以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図3は本発明の実施の第1形態を示し、図1はスロットル弁制御装置の機能ブロック図、図2はアクセル開度−スロットル開度のマップの一例を示す特性図、図3は操作量に対する平面力の合力の従来技術との比較説明図である。
図1において、符号1は、エンジンの吸気系に配設した電子制御スロットル弁2のスロットル開度を制御する、車両運動制御装置としてのスロットル弁制御装置を示し、このスロットル弁制御装置1には、アクセル開度センサ201と、路面μ推定装置202とが接続されている。
エンジンのスロットルボディに配設される電子制御スロットル弁2は、例えば、直流モータ等のスロットル用モータ3とギヤ機構4を介し連結して構成されており、スロットル用モータ3は、スロットル弁制御装置1により駆動される。
また、路面μ推定装置202は、例えば、本出願人が先に提出した特開平8−2274号公報に既述した算出方法(適応制御を用いて路面μを推定する手法)等を用いて路面μを推定し、スロットル弁制御装置1に出力する。
スロットル弁制御装置1は、マップ設定部1a、スロットル開度設定部1bから主要に構成されている。
マップ設定部1aは、路面μ推定装置202から路面μが入力される。そして、例えば、図2に示すように、予め設定しておいた、アクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップにおいて、路面μの値に応じて可変閾値εを定める。この可変閾値εは、路面μが高い程、高い値に、路面μが低い程、低い値に設定される。
アクセル開度θaccは、上述の如く設定される可変閾値εより高い領域においては、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、路面μが高い場合には、通常のアクセル開度θacc−スロットル開度θthの特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、路面μが低い場合には、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量を小さくして、ドライバのアクセル操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
スロットル開度設定部1bは、アクセル開度センサ201からアクセル開度θaccが入力される。そして、このアクセル開度θaccを基に、マップ設定部1aで設定されているアクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップを参照して、スロットル開度θthを求め、スロットル用モータ3を駆動させる。
このように本発明の実施の第1形態によれば、路面μに基づいて可変閾値εを設定し、この可変閾値εより高い領域においては、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。このため、例えば、図3の実線で示すように、可変閾値ε以上の領域で、スロットル開度θthによる平面力の合力が、アクセル開度θaccに対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。尚、図3に示す、破線の制御特性は、例えば、従来のABS(Anti-lock Brake System )制御やトラクションコントロール制御のような、スリップ情報に基づいてグリップ領域に復元させる制御であり、また、一点鎖線の制御は、各車輪が路面との間で発生する力の合力を、設定した摩擦円内に抑制する制御の場合である。これら何れの制御も、グリップ限界付近では、ドライバ操作量に対する平面力の合力が急変し、ドライバに違和感を感じさせると共に、却って操作を難しいものとしてしまう可能性があった。本願は、こうした問題を効果的に解決するものである。
以上説明したように、本発明の実施の第1形態では、アクセル開度センサ201がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202が運転状態検出手段として、スロットル開度設定部1bが制御量設定手段として、マップ設定部1aが可変閾値設定手段及び制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第1形態では、アクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図4〜図7は本発明の実施の第2形態を示し、図4はスロットル弁制御装置の機能ブロック図、図5は車両(4輪車)の等価的な2輪車モデルを示す説明図、図6は車両運動モデルの状態運動方程式を機能的に示す説明図、図7はアクセル開度−スロットル開度のマップの一例を示す特性図である。尚、本発明の実施の第2形態は、可変閾値を車両運動モデルにおいて車両のヨー運動の収束性に影響するゲインであるヨーダンピングゲインに基づいて設定することが前記第1形態とは異なり、他の構成、作用は前記第1形態と同様であるので説明は省略する。
すなわち、符号10は、電子制御スロットル弁2のスロットル開度を制御する、車両運動制御装置としてのスロットル弁制御装置を示し、このスロットル弁制御装置10には、アクセル開度センサ201と、路面μ推定装置202と、車速センサ203と、車両の各車輪に作用する力を検出するタイヤ作用力センサ(左前輪タイヤ作用力センサ204fl,右前輪タイヤ作用力センサ204fr,左後輪タイヤ作用力センサ204rl,右後輪タイヤ作用力センサ204rr)とが接続されている。
これらタイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrは、例えば、特開平9−2240号公報に開示されるセンサであり、各車輪に作用する前後方向(以下、x方向)、横方向(以下、y方向)、及び、上下方向(以下、z方向)の各力をそれぞれのアクスルハウジングに生じる変位量に基づき検出するものである。具体的には、左前輪タイヤ作用力センサ204flからは左前輪の前後、横、上下方向の各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_zが検出され、スロットル弁制御装置10に入力される。右前輪タイヤ作用力センサ204frからは右前輪の前後、横、上下方向の各作用力Ffr_x、Ffr_y、Ffr_zが検出され、スロットル弁制御装置10に入力される。左後輪タイヤ作用力センサ204rlからは左後輪の前後、横、上下方向の各作用力Frl_x、Frl_y、Frl_zが検出され、スロットル弁制御装置10に入力される。右後輪タイヤ作用力センサ204rrからは右後輪の前後、横、上下方向の各作用力Frr_x、Frr_y、Frr_zが検出され、スロットル弁制御装置10に入力される。
スロットル弁制御装置10は、ヨーダンピングゲイン演算部10a、マップ設定部10b、スロットル開度設定部1bから主要に構成されている。
ヨーダンピングゲイン演算部10aは、路面μ推定装置202から路面μが、車速センサ203から車速Vが、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrから各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_z,Ffr_x、Ffr_y、Ffr_z,Frl_x、Frl_y、Frl_z,Frr_x、Frr_y、Frr_zが入力される。そして、これら入力に基づき車両運動モデルにおいて車両のヨー運動の収束性に影響するゲインであるヨーダンピングゲインa22を演算し、マップ設定部10bに出力する。
以下、ヨーダンピングゲインa22の演算について説明する。
図5の車両運動モデルにおいて、車両横方向の並進運動に関する運動方程式は、前後輪のコーナリングフォース(1輪)をFf,Fr、車体質量をM、横加速度を(d2y/dt2)として、
M・(d2y/dt2)=2・Ff+2・Fr …(1)
で与えられる。
一方、重心点まわりの回転運動に関する運動方程式は、重心から前後輪軸までの距離をlf,lr、車体のヨーイング慣性モーメントをIz、ヨー角加速度を(d2ψ/dt2)として、
Iz・(d2ψ/dt2)=2・Ff・lf−2・Fr・lr …(2)
で示される。
また、車体すべり角をβ、車体すべり角速度を(dβ/dt)とすると、横加速度(d2y/dt2)は、
(d2y/dt2)=V・((dβ/dt)+(dψ/dt)) …(3)
で表される。
前後輪の平均コーナリングフォースFf_y,Fr_yは、前後輪の等価コーナリングパワをkf,kr、前後輪の横すべり角をβf,βrとすると、
Ff_y=kf・βf−(kf2・βf2)/(4・(μ2・Ff_z2−Ff_x2)1/2) …(4)
Fr_y=kr・βr−(kr2・βr2)/(4・(μ2・Fr_z2−Fr_x2)1/2) …(5)
で表される。
このとき、実際の前後輪コーナリングパワkf_a,kr_aは次式で表される。
kf_a=(∂Ff_y/∂βf)
=kf−(kf
2・|βf|)/(2・(μ
2・Ff_z
2−Ff_x
2)
1/2)
…(6)
kr_a=(∂Fr_y/∂βr)
=kr−(kr
2・|βr|)/(2・(μ
2・Fr_z
2−Fr_x
