JP4963534B2 - 非鉛系常温硬化型エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機の回転子バランス修正に好適に用いられる非鉛系の常温硬化型エポキシ樹脂組成物及び電動機回転子のバランス修正用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機回転子のバランス修正用組成物(バランスパテ)において、非鉛系のものとしては、液状エポキシ樹脂、硬化剤、密度調整剤(硫酸バリウムや酸化鉄等)及びチキソ付与剤からなる組成物が知られている。この非鉛系のものは、その比重が2〜3程度と小さいものであり、大きな回転子のバランス修正には問題はないが、小さな回転子のバランス修正には、その回転子重量に対する使用割合が大きくなるため、余り好ましいものではなかった。
一方、鉛を含むエポキシ樹脂組成物も知られており、この鉛系のものは高比重のものではあるが、その鉛が毒性の大きいものであるため、その使用は余り好ましいものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、小さな電動機回転子のバランス修正に好適な非鉛系の常温硬化型エポキシ樹脂組成物及び該組成物を用いる電動機回転子のバランス修正用組成物を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す組成物が提供される。
(1)(i)液状エポキシ樹脂及び(ii)金属ビスマス及び/又はビスマス化合物、及び(iii)硫酸バリウムを含むA剤と、(i)該エポキシ樹脂に対する液状硬化剤及び(ii)金属ビスマス及び/又はビスマス化合物、及び(iii)硫酸バリウムを含むB剤とからなり、該A剤と該B剤に含まれる該金属ビスマス及び該ビスマス化合物の合計量が該A剤と該B剤の合計量に対し、40〜90重量%、該A剤と該B剤に含まれる硫酸バリウムの合計量が5〜50重量%であり、前記A剤とB剤とを混合した一液の形態での密度が4.5〜6.5g/mlであることを特徴とする2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
(2)前記A剤の密度が5.2g/ml以上5.6g/ml以下であり、前記B剤の密度が4.9g/ml以上5.0g/ml以下である前記(1)に記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
(3)該A剤及び/又は該B剤が、比重3.0〜9.0の充填剤をさらに含有する前記(1)または(2)に記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
(4)該A剤及び/又は該B剤が、比重1.0〜4.0の沈降防止剤を含有する前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
(5)該A剤及び/又は該B剤が、着色剤を含有する前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
(6)該ビスマス化合物が、酸化ビスマスである前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
(7)該硬化剤が、ポリアミドアミン系硬化剤である前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
(8)該A剤と該B剤とが異なった色調を有する前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
(9)前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする電動機回転子のバランス修正用組成物。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のエポキシ樹脂組成物(以下、単に組成物とも言う)は、2液性のもので、A剤とB剤とからなる。
本発明の組成物、即ち、A剤とB剤とを混合して得られる組成物において、その密度は、4.5〜6.5g/mlである。
【0006】
液状エポキシ樹脂としては、従来公知の各種のものを用いることができる。このようなものには、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、カルボン酸グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラツク型エポキシ樹脂、ウレタン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が包含される。これらのエポキシ樹脂は単独又は2種以上を混合して使用に供することができる。また、液状エポキシ樹脂に対しては、その液状が保持される限り、常温で固体状ないし半固体状のエポキシ樹脂を混入することができる。一般的に、その固体状ないし半固体状のエポキシ樹脂の混合割合は、全エポキシ樹脂に対し、10〜40重量%程度である。
【0007】
本発明で用いる硬化剤は、液状のものであればよく、従来公知の各種のものを用いることができる。このようなものとしては、ポリアミドアミン系硬化剤、脂肪酸ポリアミン系硬化剤、脂環式ポリアミン系硬化剤等が挙げられる。本発明では、特に、ポリアミドアミン系硬化剤の使用が好ましい。ポリアミドアミンは、合成ダイマー酸と、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、キシリレンジアミン等のポリアミンとの縮合反応によって製造される。このポリアミドアミンにおいて、そのアミン価は100〜1000、好ましくは200〜500である。
【0008】
本発明で用いる金属ビスマスにおいて、その平均粒径は5〜45μm、好ましくは10〜20μmである。
本発明で用いるビスマス化合物において、その平均粒径は5〜50μm、好ましくは5〜20μmである。
ビスマス化合物には、酸化ビスマス、硫化ビスマス、硝酸ビスマス、水酸化ビスマス、炭酸ビスマス、塩化ビスマス、等が包含される。
