JP4958914B2 - 危険検知器をテストするためのテスト装置 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、危険検知器テスト装置に関し、具体的には、こうした検知器のための刺激を生成する危険検知器テスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
危険検知システムは、様々なセンサを利用して危険を検知することができ、そうしたセンサとしては、煙センサ、熱センサ、ガスセンサなどがある。種類の異なる危険検知器のテストを実行する装置が、既に世界中で入手可能であり、よく知られたブランドとして、「SOLO」テスト装置がある。過去においては、危険センサは1つ1つ個別の危険検知器の中に格納されることが多く、こうした検知器のテストを実施するテスト装置は主に、単一のテスト用刺激を用いて対象のセンサを起動させていた(例えば、熱検知器をテストするテスト装置では熱源を用いる)。テスト用刺激(上の例では熱)は、危険のない形で危険状態を模倣するように設計されており、それによって、検知器および/またはシステムが正しく動作するかどうかを、実際の危険(例:本物の火事)を再現する危険を冒すことなしに、確認することができる。
【0003】
熱検知器(または熱センサが組み込まれた火災検知器)の場合、一般的なテスト方法には、電気発熱体から熱い空気を噴出させる手順が含まれる。熱い空気の流れは通常、熱検知器に向けられる(または、熱センサ自体に向けられる場合もある)。その結果、温度が上昇し、そして、センサ、検知器、さらには火災検知システムの因果関係(cause and effect)プログラム全体についてチェックが行われる。
【0004】
煙検知器(または煙センサが組み込まれた火災検知器)の場合、本物の煙をシミュレートしたエアゾール「煙」が一般的なテスト媒体である。これは、エアゾール缶から検知器の中へと展開することができ、特別な散布用器具がしばしば用いられる。そうして、煙検知器の動作と火災検知システム内でのその役割とがチェックされる。ここで、テスト用刺激は外部(周囲の空気)から危険検知器の中へ導入して、センサへの入口通路がいかなる形でも遮られないことが保証されるようにするべきである(遮られれば、危険に正しく反応する検知器の能力が阻害される)。
【0005】
上述した形での火災検知器の機能テストは、危険検知器の機能のテストとして優れたものであり、また必要なものとして認識され重要視されている。これは広く受け入れられており、現在では、世界の様々な地域で火災検知器の保守管理に関する国際的なテスト基準および規則(例:アメリカ合衆国におけるNFPA 72、英国におけるBS5839 Pt1など)の中に含められている。
【0006】
対照的に、別種の、検知器外部からセンサに刺激を与えるという手順を含まないテスト方法は、広くは認められておらず、それどころか、いくつかのテスト基準では、積極的な禁止の対象となっている。こうした方法には、検知器本体の近くに保持された磁石を用い、リードスイッチを内部に封じ込めてアラーム状態を提示する電気回路を完成させる、というテスト方法や、検知器の機能を内部の電子的動作のみによってテストする方法が含まれるが、それはしばしば、検知器が接続された制御・指示用装置からの遠隔処理によって実行される。これらの方法は、検知装置の全ての動作を満足のできる形でテストするのに充分なものとは考えられていない。例えば、危険検知器が保護ダストカバーを有し、当該カバーが検知器を覆う形となる場合がありうるが、その場合、実際の危険によって生じる生成物はカバーに妨げられてセンサに入れない。にもかかわらず、電気的には、検知器は充分な機能を有し、警告を出すことができるものと見なされるであろう。こうした状況では、「電子的にのみ行われる」テストは明らかに不適当である。なぜなら、こうした場合、テスト自体を明確にパスしていても、実際の危険は検知されないと予想されるからである。
【0007】
一酸化炭素検知器(または一酸化炭素センサが組み込まれた検知器)の場合、一般的なテスト方法は、テストを受ける検知器に少量の一酸化炭素を導入するというものである。検知器内部のCOセンサをテストする別の方法として、水素などの別の気体を用いるものが知られているが、これらに対するセンサの相関感度は様々に異なることが知られており、これは、本来のテスト(COセンサが、検知を意図していた現実の気体に対して反応するかどうか確認するためのテスト)が行われていないことを示す。さらに、非常に燃えやすい気体(水素など)を活動中の電気回路のごく近くに置くことは、勧められることではない。
【0008】
2つ以上のセンサを内部に有し、それによって複数の手段で危険を検知する、という危険検知器が増えている。複数のセンサから収集された情報により、危険検知において、効率を高めることや反応速度を上げることが可能となる。これにより、生命および財産をより良い形で保護することができ、不必要な警告を減らすこともできる。
火災検知器の場合、例えば、煙センサ、熱センサそしてガスセンサを組み合わせて、単一の検知器の中に一緒に収めることができる。こうした構成では、危険の存在に関する決定をより効果的に(そして、好ましい点として、より早く)行うことができる。そして、脅威のない危険刺激に対して不必要な警告信号を発する事態を回避できる。例えば、火災検知の場合、煙の存在は単独では、実際に火災が起こっていることを示すとは限らない(例:タバコの煙が存在する場合など、警告を出すほど大きな火災の脅威はない)。しかし、それに加えて、急な温度上昇および/または燃焼ガス(すなわち、燃焼の結果として生じるガス)のレベルの上昇という現象が存在すれば、それは、実際に火災が起きている可能性がはるかに高いことを示す。ガスおよび/または熱は、大量の煙が広がるより前に存在する場合すらあるので、ガスおよび/または熱を併せて感知すれば、例えば煙だけしか感知できない検知器に比べて、より早く警報を出すことが可能であろう。
【0009】
複数のセンサからの出力を適正に分析すれば、どのセンサが起動したかを判断し、警告を出すにあたってより多くの情報に基づいた決定をすることで、この分析を、誤った(または望まない)警告を減らすのに役立てることができる。例えば、誤警報は、英国の火災関連業界にとっては主要な関心事であり、そのため、複数センサ型の火災検知器の設置を増やすことで誤警報を減らそうとする動きが広がっている。複数センサからの出力は、より高度な応答をなす形に組み合わせることができる。また、ソフトウェアアルゴリズムを、検知器自体の内部またはシステムの制御・指示装置の内部で、警告信号を出すべきか否か、および出すタイミングを決定するために用いることができる。
【0010】
複数センサ検知器内にあるセンサを、特に日中または夜間の特定時間帯において、個々に無能力化または部分的無能力化(感度低下)することで、誤警告の危険を小さくすることもできる。例えば、煙/熱の組み合わせの検知器では、建物に人がいる時間帯、煙センサを無能力化すれば(または感度を下げれば)、タバコの煙などによる誤警報は避けられるであろう。ただし、建物に人がいない時、例えば週末や夜間には、熱センサと煙センサとの両方を最も高い感度で完全に起動することにより、より高い水準の防火を可能とすることができる。この点は、知的アルゴリズムの利用で更に強化することができる。そして、最終結果として、誤警報を増やす危険なしに、可能な限り早いタイミングで火災を検知することができる。
【0011】
