JP4956865B2 - オレフィン性不飽和ポリマーの水素添加方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオレフィン性不飽和ポリマーの水素添加方法に関する。詳しくは、均一系触媒を用いて水素添加率の高いオレフィン性不飽和ポリマーを安定して製造するための水素添加方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
〔1〕背景:
オレフィン性不飽和ポリマー(代表例:共役ジエン系ポリマー)は、熱可塑性エラストマー等として工業的に広く利用されている。
オレフィン性不飽和ポリマーの不飽和結合は、加硫等に利用できる反面、耐候性や耐熱性を損なうという不具合がある。このため、オレフィン性不飽和ポリマーの用途は限定されている。しかしながら、上記の耐候性や耐熱性は、オレフィン性不飽和ポリマーの不飽和結合を水素添加してポリマー鎖を飽和化することで改善できるという事情がある。
【0003】
〔2〕不均一系触媒と均一系触媒:
オレフィン性不飽和ポリマーの不飽和結合を水素添加する方法としては、不均一系触媒を用いる方法と、均一系触媒を用いる方法がある。
[2-1] 不均一系触媒:
不均一系触媒は触媒活性が低いため、オレフィン性不飽和ポリマーの水素添加には、高温・高圧の厳しい条件が必須となる。このため、ポリマーの分解やゲル化を生じ易く、エネルギーコストも高いという欠点がある。また、SBRのような共役ジエンとビニル芳香族化合物との共重合体では、芳香族の不飽和結合も水素添加されてしまうという問題もある。つまり、共役ジエン部分のみを選択的に水素添加することが困難である。
また、不均一系触媒を用いた水素添加では、水素添加の対象化合物と不均一系触媒との接触が必須であるが、オレフィン性不飽和ポリマー等のポリマーの水素添加では、低分子の水素添加の場合よりも反応系の粘度やポリマー鎖中の立体障害等の影響が大であるため、接触が困難である。このため、不均一系触媒を用いて効率良くオレフィン性不飽和ポリマー等のポリマーを水素添加するためには多量の不均一系触媒が必要となり、コスト的な問題が生ずる。
さらに、水素添加対象であるオレフィン性不飽和ポリマー等のポリマーを含有する溶液の粘度が高いと、触媒担体等の金属が反応後の製品に同伴して品質に問題を生ずる。このため、ポリマーを含有する溶液の粘度を低下させておく必要があるが、そのためには不活性溶媒が多量に必要となり、その結果、溶媒除去に要する設備や用役コストが高くなるという問題が生ずる。
【0004】
[2-2] 均一系触媒:
均一系触媒は、触媒活性が高いため穏やかな条件での反応も可能であり、触媒量も少量で足りるという利点がある。また、条件を適切に選択すれば、共役ジエンとビニル芳香族化合物との共重合体に於いて、共役ジエン部分の不飽和結合を優先的に水素添加できるという利点もある。
しかし、均一系触媒は、触媒の還元状態によって触媒活性が大きく変化するため、水素添加の再現性が低いという問題がある。また、共存している不純物等により触媒成分が不活性化され易く、この理由からも、水素添加の再現性が低いという問題が生ずる。したがって、均一系触媒では、水素添加率の高いオレフィン性不飽和ポリマー等のポリマーを安定的に得ることは困難である。
また、元々十分に速くない反応速度が、触媒の還元状態や不純物に起因する触媒活性の低下によって更に遅くなるという問題もある。
上記は均一系触媒を回分式の攪拌槽型反応器で用いて水素添加する場合の問題点であるが、均一系触媒を連続式の反応器(連続式ループリアクタ)で用いて水素添加する場合には、反応熱の除去や気液接触の効率化の観点から高粘度のポリマー溶液での水素添加反応ができず、設備的にも高価であるため、オレフィン性不飽和ポリマーの水素添加に用いることは困難という問題がある。
これまでに、回分式の攪拌槽型反応器や、連続式の攪拌槽型反応器を用いて水素添加していることは既に知られており、例えば、特開平11−286513号公報に記載されている。しかし、通常、攪拌槽型反応器を用いて水素添加を行う場合は、槽内の上部位置は気相部とされている。このため、たとえ水素ガスを液中下部より供給しても水素ガスの吹き抜けが生じ、気液分散は結果として上部気相部からの巻き込みと吹き込みによるものとから成る。しかし、上部気相部からの巻き込みによる吸収速度は、液中での気液接触による吸収速度に比べて格段に遅いという事情があり、このため、吸収速度が全体的に遅くなるという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、均一系触媒を用いる場合の問題点を解決することで、均一系触媒を用いる場合の利点を生かしつつ、安定した高い水素添加率のオレフィン性ポリマーを効率良く連続的に製造し得る水素添加方法を提供することを目的とする。
