JP4963332B2 - 高電圧ケーブルの接続方法及び接続構造並びに高電圧ケーブル接続用コネクタ、同軸伝送線路 - Google Patents

高電圧ケーブルの接続方法及び接続構造並びに高電圧ケーブル接続用コネクタ、同軸伝送線路 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高電圧ケーブル、高電圧ケーブル接続用コネクタ並びに同軸伝送線路等の高電圧を流す導体の電気的絶縁に関するものである。さらに詳述すると、本発明は、導体を被覆する固体絶縁物における沿面放電及び絶縁破壊を防ぐための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
導体の周りを固体絶縁物で被覆したCVケーブルなどの高電圧ケーブル同士を接続する場合においては、固体絶縁物の接続箇所での沿面(表面)放電の発生が絶縁上の最大の弱点となる。電気的絶縁破壊に伴う放電の進展方向は電界の向きに依存する。これは固体絶縁物の表面に沿って起こる沿面放電についても同様である。そこで、従来の固体絶縁物の沿面放電の絶縁耐力向上方策としては、沿面距離を大きくすることで絶縁耐力の向上を図るのが一般的である。例えば、図6に示すように、接続すべき各ケーブル101の端を尖らせるように固体絶縁物103を削って導体102を露出させ、その導体102,102同士を突き合わせて接合し、当該導体102,102及び削られた固体絶縁物103の周囲を樹脂等の絶縁物によるモールド104で固めることでケーブル101,101同士を接続させるようにしている。尚、接続面105において高電圧側(導体102)から低電圧側(固体絶縁物104の外側)に至るまでの距離を沿面距離Lと呼ぶ。
【0003】
ところで、GIS(Gas Insulated Switchgear、ガス絶縁開閉装置)やGIL(Gas Insulated transmission Line、管路気中送高電圧ケーブル)においては、内部導体106と電気絶縁性に優れるSF(六フッ化硫黄ガス)ガス107と外部導体108とにより構成される図7に示すような構造の同軸伝送線路109が使用される。内部導体106は不純物の付着を防ぐ絶縁性の塗料でコーティングされる。このような同軸伝送線路109においても内部導体106,106同士を接続することが行われるが、SFの絶縁性が十分に高いため、絶縁破壊上記ケーブル101の接続のような沿面放電の心配は少ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のケーブル101の接続法では、沿面距離Lを長くとることにより絶縁耐力の向上を図ってきたが、沿面距離Lを長くする程には絶縁耐力は向上せず、絶縁耐力を上げようとすれば、勢い接続部が全体に大きくなる問題を有している。逆に接続部の大きさが限られるような場合には、絶縁耐力の向上が望めない。
【0005】
一方、GISやGILで使用される同軸伝送線路109にいても、SFが電気絶縁性に優れるといっても、絶縁性を確保するためには内外の導体間にそれなりの空隙が必要であり、その分だけ外部導体の管径が大きくなる問題を有している。また、この同軸伝送線路における絶縁破壊はSFの絶縁性に大きく影響されている。しかしながら、SFは地球温暖化の一因となるガスと指摘されおり、純窒素などの代替ガスの使用が考えられている。しかし、代替ガスはいずれもSFよりも絶縁性が劣る。そこで、代替ガス110の使用による絶縁耐力の大幅な低下の対策として、図8に示すように、固体絶縁物111により内部導体106を被覆する同軸伝送線路109’が考えられる。ところが、この場合は、固体絶縁物111,111の接続箇所112が弱点となり、高電圧側である内部導体106から低電圧側である外部導体108に向かう沿面放電及び絶縁破壊が懸念される(図8中矢印A参照)。そうすると、絶縁耐力を上げようとすれば代替ガス110で満たされる空隙(空間)を大きくする必要があり、結果として同軸伝送線路109’全体が大きくなってしまう、逆に同軸伝送線路109’の大きさが限定されるような場合には絶縁耐力の向上は望めないというCVケーブルと同様の問題が生じる。
【0006】