複数センサ検知器において、多くの高度操作機能があり、それらの組み合わせが可能な場合、機能や組み合わせのテストは「やるべきこと」である。安全、清潔で環境にやさしい技術を使用することが最重要であり、そのため、テストを行う際の条件はより厳しい。本物の危険刺激を生成することは、安全かつ清潔な形での実施の助けにならず、また、危険検知器自体の将来の保全性を害する潜在的な危険があり、さらには、テスト媒体を扱うユーザにまで危険をもたらすかもしれない。従って、シミュレーションされた危険刺激の使用が、最も適切なテスト手段とみなされている。
【0012】
センサが複数の場合、単一の代替刺激(検知可能な危険の徴候が1つだけ存在する場合をシミュレーションすることを意図したもの)では、アラーム信号を発するか否かを検知器が決定するのに充分でないこともある。そのため、煙または熱の検知器に用いられている従来のテスト技法は、複数センサの検知器を完全にテストするには不充分な場合もありうる。これには、煙検知器のテストのために、エアゾール缶から展開される人工またはシミュレーションされた煙エアゾールを使用する、という技法が含まれる。
【0013】
複数センサの危険検知器をテストするには、特別なテストモードでそれを動作させることも可能である。その場合、検知器は、全てのセンサを、通常の組み合わせの形で動作させるのではなく、各センサを別々に反応させるようなやり方で動作させる。こうしたテストモードでは、検知器内の個々のセンサについて、他のセンサとは切り離して形では、その性能を適正に評価することはできるかもしれない。このモードでテストの間、個々のセンサの起動は、検知器自体が有するインジケータ(例:LED)で見せることが可能であろう。あるいは、検知器が接続された制御および提示用の装置において示すことにしてもよい。こうしたテストモードでは、テストの時点で使用するテスト用刺激を1つだけにすることが可能である。しかし、こうした性質のテストモードが利用できない、または望ましくない場合も考えられ、同時に複数の刺激を使用することが必要になることもあるだろう。その時は、テスト時、検知器を起動させるのに、複数の刺激を組み合せた形で同時に検知器に作用させることが必要となる。通常の検出アルゴリズムを(検知器自体の内部で、または、検知器が接続された制御および提示用の装置の内部で)走らせながら、こうした検知器をテストする場合、そのテストが意味するのは、刺激が組合せの形で実際の危険に関する基準を満たす時に検知器が警告信号を示す、ということだけである。しかし、センサの総数の一部しか起動しなくても、この基準を満たすことは可能かもしれず、そうすると、ある特定のセンサが反応しなかったにも関わらずアラーム状態に達してしまう、という事態も生じうるので、完全なテストと見なすことはできない。これでは、その特定のセンサが実際には働いていないという可能性が残るからである。一方、他のアルゴリズムとして、アラーム信号を発するのに、複数センサ検知器内の全てのセンサからの応答を必要とする、というものもある。しかし、保守業務において、検知システムの動作の仕方の厳密な設定は、簡単には決定できないため、保守業務の好ましい方法としては、上述のテストモードを使用することとなるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
複数センサ検知器の内部の個々のセンサについては、その固有の機能を独立してテストすることが重要であり、そうすれば、検知器がどんなモードで動作するように構成されている場合も(それらのセンサの一部を利用する場合も、全てを利用する場合も)、正しく動作するものとして信頼できるであろう。例えば、煙と熱とを組み合わせた検知器において、煙センサだけの機能をテストするのでは、ほとんど無意味である。さらに、その検知器が、熱センサを重視した(または、熱センサのみに依存する)モードで構成されていた場合は、その動作の正しさが適正に確認されたことにはならないだろう。
【0015】
複数のテスト媒体を検知器に導入して、その検知器内の全てのセンサに対する機能テストを実行する、というテストの方がはるかに優れているだろう。そのやり方ならば、テストの後、実生活で危険からの保護が必要な状況において、検知器が利用するセンサ(またはセンサの組合せ)は、危険に正しく反応するものとして信頼できる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る危険検知器をテストするテスト装置は、検知器に与える第1の刺激を生成するように構成された第1の電動式刺激生成手段と、検知器に与える第2の刺激を生成するように構成された第2の電動式刺激生成手段と、前記第1および第2の電動式刺激生成手段のそれぞれによる前記各刺激の生成を、個別に、あるいは、連続的もしくは同時に、制御するように構成された制御手段とを備えると共に、取り外し可能なカートリッジを少なくとも1つ有し、当該カートリッジ内部には、前記第1と第2の刺激のうち、少なくとも一方の刺激の生成に用いられる材料が格納されていることを特徴とする。
【0017】
本装置は、高度にシミュレーションされた刺激生成を用い、複数センサ検知器の複数刺激テストに関する要求と単一センサ検知器の複数刺激テストに関する要求と結合するものであり、これ以降の部分で更に詳細に説明する。
本装置は、複数の刺激生成器のうちの2つ以上を組み合わせて有する形に構成することができる。例えば、本装置は、危険検知器の熱用要素をテストするための熱源と、煙センサをテストするための煙生成器と、そして、一酸化炭素センサをテストするためのCO生成器とを有する。この場合、単一センサの危険検知器(例:煙検知器または熱検知器)と複数センサの検知器(例:煙、熱、一酸化炭素センサの組合せ)との両方のテストに利用できる。
【0018】
単一センサの検知器のテストに使用する場合、使用するテストツールを1つだけにできる、という効果がある。例えば、ユーザは複数のテストツールを携帯する必要がなく、煙用、熱用の両方の種類に順番に使う場合も、煙検知器用テストツールと熱検知器用テストツールとを交換する作業は必要ない。それどころか、ユーザは、1つのツールを使用して対象の検知器に必要な刺激を与えるだけである。これによって、テストおよび保守作業の時間が大幅に節約され、それは、テストを連続して実行する必要があることの多い単一センサの危険検知器の場合ですら、そうである。また、ユーザが携帯しなければならない装備が1つだけとなる点でも、はるかに便利になる。
【0019】
熱、煙、またはCOのセンサの何らかの組合せを含む複数センサの危険検知器のテストに本装置を使用すれば、それにより、ツールを1つだけ用いて検知器内の各センサを個々にテストすることが実際に可能となり、それによって、検知器の全動作が迅速かつ能率的に確認される。テスト中に検知器の複数のセンサを同時に起動することが必要である場合、こうした検知器を複数のツールを使ってテストすることは、非常に厄介で時間がかかるであろうし、不可能でさえあるかもしれない。本発明であれば、同時に複数の刺激を展開することさえ論理的には可能であり、それによって、複数センサの危険検知器の内部の個々のセンサを適正にテストするだけでなく、可能な限り短い時間でそれを行うことができる。(注:これには、危険検知器をそうしたテストが可能な形に構成できることが必要となる。)
好ましい構成として、本装置は、危険検知器を収容するように作られた開口部を有する。開口部は、好ましい構成としてテスタの頂上部に形成されており、検知器に向けて装置を持ち上げると、囲む形で検知器にはまり、テストを開始できる状態になる。
