以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
図1は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図2は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の型開き時の状態を示す図である。
本実施の形態における型締装置10は、主に、固定プラテン11、可動プラテン12、ロッド39、タイバー14、及び型開閉駆動部100等より構成される。型締装置10は、射出成形機のフレームFr上に施設されてレールを構成する2本のガイドGd(図においては、2本のガイドGdのうちの1本だけを示す。)によって支持されると共に案内される。
固定プラテン11は、金型装置19を構成する一方の金型(固定金型15)を支持する部材であり、ガイドGd上に載置され、フレームFr及びガイドGdに対して固定されている。可動プラテン12は、金型装置19を構成する他方の金型(可動金型16)を支持する部材であり、タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて型開閉方向に進退自在に配設される。したがって、前記可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。可動プラテン12の進退に伴って、固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に複数の図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての図示されない樹脂が前記各キャビティ空間に充墳される。
型開閉駆動部100は、型開閉用の駆動力を発生させると共に、型締力を発生させるための機構を有する。したがって、型開閉駆動部100によって発生させられる力によって可動プラテン12は進退し、型閉じ、型締め、及び型開き等が行われる。図中、型開閉駆動部100は、単なる矩形によって表現されているが、その詳細な構成については複数の実施の形態に分けて説明する。したがって、ここでは、各実施の形態において共通な点についてのみ説明する。
固定プラテン11と型開閉駆動部100との間には4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。タイバー14の前端部には図示されない第1のねじ部が形成され、タイバー14は、当該第1のねじ部とナットn1とを螺合させることによって固定プラテン11に固定される。また、タイバー14の後方の所定の部分又は後端部は、型開閉駆動部100を構成するいずれかの部材に固定される。これによって、型開閉駆動部100と固定プラテン11とが連結される。
また、可動プラテン12と型開閉駆動部100を構成するいずれかの部材とはロッド39によって連結されている。すなわち、型開閉駆動部100によって発生される力は、ロッド39によって可動プラテン12に伝達され、その力によって、可動プラテン12は前後方向に進退すると共に、型締力を発生させる。
以下、実施の形態ごとに型開閉駆動部100の詳細な構成を説明すると共に、各型開閉駆動部100に基づく型締装置10の動作について説明する。
図3は、第一の実施の形態における型開閉駆動部の型閉じ時の状態を示す図、図4は、第一の実施の形態における型開閉駆動部の型開き時の状態を示す図である。図3及び図4中、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。なお、第一の実施の形態において型開閉駆動部100は、型開閉駆動部100aとして説明する。
型開閉駆動部100aは、リヤプラテン13、吸着板22、タイバー支持プラテン20等より構成される。
タイバー支持プラテン20は、タイバー14の後端を支持するためのプラテンである。タイバー支持プラテン20は、可動プラテン12を間に挟んで固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させて、フレームFrに対して固定されて配設される。固定プラテン11とタイバー支持プラテン20との間に4本のタイバー14が架設される。すなわち、タイバー14の後端は、タイバー支持プラテン20に連結及び固定される。
リヤプラテン13は、その前端面がタイバー支持プラテン20の後端面に固定されることにより、タイバー支持プラテン20に支持されてフレームFrに固定されるように配設される。但し、リヤプラテン13の底面がフレームFrに直接固定されてもよい。この場合、リヤプレタン13は、必ずしもタイバー支持プラテン20に支持(固定)されなくてもよい。
