以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)、(b)は本発明の一実施の形態であるブラシホルダを備えたパワーウインドモータを示す正面図と側面図であり、図2は図1(a)に示すパワーウインドモータの横断面図である。
図1(a)、(b)に示すパワーウインドモータ11は、図示しない車両に設けられるパワーウインド装置の駆動源として用いられ、車体のドアの内部に装着されて、レギュレータ(不図示)を介してウインドガラスを開閉駆動する。
このパワーウインドモータ11はモータ本体12と減速機13とを備え、これらが1つのユニットとして組まれた減速機付き電動モータとなっており、その作動制御は車載される制御装置14により行われるようになっている。
モータ本体12はいわゆるブラシ付き電動モータとなっており、図2に示すように、このモータ本体12は断面小判形且つ有底筒状のモータハウジングとしてのモータヨーク15を備え、モータヨーク15の内周面には一対のマグネット16が固定されている。これらのマグネット16に対向するように、モータヨーク15の内部にはアマチュア17(電機子)が収容されている。アマチュア17はアマチュア軸(回転軸)18とアマチュア軸18に固定されるアマチュアコア19とを有しており、アマチュア軸18の一端はモータヨーク15の底部に設けられる軸受21により支持され、これにより、アマチュア17はモータヨーク15の内部で回転自在となっている。アマチュアコア19には複数のスリット19aが形成され、これらのスリット19aにはそれぞれ複数のアマチュアコイル22が重ね巻により巻装されている。また、アマチュア軸18にはアマチュアコア19に隣接してコミュテータ(整流子)23が固定されており、各アマチュアコイル22のコイル端はそれぞれコミュテータ23の対応するセグメント23aに電気的に接続されている。
モータ本体12には、コミュテータ23に電力を供給するために、給電装置24が設けられている。給電装置24はコミュテータ23の外周面に摺接する一対のブラシ(詳細は後述する)を有しており、これらのブラシに直流電流が供給されると、その直流電流はコミュテータ23により転流されて各アマチュアコイル22に流れるようになっている。アマチュアコイル22に直流電流が流れると、アマチュアコア19とマグネット16との間で電磁力が発生し、この電磁力によりアマチュア17が回転する。なお、給電装置24の詳細については後述する。
一方、減速機13はモータハウジングとしてのギヤケース25を有しており、このギヤケース25はモータヨーク15の開口端に締結部材(ボルト)により固定され、モータヨーク15の開口部を閉塞している。モータ本体12のアマチュア軸18はモータヨーク15の内部からギヤケース25の内部に突出しており、その突出基端部分と先端部分は軸受26a、26bによりギヤケース25に回転自在に支持されている。アマチュア軸18のギヤケース25の内部に突出した部分の外周面にはウォーム27が一体的に形成され、ギヤケース25の内部にはウォーム27に噛み合うウォームホイル28が回転自在に収容されており、ウォームホイル28の軸心にはアマチュア軸18と直交する方向に延びる出力軸29が固定されている。また、出力軸29の先端部分はギヤケース25から突出しており、そのギヤケース25から突出した先端部分は図示しないレギュレータに連結されている。これにより、モータ本体12が作動してアマチュア軸18が回転すると、その回転はウォーム27とウォームホイル28とによる減速機構により所定の回転数にまで減速して出力軸29に伝達され、出力軸29の回転によりレギュレータを介してウインドガラスが開閉駆動される。また、ギヤケース25には、後述するブラシホルダ31に設けられる係合凹部36d,36eと係合可能な一対の係合突起25aが一体的に形成されている。
なお、ギヤケース25に支持される出力軸29は断面小判形に形成されるモータヨーク15の厚み寸法が薄い方向に軸方向を合わせて配置されている。これにより、このパワーウインドモータ11は、図1(b)に示すように出力軸29の軸方向の厚み寸法Lが薄い扁平形状に形成されている。また、ギヤケース25には複数の取付け脚部25bが一体に設けられている。そして、パワーウインドモータ11は、薄型に形成された車両の壁の一部を構成するドア内に出力軸29の軸方向をドアの内外方向つまりドアの厚み方向に向けて配置され、複数の取付け脚部25bの出力軸29の突出方向とは逆側の面が図示しないドアの内部パネルにボルト等の締結手段により固定されることにより、ドア内に固定されている。
図3(a)、(b)はそれぞれ図2に示す給電装置の詳細を示す斜視図であり、図4(a)は図2に示す給電装置の平面図、図4(b)は図2に示す給電装置の背面図である。
図3、図4に示すように、このパワーウインドモータ11に設けられる給電装置24は、樹脂製のブラシホルダ31を備え、このブラシホルダ31に前述のブラシ32a,32bと給電回路33とが設けられることにより給電装置24とされている。
ブラシホルダ31は、樹脂材料の射出成形により形成される樹脂製となっており、ホルダ本体34と連結部35とコネクタ部36とが一体に形成された構造となっている。ホルダ本体34は、モータヨーク15の開口端に沿った略小判形の外形に形成されるリング部34aと、リング部34aからアマチュア軸18の軸方向へ延びる一対の側壁34bと、各側壁34bのリング部34aとは反対側の端部にアマチュア軸18の軸方向つまりコミュテータ23の軸方向に直交して形成されるベース壁34cとを備えており、リング部34aと連結部35がモータヨーク15とギヤケース25との間に挟み込まれてモータ本体12に固定された状態でモータヨーク15の内部つまり当該モータ本体12の内部に配置されている。また、ベース壁34cの軸心部分には貫通孔37が形成されており、コミュテータ23はこの貫通孔37に挿通されてホルダ本体34の内側に配置されている。
図3(b)、図4(b)に示すように、ベース壁34cには一対の板ばね38a,38bの基端がねじ部材41により固定されており、これらの板ばね38a,38bの先端にはそれぞれ前述したブラシ32a,32bが取り付けられている。これらのブラシ32a,32bは板ばね38a,38bにより弾性的に付勢された状態でコミュテータ23の外周面に摺接しており、つまり、各ブラシ32a,32bは、ホルダ本体34に保持されてコミュテータ23の外周面に摺接するようになっている。
