JP4966782B2 - 車両用電動ダンパ装置 - Google Patents

車両用電動ダンパ装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4966782B2
JP4966782B2 JP2007197975A JP2007197975A JP4966782B2 JP 4966782 B2 JP4966782 B2 JP 4966782B2 JP 2007197975 A JP2007197975 A JP 2007197975A JP 2007197975 A JP2007197975 A JP 2007197975A JP 4966782 B2 JP4966782 B2 JP 4966782B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electric motor
displacement
current
drive current
motor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007197975A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009029368A (ja
Inventor
康夫 清水
勝治 渡辺
篤彦 米田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2007197975A priority Critical patent/JP4966782B2/ja
Publication of JP2009029368A publication Critical patent/JP2009029368A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4966782B2 publication Critical patent/JP4966782B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、車両用サスペンション装置に備える車両用電動ダンパ装置に関する。
近年、車両用サスペンション装置において、一般的に用いられていた油圧ダンパ装置(油圧緩衝器)を、電動ダンパ装置に置換する技術の開発が進められている。電動ダンパ装置は、車体に対する車輪の相対的な上下運動を回転運動に変換して電動モータを回転させることにより上下運動を減衰させ、また、車輪の上下運動を減衰させるための減衰力を電動モータが発生するものである。このような電動ダンパ装置としては、各種のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2005−256921公報
特許文献1で知られている電動ダンパ装置は、上下方向の直線運動をラックアンドピニオン機構によって回転運動に変換して、電動モータを回転させるというものである。
ところで、車輪の上下運動により、電動モータは回されて誘導起電圧を発生する。このときに、電動モータを発電機として用いることにより電源に電流を戻す、いわゆる、回生することができる。回生回路には電界効果型トランジスタ(FET)を採用すればよい。電界効果型トランジスタは、自己の抵抗効果によって、誘導起電圧に応じたモータ電流を流す。この結果、電動モータが発生した制動力により、車輪の上下運動を減衰させる。つまり、電動モータは直流発電機となる。そして、誘導起電圧が電源の電圧(例えば12V)を超えると、超えた電圧分の電流が電源に回生される。
車輪の上下方向の変位速度は常に変動する。例えば、電動モータが誘導起電圧を発生する場合には変位速度、つまり、電動モータの回転速度に応じて誘導起電圧の大きさが変動する。
ところが、電動モータには、ロータが回転したときの回転軸の摩擦抵抗など、種々の機械的な内部損失(機械損失、粘性抵抗とも言われている。)が発生する。内部損失による損失トルクのことを、粘性トルクと言う。また、電動モータには、電動モータ自体のロータの慣性による損失も発生する。慣性による損失トルクのことを、慣性トルクと言う。
車輪が上下方向に変位する変位速度に対して、電動モータの回転速度は、粘性トルクや慣性トルクの影響による遅れが大きい。この結果、誘導起電圧に起因する制動力が変動し、車両の乗り心地が低下する。このため、車輪の上下運動を最適に減衰させるには、少なくとも車輪の上下方向の変位速度に応じたモータ制御が必要である。
また、電動モータに電界効果型トランジスタによる直流抵抗を接続しても電流を消費させるのは、結局、熱に変換されて正確に制御できない。さらには、電動モータに発生した誘導起電圧が電源の電圧を超えたときに、越えた分に相当する回生電流を電源に戻しただけでは、回生電流を電源に戻す頻度が少なく、回生効率が悪い。
本発明は、車輪の上下運動を最適に減衰させて車両の乗り心地を向上させることができるとともに、早々に熱に変換されないで、しかも、常時回生させることができる車両用電動ダンパ装置の技術を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、車体に対する車輪の相対的な上下運動を回転運動に変換して電動モータを回転させることにより前記上下運動を減衰させるようにし、また、前記車輪の上下運動を減衰させるための減衰力を前記電動モータが発生するようにした車両用電動ダンパ装置であって、前記車輪が上下方向に変位する変位速度を検出する変位速度検出部と、前記変位速度に基づいて前記電動モータの目標駆動電流を設定する駆動電流設定部と、前記目標駆動電流に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号で駆動制御するモータ駆動部とを、有していることを特徴とする。
請求項2に係る発明では、請求項1において、前記変位速度検出部は、前記車輪が上下方向に変位する変位量を検出する変位量検出部の値から算出し、前記変位量と前記変位速度の少なくとも一方の値に基づいて、前記車輪の変位方向が上下どちらであるかを判断する変位方向判断部を備え、前記駆動電流設定部は、前記変位方向が上方向の場合と下方向の場合とでは、前記目標駆動電流を異なる値に設定するように構成されていることを特徴とする。
請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2において、前記変位速度の値から、前記車輪の上下方向の変位加速度を算出する変位加速度演算部を備え、前記駆動電流設定部は、前記変位速度と前記変位加速度の少なくとも一方に応じて、前記目標駆動電流の値を補正するように構成されていることを特徴とする。
請求項4に係る発明では、請求項1において、前記モータ駆動部は、少なくとも2個の電界効果型トランジスタで1組のアームを構成し、少なくとも2組のアームでブリッジ回路を構成し、前記電界効果型トランジスタを前記パルス幅変調信号で駆動し、少なくともモータ回生モードを有することを特徴とする。
請求項1に係る発明では、車輪が上下方向に変位する変位速度を変位速度検出部によって検出し、この変位速度に基づき電動モータの目標駆動電流を駆動電流設定部によって設定し、目標駆動電流に基づきモータ駆動部により電動モータを駆動制御する。
変位速度に基づいた目標駆動電流によって、電動モータを駆動させるので、電動モータは車輪の上下運動を減衰させるのに、モータの応答性を向上でき、最適な減衰力を発する。従って、車輪の上下運動を最適に減衰させて車両の乗り心地を向上させることができる。
しかも、電動モータをパルス幅変調信号によって駆動することにより、オン駆動信号またはオフ駆動信号だけを使って、オン駆動とオフ駆動との中間の抵抗状態を使用しないので、モータ駆動部は発熱がほとんどなく熱の影響を受けないので、正確な制御ができる。
請求項2に係る発明では、変位方向判断部によって、変位量と変位速度の少なくとも一方の値に基づき車輪の変位方向を判断する。そして、駆動電流設定部によって、車輪の変位方向が上方向の場合と下方向の場合とで目標駆動電流を異なる値に設定する。このため、車輪の変位方向(つまり、車両用電動ダンパ装置の伸縮方向)によって、目標駆動電流を異なる値に設定し、電動モータによる減衰力を変えることができる。従って、車輪の上下運動に対応してきめ細かく電動モータを対応させることができ、上下運動をより最適に減衰させることができる。従って、車両の乗り心地を一層向上させることができる。
請求項3に係る発明では、変位加速度演算部により、変位速度の値から車輪の変位加速度を求める。そして、駆動電流設定部により、変位速度と変位加速度に応じて目標駆動電流の値を補正する。
変位速度と変位加速度に応じて、電動モータ自体の機械的な内部損失に相当する粘性トルクと、電動モータ自体のロータの慣性による損失に相当する慣性トルクが、変化する。これらの損失トルク(粘性トルクと慣性トルク)に応じて目標駆動電流の値を補正することができる。この補正された目標駆動電流によって、電動モータを駆動させるので、電動モータは車輪の上下運動に素早く応答して車両の振動を減衰させるのに最適な減衰力を発する。従って、車輪の上下運動をより一層最適に減衰させることができ、車両の乗り心地を一層向上させることができる。特に、荒れた路面などを車両が走行するときにおいて、電動モータの慣性トルクが大きくなる場合に効果が大きい。
請求項4に係る発明では、電界効果型トランジスタによってブリッジ回路を構成し、電界効果型トランジスタをパルス幅変調信号で駆動することにより、発熱が少ない効率の良い駆動ができ、しかも、電動モータのインダクタンスを交流電圧に変換できるので、電動モータの誘導起電圧が電源の電圧よりも十分に小さくても、電源の電圧よりも高い交流電圧に変換でき、回生効率を高めることができる。
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の車両用サスペンション装置を備えた車両を背面から見て、模式的に示している。車両10は、車体11に左右一対の車両用サスペンション装置20L,20Rを備えている。車体11は左右の上部にダンパハウジング11a,11aを有している。つまり、ダンパハウジング11a,11aは車体11の一部である。左右の車両用サスペンション装置20L,20Rは、車両10(自動車)のフロントサスペンション又はリヤサスペンションとして採用され、車体11に左右の車輪25L,25Rを懸架する。
左の車両用サスペンション装置20Lは、例えば、上側のアッパアーム21及び下側のロアアーム22と、車輪支持部材23と、車両用電動ダンパ装置30Lとから成る、ダブルウィッシュボーン式サスペンションである。
アッパアーム21及びロアアーム22は、車体11の側部に上下スイング可能に連結されている。車輪支持部材23は、車輪25Lを回転可能に支持するためのナックルから成り、アッパアーム21の先端部及びロアアーム22の先端部に上下スイング可能に連結されている。左の車両用電動ダンパ装置30L(以下、単に「電動ダンパ装置30L」と言う。)は、ダンパハウジング11aと車輪支持部材23の下部との間に掛け渡されて、車輪25Lに作用する上下方向の振動を減衰させるものである。
