JP4953724B2 - 燃料電池および燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、液体燃料を用いた燃料電池および燃料電池システムに関する。
近年、情報化社会を支える携帯電子機器の小型電源として、単独の発電装置として高い発電効率が得られる可能性を秘めていることから、燃料電池に対する期待が高まっている。燃料電池は、アノード極で水素ガスやメタノール水溶液等の燃料を酸化し、カソード極で空気中の酸素を還元するという電気化学反応を利用し、携帯電子機器等に電子を供給する化学電池である。
多種ある燃料電池の中でも、電解質膜としてプロトン交換したイオン交換膜を用いる固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、以下「PEMFC」)は、100℃以下の低温動作においても高い発電効率が得られ、リン酸型燃料電池や固体酸化物型燃料電池等の高温で動作させる燃料電池に比べて、外部から熱を与える必要がなく大掛かりな補機類を必要としないことから、小型電源として実用化の可能性を秘めている。PEMFCに供給される燃料には、高圧ガスボンベを用いた水素ガスや、有機液体燃料を改質器により分解して得られる水素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガス等が用いられる。
PEMFCのアノード極にメタノール水溶液を供給し、メタノール水溶液から直接プロトンと電子を取り出すことにより発電を行なう、直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell、以下「DMFC」)は、改質器を必要としないことから、PEMFC以上に小型電源として実用化の可能性を秘めている。更には、大気圧で液体であるメタノール水溶液を燃料として用いることから、高圧ガスボンベを用いることなく、高い体積エネルギー密度を有した燃料を簡易容器で取り扱うことができ、小型電源として安全性に優れるとともに、燃料容器を小さくすることが可能である。このため、携帯電子機器の小型電源への応用、特に、携帯電子機器用の2次電池代替用途という観点で注目が集まっている。
DMFCでは、アノードおよびカソードで以下のような反応が起きる。
アノード:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
カソード:O2+4H++4e-→2H2
理論的に、メタノールは水と1:1モル(M)比で反応するため、メタノール1Mと水1Mとの混合液(すなわちメタノール濃度が約64質量%の混合液)を使用できるが、このように約64質量%の高濃度燃料を使用する場合、電解質として使われる固体高分子電解質膜での燃料のクロスオーバーによる発電性能の減少が大きいため、一般的に3〜10質量%の低濃度メタノールを使用する。このため、カソード側で生成する水を回収し、メタノールを3〜10質量%に希釈することが行われているが、一般的にはポンプ等の電力を必要とする補機を用いて生成水を回収し、燃料部への供給を行なっている。しかしながら、ポンプ等の補機を用いると、ポンプ等の補機を駆動するための駆動電力が必要になり、燃料電池が発電した電力を消費するため、燃料電池システムとしてのエネルギー利用効率が低下してしまう問題を抱えている。さらに、ポンプ等の補機自体の小型化が制限されることで、燃料電池システムの小型化が制限される問題を抱えている。
このような状況に応じて、電力を必要とする補機を必要とせずに生成水を回収し、燃料の希釈に利用する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された技術は、水の吸い上げ、放出が可能なカソードウィッキング構造体をカソードに組み込み、液体燃料の吸い上げ、放出が可能なアノードウィッキング構造体をアノードに組み込み、カソードウィッキング構造体より毛管作用の大きいウィック、水の流路、アノードウィッキング構造体より毛管作用の小さいウィック、を介してカソードウィッキング構造体とアノードウィッキング構造体とを接続した構造を有している。
このような構成により、カソード側で生成した水は、補機を用いることなく回収され、アノード側へ輸送されるので、燃料電池システムの小型化およびエネルギー利用効率の向上が可能である。
しかしながら、特許文献1に記載した構成では、カソードウィッキング構造体とアノードウィッキング構造体との間が液体で満たされていない状態では、アノードウィッキング構造体へ水を供給するための動力が別に必要となる問題を抱えている。また、運転中においても、カソード側で生成した水の取り出し手段とアノードウィッキング構造体との間に位置する水の流路が気泡などで閉塞した場合に、カソードウィッキング構造体からアノードウィッキング構造体へ水の供給が行われずに動作不良が起きる問題を抱えている。さらに、運転停止中においては、アノードウィッキング構造体の毛管作用よりもカソードウィッキング構造体の毛管作用が大きい場合に、アノードウィッキング構造体中の燃料がカソードウィッキング構造体へと流入してしまい、カソード極で燃料の燃焼反応が起き、燃料が無駄に消費されてしまう課題を抱えている。
特開2003−36866号公報
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、カソード側で発生する水を回収し、燃料希釈用の水として再利用する際に、水の回収およびアノード側への水の輸送を安定に行なうことを可能とするとともに、液体燃料のカソード側への流入を防止し、発電効率に優れた燃料電池および燃料電池システムを提供することである。