吸着板22は、その前端面がリヤプラテン13の後端面と対向するように配設される。吸着板22は、吸着板支持部材221に対して固定される。吸着板支持部材221とフレームFrとの間には、ローラ機構28が設けられている。したがって、吸着板22は、フレームFrに対して前後方向に進退自在に配設される。
リヤプラテンの13の後端面と、吸着板22の前端面とは、可動プラテン12の移動方向に対して垂直方向に形成され、かつ、互いに平行となるように形成されている。
ロッド39は、タイバー支持プラテン20及びリヤプラテン13を摺動可能に貫通し、その後端において吸着板22に連結及び固定されている。したがって、吸着板22の前後方向への移動は、ロッド39によって可動プラテン12に伝達される。すなわち、吸着板22が前後方向に移動することにより、可動プラテン12が進退し、型閉じ、型締め、又は型開きが行われる。
リヤプラテン13と吸着板22との間には、型締め用の駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。電磁石ユニット37は、リヤプラテン13の後端面側に形成された電磁石49、及び吸着板22の前端面側に形成された吸着部51より構成される。吸着部51は、吸着板22の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、ロッド39よりわずかに上方及び下方に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45が互いに平行に形成され、各溝45間に矩形の形状を有するコア46、及び他の部分にヨーク47が形成される。コア46にはコイル48が巻装される。
なお、コア46及びヨーク47は、鋳物の一体構造で構成されるが、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成してもよい。
本実施の形態においては、リヤプラテン13に電磁石49が、吸着板22に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13側に吸着部51を、吸着板22に電磁石49を形成するようにしてもよい。
リヤプラテン13(の後端面)と吸着板22(の前端面)との間には、安定化手段としてのバネ30(機械式バネ)が配設されている。バネ30の伸縮方向は、吸着板20の移動方向と一致する。したがって、リヤプラテン13と吸着板22との間隔が小さくなるとバネ30は収縮する。一方、当該間隔が大きくなるとバネ30は伸張する。図4における一点鎖線Sは、バネ30の安定点における吸着板22の基準位置を示す。なお、型閉じ及び型締めの際(図3に示される状態)において、バネ30の伸縮方向における厚さが、吸着板22とリヤプラテン13との近接の妨げとならないよう、吸着板22の前端面及びリヤプラテン13の後端面の少なくともいずれか一方に、収縮したバネ30を収納可能な空間(凹部)を設けるとよい。また、バネ30の材質は磁性体であってもよいが、電磁石48による磁力の影響を受けにくい非磁性体(例えば、SUS303、SUS304等)であることが好ましい。
なお、型開限の位置(バネ30の安定点、すなわち、吸着板22の基準位置22)は、電磁石49の磁力(吸着力)が吸着部51に及ぶ範囲とされる。すなわち、型開きの完了時において、ギャップδの値は、電磁石49の磁力(吸着力)によってリヤプラテン13が前進可能な範囲とされる。
つまり、
Fd37:電磁石ユニット37で発生させる吸着力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
とした場合、
(Fm1+Fm2)<Fd37
が満たされる範囲内で、型開限の位置が設定される。
以下、第一の実施の形態の型開閉駆動部100aを有する型締装置10の動作について説明する。型締装置10において、非図示の制御部の型開閉処理手段が、型開閉処理の制御を行う。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、コイル48に電流を供給する。それによって電磁石49が駆動され、吸着部51が電磁石49の吸着力によって吸着される。その結果、吸着板22は前進し、吸着板22とロッド39を介して連結される可動プラテン12も前進する。
吸着板22の前進に伴いバネ30が収縮し、安定点からの変位に応じた復元力(吸着板22を基準位置Sに維持しようとする力)が可動プラテン12の進行方向とは逆向きに作用する。したがって、型開閉処理手段は、バネ30の復元力と、吸着部51及び電磁石49の間の吸着力とのバランスをとることにより、可動プラテン12の位置制御を行うことが可能となる。バネ30の復元力は安定点からの変位に対して比例するため、型開閉処理手段は、復元力に応じた電流値の電流をコイル48に供給することにより位置制御を行う。その結果、可動プラテン12の移動速度を適切に制御する(安定させる)ことができ、金型装置19が破損しないよう十分減速された状態で、型タッチ(可動金型16と固定金型15との当接)を行うことが可能となる。
