JP4937572B2 - 使い捨ておむつ - Google Patents
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Description
特に多くのパンツ型おむつにおいては、外装シート全体を外側層および内側層からなる二層シートとし、これらの層間に糸ゴム等の弾性伸縮部材を接着剤を用いて固定し、ウエスト周りや腹周りのフィット性を向上させている。フィット性は装着感のみならず、漏れ防止の上でも重要である。
そこで、本発明の主たる課題は、通気性および柔らかさを向上させることにある。
<請求項1記載の発明>
通気性の外側層、通気性の内側層、及びこれらの間に介在され、相互に間隔を空けて配置され且つ伸張状態で固定された複数本の細長状弾性伸縮部材を有する外装シートと、この外装シートの身体側に設けられた、対象物を吸収し保持する吸収部とを備え、
前記外装シートは、胴開口部から脚開口部の上端に至る前後方向範囲として定まる胴周り部と、脚開口部を形成する部分の前後方向範囲として定まる中間部とを有し、前記胴周り部は、胴周り上端部と胴周り下部とを有しており、
前記外装シートは、前記中間部の前後縁部間の領域が、前記弾性伸縮部材と外側層及び内側層の少なくとも一方とを有しない省層部とされており、
前記胴周り下部に、前記弾性伸縮部材が幅方向に沿い且つ前後方向に間隔を空けて複数配置されており、
これら弾性伸縮部材が配置された部分が、前記弾性伸縮部材が接着剤を介して外側層及び内側層の両者に接着されるとともに、弾性伸縮部材の接着部分間における外側層及び内側層間に接着剤の無い部分を有する少接着剤部分とされるとともに、
前記少接着剤部分のうちの省層部側の端部では、弾性伸縮部材の接着部分間における外側層及び内側層間に、弾性伸縮部材の延在方向に沿って間欠的に塗布された補助接着剤によっても外側層及び内側層間が接着されている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
本発明者らは、蒸れの原因について鋭意研究した結果、外装シートによる遮蔽効果により蒸れが発生していること、外装シートが二層構造であり、また弾性伸縮部材を固定するための接着剤が塗布されているために、通気性や柔らかさが極端に悪化していることを知見した。外装シートを二層構造としているのも、接着剤を塗布しているのも、弾性伸縮部材を層間に挟んで固定するためであり、通気性を向上させるためにこれらを犠牲にすると、フィット性を向上させることができなくなる。
そこで、本発明者らは更に研究した結果、従来品では外装シートの全体を覆うように弾性伸縮部材を設けていないにも関わらず、接着剤を外装シート全体にわたり連続的に塗布(ベタ塗り)していたことに気付いた。本発明はこのような知見に基づいてなされたものであって、外装シートにおいて、弾性伸縮部材が接着剤を介して外側層及び内側層の両者に接着されるとともに、弾性伸縮部材の接着部分間における外側層及び内側層間に接着剤の無い部分を有する少接着剤部分を備えたところに特徴を有するものである。
これによって、弾性伸縮部材を有する部分にのみ接着剤を有し、かつそれらの間に接着剤を有しない少接着剤部分が形成され、接着剤の使用量低減により通気性および柔らかさの向上が図られるようになる。しかも、弾性伸縮部材の存在部位では、弾性伸縮部材は接着剤を介して外側層および内側層に接着されるため、従来と同程度の接着が可能となる。
前記少接着剤部分における弾性伸縮部材は、少なくとも周方向全体に前記接着剤が塗布されている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
弾性伸縮部材における少なくとも周方向全体に接着剤が塗布されていると、弾性伸縮部材がねじれて配置されたとしても、外側層及び内側層の両者に対して確実に接着できるようになるため好ましい。
特にパンツ型の紙おむつ等では、全体のフィット性を高めるために、腹側部分及び背側部分の各々に、広範囲にわたり弾性伸縮部材が配置される。換言すれば、その分だけ接着剤の使用により柔らかさや通気性が低下することになる。よって、本発明は特にこのような場合に好適なものである。
前記少接着剤部分における弾性伸縮部材は、太さが1000dtex以下であり、かつ1〜20mmの間隔で設けられており、かつ前記弾性伸縮部材を外側層及び内側層の両者に接着するための接着剤は、弾性伸縮部材の単位長さあたり0.01〜0.04g/mの量で塗布されている、請求項1又は2に記載の使い捨ておむつ。
弾性伸縮部材の太さ、間隔、接着剤塗布量は、外装シートの柔らかさや通気性と密接に関係する。弾性伸縮部材が太過ぎたり、間隔が狭過ぎたり、接着剤塗布量が多過ぎたりすると、柔らかさや通気性が低下する。また、弾性伸縮部材が細過ぎたり、間隔が広過ぎたり、接着剤塗布量が少な過ぎたりすると、フィット性が低下する。よって、これらの要素は、本項記載の数値範囲にあるのが好ましい。
図1〜図5には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外装シートを構成する外装シート12と、その身体側(内面側)に固定された吸収部20とを備えている。吸収部20は、尿や軟便などの排泄物を受け止めて吸収保持する部分であり、外装シート12は吸収部20を着用者に対して支持するための部分である。
外装シート12は、胴開口部WOから脚開口部LOの上端に至る前後方向範囲として定まる胴周り部12Tと、脚開口部LOを形成する部分の前後方向範囲として定まる中間部12Lとを有する。胴周り部12Tは、概念的に「胴周り上端部」12Wと「胴周り下部」12Uとに分けることができる。これらの前後方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、胴周り上端部12Wは15〜40mm、胴周り下部12Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間部12Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うように括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、外装シート12は、全体としては略砂時計形状をなしている。図示例では、股間部における外装シート12の幅が、吸収部20より短くされているが、この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
