ところで、上記特許文献1に示されているように、処方度数の度付きレンズの眼鏡ではレンズ素材は、左右の眼鏡レンズを個別のレンズ素材から切削、研削して別々に形成されるが、特許文献2のように一体形のレンズ素材から眼鏡を形成することについては、サングラスや保護眼鏡のように、度付き眼鏡ではなく、度のない眼鏡としてのみ利用されており、度付きレンズで、かつ左右一体形の一対の眼鏡レンズとしての眼鏡レンズを形成する方法が提案された例はない。さらに、特許文献3の発明は、眼鏡フレームの形状を、眼鏡レンズの3次元フロントの形状に適合するように製作する方法について提案しているが、眼鏡フレームを正確に製作できたとしても、眼鏡に装着すると必ずしも、3次元眼鏡フロントの形状に一致するとは限らない。眼鏡の装用者の目は、遠視、近視、乱視、老眼のいずれであれ、左右別々にレンズ内面に必要な球面加工、或いは非球面加工等の内面研削を施し、かつ外周をレンズ枠に対応する形状に切削、研削して加工することを前提としているからであり、度付きレンズの眼鏡に用いられるレンズ素材は一般に左右の目に対して個別の円形のレンズ素材が利用されているのが現状である。
しかし、上記左右の眼鏡レンズを個別にレンズ枠に嵌合させた眼鏡を実際に顔に装着すると、テンプルが左右に広がるため、これに影響されて左右の眼鏡レンズが作る角度が変化し、又眼鏡レンズが左右2枚に分かれていることに起因して、例えばレンズカット加工時に左右のレンズの中心位置が少しずれたり、乱視レンズの場合は同じくレンズカット時に乱視軸が少し変化したりする等の弊害が生じるが、このような弊害は実際には避けられないため許容範囲として取り扱われている。そこで、処方度数、乱視軸の角度、PD値(瞳孔間距離)を正確に保持して、左右それぞれの眼鏡レンズが1つの処方レンズとして左右の目に作用し、上記のような不都合を生じないようにする眼鏡レンズを製作することが求められている。
又、特許文献1の加工方法により加工された眼鏡レンズでは、種々の形式、材質のフレーム形状に眼鏡レンズを適合させることを前提として眼鏡レンズの形状が設計されてきたため、各眼鏡レンズの4つのコーナ部の形状はそれぞれ円弧曲線状に切削、研削して形状が決められていた。特に左右の眼鏡レンズの中央寄り側辺と上辺の交叉するコーナ部の形状は、眼鏡レンズの機能、特に視野の広さに影響を及ぼすという点でその形状をどのように決めるかはレンズ設計の上で重要な要素であるが、上記従来の形状を前提とすると眼鏡レンズでは、加工技術の制約から上記中央寄りコーナ部の外周縁を玉形の円形状の曲線状とするのが一般的であり、そのため中央寄りの視野が狭くなり、十分な視野が確保できない。このような制約は眼鏡という特定の視力矯正具では避けることができないと考えられていたからである。
また、従来の眼鏡のレンズ枠にはレンズを嵌めこむと、レンズが枠から外れないようにレンズ枠にレンズ外周のヤゲン凸部又は凹部が嵌合して固定される。このため、例えば薄青、薄茶等の色付き又は偏光眼鏡レンズを複数種類取り揃えておき、使用時の目的に応じて使い別けたいとしても、現実には取り外しが容易でないため、不可能であった。これは、眼鏡レンズは安全のためレンズ枠に固定する必要があると考えられているからである。又、眼鏡レンズをレンズ枠に対して着脱自在とする形式として、従来度付きの眼鏡レンズをレンズ枠に対して、レンズに着脱のための貫通する孔あけをすることなく着脱式とする形式の眼鏡を提案した例はない。又、度付きの眼鏡レンズをレンズ枠に対して着脱自在とするには、着脱可能とすると共に装着時には簡単に外れないように製作し、かつ複数の眼鏡レンズを取り替えて使用するため、全体のコストが安価に製作できるものとする必要がある。
この発明は、上記の種々の問題に留意して、左右の度付きの眼鏡レンズを左右一体の一枚のレンズ素材から一体形状のままに形成し、それぞれの眼鏡レンズの処方度数、乱視軸の角度、及びPD値(瞳孔間距離)を正確にそれぞれの眼鏡レンズで保持し、実際に眼鏡を掛けたときに眼鏡単体で測定した時とでレンズの屈折変化による見え方に影響を及ぼさない左右一体形の一対の眼鏡レンズを提供することを課題とする。
この発明のもう一つの課題は、上記の左右一体形の一対の眼鏡レンズを用い、これをレンズ枠又は、智部やテンプルとの組み合わせにより上記のレンズの屈折変化による見え方への影響を排除した左右一体形眼鏡を提供することを課題とする。
さらに、レンズ形状の形成において、左右一体形の一対の眼鏡レンズの中央にアーチ状のレンズコーナ部を形成することにより、中央寄りのレンズコーナ部の視野を拡大した左右一体形眼鏡を提供することを課題とする。
この発明は、上記の課題を解決する手段として、左右一体形のレンズ素材に、左右の目に対応した必要な加工をそれぞれの位置で施して処方度数の度付きレンズとして形成された左右一体で一対の眼鏡レンズから成り、この一対の眼鏡レンズを中央位置のブリッジ部で左右連続とし、このブリッジ部の裏面の境界部を緩やかな曲面状に変化する連続面として形成した左右一体形の一対の眼鏡レンズの構成としたのである。
