以下、本発明の一実施例について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態例に係るドラム式洗濯乾燥機の外観図である。図2は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した斜視図、図3は内部の構造を示すために背面カバーを取り外した背面図、図4は内部の構造を示す側面図、図5は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した平面図である。
1は、外郭を構成する筐体である。筐体1は、ベース1hの上に取り付けられており、左右の側板1a,1b,前面カバー1c,背面カバー1d,上面カバー1e,下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a,1bは、コの字型の上補強材(図示せず),前補強材(図示せず),後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1hを含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。
9は、前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐドアで、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン9dを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
6は、筐体1の上部中央に設けた操作パネルで、電源スイッチ39,操作スイッチ12,13,表示器14を備える。操作パネル6は、筐体1下部に設けた制御装置38に電気的に接続している。
3は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽(回転ドラム)であり、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部3aを設けてある。開口部3aの外側には洗濯兼脱水槽3と一体の流体バランサ3cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ3bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時に洗濯兼脱水槽3を回転すると、衣類はリフタ3bと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。洗濯兼脱水槽3の回転中心軸は、水平または開口部3a側が高くなるように傾斜している。
2は、円筒状の外槽であり、洗濯兼脱水槽3を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にモータ4を取り付ける。モータ4の回転軸は、外槽2を貫通し、洗濯兼脱水槽3と結合している。前面の開口部には外槽カバー2dを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー2dの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部2cを有している。本開口部2cと前補強材37に設けた開口部は、ゴム製のベローズ10で接続しており、ドア9を閉じることで外槽2を水封する。外槽2底面最下部には、排水口2bが設けてあり、排水ホース26が接続している。排水ホース26の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽2に水を溜め、排水弁を開いて外槽2内の水を機外へ排出する。
外槽2は、下側をベース1hに固定されたサスペンション5(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽2の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽2の前後方向へ倒れを防ぐ。
19は、筐体1内の上部左側に設けた洗剤容器で、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ7を装着する。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ7を図1の二点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器19は、筐体1の上補強材に固定されている。
洗剤容器19の後ろ側には、給水電磁弁16や風呂水給水ポンプ17,水位センサ(図示せず)など給水に関連する部品を設けてある。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a,風呂の残り湯の吸水ホース接続口17aが設けてある。洗剤容器19は、外槽2に接続されており、給水電磁弁16を開く、あるいは風呂水給水ポンプ17を運転することで、外槽2に洗濯水を供給する。
29は筐体1の背面内側に縦方向に設置した乾燥ダクトで、ダクト下部は外槽2の背面下方に設けた吸気口2aにゴム製の蛇腹管B29aで接続される。乾燥ダクト29内には、水冷除湿機構(図示せず)を内蔵しており、給水電磁弁16から水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト29の壁面を伝わって流下し吸気口2aから外槽2に入り排水口2bから排出される。
