JP4764861B2 - 乾燥機及び洗濯乾燥機 - Google Patents

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本発明は、衣類を乾燥する手段を備えた乾燥機又は洗濯乾燥機に関する。
洗濯から乾燥までを連続して行える洗濯乾燥機による衣類の乾燥は、送風ファンと熱源により高温・低湿度の空気を作り、これを洗濯槽内に吹き込み、衣類の温度を高くし、衣類から水分を蒸発させ、蒸発した水分を機外へ排出することにより行う。蒸発した水分の除去方法としては、そのまま洗濯乾燥機外へ排出する排気方式(常に新しい空気を供給)と蒸発した水分を冷やし結露させて水分を除去する除湿方式(同じ空気を循環させる)があるが、家庭用では洗濯乾燥機を設置した室内へ水分が出ることがない除湿方式が多く用いられている。
洗濯乾燥機には、(1)乾燥時間が短いこと、(2)消費電力が少ないこと、(3)乾燥の仕上がりがよい(衣類のしわが少ない)こと、(4)衣類へのダメージが少ないこと等が求められている。このうち、(1)と(2)に関しては、空気の流量や温度を乾燥の進み具合に応じて適切に制御することで乾燥を効率よく行う洗濯乾燥機がある。また、洗濯槽内での衣類の動きを良くして、衣類から効率よく水分を蒸発させるようにした洗濯乾燥機がある。さらに、除湿方式として水冷方式を利用し、冷却水を風路の壁面全体に均一に流れるようにして高温多湿の温風との熱交換効率を高めた洗濯乾燥機がある。また、ヒートポンプ装置を衣類乾燥の熱源として用いるとともに乾燥用空気を循環させ再利用することにより低電力でかつ高除湿率の衣類乾燥機がある。
(4)に関しては衣類の温度が上がりすぎないように温風の温度を制限した(ヒータの入力を抑える)低温乾燥コースを備えた洗濯乾燥機がある。(3)に関しては、しわは乾燥中に衣類が絡んだり捻れたりすることにより発生するため、衣類の絡みや捻れが起きにくい洗濯乾燥機がある。
特開昭62−44299号公報 特開平9−774号公報 特開2005−080946号公報 特開2002−346272号公報 特開平7−178289号公報
絡みや捻れが無くても乾燥機の容積に対して衣類の量が多くなると、衣類が十分に広がることが出来なくなるため、衣類が折れ曲がったまま乾燥され、しわが発生する。一例として、市販されている衣類乾燥機(ドラム容積62L,77L,99Lの3種類)で2kgの衣類を乾燥した時の衣類(綿のパジャマズボン)の写真を図12に示す。ドラム容積が大きくなるほどしわが少なくなっているのが分かる。このように、容積が大きいほどしわを減少できることは従来から知られていたが、家庭用洗濯乾燥機では、設置場所の面積や設置場所への搬入路(廊下やドア)の制限から、洗濯乾燥機の大きさには限界があり、十分な容積を確保することは困難であった。このため、乾燥の仕上りを気にするような衣類は、他の一般の衣類と分け、衣類の量を少なくして乾燥するしか方法は無かった。しかし、時間のかかる乾燥を複数回行うことは現実的ではなく、このような衣類はつり干しで乾燥し、乾燥機は利用しない人が多かった。
本発明の目的は、低電力でドラムの容積を大きくすることなく、乾燥の仕上りを向上した乾燥機又は洗濯乾燥機を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は、衣類が収容される回転ドラムと、この回転ドラムを駆動するモータと、前記回転ドラムを支持する筐体と、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒の熱を放熱する放熱器、冷媒の圧力を減圧する減圧手段、及び、減圧された冷媒が周囲から熱を吸収する吸熱器を有し、冷媒が圧縮及び膨張を繰り返しながら循環するように構成されたヒートポンプとを備え、乾燥運転中に、空気が、前記放熱器、前記回転ドラム、前記吸熱器、前記放熱器の順で循環する乾燥機において、前記乾燥運転中に、前記回転ドラムに収容された衣類に直接風を吹きつける手段を設けたことを特徴とする。
また、乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、前記外槽内に回転自在に配置され、洗濯物を収容する回転ドラム又は内槽と、この回転ドラム又は内槽を駆動するモータと、前記回転ドラム又は内槽を支持する筐体と、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒の熱を放熱する放熱器、冷媒の圧力を減圧する減圧手段、及び、減圧された冷媒が周囲から熱を吸収する吸熱器を有し、冷媒が圧縮及び膨張を繰り返しながら循環するように構成されたヒートポンプとを備え、乾燥運転中に、空気が、前記放熱器,前記外槽,前記吸熱器,前記放熱器の順で循環する洗濯乾燥機において、前記乾燥運転中に、前記回転ドラムあるいは前記内槽に収容された衣類に直接空気を吹きつける手段を設けたことを特徴とする。