右の車両用サスペンション装置20Rは、左の車両用サスペンション装置20Lと左右対称である他には同じ構成なので、同一符号を付して説明を省略する。なお、右の車両用電動ダンパ装置については符号30Rを付す。また、左の電動モータについては35Lを付し、右の電動モータについては35Rを付する。
図2は、図1に示された左の車両用電動ダンパ装置30Lの断面構造を示している。図3は、図2の3−3線断面を示している。図2及び図3に示すように、電動ダンパ装置30Lは、シリンダ31とロッド32とラックアンドピニオン機構33とロッドガイド34と電動モータ35Lとコイルスプリング36とダストブーツ37とから成る。
シリンダ31は、上下に細長い部材であって、第1シリンダ41と第2シリンダ42とからなる。第1及び第2シリンダ41,42は、互いに同軸に配置された円筒である。第1シリンダ41は、一端に底板41aを有するとともに、他端が開放されている。底板41aは、皿状のインシュレータ43と取付ボルト44を有している。取付ボルト44は、シリンダ側の取付部となる。以下、取付ボルト44のことを「シリンダ側の取付部44」と言う。第2シリンダ42は、両端が開放されている。第2シリンダ42の一端は、第1シリンダ41の開放端に固定されている。第2シリンダ42の他端は、内部にロッド32をスライド可能に支持する軸受45(滑り軸受)を有している。
ロッド32は、シリンダ31と同軸に配置された細長い丸棒から成り、シリンダ31にスライド可能に収納されるとともに、一端部32aがシリンダ31から(第2シリンダ42の他端から)突出している。突出した一端部32aは、先端に環状の連結部47を有している。以下、連結部47のことを「ロッド側の取付部47」と言う。
図1及び図2に示すように、シリンダ側の取付部44はダンパハウジング11aに取り付けられている。ロッド側の取付部47は車輪支持部材23の下部にスイング可能に取り付けられている。なお、ロッド側の取付部47は、ロアアーム22にスイング可能に取り付けられてもよい。このようにして、シリンダ31は車体11に取り付けられ、ロッド32の一端部32aは車輪支持部材23に取り付けられる。
ところで、第1シリンダ41は、底部にバンプストッパ48を有している。バンプストッパ48は、ラバー等の弾性材から成り、シリンダ31の底板41aに対してロッド32の端面が接近したときに、緩やかに干渉させるものである。
図2及び図3に示すように、ラックアンドピニオン機構33は、ラック51と、このラックに噛み合うピニオン52とから成り、第1シリンダ41の内部に配置されている。ロッド32はラック51を有している。ピニオン52を有したピニオン軸53は、ロッド32に対して直角方向へ延び、両端部が軸受54,55を介して第1シリンダ41で回転可能に支持されている。
上述のように、ロッド32は細長い丸棒(円柱状の部材)である。つまり、ロッド32は、ロッド長手方向から見た断面形状が円形の部材である。円形断面のロッド32の外周面にラック51が形成されることになる。
ところで、ラックアンドピニオン機構33は、電動モータ35Lから大出力を受けるとともに、車輪25Lが高速で上下動をした場合には高速で回転運動に変換する。この場合であっても、ラック51とピニオン52の噛み合い状態は確実に維持される必要がある。このため、ラック51とピニオン52の各歯幅は大きく設定される。つまり、ロッド32は大きい歯幅のラック51を有する。
ロッド32に大きい歯幅のラック51を有するには、ロッド32の断面形状(ロッド32を長手方向から見た断面形状)を矩形にすることが考えられる。しかし、矩形断面のロッド32では、ラック51を有していない背面の角の部分が出っ張る。これでは、ロッド32を収納する第1シリンダ41が大型にならざるを得ない。
これに対して、本発明では、円形断面のロッド32の外周面にラック51を有するので、ロッド32を収納する第1シリンダ41を小型にすることができる。
ロッドガイド34は、細長い円柱状のロッド32の背面をピニオン52に押し付けることにより、ピニオン52に対してラック51に予圧(プリロード)を付加するものである。このロッドガイド34は、当て部材61とガイド部62と圧縮コイルばね63と調整ボルト64とロックナット65とから成り、第1シリンダ41に設けられている。
ガイド部62は、ラック51の反対側からロッド32を支えるとともに、ロッド32を軸方向にスライド可能に案内する。当て部材61は、ロッド32とガイド部62との間に介在し、ロッド32の外周面に直接に接触して、スライド抵抗を低減する。この当て部材61は、耐摩耗性を有するとともに摩擦抵抗が小さい材料から成る。調整ボルト64は、ガイド部62をロッド32側へ押しつける力を調整するものであり、圧縮コイルばね63(調整ばね63)を介してガイド部62をロッド32側へ押す。ガイド部62と調整ボルト64との間には、調整ボルト64の調整方向に若干の隙間を有する。ロックナット65は、調整ボルト64の位置決めをする。
ロックガイド34によれば、第1シリンダ41にねじ込まれた調整ボルト64で、圧縮コイルばね63を介してガイド部62を適切な押圧力で押すことにより、ガイド部62でラック51に予圧(プリロード)を与えて、ラック51をピニオン52に押し付けることができる。つまり、ピニオン52に対してラック51を噛み合い方向に押すことにより、ピニオン52とラック51との噛み合いの遊び(バックラッシ)を零又は最小限に設定することができる。これにより、ロッド32の微振動のような上下動であっても、確実にピニオン52の回転に変換することができ、電動モータ35Lに減衰力を発生させることができる。
さらに、ロックガイド34は、ロッド32がピニオン軸53の長手方向へ移動することを規制しつつ、ロッド32をスライド可能に支持することができる。
電動モータ35Lは、例えばブラシ付き直流モータから成り、第1シリンダ41の外周部に取り付けられている。電動モータ35Lの出力軸35a(モータ軸35a)は、ピニオン軸53と同軸に配置されるとともに、ピニオン軸53の一端部に連結されている。連結の構成としては、例えば図3に示すようにセレーションによる連結、または、図示せぬカップリングによる連結がある。このようにして、モータ軸35aはピニオン52に連結される。なお、モータ軸35aをピニオン52に連結する構成には、「モータ軸35aにピニオン52を形成する構成」を含む。
図2に示すように、コイルスプリング36は、車輪25L(図1参照)に作用した車体重量を支えつつ、上下方向の振動や衝撃力を吸収するための弾発部材である。このコイルスプリング36は、電動モータ35Lに対してロッド32の長手方向に離れた位置で、ロッド32に対して同軸に配置されている。このコイルスプリング36の両端部36a,36bは、シリンダ31とロッド32とに個別に取り付けられている。
より詳しく述べると、第2シリンダ42は、長手方向の略中間部分に固定された第1ばね受け座71を有する。ロッド32は、ロッド側の取付部47の近傍に固定された第2ばね受け座72を有する。
コイルスプリング36は、第2シリンダ42と、第2シリンダ42から突出しているロッド32とを、囲むように配置されている。このコイルスプリング36は、第1ばね受け座71と第2ばね受け座72の間に介在することにより、シリンダ31とロッド32とを、軸方向へ且つ互いに離反する方向へ付勢する。
ダストブーツ37は、第2シリンダ42の開放端と、開放端から突出しているロッド32とを覆ってシールする部材であり、ロッド32の軸方向へ伸縮自在である。ダストブーツ37でシリンダ31の内部を外部からシールすることによって、異物の侵入を防止するとともに、シリンダ31内を液密に保持できる。
ところで、図1に示すように、左右の電動ダンパ装置30L,30Rは、それぞれ変位量検出部80L,80Rを有している。左の変位量検出部80Lは、車体11に対して車輪25Lが相対的に上下方向に変位する変位量St(図示せず)を検出するものである。変位量Stは、ストローク量Stとも言う。この左の変位量検出部80Lは、例えば、ロアアーム22が上下にスイングするスイング角を検出することによって、左の車輪25Lの変位量Stを間接的に検出する。
なお、右の変位量検出部80Rは、左の変位量検出部80Lと同じ構成なので、同一符号を付して説明を省略する。
以下、左の変位量検出部80Lについて、詳細に説明する。図4は、図1に示された左の変位量検出部80Lを模式的に示している。図1及び図4に示すように、変位量検出部80Lは、ハウジング81とスイングロッド82とジョイント部83と伝達機構84とポテンショメータ85とから成る。
ハウジング81は、車体11に取り付けられている。スイングロッド82は、ハウジング81に上下スイング可能に取り付けられている。ジョイント部83は、スイングロッド82の先端にねじ込まれるとともに、ロアアーム22に上下にスイング可能に取り付けられている。伝達機構84は、スイングロッド82のスイング運動をポテンショメータ85に伝達するものであり、ハウジング81に内蔵されている。
ポテンショメータ85は、スイングロッド82のスイング角を検出するものであり、ハウジング81に内蔵されている。このポテンショメータ85は、抵抗素子85aと摺動素子85bとから成る。抵抗素子85aの一端は、固定抵抗86を介して定電圧電源87に接続されている。定電圧電源87の端子電圧は一定である。抵抗素子85aの他端は、固定抵抗88を介してアースに接続されている。摺動素子85bは、スイングロッド82のスイング運動に応じて抵抗素子85a上を摺動可能である。摺動素子85bによって得られた電圧信号(変位量検出部80Lの検出信号)は、出力端子85cから出力される。このようにして、変位量検出部80Lは、図1に示す車輪25Lの変位量Stを車輪支持部材23及びロアアーム22を介して検出することができる。
次に、左右の電動ダンパ装置30L,30Rの制御回路について、図1を参照しながら図5に基づき説明する。図5は、図1に示された左右の電動ダンパ装置30L,30Rの制御回路を示している。図5に示すように、制御回路は、バッテリ101(直流電源101)とメインスイッチ102とメインリレー103と車速検出部104と左右2つの変位量検出部80L,80Rと制御部105と左右2つのモータ駆動部106L,106Rとから成る。
メインスイッチ102は、例えばイグニションスイッチから成る。メインリレー103は、例えば、バッテリ101に接続された常開接点103aと、常開接点103aを閉動作させる励磁コイル103bとから成る。車速検出部104は、車両10の走行速度Vs(車速Vs)を検出するセンサである。左右2つの変位量検出部80L,80Rは、各電動ダンパ装置30L,30Rに個別に有している変位量検出部のことである。左右2つのモータ駆動部106L,106Rは、各電動ダンパ装置30L,30Rに個別に有している電動モータ35L,35Rを、制御部105の制御信号に基づいてそれぞれ駆動するものである。