連結部35はホルダ本体34のリング部34aからコミュテータ23の径方向外側に延出して形成され、図2に示すように、モータヨーク15とギヤケース25との間からモータヨーク15の外側に突出しており、その先端部においてコネクタ部36に接続されている。つまり、連結部35はモータ本体12の内部に配置されるホルダ本体34とモータ本体12の外側に配置されるコネクタ部36とをモータ本体12の内外で連結している。
図5は(a)はコネクタ部の内部構造を示す断面図、図5(b)は同図(a)に示すA−A線に沿う断面図である。
図1に示すように、コネクタ部36はモータヨーク15の外側に隣接して配置されており、このコネクタ部36は制御装置14からの外部コネクタ42に接続されて、制御装置14からの電力を各ブラシ32a,32bに供給させる給電用となっている。図5に示すように、コネクタ部36は一端が開口する断面矩形の箱形に形成されており、その外周壁36aの内側には接続用凹部36bが形成され、この接続用凹部36bはコミュテータ23の径方向外側且つアマチュア軸18から見てウォームホイル28側に向けて開口している。これに対して、制御装置14からの外部コネクタ42は凸型に形成されており、図1に示すように、外部コネクタ42は接続用凹部36bに軸方向から押し込まれることにより、この接続用凹部36bに収容された状態でコネクタ部36に接続される。また、外部コネクタ42に設けられる図示しない解除ボタンを操作した状態で外部コネクタ42を引くことにより、外部コネクタ42をコネクタ部36から取り外すことができる。つまり、コネクタ部36は外部コネクタ42に着脱自在に接続されるようになっている。
コネクタ部36の基端にはコミュテータ23の軸方向に平行にギヤケース25側に延びる連結片36cが設けられており、コネクタ部36はこの連結片36cにおいて連結部35の先端に接続されている。これにより、コネクタ部36はホルダ本体34に対してモータヨーク15の底部側にずれて配置されて、ギヤケース25との干渉が防止されるようになっている。
また、コネクタ部36の外周壁36aと連結片36cとの間には、一対の係合凹部36d,36eが設けられており、ギヤケース25の係合突起25aと係合可能とされている。これにより、外部コネクタ42のコネクタ部36への着脱時の荷重をギヤケース25にて効果的に受けることができるようになっている。
図6は給電回路の全体構造を示す斜視図であり、図7は図6に示す第1と第2のリード板の詳細を示す斜視図である。
給電回路33は、コネクタ部36に接続される外部コネクタ42と各ブラシ32a,32bとを接続して外部コネクタ42からの電力をブラシ32a,32bに供給するための回路である。図6に示すように、この給電回路33には、コネクタ部側とホルダ本体側とを電気的に接続させるために、第1のリード部材としての第1のリード板43と第2のリード部材としての第2のリード板44とが設けられている。
図7に示すように、第1のリード板43は、鋼板や銅板など導電性を有する金属板を所定の形状に打ち抜き、これを所定の形状に折り曲げて形成されており、中間部で「くの字」状に折り曲げられた本体部43aと、本体部43aの一端から延びるコネクタ側端子43bと、本体部43aの他端からコミュテータ23の軸方向の一方側に延びる一方側端子としての表側給電端子43cと、本体部43aの他端からコミュテータ23の軸方向の他方側に延びる他方側端子としての裏側給電端子43dとを備えている。同様に、第2のリード板44は、鋼板や銅板など導電性を有する金属板を所定の形状に打ち抜き、これを所定の形状に折り曲げて形成されており、中間部で「くの字」状に折り曲げられた本体部44aと、本体部44aの一端から延びるコネクタ側端子44bと、本体部44aの他端からコミュテータ23の軸方向の一方側に延びる一方側端子としての表側給電端子44cと、本体部44aの他端からコミュテータ23の軸方向の他方側に延びる他方側端子としての裏側給電端子44dとを備えている。
これらのリード板43,44は、それぞれその本体部43a,44aが互いに並ぶように、該本体部43a,44aにおいてホルダ本体34と連結部35とコネクタ部36とに渡ってブラシホルダ31にインサート成形により埋設されている。また、図2、図5に示すように、各リード板43,44のコネクタ側端子43b,44bは、それぞれ幅方向がコミュテータ23の軸方向に一致するとともに、その厚み方向が出力軸29の軸方向に一致するようにコネクタ部36から接続用凹部36bの内部に突出し、その突出部分が端子部分を形成している。また、第1のリード板43のコネクタ側端子43bはその中間部で第2のリード板44に沿うように折り曲げられており、これによりコネクタ部36に突出する各コネクタ側端子43b,44bは互いに幅方向に並べられている。したがって、例えば、各コネクタ側端子43b,44bが、その厚み方向をコミュテータ23の軸方向に一致させるとともに、その幅方向に並べて配置される場合に比べて、これらのコネクタ側端子43b,44bを収容するコネクタ部36の出力軸29の軸方向に向く厚み寸法を低減させることができる。
一方、第1と第2のリード板43,44の本体部43a,44aは、それぞれコネクタ部36の基端においてコネクタ側端子43b,44bに対して軸心を基準として直角に捩られ、図2からも解るように、連結部35の内部においては、その幅方向を出力軸29の軸方向に一致させるとともに互いに幅方向に並べられ、また、その厚み方向がコミュテータ23の軸方向に一致するように配置されている。これにより、連結部35のコミュテータ23の軸方向に向く寸法を低減して連結部35を薄く形成することができる。つまり、コネクタ部36の出力軸29の軸方向に向く厚み寸法を低減させるために、板状に形成された各リード板43,44のコネクタ側端子43b,44bをコミュテータ23の軸方向に幅方向を一致させるとともにその厚み方向を出力軸29の軸方向に一致させるように配置するようにしても、コネクタ側端子43b,44bに対して本体部43a,44aを軸心を基準として直角に捩ることにより、連結部35における各本体部43a,44aの厚み方向をコミュテータ23の軸方向と一致させて、連結部35のコミュテータ23の厚みを薄く形成することができるのである。
このように、このブラシホルダ31では、各コネクタ側端子43b,44bをコミュテータ23の軸方向に幅方向を一致させるとともに互いを幅方向に並べて配置するとともに、本体部43a,44aをコネクタ側端子43b,44bに対して軸心を基準として直角に捩ることにより、これらの本体部43a,44aを連結部35においてコミュテータ23の軸方向に厚み方向を一致させるとともに互いに幅方向に並べ、また、その厚み方向を出力軸29の軸方向と一致させるように配置したので、コネクタ部36の厚み寸法を低減させるとともにこのブラシホルダ31が設けられるパワーウインドモータ11の軸方向寸法を低減させて、このパワーウインドモータ11を小型化することができる。