乾燥ダクト29の上部は、筐体1内の上部右側に前後方向に設置したフィルタダクト27に接続している。フィルタダクト27の前面には開口部を有しており、この開口部に引き出し式の乾燥フィルタ8を挿入してある。乾燥ダクト29からフィルタダクト27へ入った空気は、乾燥フィルタ8のメッシュフィルタ8aに流入し糸くずが除去される。乾燥フィルタ8の掃除は、乾燥フィルタ8を引き出してメッシュ式のフィルタ8aを取り出して行う。また、フィルタダクト27の乾燥フィルタ9挿入部の下面には開口部が設けてあり、この開口部は吸気ダクト33が接続しており、吸気ダクト33の他端は送風ユニット28の吸気口と接続している。
送風ユニット28は、駆動用のモータ28a,ファン羽根車(図示せず),ファンケース28bで構成されている。ファンケース28bにはヒータ31が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット28の吐出口は温風ダクト30に接続する。温風ダクト30は、ゴム製の蛇腹管A30a,蛇腹管継ぎ手30bを介して外槽カバー2dに設けた温風吹き出し口32に接続している。本実施例では、送風ユニット28が筐体1内の上部右側に設けてあるので、温風吹き出し口32は外槽カバー2dの右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口32までの距離を極力短くするようにしてある。
排水口2b,送風ユニット28の吸気口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
本発明の特徴は、高速の風を衣類に直接当て、風の力で衣類に発生するしわを伸ばすことにある。このためには、高速の風を発生する送風ユニット28とこの風を直接衣類に当てる温風吹き出し口32が必要となる。送風ユニットに必要な性能に関しては、後述する。温風吹き出し口32の詳細を図7,図8を用いて説明する。図7は温風吹き出し口32設置部の外槽カバー2dの正面図、図8は図7の二点鎖線A−Aで切断して示した温風吹き出し口32の断面図である。
温風吹き出し口32は、外槽カバー2dの前側から開口部2cに沿って設けてあり、内部に流路32b,32cが形成されている。温風吹き出し口32の入口には蛇腹管継ぎ手30bが取り付けてあり、流路32cの出口にはノズル32dが形成されている。洗濯兼脱水槽3と外槽カバー2dとのすき間に衣類が入り込まないよう、外槽カバー2dの開口部2cの内径と洗濯兼脱水槽3の開口部3aの内径は、ほぼ同一に設定されている。このため、温風吹き出し口32の出口部32aを開口部2cの内周面より内側に飛び出すように形成し、ノズル32dが洗濯兼脱水槽3内に向かって開口するようにしてある。このようにすることで、ノズル32dから出た温風は直接洗濯兼脱水槽3内の衣類に当てることが出来る。
なお、出口部32aの飛び出し量が多すぎると、洗濯や乾燥時に衣類の動きを阻害するため、図7に示すようにノズルを扁平のスリット形状として飛び出し量を小さくし、かつ開口部2cと出口部32aの表面形状がスムーズに変化するようにしてある。また、流路32bと流路32cは無駄な突起や、急激な流れ方向の変化が無いようにし、かつノズル32dに向かい流路面積が徐々に小さくなるようにしてある。こうすることで、高速の風が流路32b,32cを流れるときに発生する圧力損失や流体音を小さくすることが出来る。
乾燥運転時の風の流れは次のようになる。送風ユニット28を運転し、ヒータ31に通電すると、ノズル32dから洗濯兼脱水槽3内に高速の温風が吹き込み(矢印41)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分が蒸発する。高温多湿となった空気は、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に吸い込まれ、乾燥ダクト29を下から上へ流れる(矢印42)。乾燥ダクト29の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温多湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となりフィルタダクト27へ入る(矢印43)。フィルタダクト27に設けたメッシュフィルタ8aを通り糸屑が取り除かれ、吸気ダクト33に入り、送風ユニット28に吸い込まれる(矢印44)。そして、ヒータ31で再度加熱され、洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環する。
図9は、上記のような乾燥運転を行った場合のノズル32dを噴出する風速と乾燥後の衣類の仕上がり具合を調べた結果の一例である。風速と風量はモータ28aの回転数とノズル32dの面積を変えることで調節した。なお、風速は、送風ユニット28の流量圧力特性を測定した結果から計算した値である。流量圧力特性は、図10に示す装置で測定を行った。均圧箱の吸気口と送風ユニット28の吐出口にオリフィスを取り付け、オリフィスの直径とモータ28aの回転数を種々変えながら流量と送風ユニット28の吸気口及び吐出口の圧力を測定し、流量圧力特性を求めた。そして、送風ユニット28を洗濯乾燥機へ実装した時の送風ユニット28の吸気口と吐出口の圧力を測定し、上記の流量圧力特性から流量を求め、この流量をノズル面積で割った値を風速とした。