制御部105を、より詳しく説明する。制御部105は、車速検出部104と左右の変位量検出部80L,80Rと左右の電流検出部124L,124R(詳細は後述する。)とから各検出信号を受けて、左右2つのモータ駆動部106L,106Rを制御することにより、左右の電動モータ35L,35Rを駆動制御するものである。この制御部105は、ワンパルス発生回路111と入力インタフェース回路112と制御回路113と出力インタフェース回路114とウォッチドッグタイマ回路115とリレー駆動回路116とから成る。
ワンパルス発生回路111は、メインスイッチ102がオン操作された時点に1パルスの信号を制御回路113に発するものであり、例えば微分回路から成る。制御回路113は、例えばマイクロコンピュータから成り、入力インタフェース回路112を介して入力信号を受けるとともに、制御信号を出力インタフェース回路114を介して発する。ウォッチドッグタイマ回路115は、制御回路113から受ける一定周期の信号を監視し、信号が途絶えたときや信号の周期が乱れたときに異常信号を発して、制御回路113を停止させる。リレー駆動回路116は、制御回路113の制御信号を受けてメインリレー103をオンにし、そして、異常を検出したときには、メインリレー103をオフにする。
左のモータ駆動部106Lは、ゲート駆動回路121とブリッジ回路122と昇圧回路123と左の電流検出部124Lとから成る。
ゲート駆動回路121は、制御回路113から出力インタフェース回路114を介して受けた制御信号に基づいてブリッジ回路122を駆動制御する。ブリッジ回路122は、左の電動モータ35Lに駆動電流を供給して駆動する。
昇圧回路123は、バッテリ101から供給される電力の電圧を昇圧することにより、バッテリ101の電圧よりも約2倍の高電圧を発生させて、ゲート駆動回路121へ供給する。この結果、ゲート駆動回路121は、高電圧の駆動信号をブリッジ回路122に発することにより、ブリッジ回路122をより迅速に且つ確実に駆動することができる。従って、左の電動モータ35Lによるダンパ制御の応答性が高まる。昇圧回路123は、例えば、トランジスタと抵抗とコンデンサの組み合わせから成る。
左の電流検出部124Lは、ブリッジ回路122から左の電動モータ35Lへ供給される実際の駆動電流Id(実電流Id)を検出して制御部105へ発するものであり、例えば、ホール素子や抵抗から成る。
右のモータ駆動部106Rは、左のモータ駆動部106Lと実質的に同じ構成であり、ゲート駆動回路121とブリッジ回路122と昇圧回路123と右の電流検出部124Rとから成る。右の電流検出部124Rは、ブリッジ回路122から右の電動モータ35Rへ供給される実際の駆動電流Id(実電流Id)を検出して制御部105へ発する。
図6は、図5に示された左のモータ駆動部106Lにおけるブリッジ回路122の具体的な回路を示す。ブリッジ回路122は、Nチャンネルエンハンスメント型の電界効果型トランジスタ(FET)から成る4個のスイッチング素子131〜134をH字状に結線した、いわゆるHブリッジ回路である。左の電動モータ35Lとしてブラシ付き直流モータを採用したので、このような構成のブリッジ回路122にした。つまり、2個の電界効果型トランジスタ131,132を組み合わせて1組のアームを構成し、他の2個の電界効果型トランジスタ133,134を組み合わせて他の1組のアームを構成し、これら2組のアームによってブリッジ回路122を構成した。
なお、モータ駆動部106Lは、少なくとも2個の電界効果型トランジスタによって1組のアームを構成し、少なくとも2組のアームによってブリッジ回路122を構成すればよい。例えば、左の電動モータ35Lとして3相ブラシレスモータを採用した場合には、ブリッジ回路122は3組のアームを用いる必要がある。
4個のスイッチング素子131〜134は、それぞれゲートにゲート駆動回路121の駆動信号を受けて、スイッチ動作(オン、オフ動作)をする。以下、4個のスイッチング素子(FET)131〜134のことを、第1FET131、第2FET132、第3FET133、第4FET134と言う。
詳しく説明すると、左のモータ駆動部106L(図5参照)のブリッジ回路122は、左上段の第1FET131と左下段の第2FET132と右上段の第3FET133と右下段の第4FET134とから成る。
左上段の第1FET131のドレインと、右上段の第3FET133のドレインとは、互いに接続されるとともに、バッテリ101(図5参照)の正極に接続されている。
左下段の第2FET132のソースと、右下段の第4FET134のソースとは、互いに接続され、バッテリ101の負極に接続されるとともに、アースされている。
左上段の第1FET131のソースと、左下段の第2FET132のドレインとは、互いに接続されるとともに、左の電動モータ35Lの一方の端子に接続されている。
右上段の第3FET133のソースと、右下段の第4FET134のドレインとは、互いに接続されるとともに、左の電流検出部124Lを介して左の電動モータ35Lの他方の端子に接続されている。
ところで、一般に、電界効果型トランジスタには、このトランジスタを生産するときに、回生用と同等のダイオードが生成されている。上述した4個の電界効果型トランジスタ131〜134も同様である。このため、上述のブリッジ回路122には、「バイポーラトランジスタを採用した従来のブリッジ回路」のように、外付けの回生用ダイオードを組込む必要がない。
なお、ブリッジ回路122の理解を容易にするために、図6には、4個の電界効果型トランジスタ131〜134にそれぞれ備えている回生用ダイオード135〜138を示した。つまり、第1FET131に第1回生用ダイオード135、第2FET132に第2回生用ダイオード136、第3FET133に第3回生用ダイオード137、第4FET134に第4回生用ダイオード138が、それぞれ接続されている。
図5に示す右のモータ駆動部106Rのブリッジ回路122は、左のモータ駆動部106Lのブリッジ回路122と同様の構成であり、左の電動モータ35Lの代わりに右の電動モータ35Rが接続される。
次に、制御回路113(図5参照)をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図1、図5及び図6を参照しつつ、図7及び図8に基づき説明する。図7は、図5に示された制御回路113によって実行される電動モータ駆動制御ルーチンの一例を示す制御フローチャートである。
図5に示すように、メインスイッチ102をオンにすると、バッテリ101から制御部105へ電力が供給される。制御部105はメインリレー103の常開接点103aをオン駆動する。バッテリ101から左右のモータ駆動部106L,106Rへ電力が供給される。制御回路113は、メインスイッチ102がオンのときに制御を開始し、メインスイッチ102がオフになると制御を終了する。ワンパルス発生回路111は、メインスイッチ102がオンになった時点に1パルスのリセット信号を制御回路113に発する。
制御回路113は、先ず、ワンパルス発生回路111からのリセット信号を受けてシステムをリセットした上で、制御を開始する(ステップST01)。
次に、左の変位量検出部80Lが検出した変位量Stと、車速検出部104が検出した車速Vsと、左の電流検出部124Lが検出した実電流Idを読み込む(ステップST02)。
次に、読み込んだ変位量Stと車速Vsと実電流Idが、全て正常な値であるか否かを判断する(ステップST03)。つまり、各検出部の故障診断を実施する。例えば、次の3つの条件が全て満たされたときには正常であると判断し、そうでないときには非正常であると判断する。第1の条件は、変位量Stの値が所定の正常範囲に入っていることである。第2の条件は、車速Vsの値が所定の正常範囲に入っていることである。第3の条件は、実電流Idの値が制御回路113からの制御信号に基づく所定の正常範囲に入っていることである。
ステップST03において、非正常であると判断した場合には、リレー駆動回路116を介してメインリレー103をオフにする(ステップST04)。つまり、メインリレー103は、励磁コイル103bの駆動を停止させて常開接点103aを開に復帰させる。この結果、バッテリ101から制御部105と左右のモータ駆動部106L,106Rへの電力の供給が遮断されて、モータ駆動制御が終了する。
ステップST03において、正常であると判断した場合には、変位量Stの値から車輪25Lの上下方向の変位速度Svを算出する(ステップST05)。例えば、変位量Stの値を時間で微分することによって変位速度Svを求める。変位速度Svは、ストローク速度Svとも言う。
次に、変位速度Svの値に基づいて、車体11に対する車輪25Lの変位方向が上下どちらであるかを判断する(ステップST06)。車体11に対して車輪25Lが相対的に上方向へ変位した場合には、電動ダンパ装置30Lが縮む(電動ダンパ装置30Lの全長Ldが減少する)。車体11に対して車輪25Lが相対的に下方向へ変位した場合には、電動ダンパ装置30Lが伸びる(電動ダンパ装置30Lの全長Ldが増大する)。
変位速度Svが0の値の場合には(Sv=0)、車輪25Lが上下に変位していないと判断して、ステップST02へ戻り、一連の制御を繰り返す。
変位速度Svの値が正の場合には(Sv>0)、車輪25Lが下方向へ変位したと判断して、左の電動モータ35Lを正転制御した後に(ステップST07)、ステップST02へ戻って一連の制御を繰り返す。
変位速度Svの値が負の場合には(Sv<0)、車輪25Lが上方向へ変位したと判断して、左の電動モータ35Lを逆転制御した後に(ステップST08)、ステップST02へ戻って一連の制御を繰り返す。
図8は、図7に示された電動モータ駆動制御ルーチンにおいて、ステップST07を実行するためのモータ正転制御ルーチンを示す制御フローチャートである。
先ず、モータ正転時の基準駆動電流マップに基づいて、変位速度Svに応じた基準駆動電流Iexを求める(ステップST11)。基準駆動電流Iexは、左の電動モータ35Lに供給する駆動電流の基準となる値である。
図9は、横軸を変位速度Svとし、縦軸を基準駆動電流Iexとして、変位速度Svに応じた基準駆動電流Iexを求めるモータ正転時の基準駆動電流マップMnの説明図である。このモータ正転時の基準駆動電流マップMnは、電動ダンパ装置30Lが伸びる場合(変位方向が下方向の場合)のマップであって、例えば、変位速度Sv=0のときに基準駆動電流Iex=0であり、Svが増大するにつれてIexも増大する特性を有した特性曲線によって示される。この特性曲線によれば、Svの値に応じてIexが3段階に変化する特性を有していることが判る。つまり、Svが0から所定のSv1まで増大する範囲におけるIexの増大特性と、SvがSv1を超えて所定のSv2まで増大する範囲におけるIexの増大特性と、SvがSv2を超えて増大する範囲におけるIexの増大特性とが異なる。
ところで、電動モータ35Lが発生する出力、つまり「ダンパ減衰力」は、電動モータ35Lに流される駆動電流に対応する。このため、図9に示されたモータ正転時の基準駆動電流マップMnの説明図は、縦軸の基準駆動電流Iexを基準ダンパ減衰力に置換した、基準ダンパ減衰力マップの説明図と考えることができる。
図8において、次に、車速補正マップに基づいて、車速Vsに応じた車速補正係数Kvを求める(ステップST12)。