そこで本発明は、絶縁耐力を向上できしかもコンパクトに接続することができる高電圧ケーブルの接続方法及び接続構造並びに高電圧ケーブル接続用コネクタ及び同軸伝送線路を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、導体の周りを固体絶縁物の被覆体で被覆してなり、固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面で沿面放電及び絶縁破壊を生じるおそれのある高電圧ケーブルの接続方法において、放電が生じるとしたらその経路となる固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面の両面に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部を設けるようにしている。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、導体の周りを固体絶縁物の被覆体で被覆してなり、固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面で沿面放電及び絶縁破壊を生じるおそれのある高電圧ケーブルの接続構造において、放電が生じるとしたらその経路となる固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面の両面に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部を設けるようにしている。
【0009】
したがって、電界の向き即ち固体絶縁物の外側に向かって、固体絶縁物同士の接続される面に沿って進行する沿面放電は、固体絶縁物内部を貫通して固体絶縁物の外側に出るよりは、逆電界部に沿って固体絶縁物の外側に出る方が電気的には進行し易いことから、接続箇所に設けられた逆電界部において、電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向即ち電界の向きに逆らった方向に進展する。このため、絶縁耐力が向上する。しかも、逆電界部の存在により、総沿面距離は、始点と終点を直線で結んだ場合の沿面距離と比較して長くなる。これによっても絶縁耐力が向上する。依って、接続部を大きくすることなく絶縁耐力を増やすことができる。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の高電圧ケーブルの接続構造において、逆電界部はねじ構造によって構成されるものとしている。この場合、ねじ山の一方の斜面が逆電界部として機能し、かつそれが繰り返し形成されるので、絶縁耐力が更に向上する。しかも、総沿面距離は、始点と終点を直線で結んだ場合の沿面距離と比較してはるかに長くなる。これによっても絶縁耐力が更に向上する。
【0011】
また、請求項4記載の高電圧ケーブル接続用コネクタは、導体の周りを固体絶縁物の被覆体で被覆した高電圧ケーブル同士を接続するためのコネクタにおいて、対向する高電圧ケーブルの固体絶縁物の被覆体を機械的に接続するための絶縁性接続部と、導体を電気的に接続するための導通部とを備え、絶縁性接続部の両側について、放電が生じるとしたらその経路となる絶縁性接続部と固体絶縁物の被覆体との接続箇所の合わせ面の両面に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部を設けるようにしている。
【0012】
この場合にも、コネクタの絶縁性接続部と高電圧ケーブルの固体絶縁物との接続箇所に形成される逆電界部において電界方向と逆らった方向に放電を進展させるため、絶縁耐力が向上する。また、逆電界部により総沿面距離が、始点と終点を直線で結んだ場合の沿面距離と比較して長くなることによっても絶縁耐力が向上する。したがって、接続部を大きくすることなく絶縁耐力を増やすことができる。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の高電圧ケーブル接続用コネクタにおいて、逆電界部はねじ構造によって構成され、一方の高電圧ケーブルを接続するためのねじと他方の高電圧ケーブルを接続するためのねじとが逆ねじとして構成されるようにしている。
【0014】
この場合、高電圧ケーブルそのものを回転させずに、コネクタを一方向に回転させるだけでケーブルを接続し、また逆方向に回転させるだけでケーブルの接続を切り離すことができる。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、内部導体と、該内部導体との間に空間を設けて同軸に配置される外部導体と、空間に満たされる絶縁性ガスとを備える同軸伝送線路において、内部導体の周りを固体絶縁物の被覆体で被覆すると共に放電が生じるとしたらその経路となる固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面の両面に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部を設けるようにしている。
【0016】
この場合、絶縁上の最大の弱点である接続箇所での沿面放電が逆電界部を設けて絶縁耐力を上げることにより防がれた固体絶縁によって、内部導体と外部導体との間の絶縁耐力が向上される。依って、従来通りSFを用いる場合には、内外の導体間の空隙を小さくできる。
