請求項1に記載の気体吸着デバイスの発明は、気体吸着材と、水分吸着材と、気体難透過性素材からなる容器とからなり、前記容器は内部が通気性を調節可能な仕切りにより少なくとも2つ以上の空間に仕切られており、前記気体吸着材と前記水分吸着材はそれぞれ前記容器の異なる空間に収容されているものである。
一般に、気体吸着材は非常に水分を吸着し易い性質を有している。このため、気体吸着デバイスの周辺の気体が水分を含む場合は、水分を吸着することにより、気体の吸着容量が低減してしまう。
気体吸着デバイス周辺の気体が水分を含む場合であっても、気体吸着デバイスに収容する気体吸着材を増量することにより、必要な空気吸着量を得ることは可能である。しかし、一般に、気体吸着材は水分吸着材に比較して高価である。従って、水分吸着材で吸着が可能な水分を気体吸着材で吸着することは、コストの観点から得策ではない。
このような理由から、水分を水分吸着材で吸着し、気体を気体吸着材で吸着させることで気体吸着デバイスのコストを低減することが可能である。また、気体吸着材は水分吸着材に比較して水分を吸着する速度が大きい。従って、これらの吸着材を、水分を含む気体中に混在させると気体吸着材が大量に水分を吸着し、気体吸着材による水分の吸着を抑えるという目的は達成されない。
この目的を達成するため、吸着材を収容する容器と、容器内の吸着材の配置を適正化する。このため、気体吸着材と水分吸着材をそれぞれ独立した空間に収容する。また、独立した空間同士は適切な通気性を確保する。
さらに、気体吸着デバイス外の気体を吸着する際、気体は水分吸着材を収容した空間を通り、含まれる水分は吸着され、気体吸着材を収容した空間には水分が少ない気体となって到達するようにする。
この際、空間同士の通気性が大きすぎる場合は、水分吸着材が水分を吸着しきれず、水分を多く含む気体が気体吸着材に到達する。一方、空間同士の通気性が小さすぎる場合は、気体吸着材に気体が到達せず、気体吸着材の吸着性能が発現できない。従って、空間同士の通気性を調節することにより、上記の目的が達成される。
気体吸着デバイスの薄型化のためには、気体吸着材と水分吸着材を並列的に収容することが効果的である。気体吸着材と水分吸着材はそれぞれ独立した空間に収容され、仕切りにより仕切られた少なくとも2つ以上の空間が、気体吸着材または水分吸着材を収容する空間の厚み方向に対して略垂直な方向に並ぶようにすれば、気体吸着デバイスの厚さは、気体吸着材を収容する空間または水分吸着材を収容する空間のどちらか厚い方の厚みにほぼ等しくなる。
従って、空間に収容する気体吸着材と水分吸着材(または、気体吸着材または水分吸着材を収容する空間)の最大厚さを調節することにより、気体吸着デバイスの厚さを調節することができる。薄型化された気体吸着デバイスを適用することにより、真空断熱材等の真空機器を薄型化することが可能である。
ところで、気体吸着材が高活性であるほど、また、比表面積が大きくなるほど取り扱いの条件が厳しくなる。つまり、気体吸着材の活性を維持するために、空気に接触可能な時間が短くなり、また、接触可能な圧力も小さくなる。
従って、このような気体吸着材は、保存時に加えて、真空機器に設置する際の劣化も問題となる。従って、真空機器に気体吸着材を設置する際は、吸着すべき気体が存在する空間、つまり真空機器内部の圧力が、可能な限り低い状態となってから連通させる必要がある。
真空機器の一例として、真空断熱材に気体吸着材を適用する際は、気体難透過性の外被材中に芯材と気体吸着材を挿入したものをチャンバーに設置後、チャンバーを減圧し、外被材内部を減圧後、外被材の開口部を封止する。
この際、チャンバー内の減圧は真空ポンプにて行われる。常圧領域、つまり真空封止前ではポンプ、吸着材いずれによっても減圧することが可能である。一方、低圧領域、つまり真空封止後の外被材内部には、真空ポンプで減圧しきれなかった気体、真空封止後に外被材を通して侵入する気体、芯材から発生する気体が存在し、これらは気体吸着材のみで吸着が可能である。従って、真空封止後の外被材内部において気体吸着材の能力を十分に発揮するためには、真空封止後に外部に連通することが必要である。
これらの要求は、気体吸着材は、真空機器に設置するまで気体への接触を抑制する必要があり、気体難透過性素材からなる容器に収容することで達成される。
さらに、真空機器を封止後に連通を行うため、気体吸着デバイスに、気体吸着材で吸着困難な気体が存在すると、真空封止後の真空機器内に残ってしまう。従って、気体吸着デバイス内部は予め真空にしておく必要があり、その圧力は100Pa以下が望ましい。
ここで、容器とは、例えば、球殻のように空間を内外に分断するものである。
気体難透過性素材とは、ガス透過度が104[cm3/m2・day・atm]以下の素材であり、より望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下となるものである。
また、水分吸着材とは、気体中に含まれる水分を吸着できるものであり、活性炭、シリカゲル、酸化カルシウム等がある。
気体吸着材とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できるものであり、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が利用でき、特に、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等がある。
本願発明における仕切りとは、空間と空間の間の通気性を調節するものであり、管状の部材、連続気泡の多孔体等が使用できる。
また、真空機器とは、真空断熱材などのように、内部を減圧することでその機能を発現するものである。
連通とは、気体吸着デバイスの容器に貫通孔が生じることにより、容器内部の空間と、容器外部の空間に気体の通過が可能になることである。