【0020】
本装置は、好ましい構成として、生成された刺激を装置からテスト対象の検知器まで移動させる手段を備えている。具体的には、本装置は、刺激生成手段からテスト対象の検知器へと刺激を向かわせるように作られたダクトを有する。本装置はまた、刺激の移動を助けるために、ファンまたは送風機を利用する場合もある。
本装置は、好ましい構成として、装置の動作を制御するように作られた制御手段と個別刺激生成手段とを有する。制御装置は、刺激の生成を制御するPICマイクロコントローラとするのが好ましい。
【0021】
刺激生成手段は、テスト対象の検知器に適した形で刺激を生成するように制御することができる。具体的には、刺激生成手段は、制御によって、異なる刺激を異なる量で、組合せまたは単独で発生させることができる。また、テスタの必要に応じた制御によって、刺激を順番にまたは同時に発生させることができる。
好ましい構成として、本発明は、いくつかの最新の危険検知器をテストするために、刺激生成のための高度化した方法を用いる。こうした検知器の一部では、洗練度の点から、高度な技術が必要とされる。
【0022】
こうした検知器の多くは、誤警報の発生を最小にするために、各種の本物の刺激と「間違った」刺激とを区別することが可能なレベルまで高度化されている。例えば、火災検知器の中には、煙と蒸気とを区別できるものがあり、これは、蒸気が当たり前に存在する場所(例:シャワー室または浴室、台所など)に設置された煙検知器から出る誤警報を減らそうとするものである。
【0023】
本ツールは、本来の設置場所(例:公共建築物の天井)にある危険検知器をそのままテストすることを意図している。こうした検知器にはツールが届きにくい。本装置は、好ましい構成として、棒に取り付けることでこうした検知器まで届くように設計されている。この場合は、ポールの内部にバッテリ電源を配置してもよい。そうすれば、地面から何メートルも離れたポールの最上部で動作している間も、テスト装置は電力を利用できる。あるいは、ツールそのものを天井に配置してもよい。例えば、ツールを検知器の隣に置きこととし、発生した刺激を検知器付近まで運ぶ手段をツールに設ける、という形にしてもよい。それ以外に考えられるのは、テストツールを検知器自体と同じユニットの中に配置するということである。いずれの場合も、テスタツールは、天井にある接続を介して電力を受け止ればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
先ず、図1を参照する。同図が示すのは、本発明の第1の実施の形態によるテストツールの概略図である。言うまでもなく、本図はツールおよびその各種構成要素の例を示すものであって、ツールの構造やその構成要素の作りに限定を加えるものではない。テストツール1は、開口部3を有した外側ハウジング2を有する。開口部は、全体的にはカップ形状であり、検知器/センサ4を収容する形に作られている。ハウジングおよび開口部の実際の寸法と構成とは、ツールの使用しようとする検知器/センサの種類によって決まるであろう。複数の刺激生成ユニット5、6、7がツール内部に置かれている。ここでは、ツールは熱生成器5、煙生成器6、そして一酸化炭素生成器7を備えている。
【0025】
刺激生成ユニット5、6、7と開口部3との間にはダクト8が設けられている。ツールは、ファンおよび/または送風機9を利用して、生成された刺激(例:煙)をテスト対象の検知器/センサ4の方向へ移動させる。使用時、ツールは検知器を覆う形に置かれ、その結果、検知器はテストツールの頂上部にある開口部の中に挿入された状態となる。ツールは、通常は手持ちで運ばれ、バッテリ10から電力供給を受ける。別の形として、バッテリを、外部電源への電気接続10に換えることもできる。また、例えば、ポールの端部に設置するようにツールを作ることもでき、そうすれば、高い天井にある検知器にツールを被せることができる。その場合、バッテリはポールの中に配置すればよいし、電気接続はポールのうちツールが設置される場所に形成すればよい。
【0026】
ツールはまた、ダイアフラム26を備えているが、これは可撓性の膜の形をしており、開口部3のエッジを囲む形に置かれている。膜は、テスト対象の検知器/センサを受け止めて、開口部と検知器/センサとの間のエアギャップを小さくする(または、なくす)ように作られている。このようにすれば、漏れる刺激の量は減り、テストをより効果的に実施することができる。さらに、外部から入る風がツールの動作に与える影響も限定される。これは、膜が(少なくとも部分的に)カップ内の空気を風から保護することによる。
【0027】
重要なのは、刺激生成手段5、6、7から開口部へ、刺激が効果的かつ現実に即した形で流れることが確実になるように、ダクトの作りを設計することである。例えば、熱センサのテストの場合は、(加熱された)空気の流れが検知器内の熱センサに直接的に向けられるようにすることで、検知器の他の部品および/または検知器周囲の空気が必ずしも加熱されないようにし、センサの温度を上げるのに要する電力量を減らす、ということが重要である。ダクト構造は、検知器の大多数について、刺激(特に熱)を運ぶ空気流が確実に、検知器のハウジングに入り、センサに到達する、という設計になっている。加えて、現実の危険によって生じる刺激は通常、横方向に流れて検知器を横切る。ダクト構造の構成にあたっては、この特性を考慮する。
【0028】
具体的には、好適な実施の形態において、ツールは、テスト対象の検知器/センサに下からかぶせるように設計される。しかし、上述したように、現実の危険な状況では、その危険から生じた刺激は、天井に沿って流れて検知器/センサには側面から入る、という可能性が高い。従って、ダクトは、テスト対象の検知器/センサに対して刺激を側面から導入する、という作りにするのが好ましい。具体的には、ダクトおよびファンが、ツール内で発生させられた刺激を運ぶ空気の流れを決めるように作られており、その流れは、刺激が横方向に流れ、検知器/センサが内部に配置された開口部3を横切る、というものである。開口部3を囲む壁については、透明な素材で作り、それによってテスト中に検知器/センサが見えるようにすることもできる。これは、検知器/センサに設置されたLEDに警告状態を示す、という検知器/センサの場合に特に有用であろう。
【0029】
図2は本発明によるマルチテスタツールの概略図である。同図においては、ダクトの作りを特に強調してある。図1、図2に共通の特徴部は、同じ参照番号を付けてあるのでそれと分かる。図1に示した各種の刺激生成手段および他の構成要素については、ハウジング29の下部に位置している。図示したツールは、テスト対象の検知器/センサ4を囲むように作られたハウジング2を有している。刺激と空気流とは、カップの一方の側面でダクト内を上に送られた後、横方向に流れて開口部を横切る。ツールの径を最低限に抑え、それによって狭いスペースにもツールで問題なくアクセスできることを確実にするために、刺激および気流を発生させる手段はハウジング29の下部に置かれている。ファンによって効果的に空気流を提供するためには、ハウジングに吸気口28を設ける必要があるかもしれない。開口部は排気ポート27を有し、当該ポートによって、空気流をハウジングから出すことができる。対応関係にある吸気口28と排気ポート27とは、図2に示してある。
【0030】