換言すれば、広範囲の粘度領域のオレフィン性不飽和ポリマーを、均一系水素添加触媒を用いて、安定した高い水素添加率で水素添加することができる水素添加方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液と均一系の水素添加触媒及び水素とを攪拌槽型反応器の槽底部へ連続的に供給しつつ攪拌することにより該攪拌槽型反応器内部を満たすとともに該攪拌槽型反応器の槽上部から反応物を連続的に押し出すことでオレフィン性不飽和ポリマーを水素化することを特徴とする水素添加方法である。
上記に於いて『攪拌槽型反応器から押し出す』とは、オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液と均一系の水素添加触媒と水素とを攪拌槽型反応器へ連続的に供給することで、該攪拌槽型反応器内に満たされているオレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液と均一系の水素添加触媒及び水素と水素添加されたオレフィン性ポリマーとを該攪拌槽型反応器から押し出すことをいう。
【0007】
上記の如く押し出すことは、攪拌槽型反応器の内部を満液又は満液に近い状態とすることで可能となる。そのため、本発明では、水素ガスを槽底部より供給したとしても水素ガスの吹き抜けが生じにくく、槽内上部の気液界面からの水素ガスの巻き込みも生じないか、生じたとしても無視できる程度である。このため、槽全体で水素ガスを吸収することができ、吸収速度の低下という不具合も無く、高い反応速度を確保することが可能となる。
【0008】
オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液と均一系の水素添加触媒とは、攪拌槽型反応器への供給前に予め混合しておき共通の管を通して攪拌槽型反応器へ供給してもよく、また、攪拌槽型反応器への供給前には混合せず別々の管を通して攪拌槽型反応器へ供給してもよい。
オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液は、ポリマー分子量等により広範囲な粘度領域を示す。本発明では、オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液の粘度は、10000cP以下、好ましくは5000cP以下である。
攪拌翼の形状としては、オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液の粘度が1000cP以下では、一般的な低粘度攪拌翼(代表例:パドル翼)を用いる。好ましくは、ディスクタービン翼のように攪拌槽上部からの投影面積が大きい翼形状を成し、槽径に対する翼径の比が0.2〜0.8の範囲、好ましくは0.3〜0.6の範囲にある攪拌翼を用いる。なお、槽高に応じて攪拌翼を多段階に設置するようにしてもよい。
また、オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液の粘度が1000cPを越える場合には、中高粘度大型攪拌翼(代表例:マックスブレンド翼,リボン翼)を用いる。好ましくはマックスブレンド翼のように攪拌槽側部からの投影面積が大きい翼形状を成し、槽径に対する翼径の比が0.2〜0.8の範囲、好ましくは0.3〜0.6の範囲にある攪拌翼を用いる。
反応温度は、均一系触媒の活性に応じて、0〜200℃の範囲、好ましくは40〜150℃の範囲、更に好ましくは90〜120℃の範囲である。後述のように2基以上の攪拌槽型反応器を用いる場合には、各攪拌槽型反応器毎に反応温度を変えてもよい。また、後述のように、攪拌槽型反応器の後段に管型反応器を設ける場合、攪拌槽型反応器は等温反応であり、管型反応器は等温反応と断熱反応の何れでもよい。
水素の供給は、攪拌槽型反応器に直接水素を導入してもよいし、オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液と共通の管を通して攪拌槽型反応器へ供給してもよい。攪拌槽型反応器に直接水素を導入する場合には、単孔ノズル、スパージャーリング等の他孔ノズルを用いることができる。水素を効率的に吸収できる点から、更に好ましいノズルはスパージャーリングである。
【0009】