また、このブラシホルダ31では、コネクタ部36をコミュテータ23の径方向外側に向けて開口させるようにしたので、このパワーウインドモータ11におけるコネクタ部36に対する外部コネクタ42の着脱作業性を向上させることができる。
さらに、このブラシホルダ31では、コネクタ部36の軸心を連結部35の軸心に対してコミュテータ23の軸方向にずらすようにしたので、モータヨーク15に固定されるギヤケース25や他の部材等に干渉することなく、コネクタ部36を配置することができる。
また、このパワーウインドモータ11では、ブラシホルダ31のコネクタ部36の係合凹部36d,36eとギヤケース25の係合突起25aとを係合させる構造としたので、外部コネクタ42のコネクタ部36への着脱時の荷重をギヤケース25にて効果的に受けることができる。
図3(a)、図4(a)に示すように、各リード板43,44の表側給電端子43c,44cは、それぞれホルダ本体34のベース壁34cに対してコミュテータ23の軸方向の一方側つまりブラシホルダ31の表側に並んで突出しており、それぞれの突出部分はコネクタ側端子43b,44bをブラシホルダ31の表側に設けられる回路に接続するための端子として機能するようになっている。また、各リード板43,44の裏側給電端子43d,44dは、それぞれホルダ本体34のベース壁34cに対してコミュテータ23の軸方向の他方側つまりブラシホルダ31の裏側に並んで突出しており、それぞれの突出部分はコネクタ側端子43b,44bをブラシホルダ31の裏側に設けられる回路に接続するための端子として機能するようになっている。つまり、第1と第2のリード板43,44は、ホルダ本体側端子である表側給電端子43c,44cと裏側給電端子43d,44dのいずれか一方において対応するブラシ32a,32bに接続されるようになっている。
図8はブラシホルダの成形装置を示す断面図であり、図9はブラシホルダの内部における各リード板の配置状態を示す側面図である。また、図10は第2の成形型に設けられる保持部の詳細を示す断面図であり、図11は図10に示す保持部により連結部に形成される露出孔の詳細を示す断面図である。次に、図8〜図11に基づいて、各リード板43,44が埋設されるブラシホルダ31の製造方法について説明する。
このブラシホルダ31の成形装置51は第1の成形型52と第2の成形型53とを備えており、第2の成形型53は第1の成形型52に対してコミュテータ23の軸方向に沿って接近離反する方向に相対移動自在となっている。また、成形装置51にはコネクタ部36に接続用凹部36bを形成するためのスライド型54が設けられ、このスライド型54は第1と第2の成形型52,53の相対移動方向に直交する方向に移動自在となっており、第1の成形型52と第2の成形型53とスライド型54とが組み合わされると、これらの型52,53,54の間に成形室55が形成されるようになっている。
第1の成形型52には一対の保持孔(詳細は不図示)が並べて設けられており、各リード板43,44の表側給電端子43c,44cはその先端部において対応する保持孔に差し込まれ、これにより、第1の成形型52に保持されている。同様に、第2の成形型53には一対の保持孔(詳細は不図示)が並べて設けられており、各リード板43,44の裏側給電端子43d,44dはその先端部において対応する保持孔に差し込まれ、これにより、第2の成形型53に保持されている。同様に、スライド型54には一対の保持孔(詳細は不図示)が並べて設けられており、各リード板43,44のコネクタ側端子43b,44bはその先端部において対応する保持孔に差し込まれ、これにより、スライド型54に保持されている。これにより、図8に示すように、第1と第2のリード板43,44は、それぞれの表側給電端子43c,44cがその先端部において第1の成形型52に保持され、それぞれの裏側給電端子43d,44dがその先端部において第2の成形型53に保持され、それぞれのコネクタ側端子43b,44bがその先端部においてスライド型54に保持された状態で、互いに並んで成形室55の内部に配置される。
また、この成形装置51の第2の成形型53には、連結部35に埋設される各リード板43,44の本体部43a,44aにおいて、つまり各型52〜54に保持される各端子の中間部分において、成形室55の内部に配置される各リード板43,44を保持するために、保持部56が設けられている。この保持部56は、第2の成形型53の本体から第1の成形型52の側に突出して各リード板43,44の厚み方向の一方の外面に接触する第1突出片56aと、第1突出片56aからさらに第1の成形型52の側に突出して第1のリード板43と第2のリード板44との間に配置される第2突出片56bとを備えており、第1のリード板43と第2のリード板44は第1突出片56aにより軸方向の移動が規制されるとともに、第2突出片56bが間に挟み込まれることにより互いの間隔が保持されるようになっている。
成形室55に第1と第2のリード板43,44が配置されると、第1の成形型52と第2の成形型53との合わせ面であって、第1の成形型52側に設けられた射出孔57から成形室55の内部に溶融した樹脂材料が射出される。射出孔57から成形室55内に溶融した樹脂材料が射出されると、成形室55の内部に樹脂材料が充填され、この樹脂材料によりホルダ本体34と連結部35とコネクタ部36とが一体となったブラシホルダ31がインサート成形される。このとき、成形室55のコネクタ部36を成形する部分にはスライド型54が突出しており、このスライド型54によりコネクタ部36の内部に接続用凹部36bが形成される。また、各型52〜54に設けられる保持孔には樹脂材料が侵入しないようになっており、これにより、第1と第2のリード板43,44の各保持孔に保持される先端部分は、それぞれ保持孔に保持された部分がホルダ本体34やコネクタ部36から突出して端子を形成することになる。また、保持部56により本体部43a,44aが保持された状態でブラシホルダ31が成形されることにより、図11に示すように、成形されたブラシホルダ31の連結部35には、各リード板43,44の本体部43a,44aの一部を外部に露出させる露出孔58が形成され、この露出孔58から露出する各リード板43,44の本体部43a,44aの間には隙間59が形成される。