上記の構成において、眼鏡レンズの中央側の側辺を広げ、眼鏡レンズの中央側の上辺と側辺の交差部を中央位置までコーナ部として延長し、このコーナ部がブリッジ部に連続する下部辺の角部を逆円弧状曲線部で形成し、コーナ部の延長端を中央位置で左右連続のブリッジ部として形成することが出来る。又、眼鏡レンズの左右の逆円弧状曲線部を連ねて、ブリッジ部の下部辺全体をアーチ状に形成することもできる。
上記の構成としたこの発明の左右一体形の一対の眼鏡レンズは、左右一体でかつ左右の目にそれぞれ対応する一対の眼鏡レンズとして形成され、眼鏡レンズを中央位置のブリッジ部で左右連続とし、かつこのブリッジ部の裏面の境界部を緩やかな曲面状に変化する連続面として形成されているから、処方箋で指示された処方度数、乱視軸、及び瞳孔間距離(PD値)を、度付きのレンズとして左右一対の眼鏡レンズを形成するために、その裏面に施されるレンズ球面又は非球面加工等の内面研削の加工段階で、これらの度数、角度、距離を形成することにより、その基本形状の性格からレンズ枠に嵌合しても、レンズ枠の形状、製作精度に全く影響されることがなく、レンズ素材の形成段階のまま、それぞれの度数、角度、距離数値を正確に保持することが出来る。
この場合、ブリッジ部の裏面の境界部を緩やかな曲面状に変化する連続面として形成したから、一対の左右の眼鏡レンズの境界に視界の妨げとなる直線ラインが形成されることがなく、一眼サングラスのような広い視野の眼鏡レンズが得られる。又、左右1対の眼鏡レンズの中央部側にそれぞれコーナ部を設け、このコーナ部をブリッジ部に連続する下部辺の角部で逆円弧状曲線部に形成し、コーナ部の延長端を中央位置で左右連続のブリッジ部として形成することにより、従来の眼鏡レンズとは異なる視野の広い眼鏡レンズが得られる。ここで、逆円弧状曲線部とは、コーナ部の形状を形成する際に、円弧曲線の中心をレンズ中心外に有する円弧曲線の形状を意味する。
この眼鏡レンズの左右の逆円弧状曲線部を連ねると、ブリッジ部の下部辺全体をアーチ状に形成することが出来る。又、上記左右一体形の一対の眼鏡レンズにおいては、一体に連結されている左右の眼鏡レンズの全体的な曲率は、例えば2カーブ、4カーブ、6カーブのように眼鏡レンズの素材の屈折率に適合する眼鏡レンズのカーブ数を予めレンズの生地素材の段階でレンズの外面側に設定して形成される。そして、この眼鏡レンズを処方度数の度付きレンズとして加工する際には、左右それぞれの目に対応する位置の内面側に研削による内面加工が施され、左右の目に応じた処方度数の度付きの眼鏡レンズがそれぞれ形成される。但し、なお、上記発明では左右一体の眼鏡レンズの全体の外側面に2カーブ、4カーブ等の曲率カーブを設定し、裏面側に球面加工、非球面加工を施して処方度数の度付きレンズを形成することを前提としているが、度付きレンズの加工は、必ずしも上記のように外面側の大きいカーブを基準として裏面側に球面、非球面加工を施すだけでなく、外側面には全体的な大きなカーブと左右の目に対応する個別の球面、非球面のカーブ曲面をそれぞれ形成し、かつ裏面側にも同様な球面、非球面加工を施して、両面で必要な加工することにより処方度数の度付きレンズに加工をすることも出来る。このような加工方法は、この発明の趣旨の範囲内のものである限り、全て適用される。
上記もう1つの課題を解決する手段として、上記の左右一体形の一対の眼鏡レンズを用いた左右一体形眼鏡においては、上記左右一体形の一対の眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを固定、装着する左右一体形状のレンズ枠を備え、両眼の眼鏡レンズをレンズ枠内周に沿ってレンズ固定手段により固定、又は着脱自在に固定して形成することが出来る。このような構成の左右一体形眼鏡では、レンズ固定手段により左右一体形の一対の眼鏡レンズをレンズ枠に固定して左右一体形の眼鏡が形成されるが、処方箋で指示された処方度数、乱視軸、及び瞳孔間距離(PD値)を有し、レンズ枠に固定したことによる影響で度付きのレンズとしての機能に影響が生じることがなく、正確な機能を保持し得る。
上記の左右一体形眼鏡では、眼鏡のレンズ枠にレンズを固定する機構として、眼鏡レンズの外周に溝又は凸部をヤゲン加工により形成し、レンズ枠を3次元加工すると共に、その内周に溝又は凸部に対応する凸部又は溝を形成してレンズ枠を上記眼鏡レンズの外周に沿って嵌合させ、これによりレンズ枠に眼鏡レンズを固定することが出来る。或いは、レンズ枠に、その任意の位置でレンズ枠を着脱自在に2つに分離、接続するレンズ固定手段を設け、このレンズ固定手段を介して複数種類の眼鏡レンズのいずれかを着脱自在にレンズ枠に装着可能としてもよい。
さらに、レンズ枠の中央位置にレンズ固定手段を設け、眼鏡レンズのブリッジ部位置をレンズ枠に着脱自在に装着可能とし、複数種類の眼鏡レンズのいずれかを着脱自在にレンズ枠に装着可能とすることも出来る。このようなレンズ固定手段を介してレンズ枠に眼鏡レンズを着脱自在に装着すると共に、眼鏡レンズのレンズカーブ数と、レンズ枠のフレームカーブのカーブ数とが互いに異なる、独立のカーブ数に設定自在に形成し、自由なデザインのレンズ枠、レンズ形状の眼鏡とすることも出来、また複数種類のレンズへの取替え可能な形式の眼鏡が得られる。眼鏡レンズは偏光レンズを使用している場合、薄黄色又は薄茶色に着色されて見えるが、その偏光状態を種々選択することによりレンズの色は種々に変化する。また、眼鏡レンズを複数枚眼鏡ケースに用意しておけば、眼鏡の使用状態によってレンズの種類を使い分けすることができ、使用する時と場所によって眼鏡レンズの種類を多様に使い分けすることができる。
