JP4944666B2 - 可逆性感熱発色組成物およびそれを用いた可逆性感熱記録媒体 - Google Patents

可逆性感熱発色組成物およびそれを用いた可逆性感熱記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆性感熱発色組成物を用い、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱記録媒体に関する。
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、OA化の進展と共にファクシミリ、ワードプロセッサ、科学計測機などの出力用紙として、また最近ではプリペイドカードやポイントカードなどの磁気感熱カードとしても広く使用されている。しかし、これら実用化されている従来の記録媒体は環境問題上、リサイクルや使用量の減量化などの見直しが迫られているが、不可逆的な発色であるため、一度記録した画像を消去して繰り返し使用することはできないし、新しい情報は画像が記録されていない部分に追記されるぐらいで記録可能な部分の面積は限られている。そのため、記録する情報量を減らしたり、記録エリアがなくなった時点でカードを作り直したりしているのが実状である。そこで、近年盛んに論じられているゴミ問題や森林破壊問題を背景に、何度でも書き換え可能な可逆性感熱記録媒体の開発が望まれていた。
ところで、これらの要求から様々な可逆性感熱記録媒体が提案されてきた。例えば、透明・白濁という物理的変化を利用した高分子タイプの可逆性感熱記録媒体が開示されている(特許文献1:特開昭63−107584号公報、特許文献2:特開平4−78573号公報参照)。また、新たに化学的変化を利用した染料タイプの可逆性感熱記録媒体も提案されている。具体的には、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールの組み合わせを用いるもの(例えば、特許文献3:特開昭60−193691号公報参照)、顕色剤にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いるもの(例えば、特許文献4:特開昭61−237684号公報参照)、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有するもの(例えば、特許文献5:特開昭62−138556号公報、特許文献6:特開昭62−138568号公報、特許文献7:特開昭62−140881号公報参照)、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用いたもの(例えば、特許文献8:特開昭63−173684号公報参照)、顕色剤にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いるもの(例えば、特許文献9:特開平2−188293号公報、特許文献10:特開平2−188294号公報参照)などが開示されている。
さらに本発明者らは、先に特許文献11(特開平5−124360号公報)において顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これと発色剤であるロイコ染料とを組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行なわせることができ、その発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも発色と消色を繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。またその後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造のものを使用することが提案されている(例えば、特許文献12:特開平6−210954号公報参照)。
しかし、このような材料を用いた記録媒体では、消色速度が遅く書き替えに時間がかかる、消色が不十分、あるいは発色画像の熱安定性が低いなどの問題を有していた。
そこで、可逆性感熱記録媒体の実用性をより高めるため、さらに小型・省エネルギープリンタでの書き替えに対応するため、印字と消去を同時に行なうサーマルヘッドオーバーライトに対応した記録媒体が望まれてきた。これらの実現のために、消色性の向上と画像安定性の向上を狙いとした発色消色制御剤や、消色促進剤が検討されており、特許文献15(特開平9−48175号公報)、特許文献16(特開平9−290563号公報)、特許文献17(特開平11−70731号公報)などに記載の長鎖アルキル化合物を用いることで、消去性が向上して、熱スタンプなどによる消し残りがほとんど発生しなく、さらには特に特許文献17(特開平11−70731号公報)記載の長鎖アルキル化合物を用いることで、消色性の向上と共に発色画像が安定なものとなった。さらに、特許文献18(特開平5−294063号公報)で記載されているような、消色促進剤として、脂肪酸類、ワックス、高級アルコール、リン酸、安息香酸、フタル酸またはオキシ酸の各種エステル類、シリコーンオイル、液晶性化合物、界面活性剤及び炭素数10以上の脂肪酸飽和炭化水素等が開示されている。これらの記録媒体ではサーマルヘッド消去といった高速消去では消し残りが多いといった問題があり、未だ検討の余地があった。さらに特許文献19から24ではイオン性の塩の消色促進剤が提案されている。特許文献19(特開平8−108627号公報)で記載されている顕色剤と第四級アンモニウム塩またはアルキレンオキサイドの組み合わせは良好のコントラストが得られるが、画像の耐熱保存性が低く実用的ではない。特許文献20(特開平9−300820号公報)ではオニウム塩、特許文献21(特開平10−44607号公報)では複素芳香環を有する第四級アンモニウム塩、特許文献22(特開2000−263946号公報)では、極性部位を有する消色促進剤(例えば、オニウム塩、複素芳香環を有する第四級アンモニウム塩)と特定の顕色剤との組み合わせ、特許文献23(特開2000−313171号公報)、特許文献24(特開2001−47749号公報)には、第四級アンモニウム塩と特定の顕色剤との組合せが記載されているが、これらのイオン塩の消色促進剤を用いた場合、幅広い温度域で消去が可能になり、発消色時に良好なコントラストが得られるけれども、消去温度領域の拡大効果により、消去域が低い温度で開始されてしまうため更なる高温条件(50度以上)での画像の耐熱保存性が乏しくという問題があり、加えて高速消去性に関しても消し残りが多く改善の余地がある。特許文献25(特開平7−285270号公報)に記載されている複素化合物、特許文献26(特開平7−285271号公報)には、カルボキシル基またはスルホ基といった酸性基とアミン基などの塩基性を有する消色促進剤が記載されているが、これらも高速消去性、画像の耐熱保存性に大きな問題があり実用的ではない。このように実用の用途のために、高い発色性と良好な消去性を有するコントラストの高く、且つ、高速消去性と画像の耐熱保存性を確保することは困難であった。
特開昭63−107584号公報 特開平4−78573号公報 特開昭60−193691号公報 特開昭61−237684号公報 特開昭62−138556号公報 特開昭62−138568号公報 特開昭62−140881号公報 特開昭63−173684号公報 特開平2−188293号公報 特開平2−188294号公報 特開平5−124360号公報 特開平6−210954号公報 特開平10−95175号公報 特開平10−67177号公報 特開平9−48175号公報 特開平9−290563号公報 特開平11−70731号公報 特開平5−294063号公報 特開平8−108627号公報 特開平9−300820号公報 特開平10−44607号公報 特開2000−263946号公報 特開2000−313171号公報 特開2001−47749号公報 特開平7−285270号公報 特開平7−285271号公報
したがって、本発明の目的は高い発色性を有しながら、高速で良好な消去性を有し、さらに耐熱保存性を有する実用性の高い可逆性感熱組成物及び可逆性感熱記録媒体を提供することにある。