2)
1/2)
…(7)
また、前後輪の横すべり角βf,βrは、前輪実舵角をδfとして以下のように簡略化できる。
βf=β+lf・(dψ/dt)/V−δf …(8)
βr=β+lr・(dψ/dt)/V …(9)
以上の運動方程式をまとめると、以下のように、前輪実舵角δfを入力として車体すべり角β、ヨーレート(dψ/dt)を求める状態運動方程式が得られる。
ここで、
a11=(1/(M・V))・(2・kf_a+2・kr_a)
=(1/(M・V))・(kf・((1−rfl)
1/2+(1−rfr)
1/2)
+kr・((1−rrl)
1/2+(1−rrr)
1/2)) …(11)
a12=1+(1/(M・V
2))・(lf・2・kf_a−lr・2・kr_a)
=1+(1/(M・V
2))
・(lf・kf・((1−rfl)
1/2+(1−rfr)
1/2))
−lr・kr・((1−rrl)
1/2+(1−rrr)
1/2))…(12)
a21=(1/(Iz・V))・(lf・2・kf_a−lr・2・kr_a)
=(1/(Iz・V))
・(lf・kf・((1−rfl)
1/2+(1−rfr)
1/2))
−lr・kr・((1−rrl)
1/2+(1−rrr)
1/2))…(13)
a22=(1/(Iz・V))・(2・lf
2・kf_a+2・lr
2・kr_a)
=(1/(Iz・V))
・(lf
2・kf・((1−rfl)
1/2+(1−rfr)
1/2))
+lr
2・kr・((1−rrl)
1/2+(1−rrr)
1/2))…(14)
b1=(1/(M・V))・2・kf_a
=(1/(M・V))・kf・((1−rfl)
1/2+(1−rfr)
1/2)
…(15)
b2=(2・lf・kf_a)/Iz
=(lf/Iz)・kf・((1−rfl)
1/2+(1−rfr)
1/2)
…(16)
ここで、
rfl=(Ffl_x2+Ffl_y2)1/2/(μ・Ffl_z)
rfr=(Ffr_x2+Ffr_y2)1/2/(μ・Ffr_z)
rrl=(Frl_x2+Ffl_y2)1/2/(μ・Frl_z)
rrr=(Frr_x2+Frr_y2)1/2/(μ・Frr_z)
なお、これらの関係を図6において機能的に表す。
ここで、上述の(14)式に示す、a22の項は、(10)式に示す車両の状態運動方程式におけるシステム行列要素中、車両のヨー運動の収束性に影響を与えるシステム行列要素であり、ヨーレートのネガティブフィードバックゲインとなる。すなわち、a22の項は、車両の運動モデルにおけるヨーダンピングゲインである。
マップ設定部10bは、ヨーダンピングゲイン演算部10aからヨーダンピングゲインa22が入力される。そして、例えば、図7に示すように、予め設定しておいた、アクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップにおいて、ヨーダンピングゲインa22の値に応じて可変閾値εを定める。この可変閾値εは、ヨーダンピングゲインa22が高い程、高い値に、ヨーダンピングゲインa22が低い程、低い値に設定される。
アクセル開度θaccは、上述の如く設定される可変閾値εより高い領域においては、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、車両のヨー運動の収束性に影響するゲインであるヨーダンピングゲインa22が高い場合には、通常のアクセル開度θacc−スロットル開度θthの特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、ヨーダンピングゲインa22が低い場合には、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量を小さくして、ドライバのアクセル操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
スロットル開度設定部1bは、アクセル開度センサ201からアクセル開度θaccが入力される。そして、このアクセル開度θaccを基に、マップ設定部10bで設定されているアクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップを参照して、スロットル開度θthを求め、スロットル用モータ3を駆動させる。
このように本発明の実施の第2形態によれば、ヨーダンピングゲインa22に基づいて可変閾値εを設定し、この可変閾値εより高い領域においては、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。このため、本発明の実施の第2形態によっても、前述の第1形態と同様、可変閾値ε以上の領域で、スロットル開度θthによる平面力の合力が、アクセル開度θaccに対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第2形態では、アクセル開度センサ201がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202、車速センサ203、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rr、ヨーダンピングゲイン演算部10aが運転状態検出手段として、スロットル開度設定部1bが制御量設定手段として、マップ設定部10bが可変閾値設定手段及び制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第2形態では、アクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図8及び図9は本発明の実施の第3形態を示し、図8はスロットル弁制御装置の機能ブロック図、図9はアクセル開度−スロットル開度のマップの一例を示す特性図である。尚、本発明の実施の第3形態は、可変閾値を、車両運動モデルにおいて車両の前輪実舵角に対するヨー運動の応答性に影響するゲインである操舵ゲインに基づいて設定することが前記第1形態とは異なり、他の構成、作用は前記第1形態と同様であるので説明は省略する。
すなわち、符号20は、電子制御スロットル弁2のスロットル開度を制御する、車両運動制御装置としてのスロットル弁制御装置を示し、このスロットル弁制御装置20には、アクセル開度センサ201と、路面μ推定装置202と、車両の各車輪に作用する力を検出するタイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrとが接続されている。
スロットル弁制御装置20は、操舵ゲイン演算部20a、マップ設定部20b、スロットル開度設定部1bから主要に構成されている。
操舵ゲイン演算部20aは、路面μ推定装置202から路面μが、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrから各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_z,Ffr_x、Ffr_y、Ffr_z,Frl_x、Frl_y、Frl_z,Frr_x、Frr_y、Frr_zが入力される。そして、これら入力に基づき、車両運動モデルにおいて車両のヨー運動の前輪実舵角に対する応答性に影響するゲインである操舵ゲインb2を演算し、マップ設定部20bに出力する。この操舵ゲインb2は、(10)式に示す車両の状態運動方程式におけるシステム行列要素中、車両のヨー運動の応答性に影響を与えるシステム行列要素であり、前輪実舵角のフィードフォワードゲインとなる。そして、操舵ゲインb2は、前述の第2形態における(16)式により演算されるものである。
マップ設定部20bは、操舵ゲイン演算部20aから操舵ゲインb2が入力される。そして、例えば、図9に示すように、予め設定しておいた、アクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップにおいて、操舵ゲインb2の値に応じて可変閾値εを定める。この可変閾値εは、操舵ゲインb2が高い程、高い値に、操舵ゲインb2が低い程、低い値に設定される。
アクセル開度θaccは、上述の如く設定される可変閾値εより高い領域においては、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、車両のヨー運動の前輪実舵角に対する応答性に影響するゲインである操舵ゲインb2が高い場合には、通常のアクセル開度θacc−スロットル開度θthの特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、操舵ゲインb2が低い場合には、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量を小さくして、ドライバのアクセル操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
スロットル開度設定部1bは、アクセル開度センサ201からアクセル開度θaccが入力される。そして、このアクセル開度θaccを基に、マップ設定部20bで設定されているアクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップを参照して、スロットル開度θthを求め、スロットル用モータ3を駆動させる。