上記左右一体形眼鏡の発明とは構成が異なる構成の眼鏡として、左右一体形の一対の眼鏡レンズに左右の智部を介してテンプルを接続し、或いはテンプルを直接に接続した左右一体形眼鏡の構成を採用してもよい。この場合、レンズ枠(レンズフレーム)が設けられていないから、所謂リムレスメガネとなる。そして、この場合も眼鏡レンズは中央側の側辺を広げ、中央側の上辺と側辺の交差部を中央位置までコーナ部として延長し、このコーナ部の延長端のブリッジ部を中央位置で左右が連続するように形成する。又、左右の智部は眼鏡レンズに対して、着脱自在に取り付け可能に形成するとよい。
この発明の左右一体形の一対の眼鏡レンズは、左右一体形のレンズ素材に、左右の目に対応した必要な加工をそれぞれの位置で施して処方度数の度付きレンズとして形成された左右一体で一対の眼鏡レンズから成り、この一対の眼鏡レンズを中央位置のブリッジ部で左右連続とし、このブリッジ部の裏面の境界部を緩やかな曲面状に変化する連続面として形成したから、左右の度付きの眼鏡レンズを左右一体の一枚のレンズ素材から一体の形状のままに形成し、それぞれの眼鏡レンズの処方度数、乱視軸の角度、及びPD値(瞳孔間距離)を正確にそれぞれの眼鏡レンズで保持し、実際に眼鏡を掛けたときに眼鏡単体で測定した時とでレンズの屈折の変化による見え方に影響を及ぼさない左右一体形の一対の眼鏡レンズを得ることが出来るという利点が得られる。
又、左右一体形のレンズ素材に、左右の目に対応した必要な加工をそれぞれの位置で施して処方度数の度付きレンズとして形成された左右一体で一対の眼鏡レンズと、この眼鏡レンズを固定、装着する左右一体形状のレンズ枠を備えた左右一体形眼鏡、或いはレンズ枠を設けずに左右の智部を介してテンプルを接続し、或いはテンプルを直接に接続した構成の左右一体形眼鏡では、それぞれの眼鏡レンズの処方度数、乱視軸の角度、及びPD値(瞳孔間距離)を正確にそれぞれの眼鏡レンズで保持し、実際に眼鏡を掛けたときに眼鏡単体で測定した時とでレンズの屈折の変化による見え方に影響を及ぼさない眼鏡が実現できるという利点が得られる。
この場合、眼鏡レンズの中央側の側辺を広げ、眼鏡レンズの中央側の上辺と側辺の交差部を中央位置までコーナ部として延長し、このコーナ部がブリッジ部に連続する下部辺の角部を逆円弧状曲線部で形成し、コーナ部の延長端を中央位置で左右連続のブリッジ部として形成することにより、従来の眼鏡レンズとは異なる視野の広い眼鏡レンズが得られる。
以下、この発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1Aの(a)図は、第1実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズを用いた左右一体形眼鏡A1の前面側から見た外観斜視図、(b)図は左右一体形の一対の眼鏡レンズのみを前面側から見た外観斜視図、(c)図は左右一体形の一対の眼鏡レンズのみを背(裏)面側から見た外観斜視図である。又、図1Bの(a)図は、眼鏡レンズ1、1の中央の眼鏡ブリッジ部1B付近の部分拡大図であり、(b)図は(a)図の矢視B−Bからの断面図である。図示のように、左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1を有する左右一体形眼鏡A1は、左右一体形のレンズ枠2に嵌合され、従来の眼鏡と同様に、レンズ枠2の両端には智部4、4が設けられ、蝶番5を介してテンプル6がレンズ枠2に接続され、テンプルエンドには耳介に沿って曲げられたモダン部7が形成され、レンズ枠2の中央寄りのブリッジ部位置には鼻パッド8が取り付けられている。
図示の実施形態では、後述するように、左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1の外側曲面の曲率は、レンズ素材(セミ生地)の形成段階で予定されたそれぞれの眼鏡の左右両眼の全体に亘る所定の曲率カーブを有する。又、裏面には左右の目の範囲を含む一体のレンズ素材に左右の目に対応する球面又は非球面の曲面をそれぞれ形成した処方度数の度付きのレンズとして形成したものであり、図示のように、中央位置にブリッジ部1Bが形成され、このブリッジ部1Bで左右のレンズが連続する一体の形状に形成されている。上記左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1の外側曲面の曲率は、一般的な眼鏡からサングラスのような用途までその用途に応じて異なるが、一体に連結されている左右の眼鏡レンズ1、1の全体的な曲率は、例えば2カーブ、4カーブ、6カーブのように眼鏡レンズの素材の屈折率に適合する眼鏡レンズ1、1のカーブ数を予めレンズの生地素材の段階でレンズの外面側に設定して形成される(左右の眼鏡レンズ1、1の全体的な曲率を所定のカーブ数に設定することは以下のいずれの実施形態でも適用される)。