実験条件は、図中に示すとおりであり、試験機は、直径600mmで容積75Lの洗濯兼脱水槽を有するドラム式洗濯乾燥機で、布量は2kgである。仕上りの評価は各種衣類で行ったが、最もしわ付きが顕著だった薄手の綿パジャマズボンの結果を示している。評価は目視による5段階の官能評価であるが、官能評価値に対する仕上がり具合の例を図11に示す。上ノズルは、上述した位置にノズル32dを設けた場合(外槽カバー2dの右斜め上の位置)、下ノズルは、外槽カバー2dの下部に設けた場合である。ノズル32dからの風の吹き出し方向は、略洗濯兼脱水槽3の底壁中央に向くようにした。結果は、評価者3名の平均値である。
図から、
(A)風速が高くなるにつれて仕上りがよくなる。しかし、風速が高すぎると逆に仕上りが悪化する(上ノズル1.5m3/minのデータから)。
(B)同じ風速であれば流量が多い方が仕上りはよいが、流量1.5m3/minと1.7m3/minの差は小さい。
(C)同じ風速,流量で比較すると、下ノズルの方が上ノズルよりも仕上りがよい。
ことが分かる。このように、風速が高いほうが仕上りは良くなるが、流量もある程度多い方が良い。従って、どちらか一方を大きくするのではなく、両者のバランスを考えて設定するのが望ましい。具体的には、仕上りだけでなく、電流値(家庭用の商用電源の場合は、送風ユニット28とヒータ31,モータ4,制御装置38の合計で15A以下)や乾燥性能,風が循環するダクトの流路面積,洗濯乾燥機への実装などを考慮して風速と流量を決定する必要がある。
官能評価値4以上であれば、乾燥後の衣類をそのまま着用しても不満が少ない。本実験機で官能評価値4以上とするためには、上ノズルの場合、流量1.5m3/minで風速90m/s以上が必要である。ただし、風速が高すぎると仕上りが悪化する傾向があるため、最高でも風速130m/s程度に抑えた方がよい。また、風速100〜120m/sで最も仕上りが良くなる。下ノズルの場合、流量1.5m3/minで風速60m/s以上が必要であるが、風速80m/s以上では仕上がり具合がほとんど変わらないため、最大でも80m/s程度でよい。上記の風速を出すためのノズル面積は、上ノズルの場合で190〜280mm2、下ノズルの場合で310〜415mm2以下となる。従って、送風ユニット28には、上記面積のノズルから上記流量を流すだけの性能が必要である。本実施の形態例では、ノズル位置は上ノズル、ノズル面積250mm2(幅50×高さ5mmのスリット上)で、送風ユニット28はファン羽根車径140mm,羽根厚さ7mmで回転数を毎分16000回転で運転している。これによりファン吐出圧力が約7500Pa(空気温度30℃時)となり、流量約1.5m3/minで風速約100m/sを得ている。
しわがつきにくい衣類の場合は、上記の風速より低い値でも官能評価値4以上の仕上りが得られるが、種々の衣類を同時に乾燥するのが一般的であり、しわになりやすい衣類に合わせて風速を決定するほうが良い。
高速の風を衣類に当てることにより、衣類のしわが減少する理由について図12を用いて述べる。図12(a)はノズル32dから出た高速の風41が衣類に当たった時の模式図である。ここでは、衣類の背面に他の衣類がある場合を示している。風が衣類に当たると、衣類には風で押し広げられる力(矢印(1))と、衣類に当たった後流れ方向を変え衣類表面に沿って流れる風で左右に引っ張られる力(矢印(2))が作用する。この(1)と(2)の力で衣類のしわは伸ばされる。洗濯兼脱水槽3内の衣類の量が多い場合は、直接風が当たる衣類の周囲に他の衣類が多く自由に動きにくいため、主に(1)の力でしわが伸ばされる。衣類の量が少ない場合は、衣類が自由に動き、風が当たった衣類は風の流れ方向に押されながら吹き流しのようになり、衣類表面に沿って流れる風による(2)の力でしわが伸ばされる。衣類の量が少ない場合は、乾燥中に衣類が広がりしわは発生しにくいので、ここでは(1)の力について考える。
(1)の力Fは、図12(b)に示すように、ノズル32dから吹き出す風の流量をQ、風速をVとすると、QとVの積に比例する。また、ノズル32dと衣類との距離をXとすると、力FはVに比例しXに反比例する。ただし、ノズル32dと衣類との距離が非常に近い場合(噴流のコア領域、円形ノズルの場合でノズルからノズル径の約6倍の位置まで)は、FはXに関係なくVに比例する。従って、Fを大きくするためには、流量Qを増やすか風速Vを増す、あるいはXを小さくすればよい(衣類をノズルに近づける)。図8で示した仕上りの結果は、これで説明できる。
流量Qを増やすためには、送風ユニット28のファンの回転数を高めたり、ファンの外径や羽根高さを増やしたりする必要がある。また、温風が通るダクトの面積を大きくして圧力損失を小さくした方が良い。特に、除湿に水を使用する水冷方式の場合、乾燥ダクト29を流れる空気の流速が速すぎると、冷却水が風に吹き飛ばされる現象が発生する。冷却水がフィルタ8aやヒータ31まで到達すると、乾燥効率の大幅な低下につながるため、乾燥ダクト29の流路面積を大きくすることが必須である。このため、流量を大幅に増やすと、ダクトや送風ユニットのサイズが大型化し、筐体1のサイズの大型化につながり、洗濯乾燥機を家庭へ設置しにくくなる。