このように、このブラシホルダ31では、コネクタ側端子43b,44bと表側給電端子43c,44cと裏側給電端子43d,44dの3点で各リード板43,44を成形室55に保持した状態でブラシホルダ31のインサート成形を行うようにしたので、ブラシホルダ31に埋設される各リード板43,44の射出成形時の位置ずれや変形を抑制することができる。したがって、各リード板43,44がブラシホルダ31の内部で互いに接触することを防止して、これらが絶縁不良を生じることを防止することができる。また、ブラシホルダ31をインサート成形する工程において各リード板43,44の絶縁不良を防止することができるので、各リード板43,44の絶縁不良を防止するための他の工程を不要として、その加工工数を低減し、これによりこのブラシホルダ31のコストを低減することができる。
また、このブラシホルダ31では、コネクタ側端子43b,44bと表側給電端子43c,44cと裏側給電端子43d,44dの3点に加えて、各リード板43,44の本体部43a,44aを保持する保持部56を設けるようにしたので、各端子の中間部分を保持部56により成形室55に保持して、射出成形時の各リード板43,44の絶縁不良をさらに確実に防止することができる。
なお、このパワーウインドモータ11においては、各リード板43,44の絶縁性をより確実なものとするために、ブラシホルダ31の成形後に連結部35に形成される露出孔58をシール剤等により閉塞するようにしている。
さらに、ブラシホルダ31の成形時に各リード板43,44の本体部43a,44aを保持する部分をモータハウジングで挟持する位置となるように構成してももよい。
図12はチョークコイルの詳細を示す斜視図であり、図13は一方の素子装着部の詳細を示す断面図である。
各ブラシ32a,32bとコミュテータ23との摺接によって生じるノイズを吸収するために、給電回路33には雑音防止素子としての一対のチョークコイル61,62が設けられている。図12に示すように、これらのチョークコイル61,62は、それぞれ円柱形状の鉄心材61d,62dの外側に導線を巻き付けられるコイル本体61a,62aを備え、コイル本体61a,62aの軸方向の一端からは第1の接続線61b,62bがコイル本体61a,62aの接線方向に引き出され、軸方向の他端からは第2の接続線61c,62cがコイル本体61a,62aの軸方向に引き出されている。
図3,図4に示すように、これらのチョークコイル61,62をブラシホルダ31に装着するために、ブラシホルダ31には一対の素子装着部63,64が設けられている。一方の素子装着部63は、連結部35に対してホルダ本体34の軸心を中心とした対称位置に配置されており、ベース壁34cをコミュテータ23の軸方向に貫通する半円筒状となってホルダ本体34と一体に形成されている。また、他方の素子装着部64は、一方の素子装着部63に隣接して配置されており、ベース壁34cをコミュテータ23の軸方向に貫通する円筒状となってホルダ本体34と一体に形成されている。
一方の素子装着部63にはブラシホルダ31の表側となる挿入側端部からチョークコイル61が軸方向に挿入され、これによりチョークコイル61はコミュテータ23の軸方向と平行に素子装着部63に装着される。このとき、チョークコイル61はその軸方向の他端側つまり第2の接続線61cが突出する側から素子装着部63に挿入される。これにより、図13に示すように、素子装着部63に装着されたチョークコイル61の第1の接続線61bはこの素子装着部63の挿入側端部に形成された引き出し部63aからブラシホルダ31の表側に引き出され、第2の接続線61cは素子装着部63からブラシホルダ31の裏側に引き出される。同様に、他方の素子装着部64にはブラシホルダ31の表側となる挿入側端部からチョークコイル62が軸方向に挿入され、これによりチョークコイル62はコミュテータ23の軸方向と平行に素子装着部64に装着される。このとき、チョークコイル62はその軸方向の他端側つまり第2の接続線62cが突出する側から素子装着部64に挿入される。これにより、素子装着部64に装着されたチョークコイル62の第1の接続線62bはこの素子装着部64の挿入側端部に形成された引き出し部64aからブラシホルダ31の表側に引き出され、第2の接続線62cは素子装着部64からブラシホルダ31の裏側に引き出される。
図6に示すように、一方の素子装着部63に装着されたチョークコイル61の第1の接続線61bは、ベース壁34cの裏表を貫通するリード板65の一端に接続され、このリード板65の他端はサーキットブレーカ66とリード板67とを介して第1のリード板43の裏側給電端子43dに接続されている。また、チョークコイル61の第2の接続線61cはベース壁34cの裏面に配置されるリード板68の一端に接続され、このリード板68の他端は一方のブラシ32aの板ばね38aとともにねじ部材41によりホルダ本体34に固定されている。つまり、チョークコイル61は、リード板65,67,68、サーキットブレーカ66、板ばね38aを介して第1のリード板43の裏側給電端子43dと一方のブラシ32aとの間に接続されている。一方、他方の素子装着部64に装着されたチョークコイル62の第1の接続線62bは第2のリード板44の表側給電端子44cに接続され、第2の接続線62cはベース壁34cの裏面に配置されるリード板69の一端に接続され、このリード板69の他端は他方のブラシ32bの板ばね38bとともにねじ部材41によりホルダ本体34に固定されている。つまり、チョークコイル62は、リード板69と板ばね38bを介して第2のリード板44の表側給電端子44cと他方のブラシ32bとの間に接続されている。このように、ブラシホルダ31に給電回路33が構成され、制御装置14から外部コネクタ42を介して各コネクタ側端子43b,44bに電力が供給されると、この給電回路33を介して各ブラシ32a,32bに電力が供給され、パワーウインドモータ11が作動する。また、制御装置14から供給される電流の向きが変えられることにより、各ブラシ32a,32bの正負が反転し、パワーウインドモータ11を正逆両方向に作動させることができる。
なお、各リード板65,67,68,69は鋼板や銅板等の導電性を有する金属板により形成されている。
図3(a)、図4(a)に示すように、一方の素子装着部63に装着されたチョークコイル61の第1の接続線61bをブラシホルダ31の所定位置に配置保持するために、ブラシホルダ31には第1のガイド部71が設けられている。また、他方の素子装着部64に装着されたチョークコイル62の第1の接続線62bをブラシホルダ31の所定位置に配置保持するために、ブラシホルダ31には第2のガイド部72が設けられている。