本発明では、特に酸化ビスマスの使用が好ましい。酸化ビスマスとしては、BiOや、BiO3、Bi25及びそれらの混合物が挙げられる。
【0009】
本発明の組成物、即ち、A剤及び/又はB剤には、必要に応じ、比重3〜9、好ましくは4.5〜9の中比重充填剤を配合することができる。このようなものとしては、例えば、金属鉄、金属銅、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅等が挙げられる。その平均粒径は、1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
この中比重充填剤は、組成物の密度調整の目的や、硬さの調整、樹脂にじみ(ブリードアウト)の防止等の目的のために用いられる。
【0010】
本発明の組成物には、必要に応じ、比重1.0〜4.0、好ましくは2.0〜3.0の沈降防止剤を配合することができる。このようなものとしては、例えば、シリカ、マイカ、タルク、クレイ等が挙げられる。本発明では、特に、比表面積が250〜350m2/gのシリカの使用が好ましい。沈降防止剤の平均粒径は、1〜70nm、好ましくは1〜40nmである。
この沈降防止剤は、組成物中における金属ビスマスやビスマス化合物が保存中に沈降するのを防止するとともに、硬化時のタレ防止や、組成物を塗布した際の塗布物の形状保持のために添加するものである。本発明の組成物を貯蔵、あるいは輸送する場合、金属ビスマスやビスマス化合物が重力の作用で沈降する。そして、特に現在自動釣合調整装置においては、回転子への付着量を容量で行なうことから、金属ビスマスやビスマス化合物が沈降した場合、容量で計量した場合には、その重量が変化し、修正機能が不都合となる。沈降防止剤はこのような不都合を回避させることができる。
【0011】
本発明の組成物には、必要に応じ、着色剤を配合することができる。この着色剤としては、従来公知の各種の顔料や染料が用いられる。着色剤の具体例としては、カーボンブラックや、ベンガラ等が挙げられる。
本発明で用いるA剤及びB剤は、異なった色調を有していることが好ましい。異なった色調を有するA剤とB剤は、これを混合したときに、その混合色を観察することにより、両者の均一混合の度合を評価するができる。
A剤とB剤を異なった色調にセットした例としては、A剤に酸化ビスマス(淡黄色)を含有させ、B剤に金属ビスマス(暗灰色)を含有させた例や、A剤に着色剤としてカーボンブラックを含有させ、B剤には着色剤を含有させないか又は黒色以外の着色剤を含有させた例、A剤には着色剤を含有させず、B剤に着色剤(例えばカーボンブラック)を含有させた例等が挙げられる。
【0012】
本発明の組成物は、貯蔵や輸送に際しては、A剤及びB剤の形態で独立して取扱われるが、使用に際して、両者は混合され、一液の形態で適用される。
【0013】
本発明の組成物は、A剤及びB剤を混合した一液の形態での密度が4.5〜6.5g/mlの範囲になるように調整される。その具体的密度は、その適用する対象物によって異なり、適宜選定すればよい。例えば、小さな回転子(重さ:5g未満)に対して適用する場合、その密度を4.5〜6.5g/ml、好ましくは5.0〜6.5g/mlの範囲に調整するのがよい。一方、中程度の大きさの回転子(重さ:5〜50g)に対して適用する場合、その密度を4.5〜6.5g/ml、好ましくは5〜6g/mlの範囲に調整するのがよい。さらに、大きな回転子(重さ:50g超)に対して適用する場合、その密度を4.5〜6.5g/ml、好ましくは4.5〜6g/mlの範囲に調整するのがよい。
【0014】
本発明の組成物の密度の調整は、できるだけ高密度の組成物が得られるように、前記した金属ビスマスやビスマス化合物の配合量により主体的に行なう。金属ビスマスは比重9.8の物質であり、ビスマス化合物は比重2.8〜9、特に5〜9の物質であり、それらの配合量により、高密度域の組成物とすることができる、また、中比量の充填剤の配合量により、前記高密度域より低い密度域の組成物を得ることができる。
【0015】
本発明の組成物において、その金属ビスマスやビスマス化合物の配合量は、所望する組成物の密度に応じて適宜選定するが、両者の合計量で、通常、40〜90重量%、好ましくは45〜75重量%の割合である。
金属ビスマスやビスマス化合物の配合量が前記範囲より少ないと高密度組成物を得るのが困難になる。一方、前記範囲を超えると、組成物の塗布性(付着性)が悪くなる等の問題を生じるようになる。
【0016】
本発明の組成物においては、金属ビスマスとビスマス化合物を併用することが好ましい。金属ビスマス単独を用いるときには製造コストが高くなる等の問題があり、一方、ビスマス化合物単独を用いるときには、比重が低くなる等の問題がある。両者を併用することにより、比重の調整が容易で製造コストも低い等の利点を持った組成物を得ることができる。
【0017】
中比重充填剤の配合量は、所望する組成物の密度に応じて適宜選定する。本発明の場合、その配合量は、組成物中、通常、5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%の割合である。
【0018】
本発明で用いる沈降防止剤の配合量は、A剤又はB剤中の金属ビスマスとビスマス化合物の合計量100重量部当り、0.1〜0.5重量部、好ましくは0.25〜0.40重量部の割合である。
【0019】
本発明の組成物(A剤+B剤)中に含まれる全固形分(金属ビスマス、ビスマス化合物、中比重充填剤、沈降防止剤、顔料等)の量は85〜95重量%、好ましくは90〜92重量%の範囲に規定するのがよい。組成物中の固形分が多くなりすぎると、組成物が硬くなりすぎて塗布性が悪くなり、対象物、例えば回転子ヨークに対して良好に付着しなくなる。一方、固形分含有量が少なくなりすぎると、得られる硬化物の比重が小さくなるので好ましくない。
【0020】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0021】
実施例1〜5