また、請求項2に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1に記載の発明における仕切りに、連続多孔体を用いたものである。
請求項1に記載の発明の構成において、気体吸着材を収容する空間と水分吸着材を収容する空間との仕切りの通気性が大き過ぎる場合は、水分吸着材が水分を吸着しきれず、気体吸着材に水分が到達し、水分吸着材が劣化してしまう。一方、気体吸着材を収容する空間と水分吸着材を収容する空間との仕切りの通気性が小さ過ぎる場合は、気体吸着材に気体が到達せず、気体吸着材の吸着特性を発揮することが困難になる。
仕切り通気性は、気体透過度、断面積、長さに依存する。真空断熱材など、軟包材で覆われた真空機器に気体吸着デバイスを用いた場合、大気圧が気体吸着デバイスに加わる。気体吸着デバイスの容器が軟包材の場合、空間をつなぐ仕切りに大気圧が加わり、空間の断面積が減少し、気体の透過性が小さくなる。従って、大気圧に抗して空間の断面積を維持するためのスペーサーが必要となる。
そこで、請求項2に記載の発明では、仕切りとして連続多孔体を用いることにより、バルク部はスペーサーとして、空隙部は気体が通過する仕切りとして作用するため、これらの条件を満足することができる。
連続多孔体として用いる部材は、大気圧に抗して空隙の体積を維持でき、空隙が連通しているものであれば、セラミックスのように、無機物からなる粒子の集合体であってもよく、連通ウレタンフォームのように有機物であってもよいが、ガス発生の少ないものがより望ましい。
ここで、軟包材とは、外力により容易に変形し、収容されている部材の形状に追従するものであり、プラスチックラミネートフィルム等がこれに相当する。気体透過度とは、単位断面積、単位長さあたりの通気性である。
また、請求項3に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項2に記載の発明における連続多孔に、不織布を用いたものである。
気体吸着デバイスを真空断熱材などの軟包材で被われた真空機器に適用する際、気体吸着デバイスには大気圧が加わり、空間をつなぐ仕切りの空隙を狭める力が加わる。不織布は典型的な連続多孔体であり、優れた通気性を有している。また、適切な素材、製法を選択することにより圧力が加わった際の圧縮率を調節することができる。従って、大気圧下でも気体吸着デバイスの空間をつなぐ仕切りの空隙を適切に保持することができる。
ここで、不織布とは、繊維状構造物で、機械的結合方法、化学的結合方法、またはそれらを組み合わせて、繊維間を結合したり、または絡合させることにより成型されたものである。
不織布の材料となる繊維は、特に指定するものではなく、コットン、レーヨン、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、炭素繊維等を用いることができる。また、繊維の形態も短繊維または長繊維のいずれかに限定するものではなく、いずれの繊維も用いることが可能である。製法も特に指定するものではなく、水流結合法、サーマルボンド、スパンボンド、ニードルパンチ、湿式法、ケミカルボンド、ステッチボンドなどいずれの方法も用いることができる。
また、真空機器に用いるためよりガス発生が少ないものが望ましい。不織布はその製法中に、布のように織るプロセスを経ないことから安価に得ることが可能であり、これを用いることにより、気体吸着デバイスを安価に得ることができる。さらに、不織布は折り曲げる力に対する形状自由度が大きいため、気体吸着デバイスの容器が軟包材であれば、気体吸着デバイスの折り曲げ自由度も大きくなり、より汎用的な用途に用いることが可能になる。
また、請求項4に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項2に記載の発明における連続多孔体に、紙を用いたものである。
紙は典型的な連続多孔体であり、適切なものを選択することにより、優れた耐圧縮性を得ることができる。また、適切な素材、製法を選択することにより、圧力が加わった際の圧縮率をより精密に調節することができる。従って、より活性が高い気体吸着材を用いた場合でも、吸着特性を十分に発揮しつつ、水分による劣化を抑制することができる。
ここで紙とは、植物性繊維をからませることによりシート状にしたものである。紙はその製法中に布のように織るプロセスを経ないことから安価に得ることが可能であり、これを用いることにより気体吸着デバイスを安価に得ることができる。さらに、紙は折り曲げる力に対する形状自由度が大きいため、気体吸着デバイスの容器が軟包材であれば、気体吸着デバイスの折り曲げ自由度も大きくなり、より汎用的な用途に用いることが可能になる。
また、請求項5に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の発明における気体難透過性素材に、プラスチックラミネートフィルムを用いたものである。
プラスチックラミネートフィルムは軟包材であり、折り曲げ力に対する形状自由度が大きい。従って、プラスチックラミネートフィルムを容器として用いることにより、気体吸着デバイスの折り曲げ力に対する形状自由度が大きくなる。さらに、アルミ箔をラミネートすることにより、優れたバリア性を得ることができ、気体吸着材を長期間保存することが可能となる。
また、請求項6に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の発明における水分吸着材に、粉末状の水分吸着材を用いたものである。
水分吸着材が粉末状であるため、単位重量あたりの表面積が大きくなる。このため、周囲の水分をより早く吸着することが可能になる。従って、気体吸着材と水分吸着材を収容する空間をつなぐ仕切りの設計が容易になる。