また、本発明では、槽底部から流入させて槽上部から排出させるため、攪拌槽型反応器内での気液接触がより十分に行われて、反応がより速やかとなる。このため、達成される水素添加率が同じであれば、そのための所要時間が短縮される。
【0010】
また、本発明は、前記の何れかの構成に於いて、攪拌槽型反応器から押し出した後、該攪拌槽型反応器の後段に少なくとも1段設けた攪拌槽型反応器へ連続的に供給して、該後段の攪拌槽型反応器から連続的に押し出すことを特徴とする水素添加方法である。当然ながら、先頭の攪拌槽型反応器の後段に2段以上に攪拌槽型反応器を設けた場合には、該先頭の攪拌槽型反応器から押し出した後、後段の攪拌槽型反応器へ連続的に供給して該後段の攪拌槽型反応器から連続的に押し出す過程を、後段の各攪拌槽型反応器についてそれぞれ行うことを特徴とする水素添加方法である。
先頭の攪拌槽型反応器の後段に少なくとも1段設けた(各)攪拌槽型反応器への供給を槽底部から行うとともに、該(各)攪拌槽型反応器からの押し出しを槽上部から行うようにすると、前述と同様の効果を後段の(各)攪拌槽型反応器でも享受することができる。
攪拌槽型反応器(=先頭の攪拌槽型反応器)の後段に更に少なくとも一段の攪拌槽型反応器を設けたことで、水素添加反応による発熱を各攪拌槽型反応器へ分散させることができる。その結果、各攪拌槽型反応器の容積を総計した容積を持つ単一の攪拌槽型反応器を用いる場合よりも、除熱を行い易くなる。
また、本発明は、上記構成に於いて、各攪拌槽型反応器の各々へ水素を連続的に供給することを特徴とする水素添加方法である。
水素の供給先を分散させることで、水素添加反応による発熱を各攪拌槽型反応器へ分散させることができる。その結果、攪拌槽型反応器の何れかへ水素を供給する場合や、各攪拌槽型反応器の容積を総計した容積を持つ単一の攪拌槽型反応器へ水素を供給する場合よりも、水素添加反応を制御し易くなり、除熱も容易となる。
【0011】
また、本発明は、前記の何れかの構成に於いて、攪拌槽型反応器から押し出した後に連続流通式の管型反応器へ連続的に供給することで更に水素化させることを特徴とする水素添加方法である。
管型反応器へ供給してその中で更に反応させるため、攪拌槽型反応器内で水素添加されることなく排出されたオレフィン性不飽和ポリマーを水素添加することが可能となり、より高い水素添加率を達成することができる。
また、本発明は、前記の何れかの構成に於いて、水素添加率が90%以上であることを特徴とする水素添加方法である。
また、本発明は、前記の何れかの構成に於いて、不活性有機溶媒が、イソペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする水素添加方法である。
また、本発明で使用される触媒としては、均一系水素添加触媒であれば使用できる。例えば、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が使用できる。この中でも、チタノセン化合物とアルコキシリチウムとを反応させた水素添加触媒は安価で工業的に特に有用な触媒である。具体的な例を挙げると、特開平1−275605号公報、特開平5−271326号公報、特開平5−271325号公報、特開平5−222115号公報、特開平11−292924号公報、特開2000−37632号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭63−5401号公報、特開昭62−218403号公報、特開平7−90017号公報、特公昭43−19960号公報、特公昭47−40473号公報に記載の水素添加触媒である。これらの各種の水素添加触媒は1種のみを用いて良いし、2種以上を併用することもできる。
より好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種(以下、遷移金属化合物(1)という)を含有することを特徴とする水素添加方法である。
【化2】
ここで、一般式(1)において、M1はチタニウム原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示し、X1およびX2は相互に独立にシクロペンタジエン骨格を有する炭素数5〜20の1価の炭化水素基を示し、Y1は複素環骨格を有する基が酸素原子または窒素原子を介してM1に結合している炭素数3〜20の1価の有機基または炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数1〜20のアリロキシ基またはハロゲン原子を示し、Y2は 複素環骨格を有する基が酸素原子または窒素原子を介してM1に結合している炭素数3〜20の1価の有機基を示す。遷移金属化合物(1)の好ましい具体例としては、下記式(7−1)〜(7−16)等のチタニウム化合物を挙げることができる。下記各式において[CP]はシクロペンタジエニル基を示す。