可動金型16が固定金型15に当接させられたとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される(図3参照)。なお、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
引き続き、吸着部51と電磁石49との吸着力によって、型締めが行われる。なお、本実施の形態では、型締め開始時等、型締力を変化させる際に、制御部は、当該変化によって得るべき目標となる型締力、すなわち、定常状態で目標とする型締力型締力(以下、かかる型締力を「定常型締力」という。)を発生させるために必要な定常的な電流(以下、かかる電流を「定格電流」という。)の値をコイル48に供給するように制御する。
また、型締力は図示されない荷重検出器によって検出され、検出された型締力は前記制御部に送られ、該制御部において、型締力が設定値になるようにコイル48に供給される電流が調整され、フィードバック制御が行われる。この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。なお、前記荷重検出器として、ロッド39上に配設されたロードセル、タイバー14の伸び量を検出するセンサ等を使用することができる。
各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると型開きが行われる。型開き時において、型開閉処理手段は、コイル48への電流の供給を停止する。それにより、吸着部51及び電磁石49の間の吸着力は消滅し、バネ30の復元力によって、吸着板22は基準位置Sまで後退する。吸着板22の後退に伴って、可動プラテン12も後退し、型開きが行われる。
但し、型開き時においても電磁石49を駆動させ、コイル48に供給する電流の電流値を低下させつつ吸着部51及び電磁石49の間の吸着力とバネ30の復元力とのバランスをとることにより、吸着板22の位置制御を行っても良い。位置制御を行うことにより、可動プラテン12等の移動速度を安定させることができ、装置の破損の可能性を低減させることができる。
上述したように、第一の実施の形態における型締装置10によれば、型閉じ動作、型締動作、及び型開き動作を一つの駆動部(電磁石ユニット37)によって行う。ここで、電磁石ユニット37aの吸着力と電磁石ユニット37による吸着力とはロッド39と同軸方向又はほぼ同軸方向(略同軸方向)に働く。したがって、型開閉動作及び型締め動作を通して同軸方向の力によって当該動作を駆動することができ、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
また、吸着板22とリヤプラテン13との間にはバネ30が配設されているため、バネ30の復元力を利用することにより可動プラテン12の位置制御を容易に、かつ、安定的に行うことが可能となる。
次に、第二の実施の形態について説明する。図5は、第二の実施の形態における型開閉駆動部の型閉じ時の状態を示す図、図6は、第二の実施の形態における型開閉駆動部の型開き時の状態を示す図である。図5及び図6中、図3又は図4と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。なお、第二の実施の形態において型開閉駆動部100は、型開閉駆動部100bとして説明する。第二の実施の形態において、特に明記しない点については第一の実施の形態と同様でよい。
型開閉駆動部100bは、リヤプラテン13、吸着板22a、吸着板22b、及びタイバー支持プラテン20等より構成される。
第二の実施の形態において、リヤプラテン13は、タイバー支持プラテン20には固定されず、タイバー支持プラテン20と所定の間隔を置いた位置においてフレームFrに固定されている。
可動プラテン12を摺動させるための駆動手段は、二つの電磁石ユニットより構成される。第一の電磁石ユニット37aは、リヤプラテン13を後退させ、型開きを行うためのものである。電磁石ユニット37aは、リヤプラテン13の前端面側に形成された電磁石49a、及び吸着板22aの後端面側に形成された吸着部51aより構成される。吸着部51aは、吸着板22aの後端面の所定の部分、本実施の形態においては、吸着板22aにおいてロッド39を包囲し、かつ、電磁石49aと対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の前端面の所定の部分、本実施の形態においては、ロッド39よりわずかに上方及び下方に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45aが互いに平行に形成され、各溝45a間に矩形の形状を有するコア46a、及び他の部分にヨーク47aが形成される。そして、コア46aにコイル48aが巻装される。リヤプラテン13の前端面と吸着板22aの後端面との間には、第一の安定化手段としてのバネ30aが配設されている。バネ30aの伸縮方向は、吸着板20aの移動方向と一致する。したがって、リヤプラテン13と吸着板22aとの間隔が小さくなるとバネ30aは収縮する。一方、当該間隔が大きくなるとバネ30aは伸張する。