一方、風速Vを増やすためには、送風ユニット28を圧力タイプのものにしてノズル面積を小さくすればよい。送風ユニット28として、一般的なターボファンを使用した場合、低い回転数でファン羽根車を大径化する方法と、ファン羽根車の径は小さいままで回転数を高くする方法とがあるが、高速回転化は、従来と同一の筐体に実装できる利点がある。
図8で示した仕上りの実験結果では、風速が高すぎると、仕上りが悪化する現象が見られた。このことは、上記では説明ができない。実験中の衣類の動きを観察すると、風速が高すぎると風の勢いで衣類が捩れるような現象が生じていることが分かった。従って、このことが仕上り悪化の原因である。
ノズル32dと衣類の距離Xを小さくするためには、乾燥時に衣類が必ず通る場所の近くにノズル32dを設ければよい。従って、ノズル32dの位置は、リフタ3bが衣類を持ち上げる位置、すなわち洗濯兼脱水槽3の下側(外槽カバー2dの下側)に設ければよい。ノズルを下に設けることで、図8で示したように風速が60m/s程度でも仕上りをよくすることができるため、ノズルが上にある場合に比べ送風ユニット28の圧力や流量を低くすることができる(ファン羽根車の回転数を低くできる)という利点がある。また、ノズルが下にあると、風の吹き出し方向と重力の方向が逆になる。風が衣類に当たった時、衣類の自重のために衣類が逃げにくく、衣類に作用する力Fが減衰しないため、仕上りを一層良くできるという利点がある。
ノズル32dを下側に設けた場合、乾燥ダクト29や送風ユニット28を外槽2の下側に設けた方が実装上コンパクトに出来る。しかし、洗濯時の洗濯水がノズル32dから浸入し送風ユニット28内へ流入するため、水の浸入防止機構を設ける、防水タイプの送風ユニットにするなどの対策が必要である。
本実施の形態例では、ノズル32dを外槽カバー2dの右斜め上の位置に設けてあるため、洗濯水が浸入する心配はない。この場合、洗濯兼脱水槽3の回転数を適切に制御し、衣類をノズル32dの近くまで持ち上がるようにし、できるだけ高速の風が衣類に当たるようにする必要がある。衣類は、洗濯兼脱水槽3の回転による遠心力とリフタ3bにより上方に持ち上がる。このため、回転数は洗濯兼脱水槽3の直径に応じて最適値があり、直径が大きいほど回転数は低くなる。ただし、重力で早く落下する衣類もあり、平均的なノズルと衣類の距離はノズルを下側に設けた場合より長くなるのは避けられないため、図8で示したようにノズル出口の風速を高める必要がある。
ここで、送風ユニット28の詳細を説明する。図15は送風ユニット28の断面図である。モータ28aは反負荷側エンドブラケット120に巻線121を固定子鉄心122に巻いた固定子123が挿入されている。回転軸102には永久磁石124が挿入された回転子鉄心125が固定されている。回転軸102の両端にはボールベアリング126が挿入され、回転子鉄心125が回転自在となる。羽根車101は両側にステンレスでできた補強板101dと補強板101eで挟持されている。それをスペーサ127とナット128の間に配置し、ナット128により固定している。スペーサ127及びナット128も金属を使用し、高温多湿のなかで使用するので耐食性で機械強度の強い材料を使用している。
本実施例では、送風ユニット28内の空気の温度は60〜80℃でモータ28aの回転軸の温度は80〜100℃となるので、モータ28aの熱がこの温度差により回転軸102を経由して羽根車101から放熱される。このとき、回転軸102の径は8mmで、この断面積と羽根車101の厚さは1mmなので、この接触面積を比較すると約1:2で少ないが、使用材料がアルミニウムとステンレスなので、熱伝導率の比は約15:1になり、回転軸102の熱伝導量に対して羽根車101の熱伝導量が大きいので、効率よくモータ28aの熱放散を行うことができる。特に回転軸102の熱伝導量を上げるためには鉄に耐食性のメッキを行うことによりステンレスの約5倍程度熱伝導量を上げることができる。なお、スペーサ127,ナット128は主として回転軸熱伝導量、補強板101dと補強板101eは主として羽根車101の熱伝導量に寄与している。
また、騒音を低減するため送風ユニット28は遮音材を多量に使用するが、より遮音効果を上げるにはモータ28aまで包む必要がある。このため、モータ28aの温度上昇が高くなるが、回転軸102を介して羽根車101から送風ユニット28内に放熱することにより遮音をよくし、モータ28aの温度上昇を低減することができる。
図16は主ファンケースを外した状態で羽根車を置いた状態の平面図である。羽根車101はターボファンを使用しているので、シロッコファンよりシステムとしての効率を高くすることができ圧力を大きくとれるので圧縮熱による温度上昇を上げることができる。図17はファンカバーを取り除いた状態の平面図である。図18は羽根車101の羽根101cの入口出口がわかるようにした断面図である。図19は羽根車の断面図である。図20は羽根車の平面図である。図21は側板を取り除いた平面図である。
