JP4961229B2 - 熱処理炉及び熱処理方法 - Google Patents
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Description
炭素繊維前駆体繊維であるポリアクリロニトリル繊維は、まず、耐炎化工程にて200〜300℃の熱風で熱処理(耐炎化処理)されて予備酸化し、耐炎化繊維となる。耐炎化繊維は、次いで、炭素化工程にて300〜2000℃に加熱された窒素等の不活性雰囲気で熱処理(炭素化処理)されることにより炭素化し、炭素繊維となる。
熱風加熱手段やピトー管に付着した異物を除去するには、熱処理炉を停止してメンテナンスを行う必要がある。メンテナンスの頻度が多くなると、その都度、熱処理炉を停止させなければならず、耐炎化繊維の生産性が低下してしまう。
例えば特許文献1による耐炎化繊維の製造法には、熱風循環路内に異物除去手段、熱風循環手段、及び熱風風速センサを設けた耐炎化繊維の製造装置において、異物除去手段を運転中でも交換することができ、所定範囲内の炉内循環風量に戻すことができる方法が開示されている。
ゆえに、炭素繊維前駆体繊維の耐炎化処理において、熱処理炉の炉内循環風量を長期にわたり一定に保つことのできる熱処理方法を実現するためには、長期にわたり正確な風速を検知することができる熱風風速検知手段が求められていた。
(1)炭素繊維前駆体繊維が走行する加熱処理室と、加熱処理室の熱風を循環させるための熱風循環設備とを備えた熱処理炉において、前記熱風循環設備が、熱風加熱手段と、熱風循環手段と、ピトー管を利用する熱風風速検知手段と、ピトー管内を洗浄する洗浄手段とを備え、加熱処理室の熱風排出口と熱風加熱手段の間に異物除去手段が配置され、該熱風排出口と異物除去手段の間に、熱風を排出する排気口と、外気を導入する給気口とが設けられていることを特徴とする熱処理炉。
(2)熱風風速検知とピトー管内の洗浄とを交互に繰り返すことを特徴とする(1)に記載の熱処理炉。
(3)(1)〜(2)のいずれかに記載の熱処理炉に炭素繊維前駆体繊維を導入することを特徴とする熱処理方法。
図1に示すように、本実施形態例の熱処理炉1は、箱体をした炉本体2の内部に、シート状に引き揃えられて走行する炭素繊維前駆体繊維Fに耐炎化処理を行う加熱処理室3が配置され、加熱処理室3をコの字型に囲むように、熱風循環路4が配置されている。
加熱処理室3の上部には、加熱処理室3の下方へ向けて熱風を吹出する熱風送給口3aが配置されている。加熱処理室3の下部には、熱風を加熱処理室3から排出する熱風排出口3bが配置されている。
熱風循環路4は、加熱処理室3の熱風排出口3bと熱風送給口3aとを連結している。熱風は図1に示す矢印の方向に流れ、加熱処理室3内と熱風循環路4内とを循環している。
熱風循環路4外には、ピトー管8によって検知された圧力信号を取り込み、風速検知信号に変換する風速検知器13が配置されている。ピトー管8と風速検知器13で、熱風風速検知手段が構成されている。熱風循環路4外には、他に、熱風循環手段7を制御するための熱風循環手段制御装置9や、ピトー管8内の洗浄手段を構成する弁10、弁11、エアー供給装置12、及び弁開閉制御装置14が配置されている。
図1の熱処理炉1では、加熱処理室3の一側面が炉本体2の一側面と同一構成となるように図示している。なお、加熱処理室3の保温効果を高めるためには、加熱処理室3の側面を炉本体2の側面と別構成にして、加熱処理室3の側面と炉本体2との間に熱風循環路4と繋がった空間を設け、この空間の上部に排気口4aを配置してもよい。このように、熱風が流れる空間を加熱処理室3と炉本体2との間に設けることで、加熱処理室3側面の保温効果を高めることができる。
異物除去手段5の配置箇所としては、異物が効率よく漉し取れる位置であれば特に限定されないが、好ましくは熱風排出口3bと熱風加熱手段6の間に配置される。熱風加熱手段6の上流に異物除去手段5を配置することにより、異物除去手段5より下流に配置されている熱風加熱手段6やピトー管8等への異物の付着を減少できる。これにより、加熱炉1のメンテナンス性が向上し、装置のトラブルが低減できる。なお、熱風排出口3bと熱風加熱手段6の間であれば、例えば熱風排出口3bの直後に異物除去手段5が配置されてもよい。また、異物除去手段5の配置数は、単数に限定されるものではなく、熱風循環路4内に複数設けられていてもよい。