一方、第二の電磁石ユニット37bは、リヤプラテン13を前進させ、型閉じ及び型締めを行うためのものである。電磁石ユニット37bは、リヤプラテン13の後端面側に形成された電磁石49b、及び吸着板22bの前端面側に形成された吸着部51bより構成される。吸着部51bは、吸着板22bの前端面の所定の部分、本実施の形態においては、電磁石49bと対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、垂直方向において溝45aと同じ位置(同じ高さ)に矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45bが互いに平行に形成され、各溝45b間に矩形の形状を有するコア46b、及び他の部分にヨーク47bが形成される。そして、コア46bにコイル48bが巻装される。リヤプラテン13の後端面と吸着板22bの前端面との間には、第二の安定化手段としてのバネ30bが配設されている。バネ30bの伸縮方向は、吸着板20bの移動方向と一致する。したがって、リヤプラテン13と吸着板22bとの間隔が小さくなるとバネ30bは収縮する。一方、当該間隔が大きくなるとバネ30bは伸張する。
なお、吸着板22aの吸着板支持部材221aとフレームFrとの間と、吸着板22bの吸着板支持部材221bとフレームFrとの間にはそれぞれローラ機構28bが設けられている。したがって、吸着板22a及び22bは、前後方向に進退自在に配設される。
ロッド39は、タイバー支持プラテン20、吸着板22a及びリヤプラテン13を貫通している。ロッド39は吸着板22aに対しては固定され、タイバー支持プラテン20及びリヤプラテン13に対しては摺動可能とされている。ロッド39の後端は吸着板22bに連結及び固定されている。
したがって、第二の実施の形態では、吸着板22a及び22bが前後方向に移動することにより、可動プラテン12が進退し、型閉じ、型締め、又は型開きが行われる。
なお、型開限の位置は、電磁石49bの磁力(吸着力)が吸着部51bに及ぶ範囲とされる。すなわち、型開きの完了時において、ギャップδの値は、電磁石49bの磁力(吸着力)によってリヤプラテン13が前進可能な範囲とされる。
つまり、
Fd37b:電磁石ユニット37bで発生させる吸着力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
とした場合、
(Fm1+Fm2)<Fd37b
が満たされる範囲内で、型開限の位置が設定される。
同様に、電磁石ユニット37bに対する電磁石ユニット37aの位置、つまり二つの対向する電磁石ユニット37a、37b間の距離は、金型装置19を型閉じ状態から電磁石ユニット37aで引くことができる距離、つまり、
Fd37a:電磁石ユニット37bで発生させる吸着力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
Fm3:キャビティ内の成形品による吸着力、金型の摩擦力等
とした場合、
(Fm1+Fm2+Fm3)<Fd37a
が満たされる範囲内で設定される。
したがって、上述の関係を考慮して、電磁石ユニット37a、37bに発生される吸着力、及びそれぞれの間隔が決定される。
以下、第二の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、コイル48bに電流を供給する。それによって電磁石49bが駆動され、吸着部51bが電磁石49bの吸着力によって吸着される。その結果、吸着板22bは前進し、吸着板22bとロッド39を介して連結される吸着板22a及び可動プラテン12も前進する。
吸着板22bの前進に伴いバネ30bが収縮すると共に、吸着板22aの前進に伴いバネ30aが伸張し、それぞれのバネの安定点からの変異に応じた復元力が可動プラテン12の進行方向とは逆向きに作用する。したがって、型開閉処理手段は、バネ30a及び30bの復元力と、吸着部51b及び電磁石49bの間の吸着力とのバランスをとることにより、可動プラテン12の位置制御を行うことが可能となる。バネ30a及び30bの復元力は安定点からの変位に対して比例するため、型開閉処理手段は、復元力に応じた電流値の電流をコイル48bに供給することにより位置制御を行う。その結果、可動プラテン12の移動速度を適切に制御する(安定させる)ことができ、金型装置19が破損しないよう十分減速された状態で、型タッチを行うことが可能となる。