このように構成した乾燥機は、乾燥運転中に衣類に高速の空気を直接吹きつけるので、風により衣類が押し広げられ、衣類のしわが伸ばされて、しわの少ない乾燥仕上りを実現できる。
また、従来のヒータ式に比べ熱効率の高いヒートポンプ装置を衣類乾燥の熱源として用いることにより消費電力を大幅に削減できるとともに、しわを伸ばすために高速の空気を吹付けることにより衣類からの水分の蒸発が促進され乾燥時間が短縮される。さらに、効率の高いヒートポンプ方式は従来のヒータ式に比べ電流を抑えられるため、その分送風モータの電流を多くすることが出来る。これにより、低温の温風でも大風量を流すことが可能となり、衣類の縮みを押さえながら短時間乾燥が出来、さらに、しわや縮みの少ない仕上りを実現できる。
以下、本発明の一実施について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態例に係るドラム式洗濯乾燥機の外観図である。図2は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した斜視図、図3は内部の構造を示すために背面カバーを取り外した背面図、図4は内部の構造を示す側面図、図5は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した平面図である。
1は、外郭を構成する筐体である。筐体1は、ベース1hの上に取り付けられており、左右の側板1a,1b,前面カバー1c,背面カバー1d,上面カバー1e,下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a,1bは、コの字型の上補強材(図示せず),前補強材(図示せず),後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1を含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。
9は、前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐドアで、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン9dを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
6は、筐体1の上部中央に設けた操作パネルで、電源スイッチ39,操作スイッチ12,13,表示器14を備える。操作パネル6は、筐体1下部に設けた制御装置38に電気的に接続している。
3は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽(回転ドラム)であり、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部3aを設けてある。開口部3aの外側には洗濯兼脱水槽3と一体の流体バランサ3cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ3bが複数個設けてあり、洗濯、乾燥時に洗濯兼脱水槽3を回転すると、衣類はリフタ3bと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。洗濯兼脱水槽3の回転中心軸は、水平または開口部3a側が高くなるように傾斜している。
2は、円筒状の外槽であり、洗濯兼脱水槽3を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にモータ4を取り付ける。モータ4の回転軸は、外槽2を貫通し、洗濯兼脱水槽3と結合している。前面の開口部には外槽カバー2dを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー2dの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部2cを有している。本開口部2cと前補強材37に設けた開口部は、ゴム製のベローズ10で接続しており、ドア9を閉じることで外槽2を水封する。外槽2底面最下部には、排水口2bが設けてあり、排水ホース26が接続している。排水ホース26の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽2に水を溜め、排水弁を開いて外槽2内の水を機外へ排出する。