図10は、横軸を車速Vsとし、縦軸を車速補正係数Kvとして、車速Vsに応じた車速補正係数Kvを求める車速補正マップMvの説明図である。この車速補正マップMvは、例えば、次の特性を有した特性曲線によって示される。車速Vsが0から所定のVminまで増大する範囲において、車速補正係数Kvは0.1の一定値である。車速VsがVminを超えて所定のVmaxまで増大する範囲において、車速補正係数Kvは0.1から1.0まで比例して増大する。車速VsがVmaxを超えて増大する範囲において、車速補正係数Kvは1.0の一定値である。
図8において、次に、基準駆動電流Iexの値を車速補正係数Kvによって補正する(ステップST13)。具体的には、ステップST11で求めた基準駆動電流Iexに車速補正係数Kvを乗算して、補正された基準駆動電流Iexを求める(Iex=Iex・Kv)。
次に、電動モータ35L自体の機械的な内部損失を補正するための補正電流I1を求める(ステップST14)。一般に、電動モータ35Lには、ロータが回転したときの回転軸の摩擦抵抗など、種々の機械的な内部損失(機械損失、粘性抵抗とも言われている。)が発生する。電動ダンパ装置30Lの場合、この内部損失の分だけ電動モータ35Lの負荷トルク、すなわち、出力トルクが増大する。内部損失の大きさは、電動ダンパ装置に採用される電動モータ35Lの種類や出力等に応じて異なる、固有の値である。内部損失に相当する係数を粘性補正係数K1とする。粘性補正係数K1は、採用される電動モータ35Lに応じた値に予め設定される。内部損失に相当する損失電流I1のことを、以下「粘性補正電流I1」と言う。
ところで、車輪25Lに図2に示すロッド32及びラックアンドピニオン機構33を介してモータ軸35aが連結されているので、電動モータ35Lの粘性補正電流I1は、車輪25Lの変位速度Svに比例する。このため、ステップST14においては、粘性補正係数K1を変位速度Svに乗算することによって、粘性補正電流I1を求めることにした。
次に、変位速度Svの値から車輪25Lの上下方向の変位加速度αを算出する(ステップST15)。例えば、変位速度Svの値を時間で微分することによって変位加速度αを求める。
次に、電動モータ35L自体のロータの慣性による損失に相当する補正電流I2を求める(ステップST16)。質量体であるロータは、慣性により常に現在の状態を維持し続けようとする。この慣性による損失の分だけ電動モータ35Lの負荷トルク、すなわち、出力トルクが増大する。慣性による損失に相当する係数を慣性補正係数K2とする。慣性補正係数K2は、採用される電動モータに応じた値に予め設定される。慣性による損失に相当する損失電流I2のことを、以下「慣性補正電流I2」と言う。
ところで、車輪25Lに図2に示すロッド32及びラックアンドピニオン機構33を介してモータ軸35aが連結されているので、左の電動モータ35Lの慣性補正電流I2は、車輪25Lの変位加速度αに比例する。このため、ステップST16においては、慣性補正係数K2を変位加速度αに乗算することによって、慣性補正電流I2を求めることにした。
電動モータ35Lは、電動ダンパ装置30Lの負荷(減衰力)を発生させるが、電動モータ35Lの粘性トルクと慣性トルクについては、電動モータ35Lの駆動電流では直接的に制御できないので、これらのトルクを補正する必要がある。このトルクを補正する方法について、次に説明する。
先ず、ステップST16の次に、粘性補正電流I1に慣性補正電流I2を加算した値、つまり総補正電流「I1+I2」の値が、ステップST13で求めた基準駆動電流Iexよりも大きいか否かを判断する(ステップST17)。
この総補正電流「I1+I2」が基準駆動電流Iexよりも大きいと判断した場合には、電動モータ35Lによる負荷(減衰力)が、必要とされる負荷よりも大きい。この場合には、総補正電流「I1+I2」から基準駆動電流Iexを減算した値Imを、目標駆動電流Imとする(ステップST18)。つまり、Im=「(I1+I2)−Iex」である。このようにして、左の電動モータ35Lに供給する目標駆動電流Imを設定する。こうすることにより、粘性トルクと慣性トルクの過大な負荷分を考慮して目標駆動電流Imを設定することができる。
このような状態では、過大な負荷であるから、適正な減衰力を付与するために、次に、バッテリ101から電力を供給する制御モード、いわゆる「駆動モード」において、電動モータ35Lを正転制御する(ステップST19)。つまり、電動モータ35Lの実電流Idが目標駆動電流Imとなるように、例えば、PI動作(比例動作及び積分動作による制御)によるフィードバック制御をする。このようにして、電動モータ35L自体の機械的な内部損失の影響や、ロータの慣性の影響を排除した、スムーズで応答性のよいダンパ制御を行うことができる。その後、このモータ正転制御ルーチンによる制御を終了する。
一方、ステップST17において、総補正電流「I1+I2」が基準駆動電流Iexよりも大きくないと判断した場合には、基準駆動電流Iexから総補正電流「I1+I2」を減算した値Irを、目標回生電流Irとする(ステップST20)。つまり「Iex−(I1+I2)」である。このようにして、左の電動モータ35Lからの目標回生電流Irを設定する。
次に、バッテリ101へ電力を回生する制御モード、いわゆる「回生モード」において、電動モータ35Lを回生制御する(ステップST21)。つまり、電動モータ35Lから回生する実電流Idが目標回生電流Irとなるように、例えば、PI制御をする。このようにして、電動モータ35Lで発生した回生電流をバッテリ101へ戻す回生駆動、すなわち、充電を行っている。これによって、省エネルギー化を図ることができる。その後、このモータ正転制御ルーチンによる制御を終了する。
ところで、上記ステップST17について詳しく説明すると、例えば、次のときに、総補正電流「I1+I2」が基準駆動電流Iexよりも大きくなる。
車輪25Lが大きくバウンドした場合などにおいて、車輪25Lが上下方向へ大きく変位し始めた時点では、車輪25Lの変位加速度αが急増する。しかし、車輪25Lの変位速度Svは増加途中にあり、まだ小さいままである。変位加速度αの急増に伴い、電動モータ35L自体の機械的な粘性トルクやロータの慣性による慣性トルクが大きいので、総補正電流「I1+I2」も急増する。一方、変位速度Svが小さいので、基準駆動電流Iexは極めて小さい。この結果、総補正電流「I1+I2」は基準駆動電流Iexを一時的に上回る。
このときには、変位速度Svが小さいので、ロッド32の直線運動によって回される電動モータ35Lの回転速度も小さい。このため、電動モータ35Lが発生する誘導起電圧が小さいので、誘導起電圧に起因するモータ軸35aの回転を抑制しようとするトルク(回転抑制トルク)は小さい。
しかし、電動モータ35Lのロータの慣性モーメントによる慣性トルクは極めて大きく、ロッド32の直線運動(上下方向の移動)を阻害する。つまり、電動モータ35Lの慣性トルクが負荷となって、車輪25Lの上下運動を減衰させるための減衰力が大きくなり過ぎる。従って、このときには、目標駆動電流Imを「(I1+I2)−Iex」に設定し(ステップST18)、バッテリ101から電動モータ35Lへ電流を供給し、電動モータ35Lを積極的に駆動することによって(ステップST19)、粘性トルクと慣性トルクを負荷として利用し、最適な減衰効果を発揮させることにした。
その後、変位速度Svが増大、すなわち、電動ダンパ装置30Lに必要な減衰力が増大するので、基準駆動電流Iexを増大させる。これに対し、変位速度Svが増大するにつれて、変位加速度αが減少する。このため、総補正電流「I1+I2」は減少し、基準駆動電流Iex以下になる。つまり、電動モータ35Lを駆動するときに、電動モータ35L自体の機械的な粘性トルクやロータの慣性による慣性トルクの影響による負荷トルクが小さい。この負荷トルクだけでは、ロッド32に必要な減衰力を付与できない。従って、このときには、付与できない部分、すなわち「Iex−(I1+I2)」となるように、電動モータ35Lの駆動電流(回生電流)を制御して、電動モータ35Lが発生する制御トルク(減衰トルク)をロッド32に付与する。すなわち、このときには、目標回生電流Irを「Iex−(I1+I2)」に設定し(ステップST20)、電動モータ35Lを回生制動をすることによって(ステップST21)、減衰効果を発揮させることにした。
次に、上記図8のステップST19、ST21でブリッジ回路122を制御する具体例を図11に基づき説明する。図11は、図6に示されたブリッジ回路122の正転駆動制御例を示す説明図である。
図11(a)及び図11(b)は、図8のステップST19で駆動モードを実行したときの、ブリッジ回路122の作動例を示している。駆動モードにおいて、4個のFET131〜134は次の信号を受ける。
第1FET131は、オフ信号(OFF)を受ける。
第2FET132は、制御用のパルス幅変調信号(PWM信号)を受ける。
第3FET133は、オン信号(ON)を受ける。
第4FET134は、オフ信号(OFF)を受ける。
つまり、第2FET132は、図11(a)に示す信号と図11(b)に示す信号とを交互に受ける。
図11(a)に示すように、第2FET132がPWM信号のオン信号(ON)を受けたときには、バッテリ101の正極と第3FET133と電動モータ35Lと第2FET132とアースとによって、正転回路が形成される。また、図11(b)に示すように、第2FET132がPWM信号のオフ信号(OFF)を受けたときには、電動モータ35Lと第1FET131と第3FET133とによって、正転の閉ループ回路が形成される。このように、第2FET132がPWM信号を受けることにより、ブリッジ回路122には正転回路と正転の閉ループ回路が交互に形成される。この結果、電動モータ35Lに駆動電流(概ね直流の電流)が流れることにより、電動モータ35Lを正回転させる。
図11(c)及び図11(d)は、図8のステップST21で回生モードを実行したときの、ブリッジ回路122の作動例を示している。回生モードにおいて、4個のFET131〜134は次の信号を受ける。
第1FET131は、PWM信号を受ける。
第2FET132は、第1FET131とは反転した波形のPWM信号、またはオフ信号(OFF)を受ける。
第3FET133は、オン信号(ON)を受ける。
第4FET134は、オフ信号(OFF)を受ける。
つまり、4個のFET131〜134は、図11(c)に示す信号と図11(d)に示す信号とを交互に受ける。
詳しく述べると、図11(c)に示すように、第1FET131がPWM信号のオン信号(ON)を受けるとともに、第2FET132がPWM信号のオフ信号(OFF)、またはオフ信号(OFF)を受けたときには、電動モータ35Lと第1FET131と第3FET133とによって、閉ループの回路が形成される。この閉ループの回路のことを、以下「発電制動回路」と言う。
車輪25Lの上下運動に応じて、ロッド32及びラックアンドピニオン機構33を介してモータ軸35aが逆転方向に回転されることによって、回転数に応じた誘導起電圧が電動モータ35Lに発生する。誘導電流(回生電流)は発電制動回路を流れる。