又、図1Aの(c)図に示すように、眼鏡の裏面のブリッジ部1Bの位置で、左右の眼鏡レンズ1、1の中央境界位置に距離Sの範囲に及ぶ緩やかな曲面状に変化する連続面Sが形成され、これにより左右の眼鏡レンズの境界位置で中央の直線状の境界線による視野の広がりが阻害されるのを阻止している。中央の直線状の境界線(図3Aの(b)図の符号Lc参照)については、図示の例では除去されており、レンズ素材の段階で裏面に上記球面又は非球面の曲面を形成して度付きレンズとする加工の都合上形成されるものであり、その詳細については後で説明する。さらに、(b)図に示すように、左右の眼鏡レンズ1、1の中央側の側辺1sは、従来の玉形レンズの側辺1s’(一点鎖線で示す)より広く、かつその中央側の上辺と側辺の交差部のコーナ部1aは、中央側に延長されてレンズのブリッジ部1Bまで延びている。
上記眼鏡レンズ1、1の各コーナ部1aは、蝶結びのリボン羽根の基部のような形状のコーナ部1a、1aとし、このコーナ部1aがブリッジ部1Bに連続する下部辺の角部を逆円弧状曲線部1rで形成することにより、左右の眼鏡レンズ1、1がブリッジ部1Bで連続するようにエンドミル加工により形成されている。ここで、逆円弧状曲線部1rとは、コーナ部1a、1aの形状を形成する際に、円弧曲線の中心をレンズ中心外に有する円弧曲線の形状を意味する。この眼鏡レンズの左右の逆円弧状曲線部を連ねると、ブリッジ部の下部辺全体をアーチ状に形成することが出来る。また、左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1の全体の形状は、粗加工の段階では、砥石によるグラインダ加工で切削され、細加工の段階ではコーナ部1a、1aを含めて眼鏡レンズ1、1の全周がエンドミル加工により形成される。
また、この第1実施形態の例では眼鏡レンズ1、1の外周にはレンズ枠2に嵌合するための溝3aがヤゲン加工により全周に形成されている(後述する他の実施形態ではヤゲン加工は必要でない場合もある)。なお、上記左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1においては、一体に連結されている左右の眼鏡レンズの全体的な曲率は、例えば2カーブ、4カーブ、6カーブのように眼鏡レンズの素材の屈折率に適合する眼鏡レンズのカーブ数を予めレンズの生地素材の段階でレンズの外面側に設定して形成される。そして、この眼鏡レンズ1、1を処方度数の度付きレンズとして加工する際には、左右それぞれの目に対応する位置の内面側に研削による内面加工が施され、左右の目に応じた処方度数の度付きの眼鏡レンズ1、1がそれぞれ形成される。
レンズ枠2にはブリッジ部がなく、左右の眼鏡レンズ1、1の外周全体を取り囲むように形成されたフルリムフレームとして形成されている。このレンズ枠2は、眼鏡レンズ1、1の外周に形成された溝3aに嵌合するよう枠内面に凸状部3bが全周に亘り形成されている。上記溝3aと凸状部3bとの組み合わせにより眼鏡レンズ1、1をレンズ枠2に係止するレンズ固定手段3(図1Bの(b)図参照)を形成している。この場合、レンズ固定手段3の凸状部3bは、レンズ枠2が図示の例では硬質の合成樹脂製のプラスチック材を3次元加工して形成されるため、レンズ枠2の剛性により眼鏡レンズ1、1に歪が生じることがない。レンズ枠2の材質は、3次元加工される限り、プラスチックに限らず、金・チタン合金・ニッケル合金など同一デザイン、形状のものが成形できれば、金属製のものを用いてもよい。
即ち、レンズ枠2の平面視での曲りを眼鏡レンズ1、1の全体の大きな曲率の曲面に沿って3次元加工で形成することにより、レンズ枠2の凸状部3bを眼鏡レンズ1、1の溝3aに嵌合する際に、歪を生じさせることがなくなる。これは、従来レンズ枠2を2次元で加工、つまりレンズの面内での縦方向の曲がりのみ加工をしていたため、その曲がりに沿って無理に眼鏡レンズ1、1を嵌合させて歪を生じさせていたからであり、上記のように3次元加工であれば、歪が生じることが無いようにすることが可能となる。ただし、レンズ枠2を金属材で形成する場合も、レンズ枠2を3次元加工することにより、眼鏡レンズ1、1に歪を生じさせないように形成することができる。
なお、上述した眼鏡レンズ1、1のPD値(瞳孔間距離)は、予め装用者の顔を測定したデータをコンピュータに記憶させておき、そのデータに基づいて眼鏡レンズ1、1に対してコンピュータの制御により曲面加工手段を制御してレンズ素材の段階で形成されるため、正確にPD値(瞳孔間距離)(中心点P〜P)を実現することができる。処方度数、乱視軸についても同様に、コンピュータ制御により曲面加工手段を制御して形成されるが、左右の眼鏡レンズ1、1がブリッジ部1Bで連続しているため、レンズ枠2への嵌合状態やレンズ枠2の製作精度の影響を構成上受けないから、同様に正確な曲面加工が可能である。
なお、従来の眼鏡レンズが、図1Aの(b)図に示すように、中央寄りの側辺は1s’として、かつ中央寄りの上辺と側辺が交叉するコーナ部を丸い曲線状に形成され、外周形状の上辺1uが下辺1dより少し長い円い曲線の略台形状(玉形)で、上下辺1u、1d、側辺1s’(内側)、1t(外側)を含む両側辺のいずれも緩やかな円形の曲線状に形成されている。上記眼鏡レンズ1、1は、図1Aの(c)図に示すように、その裏面の中央位置のブリッジ部1Bは、レンズを度付きレンズとするための球面加工、又は非球面加工を施すために必然的に形成される直線状の境界線部が除去され、左右の曲面部の中央寄りの境界部を緩やかな曲面状に変化する連続面Sとして形成されている。