テストツールはダクト8を備えており、当該ダクトは、開口部の壁に平行な部分8aと、穴を有した部分8bとを有する。部分8bの穴は、開口部3の壁の面に対しておおよそ垂直な方向、つまりは開口部を横切る方向に、空気流および刺激を向けるように作られている。設計によっては、ダクトにノズルその他の調整用構成を設けることもでき、そうすれば空気流の方向決めを厳密に行うことができる。
【0031】
いくつかの種類の検知器の起動能力については、横方向の空気の流れが確実に、検知器のセンサの「スイートスポット」を目指し、ここに集中するようにすることで、更に強化することができる。こうした技術によれば、刺激は特に直接的に感知要素に向けられるため、必要な刺激の量を減らすことができる。ただし、これを実現するには、検知器の「スイートスポット」の位置が分かっていなければならない。
【0032】
熱検知器の場合、テスト対象の検知器の感知要素の位置はしばしば、検知器ケースのうち天井から見て最も低い方の端により近くなる。天井からこの感知要素までの距離は、実際には、大きな幅があるであろう(約20〜80mm)。しかし、検知器の最も低い点から感知要素までの距離は、比較的一定である(約0〜20mm)。こうした幾何学形状を用いることの効果は、空気流の向きを定め、集中させる際に表れる。開口部3の内部では、スペーサ30が用いられており、当該スペーサは、開口部3が検知器を覆う位置に置かれた際、検知器4の下側に接する状態となる。これにが、ダクト8からの空気流の方向を定める際の規準となる。検知器の下部がこのスペーサ30に載る状態となるように、そして気流が当該支持部のすぐ上の高さを、カップを横切る形で流れるようにすれば、熱検知器の感知要素は、空気のこうした移動線にくるように配置されることになる。そうすると、感知要素を目指す形になるという認識を持って、熱検知器に必要な刺激を空中に供給することができる。スペーサ30のサイズについては、(調整、あるいは、異なるサイズの代替品との交換というやり方で)可変とすることもでき、そうすれば、スタイルや形状/サイズの異なる各種検知器を効率的にテストすることができるであろう。
【0033】
ダクトの使用によって、空気の流れを方向決めしたり絞ったりすることもできるため、必要な加熱空気の量を減らすことでき、その結果、ツール内のバッテリの寿命は更に延びる。テスト対象の検知器に対して必要とされる温度までカップの周囲の空気を加熱する必要はない。必要な温度まで加熱するのは、検知器の感知要素をだけでよい。これにより、大量のエネルギーが節約できる。空気やその空気に接している他の周辺部材(例:検知器のケース、ツールのケース)をあまり加熱しないでよいからである。
【0034】
上記の熱検知器のテストにあてはまるのと同じ原理が、他の種類の検知器にもあてはまる。刺激の種類と、実際の感知要素に対して最も効率的な形で刺激を確実に供給する手法に関する詳細とは、異なるかもしれない。火災の検知に用いられる他の検知器は、煙検知器とガス検知器とを有する。これらの例で必要な刺激は、検知器が検知することを目的とする火事から発散するものと類似したものとして、検知器に認識されるものでなければならない。ただ、空気が横方向に流れてカップを横切る点は同様であろう。そうした検知器も、側面の通風孔を通して空気を受け入れるように設計されているからである。
【0035】
ここで、再び図1を参照する。ツールは制御手段11を備えており、当該手段はPICマイクロコントローラとすることができる。制御手段は、予め格納されていたアルゴリズムを使用する、あるいは手動指示に応じる形で、ツールの動作を制御する。ユーザは、LCD12とプッシュボタン式制御パネル13を介して、ツールの各種機能にアクセスすることができる。いくつかの機能については、無線/赤外線遠隔操作によってアクセスすることもでき、そうすることで、ツールを長いポールに付けて、地面から何メートルも離れた所にある検知器にアクセスしている場合でも、ユーザはテスト手順に対する制御を行える。
【0036】
例えば、各刺激生成ユニット5、6、7は、LCD/プッシュボタンのインタフェースを介して適当なユニットを選択するというやり方で、個別に起動することもできる。制御手段11には、各ユニット用の制御アルゴリズムが予め格納されている。例えば、ユーザが特に煙テストを選択した場合には、制御手段11は、人工煙の発生量、煙生成中および煙生成後におけるファンの送風時間長および送風速度を制御することを求められる。
【0037】
さらに、テスト対象の検知器/センサに刺激を送り届ける方法を変えるという手法で、ツールが異なる複数の種類の危険状況をシミュレーションできれば、好ましいであろう。そうするには、一気に噴出させる形、徐々に小出しにする形のいずれでも刺激を提供できるように、制御手段11を構成する。こうした機能は、ユーザ指示に応じる形で提供してもよいし、予めプログラムされたアルゴリズムの一部として提供してもよい。
【0038】
さらにツールに求められるのは、同時に、または、特定の予めプログラムされた順序で刺激を生成できるようにする、ということである。そのためには、制御手段11を、複数の刺激を何らかの組合せで提供する形に、または、複数の刺激を順番に提供する形にプログラムすればよい。例えば、いくつかのテスト状況では、最初に温度上昇が生じた後、徐々に煙が増加していく、という形になるであろう。ツールをプログラムすることで、こうした危険状況のシミュレーションを実現することができる。
【0039】
テスト基準については、ユーザが手動で入力する、制御手段11に予めプログラムしておく、あるいは、遠隔操作で手動入力する、そのいずれも可能である。また、別の形として、テスト対象の検知器によって提供されるアルゴリズムに従って制御手段11が動作することにしてもよい。
高度化した刺激生成方法を採用すれば、検知器は、安全で清潔、効果的で、そして経済的に起動することができる。例えば、人工煙刺激の特性は、それが煙でない場合ですら、「スチーム」として拒絶されることがない、というものである。人工煙テスト媒体は、テストツール内で、PICマイクロコントローラによる電子制御の下で作り出される。本媒体は燃焼なしに形成され、人間、環境、検知器に対して無害であり、にもかかわらず、ツールがこれを検知器に吹き込むと、検知器は直ちに起動する。このやり方では、精巧なこれら煙検知器は、実際の煙(検知器内に永続的な残余物を残すおそれのある汚染物質を含むもの)を用いなくので、安全にテストできるであろう。
【0040】
人工煙は、電動式の人工煙生成器で発生させればよい。こうした生成器は、気化可能液体源と管とを有し、管の一方の端は液体源に浸されており、もう一方の端には電気ヒータが設けられている。ヒータは反対側の端にある液体を気化して人工煙を発生させる。生成器の設計は、テスト用人工煙のサンプルがテスト対象の検知器の近傍で発せられる、というものになっている。
【0041】
図3は、本発明によるテストツールの概略図であり、同図においては、特に人工煙生成器6を強調してある。図1、2と共通の特徴部については、同じ参照番号で示してある。テスト対象の検知器は参照番号4で示してある。煙検知器テスタは、可撓性膜26を備えたカップ形状ハウジング2を有し、前記膜には、検知器4を収容することのできるサイズと形状とを有した開口部がある。膜の可撓性は、様々な検知器サンプルを通すことのできるのに充分なものである。ハウジング2の内部には人工煙生成器が設けられており、生成器はその全体を参照番号6で示してある。図に示すように、生成器は、カップ形状ハウジング2の下部にあるチャンバ31の中に収納されており、ダクト8によってハウジング2の上部と通じている。ダクト8は、人工煙を直接にテスト対象の検知器4に向けるために、水平方向出口8bを有している。これは、火災時、天井や壁を伝わって漂った後に天井または壁に設置された検知器に入る煙の影響をシミュレーションするものである。望むのであれば、スペーサ30(図示せず)を設けることで、検知器に対する出口14の位置を正確に決めることもできる。