表1に示す成分組成(重量部)のA剤及びB剤を作った。
次に、このA剤及びB剤を、重量比100/100の割合で混合し、得られた混合物について、その物性及び使用性能を以下のようにして評価した。その結果を表2に示す。
(1)比重(硬化物)
組成物20gを室温においてて4時間硬化させ、その硬化物を比重計にて測定した(水置換法)。
(2)塗布性
組成物を回転子(重さ:約5g)のヨーク部分へ治具で付着させ、組成物が治具に残らず全てヨーク部分に付着した場合を、良好とした。
(3)バランシング性能
組成物約0.1gを回転子(重さ:約5g)のヨーク部分に付着させた後、直ぐに2750rpmで0.5分間回転させ、その後、付着した組成物に、変形、脱落がないかどうかを調べた。変形、脱落のない場合を、良好とした。
(4)硬化時の垂れ
組成物25gをサイコロ状に成形し、硬化炉で60℃×60分の条件で硬化させ、硬化前後の形状変化(垂れ)を目視により観察した。垂れのない場合を○とした。
(5)ガラス転移温度(℃)
TMA法で測定した。試料としては、室温で24時間硬化させたものを用いた。
(6)引張剪断接着強度(MPa)
JIS K 6850による接着剤の引張剪断接着強さ試験法に従って測定した。試料としては、室温で24時間硬化させたものを用いた。
【0022】
【表1】
Figure 0004963534
【0023】
【表2】
Figure 0004963534
【0024】
なお、表中に示した材料の具体的内容は以下の通りである。
(1)エピコート828
ジャパンエポキシレン社製、液状エポキシ樹脂、エポキシ当量:184〜194
(2)エピコート827
ジャパンエポキシレン社製、液状エポキシ樹脂、エポキシ当量:180〜190
(3)エピコート834
ジャパンエポキシレン社製、液状エポキシ樹脂、エポキシ当量:230〜270
(4)酸化ビスマス
化学式:Bi23、比重:8.9、平均粒径:2.06μm
(5)金属ビスマス粉
比重:9.8、325メッシュパス
(6)金属銅粉
比重:8.9、350メッシュパス
(7)金属鉄粉
比重:7.9、325メッシュパス
(8)硫酸バリウム
比重:4.3、平均粒径:0.6μm
(9)酸化マグネシウム
比重:3.65、145メッシュパス
(10)微細シリカ
比重:2.2、平均粒径:7nm
(11)カーボンブラック
黒色着色剤、325メッシュパス
(12)ポリアミドアミン
富士化成工業社製、製品名「トーマイド296」、アミン価:425
【0025】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、A剤とB剤とからなる2液型のものであり、使用時に混合して適用される。この組成物は、常温時硬化型のもので、硬化性にすぐれるとともに、鉛を含まないことから、人体に対する安全性が高く、また、環境負荷の少ないものである。
本発明の組成物は、各種分野で用いられている電動機回転子のバランス修正用組成物(バランスパテ)として有利に適用される。本発明の組成物を回転子のバランス修正に適用した場合、その付着物の比重が大きいことから、その付着量は少なくてすみ、小さな回転子のバランス修正も効果的に行うことができる。しかも、本発明組成物は、塗布性にすぐれているため、回転子ヨークに対して適用した場合、ヨークにうまく付着し、かつその付着物の形状を変化させることなく硬化させることができる。
本発明の組成物は電動機回転子のバランス修正に有利に適用することができる他、他の物品の重さ調整にも適用することができる。

Claims (9)

  1. (i)液状エポキシ樹脂及び(ii)金属ビスマス及び/又はビスマス化合物、及び(iii)硫酸バリウムを含むA剤と、(i)該エポキシ樹脂に対する液状硬化剤及び(ii)金属ビスマス及び/又はビスマス化合物、及び(iii)硫酸バリウムを含むB剤とからなり、該A剤と該B剤に含まれる該金属ビスマス及び該ビスマス化合物の合計量が該A剤と該B剤の合計量に対し、40〜90重量%、該A剤と該B剤に含まれる硫酸バリウムの合計量が5〜50重量%であり、前記A剤とB剤とを混合した一液の形態での密度が4.5〜6.5g/mlであることを特徴とする2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
  2. 前記A剤の密度が5.2g/ml以上5.6g/ml以下であり、前記B剤の密度が4.9g/ml以上5.0g/ml以下であることを特徴とする請求項1に記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
  3. 該A剤及び/又は該B剤が、比重3.0〜9.0の充填剤をさらに含有する請求項1または2に記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
  4. 該A剤及び/又は該B剤が、比重1.0〜4.0の沈降防止剤を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
  5. 該A剤及び/又は該B剤が、着色剤を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
  6. 該ビスマス化合物が、酸化ビスマスである請求項1乃至5のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
  7. 該硬化剤が、ポリアミドアミン系硬化剤である請求項1乃至6のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
  8. 該A剤と該B剤とが異なった色調を有する請求項1乃至7のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の2液型常温硬化型エポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする電動機回転子のバランス修正用組成物。
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