可動金型16が固定金型15に当接させられたとき、リヤプラテン13と吸着板22bとの間、すなわち、電磁石49bと吸着部51bとの間には、ギャップδが形成される(図5参照)。引き続き、吸着部51bと電磁石49bとの吸着力によって、型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開きが行われる。
型開き時において、型開閉処理手段は、コイル48bへの電流の供給を停止する一方でコイル48aへの電流の供給を開始する。それによって電磁石49aが駆動され、吸着部51aが電磁石49aの吸着力によって吸着される。吸着板22aは後退し、吸着板22aとロッド39を介して連結される吸着板22a及び可動プラテン12も後退することにより型開きが行われる。
吸着板22aの後退に伴いバネ30aが収縮すると共に、吸着板22bの後退に伴いバネ30bが伸張し、それぞれのバネの安定点からの変異に応じた復元力が可動プラテン12の進行方向とは逆向きに発生する。したがって、型閉じのときと同様、型開閉処理手段は、バネ30a及び30bの復元力と、吸着部51a及び電磁石49aの間の吸着力とのバランスをとることにより、可動プラテン12の位置制御を行うことが可能となる。その結果、可動プラテン12等の移動速度を安定させることができ、装置の破損の可能性を低減させることができる。
上述したように、第二の実施の形態における型締装置10によれば、型閉じ動作と型締動作とを一つの電磁石ユニット37bによって行う。また、型開き動作は電磁石ユニット37aによって行う。ここで、電磁石ユニット37aの吸着力と電磁石ユニット37bによる吸着力とはロッド39と同軸方向又はほぼ同軸方向(略同軸方向)に働く。したがって、型開閉動作及び型締め動作を通して同軸方向の力によって当該動作を駆動することができ、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
また、吸着板22a及び吸着板22bとリヤプラテン13との間にはバネ30a又はバネ30bが配設されているため、バネ30a及び30bの復元力を利用することにより可動プラテン12の位置制御を容易に、かつ、安定的に行うことが可能となる。
更に、型開き用の電磁石ユニット37aを備えることで、型開き時の可動プラテン12の動作をより安定的に行うことができる。
次に、第三の実施の形態について説明する。図7は、第三の実施の形態における型開閉駆動部の型閉じ時の状態を示す図、図8は、第三の実施の形態における型開閉駆動部の型開き時の状態を示す図である。図7及び図8中、図5又は図6と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。なお、第三の実施の形態において型開閉駆動部100は、型開閉駆動部100cとして説明する。第三の実施の形態では第二の実施の形態と異なる点を中心に説明する。したがって、特に明記しない点については第二の実施の形態と同様でよい。
第三の実施の形態では、安定化手段としてバネ30a及び30bの代わりに磁気バネが用いられている。すなわち、図7及び図8において、永久磁石31aは、磁性体である吸着板22aに対して十分磁力が働く程度の距離内において、吸着板22aの上端面に対向するように配設される。また、永久磁石31bは、磁性体である吸着板22bに対して十分磁力が働く程度の距離内において、吸着板22bの上端面に対向するように配設される。
また、第三の実施の形態では、電磁石ユニットの構成が異なる。すなわち、電磁石ユニット37cは、リヤプラテン13の前端面側に形成された電磁石49a、及び吸着板22aの後端面側に形成された電磁石49cより構成される。電磁石49cは、電磁石49bと対向する部分に形成される。すなわち、吸着板22aの後端面の所定の部分、本実施の形態においては溝45aと対向する部分に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45cが互いに平行に形成され、各溝45c間に矩形の形状を有するコア46c、及び他の部分にヨーク47cが形成される。そして、コア46cにコイル48cが巻装される。
電磁石ユニット37dは、リヤプラテン13の後端面側に形成された電磁石49b、及び吸着板22bの前端面側に形成された電磁石49dより構成される。電磁石49dは、電磁石49bと対向する部分に形成される。すなわち、吸着板22bの前端面の所定の部分、本実施の形態においては溝45bと同じ位置に対向する部分に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45dが互いに平行に形成され、各溝45d間に矩形の形状を有するコア46d、及び他の部分にヨーク47dが形成される。そして、コア46dにコイル48dが巻装される。