このように本発明の実施の第3形態によれば、操舵ゲインb2に基づいて可変閾値εを設定し、この可変閾値εより高い領域においては、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。このため、本発明の実施の第3形態によっても、前述の第1形態と同様、可変閾値ε以上の領域で、スロットル開度θthによる平面力の合力が、アクセル開度θaccに対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第3形態では、アクセル開度センサ201がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rr、操舵ゲイン演算部20aが運転状態検出手段として、スロットル開度設定部1bが制御量設定手段として、マップ設定部20bが可変閾値設定手段及び制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第3形態では、アクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図10及び図11は本発明の実施の第4形態を示し、図10はスロットル弁制御装置の機能ブロック図、図11はアクセル開度−スロットル開度のマップの一例を示す特性図である。尚、本発明の実施の第4形態は、可変閾値を、発生が予想される基準ラック推力に対する実際に生じていると推定される推定ラック推力の比に基づいて設定することが前記第1形態とは異なり、他の構成、作用は前記第1形態と同様であるので説明は省略する。
すなわち、符号30は、電子制御スロットル弁2のスロットル開度を制御する、車両運動制御装置としてのスロットル弁制御装置を示し、このスロットル弁制御装置30には、アクセル開度センサ201と、ヨーレートセンサ205と、横加速度センサ206と、ドライバ操舵力センサ207と、電動パワーステアリングモータ208とが接続されている。
スロットル弁制御装置30は、基準ラック推力演算部30a、推定ラック推力演算部30b、ラック推力比演算部30c、マップ設定部30d、スロットル開度設定部1bから主要に構成されている。
基準ラック推力演算部30aは、ヨーレートセンサ205からヨーレート(dψ/dt)が、横加速度センサ206から横加速度(d2y/dt2)が入力される。そして、これら入力に基づき、例えば、以下の(17)式により、電動パワーステアリング装置のラック軸に発生が予想される基準ラック推力FRを演算する。
FR=Cr・Ff_y …(17)
ここで、Crは、サスペンション構成によって決まる定数であり、例えば、以下の(18)式により定義される。
Cr=(Ct+Cp)/Cn …(18)
Ctはキャスタトレール、Cpはニューマチックトレール、Cnはナックル長である。
また、Ff_yは前輪横力推定値であり、例えば、以下の(19)式により演算される。
Ff_y=(lr・M・(d2y/dt2)+Iz・(d2ψ/dt2))
/(lf+lr) …(19)
推定ラック推力演算部30bは、ドライバ操舵力センサ207からドライバ操舵力が、電動パワーステアリングモータ208から電動パワーステアリングモータの電流値が入力され、例えば、これらの値をトルク換算して加算することにより、電動パワーステアリング装置のラック軸に実際に生じていると推定される推定ラック推力FEを演算する。
ラック推力比演算部30cは、基準ラック推力演算部30aから基準ラック推力FRが、推定ラック推力演算部30bから推定ラック推力FEが入力される。そして、以下の(20)式により、基準ラック推力に対する推定ラック推力の比(ラック推力比)Fratを演算し、マップ設定部30dに出力する。
Frat=FE/FR …(20)
マップ設定部30dは、ラック推力比演算部30cからラック推力比Fratが入力される。そして、例えば、図11に示すように、予め設定しておいた、アクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップにおいて、ラック推力比Fratの値に応じて可変閾値εを定める。この可変閾値εは、ラック推力比Fratが高い程、高い値に、ラック推力比Fratが低い程、低い値に設定される。
アクセル開度θaccは、上述の如く設定される可変閾値εより高い領域においては、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、ラック推力比Fratが高い場合には、通常のアクセル開度θacc−スロットル開度θthの特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、ラック推力比Fratが低い場合には、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量を小さくして、ドライバのアクセル操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
スロットル開度設定部1bは、アクセル開度センサ201からアクセル開度θaccが入力される。そして、このアクセル開度θaccを基に、マップ設定部30dで設定されているアクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップを参照して、スロットル開度θthを求め、スロットル用モータ3を駆動させる。
このように本発明の実施の第4形態によれば、ラック推力比Fratに基づいて可変閾値εを設定し、この可変閾値εより高い領域においては、アクセル開度θaccに対するスロットル開度θthの変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。このため、本発明の実施の第4形態によっても、前述の第1形態と同様、可変閾値ε以上の領域で、スロットル開度θthによる平面力の合力が、アクセル開度θaccに対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第4形態では、アクセル開度センサ201がドライバ操作量検出手段として、ヨーレートセンサ205、横加速度センサ206、ドライバ操舵力センサ207、電動パワーステアリングモータ208、基準ラック推力演算部30a、推定ラック推力演算部30b、ラック推力比演算部30cが運転状態検出手段として、スロットル開度設定部1bが制御量設定手段として、マップ設定部30dが可変閾値設定手段及び制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第4形態では、アクセル開度θacc−スロットル開度θthのマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図12は本発明の実施の第5形態による、制動力制御装置の機能ブロック図である。尚、本発明の実施の第5形態は、前記第1形態を、スロットル弁制御装置ではなく制動力制御装置に対して本発明を適用したものである。
すなわち、図12において、符号40は制動力制御装置を示し、この制動力制御装置40には、ドライバにより操作されるブレーキペダル(図示せず)の踏み込み力を検出するブレーキペダル踏力センサ209と路面μ推定装置202とが接続されている。
そして、ドライバがブレーキペダルを踏み込むと、その踏み込み力に応じた制動力信号がブレーキ駆動部41に出力される。このブレーキ駆動部41は、加圧源、減圧弁、増圧弁等を備えたハイドロリックユニットで、上述のドライバによるブレーキ操作以外にも、制動力制御装置40からの入力信号に応じて、4輪の各ホイールシリンダ(左前輪ホイールシリンダ42fl,右前輪ホイールシリンダ42fr,左後輪ホイールシリンダ42rl,右後輪ホイールシリンダ42rr)に対して、それぞれ独立にブレーキ圧を導入自在に構成されている。
制動力制御装置40は、マップ設定部40a、ブレーキ液圧設定部40bから主要に構成されている。
マップ設定部40aは、路面μ推定装置202から路面μが入力される。そして、例えば、前述の図2のアクセル開度θaccをブレーキペダル踏力に、スロットル開度θthをホイールシリンダ液圧に読み替えて得られるような図に示すように、予め設定しておいた、ブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップにおいて、路面μの値に応じて可変閾値εを定める。この可変閾値εは、路面μが高い程、高い値に、路面μが低い程、低い値に設定される。
ブレーキペダル踏力は、上述の如く設定される可変閾値εより高い領域においては、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、路面μが高い場合には、通常のブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧の特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、路面μが低い場合には、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量を小さくして、ドライバのブレーキ操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
