JP4957393B2 - ボールねじ駆動装置 - Google Patents
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Description
このようなボールねじ駆動装置の高速化の要求に対し、例えばボールねじを複数軸用い、その複数軸を並行に設置して一のテーブルを駆動するボールねじ駆動装置を採用すれば、ボールねじの負荷容量を上げつつ、軸径を下げることによってイナーシャを低減させることができる。したがって、このような複軸のボールねじ駆動装置によれば、剛性を向上させるとともに、高速・高加減速化の要求に応えることが可能となる(例えば特許文献1参照)。
つまり、図4に示すように、各ボールねじには、ねじ軸のボール溝の送り方向の出来映えによって、ねじ軸を回転させたときのナット移動量に誤差が生じる。そのため、例えば、複数のボールねじ相互のリード精度(移動量誤差)の相互差が大きければ、テーブルに傾きが生じ、その運動の真直度も悪化することになる。また、このような相互差の作用によって、ボールねじの内部発生力が増加し、ねじへの負担が増大する。したがって、上述のような複軸のボールねじ駆動装置では、複数のボールねじの相互差を、なんらかの方法で管理することが重要である。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ねじ軸のたわみによる位置決め誤差を平均化するだけでは、複軸のボールねじ駆動装置に内在するたわみ以外の相互差の問題を解決することができない。そして、現実的には、複数のボールねじを互いに平行に配置して使用するボールねじ駆動装置では、加工上、複数のねじ軸相互のリード精度やリード誤差、あるいは、ナット相互の予圧量をまったく同じにすることは不可能であるため、複数のボールねじの相互差を管理する上で不十分である。
また、ねじ軸においては、そのねじ溝の有効径管理も同様であり、二軸の有効径を完全に等しくすることは不可能であるため、使用頻度の高い部位での有効径差が存在したときは、累積リード誤差が同じでも、局部的な予圧変化によって、精度の低下やテーブルのこじり等の上記同様の問題が発生する。さらに、お互いのナットの予圧量に差があるときは、駆動時の発熱量が異なるため、ねじ軸相互の伸び量に差が生じる。そのため、やはりテーブルの位置決め精度の劣化やこじりの発生要因となる。
また、予圧付与方法としては、オーバーサイズボール予圧、オフセット予圧、定圧予圧があるが、例えば、ばねを使用した定圧予圧であれば、ねじ軸の有効径のバラツキによる予圧量の変動を無視できる他、ボールの磨耗による予圧減少も軽減できるため、本用途には好適である。但し、予圧量の大幅な調整は、ボールねじの寿命、剛性等の点で好ましくなく、代表移動量の相互差の微調整を行う目的での予圧量を変化させる範囲は、絶対値(複数本の最大値)の30%以内とすることが望ましい。勿論、この第六の発明に係るボールねじ駆動装置を、上記いずれかの発明に係るボールねじ駆動装置と組み合わせれば、複数のボールねじ相互の送り精度の相互差を緩和する上でより好適である。
また、本発明のうち第九の発明は、互いに平行に配置された複数のねじ軸と、それら複数のねじ軸それぞれに相対移動可能に外嵌する複数のナットとを有する複数のボールねじを備え、前記複数のねじ軸の各々の軸端または各々のナットが軸受を介して回転自在に支持されるとともに、各々のナットまたは各々のねじ軸の軸端が固定されてなるボールねじ駆動装置であって、前記複数のボールねじは、少なくとも1本のねじ軸の両側軸端に、当該少なくとも1本のねじ軸をその軸方向に拘束して張力を付与できる支持構造を備え、その付与される張力を調整することによって代表移動量の相互差を減少させることを特徴としている。第九の発明に係るボールねじ駆動装置によれば、その支持構造で付与される張力を調整することによって代表移動量の相互差を減少させることができる。