【0017】
更に、請求項7記載の同軸伝送線路は、絶縁性ガスとしてSFの代替ガスを用いるようにしている。
【0018】
この場合、SFよりも絶縁耐力が劣るSF代替ガスを使用していても、固体絶縁物によって内部導体と外部導体との間の絶縁耐力不足が補われ、かつ固体絶縁物同士の接続箇所において心配される沿面放電も逆電界部を設けることによる絶縁耐力の増大によって防がれるので、SFを用いる場合と同様の絶縁性が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1に本発明の高電圧ケーブルの接続方法を実現する高電圧ケーブル接続用コネクタを用いた高電圧ケーブル接続構造の一実施形態を示す。この高電圧ケーブル接続用コネクタ(以下、単に「コネクタ」と呼ぶ)6は、主に高電圧ケーブル1の固体絶縁物3部分を機械的に連結する絶縁性接続部7と、導体2の電気的接続を図る接点11とから構成されている。
【0021】
絶縁性接続部7は、コネクタ6の本体を構成するもので、ケーブル同士を連結するに十分な機械的強度を有し電気絶縁性に優れる材質、例えばセラミックスや固体絶縁物3と同一の絶縁性材料などによって成形されている。本実施形態の場合、固体絶縁物の被覆体(以下、単に固体絶縁物という)3の端部とそれぞれ嵌合しこれらを機械的に接続するねじ構造の取付部8を両端に有し、2本の高電圧ケーブル1を一直線に連結するスリーブナット状に形成されている。即ち、絶縁性接続部7の円筒状に形成するようにし、雌ねじから成る取付部8,8を形成するようにしている(以下、取付部8を雌ねじとも呼ぶ)。そして、接続しようとする高電圧ケーブル1の固体絶縁物3の端部にも、当該雌ねじ8と噛み合う雄ねじ5が設けられている。ここで、両端の雌ねじ8は逆ねじとなるようにすることが好ましい。この場合には、ケーブル1を一切回転させずにコネクタ6を回転させるだけで、ねじ5、8を締め付けたり緩めたりすること、即ちケーブル1同士を連結したり切り離したりすることができる。また、絶縁性接続部7は固体絶縁物3の外径と略同一の外径を有する円筒状に形成することが好ましい。この場合には、コネクタ6と接続されるケーブル1との間に段差が無く一直線に連結できる。さらに、本実施形態では、ねじ構造による取付部8を用いた場合について主に説明しているが、これに特に限られるものではなく、軸方向において係合し得るあらゆる連結手段を必要に応じて適用できることはいうまでもない。
【0022】
絶縁性接続部7における固体絶縁物3との接続箇所の合わせ面の両面には、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部4が設けるようにしている。放電の進展方向を、電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とするには、例えば絶縁性接続部7と固体絶縁物3との接続面を導体2側に少なくとも一度折り返すような形状とすれば良い。換言すれば、絶縁性接続部7と固体絶縁物3との接続面の両面を、縦断面において交互に折れ曲がった線を描くように形成すれば良い。これにより、導体2から固体絶縁物3の外側に出るまでの放電の経路の中に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部4が設けられる。なお、「電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向」とは、放電の進行方向が電界方向の逆方向と一致している場合のほか、例えば電界方向の逆方向に向かって斜めに進行する場合も含む意味である。
【0023】
本実施形態では、逆電界部4をねじ構造によって構成するようにしている。即ち、絶縁性接続部7の取付部を成す雌ねじ8とこれと噛み合うケーブル1側の固体絶縁物3に切られた雄ねじ5との間で逆電界部4を構成するようにしている。ねじ山の一方の斜面は、絶縁性接続部7と固体絶縁物3との接続面を導体2側に折り返すこととなり逆電界部4として機能する。しかも、それはねじ山の数だけ繰り返し形成される。絶縁耐力が更に向上する。しかも、総沿面距離は、始点と終点を直線で結んだ場合の沿面距離と比較してはるかに長くなる。
【0024】