すなわち、第三の実施の形態では、それぞれの電磁石ユニットにおいて、対向するように電磁石が配設されている。したがって、対向する電磁石のコイルに供給する電流の向きによって、対向する電磁石の間に吸着力又は反発力を発生させることができる。なお、第三の実施の形態において、電磁石ユニットの構成が第二の実施の形態と異なることは、安定化手段として磁気バネを用いていることに対して必然性は無い。すなわち、電磁石ユニットの構成として別の例を示しただけであり、第二の実施の形態における電磁石ユニットと、第三の実施の形態における安定化手段とを組み合わせても良い。
なお、
Fr37c:電磁石ユニット37cで発生させる反発力
Fd37d:電磁石ユニット37dで発生させる吸着力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
とした場合、
(Fm1+Fm2)<(Fr37c+Fd37d)
が満たされる範囲内で、型開限の位置が設定される。
同様に、電磁石ユニット37cに対する電磁石ユニット37dの位置、つまり二つの対向する電磁石ユニット37c、37d間の距離は、金型装置19を型閉じ状態から電磁石ユニット37dで反発させ、電磁石ユニット37cにより引くことができる距離、つまり、
Fd37c:電磁石ユニット37cで発生させる吸着力
Fr37d:電磁石ユニット37dで発生させる反発力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
Fm3:キャビティ内の成形品による吸着力、金型の摩擦力等
とした場合、
(Fm1+Fm2+Fm3)<(Fr37c+Fd37d)
が満たされる範囲内で設定される。
したがって、上述の関係を考慮して、電磁石ユニット37c、37dに発生される吸着力、反発力及びそれぞれの間隔が決定される。
以下、第三の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、電磁石49aと電磁石49cとの間には反発力が、電磁石49bと電磁石49dとの間に吸着力が発生するような向きの電流をコイル48a、48c、48b及び48dに供給する。それによって電磁石49a、49c、49b及び49dが駆動され、電磁石49aと電磁石49cとの間で反発力が発生すると共に、電磁石49bと電磁石49dとの間で吸着力が発生する。その結果、吸着板22a、吸着板22b、及びロッド39を介して可動プラテン12が前進する。
吸着板22a及び吸着板22bの移動中、吸着板22aには永久磁石31aによる吸着力が働き、吸着板22bには永久磁石31bには永久磁石31bによる吸着力が働く。すなわち、電磁石による可動プラテン12等を移動させようとする力に逆らって、吸着板22a及び吸着板22bの位置を維持しようとする力が作用する。したがって、型開閉処理手段は、永久磁石31a及び31bの吸着力と、電磁石による前記反発力及び前記吸着力とのバランスをとることにより、可動プラテン12の位置制御を行うことが可能となる。型開閉処理手段は、永久磁石31a及び31bによる吸着力に応じた電流値の電流をコイル48a、48b、48c、及び48dに供給することにより位置制御を行う。その結果、可動プラテン12の移動速度を適切に制御する(安定させる)ことができ、金型装置19が破損しないよう十分減速された状態で、型タッチを行うことが可能となる。
可動金型16が固定金型15に当接されたとき、リヤプラテン13と吸着板22bとの間、すなわち、電磁石49bと吸着部51bとの間には、ギャップδが形成される。引き続き、前記反発力及び吸着力によって型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開きが行われる。
型開き時において、型開閉処理手段は、コイル48a及びコイル48cのいずれか一方に供給する電流の向きを逆にすると共に、コイル48b及びコイル48dのいずれか一方に供給する電流の向きを逆にする。それによって電磁石49a及び電磁石49cの間に吸着力が発生すると共に、電磁石49b及び電磁石49dの間に反発力が発生する。その結果、吸着板22a、吸着板22b及びロッド39を介して可動プラテン12及び可動金型16が後退させられ、型開きが行われる。
型開き時においても、電磁石による可動プラテン12等を移動させようとする力に逆らって、吸着板22a及び吸着板22bの位置を維持しようとする力が永久磁石31a及び31bによって作用する。したがって、型閉じのときと同様、型開閉処理手段は、永久磁石31a及び31bの吸着力と、電磁石による前記反発力及び前記吸着力とのバランスをとることにより、可動プラテン12の位置制御を行うことが可能となる。その結果、可動プラテン12等の移動速度を安定させることができ、装置の破損の可能性を低減させることができる。