より詳細には、外装シート12の胴周り下部12Uにおける両層12S,12Hの間に、幅方向に沿って延在する胴回り弾性伸縮部材12Cが前後方向に所定の間隔を空けて多数、例えば15〜40本程度平行に設けられる。
吸収部20としては、図3に示されるように、使用面側から順に、体液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシート30と、吸収要素50とを備えたものを用いることができる。通常の場合、吸収要素50の裏面側にはプラスチックシートなどからなる体液不透過性シート(バックシートとも呼ばれる)70が設けられる。また、トップシート30を透過した体液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に、中間シート(セカンドシート)40を設けることができる。さらに、吸収部20の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、吸収部20の両側に起立するバリヤーカフス60、60を設けることができる。吸収部20は図示形態のように長方形とする他、任意の形状を採ることができる。
また、吸収部20は、所定部分(例えば図示形態のように前端部及び後端部)の裏面が外装シート12の身体側面に対して接着剤BZにより接合されている。接着剤の塗布形態はベタ、サミット、スパイラル等、適宜の形態を採用することができる。
トップシート30は、体液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この体液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
トップシート30を透過した体液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より体液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を設けることができる。この中間シート40は、体液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した体液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、体液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40の代表的な素材は体液の透過性に優れる不織布である。
体液不透過性シート70は、単に吸収体56の裏面側に配されるシートを意味し、本実施の形態においては、トップシート30との間に吸収体56を介在させるシートとなっている。したがって、本体液不透過性シートは、その素材が、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで体液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
体液不透過性シート70は、いわゆる額巻きする形態で使用面に延在させる(図示せず)ことで、体液の横漏れを防止できるが、実施の形態においては、横漏れについては、バリヤーカフス60を形成する二重のバリヤーシート64間に第2体液不透過性シート72を介在させることにより防止している。この形態によれば、バリヤーカフス60の起立まで第2体液不透過性シート72が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した体液やバリヤーカフス60、60間の軟便の横漏れを防止できる利点もある。
体液不透過性シート70には、商品名、機能説明、キャラクター、模様等の表示部を設けることができ、この表示部は、排尿があったことを知らせるお知らせ機能を有していても良い。
製品の両側に設けられたバリヤーカフス60、60は、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために設けられているが、付加的な要素である。
図示のバリヤーカフス60は、撥水性不織布シートを二重にしたものであり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、特に、二重の不織布シート間に体液不透過性シート70の側部が挿入され、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在している。
また、バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能であるが、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図3のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。包被シート58は省略することもできる。さらに、図示形態では、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80が設けられているが、この保持シート80は省略することもできる。
吸収体56としては、吸収性物品の分野で汎用されている綿状パルプ等、ステープルを積繊してなるものの他、フィラメント52,52…の集合体からなるもの等を使用できる。
フィラメント52,52…の集合体は、トウ(繊維束)を開繊することにより得ることができる。トウ構成繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステルおよびセルロースが好ましい。
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは1〜6デニールが望ましい。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、1,000〜1,000,000本、好ましくは2,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、1,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