ブレーキ液圧設定部40bは、ブレーキペダル踏力センサ209からブレーキペダル踏力が入力される。そして、このブレーキペダル踏力を基に、マップ設定部40aで設定されているブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップを参照して、ホイールシリンダ液圧を求め、ブレーキ駆動部41に出力する。
このように本発明の実施の第5形態によれば、路面μに基づいて可変閾値εを設定し、この可変閾値εより高い領域においては、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。このため、本発明の実施の第5形態によっても、前述の第1形態と同様、可変閾値ε以上の領域で、ホイールシリンダ液圧による平面力の合力が、ブレーキペダル踏力に対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第5形態では、ブレーキペダル踏力センサ209がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202が運転状態検出手段として、ブレーキ液圧設定部40bが制御量設定手段として、マップ設定部40aが可変閾値設定手段及び制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第5形態では、ブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図13は本発明の実施の第6形態による、制動力制御装置の機能ブロック図である。尚、本発明の実施の第6形態は、前記第2形態を、スロットル弁制御装置ではなく制動力制御装置に対して本発明を適用したものである。
すなわち、図13において、符号50は制動力制御装置を示し、この制動力制御装置50には、ブレーキペダル踏力センサ209と、路面μ推定装置202と、車速センサ203と、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrとが接続されている。そして、ドライバがブレーキペダルを踏み込むと、その踏み込み力に応じた制動力信号がブレーキ駆動部41に出力される。尚、ブレーキ駆動部41以下の構成については、前記第5形態と同様であるので説明は省略する。
制動力制御装置50は、ヨーダンピングゲイン演算部10a、マップ設定部50a、ブレーキ液圧設定部40bから主要に構成されている。
ヨーダンピングゲイン演算部10aは、路面μ推定装置202から路面μが、車速センサ203から車速Vが、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrから各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_z,Ffr_x、Ffr_y、Ffr_z,Frl_x、Frl_y、Frl_z,Frr_x、Frr_y、Frr_zが入力される。そして、これら入力に基づき車両運動モデルにおいて車両のヨー運動を収束させることに影響するゲインであるヨーダンピングゲインa22を演算し、マップ設定部50aに出力する。
このヨーダンピングゲインa22は、前記第2形態で説明したものであり、前述の(14)式により演算される。
マップ設定部50aは、ヨーダンピングゲイン演算部10aからヨーダンピングゲインa22が入力される。そして、例えば、前述の図7のアクセル開度θaccをブレーキペダル踏力に、スロットル開度θthをホイールシリンダ液圧に読み替えて得られるような図に示すように、予め設定しておいた、ブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップにおいて、ヨーダンピングゲインa22の値に応じて可変閾値εを定める。この可変閾値εは、ヨーダンピングゲインa22が高い程、高い値に、ヨーダンピングゲインa22が低い程、低い値に設定される。
ブレーキペダル踏力は、上述の如く設定される可変閾値εより高い領域においては、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、車両のヨー運動の収束性に影響するゲインであるヨーダンピングゲインa22が高い場合には、通常のブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧の特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、ヨーダンピングゲインa22が低い場合には、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量を小さくして、ドライバのブレーキ操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
ブレーキ液圧設定部40bは、ブレーキペダル踏力センサ209からブレーキペダル踏力が入力される。そして、このブレーキペダル踏力を基に、マップ設定部50aで設定されているブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップを参照して、ホイールシリンダ液圧を求め、ブレーキ駆動部41に出力する。
このように本発明の実施の第6形態によれば、ヨーダンピングゲインa22に基づいて可変閾値εを設定し、この可変閾値εより高い領域においては、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。このため、本発明の実施の第6形態によっても、前述の第2形態と同様、可変閾値ε以上の領域で、ホイールシリンダ液圧による平面力の合力が、ブレーキペダル踏力に対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第6形態では、ブレーキペダル踏力センサ209がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202、車速センサ203、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rr、ヨーダンピングゲイン演算部10aが運転状態検出手段として、ブレーキ液圧設定部40bが制御量設定手段として、マップ設定部50aが可変閾値設定手段及び制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第6形態では、ブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図14は本発明の実施の第7形態による、制動力制御装置の機能ブロック図である。尚、本発明の実施の第7形態は、前記第3形態を、スロットル弁制御装置ではなく制動力制御装置に対して本発明を適用したものである。
すなわち、図14において、符号60は制動力制御装置を示し、この制動力制御装置60には、ブレーキペダル踏力センサ209と、路面μ推定装置202と、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrとが接続されている。そして、ドライバがブレーキペダルを踏み込むと、その踏み込み力に応じた制動力信号がブレーキ駆動部41に出力される。尚、ブレーキ駆動部41以下の構成については、前記第5形態と同様であるので説明は省略する。
制動力制御装置60は、操舵ゲイン演算部20a、マップ設定部60a、ブレーキ液圧設定部40bから主要に構成されている。
操舵ゲイン演算部20aは、路面μ推定装置202から路面μが、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrから各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_z,Ffr_x、Ffr_y、Ffr_z,Frl_x、Frl_y、Frl_z,Frr_x、Frr_y、Frr_zが入力される。そして、これら入力に基づき車両運動モデルにおいて車両のヨー運動の前輪実舵角に対する応答性に影響するゲインである操舵ゲインb2を演算し、マップ設定部60aに出力する。この操舵ゲインb2は、前述の第2形態における(16)式により演算されるものである。
マップ設定部60aは、操舵ゲイン演算部20aから操舵ゲインb2が入力される。そして、例えば、前述の図9のアクセル開度θaccをブレーキペダル踏力に、スロットル開度θthをホイールシリンダ液圧に読み替えて得られるような図に示すように、予め設定しておいた、ブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップにおいて、操舵ゲインb2の値に応じて可変閾値εを定める。この可変閾値εは、操舵ゲインb2が高い程、高い値に、操舵ゲインb2が低い程、低い値に設定される。
ブレーキペダル踏力は、上述の如く設定される可変閾値εより高い領域においては、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、車両のヨー運動の前輪実舵角に対する応答性に影響するゲインである操舵ゲインb2が高い場合には、通常のブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧の特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、操舵ゲインb2が低い場合には、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量を小さくして、ドライバのブレーキ操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