つまり、プリテンション量は、これを余り大きくすると、張力を与える軸受の負荷が増大することや、軸受を支える工作機械等のフレームが変形することによる制約がある。そこで、この第九の発明に係るボールねじ駆動装置は、最大プリテンション量を、ねじ軸平均の温度上昇量を5℃とした場合のねじ軸全長の伸び量に設定したときに、代表移動量(lm)の相互差Δlm[μm]をこの範囲内に抑えるものである。なお、上記数字の根拠は、全長1mの場合に、12μmxlmx5℃=60μmであることをその根拠としている。
図1は、本発明のボールねじ駆動装置を装備した機械の一実施形態に係る電動式射出成形機を示す図である。
同図に示すように、この電動式射出成形機40は、電動モータ22の回転運動を直線運動に変換してスクリュー24を駆動する機構部に、ボールねじ駆動装置20が装備されている。ここで、電動式射出成形機40に使用されるボールねじ駆動装置20は、射出時にスクリュー24を金型30の方向へ移動させる際に高加速が必要とされる。
つまり、これら複数のボールねじ1は、互いに平行に、図1に示すブラケット26に配置されており、各々のボールねじ1は、そのねじ軸2の軸端が軸受を介して回転自在に支持されるとともに、各々のナットが一のテーブル5に対して固定されている。そして、電動モータ22の回転運動が、不図示の動力伝達機構を介してボールねじ駆動装置20の各ボールねじ1のねじ軸2に入力されると、ストロークの一端に位置していたテーブル5内の各ナット3がストロークの他端まで同図左方向にテーブル5と一体に移動し、これにより、テーブル5を駆動し、このテーブル5の所望の軸方向変位を得るように構成されている。
詳しくは、図2に示すように、このボールねじ1には、そのねじ軸2に、軸方向に貫通形成された冷却媒体用の流路12が設けられている。そして、そのねじ軸2の両軸端には、同図左側の軸受16のテーブル5とは反対側に、流入側シーリング18が装着され、同図右側の軸受16のテーブル5側に、流出側シーリング19が装着されている。これら流入側シーリング18および流出側シーリング19は、前記流路12に内部で連通しており、それぞれのプラグ18aおよびプラグ19aが配管を介して冷却装置14に接続されている。なお、この冷却装置14が、上記冷却媒体循環制御部に対応している。
さらに、この冷却装置14は、冷却媒体振り分け制御部14aが、各々のボールねじ1の冷却剤の温度および/または流量を相対的に可変する制御を実行することで、循環させる冷却剤を温度管理している。つまり、各々のボールねじ1に流す冷却媒体の温度または流量を適宜制御することによって、各々のボールねじ相互の温度差を、代表移動量の相互差に相当する熱膨張量に近似させる管理を行うようになっている。
この電動式射出成形機40は、図1に示すように、電動モータ22の回転運動が、不図示の動力伝達機構を介してボールねじ駆動装置20の各ボールねじ1のねじ軸2に入力されると、ストロークの一端に位置していたテーブル5内の各ナット3がストロークの他端まで同図左方向にテーブル5と一体に移動し、これにより、スクリュー24が左方向(金型30の方向)に駆動される。そして、樹脂が金型30内に充填されて射出成形品が得られる。次いで、樹脂の充填が終了したら電動モータ22を逆回転させて、各ナット3をテーブル5とともにストロークの一端まで右方向に移動させ、スクリュー24を元の位置に戻す。このような操作を繰り返すことにより、所望の射出成形を行うことができる。
すなわち、ボールねじ1の予圧は、ボール4と両ねじ溝2a,3aとの間の作動すべりを生じ、これが摩擦熱に変換されることを利用するものである。つまり、発熱量はボールねじ駆動装置20の動作パターンに依存するので、本実施形態の例での電動式射出成形機のように、動作パターンが略決まっている装置に好適に適用できる。なお、予圧付与方法としては、オーバーサイズボール予圧、オフセット予圧、定圧予圧等があるが、本実施形態の例である、ばねを使用した定圧予圧であれば、ねじ軸の有効径のバラツキによる予圧量の変動を無視できる他、ボール磨耗による予圧減少も軽減でき、本用途には好適である。