そして、このように緩やかな曲面状に変化する連続面Sを形成すると共に、中央寄りの側辺1sを従来のレンズより広げ、かつ中央寄りのコーナ部1a、1aをブリッジ部1Bで連続させることにより左右の眼鏡レンズ1、1の中央寄りの視野が中央まで続き、これにより視野を十分広げている。なお、一般的な眼鏡レンズの幾何学中心の位置については、図示を省略している。これに対して、図1Aの(b)図に示すように、従来の2眼式の眼鏡レンズでは玉形レンズの側辺1s’(点線で示す)の幅が十分でないために視野が阻害され、かつレンズ枠の中央位置のブリッジ部で眼鏡レンズが不連続になることにより視野の広がりが阻害されるという原因を含んでいる。
しかし、従来はこのような不都合は眼鏡という視力矯正手段では止むを得ないものとして眼鏡は形成されていたが、この実施形態の眼鏡ではこのような基本的な不都合を、左右一体形のレンズ素材から形成された左右一体形の一対の眼鏡レンズの形式とすることにより取り除くことが出来る。又、図1Bの(a)図に示すように、レンズ枠2は中央のブリッジ部がなく、中央寄りの側辺2s、2sが中央連結部(上部のレンズ枠2とほぼ平行)で連続するように形成され、そのレンズ枠2の側辺に棒状片3cが一体に形成され、この棒状片3cの下端8aが半円形状の膨出形状に形成されており、ゴム製の鼻パッド8を装着すると、簡単には抜け落ちないようにしている。又、棒状片3cはレンズ枠2と同じ材質、一体形状に、かつ側辺の両側の上端から下方へ延びる棒状体である。
上記鼻パッド8は柔軟性を有するが、やや硬めのゴム材を使用し、一端を閉じた中空状でかつ外形が鼻当てに適する略楕円形とされ、鼻に当る部分は鼻の形状に適する曲線状に成形されている。この鼻パッド8を棒状片3cに対して装着する時には、開放状の端から上記棒状片3cに差込んで固定される。従って、鼻パッド8が汚れると、この鼻パッド8だけを棒状片3cから引き抜き、付着した汚れを拭き取ることができる。なお、上記左右一体形の一対の眼鏡レンズ式の眼鏡の製作工程については、後で説明する。
上記の構成とした第1実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズを用いた左右一体形眼鏡A1は、処方度数の度付きのレンズでありながら、左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1の構成を有するという点で、従来の眼鏡とは構成が大きく異なる。このような構成の眼鏡レンズ1、1は、レンズ枠2内に眼鏡レンズを嵌合させ、かつ顔に掛けた状態でも、処方度数、乱視軸、及び瞳孔間距離(PD値)を正確に保持することを、実際の眼鏡レンズの構造上の機能から保障し得るようにしたものである。処方度数等の設定値は、眼鏡レンズ1、1の裏面に球面又は非球面加工を施す際に決定、保持され、嵌合されるレンズ枠2の長さ、形状等に関係なく加工されるため、レンズ枠2の製作精度の影響を受けないからである。従って、左右一体形のレンズ素材から形成された左右一体の両眼の眼鏡レンズ1、1により、処方度数、乱視軸、及び瞳孔間距離(PD値)を正確に保持することが出来る。
左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1は、レンズ枠2に相当する形状とするために、後述するように、エンドミルにより外周形状が切削、研削される。この場合、従来の玉形レンズは、4つのコーナ部がそれぞれレンズ内側に中心点を有する円弧曲線状のものを連ねたものであるのに対して、各コーナ部1aは、このコーナ部1aが連続する下部辺の角部を逆円弧状曲線部1rで形成し、その延長端をブリッジ部1Bに連続させているため、玉形の形状以外の形状であり、図示のように、蝶結びの基部のような形状に形成されている。そして、その外周には前述したように、溝3aと凸状部3bとの組み合わせにより眼鏡レンズ1、1をレンズ枠2に係止するレンズ固定手段3が形成されている。
このため、眼鏡レンズ1、1はレンズ枠2の枠内に強制的に嵌合されるのではなく、眼鏡レンズ1、1の曲率に沿って3次元加工されたレンズ枠2が嵌合され、このためレンズ枠2に眼鏡レンズ1、1を嵌合しても眼鏡レンズ1、1に対して歪を生じることなく嵌合される。又、レンズ枠2にブリッジ部がなく、眼鏡レンズ1、1が眼鏡中央位置のブリッジ部1Bで連続し、かつ眼鏡レンズ1、1の幅が側辺1s、1sまで広がっているため、眼鏡の視野が左右で大きく広がり、一般的な度付きの眼鏡レンズでありながら、サングラスのような広い視野の眼鏡A1が得られる。このような視野の広がりは、展望台から広く景色が見えるが如くに広がりを持つ。