図22はモータの縦断面図を示す。反負荷側エンドブラケット120に巻線121を固定子鉄心122に巻いた固定子123が挿入されている。回転軸102には永久磁石124が挿入された回転子鉄心125が固定されている。回転軸102の両端にはボールベアリング126が挿入され、回転子鉄心125が回転自在となる。モータ28aの損失は巻線121で発生する銅損と固定子鉄心122及び回転子鉄心125で発生する鉄損で大部分を占める。これらは熱となり、通常は外郭を構成しているファンカバー28c,反負荷側エンドブラケット120から外部に放散される。しかしながら、洗濯乾燥機では乾燥時にヒータ31を使用して温風としているので筐体1の温度は60℃程度になる。このため、対流による熱伝達ではほとんど熱放散しなくなり、モータ28aの温度が上昇し、回転軸102の温度も上昇する。この温度が羽根車101を流れる温風の温度より低いとモータ28aの発熱量は回転軸102を通して羽根車101に流れ、温風に熱放散を行い、モータ28aの冷却と温風に熱量を与える。これにより、乾燥運転にモータ28aの発熱量を使用することができるので、乾燥時間を使用しないものに比較して短くすることができる。
図23は羽根車101の回転数と圧縮熱による温風の温度上昇との関係をグラフで示す。このときの条件としては、流量は常温で1.8m3/minとしている。このグラフをみると回転数が低い領域である毎分5000回転では0.6℃の温度上昇でほとんど温風の温度上昇に寄与していない。しかしながら、毎分10000回転以上では3.5℃と急激に温度上昇が大きくなっている。これは、圧力Pと羽根車101の回転数Nの関係は
P∝N×N
となるので回転数が高いほど急激に高くなる。本実施例では、回転数は毎分16000回転で圧力は7500Pa、毎分10000回転で2930Paとなっている。なお、羽根車101の圧縮による圧縮熱は直接温風自身に熱を与えるので温風の加熱効率をよくすることができる。このとき、羽根車101に熱伝導の低い材料を使用すると熱容量が小さくなり羽根車101の温度を上げるのに必要な熱量が少なくてよい。
また、羽根車101の圧縮による圧縮熱の温度上昇を有効に使用しようとすると温風の温度が60〜80℃なので、その温度の5%以上を圧縮熱の温度上昇になるようにすると、本実施例の場合は羽根車101の回転数は約毎分10000回転以上となる。この領域では回転数を調整して、羽根車101による圧縮熱の出力に対する利用率が向上し、圧縮熱による温度上昇の調整ができる。また、回転数の高いほど利用率は向上し、加熱効率がよくなるので衣類のしわの改善と乾燥時間短縮を行うことができる。
なお、回転数の下限値は上記により決るが回転数の上限値については前記でしわの改善が風速で130m/s以上では効果が少ないとのことなので130m/sとすると風速Vは回転数に比例するので
V=(130/100)×16000
=20800(r/m)
となる。また、モータ28a出力は回転数の三乗に比例するので回転数を上げることによりヒータ31に使用できる電流値が急激に低下するので、これからも回転数の上限は約毎分20000回転が適当である。すなわち、本実施例ではしわを改善し、羽根車101による圧縮熱を有効に利用する羽根車101の回転数は毎分10000〜20000回転がよい。
前記した圧縮熱のみ(ヒータは使用しない)で乾燥運転をする場合は、ヒータに使用していた電流値をモータに使用することができるので、モータの回転数を20000回転以上で使用することもできる。圧縮熱のみで乾燥運転の場合は空気の温度上昇がヒータを使用する時よりも変わるため、水冷除湿機構からの冷却水の量、時間をヒータを使用する時より変えることが望ましい。また吸気口,排気口を設け外気を導入すると伴に多湿になった空気を機外に排気することで乾燥効率をあげることも可能である。
送風ユニット28はモータ28aと羽根車101を内包する主ファンケース28dとファンカバー28eとからなるファンケース28bとから構成されている。ファンカバー28eには、中央に円形の開口を持ち、断面が曲率を持った部分と円環状の部分とを有する、ベルマウス33aが設けられ、羽根車101の円環部101fとベルマウス33aの円環状の部分とが重なるように構成されている。このとき、ベルマウス33aの円環状の部分が内側に入る。温風は羽根車101とファンケース28bの間で圧縮され、この圧縮熱が温風を直接加熱する。このため、ファンケース28dの部分の温度も上昇し、熱はファンケース28dを通して外側に放散される。これを防止する手段として、ファンケース28dを断熱材で覆って断熱することにより、圧縮熱がファンケース28dを通して外側に放散されるのを防止するので、温風に効率よく圧縮熱と与えることができる。なお、ファンケース28dの全体を断熱が困難な場合は温風が圧縮され温度が高い領域を含めた部分の断熱だけでもよい。
本実施例では回転軸102の温度が温風より高いので、モータ28aの熱が回転軸102,羽根車101を通して放散するので金属製の羽根車101を使用して温風に熱放散している。しかしながら、回転軸102の温度が温風より低い場合は温風が羽根車101を経由して回転軸102へ伝導しないようにする必要がある。このため、温風の熱を羽根車101の部分で遮断して温風から羽根車101,回転軸102を通して熱がモータ28aに伝導しないように羽根車101を熱伝導の悪い樹脂モールドにより製作することにより回転軸102へ伝導が阻止され、温風の加熱に有効に使用することができる。また、他の方法としては回転軸102と嵌合する主板101bは補強板101dと補強板101eを樹脂モールドすることにより回転軸102と熱的に分離してもよい。