しかし、この状態のままでは、誘導電流は大き過ぎるので減少させる必要がある。そこで、次に、図11(d)に示すように、第1FET131がPWM信号のオフ信号(OFF)を受けるとともに、第2FET132がPWM信号のオン信号(ON)、またはオフ信号(OFF)を受けたときには、アースと第2FET132と電動モータ35Lと第3FET133とバッテリ101の正極とから成る、充電回路が形成される。この充電回路のことを、以下「回生制動回路」と言う。
PWM信号のキャリア周波数は、例えば20kHzのような高い周波数である。このため、図11(d)に示すように、第1FET131がPWM信号のオフ信号(OFF)を受けたときに、電動モータ35Lのインダクタンスにより、バッテリ101の電圧(例えば12V)よりも高い電圧に変換される。例え、電動モータ35Lの回転速度が低いことによって、誘導電圧が低い場合であっても、この誘導電圧はバッテリ101の電圧よりも十分に高いので、回生制動回路が形成される。
このように、回生モードを実行するときにブリッジ回路122をPWM信号により制御することによって、発電制動回路と回生制動回路とをPWM周期に合わせて交互に切り換えるようにした。このため、回生電流をPWM信号のデューテイ比(オンとオフの比率)に応じて徐々に減少させることができる。従って、電動モータ35Lは、車輪25Lの上下運動を減衰させるのに最適な減衰力を発する。つまり、車輪25Lの上下運動を最適な減衰速度で減衰させることができる。回生モード時におけるPWM信号のデューテイ比については、電動モータ35Lが最適な減衰力を発するように設定すればよい。
図12は、図7に示された電動モータ駆動制御ルーチンにおいて、ステップST08を実行するためのモータ逆転制御ルーチンを示す制御フローチャートである。なお、図12のモータ逆転制御ルーチンは、上記図8に示すモータ正転制御ルーチンと類似の構成なので、相違点を主に説明し、他の部分については説明を省略する。
先ず、モータ逆転時の基準駆動電流マップに基づいて、変位速度Svに応じた基準駆動電流Iexを求める(ステップST111)。
図13は、横軸を変位速度Svとし、縦軸を基準駆動電流Iexとして、変位速度Svに応じた基準駆動電流Iexを求めるモータ逆転時の基準駆動電流マップMrの説明図である。このモータ逆転時の基準駆動電流マップMrは、電動ダンパ装置30Lが縮む場合(変位方向が上方向の場合)のマップであって、例えば、変位速度Sv=0のときに基準駆動電流Iex=0であり、Svが増大するにつれてIexも増大する特性を有した特性曲線によって示される。
この特性曲線によれば、Svの値に応じてIexが2段階に変化する特性を有していることが判る。つまり、Svが0から所定のSv3まで増大する範囲におけるIexの増大特性と、SvがSv3を超えて増大する範囲におけるIexの増大特性とが異なる。
以上の説明から明らかなように、図13に示すモータ逆転時の基準駆動電流マップMrは、上記図9に示すモータ正転時の基準駆動電流マップMnと特性が異なる。
ところで、電動モータ35Lが発生する出力、つまり「ダンパ減衰力」は、電動モータ35Lに供給される駆動電流に対応する。このため、図13に示されたモータ逆転時の基準駆動電流マップMrの説明図は、縦軸の基準駆動電流Iexを基準ダンパ減衰力に置換した、基準ダンパ減衰力マップの説明図と考えることができる。
図12に示すステップST112は、図8に示すステップST12と同じである。
図12に示すステップST113は、図8に示すステップST13と同じである。
図12に示すステップST114は、図8に示すステップST14と同じである。
図12に示すステップST115は、図8に示すステップST15と同じである。
図12に示すステップST116は、図8に示すステップST16と同じである。
図12に示すステップST117は、図8に示すステップST17と同じである。
図12に示すステップST118は、図8に示すステップST18と同じである。
図12に示すステップST119は、図8に示すステップST19と同様の構成であり、バッテリ101から電力を供給する制御モード、いわゆる「駆動モード」において、電動モータ35Lを逆転制御する。その後、このモータ逆転制御ルーチンによる制御を終了する。
図12に示すステップST120は、図8に示すステップST20と同じである。
図12に示すステップST121は、図8に示すステップST21と同様の構成であり、バッテリ101へ電力を回生する制御モード、いわゆる「回生モード」において、電動モータ35Lを回生制御する。その後、このモータ逆転制御ルーチンによる制御を終了する。
次に、上記図12のステップST119、ST121でブリッジ回路122を制御する具体例を図14に基づき説明する。図14は、図6に示されたブリッジ回路122の逆転駆動制御例を示す説明図である。図14に示す逆転駆動制御例は、上記図11に示す正転駆動制御例に対して、逆方向の駆動制御をすることを特徴とする。以下、詳しく説明する。
図14(a)及び図14(b)は、図12のステップST119で駆動モードを実行したときの、ブリッジ回路122の作動例を示している。駆動モードにおいて、4個のFET131〜134は次の信号を受ける。
第1FET131は、オン信号(ON)を受ける。
第2FET132は、オフ信号(OFF)を受ける。
第3FET133は、オフ信号(OFF)を受ける。
第4FET134は、制御用のパルス幅変調信号(PWM信号)を受ける。
つまり、第4FET134は、図14(a)に示す信号と図14(b)に示す信号とを交互に受ける。
図14(a)に示すように、第4FET134がPWM信号のオン信号(ON)を受けたときには、バッテリ101の正極と第1FET131と電動モータ35Lと第4FET134とアースとによって、逆転回路が形成される。また、図14(b)に示すように、第4FET134がPWM信号のオフ信号(OFF)を受けたときには、電動モータ35Lと第1FET131と第3FET133とによって、逆転の閉ループ回路が形成される。このように、第4FET134がPWM信号を受けることにより、ブリッジ回路122には逆転回路と逆転の閉ループ回路が交互に形成される。この結果、電動モータ35Lに駆動電流(概ね直流の電流)が流れることにより、電動モータ35Lを逆回転させる。
図14(c)及び図14(d)は、図12のステップST121で回生モードを実行したときの、ブリッジ回路122の作動例を示している。回生モードにおいて、4個のFET131〜134は次の信号を受ける。
第1FET131は、オン信号(ON)を受ける。
第2FET132は、オフ信号(OFF)を受ける。
第3FET133は、PWM信号を受ける。
第4FET134は、第3FET133とは反転したPWM信号、またはオフ信号(OFF)を受ける。
つまり、4個のFET131〜134は、図14(c)に示す信号と図14(d)に示す信号とを交互に受ける。
詳しく述べると、図14(c)に示すように、第3FET133がPWM信号のオン信号(ON)を受けるとともに、第4FET134がPWM信号のオフ信号(OFF)、またはオフ信号(OFF)を受けたときには、電動モータ35Lと第1FET131と第3FET133とによって、閉ループの回路が形成される。この閉ループの回路のことを、以下「発電制動回路」と言う。
車輪25Lが上下運動に応じて、ロッド32及びラックアンドピニオン機構33を介してモータ軸35aが正転方向に回転されることによって、回転数に応じた誘導起電圧が電動モータ35Lに発生する。誘導電流(回生電流)は発電制動回路を流れる。
次に、図14(d)に示すように、第3FET133がPWM信号のオフ信号(OFF)を受けるとともに、第4FET134がPWM信号のオン信号(ON)、またはオフ信号(OFF)を受けたときには、アースと第4FET134と電動モータ35Lと第1FET131とバッテリ101の正極とから成る、充電回路が形成される。この充電回路のことを、以下「回生制動回路」と言う。
このように、回生モードを実行するときにブリッジ回路122をPWM信号により制御することによって、発電制動回路と回生制動回路とをPWM周期に合わせて交互に切り換えるようにした。このため、回生電流をPWM信号のデューテイ比に応じて徐々に減少させることができる。従って、電動モータ35Lは、車輪25Lの上下運動を減衰させるのに最適な減衰力を発する。つまり、車輪25Lの上下運動を最適な減衰速度で減衰させることができる。回生モード時におけるPWM信号のデューテイ比については、電動モータ35Lが最適な減衰力を発するように発するように設定すればよい。
次に、上記構成の電動ダンパ装置30Lの作用を、図1及び図2に基づき説明する。
電動モータ35Lが目標駆動電流Imで(図8参照)に応じて駆動トルクを発生したときは、次の作用をなす。この駆動トルクは、ラックアンドピニオン機構33及びロッド32を介して、車輪25Lの上下方向の変位を抑制するように働く。つまり、車輪25Lの上下方向の振動を、回転抑制トルクによって抑制する。このように、車体11に対する車輪25Lの相対的な上下運動を回転運動に変換して電動モータ35Lを回転させることにより、上下運動を減衰させることができる。
また、車輪25Lの上下方向に変位することにより、ロッド32は上下方向に直線運動をする。ロッド32の直線運動は、ラックアンドピニオン機構33によってモータ軸35aの回転運動に変換される。この結果、電動モータ35Lは、回される回転速度に応じた誘導起電圧を発生する。この誘導起電圧に起因するモータ軸35aの回転を抑制しようとするトルク(回転抑制トルク)を発生させてしまうと、ラックアンドピニオン機構33のガタなどによる遅れや、電動モータ35Lの粘性トルクと慣性トルクによる遅れが発生してしまう。
これに対して、電動ダンパ装置30Lは、ロッド32を介して車輪25Lの上下方向の変位を直接に検出して、または補正して、電動モータ35Lを駆動制御することによって、遅れのないスムーズな減衰力を発生させることができる。つまり、車輪25Lの上下方向の振動を、回転抑制トルクによって抑制する。このように、車体11に対する車輪25Lの相対的な上下運動を回転運動に変換して電動モータ35Lを回転させることにより、上下運動を応答性良く減衰させることができる。
以上の説明から明らかなように、図7に示されるステップST05は、変位量Stの値から車輪25Lの上下方向の変位速度Svを算出することによって、検出する「変位速度検出部」を構成している。すなわち、変位速度検出部ST05は、車輪25Lが上下方向に変位する変位速度を算出する。このような変位速度検出部ST05は、変位速度演算部と言うこともできる。
また、図7に示されるステップST06は、変位速度Svの値に基づいて、車輪25Lの変位方向が上下どちらであるかを判断する「変位方向判断部」を構成している。
また、図8に示されるステップST11とST18とST20、及び、図12に示されるステップST111とST118とST120は、変位速度Svに基づいて電動モータ35Lの目標駆動電流Im(目標回生電流Irを含む)を設定する「駆動電流設定部」を構成している。