以上説明したように、このボールねじ駆動装置20によれば、複数のボールねじ1を並列に結合して駆動しても、複数のボールねじ1相互の送り精度の相互差を緩和することができる。
例えば、上記実施形態では、熱交換手段として、冷却媒体を強制的に循環させる流路を、ねじ軸に設けた例で説明したが、これに限定されず、冷却媒体を強制的に循環させる流路を、ナットに設けてもよい。なお、ねじ軸の温度補正が目的であるので、ねじ軸に冷却媒体を強制的に循環させることは好ましい。
ここで、この発熱手段または冷却手段の例として、発熱手段の熱源としてはニクロム線への通電、また、冷却手段の冷却体としてはペルチェ素子等が好適に使用できる。また、ねじ軸およびナットヘの温度伝達方法としては、熱源を直接貼付けたり、空気吹付けや液体の伝熱を利用したりすることができる。なおまた、ねじ軸の温度補正が目的であるので、ねじ軸への加熱、冷却が好ましいが、ねじ軸回転で使用する場合はナットヘの加熱、冷却の方が簡易である。
このような構成とすれば、代表移動量(lm)の相互差分の張力付与は、例えば、ねじ軸端の変位を直接測定する、またはねじ軸のばね定数から補正すべき張力を算出して付与する方法で好適に行うことができる。また、例えば使用するボールねじ全てに張力付与機構を持たせ、個々の張力を相互差の分だけ変えることによっても良い。また、ねじ軸回転の場合は、ねじ軸両端に、例えばアンギュラベアリングを配し、これの外輪に張力を与えて固定し、ナット回転の場合は、ベアリングを介さずに直接張力を与えることによって固定できる。この支持構造を備える変形例によれば、調整作業によるので、理論的には代表移動量(lm)の相互差をゼロとすることができる。
代表移動量(lm)の相互差Δlm[μm]を、60×lu[m]以内とする理由は、プリテンション量を余り大きくすると、張力を与える軸受の負荷が増大すること、軸受を支える工作機械等の機械や装置のフレームが変形することにより制約がある。そこで、最大プリテンション量を、ねじ軸平均の温度上昇量を5℃とした場合のねじ軸全長の伸び量に設定し、代表移動量(lm)の相互差Δlm[μm]をこの範囲内に抑えることが望ましい。なお、数字の根拠は、全長1mの場合に、12μmxlmx5℃=60μm、をその根拠としている。
2 ねじ軸
2a ねじ溝
3 ナット
3a ねじ溝
4 ボール
5 テーブル
6 ボール転動路
7 リターンチューブ
8 チューブ押さえ
9 貫通孔
10 冷却媒体循環制御部
12 (冷却媒体用の)流路
14 冷却装置(冷却媒体循環制御部)
16 軸受
17 駆動プーリ
18 流入側シーリング
19 流出側シーリング
20 ボールねじ駆動装置
22 電動モータ
24 スクリュー
26 ブラケット
30 金型
40 電動式射出成形機
Claims (7)
- 互いに平行に配置された複数のねじ軸と、それら複数のねじ軸それぞれに相対移動可能に外嵌する複数のナットとを有する複数のボールねじを備え、前記複数のねじ軸の各々の軸端または各々のナットが軸受を介して回転自在に支持されるとともに、各々のナットまたは各々のねじ軸の軸端が固定されてなるボールねじ駆動装置であって、
各ボールねじのねじ軸またはナットには、各々のボールねじ相互の温度差を、代表移動量の相互差に相当する熱膨張量に近似させる発熱手段または冷却手段が装備されていることを特徴とするボールねじ駆動装置。 - 互いに平行に配置された複数のねじ軸と、それら複数のねじ軸それぞれに相対移動可能に外嵌する複数のナットとを有する複数のボールねじを備え、前記複数のねじ軸の各々の軸端または各々のナットが軸受を介して回転自在に支持されるとともに、各々のナットまたは各々のねじ軸の軸端が固定されてなるボールねじ駆動装置であって、