外槽2は、下側をベース1hに固定されたサスペンション5(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽2の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽2の前後方向へ倒れを防ぐ。
19は、筐体1内の上部左側に設けた洗剤容器で、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ7を装着する。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ7を図1の二点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器19は、筐体1の上補強材に固定されている。
洗剤容器19の後ろ側には、給水電磁弁16や風呂水給水ポンプ17,水位センサ(図示せず)など給水に関連する部品を設けてある。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a,風呂の残り湯の吸水ホース接続口17aが設けてある。洗剤容器19は、外槽2に接続されており、給水電磁弁16を開く、あるいは風呂水給水ポンプ17を運転することで、外槽2に洗濯水を供給する。
29は筐体1の背面内側に縦方向に設置した送風ダクトで、ダクト下部は外槽2の背面下方に設けた吸気口2aにゴム製の蛇腹管B29aで接続される。
送風ダクト29の上部は、筐体1内の上部後ろ側に上下方向に設置したフィルタダクト27に接続している。フィルタダクト27の下面には開口部を有しており、この開口部に引き出し式の乾燥フィルタ8を挿入してある。送風ダクト29からフィルタダクト27へ入った空気は、乾燥フィルタ8のメッシュフィルタ8aに流入し糸くずが除去される。乾燥フィルタ8の掃除は、乾燥フィルタ8を引き出してメッシュ式のフィルタ8aを取り出して行う。フィルタダクト27の下流側には蒸発器37が設置され、その下流側には吸気ダクト33が接続している。吸気ダクト33の他端は送風ユニット28の吸気口と接続している。
送風ユニット28は、駆動用のモータ28a、ファン羽根車(図示せず)、ファンケース28bで構成されている。ファンケース28bには凝縮器31が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット28の吐出口は温風ダクト30に接続する。温風ダクト30は、ゴム製の蛇腹管A30a,蛇腹管継ぎ手30bを介して外槽カバー2dに設けた温風吹き出し口32に接続している。本実施例では、送風ユニット28が筐体1内の上部右側に設けてあるので、温風吹き出し口32は外槽カバー2dの右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口32までの距離を極力短くするようにしてある。
ヒートポンプのサイクルは、圧縮機35,凝縮器31,膨張機構36,蒸発器37から主に構成されており、冷媒の流れは以下のようになる。圧縮機35で圧縮された高温高圧ガスを凝縮器31にて空気と熱交換させる。その後膨張機構36で減圧させた冷媒を蒸発器37にて蒸発させて、低圧ガスを圧縮機35に戻す。ここで蒸発器37にて冷媒が蒸発する際にフィルタダクト27を通過した多湿の空気は冷却除湿され、凝縮器31にて再加熱されることになる。
排水口2b,送風ユニット28の吸気口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
本発明の特徴は、高速の空気を衣類に直接当て、空気の力で衣類に発生するしわを伸ばすことにある。このためには、高速の空気を発生する送風ユニット28とこの空気を直接衣類に当てる温風吹き出し口32が必要となる。送風ユニットに必要な性能に関しては、後述する。温風吹き出し口32の詳細を図6,図7を用いて説明する。図6は温風吹き出し口28設置部の外槽カバー2dの正面図、図7は図6の二点鎖線A−Aで切断して示した温風吹き出し口32の断面図である。