羽根車101は、モータ28aの回転軸102に固定される主板(特許請求の範囲では後面プレートとしている)101bと羽根101cと中央に開口を持つ側板(特許請求の範囲では吸込み口を有する前面プレートとしている)101aとで構成されている。主板101bは補強板101dと補強板101eとで挟み込まれ、カシメ部111aとカシメ部111bとで固定されている。このカシメ部111aとカシメ部111bとは1個おきに羽根側と反羽根側とから力を加え、カシメることによって固定されている。側板101aは主板101bとほぼ平行になる部分と、その中央部には主板101bと反対方向に曲げこまれていて、曲がり部101gと吸込み口を形成する円環部101fとが設けられている。
羽根101cは羽根車101の回転方向109に対して、内径側から外径側にかけて後退していくような形をしている。このような羽根は、一般には後ろ向き羽根とも呼ばれ、このような羽根形状を持つ羽根車を用いたものはターボファンとも呼ばれる。羽根が回転方向に前進するような形のものは前向き羽根と呼ばれ、このような羽根形状を持つ羽根車を用いたものはシロッコファン、あるいは、多翼ファンとも呼ばれる。
羽根101cにはその両側に5個ずつの突起(図示しない)が設けてあり、側板101aと主板101bとに設けられた、羽根に対応した5個ずつの長方形の穴(図示しない)に差込み、両側から力を加え突起をつぶして固定する。この方法として、超音波を加えながら行うとカシメた時の高さを小さくできる。この実施例では羽根101cは8枚であり、これらを全て主板101bと側板101aにセットしてからカシメ作業を行う。カシメ部のうち最内径のカシメ部110aは側板101aの曲がり部101gに掛からないようにしている。また、羽根101cの先端も側板101aの曲がり部に掛からないようになっている。
羽根車101のうち、側板101aと主板101bと羽根101cとは金属製であり、特にアルミニウムを用いている。この場合には、アルミニウムの中でも強度の高い超硬アルミニウムを用いている。補強板101dと補強板101eは圧縮強度を必要とするため、ステンレスまたは亜鉛メッキ鋼板を使用しており、本実施例では腐食しにくいステンレスを用いている。2つの補強板101dと101eはその外径は異なったものを用いているが、これによりいろいろな外力が加わったときに羽根車101の端面における応力集中を緩和できる。また、補強板101d,101eは主板101bに一体で加締められているがバラバラにして加締めてもよい。この方が回転軸102と補強板101d,101eの挿入時の内径公差を小さくできるので回転軸102と羽根車101の接触をよくするとともにクリアランスが小さくなるのでアンバランスのバラツキも小さくできる。
主ファンケース28dとファンカバー28eとで形成される内部空間には渦巻状の流路が形成されている。この渦巻状の流路はスクロール106であり、羽根車101から排出された流れを減速しながら静圧として回収する働きをしている。スクロール106の出口にはノーズ107があり、ファンカバー28c側にノーズ107aが、主ファンケース28b側にノーズ107c,スリット107d,ノーズ107eが設けられている。ノーズ107の下流にはヒータ31が設けられ、その下流には吐出口115が設けられている。
主ファンケース28dとモータ28aとは、その中央部分に防振ゴム105を介して支持され、図示はしていないが、モータ28aのモータエンブラ28bと主ファンケースの間も4個の防振ゴムを介して支持されている。なお、防振ゴム105は主ファンケース28dからの空気の流出を防ぐように気密をする機能を合わせ持たせている。
次に、送風ユニット28内の空気の流れを説明する。モータ28aが回転すると、羽根車101が回転し、それに伴ってフィルタダクト27を通って吸気ダクト33内の吸気流路33bよりベルマウス33aから羽根車101に矢印117で示されるように空気が流入する。矢印116で示すように羽根車101で昇圧された高速の空気は羽根車の全周から排出され(矢印118)、スクロール106で集められると共に減速され、矢印119で示すようにノーズ107とファンケース28aとの隙間から下流に流れ、ヒータ31で加熱されたのちに吐出口115を介して送風ユニット28より排出される。この昇圧のときに空気は圧縮され、加熱される。本実施例では過熱された空気をヒータ31で加熱して60〜80℃としている。
羽根車101の外径は140mmであり、これを16000r/minで回転させているが、この条件では羽根車101の周速は約117m/sであり、送風ユニット28としての出力は約200Wとなる。このように大きな出力と圧力上昇を得るために、強度を確保する必要があり羽根車101は金属製特にアルミニウム製とした。アルミニウムは熱伝導性が良いので、モータ28aで発生した熱量は回転軸102を介して羽根車101が受け取り、羽根車101から送風ユニット28内の空気中に放出する。これによってモータ28aを冷却すると共に、モータ28aの廃熱を空気に与えることによって、乾燥系の空気の湿度を向上させることなく、温度を上昇させることにも使うことができる。
また、羽根101cを薄くしても強度を確保できるので、羽根枚数を増やしても羽根間の流路を広く取ることができるので、羽根車101内の流れの摩擦抵抗を小さくできる。