本発明者らは、このような発色剤と顕色剤の組成物の可逆的な発色消色現象の消色過程では、発色状態を形成する長鎖脂肪族基を有する顕色剤とロイコ染料および発色消色制御剤または消色促進剤の分子間凝集力およびそれぞれ互いに及ぼす分子間相互作用が重要であると考え種々の検討を行なってきた。その中で本発明者らは、イオン性化合物について着目し、それらが発色過程、消色過程に及ぼす影響を検討してきた。通常、このようなイオン性化合物を用いる場合、アニオン性化合物では、良好な発色性を確保できるものはあるものの、発色剤がアニオン性化合物によって発色してしまい、消去性の低下、地肌の着色の原因となり、実用上用いることができない。カチオン性化合物では、消去性を向上するものは見られるけれどもその効果とともに低温での消去が開始されるので、耐熱保存性を確保することができないことが大きな問題であった。これらはイオン性化合物がもつ酸性・塩基性の効果によるものが大きいと考えられる。これらの問題を克服するために、単純にアニオン種やカチオン種を使うことによって生じる酸・塩基の効果を除外させ、分子内に存在する極性や双極子の効果を積極的に用いる検討を行ない、Zwitterイオンを有する化合物を発色消色制御剤に用いた場合に、高い発色性を有しながら、高速で良好な消去性と耐熱保存性を確保できる実用性の高い可逆性感熱組成物及び可逆性感熱記録媒体が得られることを発見した。
すなわち、上記課題は、以下の、本発明の(1)〜(5)によって解決される。
(1)「電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱発色組成物において、該発色消色制御剤としてZwitterイオンを有する化合物を含有することを特徴とする可逆性感熱発色組成物」、
(2)「電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱発色組成物において、該発色消色制御剤としてZwitterイオンを有する化合物の陽イオンがNであり、且つ、陰イオンがO、COO、SO 基の単独、又は、複数個の組合せであることを特徴とする前記第(1)項に記載の可逆性感熱発色組成物」、
(3)「電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱発色組成物において、発色消色制御剤として下記一般式(1)で示すZwitterイオンを有する化合物を少なくとも含有することを特徴とす可逆性感熱発色組成物;
Figure 0004944666
(式中、R、R、及びRは互いに同じであっても異なっていても良い炭素数1から22の飽和または不飽和炭化水素基、または下記式(A)の構造を有する基で、R、R、及びRは互いに結合して、環を形成していても良い。Rは水酸基を有しても良い炭素数1から18の飽和、不飽和炭化水素基を示す。Aはアニオンであり、O、COO、SO のいずれかを示す。)
Figure 0004944666
(式中、Rは炭素数1から22の飽和または不飽和炭化水素基を示す。Rは2価の炭素数1〜18の飽和または不飽和炭化水素基を示す。Xはカルバモイル基、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、エーテル基、エステル基からなる基を示し、nは1から3の整数を示し、nが2以上の場合はR、Xは同一であっても異なっていても良い。)」、
(4)「前記電子受容性化合物として、下記一般式(2)で表わされる炭素数8以上の脂肪族基を有するフェノール化合物を用いることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の可逆性感熱発色組成物;
Figure 0004944666
(式中、Y及びZは直接結合手または−NH−、−CO−、−O−、−SO−、−S−からなる2価の基を示す。ただし、Y及びZは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1から22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8から30の炭化水素基を表わす。mは1から3の整数を表わす。また、nは0から4の整数を表わし、nが2から4の時繰り返されるRおよびZは同一でも、異なっていても良い。また、nが0のとき、Yは直接結合手ではない。)」、
(5)「支持体上に前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の可逆性感熱組成物を有する記録層を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体」。
本発明によれば、発色消色制御剤としてZwitterイオンを有する化合物を含有させることで、高い発色性を有しながら、高速で良好な消去性と耐熱保存性を有する実用性の高い可逆性感熱組成物及び可逆性感熱記録媒体を提供することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の可逆的感熱記録媒体は、加熱温度および/または加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうるものである。この基本的な発色・消色現象を説明する。
図1はこの記録媒体の発色濃度と温度との関係を示したものである。はじめ消色状態(A)にある記録媒体を昇温していくと、溶融し始める温度Tでロイコ染料と顕色剤が溶融混合し、発色が起こり溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、はじめと同じ消色状態(A)あるいは急冷発色状態(C)より相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態(C)をふたたび昇温していくと発色温度より低い温度Tで消色が起き(DからE)、ここから降温するとはじめと同じ消色状態(A)に戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組合せにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
本発明の記録媒体では、溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は顕色剤と発色剤が分子どうしで接触反応しうる状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態は少なくとも一方の化合物の分子(例えば顕色剤の分子)が集合してドメインを形成した結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が起きる。図1に示した溶融状態から徐冷による消色および発色状態からの昇温による消色は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
本発明の記録媒体では、発色状態の凝集構造が安定であるほど画像濃度の安定性は高まり、消色過程では発色時の凝集構造から顕色剤の結晶化がより高速に起きることで良好な消去性が得られると考えられる。そのため、発色消色制御剤としては長鎖アルキルをもった分子構造中に水素結合性の会合基を導入することによって、発色状態の安定化と消去性の向上を検討してきた。
従来技術として報告されている発色消色制御剤は熱スタンプを用いた静的消去やサーマルヘッドを用いた高速消去特性を満足させる一方、発色特性や保存性が低下することが大半であり、実用的に、発色特性、消色特性、高速消去性、耐熱保存性すべてを満足しうるものは報告されていない。
本発明の可逆性感熱組成物および可逆性感熱記録媒体において、発色消色制御剤の分子構造中にZwitterイオンを有する場合、高い発色性を有しながら、高速で良好な消去性と耐熱保存性を確保できることが発見された。ここで、本発明で述べるZwitterイオンを有する化合物とは、共有結合を介してカチオン(正電荷)とアニオン(負電荷)の両イオンが共存する構造、または共有結合を介さずにN−オキサイド構造(N−O)のような負電荷が酸素(O)などの電気的に陰性な原子上にくる双極構造を有する構造を有し、且つ、一分子の電荷の総量が0である化合物のことを意味し、4級アンモニウム塩などで代表されるカチオン性化合物、スルホニウム塩で代表されるアニオン性化合物のようなカチオンまたはアニオンがカウンタイオンとイオン結合し見た目の電荷が0であるようなイオン化合物とは大きく異なり、加えて、イオン化されていない共有結合の化合物であるアミノカルボン酸のようなカルボキシル基とアミノ基をもった化合物(具体的には例えばアミノ酸)とも大きく異なる。
本発明で用いられる発色消色制御剤の大きな特徴は、Zwitterイオンを有することであり、このような構造を有する化合物はカチオンとアニオンを有しており、正負の電荷の重心が一致していないことからの電気的な双極子が存在していることを意味している。この電気的な双極子が本発明の効果に極めて重要な役割を果たしていると考えている。発色消色制御剤であるZwitterイオンを有する化合物の効果は、未だ最終的に確認されたわけではないが現段階では、次のような機構に基くものと予想される。