本発明は、アノード導電層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、カソード導電層がこの順に積層されてなる膜電極複合体と、該アノード触媒層および該カソード触媒層に接して積層される多孔質構造体とを少なくとも備え、多孔質構造体において、アノード触媒層に面する部位の毛管力が、カソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされてなる燃料電池に関する。
本発明の燃料電池においては、多孔質構造体が、アノード導電層およびカソード導電層に接して積層されてなることが好ましい。
本発明の燃料電池においては、多孔質構造体が複数種類の多孔質材料からなり、アノード触媒層に面する部位を構成する多孔質材料の毛管力が、カソード触媒層に面する部位を構成する多孔質材料の毛管力よりも大きくされることにより、多孔質構造体においてアノード触媒層に面する部位の毛管力がカソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされてなることが好ましい。
本発明の燃料電池においては、多孔質構造体が単一の多孔質材料からなり、アノード触媒層に面する部位における多孔質材料の密度がカソード触媒層に面する部位における多孔質材料の密度よりも大きくされることにより、多孔質構造体においてアノード触媒層に面する部位の毛管力がカソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされてなることが好ましい。
本発明の燃料電池においては、多孔質構造体において、カソード触媒層に面する部位からアノード触媒層に面する部位に向かって連続的に毛管力が大きくなるように、該多孔質構造体の毛管力に勾配が設けられてなることが好ましい。
本発明の燃料電池においては、多孔質構造体が、カソード触媒層と対向する面に複数の突起を有することが好ましい。
本発明の燃料電池においては、アノード触媒層、カソード触媒層、アノード導電層、カソード導電層からなる群から選択される少なくとも1つの部材が多孔質構造体と一体化されてなることが好ましい。
本発明の燃料電池においては、アノード触媒層、カソード触媒層、アノード導電層、およびカソード導電層が多孔質構造体と一体化されてなることが好ましい。
本発明はまた、燃料電池と燃料供給部とを少なくとも備え、燃料電池は上述の燃料電池であり、燃料供給部は、該燃料電池の多孔質構造体中の液体燃料の消費量と同等の量の液体燃料を供給するための機構を有する燃料電池システムに関する。
本発明の燃料電池においては、カソード側とアノード側とが多孔質構造体により繋がれ、かつ、該多孔質構造体において、アノード触媒層に面する部位の毛管力が、カソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされている。これにより、カソード側で発生した水の輸送経路である多孔質構造体が必ずしも液体で満たされた状態でなくても、動力を必要とする補機を用いずに、カソード側で発生した水を安定してアノード側へ輸送することが可能となる。また本発明の燃料電池によれば、液体燃料のカソード側への流入が防止される。よって、本発明によれば発電効率に優れた燃料電池および燃料電池システムを得ることが可能となる。
以下、本発明に係る燃料電池の典型的な構造について図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の好ましい例の燃料電池を模式的に示す分解斜視図であり、図2は、本発明の好ましい例の燃料電池を模式的に示す断面図である。本発明における燃料電池1は、アノード導電層2a、アノード触媒層3a、電解質膜4、カソード触媒層3b、カソード導電層2b、がこの順で積層されてなる膜電極複合体と、多孔質構造体5とを少なくとも備えるように構成される。本発明においては、図1に示すように、多孔質構造体5が、他の部材を介することなくアノード触媒層3aおよびカソード触媒層3bに接するように形成されている。
本発明に係る燃料電池のアノード側およびカソード側で生じる反応、ならびに多孔質構造体の役割につき、液体燃料としてメタノール水溶液を用いる場合を例に以下に説明する。
アノード側では、多孔質構造体5のアノード触媒層3aに面する部位にメタノール水溶液が供給されると、該メタノール水溶液はアノード触媒層3aに到達する。メタノール水溶液はアノード触媒層3aで
CH3OH+H2O→CO2↑+6H++6e-
の還元反応を起こし、電子とプロトンと二酸化炭素ガスとに分解される。
電子はアノード導電層2aにより集電され、携帯電子機器等の外部負荷(図示せず)を経由してカソード導電層2bへと移動する。プロトンは電解質膜4を介して、カソード触媒層3bへと移動する。
カソード側では、燃料電池1の外部より大気中の空気がカソード触媒層3bに供給され、カソード導電層2bから電子がカソード触媒層3bに供給され、電解質膜4からプロトンがカソード触媒層3bに供給される。カソード触媒層3bでは、空気中の酸素と電子とプロトンとが、
2+4H++4e-→2H2
の酸化反応を起こし、水を生成する。カソード触媒層3b上および多孔質構造体5内で凝縮した凝縮水は多孔質構造体5により吸水され、それ以外は液体水または水蒸気として外部へ排出される。多孔質構造体は本質的に毛管作用を有するため、本発明の燃料電池が多孔質構造体5を有することによって、該多孔質構造体5に吸水された水は、毛管作用により多孔質構造体5の内部に吸収され、カソード側からアノード側へ輸送される。輸送された水は液体燃料の希釈のために再利用される。これにより、高濃度の液体燃料が直接アノード側に供給されてしまうことによるクロスオーバーを効果的に防止し、発電特性に優れた燃料電池を得ることができる。