ブラシホルダ31のベース壁34cには、このベース壁34cと一体に該ベース壁34cからコミュテータ23の軸方向であってブラシホルダ31の表側に向けて突出する一対の円柱部73,74が設けられ、一方の円柱部73は一方の素子装着部63に隣接して配置されており、第1のガイド部71はこの円柱部73の先端に設けられている。また、他方の円柱部74は第1のリード板43の表側給電端子43cに隣接して配置されており、第2のガイド部72はこの円柱部74の先端に設けられている。
第1のガイド部71と第2のガイド部72は、基本的には同様の構造となっているので、以下では、これらのガイド部71,72の構造について、第1のガイド部71に基づいて説明する。
図14は第1のガイド部の詳細を示す断面図であり、本図に示されるように、第1のガイド部71は一対のガイド壁71a,71bとこれらのガイド壁71a,71bの間に形成される溝部71cとを備えている。各ガイド壁71a,71bの内側面は、この円柱部73の軸方向先端側に向けて互いに徐々に離れる方向に傾斜しており、これにより、溝部71cはその開口部側の幅が広い断面略V字形状に形成されている。また、各ガイド壁71a,71bの開口側の端部つまり軸方向先端部は、一方の素子装着部63の挿入側端部に設けられる引き出し部63aに対して、チョークコイル61の挿入方向側に高く形成されている。さらに、溝部71cは概略ブラシホルダ31のリング部34aに沿った緩い曲線状に形成されている。そして、一方の素子装着部63に装着されたチョークコイル61の第1の接続線61bは、この素子装着部63の引き出し部63aから引き出されて第1のガイド部71の溝部71cに配索され、これにより、一対のガイド壁71a,71bにより溝部71cの内部に保持されるようになっている。同様に、他方の素子装着部64に装着されたチョークコイル62の第1の接続線62bは、この素子装着部64の引き出し部64aから引き出されて第2のガイド部72の溝部72cに配索され、これにより、一対のガイド壁72a,72bにより溝部72cの内部に保持されるようになっている。また、図4に示すように、第1のガイド部71におけるガイド壁71bの素子装着部63側の端部には、チョークコイル61の組付け時に第1の接続線61bが最初に当接する隅部71dが設けられている。
ここで、第1のガイド部71はチョークコイル61が装着される素子装着部63の引き出し部63aよりもチョークコイル61の挿入方向側に高く形成されているので、素子装着部63にチョークコイル61を挿入する際には、このチョークコイル61が仮保持された状態、つまりチョークコイル61が完全に素子装着部63に挿入される前に第1の接続線61bを第1のガイド部71の素子装着部63側の隅部71dに係合させることができる。したがって、チョークコイル61を素子装着部63へ装着した後に、第1の接続線61bを変形させて第1のガイド部71に係合させる等の作業が不要として、第1の接続線61bを容易に第1のガイド部71に係合させることができる。
このように、この給電装置24では、第1の接続線61bを保持する第1のガイド部71をチョークコイル61が装着される素子装着部63の引き出し部63aよりもチョークコイル61の挿入方向側に高く形成するようにしたので、チョークコイル61を素子装着部63に挿入する際に第1の接続線61bを第1のガイド部71に容易に係合させることができる。これにより、ブラシホルダ31へのチョークコイル61の組み付け性を向上させることができる。
また、この給電装置24では、第1の接続線61bを保持する第1のガイド部71をチョークコイル61が装着される素子装着部63の引き出し部63aよりもチョークコイル61の挿入方向側に高く形成するようにしたので、第1の接続線61bが第1のガイド部71の隅部71dに係合すると、その状態から隅部71dを支点として第1の接続線61bを容易に変形(フォーミング)させることができる。これにより、チョークコイル61の第1の接続線61bを第1のガイド部71に保持させながら成形することを容易にして、このブラシホルダ31へのチョークコイル61の組み付け性を向上させることができる。
さらに、この給電装置24では、チョークコイル61の第1の接続線61bは第1のガイド部71に保持されるので、この第1の接続線61bがブラシホルダ31に設けられる他極の導電部材等に接触することを防止して、このチョークコイル61の絶縁性を向上させることができる。特に、第1のガイド部71に一対のガイド壁71a,71bと溝部71cとを設けるようにすると、ガイド壁71a,71bにより第1の接続線61bを確実に保持することができ、また、ガイド壁71a,71bにより第1の接続線61bが他極の導電部材と接触することを確実に防止することができる。
さらに、この給電装置24では、第1のガイド部71の溝部71cを断面V字形状に形成するようにしたので、第1の接続線61bを容易に第1のガイド部71の溝部71cの底部側に配置保持させることができ、これにより、第1の接続線61bの確実な保持、及び、引き回し作業も容易にすることができる。
図15は他方の素子装着部と第2〜第4のガイド部との位置関係を示す断面図である。
このブラシホルダ31には、他方の素子装着部64に装着されるチョークコイル62の第1の接続線62bを、この素子装着部64と第2のガイド部72との間においてホルダ本体34の側壁34bに沿って保持するために、第3のガイド部75と第4のガイド部76とが設けられている。これらのガイド部75,76は、それぞれホルダ本体34の側壁34bを一方のガイド壁とし、これと平行に設けられるガイド壁75a,76aとの間に溝部75b,76bを備えた構造となっている。また、第3のガイド部75のガイド壁75aの素子装着部64側の端部には、チョークコイル62の組付け時に第1の接続線62bが最初に当接する隅部75cが設けられている。それぞれのガイド壁75a,76aの先端部は、他方の素子装着部64の引き出し部64aよりもチョークコイル62の挿入方向側に高く形成されている。また、第3と第4のガイド部75,76のガイド壁75a,76aの先端部は、第2のガイド部72のガイド壁72a,72bの先端部よりもチョークコイル62の挿入方向側に高く形成されている。つまり、このブラシホルダ31では、他方の素子装着部64の引き出し部64aに対して遠い方の第2のガイド部72のガイド壁72a,72bは、近い方の第3と第4のガイド部75,76のガイド壁75a,76aよりもチョークコイル62の挿入方向側に高く形成されている。これにより、素子装着部64にチョークコイル62を挿入する際には、このチョークコイル62が仮保持された状態、つまりチョークコイル62が完全に素子装着部64に挿入される前に第1の接続線62bを第3のガイド部75の素子装着部64側の隅部75cに係合させることができる。したがって、チョークコイル62を素子装着部64へ装着した後に、第1の接続線62bを変形させて第3のガイド部75に係合させる等の作業が不要として、第1の接続線62bを容易に第3のガイド部75に係合させることができる。そして、第3のガイド部75に配置された第1の接続線62bは、同様の配策方法によって、順次、第4のガイド部76、第2のガイド部72と係合させることができる。つまり、チョークコイル62の第1の接続線62bを各ガイド部75,76,72に沿って成形する際に、まず、素子装着部64に近い側の第3のガイド部75のガイド壁75aの隅部75cに係合させ、その状態から隅部75cを支点として第1の接続線62bを容易に変形(フォーミング)させ、同様に第4のガイド部76部位、第2のガイド部72部位においても第1の接続線62bを変形させることができ、これにより、第1の接続線62bの引き回し作業が容易となる。