温風吹き出し口32は、外槽カバー2dの前側から開口部2cに沿って設けてあり、内部に流路32b,32cが形成されている。温風吹き出し口32の入口には蛇腹管継ぎ手30bが取り付けてあり、流路32cの出口にはノズル32dが形成されている。洗濯兼脱水槽3と外槽カバー2dとのすき間に衣類が入り込まないよう、外槽カバー2dの開口部2cの内径と洗濯兼脱水槽3の開口部3aの内径は、ほぼ同一に設定されている。このため、温風吹き出し口32の出口部32aを開口部2cの内周面より内側に飛び出すように形成し、ノズル32dが洗濯兼脱水槽3内に向かって開口するようにしてある。このようにすることで、ノズル32dから出た温風は直接洗濯兼脱水槽3内の衣類に当てることが出来る。
なお、出口部32aの飛び出し量が多すぎると、洗濯や乾燥時に衣類の動きを阻害するため、図6に示すようにノズルを扁平のスリット形状として飛び出し量を小さくし、かつ開口部2cと出口部32aの表面形状がスムーズ変化するようにしてある。また、流路32bと流路32cは無駄な突起や、急激な流れ方向の変化が無いようにし、かつノズル32dに向かい流路面積が徐々に小さくなるようにしてある。こうすることで、高速の空気が流路32b,32cを流れるときに発生する圧力損失や流体音を小さくすることが出来る。
乾燥運転時の空気の流れは次のようになる。送風ユニット28を運転し、ヒートポンプの圧縮機35を運転することにより凝縮器31が発熱し、ノズル32dから洗濯兼脱水槽3内に高速の温風が吹き込み(矢印41)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分が蒸発する。高温多湿となった空気は、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、吸気口2aから送風ダクト29に吸い込まれ、送風ダクト29を下から上へ流れ(矢印42)フィルタダクト27へ入る(矢印43)。フィルタダクト27に設けたメッシュフィルタ8aを通り糸屑が取り除かれ、蒸発器37へ入る。高温多湿の空気は低温の蒸発器37と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となり吸気ダクト33に入り、送風ユニット28に吸い込まれる(矢印44)。そして、高温の凝縮器31で再度加熱され、洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環する。
図8は、上記のような乾燥運転を行った場合のノズル32dを噴出する風速と乾燥後の衣類の仕上がり具合を調べた結果の一例である。風速と風量はモータ28aの回転数とノズル32dの面積を変えることで調節した。なお、風速は、送風ユニット28の流量圧力特性を測定した結果から計算した値である。流量圧力特性は、図9に示す装置で測定を行った。均圧箱の吸気口と送風ユニット28の吐出口にオリフィスを取り付け、オリフィスの直径とモータ28aの回転数を種々変えながら流量と送風ユニット28の吸気口及び吐出口の圧力を測定し、流量圧力特性を求めた。そして、送風ユニット28を洗濯乾燥機へ実装した時の送風ユニット28の吸気口と吐出口の圧力を測定し、上記の流量圧力特性から流量を求め、この流量をノズル面積で割った値を風速とした。
実験条件は、図中に示すとおりであり、試験機は、直径600mmで容積75Lの洗濯兼脱水槽を有するドラム式洗濯乾燥機で、布量は2kgである。仕上りの評価は各種衣類で行ったが、最もしわ付きが顕著だった薄手の綿パジャマズボンの結果を示している。評価は目視による5段階の官能評価であるが、官能評価値に対する仕上がり具合の例を図10に示す。上ノズルは、上述した位置にノズル32dを設けた場合(外槽カバー2dの右斜め上の位置)、下ノズルは、外槽カバー2dの下部に設けた場合である。ノズル32dからの風の吹き出し方向は、略洗濯兼脱水槽3の底壁中央に向くようにした。結果は、評価者3名の平均値である。
図から、
(A)風速が高くなるにつれて仕上りがよくなる。しかし、風速が高すぎると逆に仕上りが悪化する(上ノズル1.5m3/minのデータから)。
(B)同じ風速であれば流量が多い方が仕上りはよいが、流量1.5m3/minと1.7m3/minの差は小さい。
(C)同じ風速,流量で比較すると、下ノズルの方が上ノズルよりも仕上りがよい。