本発明において好適に使用できるセルロースジアセテートのトウのベールは、セラニーズ社やダイセル化学工業などにより市販されている。セルロースジアセテートのトウのベールは、密度は約0.5g/cm3であり、総重量は400〜600kgである。このベールから、トウを引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊する。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅50〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の50〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊度合いを調整することにより、吸収体の密度を調整することができる。
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、連続繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が連続繊維52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が連続繊維52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態や、後述するような保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
高吸収性ポリマー54を用いる形態において、高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が50g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された体液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
また、高吸収性ポリマー粒子54としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、体液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以下とすることにより、ポリマーの重量によって、合成連続繊維を採用することにより軽量化効果が発揮されにくくなるのを防止できる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子54は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、体液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
必要により、高吸収性ポリマー粒子54として、粒径分布が異なる複数用意し、厚み方向に順次供給し、吸収体56内の下側に粒径分布が小さいものを、上側に粒径分布が大きいものを分布させることができる。
高吸収性ポリマー粒子54と連続繊維との割合は吸収特性を左右する。吸収体56における体液を直接受ける領域での5cm×5cmの平面面積内における重量比としては、高吸収性ポリマー粒子/連続繊維重量が、1〜14、特に2〜9であることが望ましい。
他方、吸収体56のサイズは、平面投影面積が400cm2以上であり、かつ厚さが1〜10mm、特に1〜5mmであるのが好ましい。吸収体56のサイズがこの範囲内にあると、重量や厚さ、コストの増加を来たさずに復元性を向上する上で、極めて有利である。また、吸収体56の重量は35g以下、特に10〜30gとなるように構成するのが好ましい。吸収体56の重量がこの範囲内にあると、専用部材を用いないことによる利点が特に顕著になる。
吸収体56の圧縮レジリエンスRCは、40〜60%、特に50〜60%とするのが好ましい。これにより、吸収体自体で十分な復元性を発揮できるようになる。
さらに、吸収体56の圧縮エネルギーWCは4.0〜10.0gf・cm/cm2であると、包装に際して従来と同レベルあるいはそれ以上にコンパクトに圧縮することができるため好ましい。
これらの圧縮特性は、開繊等による連続繊維の集合体の繊維密度の調整、繊維素材の選定、可塑剤等のバインダーの種類の選定・処理の程度の調整、あるいはこれらの組み合わせ等により調整できる。
ここで、圧縮エネルギー(WC)とは、長さ200mm、幅50mmに断裁した試験片の中央部を、50gまで押す場合のエネルギー消費量である。
この圧縮エネルギーは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:STD、加圧面積:2cm2、取り込間隔:0.1(標準)、STROKE SET:5.0、上限荷重:50gf/cm2である。
一方、圧縮レジリエンス(RC)とは、繊維が圧縮されたときの回復性を表すパラメータである。したがって、回復性がよければ、圧縮レジリエンスが大きくなる。この圧縮レジリエンスは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、上記圧縮エネルギーの場合と同様である。
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
この包被シート58は、図3のように、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの体液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの体液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
保持シート80を設ける場合、保持シート80と吸収体56上との間には、高吸収性ポリマー粒子54をその散布などにより介在させることができる。高吸収性ポリマー粒子54は、連続繊維52の集合体への供給時又はその後の工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、連続繊維52の集合体を通り抜けることがある。連続繊維の集合体を通り抜けた高吸収性ポリマー粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56と包被シート58との間に高吸収性ポリマー54の保持性能を有する保持シート80を介在させるのも好ましい形態である。この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったとき違和感を軽減又は防止する。
保持シート80の素材は、特に限定されず、高吸収性ポリマー54の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、例えば、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