すなわち、電子供与性化合物であるロイコ染料は消色状態では、例えばフルオラン化合物の場合、ジベンゾオキサゾール環に置換しているアミノ基部位とラクトン閉環部位とを有する化合物構造中(フタリド化合物、アザフタリド化合物の場合も同様)に電荷の偏りがなく電気双極子が存在していない状態であるが、発色状態では電子供与性化合物であるロイコ染料は電子受容性化合物(顕色剤)との相互作用により分子内に電荷の偏りが生じ、電気双極子が存在した状態(ラクトン環がキノイド型に開環し電子供与性の部位、及び電子密度が疎のアミノ基部位を有する状態)になる。フタリド化合物、アザフタリド化合物の場合も同様である。しかし、1つ1つの分子は双極子を有しているが静的な発色状態は凝集構造であるために互いにそれを打ち消しあい、系全体の双極子の強さと方向を示す電気双極子モーメントは0である。一方、発色状態から消色状態に変移する時には構造変化が生じる。その構造変化に伴い発色状態の凝集構造が崩れる瞬間的に系全体の対称性が崩れ電気双極子モーメントが誘起される。この瞬間に発色状態の電子供与性化合物(ロイコ染料)由来の誘起された双極子と発色消色制御剤の持つ双極子によって、誘起双極子−双極子相互作用に起因する可逆的な凝集力が生じ、その結果として電子受容性化合物と電子供与性化合物の分子間距離を遠ざけ消色を促進すると考えられる。
その予想される機構から、消色状態から発色状態に遷移する構造変化の場合も、本発明の発色消色制御剤の双極子の効果により、発色状態の電子供与性化合物が消色状態に戻ることが予想され、良好な発色状態が得られないことが予想されたが、実際はその予想に反して良好な発色状態が得られている。種々の実験事実からも、発色状態や消色状態のような静的な状態では、可逆性感熱組成物との相互作用があまり認められず、動的な状態にのみ効果が現れ、特に発色状態から消色状態へ変移を容易にすることが示差されている。Zwitterイオンを有する化合物は、発色状態から消色状態への変移を容易にすることにより、その分離速度を高め(高速消去)、静的な状態には影響がない(発色濃度、耐熱保存性の低下がほとんど見られない)ことが明らかとなっている。
以上の様なZwitterイオンの作用は、特に長鎖脂肪族炭化水素基をもった顕色剤とロイコ染料のつくる発色状態と消色状態の構造変化に対して優れた効果を示すものであり、なかでも、炭素数8以上の脂肪族基を有するフェノール化合物を顕色剤と用いた場合に特に顕著な効果を発現するものである。
すなわち、顕色剤として、たとえば、ビス(ヒドロキシフェニル)酢酸と高級脂肪族アミンの塩の様に、熱の作用によって酸の性質を示したり塩基の性質を示すことで、ロイコ染料を発色させたり消色させたりする顕色剤に対する作用よりも、長鎖脂肪族炭化水素基をもった顕色剤に対して特に優れた効果を示す。
以下に、本発明で用いられるZwitterイオンを有する化合物の具体例を挙げるが本発明はこれらに限られるわけではない。
Figure 0004944666
Figure 0004944666

なお、式中の記号a、b、c、d、e、f、g、d’、d”、e’は整数であり、好ましくは1から30の整数である。加えて、分子中に同一の記号がある場合は同じでも異なっていてもよい。
本発明に特に好ましい構造として以下の構造が挙げられる。
Figure 0004944666
(式中、R、R、及びRは互いに同じであっても異なっていても良い炭素数1から22の飽和または不飽和炭化水素基、または下記式(A)の構造を有する基で、R、R、及びRは互いに結合して、環を形成していても良い。Rは水酸基を有しても良い炭素数1から18の飽和、不飽和炭化水素基を示す。Aはアニオンであり、O、COO、SO のいずれかを示す。)
Figure 0004944666
(式中、Rは炭素数1から22の飽和または不飽和炭化水素基を示す。Rは2価の炭素数1〜18の飽和または不飽和炭化水素基を示す。Xはカルバモイル基、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、エーテル基、エステル基からなる基を示し、nは1から3の整数を示し、nが2以上の場合はR、Xは同一であっても異なっていても良い。)
上記の好ましい構造の一例を示すが、これらの具体例はなんら本発明を限定するものではない。
Figure 0004944666
また、本発明において顕色剤としては、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性を与える顕色剤であれば特に限定されないが、特に好ましい構造としては、下記式で示される炭素数8以上の脂肪族基を有するフェノール化合物が特に好ましく用いられる。
Figure 0004944666
(式中、Y及びZは直接結合手または−NH−、−CO−、−O−、−SO−、−S−からなる2価の基を示す。ただし、Y及びZは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1から22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8から30の炭化水素基を表わす。mは1から3の整数を表わす。また、nは0から4の整数を表わし、nが2から4の時繰り返されるRおよびZは同一でも、異なっていても良い。また、nが0のとき、Yは直接結合手ではない。)
具体的には、RおよびRは置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、これらは脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。また脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基につく置換基としては、水酸基、ハロゲン、アルコキシ基等がある。なお、Rは直接結合手でも良い。
またRの炭素が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上であることがより好ましい。Y及びZは直接結合手またはヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは下記に表わされる基を少なくとも1個以上有する2価の基を表わす。
Figure 0004944666
その具体例としては、下記のものが挙げられる。
Figure 0004944666
本発明におけるフェノール化合物の具体的な例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、フェノール化合物を単独または混合して用いることもできる。
Figure 0004944666
(式中のq、r、sは前記のRおよびRの炭素数を満足する整数を表わす。)
また、これらの他にも、たとえば特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報、特開平9−290563号公報、特開平11−188969号公報、特開平11−99749号公報などに記載の顕色剤を用いることができる。
本発明で用いられるZwitterイオンを有する化合物は顕色剤に対し、0.1〜50重量%の割合で用いられる。0.1重量%よりも少ないときには十分な効果が得られなく、また50重量%を超える場合には発色濃度の低下があり好ましくない。さらに好ましくは1重量%〜30重量%が特に好ましく用いられる。また、Zwitterイオンを有する化合物は単独で用いても良いし、複数組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いる材料を可逆性感熱記録層に含有させるための塗液作製方法としては、各々の材料を単独で溶媒に溶解もしくは分散液に分散してから混合する方法、各々の材料を混ぜ合わしてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の材料を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。分散時には必要なら分散剤を用いてよい。
可逆性感熱記録層に用いられるロイコ染料としては、この種の可逆性感熱記録媒体に一般的に用いられるものを1種または2種以上用いることができ、たとえば、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物など公知の染料前駆体である。これらの化合物の例としては、特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−230680号公報などに記載のロイコ染料である。
なかでも特に好ましい例としては、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリドなどが挙げられる。