ことが分かる。このように、風速が高いほうが仕上りは良くなるが、流量もある程度多い方が良い。従って、どちらか一方を大きくするのではなく、両者のバランスを考えて設定するのが望ましい。具体的には、仕上りだけでなく、電流値(家庭用の商用電源の場合は、送風ユニット28と圧縮器31,モータ4,制御装置38の合計で15A以下)や乾燥性能、風が循環するダクトの流路面積、洗濯乾燥機への実装などを考慮して風速と流量を決定する必要がある。
官能評価値4以上であれば、乾燥後の衣類をそのまま着用しても不満が少ない。本実験機で官能評価値4以上とするためには、上ノズルの場合、流量1.5m3/minで風速90m/s以上が必要である。ただし、風速が高すぎると仕上りが悪化する傾向があるため、最高でも風速130m/s程度に抑えた方がよい。また、風速100〜120m/sで最も仕上りが良くなる。下ノズルの場合、流量1.5m3/minで風速60m/s以上が必要であるが、風速80m/s以上では仕上がり具合がほとんど変わらないため、最大でも80m/s程度でよい。上記の風速を出すためのノズル面積は、上ノズルの場合で190〜280mm2、下ノズルの場合で310〜415mm2以下となる。従って、送風ユニット28には、上記面積のノズルから上記流量を流すだけの性能が必要である。本実施の形態例では、ノズル位置は上ノズル、ノズル面積250mm2(幅50×高さ5mmのスリット上)で、送風ユニット28はファン羽根車径140mm、羽根厚さ7mmで回転数を毎分16000回転で運転している。これによりファン吐出圧力が約7500Pa(空気温度30℃時)となり、流量約1.5m3/minで風速約100m/sを得ている。
しわがつきにくい衣類の場合は、上記の風速より低い値でも官能評価値4以上の仕上りが得られるが、種々の衣類を同時に乾燥するのが一般的であり、しわになりやすい衣類に合わせて風速を決定するほうが良い。
高速の空気を衣類に当てることにより、衣類のしわが減少する理由について図11を用いて述べる。図11(a)はノズル32dから出た高速の空気41が衣類に当たった時の模式図である。ここでは、衣類の背面に他の衣類がある場合を示している。空気が衣類に当たると、衣類には空気で押し広げられる力(矢印(1))と、衣類に当たった後流れ方向を変え衣類表面に沿って流れる空気で左右に引っ張られる力(矢印(2))が作用する。この(1)と(2)の力で衣類のしわは伸ばされる。洗濯兼脱水槽3内の衣類の量が多い場合は、直接空気が当たる衣類の周囲に他の衣類が多く自由に動きにくいため、主に(1)の力でしわが伸ばされる。衣類の量が少ない場合は、衣類が自由に動き、空気が当たった衣類は空気の流れ方向に押されながら吹き流しのようになり、衣類表面に沿って流れる空気による(2)の力でしわが伸ばされる。衣類の量が少ない場合は、乾燥中に衣類が広がりしわは発生しにくいので、ここでは(1)の力について考える。
(1)の力Fは、図11(b)に示すように、ノズル32dから吹き出す風の流量をQ、風速をVとすると、QとVの積に比例する。また、ノズル32dと衣類との距離をXとすると、力FはVに比例しXに反比例する。ただし、ノズル32dと衣類との距離が非常に近い場合(噴流のコア領域,円形ノズルの場合でノズルからノズル径の約6倍の位置まで)は、FはXに関係なくVに比例する。従って、Fを大きくするためには、流量Qを増やすか風速Vを増す、あるいはXを小さくすればよい(衣類をノズルに近づける)。図8で示した仕上りの結果は、これで説明できる。
流量Qを増やすためには、送風ユニット28のファンの回転数を高めたり、ファンの外径や羽根高さを増やしたりする必要がある。また、温風が通るダクトの面積を大きくして圧力損失を小さくした方が良い。しかし、流量を大幅に増やすと、ダクトや送風ユニットのサイズが大型化し、筐体1のサイズの大型化につながり、洗濯乾燥機を家庭へ設置しにくくなる。
一方、風速Vを増やすためには、送風ユニット28を圧力タイプのものにしてノズル面積を小さくすればよい。送風ユニット28として、一般的なターボファンを使用した場合、低い回転数でファン羽根車を大径化する方法と、ファン羽根車の径は小さいままで回転数を高くする方法とがあるが、高速回転化は、従来と同一の筐体に実装できる利点がある。
図8で示した仕上りの実験結果では、風速が高すぎると、仕上りが悪化する現象が見られた。このことは、上記では説明ができない。実験中の衣類の動きを観察すると、風速が高すぎると風の勢いで衣類が捩れるような現象が生じていることが分かった。従って、このことが仕上り悪化の原因である。