ピトー管8内の洗浄に切り替えるときは、一時的に弁10、弁11共に閉とし、次に、弁10を閉、弁11を開として、弁11に接続されたエアー供給装置12から空気を供給する。供給された空気によってピトー管8内の異物が熱風循環路4内に押し戻される。これにより、ピトー管8内が洗浄される。
再度、ピトー管8内の洗浄から熱風風速の検知に切り替えるときは、一時的に弁10、弁11共に閉とし、次に、弁10を開、弁11を閉として熱風風速の検知を再開する。
なお、これら一連の動作は、弁開閉制御装置14によって制御される。
(実施例)
前駆体繊維からなる繊維状シートとして、アクリロニトリル96モル%以上を含有するポリアクリロニトリル系繊維からなる炭素繊維前駆体繊維Fを使用し、図1に示す熱処理炉1を用いて、250℃の温度設定で、耐炎化処理を行った。
この際、熱風風速検知手段による熱風の風速検知時間を30秒間、洗浄手段によるピトー管8内のエアー洗浄時間を180秒間、弁10、弁11共に閉とする切り替え時間を3秒として運転を実施した。なお、熱風循環路4内の熱風風速は3m/secとした。
(比較例)
比較例には、図2に示した比較例の熱処理炉20を用いて、実施例と同様の耐炎化処理を行った。なお、比較例の熱処理炉20は、異物除去手段5を熱風加熱手段6の下流側に配置して、ピトー管8内の洗浄手段を備えていないこと以外は、実施例の熱処理炉1と同様の構成とした。
実施例では、10日間を経過しても熱処理炉1内の風量は一定に保たれており、耐炎化繊維の毛羽発生等の品位低下も無く、安定した運転が行えた。運転10日目に熱処理炉1の運転を終了し、熱風加熱手段6への異物の付着状況を目視にて確認したところ、異物の付着は少なく、メンテナンス性が良好と判断された。また、ピトー管8内への異物の付着状況を目視にて確認したところ、異物の付着は無く、メンテナンス性が良好と判断された。
比較例では、運転を開始して3日後から、加熱処理室3内の風量が増加し始めた。風量の増加によって炭素繊維前駆体繊維F同士の擦れが生じ、得られた耐炎化繊維に毛羽が発生し、品位が低下した。したがって、運転開始から7日後に運転を停止した。運転停止後に、熱風加熱手段6への異物の付着状況を目視にて確認したところ、異物が多数付着しており、メンテナンス性が低いと判断された。また、ピトー管8内にも異物が多数付着し、閉塞していた。ピトー管8内の閉塞によって、風速検知器13が実際よりも遅い風速を検知してしまったことで、熱風循環手段制御装置9が所定量より多い風量を発生するように熱風循環手段7を制御し、その結果として、風量が所定量より増加したのが要因だった。
2 炉本体
3 加熱処理室
3a 熱風送給口
3b 熱風排出口
4 熱風循環路
4a 排気口
4b 給気口
5 異物除去手段
6 熱風加熱手段
7 熱風循環手段
8 ピトー管
9 熱風循環手段制御装置
10、11 弁
12 エアー供給装置
13 風速検知器
14 弁開閉制御装置
20 比較例の熱処理炉
F 炭素繊維前駆体繊維
Claims (3)
- 炭素繊維前駆体繊維が走行する加熱処理室と、加熱処理室の熱風を循環させるための熱風循環設備とを備えた熱処理炉において、
前記熱風循環設備が、熱風加熱手段と、熱風循環手段と、ピトー管を利用する熱風風速検知手段と、ピトー管内を洗浄する洗浄手段とを備え、
加熱処理室の熱風排出口と熱風加熱手段の間に異物除去手段が配置され、
該熱風排出口と異物除去手段の間に、熱風を排出する排気口と、外気を導入する給気口とが設けられていることを特徴とする熱処理炉。 - 熱風風速検知とピトー管内の洗浄を交互に繰り返す制御装置を組み込んだことを特徴とする請求項1に記載の熱処理炉。
- 請求項1又は2に記載の熱処理炉に炭素繊維前駆体繊維を導入することを特徴とする熱処理方法。
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