ブレーキ液圧設定部40bは、ブレーキペダル踏力センサ209からブレーキペダル踏力が入力される。そして、このブレーキペダル踏力を基に、マップ設定部60aで設定されているブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップを参照して、ホイールシリンダ液圧を求め、ブレーキ駆動部41に出力する。
このように本発明の実施の第7形態によれば、操舵ゲインb2に基づいて可変閾値εを設定し、この可変閾値εより高い領域においては、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。このため、本発明の実施の第7形態によっても、前述の第3形態と同様、可変閾値ε以上の領域で、ホイールシリンダ液圧による平面力の合力が、ブレーキペダル踏力に対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第7形態では、ブレーキペダル踏力センサ209がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rr、操舵ゲイン演算部20aが運転状態検出手段として、ブレーキ液圧設定部40bが制御量設定手段として、マップ設定部60aが可変閾値設定手段及び制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第7形態では、ブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図15は本発明の実施の第8形態による、制動力制御装置の機能ブロック図である。尚、本発明の実施の第8形態は、前記第4形態を、スロットル弁制御装置ではなく制動力制御装置に対して本発明を適用したものである。
すなわち、図15において、符号70は制動力制御装置を示し、この制動力制御装置70には、ブレーキペダル踏力センサ209と、ヨーレートセンサ205と、横加速度センサ206と、ドライバ操舵力センサ207と、電動パワーステアリングモータ208とが接続されている。そして、ドライバがブレーキペダルを踏み込むと、その踏み込み力に応じた制動力信号がブレーキ駆動部41に出力される。尚、ブレーキ駆動部41以下の構成については、前記第5形態と同様であるので説明は省略する。
制動力制御装置70は、基準ラック推力演算部30a、推定ラック推力演算部30b、ラック推力比演算部30c、マップ設定部70a、ブレーキ液圧設定部40bから主要に構成されている。
基準ラック推力演算部30aは、ヨーレートセンサ205からヨーレート(dψ/dt)が、横加速度センサ206から横加速度(d2y/dt2)が入力される。そして、これら入力に基づき、例えば、前述の(17)〜(19)式により、発生が予想される基準ラック推力FRを演算する。
推定ラック推力演算部30bは、ドライバ操舵力センサ207からドライバ操舵力が、電動パワーステアリングモータ208から電動パワステアリングモータの電流値が入力され、例えば、これらの値をトルク換算して加算することにより、実際に生じていると推定される推定ラック推力FEを演算する。
ラック推力比演算部30cは、基準ラック推力演算部30aから基準ラック推力FRが、推定ラック推力演算部30bから推定ラック推力FEが入力される。そして、前述の(20)式により、基準ラック推力に対する推定ラック推力の比(ラック推力比)Fratを演算し、マップ設定部70aに出力する。
マップ設定部70aは、ラック推力比演算部30cからラック推力比Fratが入力される。そして、例えば、前述の図11のアクセル開度θaccをブレーキペダル踏力に、スロットル開度θthをホイールシリンダ液圧に読み替えて得られるような図に示すように、予め設定しておいた、ブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップにおいて、ラック推力比Fratの値に応じて可変閾値εを定める。この可変閾値εは、ラック推力比Fratが高い程、高い値に、ラック推力比Fratが低い程、低い値に設定される。
ブレーキペダル踏力は、上述の如く設定される可変閾値εより高い領域においては、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、ラック推力比Fratが高い場合には、通常のブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧の特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、ラック推力比Fratが低い場合には、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量を小さくして、ドライバのブレーキ操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
ブレーキ液圧設定部40bは、ブレーキペダル踏力センサ209からブレーキペダル踏力が入力される。そして、このブレーキペダル踏力を基に、マップ設定部70aで設定されているブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップを参照して、ホイールシリンダ液圧を求め、ブレーキ駆動部41に出力する。
このように本発明の実施の第8形態によれば、ラック推力比Fratに基づいて可変閾値εを設定し、この可変閾値εより高い領域においては、ブレーキペダル踏力に対するホイールシリンダ液圧の変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。このため、本発明の実施の第8形態によっても、前述の第4形態と同様、可変閾値ε以上の領域で、ホイールシリンダ液圧による平面力の合力が、ブレーキペダル踏力に対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第8形態では、ブレーキペダル踏力センサ209がドライバ操作量検出手段として、ヨーレートセンサ205、横加速度センサ206、ドライバ操舵力センサ207、電動パワーステアリングモータ208、基準ラック推力演算部30a、推定ラック推力演算部30b、ラック推力比演算部30cが運転状態検出手段として、ブレーキ液圧設定部40bが制御量設定手段として、マップ設定部70aが可変閾値設定手段及び制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第8形態では、ブレーキペダル踏力−ホイールシリンダ液圧のマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図16〜図18は本発明の実施の第9形態を示し、図16は操舵制御装置の機能ブロック図、図17はドライバ操舵角−前輪実舵角のマップの一例を示す特性図、図18はすべり角変化値の説明図である。尚、本発明の実施の第9形態は、前記第1形態を、スロットル弁制御装置ではなく操舵制御装置に対して本発明を適用したものである。
すなわち、図16において、符号80は操舵制御装置を示し、この操舵制御装置80には、ハンドル角センサ210と、路面μ推定装置202と、車速センサ203と、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrと、ヨーレートセンサ205とが接続されており、ドライバにより入力されるハンドル角に応じた前輪実舵角の信号が、ステアバイワイヤ方式による電動パワーステアリング装置の操舵機構81に対して出力されるように構成されている。
操舵機構81は、ドライバからの操舵入力を行う操舵機構部82と、転舵輪である前輪83fl,83frを転舵させる転舵機構部84とを有し、これらが所定に連動制御されることにより、所謂、ステアバイワイヤ方式の電動パワーステアリング装置が実現される。
操舵機構部82は、操舵ハンドル85と、操舵ハンドル85に連結された操舵軸86と、操舵軸86の中途に同軸的に組み込まれた反力モータ87とを有して構成されている。
転舵機構部84は、車体の左右方向に延びて配置されたラック軸88と、このラック軸88の両端にタイロッド89fl,89frを介してそれぞれ連結されたナックルアーム90fl,90frとを有して構成され、各ナックルアーム90fl,90frには前輪83fl,83frがそれぞれ連結されている。
ラック軸88は、ハウジング91を介して、車体の左右方向に移動自在に支持されている。このラック軸88にはラックギヤ92が設けられており、ラックギヤ92にはピニオンギヤ93が噛合されている。また、ピニオンギヤ93にはピニオン軸94が連結されており、このピニオン軸94の中途には転舵モータ95が同軸的に組み込まれている。転舵モータ95は、操舵制御装置80によって駆動制御され、転舵モータ95の駆動力は、ピニオン軸94、ピニオンギヤ93、及び、ラックギヤ92を介してラック軸88に伝達され、前輪83fl,83frを転舵する。