【化3】
【化4】
これらの遷移金属化合物(1)のうち、特に(7−1)、(7−2)、(7−5)、(7−11)、(7−12)等が好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記何れかの構成に於いて、攪拌槽型反応器の攪拌の所要動力が0.1〜5.0kW/m3 であることを特徴とする水素添加方法である。
この所要動力は、オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液の粘度に応じて適宜に調整するものとする。所要動力が大きいほど水素の拡散状態は良好となるが、最終的には飽和する。
攪拌槽型反応器を2基以上用いる場合には、前段の攪拌槽型反応器の攪拌の所要動力を、後段の攪拌槽型反応器の所要動力よりも小さくすると、前段での発熱を抑えることができる。
また、本発明は、前記の何れかの構成に於いて、オレフィン性不飽和ポリマーが共役ジエン系ポリマーであることを特徴とする水素添加方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1と図2は、実施の形態の水素添加方法で用いる反応器システムの構成を示し、図3は、従来の水素添加方法で用いる反応器システムの構成を示す。
図1の反応器システムは、2基の攪拌槽型反応器を連結したものであり、第1の攪拌槽型反応器(図内左側の反応器)では、重合体溶液(オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液)と触媒(均一系の水素添加触媒)と水素とが該第1の攪拌槽型反応器の槽底部から流入されて槽上部から排出されている。なお、図示の例では、重合体溶液と触媒とは別々の管を通して攪拌槽型反応器へ流入されているが、重合体溶液と触媒とを攪拌槽型反応器への供給前に予め混合しておき共通の管を通して攪拌槽型反応器へ流入させてもよい。
また、図1の反応器システムでは、第1の攪拌槽型反応器の上部から排出された液(水素添加されたオレフィン性ポリマー溶液.但し、水素未添加の重合体溶液と触媒と水素も含有している)は、続いて、第2の攪拌槽型反応器(図内右側の反応器)の槽底部から流入されて槽上部から排出されている。
なお、第2の攪拌槽型反応器の後段に、さらに、連続流通式の管型反応器を設けておき、第2の攪拌槽型反応器から排出された液(水素添加されたオレフィン性ポリマー溶液.但し、ごく微量の水素未添加の重合体溶液と触媒と水素も含有している)を送り込むことで、第1及び第2の攪拌槽型反応器中を短い経路で通ったために水素未添加のままである重合体溶液(オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液)を水素添加するようにしてもよい。
図1の反応器システム内の第1及び第2の攪拌槽型反応器では、重合体溶液と触媒と水素を槽底部から流入させて槽上部から押し出すため、攪拌槽型反応器内での気液接触がより十分に行われて、反応がより速やかとなる。したがって、達成される水素添加率が同じであれば所要時間が短縮される。
また、図1の反応器システムでは、第1と第2の攪拌槽型反応器を設けているため、水素添加反応による発熱を各攪拌槽型反応器へ分散させることができ、その結果、第1と第2の攪拌槽型反応器の総容積を持つ単一の攪拌槽型反応器を用いる場合よりも、除熱を行い易くなる。
また、図1の反応器システムに於いて、第2の攪拌槽型反応器へも、その槽底部から水素を供給するようにすると、水素添加反応による発熱を各攪拌槽型反応器へ分散させる効果を更に高めることができる。その結果、第1又は第2の攪拌槽型反応器の何れか一方へ水素を供給する場合や、第1と第2の攪拌槽型反応器の総容積を持つ単一の攪拌槽型反応器へ水素を供給する場合よりも、水素添加反応を更に制御し易くなり、除熱も容易となる。
一方、図2に示す反応器システムは、3基の攪拌槽型反応器を連結したものである。即ち、図1の反応器システムに於いて、第2の攪拌槽型反応器の後段に第3の攪拌槽型反応器を設け、更に、該第3の攪拌槽型反応器の後段に、連続流通式の管型反応器を設けたシステムである。他の構成については、図1の反応器システムと同様である。
図2の反応器システムでは、図1の反応器システムが奏する上述の各作用効果を、更に十分に達成することができる。