なお、上記第1実施形態ではレンズ枠2は、左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1に対して、全周をレンズ枠2で囲む形状としたが、上記実施形態の変形例として、図2の(c)図に示すように、レンズ枠2の左右の側辺2tの中間位置にブローチ加工による嵌合部9を用いた着脱自在の固定手段をそれぞれ設け、この嵌合部9、9の嵌合を引き離すことにより眼鏡レンズ1、1をレンズ枠2に対して着脱自在に取り付け可能な形式とすることが出来る。嵌合部9は、側辺2tの中間位置より上方の部材に嵌合穴を、下部に凸形状部を(嵌合穴と凸形状部との関係は逆の関係としても良い)形成し、それぞれを必要に応じて嵌合、切り離し出来るように構成する。
このような嵌合部9、9の構成とすることにより、眼鏡レンズ1、1のそれぞれを取り外すことができ、眼鏡レンズ1、1を異なる種類の眼鏡レンズに取替えが可能となる。従って、複数種類のレンズへの取替え可能な形式の眼鏡が得られる。なお、図示の眼鏡レンズは偏光レンズを使用しているため、薄黄色又は薄茶色に着色されて見えるが、その偏光状態を種々選択することによりレンズの色は種々に変化する。レンズは偏光レンズ以外の着色レンズとしても良い。一般的な無色透明なレンズでもよいことは、勿論である。
また、眼鏡レンズ1、1を複数枚眼鏡ケースに用意しておけば、眼鏡の使用状態によってレンズの種類を使い分けすることができる。例えば疲れたときにリラックスすることができるのに適した青色系に着色されたレンズ、パソコン等を使用する際の目の疲れを軽減する偏光レンズ、外出する際には無着色のレンズ、パーティなどでは少し黒いサングラス風のレンズというように、使用する時と場所によって眼鏡レンズの種類を多様に使い分けすることができるようになる。このためには、レンズ枠2と、複数種類の眼鏡レンズ1、1のそれぞれの種類毎のコストが安価で、かつ取替えが簡単である必要がある。
しかし、レンズ枠2は、射出成形により簡単に左右が一体成形され、また後述するように、この実施形態の眼鏡レンズ1、1は、粗加工の段階では大略の外周形状を砥石によるグラインダにより研削加工し、さらに細加工の段階では左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1の各コーナ部1aはエンドミルによる精細な加工を施し、また外周面はヤゲン加工による溝、凸部の端面加工面が施されているが、1枚のレンズ素材から左右一対の眼鏡レンズが加工されるため、全体のコストは安価に製作できる。
ただし、外周面が鋭い切削エッジが形成されたままでは着脱時の取り扱いに不都合が生じるため、取り扱い時に人の手に傷を生じない程度の極僅かな端面加工を施している。また、上記嵌合部9のレンズ固定手段を使用するため、取替え作業も簡単になる。従って、従来の眼鏡では、複数枚の眼鏡レンズを揃えておき、時と場所に応じて1つのレンズ枠2に対して複数種類の眼鏡レンズ1、1を取り替えて使用するという使用方法を提案することとなり、これは従来から1つのレンズ枠2に対して眼鏡レンズは1種類のものを使用するという習慣を覆すことなる。
図3A、図3Bに上記第1実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1の製作工程を示す。なお、以下の製作工程は、第1実施形態だけでなく、第2、第3の実施形態にも適用される。図3Aの(a)図は、セミ生地のレンズ素材10を示している。このレンズ素材10は、左右の目に対応する矩形状の一対の眼鏡レンズ素面1’、1’の合計面積に相当する一枚のレンズ素材から成る。このレンズ素材10は、予めその外面11にレンズ素材の屈折率に適合する所定の曲率半径のカーブ(例えば2、又は4カーブ等)が形成され、裏面12’の円弧半径もレンズ素材の厚さが一定となる曲率半径で形成されている(度付きレンズへの加工前)。なお、眼鏡レンズ素面1’、1’のそれぞれの面積の大きさは、切削されて形成される所定形状の眼鏡レンズ1、1を想定し、いずれの大きさの眼鏡レンズ1、1であっても含まれる所定の大きさとして予め設定されている。
図において、L0は、レンズ厚さの中央厚さレベルを示し、Lvは垂直方向の中心線、Lhは水平方向の中心線である。又、符号13は位置決め用の小さな孔である。この位置決め用孔13は、レンズ研磨時やレンズカット時の原点として形成されるものであり、この孔にピンを差し込んでレンズ加工時の位置決めをし、レンズを固定して加工をする。図3Aの(b)図は、(a)図のレンズ素材10の裏面12’の眼鏡レンズ素面1’、1’に度付きレンズとするのに必要な加工を施した状態を示す。(b)図において、眼鏡レンズ素面1’、1’にはそれぞれ度付きレンズとして必要な球面又は非球面等の加工が施されている。この場合、眼鏡レンズ素面1’、1’の隅位置に、僅かに中央厚さレベルL0の中心線が残っているが、裏面12の殆どは球面又は非球面状に加工されている。
水平、垂直の中心線Lh、Lvの交叉する中心点は、PD値(瞳孔間距離)の中心点P、Pを示す。また、左右の眼鏡レンズ素面1’、1’に対して球面又は非球面加工を施すと、両面のレンズ境界位置に直線状の境界線Lcが生じる。この境界線Lcが生じると、左右の眼鏡のレンズ視野の広がりが阻害されるため、この境界線Lcをさらに2次加工の作業で除去する必要がある。図3Aの(c)図に、2次加工した眼鏡レンズ素面1’、1’の裏面の状態を示している。符号R、Rの一点鎖線は、境界線Lcを除去して丸い曲面で滑らかな状態にした状態を示しており、この加工をすることにより境界線Lcによる視野の広がりを阻害されることがなくなり、視野が広くなる。この加工状態では、眼鏡レンズ素面1’、1’についての加工は、種々の加工形状、加工方法が可能であり、それぞれの加工が行われる。