本発明の燃料電池における多孔質構造体5は、アノード触媒層に面する部位の毛管力がカソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくなるように制御されている。これにより、カソード側で発生した水の輸送経路である多孔質構造体が必ずしも液体で満たされた状態でなくても、動力を必要とする補機を用いずに、カソード側で発生した水を安定してアノード側へ輸送することが可能であるとともに、液体燃料がアノード側から多孔質構造体5の内部を通ってカソード側に漏洩してしまうことがない。よって、本発明によれば発電効率に優れた燃料電池を得ることができる。
本発明においては、多孔質構造体の毛管作用によってカソード側で発生した水の回収およびアノード側への輸送を行なうため、水の回収および輸送のためには該多孔質構造体が形成され、かつ、多孔質構造体において、アノード触媒層に面する部位の毛管力がカソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされていれば足りる。よって、本発明によれば必要な部材の点数の削減が可能であり、組み立て工程が簡素化されることによって燃料電池の生産性を向上させることが可能となる。
なお、本発明の燃料電池において、燃料として、純メタノール、または電解質膜4を劣化させてしまうような高濃度メタノールを用いるときは、該電解質膜4の劣化を防止するために、あらかじめ多孔質構造体5のアノード触媒層3aに面する部位に適量の水を含浸させておくことが好ましい。
次に、燃料電池1を構成する各要素について説明する。
(電解質膜4)
電解質膜4としては、典型的には固体高分子電解質膜が用いられる。固体高分子電解質膜としては、燃料電池においてより高い発電特性が得られる点で、プロトン伝導率が1×10-5S/cm以上であるものが好ましい。具体的には、パーフルオロスルフォン酸ポリマや炭化水素系ポリマ等が好ましく用いられる。特に、プロトン伝導率が1×10-3S/cm以上の高分子電解質膜は好ましく用いられる。また、電解質膜4の膜厚は、抵抗を小さくしてより高い出力電圧が得られる点で、200μm以下が好ましく、燃料のクロスオーバーの抑止効果が高い点で、1μm以上が望ましい。
(アノード触媒層3a,カソード触媒層3b)
アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3bは、典型的には、触媒と該触媒を担持した導電性粒子とイオン導電性バインダとから構成される。触媒としては、たとえばPt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Irなどの貴金属や、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Znなどの卑金属が例示され、単独もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。導電性粒子としては、たとえばアセチレンブラックやケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレンなどの炭素粒子を用いることができる。イオン導電性バインダとしては、たとえば電解質膜に用いられるものと同様の高分子電解質を用いることができる。
またアノード触媒層3aおよびカソード触媒層3bの厚みは、プロトン伝導の抵抗および電子導電の抵抗を小さくし、内部まで燃料または酸素の供給を良好に行なえる点で0.1mm以下であることが好ましく、十分な触媒担持量を得ることにより出力電圧を良好に向上させることができる点で0.1μm以上であることが好ましい。
(アノード導電層2a,カソード導電層2b)
アノード導電層2aは、アノード触媒層3aと電子の授受を行なう機能を有し、カソード導電層2bは、カソード触媒層3bと電子の授受を行なう機能を有する。また、アノード導電層2aおよびカソード導電層2bは、電気的配線、すなわち取り出し電極としての機能をも有している。
アノード導電層2aおよびカソード導電層2bの材料には、配線における電圧降下を抑制するためAu、Ag、Pt、Ni、Cu、Al、W、SnおよびTiからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んだ金属箔を用いることが好ましく、さらには、Au、Cu、Ti、Snからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含むことがより好ましい。上記の元素を含むことにより、アノード導電層2a、カソード導電層2bの比抵抗が小さくなるため、アノード導電層2a、カソード導電層2bの抵抗による電圧低下を軽減し、より高い発電特性を得ることが可能となる。
アノード導電層2a、カソード導電層2bのそれぞれの好ましい厚みは、用いる金属材料の比抵抗の値によっても異なるが、配線における電圧低下をより良好に抑制できる点で0.1μm以上の厚みであることが好ましい。
本発明においては、図1に示すように、多孔質構造体5が、アノード導電層2aおよびカソード導電層2bに接して積層されることができ、この場合、カソード導電層2b上に凝縮した生成水が速やかに多孔質構造体5へと移動することができ、アノード導電層2aと多孔質構造体5との隙間からの空気の流入を防ぐことができる点で好都合である。
本発明においては、アノード触媒層3a、カソード触媒層3b、アノード導電層2a、カソード導電層2bからなる群から選択される少なくとも1つの部材が多孔質構造体と一体化されていることが好ましい。この場合、一体化されている部位において剥離による隙間の発生が良好に防止される。
アノード触媒層3aと多孔質構造体5とが一体化されている場合には、アノード触媒層3aと多孔質構造体5との界面に隙間が生じないため、アノード触媒層3aに対する燃料の供給が不均一になることを防止でき、燃料電池に良好な発電特性が付与される。