また、本実施形態では、対向する導体2,2を良好に電気的に接続するために、雌ねじ8,8間を貫通する孔には導通部材9とコンタクトフィンガー(弾性接触子)10から成る接点11が備えられている。連結されるケーブル1の導体2はそれぞれコンタクトフィンガー10によって把持され確実に電気的に接続されると共に、導通部材9を介して導通がとられている。なお、コンタクトフィンガー10と媒介導体9とは場合よっては一体成形するようにしても良い。コンタクトフィンガー10は、例えば銅等の導電性材料より成り、導体2と接触することで変形する弾性接触部を備えるように構成される。例えば本実施形態では、有底円筒状のコンタクトフィンガー10の端部を内側に折り返すようにして、確実に導体2と接触し変形する弾性接触部・板ばねを形成するようにしている。なお、有底円筒状のコンタクトフィンガー10の内面に導体2と接触し変形する凸部を連続的または間欠的に設けるようにしても良い。勿論、上述した構造以外の異なる構造の接点11を介在させても良いし、接点11を介在させずに導体2同士を直接突き合わせることによって電気的接続を確保する構造としても良い。
【0025】
本実施形態の高電圧ケーブル1は一般にCVケーブルと呼ばれるもので、導体2と、この周りを被覆する例えば架橋ポリエチレンやポリ塩化ビニル等の樹脂製絶縁性材料よりなる固体絶縁物3とで構成されている。また、固体絶縁物3の端部には、コネクタ6の取付部8たる雌ねじと螺合する雄ねじ5が設けられている。この雄ねじ5は、逆電界部4を効果的に形成するため、ピッチを短く(リードを短く)かつねじ山高さを高くする切られることが好ましい。また、本実施形態では導体2の端部は、固体絶縁物3の端部から僅かに突出してコネクタ6の接点11と確実に電気的に接続されるように露出させて設けられている。
【0026】
以上のように構成されるコネクタ6及び高電圧ケーブル1によれば、接続すべき高電圧ケーブル1,1同士をコネクタ6を介して突き合わせ、コネクタ6をねじを締める方向に回転させれば、両高電圧ケーブル1,1の雄ねじ5,5とコネクタ6の雌ねじ8が同時に噛み合って、各雄ねじ5,5がコネクタ6内部を同時に進み、やがて各導体2,2がコンタクトフィンガー10に接続して、両高電圧ケーブル1,1が電気的かつ機械的に良好に接続される。
【0027】
そして、噛み合ったねじ5,8の間で絶縁性接続部7と固体絶縁物3との接続面を導体2側に折り返す逆電界部4を繰り返しねじ山の分だけ構成する。したがって、沿面放電が生じようとするとき、放電は導体2から固体絶縁物3とコネクタ6の絶縁性接続部7との境界面・接続面に沿って進展することになるが、縦断面において交互に折れ曲がった線を描くようになる(図2中の矢印参照)。このため、絶縁耐力が向上するのである。さらに、ジグザグ経路による総沿面距離は、始点と終点を直線で結んだ場合の沿面距離と比較して長距離となる。これによっても絶縁耐力が向上する。
【0028】
依って、この実施形態のコネクタ接続構造によれば、高電圧ケーブル1,1間の接続部を大きくすることなく、沿面放電を防止するに十分な絶縁耐力が得られる。また、ねじによる接続は、従来のモールドによる接続と比較して引張りに対する機械的強度にも優れるという利点もある。
【0029】
また、図3にコネクタ6を用いずに本発明方法を実現する実施形態を示す。この実施形態のケーブル接続構造は、各高電圧ケーブル1の固体絶縁物3の一方の端部に雄ねじ5を、他方の端部に雌ねじ5’をそれぞれねじ切り等によって形成し、ケーブル1とケーブル1とをねじ5,5’のねじ込みによって直接連結するものである。この場合にも、固体絶縁物3の接続箇所の合わせ面の両面には、逆電界部4が雌雄のねじ5,5’によって構成されることとなる。尚、本実施形態のケーブル接続構造による場合、単純に導体2同士を突き合わせるようにしても良いが、導体2の熱膨張などに起因する導通不良を防ぐための調整部材を介在させることが好ましい。例えば、図3に示すように、一方のケーブル1の導体2を固体絶縁物3から僅か突出させると共に、他方のケーブル12の導体2を固体絶縁物3から僅か引っ込め、一方のケーブル1の導体2を他方のケーブル1の固体絶縁物3の中に嵌め込むようにし、更に導体2と接触することで変形する弾性接触部を備えるコンタクトフィンガー12を介在させて連結することが好ましい。このコンタクトフィンガー12とこれを収めるケーブル1側の固体絶縁物3の端面より引っ込んだ導体2とは固着されており、コンタクトフインガー12に嵌め込まれる一方のケーブル1の導体2側が摺接するように設けられている。
【0030】
また、逆電界部4は、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とするものであれば良く、必ずしもねじ構造によって構成されるものに限られない。また、コネクタ6等のような着脱自在な連結手段を用いずに絶縁性の樹脂モールドを用いて接続するようにしても良い。このような実施形態を図4に示す。この実施形態のケーブル接続構造は、固体絶縁物3の端部に逆電界部4を構成するような円環状の溝14を少なくとも一つ以上形成したケーブル1同士を各導体2が直接接触するように突き合わせ、これらを樹脂モールド13で固めて接合するものである。ケーブル1は、導体2の突き合わせ部分が樹脂モールド13によって固められ、かつ固体絶縁物3の溝14内に形成されるフランジ15部分と溝14との係合によって、一直線に連結される。なお、溝14の数、大きさ(深さ、幅)、勾配等は逆電界部4が有効に構成されるものであれば良く、特定のものに限定されるものではない。例えば図4の例では、固体絶縁物3の周方向に環状の三つの溝を軸方向に並べて設けている。この場合も、固体絶縁物3とモールド13との接続面に、逆電界部4が形成され、絶縁耐力が向上する。また、この場合、固体絶縁物3の3つの溝14とこれに嵌るモールド13のフランジ部15とで軸方向に係合するので、引っ張りに対する機械的強度が高い接続構造が得られる。