また、図8に示されるステップST15と、図12に示されるステップST115は、変位速度Svの値から、車輪25Lの上下方向の変位加速度αを算出する「変位加速度演算部」を構成している。
また、図8に示されるステップST12とST13、及び、図12に示されるステップST112とST113は、基準駆動電流Iexの値を車速Vsに応じて補正する「車速対応電流補正部」を構成している。
また、「駆動電流設定部」は、車輪25Lの変位方向が上方向の場合と下方向の場合とでは、目標駆動電流Im(目標回生電流Irを含む)を異なる値に設定するように構成している(図8に示されるステップST11とST18とST20、及び図12に示されるステップST111とST118とST120の構成)。
さらに、「駆動電流設定部」は、変位速度Svと変位加速度αに応じて、目標駆動電流Im(目標回生電流Irを含む)の値を補正するように構成している(図8に示されるステップST14〜ST16とST18とST20、及び、図12に示されるステップST114〜ST116とST118とST120の構成)。
ここで、図8に示されるステップST14〜ST16、及び、図12に示されるステップST114〜ST116は、電動モータ35L自体の機械的な内部損失やロータの慣性による負荷トルクに相当する補正電流I1,I2を求める「補正電流設定部」を構成している。
以上の説明をまとめると、次の通りである(図1、図4、図7、図8、図12参照)。
制御部105は、車輪25Lが上下方向に変位する変位量Stを変位量検出部80Lによって検出し、変位量Stの値から車輪25Lの上下方向の変位速度Svを変位速度検出部ST05によって求め、変位速度Svに基づき電動モータ35Lの目標駆動電流Im(目標回生電流Irを含む)を駆動電流設定部ST11,ST18,ST20,ST111,ST118,ST120によって設定し、目標駆動電流Imに基づきモータ駆動部106Lにより電動モータ35Lを駆動制御する。
このように、変位速度Svに基づいた目標駆動電流Im(目標回生電流Irを含む)によって、電動モータ35Lを駆動させるので、電動モータ35Lは車輪25Lの上下運動を減衰させるのに最適な減衰力を発する。従って、車輪25Lの上下運動を最適に減衰させることができる。
さらに、制御部105において、変位方向判断部ST06によって、変位量Stと変位速度Svの少なくとも一方の値に基づき車輪25Lの変位方向を判断する。そして、駆動電流設定部ST11,ST18,ST20,ST111,ST118,ST120によって、車輪25Lの変位方向が上方向の場合と下方向の場合とで目標駆動電流Im(目標回生電流Irを含む)を異なる値に設定する。このため、車輪25Lの変位方向、つまり、車両用電動ダンパ装置30Lの伸縮方向によって、目標駆動電流Imを異なる値に設定することにより、電動モータ35Lによる減衰力を変えることができる。従って、車輪25Lの上下運動をより最適に減衰させることができる。
さらに、制御部105において、変位加速度演算部ST15,ST115により、変位速度Svの値から車輪25Lの変位加速度αを求める。そして、駆動電流設定部ST11,ST18,ST20,ST111,ST118,ST120により、変位速度Svと変位加速度αに応じて目標駆動電流Imの値を補正する。
変位速度Svと変位加速度αに応じて、電動モータ35L自体の機械的な内部損失による負荷トルク(粘性トルク)に相当する粘性補正電流I1と、電動モータ35L自体のロータの慣性による負荷トルク(慣性トルク)に相当する慣性補正電流I2が、変化する。これらの補正電流I1,I2に応じて目標駆動電流Im(目標回生電流Irを含む)の値を補正することができる。この補正された目標駆動電流Imによって、電動モータ35Lを駆動させるので、電動モータ35Lは車輪25Lの上下運動を減衰させるのに最適な減衰力を発する。従って、車輪25Lの上下運動をより一層最適に減衰させることができる。
さらに、モータ駆動部106Lは、少なくとも2個の電界効果型トランジスタ131,132(または、133,134)で1組のアームを構成し、少なくとも2組のアームでブリッジ回路122を構成し、電界効果型トランジスタをパルス幅変調信号で駆動し、少なくともモータ回生モードを有する。
電界効果型トランジスタによってブリッジ回路122を構成し、電界効果型トランジスタをパルス幅変調信号で駆動することにより、発熱が少ない効率の良い駆動ができ、しかも、電動モータ35Lのインダクタンスを交流電圧に変換できるので、電動モータ35Lの誘導起電圧が電源の電圧よりも十分に小さくても、電源101の電圧よりも高い交流電圧に変換でき、回生効率を高めることができる。
なお、本発明では、車両10が、前後左右に4つの車輪を有した自動車から成る場合において、左右の電動ダンパ装置30L,30Rは、左右2つのフロントサスペンションだけに採用、左右2つのリヤサスペンションだけに採用、又は、4つ全てのサスペンションに採用することができる。
この場合に、モータ駆動部106L,106Rは制御部105から分離した構成である。このため、電動ダンパ装置30L,30Rの数量に合わせてモータ駆動部106L,106Rを設ければよい。このように、制御部105とモータ駆動部106L,106Rとを分離したので、各部の構成の簡素化、軽量化、高信頼化、低コスト化を図ることができる。
また、車両用サスペンション装置20L、20Rは、ダブルウィッシュボーン式サスペンションに限定されるものではなく、例えば、ストラット式サスペンションに適用してもよい。
また、シリンダ31は、別部材から成る第1シリンダ41と第2シリンダ42との構成に限定されるものではなく、単一の部材によって構成されてもよい。
また、ロッド32の一端部32aは、車輪支持部材23に直接に取り付けられる構成の他に、アッパアーム21やロアアーム22等を介して、間接的に取り付けられる構成でもよい。
また、電動モータ35L,35Rは、ブラシ付き直流モータに限定されるものではなく、例えば、ブラシレスモータであってもよい。ブラシレスモータは、モータ自体の機械的な内部損失や、モータ自体のロータの慣性による損失が小さい。電動モータ35L,35Rにブラシレスモータを採用した場合には、図8に示すステップST14〜ST16を廃止し、総補正電流「I1+I2」の代わりとなる、別の補正電流値を適宜設定することは任意である。
また、変位量検出部80L,80Rは、車体11に対して車輪25L,25Rが相対的に上下方向に変位する変位量Stを検出するものであればよい。
このため、スイングロッド82は、ロアアーム22に連結する構成に限定されるものではなく、例えば、アッパアーム21、車輪支持部材23または電動ダンパ装置30L、30Rに連結する構成であってもよい。
また、変位量検出部80L,80Rは、図4に示される可変抵抗式の構成に限定されるものではなく、例えば、ロータリエンコーダ式の構成や、電動モータ35L,35Rに発生する逆起電圧から求める構成であってもよい。この逆起電圧は、電動モータ35L,35Rの回転速度に比例する。この回転速度は、車輪25L,25Rの変位速度Svに比例する。このため、回転速度から変位速度Svを求めることができる。
また、変位量検出部80L,80Rは、電動モータ35L,35Rに設けられているレゾルバ(回転角検出手段)によって、回転角を求める構成であってもよい。この回転角から変位量Stを求めることができる。この場合には、新たな変位量検出部を設ける必要がないので、構成を単純化して、低コスト、高信頼性、軽量化を図ることができるとともに、検出精度が高い。
また、変位速度検出部は、変位量検出部80Lのポテンショメータ85の出力値(変位量Stの値)から変位速度Svを算出した(ステップST05で実行する)構成に限定されるものではない。例えば、ポテンショメータ85の代わりに直流発電機(タコジェネレータ)などを用い、変位速度Svに応じて直流発電機から出力された電圧を検出することにより、変位速度Svを直接に検出する構成であってもよい。
また、図8に示されるステップST12〜ST13の構成(図12に示されるステップST112〜ST113の構成)、つまり、基準駆動電流Iexの値を車速Vsに応じて補正する構成の有無は任意である。例えば、車速Vsの代わりに車種毎に適宜設定された一定値によって基準駆動電流Iexを補正してもよい。
また、変位方向判断部(図7のステップST06に相当)は、車輪25L,25Rの変位方向が上下どちらであるかについて、変位量Stと変位速度Svの少なくとも一方の値に基づいて判断すればよい。
例えば、変位量Stによって変位方向を判断する場合には、図7に示すステップST06は、変位量Stが増大したときに車輪25Lが下方向へ変位したと判断し、変位量Stが減少したときに車輪25Lが上方向へ変位したと判断する。
また、電動モータ35L,35Rの回転方向によって、車輪25L,25Rの変位方向を判断することができる。
また、制御部105は、左右の変位量検出部80L,80Rのいずれか一方で検出された変位量に基づいて制御を行う構成であってもよい。
本発明の車両用電動ダンパ装置30L,30Rは、自動車の各サスペンション装置に用いるのに好適である。
本発明に係る車両用サスペンション装置を備えた車両の模式図である。 図1に示された左の車両用電動ダンパ装置の断面図である。 図2の3−3線断面図である。 図1に示された左の変位量検出部の模式図である。 図1に示された左右の電動ダンパ装置の制御回路図である。 図5に示されたモータ駆動部におけるブリッジ回路の回路図である。 図5に示された制御回路によって実行される電動モータ駆動制御ルーチンの一例を示す制御フローチャートである。 図7に示されたモータ正転制御のルーチンを示す制御フローチャートである。 図8に示されたモータ正転時の基準駆動電流マップの説明図である。 図8に示された車速に応じた車速補正係数を求める車速補正マップの説明図である。 図6に示されたブリッジ回路の正転駆動制御例を示す説明図である。 図7に示されたモータ逆転制御のルーチンを示す制御フローチャートである。 図12に示されたモータ逆転時の基準駆動電流マップの説明図である。 図6に示されたブリッジ回路の逆転駆動制御例を示す説明図である。
符号の説明
10…車両、11…車体、20L,20R…車両用サスペンション装置、23…車輪支持部材(ナックル)、25L,25R…車輪、30L,30R…車両用電動ダンパ装置、31…シリンダ、32…ロッド、32a…ロッドの一端部、33…ラックアンドピニオン機構、35L,35R…電動モータ、35a…モータ軸、36…コイルスプリング、36a…コイルスプリングの一端部、36b…コイルスプリングの他端部、51…ラック、52…ピニオン、80L,80R…変位量検出部、101…バッテリ、104…車速検出部、105…制御部、106L,106R…モータ駆動部、124L,124R…電流検出部、ST05…変位速度検出部、ST06…変位方向判断部、ST11,ST18,ST20,ST111,ST118,ST120…駆動電流設定部、ST15,ST115…変位加速度演算部、Im…目標駆動電流、St…変位量、Sv…変位速度、α…変位加速度。