図3Bの(a)図に、所定形状の外形に眼鏡レンズ1、1の外周面を一点鎖線で示し、この形状に切削、研削した状態の外観斜視図を示す。この大略の外形形状までは、砥石等のグラインダを用いて形成される。実線は、(b)図の最終加工された眼鏡レンズ1、1と同じ形状を示す。そして、(b)図に示す最終仕上げの外形形状は、エンドミルを用いて外形形状の全体を切削、研削による仕上げ加工をして形成されたものである。特に、上述したように、眼鏡中央のブリッジ部1Bに連続する眼鏡レンズ1、1のコーナ部1a、1a部の、側辺1s、1sの上端部に形成している逆円弧状曲線部1r、1r及びブリッジ部1Bは、エンドミルを用いてのみ形成することができる。なお、逆円弧状曲線部1r、1rとは、レンズの外側に(円弧中心がレンズ中心側ではなく)円弧中心を有する円弧を意味する。又、エンドミルによる加工の際は、図示していないが、眼鏡レンズを所定位置に固定するため、ポンプ圧で吸引する吸引装置を用いて眼鏡レンズを固定台上に吸引して固定した状態で加工が行われる。
この後、(c)図に示すように、眼鏡レンズ1、1の外周に溝3aが、ヤゲン加工により全周に亘り形成されている。以上のような加工を加えて形成された眼鏡レンズ1、1にレンズ枠2を嵌合することにより、上記実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズを用いた左右一体形眼鏡A1が形成される。ただし、第2、第3実施形態では眼鏡レンズ1、1の外周に溝を形成する必要がないため、ヤゲン加工は省略される。なお、上記実施形態では左右一体の眼鏡レンズ1、1の全体の外側面に2カーブ、4カーブなどの曲率カーブを設定し、裏面側に球面加工、非球面加工を施して処方度数の度付きレンズを形成することを前提として説明したが、度付きレンズの加工は、必ずしも上記のように外面側の大きいカーブを基準として裏面側に球面、非球面加工を施すだけでなく、外側面には全体的な大きなカーブと左右の目に対応する個別の球面、非球面のカーブ曲面をそれぞれ形成し、かつ裏面側にも同様な球面、非球面加工を施して、両面で必要な加工をすることにより処方度数の度付きレンズに加工をすることも出来る。このような加工方法は、以下の第2、第3実施形態やその変形例、或いはこの明細書に記載されていないが、この発明の趣旨の範囲内のものである限り、全て適用される。
図4、図5に第2実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズ10Bの眼鏡レンズ1、1の上縁部に沿って正面視直線状に設けたレンズ枠2を有する眼鏡A2示す。図4の(a)図は分解斜視図、(b)図は組み立て状態の外観斜視図を示す。図示のように、眼鏡レンズ1、1の基本形状は、第1実施形態の眼鏡レンズ1、1と同じ左右一体形の一眼レンズであるが、中央位置のブリッジ位置の上、下に切欠き1ku、1kdが左右2箇所ずつ形成されている。又、これに対応してレンズ固定手段3がレンズ枠2に固定され、眼鏡の中央位置でレンズ枠2に眼鏡レンズ1、1が着脱自在に固定し得るように形成されている点が異なる。従って、この例では、眼鏡レンズ1、1の外周に溝3aは形成されていない。レンズ枠2の両端には、智部4、4がレンズ枠2と連続する形状、材料のままに設けられ、従来例と同様に、蝶番5、5を介してテンプル6、モダン部7が接続されている。この例でも、同一構成部には同一符号を付して説明を省略する。
なお、図示のレンズ枠2は、眼鏡レンズ1、1の全体のカーブ数と一致する所定のカーブ数(図示の例では2カーブを示し、4、6カーブ等他のカーブ数でも良い)の形状に形成されたものを示しているが、この例では、レンズ枠2のカーブ数は、必ずしも眼鏡レンズ1、1のカーブ数と一致する形状とする必要はなく、眼鏡レンズ1、1のカーブ数とは異なる形状としても良い(例えばレンズ枠のみを、点線のレンズ枠2’で示すように、4又は6カーブ等の形状とするなど)。従って、レンズ枠2と眼鏡レンズ1、1とのカーブ数は互いに独立の関係に設計、デザインすることが出来る。又、図示の例では、デザインの外観上からレンズ枠のブリッジ部2Bが中央の位置において突出して形成されているが、必ずしもこの突出形状は設けなくても良い。
レンズ固定手段3は、一対のコ字状の軸部3xを縦方向に所定の間隔に設け、両軸3x、3xを連結軸3xrで連結すると共に、この軸部3x、3x上端をレンズ枠2の下端に固定して形成されている。このレンズ固定手段3に眼鏡レンズ1、1を装着する際は、図4の(a)図に示すように、レンズ枠2の後方のコ字状に軸部3xが開いた部分から眼鏡レンズ1、1を差込込み、眼鏡レンズ1、1の切欠き1ku、1kdに軸部3x、3xが嵌合するようにして眼鏡レンズ1、1をレンズ枠2に固定する。また、このレンズ枠2の下端から下方へ延びる延長軸3xe、3xeの下端に鼻パッド8、8を固定してそれぞれ取り付けている。