また、カソード触媒層3bと多孔質構造体5とが一体化されている場合には、カソード触媒層と多孔質構造体との界面に隙間が生じないため、カソード触媒層3bの凝縮水を効率良く多孔質構造体5に吸い上げ、カソード触媒層3bのフラッディング、すなわちカソード触媒層3bで発生した水が飽和してしまう現象を防止することができるとともに、アノード側に供給される液体燃料の希釈が良好に行なわれ、電解質膜4におけるクロスオーバーを防止することができ、燃料電池に良好な発電特性が付与される。
アノード導電層2aと多孔質構造体5とが一体化されている場合には、該アノード導電層2aと該多孔質構造体5との剥離が防止されることによって、アノード触媒層3aと多孔質構造体5との密着性も良好となり、燃料がより安定かつ均一に供給される点で有利である。
またカソード導電層2bと多孔質構造体5とが一体化されている場合には、該カソード導電層2bと該多孔質構造体5との剥離が防止されることによって、カソード触媒層3bと多孔質構造体5との密着性も良好となり、カソード側で発生した水を多孔質構造体5に効率良く吸着させ、カソード触媒層3bにおけるフラッディングおよび電解質膜4におけるクロスオーバーを防止することができる。
特に、アノード触媒層3a、カソード触媒層3b、アノード導電層2aおよびカソード導電層2bのすべてが多孔質構造体5と一体化されていることが好ましく、この場合、特に優れた発電特性が得られる。
なお、本発明において、一体化とは、具体的には化学結合やアンカー効果や粘着力等により接合することを意味する。
アノード導電層2aおよびカソード導電層2bは、それぞれ、層厚方向に貫通孔を有する形状であることが好ましい。このような形状としては、板や箔に複数の穴を開けた形状またはメッシュ状が好ましく例示できる。アノード導電層2aが層厚方向に貫通孔を有する場合、多孔質構造体5からアノード導電層2aの開孔部を介してアノード触媒層3aに液体燃料が効率良く供給される点で有利である。また、カソード導電層2bが層厚方向に貫通孔を有する場合、カソード触媒層3bで発生した水がカソード導電層2bの開孔部を介して多孔質構造体5に効率良く吸い上げられる点で有利である。
アノード導電層2aおよび/またはカソード導電層2bが貫通孔を有する場合、該貫通孔の部位で多孔質構造体5とアノード触媒層3aおよび/またはカソード触媒層3bとを簡便に一体化できる点でも好ましい。
アノード導電層2aおよびカソード導電層2bの腐食による劣化が問題となる場合には、アノード導電層2aおよびカソード導電層2bに、酸性水溶液雰囲気下または酸素雰囲気下で表面に金属イオンが溶出せずかつ不導体層を形成しないような耐腐食性を有した材質として、Au、Pt、Pd、Ru等の貴金属またはカーボンをコーティングしても良い。これにより、アノード導電層2aおよびカソード導電層2bからの金属イオンの溶出を防止できるため、アノード触媒層3a中およびカソード触媒層3b中のイオン導電性バインダおよび電解質膜4への該金属イオンの混入の恐れもなくなる。さらには、アノード導電層2aおよびカソード導電層2bが不導体層を形成することが無いため、燃料電池1の長期信頼性を得ることが可能となる。
(多孔質構造体5)
多孔質構造体5は、単一または複数種類の多孔質材料から構成されることができ、カソード触媒層3bで発生した水をアノード触媒層3aへ供給し、さらに多孔質構造体5に供給された燃料をアノード触媒層3aへ供給することが可能となるような、多数の連通孔を有しており、毛管力により液体を吸い上げる機能を有している。
多孔質構造体5が液体を吸い上げるための毛管力は該多孔質構造体5の材質、孔径等により左右されるため、多孔質構造体5においては、アノード触媒層に面する部位の毛管力がカソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくなるように材質、孔径等の組み合わせが設定される。なお本発明において、毛管力とは、特に、水(H2O)および液体燃料に対する毛管力を指す。毛管力の大小は、たとえば、異なる毛管力を持つ多孔質材料を同一形状、同一サイズに成形し、多孔質材料の下端部を液体に浸漬し、液体の飽和吸い上げ高さを計測する方法により比較できる。
多孔質構造体5を構成する多孔質材料は、水および液体燃料に溶解しなければ特に限定されないが、金属等の無機物質や高分子材料等の有機物質からなる、発泡体、繊維束、織繊維、不織繊維、多孔質焼結体、あるいはこれらの材料の組み合わせからなるものが好ましく、例えば、天然繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリフェニレンなどから選択される1種または2種以上の組み合わせからなる繊維束、織繊維、不織繊維を好ましく用いることができる。また、金属などの導電性を有する多孔質材料を用いる場合は、アノード側とカソード側とが電気的に短絡することを防ぐため、多孔質構造体におけるアノード側とカソード側との間の導電性を遮断するように絶縁性の多孔質材料を組み合わせることが好ましい。絶縁性の多孔質材料としては、親水性であり耐薬品性を有する観点から、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等が好ましい。
多孔質構造体5を構成する多孔質材料の孔径は、カソード触媒層3bで発生した液体水を多孔質材料内に吸い上げることができれば特に限定はないが、0.1〜300μm、さらに0.5〜200μmであることがより好ましい。0.1μm以上である場合該液体水をより効率良く吸い上げることができ、300μm以下である場合多孔質構造体の毛管力および耐久性がより良好となる。
多孔質構造体5を構成する多孔質材料の気孔率は、孔の閉塞を防ぐため20%以上、さらに30%以上、さらに40%以上が好ましく、材料の機械的強度を確保するため98%以下、さらに95%以下、さらに90%以下が好ましい。なお上記の気孔率は、水銀圧入法により算出される値である。