Claims (6)

  1. 車体に対する車輪の相対的な上下運動を回転運動に変換して電動モータを回転させることにより前記上下運動を減衰させるようにし、また、前記車輪の上下運動を減衰させるための減衰力を前記電動モータが発生するようにした車両用電動ダンパ装置であって、
    前記車輪が上下方向に変位する変位速度を検出する変位速度検出部と、
    前記変位速度に基づいて前記電動モータの目標駆動電流を設定する駆動電流設定部と、
    前記目標駆動電流に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号で駆動制御するモータ駆動部とを、
    有し
    前記変位速度検出部は、前記車輪が上下方向に変位する変位量を検出する変位量検出部の値から算出し、
    前記変位量と前記変位速度の少なくとも一方の値に基づいて、前記車輪の変位方向が上下どちらであるかを判断する変位方向判断部を備え、
    前記駆動電流設定部は、前記変位方向が上方向の場合と下方向の場合とでは、前記目標駆動電流を異なる値に設定するように構成され
    前記変位速度の値から、前記車輪の上下方向の変位加速度を算出する変位加速度演算部を備え、
    前記駆動電流設定部は、前記変位速度と前記変位加速度の少なくとも一方に応じて、前記目標駆動電流の値を補正するように構成され
    前記駆動電流設定部は、前記目標駆動電流と、前記変位速度に応じた粘性補正電流と前記変位加速度に応じた慣性補正電流との和である総補正電流と、の大小関係に基づいて、バッテリから前記電動モータへ電流を供給して該電動モータを駆動制御する駆動モードとなるように前記目標駆動電流を補正するか、前記電動モータから前記バッテリへ電流を供給して回生するモータ回生モードとなるように前記目標駆動電流を補正するかを決定することを特徴とした両用電動ダンパ装置。
  2. 前記駆動電流設定部は、
    前記目標駆動電流よりも前記総補正電流が大きいときは、前記バッテリから前記電動モータへ電流を供給して該電動モータを駆動制御する前記駆動モードとなるように前記目標駆動電流を補正し、
    前記目標駆動電流よりも前記総補正電流が小さいときは、前記電動モータから前記バッテリへ電流を供給して回生する前記モータ回生モードとなるように前記目標駆動電流を補正することを特徴とした請求項1記載の車両用電動ダンパ装置。
  3. 前記モータ駆動部は、少なくとも2個の電界効果型トランジスタで1組のアームを構成し、少なくとも2組のアームでブリッジ回路を構成し、前記電界効果型トランジスタを前記パルス幅変調信号で駆動し、
    前記駆動電流設定部にて、前記電動モータから前記バッテリへ電流を供給して回生するよう前記目標駆動電流を補正した場合は、前記モータ駆動部は前記モータ回生モードにて前記駆動モータを駆動することを特徴とした請求項1又は請求項2記載の車両用電動ダンパ装置。
  4. 前記モータ回生モードにおいて、前記ブリッジ回路を前記パルス幅変調信号により制御することによって、
    前記少なくとも2組のアームの4個の電界効果型トランジスタのうち2個の電界効果型トランジスタと、該2個の電界効果型トランジスタ間に配置される前記電動モータとによって形成される閉ループ回路である発電制御回路と、
    アースと、前記4個の電界効果型トランジスタのうちアースに接続される電界効果型トランジスタと、該アースに接続される電界効果型トランジスタに前記電動モータを介して接続される電界効果型トランジスタと、該電動モータと、前記バッテリの正極とによって形成される充電回路とを、交互に切り替えることを特徴とした請求項3記載の車両用電動ダンパ装置。
  5. 前記粘性補正電流は、前記電動モータの内部損失と前記変位速度とに基づいて求められ、前記慣性補正電流は、前記電動モータのロータの慣性による損失と前記変位加速度について求められることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用電動ダンパ装置。
  6. 車体に対する車輪の相対的な上下運動を回転運動に変換して電動モータを回転させることにより前記上下運動を減衰させるようにし、また、前記車輪の上下運動を減衰させるための減衰力を前記電動モータが発生するようにした車両用電動ダンパ装置であって、
    前記車輪が上下方向に変位する変位速度を検出する変位速度検出部と、
    前記変位速度に基づいて前記電動モータの目標駆動電流を設定する駆動電流設定部と、
    前記目標駆動電流に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号で駆動制御するモータ駆動部とを、
    有し、
    前記変位速度の値から、前記車輪の上下方向の変位加速度を算出する変位加速度演算部を備え、
    前記駆動電流設定部は、前記変位速度と前記変位加速度の少なくとも一方に応じて、前記目標駆動電流の値を補正するように構成され、
    前記駆動電流設定部は、前記目標駆動電流と、前記変位速度に応じた粘性補正電流と前記変位加速度に応じた慣性補正電流との和である総補正電流と、の大小関係に基づいて、バッテリから前記電動モータへ電流を供給して該電動モータを駆動制御する駆動モードとなるように前記目標駆動電流を補正するか、前記電動モータから前記バッテリへ電流を供給して回生するモータ回生モードとなるように前記目標駆動電流を補正するかを決定することを特徴とした車両用電動ダンパ装置。
JP2007197975A 2007-07-30 2007-07-30 車両用電動ダンパ装置 Active JP4966782B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007197975A JP4966782B2 (ja) 2007-07-30 2007-07-30 車両用電動ダンパ装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007197975A JP4966782B2 (ja) 2007-07-30 2007-07-30 車両用電動ダンパ装置