なお、図2の構成では、攪拌槽型反応器を3段に設けているが、4段以上に設けて、上述の各作用効果を更に一層十分に得られるようにしてもよい。
【0014】
図3に示す従来の反応器システムでも2基の攪拌槽型反応器が連結されているが、重合体溶液と触媒を第1の攪拌槽型反応器へ槽上部より供給するとともに槽底部から排出している点、第1の攪拌槽型反応器の槽上部に気相部のガスを抜くための管が設けられている点、第1の攪拌槽型反応器の槽底部から排出された液を第2の攪拌槽型反応器へ槽上部より供給するとともに槽底部から排出している点、及び、第2の攪拌槽型反応器の槽上部から排出した水素を第1の攪拌槽型反応器へ供給している点に於いて、図1や図2の反応器システムと異なる。
なお、図1〜図3のシステムの各攪拌槽型反応器内の攪拌翼は、何れもディスクタービン翼であり、所要動力は1.0kW/m3 である。
【0015】
以下、実施例と比較例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、前述した各種の態様を包含する。
なお、実施例1及び2と比較例中の%は重量%を意味し、圧力はゲージ圧力を意味する。また、水素添加率は、 1H−NMRスペクトル(100MHz)により測定した。
〔1〕実施例1:
図1の反応器システムを用いて、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素化物を、下記のように製造した。
即ち、
ビス(η5 −シクロペンタジエニル)チタニウム(テトラヒドロフルフリルオキシ)クロリドと、ジエチルアルミニウムクロリドと、から成る水素化触媒1%トルエン溶液を、200g/hrで;
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を17%含有しており、シクロヘキサン溶媒を用いて調整した重合体溶液を20kg/hrで;
水素を1400NL/hrで;
それぞれ第1の攪拌槽型反応器(内容積40L)の槽底部から供給した。
また、第1の攪拌槽型反応器と第2の攪拌槽型反応器(内容積40L)の槽内の温度を110℃に維持するとともに、第1と第2の各攪拌槽型反応器の槽内圧力が0.8MPaとなるように第2の攪拌槽型反応器の槽上部から排出される液量を調整した。
第1の攪拌槽型反応器から排出される重合体の水素添加率は80%、第2の攪拌槽型反応器から排出される重合体の水素添加率は97%であった。
【0016】
〔2〕実施例2:
実施例1と実施例2との差異は、図1のシステムに代えて図2のシステムを用いた点、水素添加触媒の供給速度が400g/hrである点、重合体溶液の供給速度が40kg/hrである点、及び水素の供給速度が2800NL/hrである点である。
以下、詳述する。
図2の反応器システムを用いて、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物を、下記のように製造した。
即ち、
ビス(η5 −シクロペンタジエニル)チタニウム(テトラヒドロフルフリルオキシ)クロリドと、ジエチルアルミニウムクロリドと、から成る水素添加触媒1%トルエン溶液を、400g/hrで;
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を17%含有しており、シクロヘキサン溶媒を用いて調整した重合体溶液を40kg/hrで;
水素を2800NL/hrで;
それぞれ第1の攪拌槽型反応器(内容積40L)の槽底部から供給した。
また、第1と第2と第3の各攪拌槽型反応器(各々内容積40L)と管型反応器(内容積20L)の槽内の温度を110℃に維持するとともに、各攪拌槽型反応器の槽内圧力が0.8MPaとなるように管型反応器の出口から排出される液量を調整した。
第1の攪拌槽型反応器から排出される重合体の水素添加率は50%、第2の攪拌槽型反応器から排出される重合体の水素添加率は80%、第3の攪拌槽型反応器から排出される重合体の水素添加率は95%、管型反応器から排出される重合体の水素添加率は99%であった。
【0017】
〔3〕比較例:
比較例と実施例1との差異は、図1のシステムに代えて図3のシステムを用いた点、水素添加触媒の供給速度が100g/hrである点、重合体溶液の供給速度が10kg/hrである点、第1の攪拌槽型反応器の槽内圧力が0.8MPaとなるように第2の攪拌槽型反応器の槽上部から排出される水素を第1の攪拌槽型反応器へ槽底部より供給した点、及び第2の攪拌槽型反応器の槽内圧力が1.0MPaとなるように第2の攪拌槽型反応器へ槽底部より水素を供給した点である。