また、燃料電池1の発電量により、カソード触媒層3bから発生する水およびアノード触媒層3aで反応に消費される水の量が変化するため、多孔質材料の孔径および気孔率は発電量に応じて適宜設定されることが好ましい。これにより、多孔質材料からなる多孔質構造体5は適当な毛管力を有することができ、カソード触媒層3bから発生した水を効率良く吸い上げ、多孔質構造体5の連通孔を通じてアノード触媒層3aまで水を輸送することができるとともに、多孔質構造体5に供給された燃料をアノード触媒層3aまで輸送することが可能となる。
本発明においては、多孔質構造体5のカソード触媒層3bに面する部位の毛管力よりも、該多孔質構造体5のアノード触媒層3aに面する部位の毛管力が大きくされる。これにより、多孔質構造体5において、カソード側からアノード側への液体の輸送能力を高めることができるため、カソード側で発生した水を効率良くアノード側に供給できる。その結果、カソード側のフラッディングを抑制することができる。また、本発明においては、多孔質構造体5のカソード触媒層3bに面する部位の毛管力よりも、該多孔質構造体5のアノード触媒層3aに面する部位の毛管力が大きくされていることにより、アノード側の燃料が多孔質構造体5内部の連通孔を通ってカソード側に流入してしまうという現象を防止し、燃料を効率良く反応に利用することができる。
多孔質構造体5において、カソード触媒層3bに面する部位とアノード触媒層3aに面する部位との間で毛管力の差を設ける方法としてはたとえば下記の方法が例示できる。
多孔質構造体5が複数種類の多孔質材料からなる場合には、アノード触媒層3aに面する部位を構成する多孔質材料の毛管力がカソード触媒層3bに面する部位を構成する多孔質材料の毛管力よりも大きくなるように多孔質材料を組み合わせる方法が好ましく採用され得る。具体的には、アノード触媒層3aに面する部位を構成する多孔質材料としてポリエステルを用い、カソード触媒層3bに面する部位を構成する多孔質材料としてポリカーボネートを用いる組み合わせ等が例示できる。
一方、多孔質構造体5が単一の多孔質材料からなる場合には、カソード触媒層3bに面する部位において圧縮されている割合よりもアノード触媒層3aに面する部位において圧縮されている割合が高くなるように多孔質材料を圧縮成型することによって、アノード触媒層3aに面する部位の多孔質材料の密度をカソード触媒層3bに面する部位の多孔質材料の密度よりも大きくし、多孔質構造体5の毛管力がカソード触媒層3bに面する部位よりもアノード触媒層3aに面する部位において大きくなるように設定する方法が挙げられる。この場合、カソード触媒層3bに面する部位における厚みがアノード触媒層3aに面する部位における厚みよりも小さくなるように多孔質材料を形成した後、両厚みが一様になるように圧縮成型する方法や、厚みが一様な多孔質材料を形成した後、異なる圧縮応力で圧縮成型することによりカソード触媒層3bに面する部位の厚みがアノード触媒層3aに面する部位の厚みよりも大きくする方法が好ましく採用され得る。
なお、本発明における多孔質材料の圧縮成型は常温、加熱のいずれの条件下で行なわれても良い。
本発明においては、多孔質構造体5のカソード側からアノード側への液体の輸送能力を高めるため、カソード触媒層3bに面する部位からアノード触媒層3aに面する部位に向かって連続的に毛管力が大きくなるように、多孔質構造体の毛管力に勾配を設けることがより好ましい。
典型的には、多孔質構造体5のカソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって毛管力が連続的に大きくなるように多孔質構造体5を形成することが好ましい。ここで、連絡部5cとは、多孔質構造体5のうちアノード側とカソード側とを繋いでいる部位を指し、アノード側の端部5aとは、多孔質構造体5のうち、アノード側において連絡部5cから最も離れた領域を指し、カソード側の端部5bとは、多孔質構造体5のうち、カソード側において連絡部5cから最も離れた領域を指す。このような多孔質構造体5は、たとえば下記の方法で形成できる。
多孔質構造体5が単一の多孔質材料からなる場合には、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって厚みが大きくなるように厚み勾配を持たせた多孔質材料を形成し、該多孔質材料全体を一定の厚みに圧縮成型する方法が好ましく採用され得る。この場合、多孔質材料の密度が、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって大きくされるため、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって毛管力が連続的に大きくされた毛管力の勾配を設けることができる。
一方、単一の多孔質材料を用いる場合、厚みが一様な多孔質材料を厚み勾配をもたせるように圧縮成型してもよい。この場合、一様な厚みの多孔質材料を形成した後、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって連続的に厚みが小さくなるように圧縮成型し、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって連続的に多孔質材料の密度を大きくすることによって、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって連続的に毛管力が大きくされた毛管力の勾配を設けることができる。
本発明において、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって連続的に毛管力が大きくなるように毛管力の勾配が設けられる場合、カソード触媒層3bに面する部位の多孔質材料の平均密度が、アノード触媒層3aに面する部位の多孔質材料の平均密度よりも小さくされていれば良いが、毛管力の勾配をより大きくできる点で、カソード触媒層3bに面する部位の多孔質材料の最大密度がアノード触媒層3aに面する部位の多孔質材料の最小密度よりも小さくされることがより好ましい。