このように、この給電装置24では、ブラシホルダ31に設けられる複数のガイド部72,75,76を、引き出し部64aから遠いほどチョークコイル62の挿入方向側に高く形成するようにしたので、チョークコイル62の第1の接続線62bを各ガイド部72,75,76に保持させながらブラシホルダ31上を引き回す際の引き回し作業を容易にすることができる。
図14に示すように、第1のガイド部71が設けられる円柱部73の基端には、ベース壁34cの裏面に開口するねじ孔81がコミュテータ23の軸方向に平行に形成されており、ブラシ32aが取り付けられる板ばね38aをブラシホルダ31に固定するためのねじ部材41は、コミュテータ23の軸方向に平行にこのねじ孔81にねじ結合するようになっている。同様に、詳細は図示しないが、第2のガイド部72が設けられる円柱部74の基端には、ベース壁34cの裏面に開口するねじ孔がコミュテータ23の軸方向に平行に形成されており、ブラシ32bが取り付けられる板ばね38bをブラシホルダ31に固定するためのねじ部材41は、コミュテータ23の軸方向に平行にこのねじ孔にねじ結合するようになっている。
つまり、第1のガイド部71は一方のブラシ32aが取り付けられる板ばね38aをブラシホルダ31に固定するためのねじ部材41と同軸に配置され、第2のガイド部72は他方のブラシ32bが取り付けられる板ばね38bをブラシホルダ31に固定するためのねじ部材41と同軸に配置されている。これにより、第1と第2のガイド部71,72の内部を利用してねじ孔81の長さを長くとることができ、さらにねじ部材41の軸長も長くとることができ、板ばね38bの確実な固定が可能となる。また、第1と第2のガイド部71,72の新たな設置スペースを設けることもなく、この給電装置24やこの給電装置24が設けられるパワーウインドモータ11を小型化することができる。
このように、この給電装置24では、ブラシ32a,32bが取り付けられる板ばね38a,38bをブラシホルダ31に固定するためのねじ部材41と同軸に各ガイド部71,72を配置するようにしたので、これらのガイド部71,72をブラシホルダ31上の限られたスペースに効率よく配置して、このパワーウインドモータ11の給電装置24を小型化することができる。
また、この給電装置24では、各ガイド部71,72をブラシホルダ31のベース壁34cからコミュテータ23の軸方向に突出する円柱部73,74の先端に形成し、また、これらの円柱部73,74の基端にねじ部材41がねじ結合するねじ孔81を形成するようにしたので、これらのガイド部71,72やねじ部材41のレイアウト性を高めて、この給電装置24をさらに小型化することができる。
図16(a)は一方の素子装着部の底部側端部に配置されるリード板の接続部とこの素子装着部の挿入側端部に設けられる引き出し部との位置関係を示す説明図であり、図16(b)はチョークコイルの第1の接続線と第2の接続線の引き出し位置の関係を示す説明図である。
図16(a)に示すように、一方の素子装着部63の挿入側端部に設けられる引き出し部63aは、この素子装着部63の半円筒部分に、これに装着されるチョークコイル61のコイル本体61aの接線方向であって、これに隣接する第1のガイド部71の溝部71cの素子装着部63側の中心を通る直線Aに沿う溝状に形成されている。また、図13に示すように、一方の素子装着部63の底部側端部には、ベース壁34cと一体に底壁82が設けられており、この底壁82にはチョークコイル61の第2の接続線61cに接続される接続用リード部材としてのリード板68の接続部68aが配置されている。前述のように、このリード板68の一端はねじ部材41により一方のブラシ32aに接続されており、接続部68aはその他端に設けられている。この接続部68aの先端部には第2の接続線61cが挿通されるスリット68bが形成されており、図16(a)に示すように、このスリット68bは素子装着部63の底部に、チョークコイル61の軸心つまり素子装着部63の軸心を基準として引き出し部63aに対して所定の位置関係となるように配置されている。つまり、素子装着部63の軸心とスリット68bの軸心とを通る直線Bと、引き出し部63aが形成される直線Aとが角度αを為すように互いの位置関係が規定されている。
一方、図16(b)に示すように、チョークコイル61は、その軸心を基準とした第1の接続線61bと第2の接続線61cの引き出し位置が所定の位置関係に設定されている。つまり、軸方向から見た第1の接続線61bの引き出し位置a1と第2の接続線61cの引き出し位置a2とが軸心を中心として角度βを為すように設定され、これにより、軸心と第2の接続線61cとを通る直線Cと第1の接続線61bの引き出し方向を示す直線Dとが角度αを為すようにされている。このように、チョークコイル61の第1の接続線61bと第2の接続線61cの引き出し位置a1,a2の位置関係は、素子装着部63に設けられる引き出し部63aとリード板68の接続部68aの位置関係と同一となっている。したがって、第1の接続線61bを引き出し部63aに合わせてチョークコイル61を素子装着部63に挿入することにより、第1の接続線61bを第1のガイド部71に係合させ、また、第2の接続線61cをリード板68に設けられた接続部68aのスリット68bに挿通させることができる。