ノズル32dと衣類の距離Xを小さくするためには、乾燥時に衣類が必ず通る場所の近くにノズル32dを設ければよい。従って、ノズル32dの位置は、リフタ3bが衣類を持ち上げる位置、すなわち洗濯兼脱水槽3の下側(外槽カバー2dの下側)に設ければよい。ノズルを下に設けることで、図7で示したように風速が60m/s程度でも仕上りをよくすることができるため、ノズルが上にある場合に比べ送風ユニット28の圧力や流量を低くすることができる(ファン羽根車の回転数を低くできる)という利点がある。また、ノズルが下にあると、風の吹き出し方向と重力の方向が逆になる。風が衣類に当たった時、衣類の自重のために衣類が逃げにくく、衣類に作用する力Fが減衰しないため、仕上りを一層良くできるという利点がある。
ノズル32dを下側に設けた場合、送風ダクト29や送風ユニット28を外槽2の下側に設けた方が実装上コンパクトに出来る。しかし、洗濯時の洗濯水がノズル32dから浸入し送風ユニット28内へ流入するため、水の浸入防止機構を設ける、防水タイプの送風ユニットにするなどの対策が必要である。
本実施の形態例では、ノズル32dを外槽カバー2dの右斜め上の位置に設けてあるため、洗濯水が浸入する心配はない。この場合、洗濯兼脱水槽3の回転数を適切に制御し、衣類をノズル32dの近くまで持ち上がるようにし、できるだけ高速の風が衣類に当たるようにする必要がある。衣類は、洗濯兼脱水槽3の回転による遠心力とリフタ3bにより上方に持ち上がる。このため、回転数は洗濯兼脱水槽3の直径に応じて最適値があり、直径が大きいほど回転数は低くなる。ただし、重力で早く落下する衣類もあり、平均的なノズルと衣類の距離はノズルを下側に設けた場合より長くなるのは避けられないため、図7で示したようにノズル出口の風速を高める必要がある。
本発明のドラム式洗濯乾燥機を示す外観図である。 本発明のドラム式洗濯機の筐体の一部を切断して内部構造を示す斜視図である。 本発明のドラム式洗濯機の背面カバーを外して内部構造を示す背面図である。 本発明のドラム式洗濯機の内部構造を示す側面図である。 本発明のドラム式洗濯機の筐体の上部を切断して内部構造を示す上面図である。 温風吹き出し口を設けた外槽カバーの正面図である。 図6における温風吹き出し口のA−A断面図である。 風速と乾燥後の衣類の仕上りの官能評価値の実験結果である。 送風ユニットの流量圧力特性を測定する装置である。 官能評価値と衣類の仕上り具合を示す写真である。 ノズルから吹き出した高速の風が衣類に当たった時の模式図である。 衣類乾燥機のドラム容積と乾燥後の衣類仕上り状態の一例を示す写真である。
符号の説明
1 筐体
2 外槽
2d 外槽カバー
3 洗濯兼脱水槽
4,28a モータ
6 操作パネル
8 乾燥フィルタ
9 ドア
16 給水電磁弁
27 フィルタダクト
28 送風ユニット
28b ファンケース
29 送風ダクト
31 凝縮器
32 温風吹出し口
32d ノズル
33 吸気ダクト
38 制御装置
35 圧縮機
37 蒸発器

Claims (4)

  1. 衣類が収容される回転ドラムと、この回転ドラムを駆動するモータと、前記回転ドラムを支持する筐体と、圧縮機で冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒の熱を放熱する凝縮器により空気を加熱し、膨張機構で冷媒の圧力を減圧し、減圧された冷媒が周囲の熱を吸収する蒸発器により空気を除湿するヒートポンプを備え、乾燥運転中に、送風ユニットにより前記空気が、前記凝縮器,前記回転ドラム,前記蒸発器,前記凝縮器の順で循環するドラム式洗濯乾燥機において、
    前記送風ユニットはターボファンが使用され、前記乾燥運転中に、前記回転ドラムの外周壁内側に設けたリフタと遠心力により前記衣類が前記回転ドラムの回転にともなって持ち上がり重力で落下するような動きを繰り返し、高速回転させた前記ターボファンから送られる高速の空気を、前記衣類に直接吹きつけ、高速の空気の風の力で前記衣類のしわを伸ばすことを特徴とするドラム式洗濯乾燥機。
  2. 請求項1において、前記回転ドラムの前側に前記高速の空気の吹き出し口を有し、この吹き出し口を扁平のスリット形状としたことを特徴とするドラム式洗濯乾燥機。
  3. 請求項において、前記吹き出し口が、貯水可能な外槽を形成する外槽カバーの右斜め上の位置に設けられたことを特徴とするドラム式洗濯乾燥機。
  4. 請求項において、前記送風ユニットが、前記筐体内の上部右側に設けてあることを特徴とするドラム式洗濯乾燥機。
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