本発明においては、複数種類の多孔質材料を組み合わせることにより、カソード触媒層3bに面する部位からアノード触媒層3aに面する部位へ連続的に毛管力が大きくなるような毛管力の勾配が設けられた多孔質構造体を形成しても良い。
多孔質構造体5の厚みは、カソード側で吸い上げた水およびアノード側に供給された燃料で多孔質構造体5が直ちに飽和されるのを防ぐために、0.2mm以上、さらに0.5mm以上が好ましい。一方、液体燃料の供給を迅速に行なうことができる点で2mm以下、さらに1.5mm以下が好ましい。
多孔質構造体5の形状は、アノード触媒層3aに面する部位からカソード触媒層3bに面する部位へと連通孔が形成されるように多孔質材料が繋がっておれば特に限定されないが、多孔質構造体5の大部分の孔が液体で閉塞されたときに、酸素供給律速になるのを防ぐために、多孔質構造体5のカソード触媒層3bと対向する面には複数の突起6が形成されていることが好ましい。なお突起が形成される場合には、多孔質構造体の厚みは突起が形成されていない部位の厚みを意味する。
突起6を有する多孔質構造体5を形成する方法としては、突起状のパターンを有する金型または木型を用いて多孔質材料を圧縮成型する方法等が挙げられる。突起を設けた多孔質構造体は、突起を設けた多孔質材料の1層で形成されても良く、突起を設けた多孔質材料と突起を設けていない多孔質材料との積層体で形成されても良い。
突起6の高さは、酸素の供給を良好に行なえる点で、0.5mm以上、さらに1mm以上であることが好ましい。一方、多孔質構造体5の物理的強度が良好である点で該突起6の高さは5mm以下、さらに3mm以下が好ましい。
突起6の直径は、多孔質構造体5の物理的強度が良好である点で0.1mm以上、さらに0.5mm以上であることが好ましく、酸素の供給を良好に行なえる点で、10mm以下、さらに5mm以下が好ましい。
突起6のピッチは、酸素の供給を良好に行なえる点で、0.1mm以上、さらに0.5mm以上が好ましく、生成水を効率よく吸い上げることができる点で、20mm以下、さらに10mm以下が好ましい。
多孔質構造体5に突起6が設けられることにより、該突起6間には適当な空間が設けられ、多孔質構造体5とカソード触媒層3bとの積層界面付近において、面内方向、すなわち面厚方向と垂直をなす方向の気体の対流が起こりやすくなる。このため、多孔質構造体5の内部の孔が液体で閉塞されることによって多孔質構造体5に対して面厚方向への気体の透過が制限された場合でも、多孔質構造体5に対して面内方向からの酸素の供給がなされ、燃料電池1の安定した発電が可能となる。
(燃料電池システム)
本発明はまた、燃料電池と燃料供給部とを少なくとも備え、燃料電池として上述したような燃料電池を用いた燃料電池システムに関する。図3は、本発明の好ましい例の燃料電池システムを模式的に示す概略図である。図3に示す燃料電池システム7は、図1および図2に示す構造の燃料電池と、燃料貯蔵部8と、燃料供給部9と、筐体10とから構成される。
燃料供給部9は、燃料貯蔵部8および筐体10と接続されており、燃料供給部9が動作することにより、燃料貯蔵部8の内部に保持された燃料は、筐体10を通して多孔質構造体5へ供給される。筐体10は、単一または複数の開口11を有しており、開口11から大気中の空気が筐体10内のカソード触媒層3bへ供給される。
燃料供給部9は、液体燃料を供給する機能を有しておれば特に限定されないが、燃料供給部9としてはたとえばポンプを用いることができる。多孔質構造体5へ過剰な燃料を供給して多孔質構造体5の空隙を液体で飽和させることを防ぐために、燃料供給部9は、燃料電池1の発電量に応じた多孔質構造体5中の液体燃料の消費量と同等の量の液体燃料を供給するための機構を有するように構成されることが好ましい。
多孔質構造体5中の液体燃料の消費量と同等の量の液体燃料を供給する機構としては、例えば、燃料電池1から出力される直流電流量を計測し、計測した直流電流量から発電によって消費された発電に寄与する物質量を算出し、算出した該物質量と同等の量を含む液体燃料を燃料供給部9により供給するように制御された機構が好ましく採用され得る。
これにより、適当な保液量になるように多孔質構造体5が設定されるため、供給される燃料によって多孔質構造体5が液体で飽和することなく、燃料のカソード側への流入を防ぎ、長時間発電させてもより安定した出力を得ることが可能となる。
[実施例]
<実施例1>
本実施例では、図1および図2に示す構造の燃料電池1を作製し、さらに、該燃料電池が組み込まれ図3に示す構造を有する燃料電池システム7を作製した。
電解質膜4として、40mm×40mm、厚さ約175μmのNafion(登録商標)117(デュポン社製)を用いた。
触媒ペーストは下記の手順により作製した。
Pt担持量32.5wt%、Ru担持量が16.9wt%のPtRu粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(田中貴金属社製TEC66E50)と、20wt%のNafionのアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、イソプロパノールと、アルミナボールとを、質量比0.5:1.5:1.6:100の割合でテフロン(登録商標)容器にいれ、撹拌脱機を用いて500rpmで50分間の混合を行なうことにより、アノード触媒ペーストを作製した。また、Pt担持量46.8wt%のPt粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(田中貴金属社製TEC10E50E)を用いて、上記のアノード触媒ペーストと同様の方法で、カソード触媒ペーストを作製した。