これは、次に示す理由による。水分吸着材による水分の吸着漏れを少なくするため気体吸着材が収容された空間と水分吸着材が収容された空間をつなぐ仕切りの通気性は、ある値より小さくなければならない。これは、水分を含む気体が、水分吸着材を収容した空間に留まる時間を確保するためであり、この時間は、水分吸着材が水分を吸着する速度が大きいほど短くすることが可能である。
これは、気体吸着材が収容された空間と水分吸着材が収容された空間をつなぐ仕切りの通気性を大きくすることができることを意味する。従って、気体吸着デバイス外の気体を単位時間当たりにより多く吸着することができ、気体の吸着速度を速める必要がある用途に用いることができる。
ここで、粉末状とは、平均粒子径が50μm以下のものであり、望ましくは平均粒子径が10μm以下のものである。
また、請求項7に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の発明における気体吸着材に、CuZSM−5を用いたものである。
CuZSM−5は、気体と水分のいずれに対しても非常に高活性である。このため水分吸着材で水分を吸着しきった気体を気体吸着材に到達させることが必要である。気体吸着材と水分吸着材を収容する空間をつなぐ仕切りの通気性を適正化することにより、気体が水分吸着材付近に留まる時間を長くすることで、水分を含む量が少ない気体が気体吸着材に到達することが達成される。
また、請求項8に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の発明に加えて、遠隔操作により、水分吸着材が収容されている空間を形成している容器を開封する開封手段を備えたものである。
高活性の気体吸着材の劣化を少なくするため、気体吸着デバイスは、真空機器に設置して内部を減圧後に気体の吸着を可能とすることが必要である。一方、真空機器は、気体の漏れを防止するため、外部と隔絶する必要がある。このため、真空機器内部を減圧後に気体吸着デバイスを外部から操作することが困難である。従って、気体吸着デバイスは遠隔操作により気体の吸着が可能になることが望ましい。
遠隔操作の方法は、特に指定するものでない。例えば容器と真空機器の両方が軟包材の場合は、真空機器に予め突起物を内包しておき、減圧後に加わる大気圧により気体吸着デバイスの容器に突起物が押し付けられ容器を貫通することで容器が開封する方法がある。
請求項9に記載の発明は、請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の発明において、仕切りが、圧力が加わることにより気体透過部の面積が減少するものである。
仕切りの気体透過部の面積を大きくしておくことにより、気体吸着デバイスを作製する際の真空チャンバー内で減圧時間を短縮することが可能である。これは、真空チャンバー内に設置された気体吸着デバイスが、一箇所のみで真空チャンバーとつながっている場合であっても、気体透過部の面積が大きいことにより、十分な通気性を有するためである。
一方、気体吸着デバイスを使用する際は、水分吸着材による水分の低減を十分なものとするため、仕切りの通気性は小さくなる必要がある。真空断熱材等のように使用時に大気圧が加わる場合は、大気圧により仕切りの気体透過部の面積が小さくなり、通気性が小さくなる。従って、外部からの応力を加えることなく仕切りの通気性が低減し、水分吸着材よる水分の吸着が十分なものとなる。
ここで、気体透過部の面積とは、気体が通過する方向の空隙面積の合計である。
本発明の構成により、圧力未付加時には仕切りの通気性が大きいため、真空チャンバー内を減圧した際、気体吸着デバイスから不活性ガスが短時間で排出され、大気圧付加時には、仕切りの通気性が小さくなり、気体の中の水分は、水分吸着材により低減され、気体吸着材に到達する水分の量が低減され、気体吸着材の吸着能力を発揮することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項2から請求項9のいずれか一項に記載の発明において、仕切りが、軟質材料からなる多孔体であるものである。
仕切りが軟質材料からなる多孔体であるため、圧力により通気性を制御することが容易である。圧力が加わっていない場合においては、気体透過部の面積を大きくすることにより、作製時の真空ポンプによる減圧時間を短くすることができる。
圧力が加わった際は、圧力に応じて空隙一つ一つの気体透過部の面積が小さくなり、通気性が小さくなる。ここで、仕切りが管状ではなく多孔体であるため、気体透過部の面積が応力に応じて連続的に変化するため、通気性の制御が容易である。これは、以下に示す要因による。
軟質材料からなる管状部材であれば、閾値以上の圧力が加わると内壁が接触するまで変形し、接触後さらに変形させるためには、大きな圧力が必要になる。一方、多孔体の場合、構成する空隙が多く、それぞれの空隙を変形させるために要する力に分布を有する。従って、外力が加わると、変形しやすい空隙から順に変形する。このような過程を経ることにより、外見上連続的に変形するもとのして扱うことが可能となる。
ここで、軟質材料からなる多孔体は、空隙が連続しているものであれば特に指定するものではなく、連続気泡の発泡プラスチック等を用いることができる。
本発明の構成により、圧縮特性を制御することが可能であるため、大気圧未付加時の通気性を大きくして気体吸着デバイスから不活性ガスが短時間で排出され、大気圧付加時は、仕切りの通気性が小さくなり、気体の中の水分は、水分吸着材により低減され、気体吸着材に到達する水分の量が低減され、気体吸着材の吸着能力を発揮することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項2から請求項10のいずれか一項に記載の発明において、不活性気体中で、開口部を有する容器に前記開口部を介して気体吸着材と水分吸着材を設置後、前記容器周囲を減圧し、前記容器の開口部を介して前記容器内の不活性気体を排出した後、前記開口部を密封することにより作製したものである。