また、記録層中に用いられる顕色剤としては、代表例として、たとえば特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報などに記載の顕色剤である。ここで用いる顕色剤は、分子内にロイコ染料を発色させる顕色能をもつ構造、たとえばフェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基などと、分子間の凝集力を制御する構造、たとえば長鎖炭化水素基が連結した構造を一つ以上もつ化合物である。連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していても良く、また長鎖炭化水素基中にも同様の連結基および/または芳香族基が含まれていても良い。このような可逆性顕色剤の具体例は前記の公開公報のほか、たとえば特開平9−290563号公報、特開平11−188969号公報、特開平11−99749号公報など示されている。これらの顕色剤のうち特に好ましくい例としては、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−オクタデシルウレア、N−[11−(p−ヒドロキシフェノキシ)ウンデカノ−N’−n−デカノヒドラジド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N’−n−ドコサノヒドラジドなどが用いられる。
本発明に用いられる架橋状態にある樹脂としては、具体的にはアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど架橋剤と反応する基を持つ樹脂、または架橋剤と反応する基を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
更に、本発明において好ましくは、水酸基価70(KOHmg/g)以上の樹脂が含有される(当初用いられる)が、水酸基価70(KOHmg/g)以上の樹脂としては、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂などが用いられるが、特に発色の安定性が良好で、消色性が良好であることから、アクリルポリオール樹脂が好ましく用いられる。水酸基価としては70(KOHmg/g)以上であり、特に好ましくは90(KOHmg/g)以上である。水酸基価の大小は架橋密度に影響するため塗膜の耐化学薬品性、物性などを左右する。本発明者らは、水酸基価が70(KOHmg/g)以上で耐久性、塗膜表面硬度、ワレ抵抗性が向上することを見出した。水酸基価70(KOHmg/g)以上の樹脂が用いられた可逆性感熱記録材料であるか否かは、残存水酸基の量やエーテル結合の量を分析すること等により確認することができる。
また、アクリルポリオール樹脂においては構成の違いによってその特性に違いがあり、水酸基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシブチルモノアクリレート(2−HBA)、1,4―ヒドロキシブチルモノアクリレート(1−HBA)などが用いられるが、特に第1級水酸基をもつモノマーを使用した方が塗膜のワレ抵抗性や耐久性が良いことから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく用いられる。
本発明に用いられる硬化剤としては、従来公知のイソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ化合物等が挙げられる。その中でもイソシアネート系硬化剤が好ましく用いられる。ここで用いられるイソシアネート系化合物は、公知のイソシアネート単量体のウレタン変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、ビュレット変性体、カルボジイミド変性体、ブロックドイソシアネートなどの変性体から選択される。また、変性体を形成するイソシアネート単量体としては、トリレンジイソシアネートTDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネートNDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。架橋促進剤としては、例えば1,4−ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類、有機すず化合物などの金属化合物などが挙げられる。また、硬化剤は添加した全量が架橋反応をしていても、していなくても良い。すなわち、未反応硬化剤が存在していても良い。この種の架橋反応は経時的に進行するため、未反応の硬化剤が存在していることは架橋反応が全く進行していないことを示すのではなく、未反応の硬化剤が検出されたとしても、架橋状態にある樹脂が存在しないということにはならない。また、本発明におけるポリマーが架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法として、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。すなわち、非架橋状態にあるポリマーは、溶媒中に該ポリマーが溶け出し溶質中には残らなくなるため、溶質のポリマー構造の有無を分析すればよい。
さらに、本発明によれば、上記の顕色剤、ロイコ染料とともに、直鎖の炭化水素基やアミド基や尿素基などの水素結合基などを有した異なる発色消色制御剤を記録層中に含有させることにより、発色画像の保存安定性が良好であるとともに、消色時の消色性も向上して良好な消去性を得ることができる。この異なる発色消色制御剤の使用量は、本発明における前記発色消色制御剤(Zwitterイオンを有する化合物)100重量部当り150重量部以下であることが好ましく、より好ましくは100重量部以下であり、更に好ましくは50重量部以下である。
また、本発明によれば、可逆性感熱記録層上に架橋状態にある樹脂を含有する保護層を設けることができる。該保護層に用いられる樹脂としては、前述の記録層と同様の熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂が用いられる。
該保護層中に用いる樹脂として、特に好ましくは、紫外線吸収基を分子構造中に有した紫外線吸収性ポリマーが用いられる。
紫外線吸収性ポリマーとしては紫外線吸収基を有した単量体と、架橋可能な官能基を有した単量体をもつポリマーが好ましく用いられ、紫外線吸収基を有した単量体としては、(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ω−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール骨格を有した単量体が特に好ましく用いられる。
また、官能基を含む単量体としては、例えば2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、なかでもヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレートなどが特に好ましく用いられる。
更に塗膜強度アップや耐熱性向上のために、紫外線吸収性基を含む単量体と官能基を含む単量体の共重合体に下記に示す単量体を共重合させてもよい。例えば、スチレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソブチレン、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル、メタクリロニトリル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのモノマー群;アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ラウリルトリデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチルステアリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの官能基を含まない(メタ)アクリル酸エステル群;エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブチレンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなど1分子中に2個以上の重合性2重結合を有するモノマー群などから挙げられ、特に限定されるものではないが、なかでもスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどが特に好ましく用いられる。また、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