同様に、詳細は図示しないが、他方の素子装着部64の引き出し部64aとこれの底部に設けられる接続用リード部材としてのリード板69の接続部69aとの位置関係も、一方の素子装着部63における場合と同一の位置関係に設定されている。これにより、第1の接続線62bを引き出し部64aに合わせてチョークコイル62を他方の素子装着部64に挿入することにより、第2の接続線62cをリード板69に設けられた接続部69aのスリットに挿通させることができる。また、一方の素子装着部63に設けられる引き出し部63aと第1のガイド部71との位置関係と、他方の素子装着部64に設けられる引き出し部64aと素子装着部64に一番近い第3のガイド部75との位置関係とが同一に設定されており、チョークコイル62を他方の素子装着部64の引き出し部64aに合わせて素子装着部64に挿入することにより、第1の接続線62bを第3のガイド部75に係合させることができる。
このように、この給電装置24では、チョークコイル61の第1と第2の接続線61b,61cの軸心を基準とした引き出し位置a1,a2の位置関係と、第1の接続線61bが引き出される引き出し部63aと第2の接続線61cが接続されるリード板68の接続部68aとのチョークコイル61の軸心を基準とした位置関係とを同一に設定するようにしたので、素子装着部63の底部側に配置されたリード板68の接続部68aのスリット68bとチョークコイル61の第2の接続線61cの先端部とを目視することができなくても、第1の接続線61bを引き出し部63aに合わせてチョークコイル61を素子装着部63に挿入することにより、リード板68の接続部68aに第2の接続線61cを確実に接続させることができる。
また、この給電装置24では、ブラシホルダ31に一対の素子装着部63,64を設け、それぞれの素子装着部63,64に対応する接続部68a,69aと引き出し部63a,64aとの位置関係を互いに同一に設定し、さらに、一方の素子装着部63の引き出し部63aと第1のガイド部71との位置関係と、他方の素子装着部64の引き出し部64aと第3のガイド部75との位置関係とを同一に設定するようにしたので、これらの素子装着部63,64に同一のチョークコイル61,62を用いることができ、これにより、この給電装置24に用いられるチョークコイルの種類を減らして、この給電装置のコストを低減することができる。
次に、このようなブラシホルダ31へのチョークコイル61の装着方法について説明する。なお、チョークコイル62の装着方法も基本的には同様なのでその説明は省略する。
まず、予め、チョークコイル61の第1と第2の接続線61b,61cが、それぞれの引き出し位置が軸心を基準とした所定の位置関係となるように成形される。
次いで、素子装着部63にチョークコイル61が軸方向の他端側つまり第2の接続線61cが設けられる側から挿入される。そして、チョークコイル61が素子装着部63に仮保持された状態、つまりチョークコイル61が完全に素子装着部63に挿入される前の状態のときに第1の接続線61bが第1のガイド部71の隅部71dに係合される。
第1の接続線61bが第1のガイド部71の隅部71dと係合すると、第1の接続線61bを引き出し部63aに合わせた状態でチョークコイル61はさらに素子装着部63の奥に挿入される。チョークコイル61が素子装着部63の底壁82に突き当てられると、第2の接続線61cがリード板68の接続部68aのスリット68bに自然に挿通される。そして、スリット68bに挿通された第2の接続線61cがハンダ等により接続部68aに接続される。なお、このチョークコイル61の装着作業時には、前述したように第1の接続線61bを第1のガイド部71の溝部71c内に配置させるための変形(フォーミング)作業も同時に行われることになる。
図17はリード板およびこのリード板に設けられる接続端子部の詳細を示す斜視図であり、図18は図17に示すリード板が挿通される挿通孔を示す正面図であり、図19(a)、(b)は、それぞれ挿通孔へのリード板の挿入手順を示す断面図である。
図6に示すように、ブラシホルダ31の表側に配索されるチョークコイル61の第1の接続線61bとブラシホルダ31の裏側に突出するサーキットブレーカ66とを接続する挿通用リード部材としてのリード板65は、ベース壁34cの裏面に配置される本体部65aと本体部65aに対して直角に曲がる挿通部65bとを有し、本体部65aはブラシホルダ31の裏側においてサーキットブレーカ66の一方の端子に接続されている。一方、ブラシホルダ31のベース壁34cには、このベース壁34cをコミュテータ23の軸方向に向けて貫通する挿通孔91が形成されており、リード板65の挿通部65bはその先端からこの挿通孔91に挿通されて、ブラシホルダ31の表側に突出している。そして、チョークコイル61の第1の接続線61bは、図6に示すように、ベース壁34cに対して表側において挿通部65bの先端に設けられた接続端子部92に接続されている。つまり、リード板65はブラシホルダ31の表側においてチョークコイル61を介してブラシ32aに接続されるとともに、裏側においてサーキットブレーカ66とリード板67とを介して第1のリード板43の裏側給電端子43dに接続されている。
ここで、図18に示すように、挿通孔91は、リード板65の厚み方向の両面に対向する一対の幅広内面91a,91bを有する断面矩形に形成されており、一方の幅広内面91aには断面半円形の突起93が形成されている。図19に示すように、この突起93はベース壁34cと一体に、幅広内面91aの幅方向の略中間部分に位置するとともに挿通孔91の軸方向の略中間分からベース壁34cの表面側に向けて徐々に突出量が増加するテーパ状に形成され、ベース壁34cの表面側の開口部においては突起93とこの突起93に対向する他方の幅広内面91bとの隙間Lはリード板65の板厚tよりも狭くなっている。これにより、リード板65の挿通部65bが挿通孔91に挿通されると、突起93はリード板65に弾性的に接触し、つまり突起93が潰れる方向に弾性変形して、その弾性力によりリード板65の挿通部65bは他方の幅広内面91bに押し付けられる。したがって、リード板65の挿通部65bは他方の幅広内面91bを基準としてブラシホルダ31に位置決めされ、また、幅広内面91bと突起93との摩擦により、挿通孔91からの抜けが防止される。
一方、図17において拡大して示すように、挿通部65bの挿通孔91に挿通される側の先端に形成される接続端子部92は、挿通部65bの先端からその軸方向つまり挿通部65bの挿通孔91に挿通される方向に沿って延びる切り欠き溝つまりスリット94を有しており、このスリット94は挿通部65bの幅方向の中間部に形成され、これにより挿通部65bの先端は一対の突起部分を備えたフォーク状に形成されている。また、この接続端子部92の突起93と対向する側の表面には、スリット94の根本部を面取りするテーパ面95が形成されており、挿通部65bが挿通孔91に挿通されるときには、このテーパ面95は突起93上を通過するようになっている。そして、挿通部65bが挿通孔91に挿通されると、接続端子部92はベース壁34cの表側に突出し、スリット94に挿通されたチョークコイル61の第1の接続線61bがハンダ等によりこの接続端子部92に接続される。