さらに、アルミニウムは延び易いので、側板101aに曲がり部101g及び円環部101fを作ることができるので、ベルマウス33aの円環部と平行にでき、また、ベルマウス33aとの距離を大きくできるので、2つの円環部の隙間を通って流れ込む漏れ流れの影響を受けにくくすることができるので、乱れた流れが羽根間に入りにくくなり、騒音を小さくできるとともに、流体抵抗を小さくできる。また、2つの円環部の隙間を2mmとっているが、その隙間の大きさを一定にできるので、羽根車がファンケース28bに対して動いたときに、漏れ流れの量が変化しにくいという効果が得られる。
吸気ダクト33は乾燥ダクト29から流れ込む空気を図15の左側から受け入れるので、ベルマウス33aに至ったときの流れには、偏りをもってしまう。羽根車101の羽根101cの先端が曲がり部101gの後ろ側に位置しているので、この偏流した流れの影響を受けにくく、流体抵抗の増大を防ぐとともに、流れの乱れによる騒音の発生を抑制できるので、騒音を低くできる。
羽根車101の羽根101cの出口を三角状に切り欠いているので、羽根車101から出た流れがノーズ107に流入するタイミングをずらすことができ、羽根車101からの周期的に速度変動する流れがノーズ107に流入するタイミングをずらすことができるので、羽根車の羽根数と回転数の積を基本次とするその整数倍の周波数の騒音、いわゆる、羽根音を小さくできる。また、三角上の切り欠きが設けてあると、羽根車101を組み立てるときに、切り欠きがあるほうが外側にくるということが分かりやすいので、組み立てが容易になる。ここでは、三角状の切り欠きとしているが、斜めに傾斜させてもかまわない。
ここで用いたスクロール106は拡大角4度であるが、大きさに余裕があればさらに大きな拡大角を用いてもかまわない。ノーズ107はその先端部分は直線状に形成していて、その先端と羽根車101との距離を約15mmとして、羽根音の増大を小さくするようにしている。羽根音の増大を抑制するためにノーズにはスリット107dを設け、空気の流通を可能としている。このスリット107dにより、ノーズ107に生じた圧力変動を緩和できるので、羽根音の抑制に効果が大きい。この実施例ではスリットの幅は3mmで深さは5mmである。スリットの幅を大きくしたり、深さを大きくすると羽根音の抑制効果は大きくなるが、圧力上昇値が低くなるという不具合も出てくる。なお、このスリット107dのほとんどは羽根車101の側板101aに掛からない位置にあるので、圧力上昇値の低下がほとんどなく、羽根音の抑制に効果が大きかった。
なお、ターボファンを使うとシロッコファンに比べて、羽根車101から排出する流れをより低速にできるので、小さなスクロール(拡大角の小さいスクロール)でも減速量が少ないので損失を小さくできるので、空間的に余裕がなく、スクロールを大きく取れない洗濯乾燥機でも、性能を比較的高くできるという特徴をもっている。また、羽根車の幅も小さくできるので、省スペースを実現できる。また、羽根101cの幅(図18の上下方向)いっぱいに流れを流すので、流れの剥離などによる空気のよどんだところができにくいので、繊維くずが滞留して、羽根101cに付着するのを防ぐことができるという利点もある。
なお、ファン吐出圧と風量を満足させるためには、羽根車の回転数としては10000から20000r/min、羽根車の外径は120mmから180mm程度とするのが好適である。
図6は、洗濯乾燥機の制御装置38のブロック図である。50はマイクロコンピュータで、各スイッチ12,13,13aに接続される操作ボタン入力回路51や水位センサ34,温度センサ52と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程,乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータ50からの出力は、駆動回路54に接続され、給水電磁弁16,排水弁25,モータ4,送風ユニット28,ヒータ31などに接続され、これらの開閉や回転,通電を制御する。また、使用者に洗濯機の動作状態を知らせるための7セグメント発光ダイオード表示器14や発光ダイオード56,ブザー57に接続される。
前記マイクロコンピュータ50は、電源スイッチ39が押されて電源が投入されると起動し、図14に示すような洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。
ステップS101
洗濯乾燥機の状態確認及び初期設定を行う。
ステップS102
操作パネル6の表示器14を点灯し、操作ボタンスイッチ13からの指示入力にしたがって洗濯/乾燥コースを設定する。指示入力がない状態では、標準の洗濯/乾燥コースまたは前回実施の洗濯/乾燥コースを自動的に設定する。例えば、操作ボタンスイッチ13aを指示入力された場合は、乾燥の高仕上げコースを設定する。
ステップS103
操作パネル6のスタートスイッチ12からの指示入力を監視して処理を分岐する。
ステップS104
洗濯を実行する。洗濯は洗い,中間脱水,すすぎ,最終脱水を順次実行するが、通常のドラム式洗濯乾燥機と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ステップS105
洗濯乾燥コースが設定されているかどうかを確認して処理を分岐する。洗濯コースのみが設定されている場合は、運転を終了する。
ステップS106
