JP4958040B2 - トンネル構造およびトンネル工法 - Google Patents
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Description
すなわち、まず図3(a)に示すように本線トンネルとなるシールドトンネル1と、ランプトンネルのように本線トンネルに対して分岐合流する分岐合流部トンネルとなるシールドトンネル2とを横方向に間隔をおいて設けた後、(b)に示すようにそれらシールドトンネル1,2の間を掘削してその上下に上部床版3と下部床版4とを施工して分岐合流部となる拡幅部5を設けることによって、最終的には断面形状が横長の道路トンネルを構築するのである。
しかし、上記のような従来一般的な工法では、拡幅部5の施工に際して大がかりな支保工が不可欠であるばかりでなく、特に上部床版3は大きな土被り荷重を受けて過大な断面力が作用することからその所要強度および版厚は大きなものとならざるを得ず、必然的に所要鉄筋量も膨大になって太径の鉄筋を過密に配筋する必要がある。したがって、特に上部床版3の施工は多大な手間とコストを要するものとなるばかりでなく、その作業は限られた狭隘なスペースで行うことになるので効率的な施工は困難である場合が多い。
特許文献1に示される工法は、2本のシールドトンネルを先行構築する際にその側面のセグメントを切削可能なものとしておいて、後段において矩形シールドによってそのセグメントを切削しながら2本のシールドトンネル間を掘削して拡幅するというものである。
特許文献2に示される工法は、2本のシールドトンネルを構築することに代えて、1本のシールドトンネルの側方に地中壁を設け、それらシールドトンネルと地中壁との間を拡幅することによってほぼ同様の形態のトンネルを構築するものである。この工法においては、シールドトンネルの覆工を鋼製セグメントによるものとして、拡幅部の上下に設ける鉄筋コンクリート造の床版をその鋼製セグメントに対して接合することにより、それらを構造的に確実に一体化させ得るとともに施工性を改善できるという利点もある。
特に、アーチ形状の上部床版の両端部間に繋ぎ材を架設すれば上部床版がいわゆるタイドアーチ構造となり、上部床版の下方に撓むような変形を繋ぎ材によってより効果的に抑制することができる。
特に、上部床版に繋ぎ材を架設してタイドアーチ構造とすることにより、施工時においては底型枠として機能する鋼板の変形を繋ぎ材により抑制してそのための支保工を軽減でき、完成後においてはその繋ぎ材によって上部床版全体が下方に撓むように変形することを有効に抑制することができる。
本実施形態のトンネル構造およびトンネル工法においては、基本的には図3に示した在来工法と同様に、本線トンネルおよび分岐合流部トンネルとなる2本のシールドトンネル1,2を横方向に間隔をおいて先行構築した後、それらの間を掘削してその上下に上部床版と下部床版を構築して分岐合流部となる拡幅部5を設けることを基本とするものであるが、在来工法における上部床版3は鉄筋コンクリート造による平板状の床版として形成されるものであるのに対し、本実施形態においてはそれに代えて鋼殻コンクリート造によるアーチ形状の上部床版10を形成し、かつそのようなアーチ形状の上部床版10の両端部間に繋ぎ材(タイバー)11を架設することを主眼としている。
双方のシールドトンネル1,2を構築した後、それら間の上部を掘削して上部床版10を形成するべき位置に上方に湾曲するアーチ形状の空洞12を確保し、その空洞の下部および双方のシールドトンネル1,2内の上部に一連の鋼板13を中央部が上方に膨出している台形状をなすように設置する。
その鋼板13はアーチ状の上部床版10を形成するための底型枠として機能するとともに、最終的にはそのまま上部床版10の鋼殻となって通常の鉄筋コンクリートにおける主筋および剪断補強筋に代わる構造材として機能するものであり、したがって鋼板13はそのような構造的な強度と性能を有するものとして材質や板厚が設計されたものである。
なお、鋼板13としては、図示例のように平板状のものと所望の屈曲板状に加工したものを適宜組み合わせ、それらを適宜位置において継ぎ手14を介して接合することにより全体として台形状に組み立てれば良く、その両端部を双方のシールドトンネル1,2の覆工体により支持して設置し、必要に応じて要所を適宜の支保工により支持すれば良い。
また、鋼板13内にコンクリートを充填した鋼殻コンクリート造としていることから、鋼殻としての鋼板13が通常の鉄筋に代わる構造材として機能して通常の単なる鉄筋コンクリート造の床版に比べて所要鉄筋量を大幅に削減することができ、過密配筋を回避することができる。しかも、鋼板13は施工時には底型枠として機能し、当然に型枠解体も不要であるから、鉄筋工事のみならず型枠工事も軽減できるものである。
以上のことから、上記構造の上部床版10を上記工法で施工することにより、通常の鉄筋コンクリート造の床版を施工する場合に比べて施工性を大きく改善し得て工事削減と工期短縮に寄与し得るし、上部床版10の版厚やその施工のための作業スペースを節約できることから、トンネル内の有効空間の拡大にも寄与し得る。