【0031】
また、本発明は、上述のCVケーブルに限られず、少なくとも導体とこれを被覆する固体絶縁物とを有する高電圧ケーブルについて広く適用することができる。例えば、GISやGILで使用される同軸伝送線路について適用できる。この同軸伝送線路20は、絶縁性ガス23を使用すると共に、内部導体22を固体絶縁物25により被覆するようにしたものである。即ち、図5に示すように、内部導体22と、その周りを被覆する架橋ポリエチレン等の固体絶縁物の被覆体(以下、単に固体絶縁物という)25と、内部導体22と同軸に配置され固体絶縁物25との間に絶縁のための空間を形成する外部導体24と、その空間を満たすSFあるいはその代替ガス例えば高圧純窒素ガス23とから構成される。この同軸伝送線路の固体絶縁物25の接続箇所21の合わせ面の両面には、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部4が設けられている。例えば、図5の拡大図に示すように、対向する固体絶縁物25の端部に断面鉤状のオーバーハング付きフランジ27とこれに噛み合うフランジ26を設け、これらの嵌合によって固体絶縁物25同士を連結すると共に逆電界部4を構成するようにする。この同軸伝送線路20の場合、絶縁性ガスの絶縁耐力に固体絶縁物25の絶縁耐力が付加され、更に固体絶縁物25で絶縁することの最大の弱点である接続箇所21での沿面放電を逆電界部4を設けることにより解消するようにしているので、代替ガス23で満たされる絶縁のための空間を大きくすることなく、即ち同軸伝送線路20自体を大きくすることなく、必要な絶縁耐力を確保することができる。したがって、絶縁ガスとしてSFを用いるだけの従来の同軸伝送線路よりも、絶縁耐力に優れるので、外部導体24の管径を小さくして、伝送線路としてのサイズを小型化できる。また、SFよりも絶縁耐力に劣る代替ガス23を使用する場合にも、代替ガス23を採用することにより生ずる絶縁耐力の低下を固体絶縁物25で補うので、SFを用いる従来の同軸伝送線路と同様の絶縁性、即ち同軸伝送線路20自体を大きくすることなく、必要な絶縁耐力を確保することができる。
【0032】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、コネクタ6側を雄ねじとし、高電圧ケーブル1側を雌ねじとしても良い。さらに、固体絶縁物3の接続箇所に逆電界部4が構成されるのであれば良く、逆電界部4と連結構造とが必ずしも同じもので構成される必要はない。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1記載の高電圧ケーブルの接続方法及び請求項2記載の高電圧ケーブルの接続構造並びに請求項4記載の高電圧ケーブル接続用コネクタによれば、固体絶縁物の被覆体の接続箇所の合わせ面の両面に逆電界部を設けることにより、電界の向きに逆らって放電を進展させなければならない上に、接続箇所・接続部の大きさを変えずに沿面距離も増大するため、絶縁耐力が飛躍的に向上する。しかも、接続部を大きくすることなく絶縁耐力を増大することができるので、コンパクトに高電圧ケーブルを接続できる。
【0034】
さらに、請求項3記載の高電圧ケーブルの接続構造によれば、逆電界部はねじ構造によって構成されるものとしているので、ねじ山を構成する斜面の一方が所謂逆電界部となって繰り返し形成されるので、沿面距離の飛躍的増加と相俟って絶縁耐力を更に増大することができる。しかも、ねじによる接続は従来のモールドによる接続と比較して引張りに対する機械的強度にも優れるという利点もある。
【0035】
さらに、請求項5記載の高電圧ケーブル接続用コネクタによれば、逆電界部を兼ねる両端の高電圧ケーブル接続用のねじは、逆ねじで構成されているので、長い高電圧ケーブルそのものを回転させなくとも、一方向にコネクタを回転させるだけで容易に高電圧ケーブル同士を接続したり、切り離したりすることができる。
【0036】