以上より、本発明で用いられる紫外線吸収構造を有するポリマーの具体的な好ましい例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとスチレンからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとメタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルとメタクリル酸メチルからなる共重合体などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
さらに、本発明によれば、該保護層中に紫外線吸収能を有する無機微粒子を含有することができる。
本発明に用いられる無機顔料は0.1μm以下の平均粒径を有する顔料ならば任意である。このような無機顔料としては酸化亜鉛、酸化インジウム、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ビスマス、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化トリウム、酸化ハフニウム、酸化モリブデン、鉄フェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムのような金属酸化物及びこれらの複合酸化物、硫化亜鉛、硫酸バリウムのような金属硫化物あるいは硫酸化合物、チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、タンタルカーバイドのような金属炭化物、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、窒化ニオブ、窒化ガリウムのような金属窒化物等が挙げられる。
この中でも特に好ましいのは400nm以下の波長領域に吸収端を有する顔料である。
さらに、本発明においては保護層中にこの種の記録媒体に使用される無機/有機のフィラー、滑剤などを用いても良い。
また、さらに本発明によれば前記可逆性感熱記録層と保護層の間に中間層を設けることができる。該中間層には前記可逆性感熱記録層および保護層と同様の硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が用いられ、硬化性樹脂としては熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂が用いられる。なかでも特に熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。また、本発明では該中間層中に、前記の樹脂と共に前記保護層に用いられる有機/無機の紫外線吸収剤を用いることができる。さらに、該中間層中にはこの種の記録材料に使用される有機/無機フィラー、滑剤などを用いても良い。
なお、前記保護層および中間層の厚みはそれぞれ0.5〜10μmが好ましく、さらに1〜5μmが好ましい。
また、本発明においては、前記可逆性感熱記録層と支持体の間にアンダー層を設けることができる。該アンダー層としては、中空粒子を含有した断熱アンダー層が好ましく用いられる。該断熱アンダー層は、結着樹脂中に中空率30%以上、好ましくは50〜95%の無機又は有機中空フィラーを含む層であり、厚みが2〜30μm、好ましくは5〜25μmの層である。なお、ここで云う中空率とは(中空フィラーの内径)/(中空フィラーの外径)×100(%)で表わされる値である。
また、中空フィラーは粒径0.1〜10μm、好ましくは1〜5μmとするのが良く、中空フィラー混入量は断熱層アンダー容積の30%以上、好ましくは50〜80%とするのが良い。
断熱層アンダーに用いる無機中空フィラーとしてはガラスやセラミックス等で形成された中空体が、有機中空フィラーとしてはアクリル系ポリマーや塩化ビニリデン系ポリマー等の高分子化合物で形成された中空体が挙げられる。また、断熱層アンダーの結着樹脂としては、前記の可逆性感熱記録層、中間層、保護層を構成する樹脂、そのほかの従来公知の結着樹脂を使えば良く、水系エマルジョン樹脂や水溶性樹脂も好ましく用いられる。
また、さらに断熱層アンダーには、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどの無機フィラーおよび/または各種有機フィラーを含有させることができる。その他、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
本発明の可逆性感熱記録媒体の支持体としては、紙、樹脂フィルム、PETフィルム、合成紙、金属箔、ガラスまたはこれらの複合体などであり、感熱記録層を保持できるものであればよい。また、必要に応じた厚みのものが単独あるいは貼り合わす等して用いることができる。すなわち、好ましくは60〜350μmで、数μm程度から数mm程度まで任意の厚みの支持体が用いられる。
また、これら支持体上に前記アンダー層を設ける場合、接着層を介して設けることにより、クラック発生防止やバリの発生が改善される。
該接着層は、上記の各層と同様の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。
本発明の可逆性感熱記録ラベルは、上述した可逆性感熱記録媒体を構成する支持体の感熱層を形成する面と反対の面に、接着剤層又は粘着剤層を設けたものである。
この可逆性感熱記録ラベルには、接着剤層又は粘着剤層を形成したもの(無剥離紙型)と、その接着剤層又は粘着剤層の下に剥離紙をつけるもの(剥離紙型)とがあり、接着剤層を構成する材料としては、ホットメルト型のものが通常用いられる。
接着剤層又は粘着剤層の材料は、一般的に用いられているものが使用可能である。
例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の可逆性感熱記録媒体は、該可逆性感熱記録媒体を構成する少なくとも感熱層を可逆表示部として機能し、それと情報記憶機能のある部材(情報記憶部)と合わせて作製される情報表示記憶部材として用いることができる。
次に、該情報表示記憶部材について説明する。
この情報記憶部と可逆表示部を有する部材としては、次の3つのものに大別できる。
(1)情報記憶機能のある部材の一部を可逆性感熱記録媒体の支持体として用い、そこに感熱層を直接形成したもの。
(2)情報記憶機能のある部材に、別途形成された、支持体上に感熱層を有する可逆性感熱記録媒体の支持体面を接着したもの。
(3)情報記憶機能のある部材に、前記可逆性感熱記録ラベルが接着剤層又は粘着剤層を介して、接着されたもの。
これら(1)、(2)、(3)の場合、情報記憶部と可逆表示部のそれぞれの機能が発揮できるよう設定されることが必要であり、そうでありさえすれば情報記憶部の設定位置は目的に応じて任意に選定でき、可逆性感熱記録媒体における支持体の感熱層を設けた面と反対側の面に設けることも、支持体と感熱層との間でも、あるいは感熱層上の一部に設けることもできる。
この情報記憶機能のある部材としては、特に限定されないが、一般的なカード、ディスク、ディスクカートリッジ又はテープカセットを用いることができる。
これらの例としては、ICカードや光カード等の厚手カード、フレキシブルディスク、光磁気記録ディスク(MD)やDVD−RAM等の記憶情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ、CD−RW等のディスクカートリッジを用いないディスク、CD−R等の追記型ディスク、相変化形記憶材料を用いた光情報記録媒体(CD−RW)、ビデオテープカセット等を挙げることができる。
この可逆表示機能と情報記憶機能の双方を有する情報表示記憶部材は、例えばカードの場合で説明すると、情報記憶部に記憶された情報の一部を可逆性感熱記録層に表示することによって、カード所有者等は、特別な装置がなくてもカードを見るのみで情報を確認することができて、可逆性感熱記録媒体を適用しないカードに比べてその利便性が非常に向上することになる。
情報記憶部は、必要な情報を記憶できるものでありさえすれば特に限定されないが、例えば、磁気記録、接触型IC、非接触型ICあるいは光メモリが有用である。
磁気記録層は、通常用いられる酸化鉄、バリウムフェライト等のような金属化合物及び塩ビ系、ウレタン系及びナイロン系のような樹脂等を用いて支持体に塗工形成するか、または樹脂を用いず前記の金属化合物を用いて蒸着、スパッタリング等の方法により形成される。また、表示に用いる可逆性感熱記録媒体における可逆性感熱記録層をバーコード、2次元コード等のようなやり方で記憶部として用いることもできる。