【0042】
人工煙生成器は、気密性の折り畳み袋33に入った気化可能流体を格納するように作られた、貯蔵器ハウジング32(図1では番号14)を有する。使用する流体は、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、そして水の一部または全てから成る混合物とするのが好ましい。更に、適切な煙特性を与えるために、他の成分を加えることにしてもよい。貯蔵器ハウジング32には空気用の通気孔34がある。この孔により、バッグ33内の流体を消費するのに合わせて、バッグを畳んでいくことができる。流体は管35によって煙生成器6に供給される。管35は袋33の中まで下がっており、その全長の少なくとも一部においてポンプの作用を受ける(ポンプは蠕動ポンプ36(図1では番号20;下を参照)とするのが望ましい)。管は煙生成器6への供給を行い、生成器6は、好適な構成として、電気的に起動される発熱体を備えたガラス管37の形とする。
【0043】
管37はチャンバ31内に位置しており、これは、チャンバ31内の圧力を高めるファンまたは送風機9の作用を受ける。これによりチャンバ31内の人工煙は、ダクト8内へ移動させられ、それから必要な流速で出口8bから出て行く。使用時、気化可能な流体は、蠕動ポンプ36の作用を受け、管35を通って折り畳み袋33から発熱体38のある領域まで移動する。発熱体が電源に接続されると、発熱体は、発熱体の領域にあるガラス管37の中の流体を気化させる。それにより、人工煙(実際には、霧(fog)または靄(mist))が、チャンバ31の頂上部から発せられることになる。ファンまたは送風機9は、検知器4が即座に起動することを確実にするのに充分な速度で、人工煙をダクト8に吹き込み、それから出口8bに送るように作られている。
【0044】
チャンバ31からダクト8への煙の流れは、制御された形での開閉が可能なフラップ弁39によって調節することにしてもよい。本実施の形態では、フラップ弁の制御は、形状記憶合金(商品名はFlexinol)から作られた駆動ワイヤを利用することで実現される。これは、内部を電流が通ることで過熱されると、その長さ方向において相当量(通常5%)の縮みが生じる。この縮みによってフラップ弁は開く。弁は通常、スプリング(図示せず)によって、閉じた状態に保持されている。好ましい構成として、テスタはバッテリから電力を受ける。そして、バッテリについては、テスタ本体に隣接した位置に配置するのが最も適切であり、そうすることで、バッテリとテスタとの間での電圧低下が抑えられる。
【0045】
発熱体38、ファン9、ポンプ36そして弁駆動ワイヤへの電流の制御は、上述した制御手段を用いて実現される。制御手段は、発熱体およびポンプを制御することで、発生する煙の属性を管理するよう作られている。流体は、管37に注入される際には沸騰しており、その結果生じた蒸気はチャンバ31内に進み、そこで凝縮して霧を形成する。ファンは凝縮を助ける。流体の大きな滴や飛沫が、管37の頂上部から現れたり、チャンバ31の側壁上での凝縮から生じたりした場合、それらは、チャンバ31の内壁を降って底部まで落ちる。そして、好ましい構成として、そこから管41を通ってスポンジ40に送られる。スポンジ40は、便宜のために、貯蔵器ハウジング32の中に収納することができる。図示はしていないが、折り畳みバッグ33内の流体の供給分を使い切った際には、貯蔵器ハウジング32は交換することができる。さらに、貯蔵器ハウジング32内にスポンジ40が格納されていれば、スポンジも同時に交換されるため、スポンジがいっぱいに水を吸った状態になった際にそれを別途交換する必要はなくなる。また、管35を貯蔵器ハウジングの内部に収納していれば、流体供給分の交換と同時にそれも交換されるので、管の磨耗によるポンプ故障の可能性は小さくなる。
【0046】
上記の構成による効果は、人工煙を継続的に作り出せること、そして、実際に吐き出される人工煙の量が弁39およびファン9の動作によって制御されること、である。これは、本発明以前の構成で、作り出される煙の量が、生成器が瞬間的に発生させる煙の量に完全に依存していたのとは対照的である。また、別の形として、人工煙を必要に応じて発生させながら、望む場合には瞬時に吐き出させる、ということも可能であり、その場合、制御は発熱体38およびファン9の動作によって行われ、弁39は必要ない。
【0047】
人工煙を使っての危険検知器の起動に成功した後は、検知器またはアラームの信号をリセットできるように、検知器の内部から煙を排除する必要があるだろう。これは、本発明ではファン9を用いて行えば都合がよく、ダクト8を通して出口8bから吹き出す形で、きれいな空気を検知器の中に吹き込む。この時、煙生成の動作は止めておく。
ここからは、テストツールのCO生成器セクションについて、更に詳細に述べる。危険検知器内部の一酸化炭素センサを起動するためには、PICマイクロコントローラ11による電子制御の下で、少量の一酸化炭素をテストツール内に発生させる。COガスの形成においては、危険な化学製品や可燃性物質を使用せず、また、その量は、テストには使えるがユーザに害は与えない、という程度の少量である。その後、ガスはゆっくりと検知器に送られ、センサはテストされる。
【0048】
ここからは、図4、5を参照しながらCO生成の例について述べる。図1、2、3と共通の特徴部分については同じ参照番号で示す。以下に述べる例は、閉じた環境の中で、活性炭布(ACC)を制御されたやり方で過熱する、という原理に基づいている。ACCの温度が80℃に達すると、COが少量で発生し始める。ACCに加える熱を大きくすると、その結果、より多くの量のCOが発生する。多層構造の活性炭またはACCを用いる方法の特質の1つは、炎を出すことも熱を溜めることもないので、非常に安全だということである。活性炭ペレットを加熱するのと違って、酸素が存在する状況で過度の熱を加えた場合でも、制御不能の暴走のシナリオに至るACCの自己永続的な燃焼が引き起こされることはない。それどころか、ACCからは無害な灰しか形成されないため、使用に安全できる。また、放出されるCOの量を制御用電子機器が調節するという点において、更なる保護が得られ、これは減らすこともできるし、完全に抑制することもできる。つまり、この例で用いられる原理は、従来の意味での活性炭の燃焼を伴わない。従来の意味での燃焼とは、急速な化学プロセスであり、熱そして通常は光の発生を伴う。カーボンが急速に燃焼すると、結果として、(周知のプロセスであるが)一酸化炭素が生じる場合がある。しかし、ここで採用した例では事情が異なり、本例ではこの種の燃焼はない。ACCを加熱しても、自己持続的燃焼や、熱または光が生じることはない。その代わり、ACCは熱の影響を受けて分解し、従来の意味での燃焼なしにCOを放出する。
【0049】
図4は、本発明の実施の形態によるマルチテスタツールを示す概略図であり、特にCO生成器に重点を置いたものである。図5は、CO生成器と共に使用するカセット機構を示す概略図である。以下に述べる例では、COの生成については、他の刺激の生成とは別に説明する。しかし、言うまでもなく、本発明では他の刺激生成器も存在する場合があり、そうした場合の本発明の一部としてのテストツール内CO生成器にも、上記原理は等しく当てはまる。