容器への気体吸着材と水分吸着材の設置を不活性気体中で行うため、気体吸着材の劣化を抑制することができる。また、容器への気体吸着材と水分吸着材の設置後は、不活性気体を排出した後、開口部を封止するため、それぞれの吸着材を収容する空間は真空となるため、気体吸着デバイスを、真空機器に適用する際の弊害も無い。さらに、気体吸着デバイスと水分吸着デバイスは、圧力が加わっておらず通気性が大きな仕切りでつながっているため、いずれか一方の吸着材側を減圧することにより、吸着材全体を減圧することができる。
ここで、不活性気体とは、気体吸着材が吸着できない気体であり、ペリウム、アルゴン等の希ガスを用いることができる。
本発明の作製方法により、気体吸着デバイス作製時の排気時間を短くでき、真空機器に適用した際、気体吸着材の水分による劣化を抑制した気体吸着デバイスを得ることができる。
請求項12に記載の発明は、請求項2から請求項11のいずれか一項に記載の発明において、仕切りは、圧力未付加時の通気性が、10cc/sec以上であるものである。
圧力未付加時の通気性が10cc/sec以上であるため、気体吸着デバイスを作製時に減圧した際、容器内の空間全体が速やかに減圧されるため、短時間で作製することができ、安価な気体吸着デバイスを得ることができる。
なお、10cc/sec以上としたが、100cc/sec以上であることが、より望ましい。
ここで、通気性は板状の試料を用いて、面方向の値をフラジール法により測定した。
請求項13に記載の発明は、請求項2から請求項12のいずれかご項に記載の発明において、仕切りは、大気圧下での通気性が0.1cc/sec以下であるものである。
真空断熱材等のように、大気圧が加わる状況に気体吸着デバイスを適用した際、仕切りにも大気圧が加わる。この状態では仕切りの通気性が0.1cc/sec以下となる。仕切りの通気性が小さいため、容器外部から侵入した水分を含む気体が長時間留まるため、水分吸着材により水分が吸着され、気体吸着材に到達する水分が少なくなる。
なお、0.1cc/sec以下としたが、0.01cc/sec以下であることが、より望ましい。
ここで、通気性の定義と通気度の測定方法は、請求項12に記載の発明のものと同一である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、この発明が限定されるものではない。また、真空機器の一例として真空断熱材をあげる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスの開封前の状態を示す概略断面図、図2は、同実施の形態における気体吸着デバイスの開封後の状態を示す概略断面図、図3は、同実施の形態における気体吸着デバイスを芯材に埋設させた真空断熱材の概略断面図である。
図1、図2に示すように、本実施の形態の気体吸着デバイス1は、気体吸着材2と、水分吸着材3と、アルミ箔を含むプラスチックラミネートフィルム(気体難透過性素材)からなる軟包材で構成された容器4とからなり、容器4は内部が通気性を調節可能な不織布からなる仕切り5により2つの空間に仕切られており、気体吸着材2と水分吸着材3はそれぞれ容器4の異なる空間に収容されている。なお、仕切り5により仕切られた2つの空間が、気体吸着材2または水分吸着材3を収容する空間の厚み方向に対して略垂直な方向に並んでいる。また、遠隔操作により、水分吸着材3が収容されている空間を形成している容器4を開封する突起物(開封手段)6が、水分吸着材3が収容されている空間を形成している容器4に接触している。
突起物(開封手段)6は、例えば、プラスチック成型品からなり、一方の面が凸で他方の面が凹で、凸の面を押す外力が加わっていない状態で凹の面の凹んだ部分に凹みの深さと同じ高さか若干低い高さの突起部を有し、凸の面を押す外力が加わると突起物(開封手段)6の凹凸が小さくなり突起部の高さが凹みの深さより高くなるように変形可能に構成され、突起部のある凹の面側に水分吸着材3が収容されている空間を形成している容器4が配置され、大気圧程度の力で凸の面が押されると、突起物(開封手段)6の突起部が、水分吸着材3が収容されている空間を形成している容器4に接触して、やがて水分吸着材3が収容されている空間を形成している容器4を貫通するように構成している。
図3は、本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスを芯材に埋設した真空断熱材の概略断面図である。
図3において、真空断熱材7は、突起物(開封手段)6とガラス繊維集合体の芯材8とを、プラスチックラミネートフィルムの3方をシールして袋状とした外被材9の中に挿入して、外被材9内部を減圧とし、外被材9の袋の開口部を封止したものである。
なお、袋状の外被材9内に、突起物(開封手段)6とガラス繊維集合体の芯材8を挿入する時は、一方の表面部分に気体吸着デバイス1を突起物(開封手段)6が露出する程度に内部に埋め込んだ状態の芯材8を、突起物(開封手段)6の凸の面が外被材9に接触し、突起物(開封手段)6の突起部のある凹の面が水分吸着材3が収容されている空間を形成している容器4に接触するように挿入する。
気体難透過性の外被材9中に芯材8と気体吸着デバイス1を挿入したものをチャンバーに設置後、チャンバーを減圧し、外被材9内部を減圧後、外被材9の開口部を封止する。
以上のように構成された気体吸着デバイスについて、以下、図1から図3の動作、作用を説明する。
まず、図1に示すように、気体吸着デバイス1の保存時には、気体吸着材2は、気体難透過性素材からなる容器4内部に真空封止されているため、気体吸着デバイス1を長時間大気中に放置しても、気体吸着材2は気体に触れないため、劣化せず、長時間大気中で保存することができる。