また、前記(3)の可逆性感熱記録ラベルを用いる例として、磁気ストライプ付塩化ビニル製カード等のように、支持体として可逆性感熱記録層の塗布が困難な厚手のもの場合には、その全面又は一部に接着剤層又は粘着剤層を設けることができる。
こうすることによって、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性を向上できる。
この接着剤層又は粘着剤層を設けた可逆性感熱記録ラベルとしては、上記の磁気付塩ビカードだけでなく、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
また、この可逆性感熱記録ラベルは、フレキシブルディスク、MDやDVD−RAM等の記憶情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ上の表示ラベルの代わりとして用いることができる。
さらに、CD−RW等のディスクカートリッジを用いないディスクの場合には、直接ディスクに可逆性感熱記録ラベルを貼ることや、直接ディスク上に可逆性感熱記録層を設けることもできる。こうすることによって、それらの記憶内容の変更に応じて自動的に表示内容を変更する等の用途への応用が可能である。
本発明の可逆性感熱記録ラベルは、CD−Rなどの追記型ディスク上に可逆性感熱記録ラベルを貼って、CD−Rに追記した記憶情報の一部を書換え表示することも可能である。
さらに、ビデオテープカセットの表示ラベルとして用いてもよい。
厚手カード、ディスクカートリッジ、ディスク上に熱可逆記録機能を設ける方法としては、上記の可逆性感熱記録ラベルを貼る方法以外に、それらの上に可逆性感熱記録層を直接塗布する方法や、予め別の支持体上に可逆性感熱記録層を形成しておき、厚手カード、ディスクカートリッジ、ディスク上に該感熱記録層を転写する方法等がある。
転写する場合には、可逆性感熱記録層上にホットメルトタイプ等の接着層や粘着層を設けておいてもよい。
厚手カード、ディスク、ディスクカートリッジ、テープカセット等のように剛直なものの上に可逆性感熱記録ラベルを貼着したり、可逆性感熱記録層を設ける場合には、サーマルヘッドとの接触性を向上させ、画像を均一に形成するために弾力があり、クッションとなる層又はシートを剛直な基体とラベル又は可逆性感熱記録層の間に設けることが好ましい。
本発明は、さらに、上記可逆性感熱記録媒体、上記情報記憶部を有する部材又は上記ラベルを用い、加熱により画像の形成及び/又は消去を行なうことを特徴とする画像処理方法を提供する。
画像の形成は、サーマルヘッド、レーザ等、該媒体を画像上に部分的に加熱可能である画像記録手段が用いられる。画像の消去は、ホットスタンプ、セラミックヒータ、ヒートローラ、熱風等やサーマルヘッド、レーザ等の画像消去手段が用いられる。
消去手段の中では、セラミックヒータ、サーマルヘッド、レーザによる加熱が好ましく用いられ、セラミックヒータを用いる場合にはヒートローラの場合に比べ、装置が小型化でき、省エネルギー化が可能であって、かつ安定した消去状態が得られ、コントラストのよい画像が得られる。
セラミックヒータの設定温度は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、115℃以上がさらに好ましい。
また、画像消去手段としてサーマルヘッドを用いることにより、さらに装置全体の小型化が可能となり、また、消費電力を低減することが可能であり、バッテリー駆動のハンディタイプの装置も可能となる。形成用と消去用を兼ねて一つのサーマルヘッドとすれば、さらに小型化が可能となる。
一つのサーマルヘッドで形成と消去を行なう場合、一度前の画像を全部消去した後、あらためて新しい画像を形成してもよく、画像毎にエネルギーを変えて一度に前の画像を消去し、新しい画像を形成していくオーバーライト方式も可能である。
オーバーライト方式では、形成と消去を合わせた時間が少なくなり、記録のスピードアップにつながる。
また、レーザによる加熱によって書き替えを行なう場合には、記録媒体と非接触での書き替えが可能となるため、他の方法では書き替え時に加熱と共に、熱媒体の接触した際の摩擦などによる劣化が起きて、記録媒体表面へのダメージがあるのに比べ、記録媒体の劣化の少ないものとなり、より多数回の書き替えが可能となる。
可逆性感熱記録層と情報記憶部を有するカードを用いる場合、上記の装置には、情報記憶部の記憶を読み取る手段と書き換える手段も含まれる。
図5は可逆性感熱記録層の画像の書き替えと磁気記録部の情報の読みとり及び書き替えを行なう装置の例である。磁気ヘッド(12)で磁気記録部の情報の読みとりと書き替えを行ない、その後、セラミックヒータ(13)で可逆性感熱記録層の画像を消去した後にサーマルヘッド(14)で新たな画像を印字するものである。
図6はサーマルヘッドのみで可逆性感熱記録層の画像の消去と印字を同時に行なう装置の例である。サーマルヘッド(23)で全体に消去条件となるように加熱し、画像部には印字条件となる加熱を同時に行なう、いわゆるオーバーライトを行なうものである。
一般式(1)で示される発色消色制御剤の具体的な合成例を示す。
(合成例1)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(3.57g)とN−n−ブチルジメチルアミン(3.10g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水を留去し、透明液体を得た。その透明液体を乾燥させて得た固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、取り出した白色液体を80℃で真空乾燥を行ない、上記化合物の白色固体を得た。収量4.5gであった。
(合成例2)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにN,N−ジメチル−n−ドデシルアミン(5.10g)とジクロロメタン/メタノール8:1混合溶媒100mLを加え、水冷し攪拌した。そこにプロピオール酸エチル(2.34g)を滴下し、徐々に室温まで温度を上げていった。薄層クロマトグラフィで反応が進行しているのを確認し、その後、反応溶液をジクロロメタンで洗浄し、洗浄した水層をエバポレーターを用いて水を留去した。そこで得た黄色固体をジクロロメタンで洗浄し、再結晶を行なうことで淡黄色粉末を得た。収量は5.8gであった。
(合成例3)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つフラスコのイオン交換水+クロロホルム混合溶液(1:1 V/V)200mL中に、ブロモ安息香酸(7.16g)と1.5当量の炭酸水素ナトリウムを入れて50℃で2時間加熱還流した。そこに、ジメチルドデシルアミン(7.60g)を加え、50度で10時間加熱還流した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水とクロロホルムを留去し、透明固体を得た。その固体を酢酸エチルに溶かし、イオン交換水で3回洗浄した。洗浄した油層をエバポレーターにより溶媒を留去し、取り出した白色固体を恒温槽により120℃で乾燥し、上記化合物の白色固体を得た。収量11.0gであった。
(合成例4)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコに1−ブロモ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(8.48g)とN,N−ジメチル−n−ドデシルアミン(9.20g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水を留去し、淡黄色固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、真空乾燥を行なうことで上記化合物の淡黄色固体を得た。収量15.0gであった。
(合成例5)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(1.64g)と4−へプチルアミン(4.0g)とイオン交換水50mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水を留去し、淡黄色固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、真空乾燥を行なうことで上記化合物の淡黄色固体を得た。収量4.8gであった。