上記で得たアノード触媒ペーストを用いて、Nafion117の一方の面にアノード触媒層3aを形成した。すなわち、触媒担持量が2mg/cm2になるように、開孔部が23×23mmの形状のスクリーン印刷版を用いて、Nafion117の中心にアノード触媒ペーストをスクリーン印刷した。その後、アノード触媒ペーストを室温にて乾燥させて、約20μmの厚さのアノード触媒層を形成した。
同様に、Nafion117のもう一方の面の中心の、アノード触媒層と対応する位置に、上記で得たカソード触媒ペーストをスクリーン印刷し、約20μmの厚さのカソード触媒層3bを形成した。以後、上記でNafion117にアノード触媒層3aおよびカソード触媒層3bを形成したものを、CCM(Catalyst Cuated Membrean)と記載する。
アノード導電層2aおよびカソード導電層2bとしては、線径70μmφ、100meshの金メッシュ(ニラコ社製)を23×50mmのサイズに切り出して用いた。
上記の2枚の金メッシュを用い、CCMをはさむようにして触媒面と金メッシュの端部とを重ね合わせ、300μmのステンレススペーサを配置し、130℃、5kNで2分間ホットプレス処理することで、膜電極複合体を作製した。このとき、2枚の金メッシュは互いに異なる方向にCCMからはみ出すように重ね合わせた。
多孔質構造体5としては、単一の多孔質材料からなり、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって毛管力が連続的に大きくなるように、カソード側の端部5bから連絡部5cを経てアノード側の端部5aに向かって多孔質材料の密度が連続的に大きくされた多孔質構造体を作製した。作製手順は下記の通りである。
多孔質材料として、低沸点ポリエステルバインダーを含有した重量密度600g/cm3のポリエステル製不織布(ベル開発社製)を用いた。該不織布を23mm×23mm×1mmの大きさに切り出した。切り出した不織布を、23mm×23mmの領域内に直径3mm、ピッチ3.5mmの開口を形成した厚さ5mmのステンレス板と、該ステンレス板の開口部と一致する場所に直径1mm、高さ4mmの突起を形成したステンレス板とで、ステンレス板の間に1mmのスペーサを配置し、130℃、5kNで2分間ホットプレス処理し、5kNの圧力を保持したまま、80℃以下まで自然冷却させることにより、直径3mm、高さ3mm、ピッチ3.5mmの突起を形成した多孔質材料を作製した。
次に、上記のポリエステル製不織布をサイズ23mm×70mmに切り出した。なお厚みは、一方の端部から23mmまでを0.5mmから1.5mmの勾配とし、23mmから70mm(すなわち他方の端部)までを2.5mmから5mmの勾配とした形状に切り出した。上記の工程で作製した突起を形成した多孔質材料を、上記の工程で使用した開口を有した厚さ5mmのステンレス板の上に、多孔質材料の突起とステンレス板の開口とが一致するように重ねた。さらに、上記で作製した厚み勾配を有した不織布の厚み0.5mmから1.5mmの勾配部を、突起を形成した多孔質材料の上に位置するように重ね、厚さ1mmのステンレススペーサを配置し、130℃、5kNで2分間ホットプレス処理し、5kNの圧力を保持したまま、80℃以下まで自然冷却させた。上記の方法により、サイズ23mm×70mmの多孔質材料の一方の端部から23mmまでの部位を、突起および密度勾配が設けられた2層構造の多孔質材料とした。
上記で得た多孔質材料に設けた突起の先端部に、転写法により上記のカソード触媒ペーストを塗布した。また、該多孔質材料の突起が形成されている側の面の、上記他方の端部から23mmまでの、23mm×23mmの領域に、転写法によりアノード触媒ペーストを塗布した。上記の多孔質材料を中心部から折り曲げるようにして、膜電極複合体のカソード触媒面とアノード触媒面とにそれぞれ多孔質材料の突起部とアノード触媒塗布面とを重ね合わせて、5.15mmのステンレススペーサを配置し、130℃、5kNで2分間ホットプレス処理することにより、膜電極複合体と多孔質材料とを一体化した。上記の方法により、アノード導電層2a、アノード触媒層3a、電解質膜4、カソード触媒層3b、カソード導電層2bがこの順に積層されてなる膜電極複合体と、該アノード触媒層3aおよび該カソード触媒層3bに接して積層された多孔質構造体5とを備える燃料電池1を作製した。
次に、図3に示す構成の燃料電池システム7を作製した。まず、筐体10としてアノード筐体およびカソード筐体を形成した。アノード筐体としては、60mm×60mm、厚さ5mmのアクリル板を用い、アクリル板を通して燃料を供給できるように、アクリル板の中心に内径1mmのチューブコネクタの取り付け加工を行なった。一方、カソード筐体としては、60mm×60mm、厚さ5mmのアクリル板を用いた。アノード筐体の中心と膜電極複合体のアノード触媒層3aの中心とが重なるように、多孔質構造体5のアノード側の面の上にアノード筐体を配置し、さらに多孔質構造体5のカソード側の面の上からカソード筐体を重ねあわせた後、アノード筐体およびカソード筐体の外周部を固定した。
多孔質構造体5のアノード側に水を含ませるため、アノード筐体のチューブコネクタ部から注射器を用いて0.4ccの水を供給した。次に、燃料貯蔵部8と燃料供給部9としてのペリスタポンプ(アトー株式会社製)とに該チューブコネクタ部を接続した。
該ペリスタポンプを用いて64wt%のメタノール水溶液を0.2cc/hrで供給するとともに、室温中で0.1A/cm2負荷をかけて発電特性を評価したところ、5時間後に出力電圧は0.25Vであった。また、筐体10の表面温度は約40℃であった。
<比較例1>