真空断熱材7の外被材9は、プラスチックラミネートフィルムであるため、真空封止後に加わる大気圧により変形し、突起物6に圧縮力を加える。この結果、突起物6は軟包材からなる容器4に突き刺し力を加えるため、容器4には貫通孔が生じて外被材9中の気体が吸着可能になる。
図2に示すように、容器4には突起物6により貫通孔が生じるため、外被材9内部の気体は水分吸着材3を収容した空間に侵入する。この気体は、仕切り5を通過して、気体吸着材2を収容した空間に移動する。
突起物6により生じた貫通孔の通気性は、仕切り5の通気性に比較して大きくされているため、水分吸着材3を収容した空間に侵入した気体は内部で淀むことになる。この間に気体に含まれる水分は、水分吸着材3により除去されるため、仕切り5を経て気体吸着材2に到達する気体は水分を含む量が非常に低減されている。
従って、気体吸着材2はその吸着能力の大部分を気体の吸着に発揮できるため効率的に気体を吸着することができる。
以上のような手段により、保存時、真空断熱材への適用時のいずれの場合においても、長期間にわたる真空度の維持が可能となる。
本実施の形態の気体吸着デバイス1は、気体吸着材2と、水分吸着材3と、気体難透過性素材からなる容器4とからなり、容器4は内部が通気性を調節可能な仕切り5により2つの空間に仕切られており、気体吸着材2と水分吸着材3はそれぞれ容器4の異なる空間に収容されているものである。なお、本実施の形態では、容器4の内部を2つの空間に仕切ったが、これに限らず、少なくとも2つ以上の空間に仕切っても構わない。
また、気体吸着デバイス1外の気体を吸着する際、気体は水分吸着材3を収容した空間を通り、含まれる水分は吸着され、気体吸着材2を収容した空間には水分が少ない気体となって到達するようにする。
また、仕切りにより仕切られた2つ空間が、気体吸着材2または水分吸着材3を収容する空間の厚み方向に対して略垂直な方向に並ぶようにしているので、気体吸着デバイス1の厚さは、気体吸着材2を収容する空間または水分吸着材3を収容する空間のどちらか厚い方の厚みにほぼ等しくなる。
空間に収容する気体吸着材2と水分吸着材3(または、気体吸着材2または水分吸着材3を収容する空間)の最大厚さを調節することにより、気体吸着デバイス1の厚さを調節することができる。薄型化された気体吸着デバイス1を適用することにより、真空断熱材
等の真空機器を薄型化することが可能である。
チャンバー内の減圧は真空ポンプにて行われる。常圧領域、つまり真空封止前ではポンプ、吸着材いずれによっても減圧することが可能である。一方、低圧領域、つまり真空封止後の外被材9内部には、真空ポンプで減圧しきれなかった気体、真空封止後に外被材9を通して侵入する気体、芯材8から発生する気体が存在し、これらは気体吸着材2のみで吸着が可能である。従って、真空封止後の外被材9内部において気体吸着材2の能力を十分に発揮するためには、真空封止後に外部に連通することが必要である。
これらの要求は、気体吸着材2は、真空機器に設置するまで気体への接触を抑制する必要があり、気体難透過性素材からなる容器4に収容することで達成される。
さらに、真空機器を封止後に連通を行うため、気体吸着デバイス1に、気体吸着材2で吸着困難な気体が存在すると、真空封止後の真空機器内に残ってしまう。従って、気体吸着デバイス1内部は予め真空にしておく必要があり、その圧力は100Pa以下が望ましい。
また、気体吸着材2を収容する空間と水分吸着材3を収容する空間との仕切り5の通気性が大き過ぎる場合は、水分吸着材3が水分を吸着しきれず、気体吸着材2に水分が到達し、水分吸着材3が劣化してしまう。一方、気体吸着材2を収容する空間と水分吸着材3を収容する空間との仕切り5の通気性が小さ過ぎる場合は、気体吸着材2に気体が到達せず、気体吸着材2の吸着特性を発揮することが困難になる。
そこで、仕切り5として連続多孔体を用いることにより、バルク部はスペーサーとして、空隙部は気体が通過する仕切り5として作用するため、これらの条件を満足することができる。
また、本実施の形態では、仕切り5を構成する連続多孔体に、不織布を用いている。
気体吸着デバイス1を真空断熱材7などの軟包材で被われた真空機器に適用する際、気体吸着デバイス1には大気圧が加わり、空間をつなぐ仕切り5の空隙を狭める力が加わる。不織布は典型的な連続多孔体であり、優れた通気性を有している。また、適切な素材、製法を選択することにより圧力が加わった際の圧縮率を調節することができる。従って、大気圧下でも気体吸着デバイス1の空間をつなぐ仕切りの空隙を適切に保持することができる。
また、不織布はその製法中に、布のように織るプロセスを経ないことから安価に得ることが可能であり、これを用いることにより、気体吸着デバイス1を安価に得ることができる。さらに、不織布は折り曲げる力に対する形状自由度が大きいため、気体吸着デバイス1の容器が軟包材であれば、気体吸着デバイス1の折り曲げ自由度も大きくなり、より汎用的な用途に用いることが可能になる。
また、本実施の形態では、容器4の気体難透過性素材に、プラスチックラミネートフィルムを用いたものである。
プラスチックラミネートフィルムは軟包材であり、折り曲げ力に対する形状自由度が大きい。従って、プラスチックラミネートフィルムを容器として用いることにより、気体吸着デバイスの折り曲げ力に対する形状自由度が大きくなる。さらに、アルミ箔をラミネートすることにより、優れたバリア性を得ることができ、気体吸着材を長期間保存することが可能となる。