(合成例6)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(3.24g)とピリジン(2.20g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水を留去し、透明液体を得た。その透明液体を乾燥させて得た固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで5回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、取り出した透明液体を80℃真空乾燥を行ない、上記化合物の白色固体を得た。収量3.6gであった。
(合成例7)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(4.0g)とN,N−ジメチルオクチルアミン(5.40g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水を留去し、透明固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、取り出した白色固体を80℃真空乾燥を行ない、上記化合物の白色固体を得た。収量7.0gであった。
(合成例8)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(2.00g)とN,N−ジメチルデシルアミン(3.20g)とイオン交換水80mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で7時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水を留去し、透明固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、取り出した白色固体を恒温槽により120℃で乾燥し、上記化合物の白色固体を得た。収量4.1gであった。
(合成例9)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(2.60g)とN,N−ジメチル−n−ドデシルアミン(4.70g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水を留去し、透明固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、取り出した白色固体を恒温槽により120℃で乾燥し、上記化合物の白色固体を得た。収量5.9gであった。
(合成例10)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(9.30g)とN,N−ジメチル−n−ヘキサデシルアミン(21.5g)とイオン交換水300mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で7時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、エバポレーターを用いて水を留去し、透明固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、取り出した白色固体を恒温槽により120℃で乾燥しさらに80℃で減圧乾燥を3時間行ない、上記化合物の白色固体を得た。収量25.0gであった。
(合成例11)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(0.59g)とN,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン(1.50g)とイオン交換水30mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、反応溶液をエバポレーターを用いて水を留去し、透明固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、取り出した白色固体を恒温槽により120℃で乾燥し、上記化合物の白色固体を得た。収量1.7gであった。
(合成例12)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(5.91g)とジーn−デシルメチルアミン(15.8g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、反応溶液をエバポレーターを用いて溶媒を留去し、黄色状液体を得た。その液体をシリカゲルクロマトグラフィにより分離精製を行ない、80℃で減圧乾燥を行なうことにより、淡黄色固体を得た。収量17.8gであった。
(合成例13)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
テトラヒドロフラン100mLとイオン交換水50mLと1,10−ジブロモデカン(17.6g)、ニコチン酸ナトリウム(12.0g)を加え、70℃で加熱還流を行なった。7時間加熱還流を行なったのち、エバポレーターで徐々に溶媒を留去した。そこで得られた淡黄色固体に対して、酢酸ブチルのデカンテーションを5回行ない、取り出した白色固体を恒温槽により60℃で真空乾燥を行ない、上記化合物の白色固体を得た。収量は35.2gであった。
(合成例14)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコに3−ブロモプロパンスルホン酸ナトリウム(19.1g)と4−へプチルジメチルアミン(9.8g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、反応溶液をエバポレーターを用いて水を留去し、淡黄色固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、真空乾燥(3時間)を行なうことで上記化合物の淡黄色固体を得た。収量22.5gであった。
(合成例15)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(8.6g)と1−メチルピペリジン(7.3g)とイオン交換水200mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、反応溶液をエバポレーターを用いて水を留去し、透明固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、真空乾燥(3時間)を行なうことで上記化合物の白色固体を得た。収量11.3gであった。
(合成例16)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム(1.37g)とオクタデカン酸−10−(3−ジメチルアミノプロピルカルバモイル)−デシルエステル(3.7g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で5時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、反応溶液をエバポレーターを用いて水を留去し、白色固体を得た。その固体をテトラヒドロフランに加熱溶解させ再結晶し、真空乾燥(3時間)を行なうことで上記化合物の白色固体を得た。収量3.2gであった。
(合成例17)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにトリフェニルアミン(3.2g)とジクロロメタン/メタノール8:1混合溶媒100mLを加え、水冷し攪拌した。そこにプロピオール酸エチル(1.3g)を滴下し、徐々に室温まで温度を上げていった。薄層クロマトグラフィで反応が進行しているのを確認し、その後、反応溶液をジクロロメタンで洗浄し、洗浄した水層をエバポレーターを用いて水を留去した。そこで得た黄色固体を酢酸エチルで洗浄し、テトラヒドロフランを用いたシリカゲルクロマトグラフィにより分離精製を行ない、60℃で真空管層(3時間)を行なうことで淡黄色粉末を得た。収量は4.0gであった。
(合成例18)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにクロロ酢酸ナトリウム(6.1g)とN,N,N’,N’−テトラメチルジアミノヘキサン(4.5g)とイオン交換水100mLを加え、ウォーターバスを用いて80℃で10時間加熱した。その後、反応が進行したことを薄層クロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/0.1mol/L硫酸10%含有メタノール=7/3)で確認し、反応溶液をエバポレーターを用いて水を留去し、白色結晶を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、酢酸エチルで加熱洗浄を行なった後、真空乾燥を行なうことで上記化合物の白色粉末を得た。収量7.2gであった。
(合成例19)