【0050】
CO生成器7は収集チャンバ42の中に位置しており、チャンバ42は外側ハウジング2の下部にある。下部は、リフトファン9とオプションの調整弁39とを含んだ送りダクト8によって上部に接続されており、ダクト8は、センサ/検知器4を横切る方向にガスを向けるための水平方法出口8bを有する。
CO生成器7は、耐熱保持部材44に設置された電動式のヒータアセンブリ43を有し、カセット機構45(図5で更に詳細に示す)の中にはリボン46の形で一反のACCが入っている。ヒータアセンブリは、ガラス管48の内部に封じ込まれた形でワイヤ発熱体47を有し、管48は二酸化ケイ素または石英ガラスとすることができる。カセット45はモータ49につながっており、モータ49は、テストの度に定められた分だけACCリボン46を進めて、ACCの未使用の部分をヒータアセンブリ43に提供する。生成器は収集チャンバ42の中にあり、チャンバ42は送りダクト8につながっている。
【0051】
図5が示すのは本発明のカセット機構である。カセット機構は耐熱性の先端部50を有する。当該先端部は、ACCリボン46がヒータアセンブリと接触させられることになるような形でハウジング2内に置かれている。所定位置にある時、リボンはヒータアセンブリ43を囲む形に巻かれた状態となる。リボンをその全長にわたって使い切った時には、新しいカセットを挿入することができる。更なる安全のための予防措置として、安全シャッター51が、カートリッジによって駆動されて発熱体に通じる開口部を覆い隠す、という形にすれば、カセット機構の取り外しの際ですら、ユーザの体が発熱体に触れることはない。
【0052】
ACCリボン46はヒータアセンブリ43と接触させられるが、電流は、予め定義されたアルゴリズムを用いた制御を受けながら流される。この熱がACCリボン46へ伝えられるので、発生するCOガスの量は制御することができる。発生したCOは収集チャンバ42の中に集められてから、オプションの調整弁39と組み合わされたリフトファン9の作用により、制御された流速で送りダクト8を通り、それから出口8bへと送られる。収集チャンバ42からのガスの流れは、ファン9の速度の制御と、オプションの調整弁39の調節とによって調整すればよい。テスタにCOセンサと監視回路とを持たせれば、COの制御を更に一貫したものにできるであろう。
【0053】
ヒータアセンブリ、モータそして調整弁への電流の制御は、CO生成器の属性を制御するよう設計された上記の制御手段11を用いて実現される。センサ/検知器が警戒状態に入った後は、センサ/検知器からガスを排除することが必要であろう。これは、CO生成器をオフにすると共に、ファン9を用いてセンサ/検知器にきれいな空気を吹き込むことで実現できる。また、別な形として、煙と熱気流とに対してそれぞれ別個のファンを用いる場合は、これらを用いて、残留したCOをセンサ検知器から排除してもよい。
【0054】
人工煙と一酸化炭素とのテスト刺激を発生させるためには、結果として燃料材14(ケース毎に異なるもの)が減少することになるプロセスが実施される。代用煙の場合、消費される燃料材は、少なくとも部分的にグリコールをベースとした液体である。正しい「煙」特性を得るためには、その液体の配合が重要である。CO生成器の場合、消耗品はカーボンベースである。いずれの場合でも、取り外し/交換が可能なカートリッジ15は、テスト用媒体の連続的供給を実現できるよう、本発明の中に入るように設計されている。
【0055】
各カートリッジ上には電子メモリチップ16があり、それは他の機能を実行すると共に、燃料使用の記録を残し、そして、新しいカートリッジを補充するタイミングや、そのタイミングが近づいていることをユーザに通知する手段を提供する。燃料の使用のたびに、ツールを用いてこのデータをカートリッジに再書き込みすれば、残燃料の記録を最新に保つことができる。その後カートリッジが取り外されて別のツールで使用される、という場合でも、残燃料を正確に計量することはなお可能である。PICマイクロコントローラ11は、メモリチップ16との通信を制御し、メモリチップ上で情報を読み書きするように作られている。
【0056】
煙生成のために新しいカートリッジをツールに取り付けると、それによって燃料供給ラインに空気が入り込む可能性がある。そうすると、ツールには、装着後の新しいカートリッジを「プライミング」して空気は排出する必要が生じる。そのため、ツールはプライミング制御ユニット17を有する。プライミング動作のトリガは、最初に挿入された際のカートリッジ上のデータの認識だけとすることもできる。ただし、部分的に使用済みのカートリッジ(おそらく同一種類の別ツールからきたもの)が装着される場合、それは未使用(すなわち満杯の)カートリッジが備えるデータを持ってはいないので、プライミング運動を実行するためのトリガは、カートリッジのメモリに保持された別データとする必要がある。ツールのスイッチを切った状態(または、バッテリまで取り外した状態)でカートリッジの取り外し/交換を行う場合にも、存在しうる気泡を排除するためのプライミングの必要はやはり存在する。しかも、同じカートリッジが再組み込みされる場合もあるので、カートリッジ上のデータをチェックするだけでは不充分であろう。この場合に利用される回路は、ツールへの電力供給がない時でさえ、カートリッジの存在を監視する、というものである。一例として、蓄電キャパシタ18を用いて、超低消費電力ラッチ回路19に一時的に電力供給を行うこととしてもよく、当該ラッチ回路は、カートリッジが取り除かれる際にリセットされる。再挿入時、再びツールのスイッチが入れられるまで、ラッチはリセットされないが、その際も、リセット前のラッチの状態は監視されている。ラッチがリセット状態にあることが分かった場合、ツールはそれで、カートリッジの取り外し/交換が行われたことを知る。蓄電キャパシタへの充電が減衰してしまうほどの長期間にわたってツールが使用されない場合、ラッチは自動的にリセットされ、その結果、ツールは上述したようにプライミング動作を実行することになるであろう。これは「フェイルセーフ」の状況であるが、燃料が供給管の開いた端部から少量ながら蒸発することで、わずかながらでも気泡を生じさせる可能性があることを考えれば、長期間の不使用の後では、プライミングを行うことには充分な意義があるだろう(特に温度が上がった状態では)。
【0057】
超低消費電力ラッチ回路に代わりに使えるものとして、イベントや停電を検出する回路を備えた超低消費電力のリアルタイムクロック(RTC)回路があり、これは、前者と同様、蓄電キャパシタから電力を受ける。カートリッジの取り外し/交換の「イベント」は、この回路の中の少容量SRAMメモリに書き込まれる。そうすれば、ツールのPICマイクロコントローラは、このイベントの記録を読み出すことができる。万が一電源が落ちた場合(例:蓄電キャパシタの放電)、その時は、停電検出回路のおかげで、PICマイクロコントローラは記録を読み込むことができるが、その場合の手段はやはり、パワーアップ時に読まれる別のメモリ位置の状態である。また、別の形として、リチウム電池のような長寿命予備バッテリからこの回路に電力を供給することにしてもよく、そうすれば、イベント発生時には常にRTC読み取りを行うことができる。そうして、長期間の不使用の後のプライミングは、RTCで定められた経過期間を経た後に開始される、という形にすることができる。いずれの場合も、プライミング動作は、通常の電源が接続されていない状態ですら、カートリッジの取り外し/交換というイベントの発生に伴って開始することができる。