尚、図中符号96は、操舵軸86とピニオン軸94との間に介装されるクラッチ機構部であり、このクラッチ機構部96は、反力モータ87や転舵モータ95の故障時(フェール時)等に締結制御される。
操舵制御装置80は、車体すべり角演算部80a、すべり角変化値演算部80b、可変閾値演算部80c、マップ設定部80d、前輪実舵角設定部80eから主要に構成されている。
車体すべり角演算部80aは、路面μ推定装置202から路面μが、車速センサ203から車速Vが、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrから各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_z,Ffr_x、Ffr_y、Ffr_z,Frl_x、Frl_y、Frl_z,Frr_x、Frr_y、Frr_zが、前輪実舵角設定部80eから前輪実舵角δfが入力される。
そして、これらの入力信号を基に、前記第2形態で説明した(10)式に基づいて車体すべり角βを演算し、可変閾値演算部80cに出力する。
すべり角変化値演算部80bは、路面μ推定装置202から路面μが、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrから各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_z,Ffr_x、Ffr_y、Ffr_z,Frl_x、Frl_y、Frl_z,Frr_x、Frr_y、Frr_zが入力される。
そして、例えば、以下の(21)式により、少なくとも路面μに応じて可変されるすべり角変化値βf_cを演算する。
βf_c=((2・(μ2・Ff_z2−Ff_x2)1/2)/kf)
・(1−(1−(r/2))1/2) …(21)
ここで、
Ff_x=Ffl_x+Ffr_x
Ff_y=Ffl_y+Ffr_y
Ff_z=Ffl_z+Ffr_z
であり、rは、0〜1の予め設定した定数である。
すなわち、この可変されるすべり角変化値βf_cは、図18に示す、左右輪の横力Ff_yと前輪すべり角βfに示す関係において、実線で示される関数は、以下の(22)式で与えられる。
Ff_y=2・(−kf・βf+sign(βf)
・(kf2・βf2)/(4・(μ2・Ff_z2−Ff_x2)1/2)) …(22)
この(22)式において、Ff_y=−r・(μ2・Ff_z2−Ff_x2)1/2とおき、上述の(21)式で表される、すべり角変化値βf_cを演算するのである。
こうして、すべり角変化値演算部80bで演算されたすべり角変化値βf_cは、可変閾値演算部80cに出力される。
可変閾値演算部80cは、車速センサ203から車速Vが、ヨーレートセンサ205からヨーレート(dψ/dt)が、車体すべり角演算部80aから車体すべり角βが、すべり角変化値演算部80bからすべり角変化値βf_cが入力される。
そして、以下の(23)、(24)式により、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを演算する。
δc_upper=βf_c−(β+(lf/V)・(dψ/dt)) …(23)
δc_lower=−βf_c+(β+(lf/V)・(dψ/dt)) …(24)
こうして、可変閾値演算部80cで演算された2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerは、マップ設定部80dに出力される。
マップ設定部80dは、可変閾値演算部80cから2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerが入力される。そして、例えば、図17に示すように、ドライバ操舵角(θH/Ns:Nsはステアリングギヤ比)−前輪実舵角δfのマップにおいて、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定する。これにより、ドライバ操舵角(θH/Ns)が、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域(換言すれば、ドライバ操舵角の絶対値|θH/Ns|が可変閾値より大きな領域)においては、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、路面μが高い場合には、上述の(21)式に示す、すべり角変化値βf_cが大きく演算され、逆に、路面μが低い場合には、すべり角変化値βf_cが小さく演算される。そして、このすべり角変化値βf_cを基に、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定することになる。これにより、路面μが高い場合には、通常のドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfの特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、路面μが低い場合には、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量を小さくして、ドライバのハンドル操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
前輪実舵角設定部80eは、ハンドル角センサ210からハンドル角θHが入力される。そして、このハンドル角θHを基に、マップ設定部80dで設定されているドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップを参照して、前輪実舵角δfを求め、転舵モータ95を駆動させる。
このように本発明の実施の第9形態によれば、路面μに基づいて2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定し、ドライバ操舵角(θH/Ns)が、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域においては、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。
このため、本発明の実施の第9形態によっても、前述の第1形態と同様、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域で、前輪実舵角δfによる平面力の合力が、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第9形態では、ハンドル角センサ210がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202、車速センサ203、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rr、ヨーレートセンサ205、車体すべり角演算部80a、前輪実舵角設定部80eが運転状態検出手段として、前輪実舵角設定部80eが制御量設定手段として、すべり角変化値演算部80b、可変閾値演算部80cが可変閾値設定手段として、マップ設定部80dが制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第9形態では、ドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図19及び図20は本発明の実施の第10形態を示し、図19は操舵制御装置の機能ブロック図、図20はすべり角変化値の説明図である。尚、本発明の実施の第10形態は、前記第2形態を、スロットル弁制御装置ではなく操舵制御装置に対して本発明を適用したもので、具体的には、前記第9形態におけるすべり角変化値の演算を変更して構成したもので、前記第9形態と同様の構成部分には同じ符号を記し、説明は省略する。
すなわち、図19において、符号100は操舵制御装置を示し、この操舵制御装置100には、ハンドル角センサ210と、路面μ推定装置202と、車速センサ203と、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrと、ヨーレートセンサ205とが接続されており、ドライバにより入力されるハンドル角に応じた前輪実舵角の信号が、ステアバイワイヤ方式による電動パワーステアリング装置の操舵機構81に対して出力されるように構成されている。尚、操舵機構81以下の構成については、前記第9形態と同様であるので説明は省略する。
操舵制御装置100は、車体すべり角演算部80a、すべり角変化値演算部100a、可変閾値演算部80c、マップ設定部80d、前輪実舵角設定部80eから主要に構成されている。
すべり角変化値演算部100aは、路面μ推定装置202から路面μが、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrから各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_z,Ffr_x、Ffr_y、Ffr_z,Frl_x、Frl_y、Frl_z,Frr_x、Frr_y、Frr_zが入力される。