・下記に示すZwitterイオンを有する化合物
Figure 0004944666
3つ口フラスコにTHF100mLと2−ハイドロデシル−1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリン(5.0g)とクロロ酢酸ナトリウム(2.1g)と炭酸水素ナトリウムを少量を加え5時間加熱還流を行なった。その後、反応溶液をエバポレーターを用いて溶媒を留去し、白色固体を得た。その固体をイオン交換水に溶かし、酢酸エチルで3回洗浄した。洗浄した水層をエバポレーターにより水を留去し、真空乾燥を行なうことで上記化合物の白色粉末を得た。収量5.5gであった。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、文中、部又は%とあるのは特に断わりのない限り重量基準である。
[感熱記録層の作成]
顕色剤:4部
発色消色制御剤:0.4部
アクリルポリオール樹脂:9部
(三菱レイヨン社製LR503、固形分濃度50%溶液)
メチルエチルケトン:70部
上記組成物をボールミルを用いて平均粒径約1μmまで粉砕分散した。得られた分散液に2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン1.5部、日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート75%酢酸エチル溶液)2部を加え、良く攪拌し感熱記録層塗布液を調製した。
上記組成の感熱記録層塗布液を、厚さ100μmの白PETにワイヤーバーを用い塗布し、100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、膜厚約11.0μmの記録層を設けた。
[保護層の作成]
紫外線吸収性ポリマーの40%溶液(日本触媒社製UV−G300):10部
イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、コロネートHX):1.4部
シリコーン系アクリル樹脂(東亞合成社製GS−1015):0.5部
メチルエチルケトン:10部
以上の組成物を良く撹拌し、保護層塗布液を調整した。
上記組成の保護層塗布液を上記記録層上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、厚さ約3.5μmの保護層を設け本発明の可逆性感熱発色組成物を用いた可逆性感熱記録媒体を作製した。
以下に、実施例に使用した発色消色制御剤(記号A−1からA−27で示される化合物)を表7に示し、顕色剤(B−1からB−5で示される化合物)を表8に示し、比較例で使用した発色消色制御剤の具体的な構造を表9に示し、その組み合わせを表10に示す。
Figure 0004944666
Figure 0004944666
Figure 0004944666
Figure 0004944666
Figure 0004944666
さらに、発色消色制御剤の添加量を0.4部(顕色剤に対する割合:10重量%)から表10に示す割合に変えて、本発明の可逆性感熱発色組成物を用いた可逆性感熱記録媒体を作製した。表10に顕色剤と発色消色制御剤の組み合わせと割合を示す。
Figure 0004944666
(試験1)発色特性
上記のように作製した実施例および比較例の可逆性感熱記録媒体をビーコム社製感熱印字シミュレーターを用いてパルス幅2msecの条件で13Vから21V範囲を0.5V刻みの電圧で印字を行なった。印字画像濃度をマクベス濃度計RD914を用いて測定し、最も高い濃度を最大発色濃度とした。実施例および比較例の可逆性感熱記録媒体の組み合わせと発色特性を表11に示す。
(試験2)消色特性
試験1と同様にビーコム社製感熱印字装置にて電圧最大発色濃度を与える印字電圧で印字した後、東洋精機社製熱傾斜試験器で1Kgf/cm、0.5秒間加熱し、消去後における残存濃度(消去後画像濃度−地肌濃度)を試験1と同様に測定した。なお、消色における残存濃度は、100℃から170℃までの範囲で10℃刻みに加熱した熱ブロックで消去し、最も良く消えた温度での残存濃度とした。その結果を表11に示す。
(試験3)高速消去性試験
試験1と同様に、実施例および比較例の可逆性感熱記録媒体を、ビーコム社製感熱印字装置にて最大発色濃度となる電圧で印字した後、印字画像上に再度9Vから17Vの条件で0.5V刻みのエネルギーで消去し、最も消色した部分の画像濃度を試験1と同様に測定し、下記式よりサーマルヘッド消去率を算出し、高速消去特性とした。結果を表11に示す。
サーマルヘッド消去率(%)=(1−(消去後画像濃度−地肌濃度)/(消去前画像濃度−地肌濃度))×100
(試験4)耐熱保存性試験
試験2と同様に得た印字画像を60℃乾燥条件で24時間保存した。保存前後の濃度を試験1と同様にして測定した後、下記式にて画像保持率を算出し、耐熱保存性とした。その結果を表11に示す。
画像保持率(%)=(保存後画像濃度−保存後地肌濃度)/(保存前画像濃度−保存前地肌濃度)×100
Figure 0004944666
Figure 0004944666
表11に示した結果から、本発明の可逆性感熱発色組成物を用いた可逆性感熱記媒体は、発色濃度は実用の基準を満たしており、また、消去性も十分高く、発色・消去での良好なコントラストが得られる。サーマルヘッドによる短時間の加熱でも良好な消色特性を示し、高速消去性を有しているのが分かる。さらに、実用で求められる60℃での画像保存率は高いレベルを保っている。
以上のように本発明の可逆性感熱記録組成物は、高い発色性を有しながら、高速で良好な消去性と耐熱保存性を有する実用性の高い可逆性感熱組成物及び可逆性感熱記録媒体を提供することができる。
本発明の可逆性感熱発色組成物の発色・消色特性を示す図である。 可逆性感熱記録ラベルをMDのディスクカートリッジ上に貼った例を示す図である。 可逆性感熱記録ラベルをCD−RW上に貼った例を示す図である。 ビデオテープカセットの表示ラベルとして用いた例を示す図である。 本発明の画像処理装置の例を示す図である。 本発明の画像処理装置の他の例を示す図である。
符号の説明
11 搬送ローラ
12 磁気ヘッド
13 セラミックヒータ
14 サーマルヘッド
21 搬送ローラ
22 搬送ローラ
23 サーマルヘッド

Claims (3)

  1. 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/又は加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱発色組成物において、発色消色制御剤として下記一般式(1)で示すZwitterイオンを有する化合物を少なくとも含有することを特徴とす可逆性感熱発色組成物。
    Figure 0004944666
    (式中、R、R、及びRは互いに同じであっても異なっていても良い炭素数1から22の飽和または不飽和炭化水素基、または下記式(A)の構造を有する基で、R、R、及びRは互いに結合して、環を形成していても良い。Rは水酸基を有しても良い炭素数1から18の飽和、不飽和炭化水素基を示す。Aはアニオンであり、O、COO、SO のいずれかを示す。)
    Figure 0004944666
    (式中、Rは炭素数1から22の飽和または不飽和炭化水素基を示す。Rは2価の炭素数1〜18の飽和または不飽和炭化水素基を示す。Xはカルバモイル基、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、エーテル基、エステル基からなる基を示し、nは1から3の整数を示し、nが2以上の場合はR、Xは同一であっても異なっていても良い。)
  2. 前記電子受容性化合物として、下記一般式(2)で表わされる炭素数8以上の脂肪族基を有するフェノール化合物を用いることを特徴とする請求項に記載の可逆性感熱発色組成物。
    Figure 0004944666
    (式中、Y及びZは直接結合手または−NH−、−CO−、−O−、−SO−、−S−からなる2価の基を示す。ただし、Y及びZは同時に直接結合手であることはない。Rは炭素数1から22の2価の炭化水素基を表わし、Rは炭素数8から30の炭化水素基を表わす。mは1から3の整数を表わす。また、nは0から4の整数を表わし、nが2から4の時繰り返されるRおよびZは同一でも、異なっていても良い。また、nが0のとき、Yは直接結合手ではない。)
  3. 支持体上に請求項1又は2に記載の可逆性感熱組成物を有する記録層を設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
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