上記構成の第2実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズ10Bを有する左右一体形眼鏡A2も度付きのレンズであり、左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1として、かつ顔に掛けた状態でも、処方度数、乱視軸、及び瞳孔間距離(PD値)を正確に保持することが出来、中央寄りのレンズコーナ部1a、1aの視野を拡大することが出来る。さらに、レンズ固定手段3を用いているから、眼鏡レンズ1、1を着脱自在に取り付け、取り外しが出来る。従って、図示の眼鏡レンズ1、1は、複数枚のレンズを用意しておき、種々の状況に応じて眼鏡レンズを取替えすることが出来る。又、この例ではレンズ枠2のフレームカーブが種々異なるものを用意しておき、同じ眼鏡レンズ1、1を異なるフレームカーブのレンズ枠2に着脱自在に装着して使用することも出来る。
図6に第3実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズ10Cを用いた左右一体形眼鏡A3の外観斜視図を示す。この例では、眼鏡レンズ1、1は、上記例と同じく左右一体形の一対の眼鏡レンズを用いた左右一体形眼鏡A3であるが、特にこの例では、レンズ枠を使用しない縁無し眼鏡、即ちリムレスレンズとして、かつインサートタイプのレンズ(後で説明する)として形成されている。眼鏡レンズ1、1は、第1実施形態の眼鏡レンズ1、1と同じものをそのまま使用し、その両端に智部4、4、それぞれの智部4に蝶番5、テンプル6、モダン部7が取り付けられており、眼鏡の中央位置には眼鏡のブリッジ部1Bに直接鼻パッド8、8が取り付けられている。そして、この例の智部4、4、及び鼻パッド8、8は、眼鏡レンズ1、1に対して全く孔明けをすることなく眼鏡レンズ1、1に対して嵌合、取り付けされている。なお、同一構成部には同一符号を付して説明を省略する。
図6の(a)図に示すように、この第3実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズ10Cの左右の眼鏡レンズ1、1の両端には智部4、4の係止片4aが嵌合する係止受けピース4sが形成されており、この係止受けピース4sを、予めレンズ素材の製造過程において素材が液状の状態のとき、その素材内の所定位置にインサートしておき、レンズ素材が硬化処理されて固形化すると、素材内に固定された状態になり、智部4、4の係止片4aをそれぞれ係合させて固定する。係止受けピース4sは、外面に多数の凹凸によるぎざぎざ面を形成して固形化後の抜け止めとし、この係止受けピース4sの内部に例えば雌ねじのような係合部、係止片4aに雄ねじのような係合部を形成して、智部4、4を係合できるようにする。又、図6の(c)図に示すように、鼻パッド8については、眼鏡レンズ1、1の中央寄りの側辺1sの中間に嵌合孔8s、8sを設けておき、鼻パッド8の両側の鼻当て部の基部の凸片8t、8tを嵌合する。なお、鼻パッド8は弾性部材を用いて全体を形成しておき、(a)図中の矢印の方向に手で縮小した状態で眼鏡のブリッジ部1Bに挿入して、縮小する力を解放するとその弾性力で嵌合孔に鼻パッド8が固定される。
図7に上記第3実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズ10Cの外周を形成する過程を示す。(a)図では、基本的には図3Bの場合と同様にレンズの外周形状を切削、研削が行われるが、この例では、眼鏡レンズ1、1の外周に溝3aが形成されていない。この溝3aに代わり(b)図、(c)図に示すように、係止受けピース4s、嵌合穴8s、8sを左右の眼鏡レンズ1、1の智部4、4、及び鼻パッド8に対応してそれぞれインサート成形し、固定するインサート形式の固定手段を用いている。各嵌合穴8s、8sは、予めこの穴に相当する小さな固形物を成形前にインサートしておき、固形化後にその固形物を引き抜いて成形される。従って、この嵌合孔8s、8sはレンズ厚さを貫通しない状態の穴であり、この各係止受けピース4s、嵌合穴8sに対して智部4、4、鼻パッド8の端部の弾性力を利用して嵌合、固定する形式のため、特にねじなどの固定手段は使用していない。
この実施形態の眼鏡A3でも、処方度数の度付きのレンズでありながら、左右一体形の一対の眼鏡レンズ1、1として、かつ顔に掛けた状態でも、処方度数、乱視軸、及び瞳孔間距離(PD値)を正確に保持することが出来ることは勿論であり、中央寄りのレンズコーナ部1a、1aの視野を拡大することを実現している。さらに、係止受けピース4s、嵌合穴8sによるインサート形式の固定手段を採用したから、眼鏡レンズを複数枚眼鏡ケースに用意しておけば、眼鏡の使用状態によってレンズの種類を使い分けすることができ、使用する時と場所によって眼鏡レンズの種類を多様に使い分けすることができる。
なお、上記各実施形態の左右一体形の一対の眼鏡レンズを用いた左右一体形眼鏡A1、A2、A3のいずれも、眼鏡レンズ1、1の形状は、図示のように、中央のブリッジ部1Bで連続する一般的な形状のものを示したが、その形状については種々のものが存在し得る。従って、上記以外の形状のものでも、この発明の趣旨の範囲内のものであれば、全てこの発明の範囲に含まれる。