また、本実施の形態の気体吸着デバイス1は、遠隔操作により、水分吸着材3が収容されている空間を形成している容器4を開封する開封手段として突起物6を備えたものであり、真空断熱材7の減圧後に加わる大気圧により気体吸着デバイス1の容器4に突起物6が押し付けられ容器4を貫通することで容器4が開封する。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における気体吸着デバイスの開封前の状態を示す概略断面図、図5は、本発明の実施の形態2における気体吸着デバイスの開封後の状態を示す概略断面図である。
本実施の形態は、気体吸着材2にCuZSM−5を用い、水分吸着材3に粉末状のCaOを用い、仕切り5に紙を用いたものであり、その他の気体吸着デバイスの構成や真空断熱材の作製方法等は、実施の形態1と同様である。
以上のように構成された気体吸着デバイスについて、以下、図4および図5の動作、作用を説明する。
まず、図4に示すように、気体吸着デバイス1の保存時には気体吸着材2は、気体難透過性素材からなる容器4内部に真空封止されているため、気体吸着デバイス1を長時間大気中に放置しても、気体吸着材2は気体に触れないため、劣化せず、長時間大気中で保存することができる。
真空断熱材7の外被材9はプラスチックラミネートフィルムであるため、真空封止後に加わる大気圧により変形し、突起物6に圧縮力を加える。この結果、突起物6は軟包材からなる容器4に突き刺し力を加えるため、容器4には貫通孔が生じて外被材9中の気体が吸着可能になる。
図5に示すように、容器4には突起物6により貫通孔が生じるため、外被材9内部の気体は水分吸着材3を収容した空間に侵入する。この気体は、仕切り5を通過して、気体吸着材2を収容した空間に移動する。
突起物6により生じた貫通孔の通気性は、仕切り5の通気性に比較して大きくされているため、水分吸着材3を収容した空間に侵入した気体は内部で淀むことになる。
ここで、水分吸着材3は粉末状であるため、単位重量あたりの表面積が大きいため、より短時間で気体中の水分を除去できる。このため、水分吸着材3を収容する空間での滞在時間が短くても水分を除去できる。従って、仕切り5の通気性を大きくすることが可能であり、単位時間当たりにより大量の気体を吸着することが可能である。以上の手段により、短時間で大量の気体を吸着することが必要な場合においても使用可能な気体吸着デバイス1を得ることができる。
本実施の形態では、仕切り5を構成する連続多孔体に、紙を用いている。
紙は典型的な連続多孔体であり、適切なものを選択することにより、優れた耐圧縮性を得ることができる。また、適切な素材、製法を選択することにより、圧力が加わった際の圧縮率をより精密に調節することができる。従って、より活性が高い気体吸着材2を用いた場合でも、吸着特性を十分に発揮しつつ、水分による劣化を抑制することができる。
また、紙は、その製法中に布のように織るプロセスを経ないことから、安価に得ることが可能であり、これを用いることにより気体吸着デバイス1を安価に得ることができる。さらに、紙は折り曲げる力に対する形状自由度が大きいため、気体吸着デバイス1の容器が軟包材であれば、気体吸着デバイス1の折り曲げ自由度も大きくなり、より汎用的な用途に用いることが可能になる。
また、本実施の形態では、水分吸着材3が粉末状であるため、単位重量あたりの表面積が大きくなる。このため、周囲の水分をより早く吸着することが可能になる。従って、気体吸着材2と水分吸着材3を収容する空間をつなぐ仕切り5の寸法の設計が容易になり、気体吸着材2が収容された空間と水分吸着材3が収容された空間をつなぐ仕切り5の通気性を大きくすることができ、気体吸着デバイス1外の気体を単位時間当たりにより多く吸着することができ、気体の吸着速度を速める必要がある用途に用いることができる。
また、本実施の形態では、気体吸着材2に、CuZSM−5を用いている。
CuZSM−5は、気体と水分のいずれに対しても非常に高活性である。このため水分吸着材3で水分を吸着しきった気体を気体吸着材2に到達させることが必要である。気体吸着材2と水分吸着材3を収容する空間をつなぐ仕切り5の通気性を適正化することにより、気体が水分吸着材3付近に留まる時間を長くすることで、水分を含む量が少ない気体が気体吸着材2に到達することが達成される。
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における減圧下での気体吸着デバイスの模式図である。
気体吸着デバイス1は気体吸着、材2、水分吸着材3が容器4で内包されたものである。容器4は気体難透過性素材からなる軟包材であり、内部が複数の空間に分けられており、それぞれの空間に気体吸着材2と水分吸着材3が収容されている。気体吸着材2を収容している空間と水分吸着材3を収容している空間は仕切り5でつながれている。容器4の水分吸着材3付近の表面には、突起物6が取り付けられている。また、容器4はアルミ箔を含むプラスチックラミネートフィルムであり、仕切り5は軟質材料からなる多孔体の発泡ポリエチレンである。
気体吸着デバイス1は、アルゴンガス中で一方が開口したプラスチックラミネートフィルムに気体吸着材2と水分吸着材3と仕切り5を設置後、アルゴンガスを排出した後、密封封止して作製した。
図7は、本発明の実施の形態3における真空断熱材に適用後の気体吸着デバイスの模式図である。
以上のように構成された気体吸着デバイスについて、以下、図6および図7の動作、作用を説明する。
気体吸着材2と水分吸着材3と開口部を有する2つの空間が仕切り5でつながれた容器4を予め不活性気体で満たされたチャンバーに設置し、それぞれの空間に気体吸着材2と水分吸着材3を収容する。その後、水分吸着材3を収納した空間の開口部を熱溶着により封止する。チャンバー内を減圧することにより気体吸着材を収容した空間の開口部から不活性気体が放出され、開口部を溶着することにより気体吸着デバイスが作製される。
気体吸着デバイス内部は真空であるため、全体が大気圧で圧縮される。ここで、仕切り5は発泡ポリエチレンであるため、大気圧により圧縮され、内部の空隙が縮小する。この結果、仕切りの通気性が小さくなる。