以下、詳述する。
図2の反応器システムを用いて、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素化物を、下記のように製造した。
即ち、
ビス(η5 −シクロペンタジエニル)チタニウム(テトラヒドロフルフリルオキシ)クロリドと、ジエチルアルミニウムクロリドと、から成る水素添加触媒1%トルエン溶液を、100g/hrで;
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を17%含有しており、シクロヘキサン溶媒を用いて調整した重合体溶液を10kg/hrで;
それぞれ第1の攪拌槽型反応器(内容積40L)の槽上部から供給した。
また、第1の攪拌槽型反応器の槽内圧力が0.8MPaとなるように、第2の攪拌槽型反応器(内容積40L)の槽上部から排出される水素を、第1の攪拌槽型反応器へ、その槽底部より供給するとともに、第2の攪拌槽型反応器の槽内圧力が1.0MPaとなるように、第2の攪拌槽型反応器へ、その槽底部より水素を供給した。
また、第1と第2の各攪拌槽型反応器の槽内の温度を110℃に維持した。
第1の攪拌槽型反応器から排出される重合体の水素添加率は65%、第2の攪拌槽型反応器から排出される重合体の水素添加率は87%であった。なお、平均滞留時間を第1及び第2の実施例より長くしても、高水素添加率を得ることはできなかった。
【0018】
【発明の効果】
本発明の方法では、オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液と均一系の水素添加触媒と水素とを連続流通式の攪拌槽型反応器の槽底部へ連続的に供給しつつ攪拌することにより該攪拌槽型反応器内部を満たすとともに該連続的な供給により該攪拌槽型反応器の槽上部から押し出すことでオレフィン性不飽和ポリマーを水素化するため、広範囲の粘度領域のオレフィン性不飽和ポリマーを、連続した工程で、安定した高い水素添加率に水素添加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の水素添加方法で用いる反応器システムの構成を示す説明図。実施例1の水素添加反応で用いたシステム。
【図2】実施の形態の水素添加方法で用いる反応器システムの構成を示す説明図。実施例1の水素添加反応で用いたシステム。
【図3】従来の水素添加方法で用いる反応器システムの構成を例示する説明図。比較例1の水素添加反応で用いたシステム。
Claims (9)
- オレフィン性不飽和ポリマーを含有する不活性有機溶媒溶液と均一系の水素添加触媒及び水素とを攪拌槽型反応器の槽底部へ連続的に供給しつつ攪拌することにより該攪拌槽型反応器内部を満たすとともに該攪拌槽型反応器の槽上部から反応物を連続的に押し出すことでオレフィン性不飽和ポリマーを水素化することを特徴とする水素添加方法。
- 請求項1に於いて、
攪拌槽型反応器から押し出した後、後段の1基もしくは順に設けた複数基の攪拌槽型反応器へ連続的に供給するとともに各攪拌槽型反応器から反応物を連続的に押し出すことを特徴とする水素添加方法。 - 請求項2に於いて、
各攪拌槽型反応器の各々へ水素を連続的に供給することを特徴とする水素添加方法。 - 請求項1〜請求項3の何れかに於いて、
攪拌槽型反応器から押し出した後に連続流通式の管型反応器へ連続的に供給することで更に水素化させることを特徴とする水素添加方法。 - 請求項1〜請求項4の何れかに於いて、
得られた水添ポリマーの水素添加率が90%以上であることを特徴とする水素添加方法。 - 請求項1〜請求項5の何れかに於いて、
不活性有機溶媒が、イソペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンのうちから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする水素添加方法。 - 請求項1〜請求項6の何れかに於いて、
均一系水素添加触媒が、下記一般式(1)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする水素添加方法。
- 請求項1〜請求項7の何れかに於いて、
攪拌槽型反応器の攪拌の所要動力が0.1〜5.0kW/m3 であることを特徴とする水素添加方法。 - 請求項1〜請求項8の何れかに於いて、
オレフィン性不飽和ポリマーが共役ジエン系ポリマーであることを特徴とする水素添加方法。
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