【0058】
煙生成器のプライミングに加えて、テスト終了後またはテスト開始前に、ツールを空気で満たして残留刺激を排出することができれば、それはやはり有益である。そこで、制御手段は、システムを通る形で新鮮な空気を流すために、ファンを独立して動作させるように作られている。
制御手段は、テスト後、またはユーザ入力に応じる形で、自動的にこれを行うように作ることができる。こうした動作は、ツールのダクトを空にするだけでなく、テスト対象の検知器/センサを空にするのにも役立つであろう。例えば、人工煙が検知器/センサに入った後、そこに居残ってしまうと、火災検知システムが継続的にアラーム状態に入ったままになる結果を招くかもしれない。そこで、ツールが人工煙の発生を停止した後、ファンを起動する(またはオン状態のままにしておく)ことで、検知器/センサから人工煙を排除する。
【0059】
また、カートリッジとその燃料とについて、ツールの動作に関わる重要データがメモリ内に保持されている。例えば、テスト用刺激の生成を管理する制御回路に関するソフトウェアパラメータが、カートリッジのメモリに保持されている。そのようなデータをカートリッジに格納することで、後日、新しいカートリッジの製造の際に、データのアップグレードを行うことが可能となり、また、このデータからテストツール全体に対して、異なる様態で(例えばそれによってツールの性能を変更する形で)テスト用媒体を展開するように指示することも可能となる。これが特に有用なのは、メインツールにソフトウェア/ファームウェアのアップグレードを行わなくとも、レガシー製品に対して製品改良を実行できる点である。それ以外では、テスト用媒体を供給するカートリッジが、ツールへ新しいデータを運ぶ(その特定のユニットがしばらくの間、そのフィールドで使用されていた場合ですら)。特定の用途または顧客要望のために、こうして製品性能の制御および改良、あるいは、性能のカスタマイズまで行うことの効果は、ファームウェアのアップグレードのために返送する必要なしに、ツールの効果的な「再プログラム」ができる、という点である。
【0060】
煙の「燃料」は、蠕動ポンプ20、36を用いて煙生成器に届けられる。こうした性質のポンプは特に管を磨耗させる。そのため、このポンプは、交換可能なカートリッジ部分の中に管21、35を置く形で、2つの部分で構築されている。ポンプ22の残り部分は、メインツールそのものの内部に収納されている。こうした構造だと、ツールの使用につれて生じる管の磨耗が原因となってポンプの性能が悪化する、という事態が生じないことが確実となる。燃料カートリッジの寿命の範囲での通常の磨耗はとるに足らず、その寿命が終わると、新しい管を含んだ新しいカートリッジが挿入されるからである。
【0061】
本発明の更なる特徴により、ユーザは、テスト対象の危険検知器に対し、データの読出しおよび/または書込みを行うことができる。テストツールが検知器のテストを実行している間、その距離は狭域受動RFIDに充分な程度に短い。テスト対象の検知器に固定された(またはその近くにある)RFIDタグ23は、読出し専用としてもよいし、読取り・書込み機能を有するものとしてもよい。そして、タグに対する読取りおよび/または書込みには、テストツールにインストールされたRFIDリーダ24が用いられる。リーダ用のアンテナ25は、テストツールの上側開口部の縁など、都合のよい位置に収納される。タグの読出し/書込みデータは、ブルートゥースリンク(または他の無線リンク)を介して、ユーザが保持または携帯する互換装置(例:ブルートゥース対応PDA)に転送することができる。データは他のソフトウェア(保守活動および検知器テストの管理を強化するのに用いられるもの)にリンクすることができる。
【0062】
テストツールのユーザは、目的によってはRFIDを使用する必要がない可能性もあるため、RFID/ブルートゥース回路は、必要がある場合に後日装着することのできるモジュールの中に収納する、ということが考えられる。RFIDモジュールを追加する場合、RFIDリーダ用のアンテナは、やはり簡単に装着することができる。それは単純に、予め形の決められたテストツールの機械スロットの中に装着するだけである。そして、これにより、適切に収納されてRFIDモジュールと効果的な形で接触することが可能になる。これを実現するためには、アンテナを可撓性PCBから製造すると共に、その端部に、RFIDモジュール上の接点との摺動接触用コネクタを形成する。
【0063】
RFIDモジュールを使用することの利点は、ツールを使用したテスト活動のロギングと、そして、検知器に1回だけアクセスして1つのツールを使って同時に複数のタスクを実行するという時間効率と、に関する(複数のタスクとは、すなわち、検知器内にある煙、熱および/またはCOのセンサに対するテストを非常に素早く実行すること、テスト/保守活動についての後日の報告のために結果、時間、ユーザ詳細、場所その他に関するロギングを行うこと、である)。検知器が頭上数メートルの高さの天井に位置している場合もあることを考えれば、アクセスが1度しか必要ないということは、非常に有益で時間の節約にもなる。
【0064】
もう1つの利点は、検知器に装着されたRFIDタグに格納されたデータに、ツール自体が使用できる検知器に関する情報を含ませることが可能であろうという点である。例えば、検知器が特定の1つの刺激(または複数種類の刺激)を必要とする場合、特定のやり方で展開して、タグにこの情報を保持させることができるだろう。そうすると、テストツールがテスト開始位置に置かれた時点で、そのデータはタグから読み取られ、ツールにはデータに応じた設定が成され、テストもデータに従って実行される。このことによる効果は、検知器の種類、その構成、または、その特定のテスト方法に関する知識をユーザが有していなくともよい、という点である。これが特に効果的なのは、複数のセンサを有する検知器の場合である。そうした検知器では、正確な種類や動作モードさえテストツールのユーザに明瞭でない場合すらあるが、それでも、RFIDからツールへの情報の転送は容易に行えると思われる。しかし、それは本ツールを使用してテストされるあらゆる検知器に等しく当てはまる。もちろん、RFIDタグが、関連情報を備えた状態で事前に正確にプログラムされていることが必要である。
【0065】
上述したテストツールには、煙、CO、熱の生成器とRFIDモジュールとが装着される場合がある。これらを全て同時に動作させる必要がある場合には、電源に影響する要因を慎重に監視する必要がある。生成器による電力利用にはいくつか異なった方法があり、その中には発熱体へのPWM電力送出が含まれるが、PWM信号のピークは、バッテリ電源に対するピーク電流要求の値を下げるために、できれば分ける必要がある。そうすることで、内部の切換および配線の設計のピーク電流定格と、バッテリパックのピーク電流定格との両方について、要求が緩和される。ピークの電流はPICマイクロコントローラによって管理されており、それによって、やむをえない場合を除いて最大ピークが重ならないことが確実となる。
【0066】
電力消費は一般に、空気流を慎重に組合せてテスト対象の検知器に煙、熱、COの送るのに用いるファンまたは送風機を1つだけにすることで、小さくできる。ファンや送風機の数を減らせば、バッテリパックの電力消耗は小さくなる。