このような気体吸着デバイスを真空断熱材に適用して評価を行った結果、優れた気体吸着効果が得られた。
ここで、真空断熱材の構成、真空断熱材に適用した気体吸着デバイスが気体を吸着する作用は実施の形態1と同等である。
(実施例1)
気体吸着材2として、粉末状のCuZSM−5を用いた。水分吸着材3として、粒状の平均粒子径が10μmのCaOを5g用いた。
容器4として、軟包材であるプラスチックラミネートフィルムを用いた。プラスチックラミネートフィルムの構成は、厚さ15μmのポリプロピレンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされたものである。
仕切り5は厚さ100μm、幅10mmの不織布である。
気体吸着デバイス1は、アルゴン雰囲気中で以下の手順で作製した。
長方形のプラスチックラミネートフィルムの低密度ポリエチレン同士を向かい合わせて不織布を挟み、ポリプロピレンフィルム側から熱溶着し、この部分を共通の底辺としてもつ3方シール袋を形成する。
一方に気体吸着材2、他方に水分吸着材3を挿入し、チャンバーに設置後10Paで減圧封止を行った。このようにして作製された気体吸着デバイス1の厚さは、2mmであった。
突起物6は、りん青銅製の板を一方の面が凸で他方の面が凹になるように折り曲げ、中央部をV字に切って凹の面側に折り曲げて突起部にしたものである。
上記の通り構成された気体吸着デバイス1を用いて真空断熱材7を作製した。真空断熱材7の芯材8としてガラス繊維集合体を加圧しながら400℃で熱成型して板状としたものを用いた。外被材9はプラスチックラミネートフィルムであり、厚さ15μmのナイロンフィルム、厚さ25μmのナイロンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされている。
そして、予め3方向をシールして袋状とした外被材9に芯材8と気体吸着デバイス1を挿入し、真空チャンバーに設置し1000Paまで減圧後封止した。
真空封止後に加わる大気圧で突起物6が容器4に押し付けられた結果、容器4に貫通孔が生じる。
真空断熱材7の内部の圧力を計測すると、5Paであり気体吸着材2による吸着の結果、外被材9の内部の圧力が低減したことがわかる。
また、真空断熱材7の厚さ厚さを測定すると、最も厚い部分は気体吸着材2と芯材8が重なった部分であり、厚さは6mmであった。
この真空断熱材7を1ヶ月大気中で保存した後の内圧は5Paであり、外被材9を介して侵入する気体を吸着していることがわかる。
また、CaOの水分吸着量を調べるため、重量増加量を測定した結果、0.15g増加していたことから、初期重量に対して3%の水分を吸着していることがわかる。
(実施例2)
気体吸着材2として、粉末状のCuZSM−5を用いた。水分吸着材3として、平均粒子径が10μmの粉末状のCaOを5g用いた。
容器4として、軟包材であるプラスチックラミネートフィルムを用い、構成は厚さ15μmのポリプロピレンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンの順にラミネートされている。仕切り5は厚さ100μm、幅10mmの不織布を10枚重ねたものである。
突起物6は、りん青銅製の板を一方の面が凸で他方の面が凹になるように折り曲げ、中央部をV字に切って凹の面側に折り曲げて突起部にしたものである。
上記の通り構成された気体吸着デバイス1を用いて真空断熱材7を作製した。真空断熱材7の芯材8としてガラス繊維集合体を加圧しながら400℃で熱成型して板状としたものを用いた。外被材9はプラスチックラミネートフィルムであり、厚さ15μmのナイロンフィルム、厚さ25μmのナイロンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされている。
そして、予め3方向をシールして袋状とした外被材9に芯材8と気体吸着デバイス1を挿入し、真空チャンバーに設置し1000Paまで減圧後封止した。
真空封止後に加わる大気圧で、突起物6が容器4に押し付けられた結果、容器4に貫通孔が生じる。
以上のようにして作製された真空断熱材7を、100℃で保持された恒温槽に1ヶ月置き、内圧を測定した結果5Paであり、侵入する気体を吸着していることがわかる。
また、低密度ポリエチレンの100℃における気体透過度は、低密度ポリエチレンの室温における気体透過度に比べ格段に大きくなる。
従って、単位時間に真空断熱材7に侵入する気体は多くなるが、この場合においても内圧が上昇しておらず、侵入する気体を吸着していることがわかる。100℃においても真空断熱材7の内圧が上昇しないことから、ジャーポット、温水タンク等高温での使用においても優れた断熱性能を維持することができる。
また、CaOの水分吸着量を調べるため、重量増加量を測定した結果、0.10g増加していたことから、初期重量に対して2%の水分を吸着していることがわかる。(実施例1)に比較して重量増加が少なくなっているが、これは100℃で保温時の湿度が低かったためであると考えられる。
(実施例3)
気体吸着材2として、粉末状のCuZSM−5を用いた。水分吸着材3として、粒状の平均粒子径が10μmのCaOを5g用いた。
容器4として、軟包材であるプラスチックラミネートフィルムを用い、構成は厚さ15μmのポリプロピレンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされたものである。