上述したように、第三の実施の形態における型締装置10によれば、上記した他の実施の形態と同様、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
また、吸着板22a及び吸着板22bに対して永久磁石31a及び永久磁石31bが配設されているため、永久磁石31a及び31bの吸着力を利用することにより可動プラテン12の位置制御を容易に、かつ、安定的に行うことが可能となる。
なお、図7及び図8では、リヤプラテン13と吸着板22a、22bとにコイル48a、48b、48c、48dが配設された例を示したが、電磁石ユニット37c、37dにおいてリヤプラテン13と吸着板22a、22bとのいずれか一方にコイルが配設されてもよい。この場合、コイルのよる吸着力と永久磁石31a、31bによる吸着力とで吸着板22a、22bの位置を制御することができる。
次に、第四の実施の形態について説明する。図9は、第四の実施の形態における型開閉駆動部の型閉じ時の状態を示す図、図10は、第四の実施の形態における型開閉駆動部の型開き時の状態を示す図である。図9及び図10中、図7又は図8と同一部分には同一符号を付し、その説明は適宜省略する。なお、第四の実施の形態において型開閉駆動部100は、型開閉駆動部100dとして説明する。
型開閉駆動部100dは、第一リヤプラテン13e、第二リヤプラテン13f、吸着板22d、タイバー支持プラテン20等より構成される。
第一リヤプラテン13eは、タイバー支持プラテン20と所定の間隔を置いた位置においてフレームFrに固定されている。
第二リヤプレテン13fは、第一リヤプラテン13eと所定の間隔を置いた位置においてフレームFrに固定されている。
吸着板22dは、その前端面が第一リヤプラテン13eの後端面と対向し、その後端面が第二リヤプラテン13fの前端面と対向するようにロッド39に支持される。なお、第一リヤプラテンの13eの後端面と、吸着板22dの前端面及び後端面と、第二リヤプラテン13fの前端面とは、可動プラテン12の移動方向に対して垂直方向に形成され、かつ、互いに平行となるように形成されている。
ロッド39は、タイバー支持プラテン20及び第一リヤプラテン13eを摺動可能に貫通し、その後端において吸着板22dに連結及び固定されている。したがって、吸着板22dの前後方向への移動は、ロッド39によって可動プラテン12に伝達される。すなわち、吸着板22dが前後方向に移動することにより、可動プラテン12が進退し、型閉じ、型締め、又は型開きが行われる。
可動プラテン12を摺動させるための駆動手段は、二つの電磁石ユニットより構成される。第一の電磁石ユニット37eは、吸着板22dを前進させ、型閉じ及び型締めを行うためのものである。電磁石ユニット37eは、第一リヤプラテン13eの後端面側に形成された電磁石49e、及び吸着板22dの前端面側に形成された吸着部51eより構成される。吸着部51eは、吸着板22dの前端面の所定の部分、本実施の形態においては電磁石49eと対向する部分に形成される。また、第一リヤプラテン13eの後端面の所定の部分、本実施の形態においては、ロッド39よりわずかに上方及び下方に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45eが互いに平行に形成され、各溝45e間に矩形の形状を有するコア46e、及び他の部分にヨーク47eが形成される。そして、コア46eにコイル48eが巻装される。
一方、第二の電磁石ユニット37fは、吸着板22dを後退させ、型開きを行うためのものである。電磁石ユニット37fは、第二リヤプラテン13fの前端面側に形成された電磁石49f、及び吸着板22dの後端面側に形成された吸着部51fより構成される。吸着部51fは、吸着板22dの後端面の所定の部分、本実施の形態においては電磁石49fと対向する部分に形成される。また、第二リヤプラテン13fの前端面の所定の部分、本実施の形態においては垂直方向において溝45eと同じ位置(同じ高さ)に、矩形の断面形状を有するコイル配設部としての二つの溝45fが互いに平行に形成され、各溝45f間に矩形の形状を有するコア46f、及び他の部分にヨーク47fが形成される。そして、コア46fにコイル48fが巻装される。
第四の実施の形態においても、第三の実施の形態と同様、安定化手段として磁気バネが用いられる。すなわち、吸着板22dの移動範囲における型閉じ限位置には、永久磁石31a及び31cが配設され、型開限位置には、永久磁石31b及び31dが配設されている。永久磁石31a、31cは、吸着板22dが型閉じ限位置にあるときに、吸着板22dに十分磁力が働く程度の距離内において、それぞれ吸着板22dの上端面、下端面と対向するように配設される。また、永久磁石31b、31dは、吸着板22dが型開限位置にあるときに、吸着板22dに十分磁力が働く程度の距離内において、それぞれ吸着板22dの上端面、下端面と対向するように配設される。