すなわち、図2に示す上部床版10は同じくアーチ形状とされているものの、鋼殻コンクリート造とされているのはアーチ頂部を含めて本線トンネルとなるシールドトンネル1側のみ(図2において右半部)とされ、分岐合流部トンネルとなるシールドトンネル2側は通常の鉄筋コンクリート造とされ、したがってそこでは鋼板13を使用せずに在来の型枠20を使用して施工後にはそれを解体するものとしている。
また、鉄筋コンクリート造の部分では鋼板13が省略されていることからそこでの鉄筋16は鋼板13に接合されることなく独立に配筋され(したがってその鉄筋16には両端部にそれぞれ定着頭部16aを設けることが好ましい)、また省略された鋼板13に代わる鉄筋21が型枠20の内側に配筋され、双方の境界部にはジョイント筋22が配筋されている。ジョイント筋22はその一端が鋼板13の内側に溶接したプレート23を介して鋼板13に対して接合され、他端は鉄筋コンクリート中にそのまま定着されるようになっている。
さらに、上記実施形態と同様にアーチの開き止めとしての繋ぎ材11が架設され、その一端は同様に鋼板13に対して接合されているが、他端は型枠20を貫通させてその内側に挿入して鉄筋コンクリート中にアンカーするものとしている。
このように上部床版10の一部のみを鋼殻コンクリート造とすることでも上記実施形態と同様に鋼殻コンクリート造とすることによる効果と、タイドアーチ構造とすることによる効果は同様に得られるし、上部床版10全体の断面力を考慮して各部に適切な構造を組み合わせて採用することにより全体として最も合理的な構造とすることが可能である。
たとえば、上記実施形態では上部床版10に繋ぎ材11を設けてタイドアーチ構造としたが、繋ぎ材11を省略した単なるアーチ構造によることでも単なる鉄筋コンクリート造の平板状の床版に比べれば充分な効果が得られるので、繋ぎ材11は必ずしも設けることはなく省略しても良い。
また、上記実施形態ではアーチ形状の上部床版を形成するための底型枠となる鋼板は台形状に組み立て、したがって上部床版の下面の形状は台形状となっているが、その鋼板も台形状ではなく上方に滑らかに湾曲するアーチ形状に組み立てることにより、下面形状も含めて上部床版全体をアーチ形状とすることでも勿論良い。
また、上記実施形態は2本のシールドトンネル1,2の間を拡幅してそこに分岐合流部としての拡幅部5を設ける場合の例であるが、本発明は3本以上の多数のトンネルの間をそれぞれ拡幅する場合にも同様に適用できることはいうまでもないし、各トンネルの構造や断面形状、規模は任意であって必ずしもシールド工法によるシールドトンネルに限るものではなく他の工法によるトンネルであっても良い。
また、本発明は道路トンネルに限らず鉄道トンネルをはじめとする各種用途のトンネルや、さらには同様の形態のトンネル状の地下構造物の施工に際しても適用できることは当然であり、上部床版の少なくとも一部をアーチ形状の鋼殻コンクリート造とするという本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、具体的な施工手順や補助工法その他細部の具体的な要件については,トンネル全体の形態や規模等を考慮して最適設計すれば良い。
5 拡幅部(分岐合流部)
10 上部床版
11 繋ぎ材
12 空洞
13 鋼板(鋼殻)
14 継ぎ手
15 鉄筋継ぎ手
16 鉄筋
16a 頭部
17 躯体
20 型枠
21 鉄筋
22 ジョイント筋
23 プレート
Claims (4)
- 複数のトンネルが横方向に間隔をおいて並べられて設けられ、それらトンネルの間が掘削されてその上下に上部床版および下部床版が設けられることによって拡幅部が構築されてなるトンネル構造であって、
前記上部床版は上方に湾曲するアーチ形状に形成されているとともに、該上部床版は少なくともその一部が、鋼殻としての鋼板と、該鋼板を型枠として充填されたコンクリートと、前記鋼板に対して連結されかつ前記コンクリートに対して定着された鉄筋により構成された鋼殻コンクリート造とされていることを特徴とするトンネル構造。 - 請求項1記載のトンネル構造であって、
アーチ形状に形成される上部床版の両端部間に鋼材からなる繋ぎ材が架設されてなることを特徴とするトンネル構造。 - 複数のトンネルを横方向に間隔をおいて並べて設けて、それらトンネルの間を掘削してその上下に上部床版および下部床版を設けることによって拡幅部を構築するトンネル工法であって、
前記上部床版を上方に湾曲するアーチ形状に形成するとともに、該上部床版の少なくとも一部を、鋼殻としての鋼板と、該鋼板を型枠として充填したコンクリートと、前記鋼板に対して連結しかつ前記コンクリートに対して定着した鉄筋により構成する鋼殻コンクリート造とすることを特徴とするトンネル工法。 - 請求項3記載のトンネル工法であって、
アーチ形状に形成する上部床版の両端部間に鋼材からなる繋ぎ材を架設することを特徴とするトンネル工法。
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