各ボールねじのねじ軸またはナットには、各々のボールねじ相互の温度差を、代表移動量の相互差に相当する熱膨張量に近似させる熱交換手段が装備されており、
前記熱交換手段は、各ボールねじのねじ軸またはナットに形成された冷却媒体用の流路と、該流路に冷却媒体を強制的に循環させるとともに、各々の冷却媒体の温度または流量を相対的に可変する冷却媒体循環制御部とを備え、前記冷却媒体循環制御部は、各々の冷却媒体の温度または流量を制御することによって、各々のボールねじ相互の温度差を、代表移動量の相互差に相当する熱膨張量に近似させるようになっていることを特徴とするボールねじ駆動装置。 - 前記冷却媒体循環制御部は、各々のボールねじでの冷却媒体の出入口温度を検出する出入口温度検出手段と、該出入口温度検出手段で検出された冷却媒体の出入口温度に基づいて、各ボールねじの発熱量を個別に測定し、その発熱量に応じて、各々のボールねじの発熱量の相互差を小さくするように、各々のボールねじに流入させる冷却媒体の温度または流量を制御する冷却媒体振り分け制御部とを有することを特徴とする請求項2に記載のボールねじ駆動装置。
- 互いに平行に配置された複数のねじ軸と、それら複数のねじ軸それぞれに相対移動可能に外嵌する複数のナットとを有する複数のボールねじを備え、前記複数のねじ軸の各々の軸端または各々のナットが軸受を介して回転自在に支持されるとともに、各々のナットまたは各々のねじ軸の軸端が固定されてなるボールねじ駆動装置であって、
各ボールねじのねじ軸またはナットには、各々のボールねじ相互の温度差を、代表移動量の相互差に相当する熱膨張量に近似させる熱交換手段が装備されており、
前記熱交換手段は、各ボールねじのねじ軸またはナットに形成された冷却媒体用の流路と、該流路に冷却媒体を強制的に循環させて、各々の冷却媒体の温度または流量を相対的に可変する冷却媒体循環制御部とを備え、
前記冷却媒体循環制御部は、冷却媒体を強制循環させる1台のポンプと、該ポンプに接続されて各々のボールねじの冷却媒体の流路に連通する分岐した循環路とを有し、各々分岐した循環路は、相互の流路抵抗の誤差が20%以内になっていることを特徴とするボールねじ駆動装置。 - 互いに平行に配置された複数のねじ軸と、それら複数のねじ軸それぞれに相対移動可能に外嵌する複数のナットとを有する複数のボールねじを備え、前記複数のねじ軸の各々の軸端または各々のナットが軸受を介して回転自在に支持されるとともに、各々のナットまたは各々のねじ軸の軸端が固定されてなるボールねじ駆動装置であって、
前記複数のボールねじは、定常稼動状態でのボールねじ相互の温度差を、代表移動量の相互差に相当する熱膨張量に近似させるようにそれぞれの予圧量が設定されていることを特徴とするボールねじ駆動装置。 - 互いに平行に配置された複数のねじ軸と、それら複数のねじ軸それぞれに相対移動可能に外嵌する複数のナットとを有する複数のボールねじを備え、前記複数のねじ軸の各々の軸端または各々のナットが軸受を介して回転自在に支持されるとともに、各々のナットまたは各々のねじ軸の軸端が固定されてなるボールねじ駆動装置であって、
前記複数のボールねじは、少なくとも1本のねじ軸の両側軸端に、当該少なくとも1本のねじ軸をその軸方向に拘束して張力を付与できる支持構造を備え、その付与される張力を調整することによって代表移動量の相互差を減少させることを特徴とするボールねじ駆動装置。 - 前記複数のボールねじは、前記代表移動量をlmとしてその相互差をΔlm[μm]とし、ねじ部有効長さをluとするときに、Δlm≦60×lu[m]であることを特徴とする請求項6に記載のボールねじ駆動装置。
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