なお、型開限の位置は、電磁石49eの磁力(吸着力)が吸着部51eに及ぶ範囲とされる。すなわち、型開きの完了時において、ギャップδの値は、電磁石49eの磁力(吸着力)によって吸着板22dが前進可能な範囲とされる。
つまり、
Fd37e:電磁石ユニット37eで発生させる吸着力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
とした場合、
(Fm1+Fm2)<Fd37e
が満たされる範囲内で、型開限の位置が設定される。
同様に、電磁石ユニット37eに対する電磁石ユニット37fの位置、つまり二つの対向する電磁石ユニット37e、37f間の距離は、金型装置19を型閉じ状態から電磁石ユニット37fで引くことができる距離、つまり、
Fd37f:電磁石ユニット37fで発生させる吸着力
Fm1:型締装置の可動部を動かすのに必要な力(機械摩擦も含む)
Fm2:搭載可能な最大金型を動かすのに必要な力
Fm3:キャビティ内の成形品による吸着力、金型の摩擦力等
とした場合、
(Fm1+Fm2+Fm3)<Fd37f
が満たされる範囲内で設定される。
したがって、上述の関係を考慮して、電磁石ユニット37e、37fに発生される吸着力、及びそれぞれの間隔が決定される。
以下、第四の実施の形態の型締装置10の動作について説明する。
型閉じ時及び型締め時に、制御部の型開閉処理手段は、コイル48eに電流を供給する。それによって電磁石49eが駆動され、吸着部51eが電磁石49eの吸着力によって吸着される。その結果、吸着板22dは前進し、吸着板22dとロッド39を介して連結される可動プラテン12も前進する。
吸着板22dが型閉じ限位置に近付くと、吸着板22dには永久磁石31a及び31cによる吸着力が働く。すなわち、吸着板22dには、二つの永久磁石によって形成される安定点である型閉じ限位置を維持しようとする力が作用する。したがって、型開閉処理手段は、永久磁石31a及び31cの吸着力と、電磁石49eによる吸着力とのバランスをとることにより、可動プラテン12の位置制御を行うことが可能となる。型開閉処理手段は、永久磁石による吸着力に応じた電流値の電流をコイル48eに供給することにより位置制御を行う。その結果、可動プラテン12の移動速度を適切に制御する(安定させる)ことができ、金型装置19が破損しないよう十分減速された状態で、型タッチを行うことが可能となる。
可動金型16が固定金型15に当接させられたとき、リヤプラテン13と吸着板22dとの間、すなわち、電磁石49eと吸着部51eとの間には、ギャップδが形成される(図9参照)。引き続き、吸着部51eと電磁石49eとの吸着力によって、型締めが行われる。
続いて、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19の各キャビティ空間に充墳される。各キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開きが行われる。
型開き時において、型開閉処理手段は、コイル48eへの電流の供給を停止する一方でコイル48fへの電流の供給を開始する。それによって電磁石49fが駆動され、吸着部51fが電磁石49fの吸着力によって吸着される。吸着板22dは後退し、吸着板22dとロッド39を介して連結される可動プラテン12も後退することにより型開きが行われる。
吸着板22dが型開限位置に近付くと、吸着板22dには永久磁石31b及び31dによる吸着力が働く。すなわち、吸着板22dには、二つの永久磁石によって形成される安定点である型開限位置を維持しようとする力が作用する。したがって、型開閉処理手段は、永久磁石31b及び31dの吸着力と、電磁石49fによる吸着力とのバランスをとることにより、可動プラテン12の位置制御を行うことが可能となる。型開閉処理手段は、永久磁石による吸着力に応じた電流値の電流をコイル48fに供給することにより位置制御を行う。その結果、可動プラテン12等の移動速度を安定させることができ、適切に型開限位置において吸着板22d及び可動プラテン12を停止させることができる。
上述したように、第四の実施の形態における型締装置10によれば、上記した他の実施の形態と同様、型開閉動作及び型締め動作の駆動系を単純化させることができる。
また、型開限位置及び型閉じ限位置に吸着板22dに対して永久磁石が配設されているため、永久磁石の吸着力を利用することにより、型開限位置及び型閉じ限位置付近における可動プラテン12の位置制御を容易に、かつ、安定的に行うことが可能となる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。