次に、このリード板65のブラシホルダ31への装着方法について説明する。
まず、予め、リード板65の挿通部65bの先端にスリット94とテーパ面95とを備えた接続端子部92が形成され、ブラシホルダ31の挿通孔91の幅広内面91aに突起93が形成される。
次いで、ブラシホルダ31の裏側から、接続端子部92が形成されたリード板65の挿通部65bを、接続端子部92に設けられたテーパ面95が突起93上を通過するように挿通孔91に挿通し、その接続端子部92をブラシホルダ31の表側に突出させる。このとき、挿通孔91に挿通される挿通部65bはテーパ状の突起93の表面にそのテーパ面95を接触させて、突起93に徐々に乗り上げるように移動することになる。これにより、接続端子部92は樹脂製のホルダ本体34と一体成形される突起93を削ることなく突起93を通過する。
接続端子部92がブラシホルダ31の表側に突出すると、接続端子部92にチョークコイル61の第1の接続線61bが接続され、また、リード板65の反対側の先端部がサーキットブレーカ66に接続される。
このように、この給電装置24では、リード板65の先端に形成されるスリット94の根本部にテーパ面95を形成するようにしたので、このリード板65を挿通孔91に挿通する際には、リード板65はテーパ面95において突起93に徐々に乗り上げ、スリット94の根本部のエッジにより突起93を削ることはない。したがって、リード板65により突起93が削られることを防止して、リード板65を突起93により確実に他方の幅広内面91bに押し付けて、リード板65つまりはその先端に設けられる接続端子部92を確実に位置決めさせることができる。また、接続端子部92が確実に位置決めされることにより、その接続端子部92へのチョークコイル61の接続作業を容易にすることができる。
また、スリット94の根本部に形成されるテーパ面95により、チョークコイル61の第1の接続線61bをスリット94に導くことができるので、このリード板65の接続端子部92へのチョークコイル61の接続作業を容易にすることができる。
図20は図6に示す給電回路の変形例を示す斜視図である。
図6に示す給電回路33には一対のチョークコイル61,62が設けられ、第1と第2のリード板43,44はこれらのチョークコイル61,62を介して対応するブラシ32a,32bに接続されている。これに対して、パワーウインドモータ11の仕様によっては、雑音防止素子であるチョークコイル61,62を除く場合があり、この場合、図6に示す場合と同一のブラシホルダ31に、図20に示す構成の給電回路101が設けられる。
ここで、このブラシホルダ31では、コネクタ部36とホルダ本体34とを電気的に接続する第1と第2のリード板43,44は、それぞれブラシホルダ31の表側と裏側に突出する一対の端子43c,43d,44c,44dを有しており、また、ホルダ本体34に形成される一対の素子装着部63,64はベース壁34cをコミュテータの23軸方向に貫通するように形成されているので、チョークコイル61、62の有無の各仕様に応じて、給電回路を最適な経路で構成することができる。つまり、チョークコイル61,62の有無により第1と第2のリード板43,44への接続部分がブラシホルダ31の表裏のいずれに配置されることになっても、第1と第2のリード板43,44への接続はブラシホルダ31の表裏のどちら側かで選択的に行うことができるので、チョークコイル61,62の有無に拘わらず、給電回路の配線経路を簡素化することができるのである。例えば、図20に示す場合では、一方のブラシ32aの板ばね38aは、リード板65に置き換えられたリード板102によりサーキットブレーカ66とリード板67とを介して第1のリード板43の裏側給電端子43dに接続され、他方のブラシ32bの板ばね38bは、リード板103により第2のリード板44の裏側給電端子44dに接続される。
このように、このブラシホルダ31では、ホルダ本体34のベース壁34cに対して軸方向の一方側と他方側の両側に第1と第2のリード板43,44のホルダ本体側端子を設けるとともにベース壁34cを軸方向に貫通する素子装着部63,64にチョークコイル61,62を装着するようにしたので、チョークコイル61,62の有無に応じて、各ブラシ32a,32bからの配線をベース壁34cの軸方向の一方側または他方側のいずれかの側においてリード板43,44に選択的に接続することができる。これにより、チョークコイル61,62の有無の各仕様において、このブラシホルダ31に設けられる給電回路33,101の配線経路を簡素化することができる。
また、このブラシホルダ31では、ホルダ本体34に一対の素子装着部63,64が設けられ、これらの素子装着部63,64にそれぞれチョークコイル61,62を装着するようにしたので、各リード板43,44と各ブラシ32a,32bとの間のそれぞれにチョークコイル61,62を設けることができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、本実施の形態おいては、モータ本体12に減速機13が取り付けられたパワーウインドモータ11に本発明を適用しているが、これに限らず、例えば減速機13を持たない電動モータなど、他の電動モータに本発明を適用してもよい。また、パワーウインド装置の駆動源に用いられるパワーウインドモータ11に限らず、例えば、車体に設けられるスライドドア、バックドア、サンルーフ等の開閉体を自動的に駆動する車両用自動開閉装置の駆動源など、車体のパネル内に装着される薄型の電動モータに本発明を適用するようにしてもよい。
また、本実施の形態においては、保持部56を第2の成形型53に設けるようにしているが、これに限らず、第1の成形型52に設けるようにしてもよい。
また、本実施の形態においては、雑音防止素子としてはチョークコイル61,62が用いられているが、これに限らず、給電回路上に乗ったノイズを低減するための素子であれば、例えば、バリスタ、コンデンサ等を用いるようにしてもよい。
さらに、本実施の形態においては、チョークコイル61の第1の接続線61bを第1のリード板43の裏側給電端子43dに接続し、チョークコイル61の第2の接続線61cを第2のリード板44の表側給電端子44cに接続するようにしているが、これに限らず、給電回路33の構成に応じて、対応するリード板43,44の表側給電端子43c,44cと裏側給電端子43d,44dのいずれか一方に接続することができる。