そして、例えば、以下の(25)式により、少なくとも車両運動モデルにおいて車両のヨー運動の収束性に影響するゲインであるヨーダンピングゲインa22に応じて可変されるすべり角変化値βf_cを演算する。
βf_c=((2・(μ2・Ff_z2−Ff_x2)1/2)/kf)
・(−r・(lf2・kf+lr2・kr)+lf2・kf+lr2・kr_a)
/(lf2・kf) …(25)
すなわち、この可変されるすべり角変化値βf_cは、図20に示す、ヨーダンピングゲインa22と前輪すべり角の絶対値|βf|に示す関係において、実線で示される関数は、以下の(26)式で与えられる。
a22=(2/(Iz・V))
・(lf2・(kf−(kf2/(2・(μ2・Ff_z2−Ff_x2)1/2))
・|βf|)+lr2・kr_a) …(26)
この(26)式において、a22=r・(2/(Iz・V))・(lf2・kf+lr2・kr)とおき、上述の(25)式で表される、すべり角変化値βf_cを演算するのである。
こうして、すべり角変化値演算部100aで演算されたすべり角変化値βf_cは、可変閾値演算部80cに出力される。
そして、可変閾値演算部80cは、前述の第9形態で説明したように、車速V、ヨーレート(dψ/dt)、車体すべり角β、及び、すべり角変化値βf_cを基に、(23)、(24)式により、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを演算し、マップ設定部80dは、例えば、図17に示すように、ドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップにおいて、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定する。これにより、ドライバ操舵角(θH/Ns)が、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域(換言すれば、ドライバ操舵角の絶対値|θH/Ns|が可変閾値より大きな領域)においては、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、ヨーダンピングゲインa22が大きい場合には、上述の(25)式に示す、すべり角変化値βf_cが大きく演算され、逆に、ヨーダンピングゲインa22が小さい場合には、すべり角変化値βf_cが小さく演算される。そして、このすべり角変化値βf_cを基に、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定することになる。これにより、ヨーダンピングゲインa22が大きい場合には、通常のドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfの特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、ヨーダンピングゲインa22が小さい場合には、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量を小さくして、ドライバのハンドル操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
前輪実舵角設定部80eは、ハンドル角センサ210からハンドル角θHが入力される。そして、このハンドル角θHを基に、マップ設定部80dで設定されているドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップを参照して、前輪実舵角δfを求め、転舵モータ95を駆動させる。
このように本発明の実施の第10形態によれば、ヨーダンピングゲインa22に基づいて2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定し、ドライバ操舵角(θH/Ns)が、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域においては、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。
このため、本発明の実施の第10形態によっても、前述の第1形態と同様、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域で、前輪実舵角δfによる平面力の合力が、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第10形態では、ハンドル角センサ210がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202、車速センサ203、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rr、ヨーレートセンサ205、車体すべり角演算部80a、前輪実舵角設定部80eが運転状態検出手段として、前輪実舵角設定部80eが制御量設定手段として、すべり角変化値演算部100a、可変閾値演算部80cが可変閾値設定手段として、マップ設定部80dが制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第10形態では、ドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図21及び図22は本発明の実施の第11形態を示し、図21は操舵制御装置の機能ブロック図、図22はすべり角変化値の説明図である。尚、本発明の実施の第11形態は、前記第3形態を、スロットル弁制御装置ではなく操舵制御装置に対して本発明を適用したもので、具体的には、前記第9形態におけるすべり角変化値の演算を変更して構成したもので、前記第9形態と同様の構成部分には同じ符号を記し、説明は省略する。
すなわち、図21において、符号110は操舵制御装置を示し、この操舵制御装置110には、ハンドル角センサ210と、路面μ推定装置202と、車速センサ203と、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrと、ヨーレートセンサ205とが接続されており、ドライバにより入力されるハンドル角に応じた前輪実舵角の信号が、ステアバイワイヤ方式による電動パワーステアリング装置の操舵機構81に対して出力されるように構成されている。尚、操舵機構81以下の構成については、前記第9形態と同様であるので説明は省略する。
操舵制御装置110は、車体すべり角演算部80a、すべり角変化値演算部110a、可変閾値演算部80c、マップ設定部80d、前輪実舵角設定部80eから主要に構成されている。
すべり角変化値演算部110aは、路面μ推定装置202から路面μが、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrから各作用力Ffl_x、Ffl_y、Ffl_z,Ffr_x、Ffr_y、Ffr_z,Frl_x、Frl_y、Frl_z,Frr_x、Frr_y、Frr_zが入力される。
そして、例えば、以下の(27)式により、少なくとも車両運動モデルにおいて車両のヨー運動の前輪実舵角に対する応答性に影響するゲインである操舵ゲインb2に応じて可変されるすべり角変化値βf_cを演算する。
βf_c=((2・(μ2・Ff_z2−Ff_x2)1/2)/kf)・(1−r)…(27)
すなわち、この可変されるすべり角変化値βf_cは、図22に示す、操舵ゲインb2と前輪すべり角の絶対値|βf|に示す関係において、実線で示される関数は、以下の(28)式で与えられる。
b2=((2・lf)/Iz)
・(kf−(kf2/(2・(μ2・Ff_z2−Ff_x2)1/2))・|βf|)
…(28)
この(28)式において、b2=r・(2・lf・kf)/Izとおき、上述の(27)式で表される、すべり角変化値βf_cを演算するのである。
こうして、すべり角変化値演算部110aで演算されたすべり角変化値βf_cは、可変閾値演算部80cに出力される。
そして、可変閾値演算部80cは、前述の第9形態で説明したように、車速V、ヨーレート(dψ/dt)、車体すべり角β、及び、すべり角変化値βf_cを基に、(23)、(24)式により、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを演算し、マップ設定部80dは、例えば、図17に示すように、ドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップにおいて、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定する。これにより、ドライバ操舵角(θH/Ns)が、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域(換言すれば、ドライバ操舵角の絶対値|θH/Ns|が可変閾値より大きな領域)においては、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、操舵ゲインb2が大きい場合には、上述の(27)式に示す、すべり角変化値βf_cが大きく演算され、逆に、操舵ゲインb2が小さい場合には、すべり角変化値βf_cが小さく演算される。そして、このすべり角変化値βf_cを基に、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定することになる。これにより、操舵ゲインb2が大きい場合には、通常のドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfの特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、操舵ゲインb2が小さい場合には、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量を小さくして、ドライバのハンドル操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