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012073016A Division JP2012166783A (ja) 2012-03-28 2012-03-28 車両用電動ダンパ装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009029368A JP2009029368A (ja) 2009-02-12
JP4966782B2 true JP4966782B2 (ja) 2012-07-04

Family

ID=40400352

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007197975A Active JP4966782B2 (ja) 2007-07-30 2007-07-30 車両用電動ダンパ装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4966782B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2452840B1 (en) * 2009-07-08 2017-10-18 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Vehicular damper system
JP5293822B2 (ja) * 2009-07-08 2013-09-18 トヨタ自動車株式会社 車両用ダンパシステム
JP5316360B2 (ja) * 2009-10-16 2013-10-16 トヨタ自動車株式会社 ショックアブソーバ装置
DE112010005559B4 (de) * 2010-05-11 2018-10-31 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Aufhängungsvorrichtung
JP5434797B2 (ja) * 2010-05-31 2014-03-05 トヨタ自動車株式会社 ショックアブソーバ装置
US8596430B2 (en) * 2010-06-17 2013-12-03 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Electrical shock absorber
CN113760027B (zh) * 2020-06-03 2023-08-18 意法半导体股份有限公司 电路、对应系统、车辆和操作方法
IT202000013165A1 (it) 2020-06-03 2021-12-03 St Microelectronics Alps Sas Circuito, sistema, veicolo e procedimento di funzionamento corrispondenti

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005256921A (ja) * 2004-03-11 2005-09-22 Kayaba Ind Co Ltd 電磁緩衝器
JP2006062550A (ja) * 2004-08-27 2006-03-09 Kayaba Ind Co Ltd 減衰特性制御システムおよび減衰特性制御システムの制御方法
JP4787579B2 (ja) * 2005-09-21 2011-10-05 カヤバ工業株式会社 電磁サスペンション装置および電磁サスペンション装置の制御装置
JP4643416B2 (ja) * 2005-10-26 2011-03-02 トヨタ自動車株式会社 車両制振装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009029368A (ja) 2009-02-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4966782B2 (ja) 車両用電動ダンパ装置
US8042818B2 (en) Electric damper
KR101198800B1 (ko) 자동차의 액티브 롤 제어장치
JP2004237825A (ja) 車両用電磁サスペンション装置と車両用電磁サスペンション装置のモータ制御方法
JP6840185B2 (ja) 電動サスペンション装置
KR101294070B1 (ko) 능동 제어 현가장치
JP5154159B2 (ja) 車両用電動ダンパ装置
KR20100019759A (ko) 액티브 롤 컨트롤 장치
JP5779685B2 (ja) 車両用電動ダンパ装置
JP4928431B2 (ja) 電動式ダンパ装置
JP4680788B2 (ja) サスペンション装置
WO2018230425A1 (ja) サスペンション制御装置
KR101744803B1 (ko) 액티브 롤 컨트롤 장치
KR101427945B1 (ko) 액티브 롤 컨트롤 장치
CN103568756A (zh) 一种用于汽车底盘的悬架结构
JP2012166783A (ja) 車両用電動ダンパ装置
JP2009234472A (ja) 電磁サスペンションユニットおよび電磁サスペンション装置
CN202896663U (zh) 汽车转向器的齿条压紧机构
KR20120062272A (ko) 자동차의 후륜 조향장치
JP5046827B2 (ja) 車両用電動ダンパ装置
JP5187252B2 (ja) 車両用サスペンションシステム
JP4956378B2 (ja) 電動式車両姿勢制御装置
JP5202509B2 (ja) 後輪トー角制御装置
JP2009149184A (ja) 電動パワーステアリング・電動ダンパ・システム
JP4133291B2 (ja) フロントフォーク

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091127

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110830

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110913

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111114

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120306

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120402

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150406

Year of fee payment: 3