さらに、請求項6記載及び請求項7記載の同軸伝送線路によれば、内部導体を覆う固体絶縁物の被覆体と逆電界部により固体絶縁物の被覆体の連結箇所での絶縁耐力を増大させて沿面放電を防ぐようにしているので、しかも接続部を大きくすることなく沿面距離を伸ばすことができるから、絶縁性ガスを満たす絶縁空間を大きくしなくとも、即ち同軸伝送線路自体を大きくすることなく、十分な絶縁耐力が得られる。したがって、絶縁耐力に優れるSFを使用する場合には、従来の同軸伝送線路よりも絶縁耐力が向上し、外部導体管を小径にすること、即ち小形化ができる。また、絶縁ガスの絶縁耐力がSFよりも劣る代替ガスを使用する場合にも、代替ガスの採用により低下する絶縁耐力を固体絶縁物で補うことができるので、SFを用いる場合と同様の絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高電圧ケーブルの接続方法を実現する高電圧ケーブルと高電圧ケーブル接続用コネクタの実施の一形態を示す概略縦断面図である。
【図2】図1の逆電界部近傍の拡大断面図である。
【図3】本発明の高電圧ケーブルの接続方法を実現する高電圧ケーブルの他の例を示す概略縦断面図である。
【図4】本発明の高電圧ケーブルの接続方法を実現する高電圧ケーブルの他の接続構造の例を示す概略縦断面図である。
【図5】本発明の同軸伝送線路の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図6】従来の高電圧ケーブル接続方法を示す概略縦断面図である。
【図7】従来のGISやGILで使用される同軸伝送線路の概略縦断面図である。
【図8】従来の同軸伝送線路を示す概略側断面図である。
【符号の説明】
1 高電圧ケーブル
2 ケーブルの導体
3,15 固体絶縁物
4 逆電界部
5 雄ねじ(取付部)
6 高電圧ケーブル接続用コネクタ
7 絶縁性接続部
8 雌ねじ(取付部)
12 内部導体
24 外部導体

Claims (7)

  1. 導体の周りを固体絶縁物の被覆体で被覆してなり、前記固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面で沿面放電及び絶縁破壊を生じるおそれのある高電圧ケーブルの接続方法において、放電が生じるとしたらその経路となる前記固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面の両面に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部を設けたことを特徴とする高電圧ケーブルの接続方法。
  2. 導体の周りを固体絶縁物の被覆体で被覆してなり、前記固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面で沿面放電及び絶縁破壊を生じるおそれのある高電圧ケーブルの接続構造において、放電が生じるとしたらその経路となる前記固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面の両面に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部を設けたことを特徴とする高電圧ケーブルの接続構造。
  3. 前記逆電界部はねじ構造によって構成されることを特徴とする請求項2記載の高電圧ケーブルの接続構造。
  4. 導体の周りを固体絶縁物の被覆体で被覆した高電圧ケーブル同士を接続するためのコネクタにおいて、対向する前記高電圧ケーブルの前記固体絶縁物の被覆体を機械的に接続するための絶縁性接続部と、前記導体を電気的に接続するための導通部とを備え、前記絶縁性接続部の両側について、放電が生じるとしたらその経路となる前記絶縁性接続部と前記固体絶縁物の被覆体との接続箇所の合わせ面の両面に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部を設けたことを特徴とする高電圧ケーブル接続用コネクタ。
  5. 前記逆電界部はねじ構造によって構成され、一方の高電圧ケーブルを接続するためのねじと他方の高電圧ケーブルを接続するためのねじとは逆ねじであることを特徴とする請求項4記載の高電圧ケーブル接続用コネクタ。
  6. 内部導体と、該内部導体との間に空間を設けて同軸に配置される外部導体と、前記空間に満たされる絶縁性ガスとを備える同軸伝送線路において、前記内部導体の周りを固体絶縁物の被覆体で被覆すると共に、放電が生じるとしたらその経路となる前記固体絶縁物の被覆体同士の接続箇所の合わせ面の両面に、放電の進行方向を電界方向とは逆のベクトル成分を有する方向とする逆電界部を設けたことを特徴とする同軸伝送線路。
  7. 前記絶縁性ガスは六フッ化硫黄ガスの代替ガスであることを特徴とする請求項6記載の同軸伝送線路。
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