前輪実舵角設定部80eは、ハンドル角センサ210からハンドル角θHが入力される。そして、このハンドル角θHを基に、マップ設定部80dで設定されているドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップを参照して、前輪実舵角δfを求め、転舵モータ95を駆動させる。
このように本発明の実施の第11形態によれば、操舵ゲインb2に基づいて2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定し、ドライバ操舵角(θH/Ns)が、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域においては、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。
このため、本発明の実施の第11形態によっても、前述の第1形態と同様、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域で、前輪実舵角δfによる平面力の合力が、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第11形態では、ハンドル角センサ210がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202、車速センサ203、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rr、ヨーレートセンサ205、車体すべり角演算部80a、前輪実舵角設定部80eが運転状態検出手段として、前輪実舵角設定部80eが制御量設定手段として、すべり角変化値演算部110a、可変閾値演算部80cが可変閾値設定手段として、マップ設定部80dが制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第11形態では、ドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。
次に、図23は本発明の実施の第12形態による、操舵制御装置の機能ブロック図である。尚、本発明の実施の第12形態は、尚、本発明の実施の第12形態は、前記第4形態を、スロットル弁制御装置ではなく操舵制御装置に対して本発明を適用したもので、具体的には、前記第9形態におけるすべり角変化値の演算を変更して構成したもので、前記第4,第9形態と同様の構成部分には同じ符号を記し、説明は省略する。
すなわち、図23において、符号120は操舵制御装置を示し、この操舵制御装置120には、ハンドル角センサ210と、路面μ推定装置202と、車速センサ203と、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rrと、ヨーレートセンサ205と、横加速度センサ206と、ドライバ操舵力センサ207と、電動パワーステアリングモータ208とが接続されており、ドライバにより入力されるハンドル角に応じた前輪実舵角の信号が、ステアバイワイヤ方式による電動パワーステアリング装置の操舵機構81に対して出力されるように構成されている。尚、操舵機構81以下の構成については、前記第9形態と同様であるので説明は省略する。
操舵制御装置120は、基準ラック推力演算部30a、推定ラック推力演算部30b、ラック推力比演算部30c、車体すべり角演算部80a、すべり角変化値演算部120a、可変閾値演算部80c、マップ設定部80d、前輪実舵角設定部80eから主要に構成されている。
すべり角変化値演算部120aは、ラック推力比演算部30cからラック推力比Fratが入力される。
そして、例えば、以下の(29)式により、少なくともラック推力比Fratに応じて可変されるすべり角変化値βf_cを演算する。
βf_c=Frat・(1−r) …(29)
こうして、すべり角変化値演算部120aで演算されたすべり角変化値βf_cは、可変閾値演算部80cに出力される。
そして、可変閾値演算部80cは、前述の第9形態で説明したように、車速V、ヨーレート(dψ/dt)、車体すべり角β、及び、すべり角変化値βf_cを基に、(23)、(24)式により、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを演算し、マップ設定部80dは、例えば、図17に示すように、ドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップにおいて、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定する。これにより、ドライバ操舵角(θH/Ns)が、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域(換言すれば、ドライバ操舵角の絶対値|θH/Ns|が可変閾値より大きな領域)においては、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量が、通常の変化量より低下させられて(例えば、通常の70%の値に)設定される。
すなわち、ラック推力比Fratが大きい場合には、上述の(29)式に示す、すべり角変化値βf_cが大きく演算され、逆に、ラック推力比Fratが小さい場合には、すべり角変化値βf_cが小さく演算される。そして、このすべり角変化値βf_cを基に、2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定することになる。これにより、ラック推力比Fratが大きい場合には、通常のドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfの特性であっても十分安定性を確保して走行できるが、ラック推力比Fratが小さい場合には、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量を小さくして、ドライバのハンドル操作に対して十分な安定性を確保できるような特性へと変化させるのである。
前輪実舵角設定部80eは、ハンドル角センサ210からハンドル角θHが入力される。そして、このハンドル角θHを基に、マップ設定部80dで設定されているドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップを参照して、前輪実舵角δfを求め、転舵モータ95を駆動させる。
このように本発明の実施の第12形態によれば、ラック推力比Fratに基づいて2つの可変閾値δc_upper,δc_lowerを設定し、ドライバ操舵角(θH/Ns)が、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域においては、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対する前輪実舵角δfの変化量が、通常の変化量より低下させられて設定される。
このため、本発明の実施の第12形態によっても、前述の第1形態と同様、可変閾値δc_upperより高い領域、及び、可変閾値δc_lowerより低い領域で、前輪実舵角δfによる平面力の合力が、ドライバ操舵角(θH/Ns)に対して緩やかに変化するように制御されるため、車輪のグリップ限界における制御特性の変化を穏やかなものとし、ドライバが違和感無く、車両を適切に制御して安定性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の実施の第12形態では、ハンドル角センサ210がドライバ操作量検出手段として、路面μ推定装置202、車速センサ203、タイヤ作用力センサ204fl,204fr,204rl,204rr、ヨーレートセンサ205、横加速度センサ206、ドライバ操舵力センサ207、電動パワーステアリングモータ208、基準ラック推力演算部30a、推定ラック推力演算部30b、ラック推力比演算部30c、車体すべり角演算部80a、前輪実舵角設定部80eが運転状態検出手段として、前輪実舵角設定部80eが制御量設定手段として、すべり角変化値演算部120a、可変閾値演算部80cが可変閾値設定手段として、マップ設定部80dが制御特性変更手段としての機能を有して構成されている。
尚、本実施の第12形態では、ドライバ操舵角(θH/Ns)−前輪実舵角δfのマップを参照して制御するようになっているが、マップではなく計算式により制御をするものであっても良い。