また、テスタツールをモジュール形式で製造して、異なる刺激生成手段を必要に応じて追加または取り外しできるようにしてもよい。そうすれば、装置の融通性は向上し、ユーザがニーズに応じたカスタマイズを行うことが可能となる。異なるモジュールも、制御手段で監視、制御することが可能であろう。例えば、ツールに対し、対応するモジュールが存在しないテストを実行するよう指示があった場合は、ユーザに対して報告を返すことができるだろう。
【0067】
以上、本発明について、複数センサおよび複数検知器の装置に関連付けて説明した。こうした装置には、一般的に2種類以上の異なるセンサ/検知器(例:熱センサと煙センサ)が組み込まれている。また、言うまでもなく、本発明は、感知される現象の2つ以上の側面(例:単一センサ検知器を用いた上昇率反応および固定温度反応)を検知するように作られた多基準装置と共に用いることもできるだろう。上述した通り、ツールは、予め定められた制御パラメータに従って刺激を生成するよう構成することで、所定の現象の異なる側面に対するセンサ/検知器の反応をテストすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態によるテスト装置の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態によるテスト装置の概略図であって、ダクトの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態によるテスト装置の概略図であって、煙生成器の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態によるテスト装置の概略図であって、一酸化炭素生成器の構成を示す図である。
【図5】一酸化炭素生成器の構成と共に使用するカセット機構の概略図である。

Claims (21)

  1. 危険検知器をテストするテスト装置であって、
    検知器に与える第1の刺激を生成するように構成された第1の電動式刺激生成手段と、
    検知器に与える第2の刺激を生成するように構成された第2の電動式刺激生成手段と、
    前記第1および第2の電動式刺激生成手段のそれぞれによる前記各刺激の生成を、個別に、あるいは、連続的もしくは同時に、制御するように構成された制御手段(11)
    備えると共に、
    取り外し可能なカートリッジ(15)を少なくとも1つ有し、当該カートリッジ内部には、前記第1と第2の刺激のうち、少なくとも一方の刺激の生成に用いられる材料が格納されていること
    を特徴とするテスト装置。
  2. 検知器に与える第3の刺激を生成するように構成された第3の電動式刺激生成手段を、さらに備えること、
    を特徴とする請求項1に記載のテスト装置。
  3. 危険検知器を収容するように構成された開口部(3)を更に有すること、
    を特徴とする請求項1または2に記載のテスト装置。
  4. 前記電動式刺激生成手段からテスト対象の検知器まで刺激を移動させるように構成された送り手段(8)を更に有すること、
    を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のテスト装置。
  5. 前記送り手段(8)は、検知器の側方から刺激を検知器に導入するように構成されていること、
    を特徴とする請求項4に記載のテスト装置。
  6. 前記電動式刺激生成手段のうち一つには、一酸化炭素生成器(7)が含まれること、
    を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のテスト装置。
  7. 前記電動式刺激生成手段のうち一つには、人工煙生成器(6)が含まれること、
    を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のテスト装置。
  8. 蠕動ポンプ(20、36)を更に有し、当該蠕動ポンプは、人工煙となる材料を前記カートリッジから前記人工煙生成器へと送り込むこと、
    を特徴とする請求項7に記載のテスト装置。
  9. 前記蠕動ポンプは、管(21、35)の部分と、回転可能な形に設置されたポンプ部材(22)とを有し、前記管の部分は前記カートリッジ側に設けられ、前記ポンプ部材はテスト装置本体側に設けられていること、
    を特徴とする請求項8に記載のテスト装置。
  10. 前記一酸化炭素は、前記カートリッジの中に格納された炭素ベースの材料から生成されること、
    を特徴とする請求項6に記載のテスト装置。
  11. 前記取り外し可能なカートリッジはメモリ手段を備えており、前記制御手段は前記メモリ手段(16)に対してデータの読み出しおよび/または書き込みを行うこと、
    を特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のテスト装置。
  12. 前記メモリ手段は更に、テスト装置の動作を制御するための制御用パラメータを保存するように構成されていること、
    を特徴とする請求項11に記載のテスト装置。
  13. テストを受ける検知器に対してデータの読出しおよび/または書込みを行うように構成されたデータ転送手段を更に有すること、
    を特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のテスト装置。
  14. 前記データ転送手段は、検知器のテスト条件に関するテスト情報を受信し、前記制御手段は当該テスト情報を刺激の生成の制御に用いること、
    を特徴とする請求項13に記載のテスト装置。
  15. 前記データ転送手段はアンテナ(25)を有し、当該アンテナは、前記検知器の上または近くに配置された狭域RFID装置と通信するように構成されていること、
    を特徴とする請求項14に記載のテスト装置。
  16. 前記電動式刺激生成手段のうち一つには、熱生成器が含まれ、当該熱生成器は電気発熱体とファンとを有していること、
    を特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のテスト装置。
  17. 前記テスト装置をポールに接続するように構成された接続手段を更に有すること、
    を特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のテスト装置。
  18. 前記ポールはバッテリ(10)を有し、当該バッテリは前記接続手段を介してテスト装置に電力を供給すること、
    を特徴とする請求項17に記載のテスト装置。
  19. 前記制御手段は更にユーザインタフェースを有し、前記ユーザインタフェースは、遠隔制御手段である無線装置を有すること、
    を特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載のテスト装置。
  20. 前記刺激を前記開口部に向けて流すように構成されたファン(9)を少なくとも1つ有すること、
    を特徴とする請求項3に記載のテスト装置。
  21. 前記開口部の周縁に沿って配置されたダイアフラム(26)を更に有すること、
    を特徴とする請求項3に記載のテスト装置。
JP2008541824A 2005-11-24 2006-11-24 危険検知器をテストするためのテスト装置 Active JP4958914B2 (ja)

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