多孔質構造体のアノード側とカソード側との中間部を切断し、アノード側とカソード側とが分断された形状の多孔質構造体を組み込んだこと以外は、実施例1と同様に燃料電池および燃料電池システムを作製した。
実施例1と同様の条件で発電特性を評価したところ、1時間後に出力電圧は0Vとなり、筐体の表面温度が70℃以上に発熱した。
比較例1における出力低下および発熱は、高濃度燃料が直接アノード側へ供給されたことによるクロスオーバーが原因であると考えられる。実施例1において、安定した発電が可能となり、極度の発熱が見られなかったのは、アノード側からカソード側まで繋がっており、かつアノード側とカソード側とにおける毛管力に差を設けた多孔質構造体を形成したことにより、カソード側で発生した水を多孔質構造体が吸い上げてアノード側まで輸送し、燃料希釈に再利用することができたためと考えられる。実施例1と比較例1との結果の比較により、本発明の燃料電池においては、電解質膜を劣化させてしまうような高濃度メタノール水溶液を用いた場合にも安定した出力を維持できることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の燃料電池によれば、動力を必要とする補機を用いずにカソード側で発生した水を安定してアノード側へ輸送することが可能となるとともに、液体燃料のカソード側への流入が防止されるため、優れた発電効率が付与される。本発明の燃料電池および燃料電池システムは、たとえば、携帯電子機器用の小型電源等に対して好適に適用され得る。
本発明の好ましい例の燃料電池を模式的に示す分解斜視図である。 本発明の好ましい例の燃料電池を模式的に示す断面図である。 本発明の好ましい例の燃料電池システムを模式的に示す概略図である。
符号の説明
1 燃料電池、2a アノード導電層、2b カソード導電層、3a アノード触媒層、3b カソード触媒層、4 電解質膜、5 多孔質構造体、5a,5b 端部、5c 連絡部、6 突起、7 燃料電池システム、8 燃料貯蔵部、9 燃料供給部、10 筐体、11 開口。

Claims (10)

  1. アノード導電層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、カソード導電層がこの順に積層されてなる膜電極複合体と、前記アノード触媒層および前記カソード触媒層に接する多孔質構造体とを少なくとも備え、
    前記多孔質構造体において、前記アノード触媒層に面する部位の毛管力が、前記カソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされてなる、燃料電池。
  2. 前記多孔質構造体が複数種類の多孔質材料からなり、前記アノード触媒層に面する部位を構成する多孔質材料の毛管力が、前記カソード触媒層に面する部位を構成する多孔質材料の毛管力よりも大きくされることにより、前記多孔質構造体において前記アノード触媒層に面する部位の毛管力が前記カソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされてなる、請求項に記載の燃料電池。
  3. 前記多孔質構造体が単一の多孔質材料からなり、前記アノード触媒層に面する部位における前記多孔質材料の密度が前記カソード触媒層に面する部位における前記多孔質材料の密度よりも大きくされることにより、前記多孔質構造体において前記アノード触媒層に面する部位の毛管力が前記カソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされてなる、請求項1または2に記載の燃料電池。
  4. 前記多孔質構造体において、前記カソード触媒層に面する部位の多孔質材料の最大密度が前記アノード触媒層に面する部位の多孔質材料の最小密度よりも小さくされることにより、前記多孔質構造体において前記アノード触媒層に面する部位の毛管力が前記カソード触媒層に面する部位の毛管力よりも大きくされてなる、請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池。
  5. 前記多孔質構造体において、前記カソード触媒層に面する部位から前記アノード触媒層に面する部位に向かって連続的に毛管力が大きくなるように、前記多孔質構造体の毛管力に勾配が設けられてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池。
  6. 前記多孔質構造体、前記アノード導電層、前記アノード触媒層、前記電解質膜、前記カソード触媒層、前記カソード導電層、前記多孔質構造体がこの順に積層され、前記多孔質構造体は前記アノード触媒層および前記カソード触媒層とそれぞれ前記アノード導電層の貫通孔と前記カソード電極層の貫通孔を介して接している、請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池。
  7. 前記多孔質構造体が、前記カソード触媒層と対向する面に複数の突起を有する、請求項1〜のいずれかに記載の燃料電池。
  8. 前記アノード触媒層、前記カソード触媒層、前記アノード導電層、前記カソード導電層からなる群から選択される少なくとも1つの部材が前記多孔質構造体と一体化されてなる、請求項1〜のいずれかに記載の燃料電池。
  9. 前記アノード触媒層、前記カソード触媒層、前記アノード導電層、および前記カソード導電層が前記多孔質構造体と一体化されてなる、請求項1〜のいずれかに記載の燃料電池。
  10. 燃料電池と燃料供給部とを少なくとも備え、
    前記燃料電池は請求項1〜のいずれかに記載の燃料電池であり、
    前記燃料供給部は、前記燃料電池の前記多孔質構造体中の液体燃料の消費量と同等の量の液体燃料を供給するための機構を有する、燃料電池システム。
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