配管
8 ; 電動弁
9 ; 水圧計
10 ; 制御装置
11 ; パソコン
12 ; 電磁流量計
A ; 観測井戸
W ; 揚水井戸
Claims (4)
- 地下水位を制御せしめるにあたって、揚水井戸及び観測井戸に設けた水位検出器において定期的に各々の現水位を検出し、比較器において各揚水井戸の現水位と目標水位を比較して水位差を求め、制御装置において、揚水井戸のケーシング内外の水位差(井戸ロス)が大きくない場合、かつ、目標水位に対し地下水位の低下速度が遅くない場合に、前記各揚水井戸の現水位と各揚水井戸の目標水位の差を解消するよう各揚水井戸に設置された電動弁の開度を、前記目標水位に対して計測水位が高い場合は電動弁の開度を上げていき、前記目標水位に近づくにしたがって、開度を徐々に下げ、最終的に目標水位と計測水位が同等となったときの電動弁の開度を保持するようにリアルタイムに自動制御し、全開100%に対して、微調整することを特徴とし、
揚水井戸のケーシング内外の水位差(以下、井戸ロス)が大きい場合、または、目標水位に対し揚水井戸の地下水位の低下速度が遅い場合、揚水井戸及び観測井戸に設けた水位検出器から計測した地下水位と揚水管に設けた電磁流量計から計測した揚水量の各計測値の結果から、揚水井戸の地下水位を現水位と見なすため推定値を導出し、目標水位と推定値の差を解消するよう揚水井戸に設置された電動弁の開度を、目標水位に対して各揚水井戸の地下水位の推定値が高い場合は電動弁の開度を上げていき、地下水位の推定値が目標水位に近づくにしたがって、開度を徐々に下げ、最終的に目標水位と各揚水井戸の地下水位の推定値が同等となったときの電動弁の開度を保持するようにリアルタイムに自動制御し、全開100%に対して、微調整することを特徴とした揚水流量制御の揚水管理システム。 - 請求項1に係わり、前記推定値の導出は、揚水井戸の揚水量と観測井戸内水位の計測値から、水平方向や鉛直方向に分離した透水係数や貯留係数や影響圏半径による地盤の浸透特性を逆解析し揚水井戸の揚水量と地下水位の関係を推定し、揚水井戸の電動弁の開度を制御する揚水管理システム。
- 請求項1あるいは請求項2に係わり、揚水井戸の電動弁の開閉は、一旦全開にした後、制御信号を電動弁に送った場合の全開から全閉までに要する時間に対しての割合で管理することで、全開100%に対して、微調整することを特徴とした揚水管理システム。
- 請求項1から請求項3の何れかに係わり、揚水井戸の電動弁の開度の微調整の精度を、全開100%に対して0.1%とすることで、高精度で地下水位を制御することを特徴とした揚水管理システム。
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