洗濯乾燥コースが設定されている場合は、温風脱水を実行する。温風脱水は、送風ユニット28を低速回転で運転し、ヒータ31に通電(強モード)して温風を洗濯兼脱水槽3内に吹き込み衣類の温度を上昇させる。同時に、洗濯兼脱水槽3を高速で回転させ温まった衣類から効果的に水分を脱水する(温度が上がると水の粘性が低下するため効率よく脱水できる)。本実施の形態例では、送風ユニット28の回転数を毎分11000回転に設定している。これは、許容電流値(15A)を超えないようにするためである。
ステップS107
乾燥運転1を実行する。送風ユニット28は低速回転、ヒータ31は強モードで運転し、洗濯兼脱水槽3の正逆回転を繰り返し、洗濯兼脱水槽3内の衣類の位置を入れ替えながら、高温の温風を衣類に吹き付ける。衣類全体の温度が上昇し衣類から水分が蒸発する。
ステップS108
高仕上げコースが設定されているかどうかを確認して処理を分岐する。高仕上げコース異倍のコースの場合は、ステップS107を乾燥終了まで行う。
ステップS109
乾燥開始からの経過時間が既定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。規定の時間は、衣類の乾燥度(=乾布の質量/湿布の質量)が0.9に達するより前に設定する。
乾燥は、次のように進行する。乾燥の初期は、衣類の温度を上昇させる予熱期間で、衣類の温度を速く上昇させるために、極力多くの熱量を衣類に与えることが重要である。予熱期間中は、衣類からの水分の蒸発は少ない。
衣類の温度が上昇するに従い、衣類からの水分の蒸発が多くなるため、気化熱により衣類の温度上昇は鈍くなり、やがて加熱と気化熱がバランスし、衣類の温度はほとんど一定となる(恒率乾燥)。衣類の水分量が少なくなると気化熱が減少し、衣類の温度が再び上昇を始め、衣類の水分がなくなると温風とほぼ同一の温度となり乾燥が終了する(減率乾燥)。衣類の温度が上昇を始めるのは、乾燥度が0.9付近になった時である。
衣類に水分が多く含まれている時点では、衣類にしわがついたとしても簡単に直すことができる(しわがついた衣類に霧吹きやスチームで水分を与えるとしわがとれることからも分かる)。しかし、しわが付いたままの状態で乾燥度0.9以上に乾燥が進むとしわが固定化する。一度固定化したしわをそれ以降の工程でとることは、ほとんどできない。従って、乾燥度が0.9になる前にしわを伸ばすことが重要となる。
実際の乾燥時には、材質や厚さが異なる衣類を同時に乾燥するので、乾燥度が0.9になる時間も衣類により様々である。従って、本実施の形態例では、最もしわになりやすい薄手の綿衣類の乾燥度が0.8から0.85程度になる時間に設定してある。また、布量によって乾燥度が0.9になる時間は異なるため、布量に応じて時間を設定する必要があることはもちろんである。
ステップS110
乾燥運転2を実行する。洗濯兼脱水槽3の正逆回転は続けたまま、送風ユニット28を高速回転し、ヒータ31を弱モードにして洗濯兼脱水槽3内の衣類に高速の風を吹き付け、しわを伸ばしながら乾燥を行う。送風ユニット28を高速回転した時に、ヒータ31を弱モードにするのは、許容電流値を越えないようにするためである。本実施の形態例では、送風ユニット28の回転数を毎分16000回転に設定している。毎分16000回転時の送風ユニット28の入力電流は約7A、ヒータ31が約6A、モータ4と制御装置38で約1Aとなっている。
本ステップでは、ヒータ31が弱モードとなるため、ステップS107に比べ低下する。特に乾燥度が0.9を越すと衣類の温度が上昇し、温風温度に近づいてゆくが、温風温度が低いため、衣類の温度を低く抑えることができ、衣類へのダメージを軽減できるメリットもある。
乾燥は、温度センサにより温風や冷却水排水温度を監視しながら実行し、温度変化の割合が所定の値になったときに終了する。
なお、ステップS107の乾燥運転1を実施せず、ステップS110の乾燥運転2を最初から行っても良い。布量が多くなるに従い、洗濯兼脱水槽3内での奥と手前側の衣類の入れ替わりが起きにくくなり、温風が吹き付けられている手前側の衣類は速く乾いていく。このため、最初から送風ユニット38を高速で運転することで、乾燥速度が大きくばらついても、速く乾いた衣類へしわが付くのを防止できる。
以上、上述の実施例によれば、乾燥運転中に衣類に高速の風を直接吹き付けるので、風により衣類が押し広げられ、衣類のしわが伸ばされて、しわの少ない乾燥仕上りを実現できる。
また、前記高速の風を吹き出すノズルを回転ドラムの上側に設けた場合、風量を毎分約1.5立方メートル、風速を毎秒90メートルから130メートルとすることで、効率よく衣類のしわを伸ばすことができる。
また、前記高速の風を吹き出すノズルを回転ドラムの下側に設けた場合、風量を毎分約1.5立方メートル、風速を毎秒60メートルから100メートルとすることで、効率よく衣類のしわを伸ばすことができる。衣類の下側から風を吹き付けることで、落下する衣類自重のために衣類へ働く力が増加し、低い風速でもしわを十分に伸ばすことができる。さらに、落下する衣類に下側から風を吹き付けるため、衣類が落下傘のように広がるため、よりしわを伸ばす効果が大きくなる。
また、送風手段の一部として羽根車を用い、吸込み口を有する前面プレートと後面プレートを有し、前面プレートと後面プレートとの間に羽根を有し、羽根が中心側から外径側に行くに従って回転方向とは反対側に後退する羽根車を金属製とすることで、高速の風を起こすことができ、かつ、小さなスペースで実現でき、また、騒音を小さくすることができる。