仕切り5は厚さ10mm、幅20mm、長さ50mm、発泡倍率20倍の発泡ポリエチレンである。気体吸着デバイス1は、アルゴン雰囲気中で以下の手順で作製した。長方形のプラスチックラミネートフィルムの低密度ポリエチレン同士を向かい合わせて不織布を挟み、ポリプロピレンフィノレム側から熱溶着し、この部分を共通の底辺としてもつ3方シール袋を形成する。一方に気体吸着材2、他方に水分吸着材3を挿入し、水分吸着材3側の開口部を封止し、チャンバーに設置後l0Paで減圧後、気体吸着材2側の開口部の封止を行った。このようにして作製された気体吸着デバイス1の吸着材部の厚さは2mmであり、仕切り部の厚さは1.5mmあった。
突起物6はりん青銅製の板を折り曲げたものの中央部を切り欠いてなるものである。
上記の通り構成された気体吸着デバイス1を用いて真空断熱材7を作製した。真空断熱材7の芯材8としてガラス繊維集合体を加圧しながら400℃で熱成型して板状としたものを用いた。外被材9はプラスチックラミネートフィルムであり、厚さ15μmのナイロンフィルム、厚さ25μmのナイロンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされている。予め3方向をシールして袋状とした外被材9に芯材8と気体吸着デバイス1を挿入し、真空チャンバーに設置し1000Paまで減圧後封止した。真空封止後に加わる大気圧で突起物6が容器4に押し付けられた結果、貫通孔が生じる。
真空断熱材7の内部の圧力を計測すると、5Paであり気体吸着材2による吸着の結果、外被材9の内部圧力が低減したことがわかる。
真空断熱材7の厚さ厚さを測定すると、最も厚い部分は気体吸着材2と芯材8が重なった部分であり、厚さは6mmであった。
また、仕切り5の通気性は、圧力未付加時は10cc/sであり、大気圧付加時は0.1cc/sであった。
さらに、CaOの水分吸着量を調べるため、重量増加量を測定した結果、0.15g増加していたことから、初期重量に対して3%の水分を吸着していることがわかる。
(実施例4)
気体吸着材2として、粉末状のCuZSM−5を用いた。水分吸着材3として、粒状の平均粒子径が10μmのCaOを5g用いた。
容器4として、軟包材であるプラスチックラミネートフィルムを用い、構成は厚さ15μmのポリプロピレンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされたものである。
仕切り5は厚さ10mm、幅20mm、長さ40mm、発泡倍率20倍の発泡ポリエチレンである。
以上の部材から、実施例3と同様の方法で気体吸着デバイス1を作製し、実施例3と同様の方法で真空断熱材7に適用した。
評価の結果、仕切り5の通気性は、圧力未付加時は12.5cc/sであり、大気圧付加時は0.125cc/sであった。
CaOの水分吸着量を調べるため、重量増加量を測定した結果、0.13g増加していた。重量増加以外の結果は実施例3と同等であった。
(実施例5)
気体吸着材2として、粉末状のCuZSM−5を用いた。水分吸着材3として、粒状の平均粒子径が10μmのCaOを5g用いた。
容器4として、軟包材であるプラスチックラミネートフィルムを用い、構成は厚さ15μmのポリプロピレンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされたものである。
仕切り5は厚さ10mm、幅20mm、長さ100mm、発泡倍率20倍の発泡ポリエチレンである。
以上の部材から、実施例3と同様の方法で気体吸着デバイス1を作製し、実施例3と同様の方法で真空断熱材7に適用した。
評価の結果、仕切り5の通気性は、圧力未付加時は5cc/sであり、大気圧付加時は0.05cc/sであった。
CaOの水分吸着量を調べるため、重量増加量を測定した結果、0.15g増加していた。重量増加以外の結果は実施例3と同等であった。このことから、圧力付加時の通気性が0.01以下であれば、気体吸着デバイス1に侵入する気体に含まれる水分は、水分吸着材3により十分に低減していると考えられる。
(実施例6)
気体吸着材2として、粉末状のCuZSM−5を用いた。水分吸着材3として、粒状の平均粒子径が10μmのCaOを5g用いた。
容器4として、軟包材であるプラスチックラミネートフィルムを用い、構成は厚さ15μmのポリプロピレンフィルム、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされたものである。
仕切り5は厚さ10mm、幅20mm、長さ50mm、発泡倍率40倍の発泡ポリエチレンである。
以上の部材から、実施例3と同権の方法で気体吸着デバイス1を作製し、実施例3と同様の方法で真空断熱材7に適用した。
評価の結果、仕切り5の通気性は、圧力未付加時は18cc/sであり、大気圧付加時は0.18cc/sであった。
CaOの水分吸着量を調べるため、重量増加量を測定した結果、0.11g増加していた。重量増加以外の結果は実施例3と同等であった。
(比較例1)
実施例1において、水分吸着材3を用いない場合、真空断熱材7の内部の圧力を計測すると、300Paであった。実施例1に比較して圧力が高くなっているが、これは気体吸着デバイスに水分吸着材3を用いていないため、気体吸着材2が水分を吸着することにより、気体の吸着能力が低減したためである。
(比較例2)
実施例2において、水分吸着材3を用いない場合、真空断熱材7の内部の圧力を計測すると、900Paであった。比較例1に比較して圧力が高くなっているが、これは気体吸着デバイスに水分吸着材3を用いていないことと、仕切り5の通気性が大きいため、気体吸着材2には水分を含んだ気体が大量に到達した結果、気体吸着材2が大量の水分を吸着することにより、気体の吸着能力が著しく低減したためである。
(比較例3)
実施例1において、気体吸着デバイスとして特許文献1に記載の真空維持デバイスを用いて真空断熱材を作製した。真空断熱材の最も厚い部分は真空維持デバイスの部分であり、厚さは9mmであった。これは、断熱維持デバイス単体の厚さが7mmであり、実施例1の気体吸着デバイスに比較して厚いためである。