保持シート80を設ける理由は先にも触れたように、たとえば吸収体56から下方に抜け落ちた(抜け出た)高吸収性ポリマー54を保持することにある。したがって、抜け出た高吸収性ポリマー粒子54に対して、包被シート58及び保持シート80を介して使用者に接触するので、使用者にジャリジャリした違和感として、伝わるおそれがない。特に上記の縮エネルギー及び圧縮レジリエンスである不織布であると、その機能が十分に発揮する。
また、抜け出た高吸収性ポリマー54は、保持シート60によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力の偏在が生じるおそれもない。特に、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
保持シート80は、図3等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図示しないが、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート58を設ける例であるが、保持シートは、包被シートより裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シートを設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
図示しないが、トップシート30の表面側から厚み方向にエンボスによる凹部Eを形成してもよい。この場合、トップシート30のみにエンボスによる凹部Eを形成するほか、トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成方したり、トップシート30の表面側から吸収体56の厚さ方向一部または略全体に達するようにエンボスによる凹部を形成したりすることができる。トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成させるためには、中間シート40としては、坪量が10〜80g/m2、厚さ0.2〜5mm、トップシート30としては、坪量が10〜40g/m2、厚さ0.2〜5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、エンボス加工を充分に行える点で望ましい。
また、トップシート30に凹部を形成することなく、中間シート40のみにエンボスによる凹部を形成してもよく、さらにトップシート30及び中間シート40に凹部を形成することなく、吸収要素56のみにエンボスによる凹部を形成しても、また、トップシート30、中間シート40および包被シート58に凹部を形成することなく、吸収体58のみにエンボスによる凹部を形成してもよい。
凹部Eはこれが延在する方向に、体液を誘導し拡散させる効果がある。よって、凹部Eを実質的に溝状に連続させる(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)と、体液は、吸収体に到達する前に表面側層の凹部Eを伝って拡散するようになり、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになる。よって、製品全体の吸収容量が増大し、吸収容量不足に基づく側方からの漏れや逆戻りが発生し難くなる。
一方、連続繊維からなる吸収体56は従来のパルプ物と比べて剛性が低下し易いが、吸収体56にエンボスによる凹部を形成すると剛性を高めることができるため好ましい。図示しないが、吸収要素50の剛性を高めるために、吸収体56の裏面側(トップシート30側に対して反対側)から厚み方向にエンボスによる凹部を形成するのも好ましい形態である。この裏面側の凹部を形成するために、保持シート80、包被シート58、体液不透過性シート70または外装シート12の裏面側から、吸収体56まで達するように一体的にエンボス加工を施すことができる。また、このような裏面側の凹部は、表面側の凹部Eとともに形成するのが好ましいが、表面側の凹部Eを形成せずに裏面側の凹部のみ形成することもできる。凹部を表裏両側に設ける場合には、凹部の形態を表裏共通にしても良く、また表裏異なるものとしても良い。
エンボスによる凹部はその延在方向に体液を誘導し拡散させる効果がある。また剛性を高める効果もある。よって、エンボスによる凹部の形態はこれらの効果を考慮して決定するのが望ましい。例えば、凹部は、実質的に溝状に連続するもの(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)の他、複数の凹部が間隔を空けて点状に配置されるものであっても良い。また、平面パターンとしては、溝状または点状の凹部が、製品の長手方向、幅方向、これらを組み合わせた格子状、幅方向に往復するジグザグ状(千鳥状)、あるいは不規則に配置された形態等を採ることができる。さらに、ピン状、富士山状、蛇腹状等、適宜の形態を採用することができる。
なお、図示しないが、上述した固定部分以外の固定部分については、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などを用いて行うことができる。
図示しないが、製造に際しては、連続帯状の外側層12S上に、少なくとも内側層12Hとの接触部分および外側層12Sとの接触部分に接着剤BAが塗布された胴回り弾性伸縮部材12Cが配置され、その上に連続帯状の内側層12Hが重ね合わされて圧着され、次いで脚開口部LOが打ち抜かれ、連続帯状の外装シート12が形成される。
また、この胴回り弾性伸縮部材12Cに対する接着剤BAの塗布とともに、またはこれに代えて、外側層12S及び内側層12Hにおける胴回り弾性伸縮部材12Cとの接触部分に沿って連続または間欠的に接着剤を塗布しても良い。
また、図9及び図10に示す形態のように、吸収部20と重なる部分において胴回り弾性伸縮部材12Cをエンボス加工等により切断し、部分的に収縮力を無くす若しくは弱める場合、内側層12Hの圧着後に所定部位に切断加工を施す。この場合、切断部分および非切断部分は、胴回り弾性伸縮部材12Cの切断の有無で相違するが、いずれも少接着剤部分となり、胴回り弾性伸縮部材12Cがその外面に塗布された接着剤BAを介して外側層12S及び内側層12Hの両者にそれぞれ接着されるとともに、弾性伸縮部材12Cの接着部分間における外側層12S及び内側層21H間に接着剤の無い部分SPを有することになる。
次いで、連続帯状の外装シート12上の吸収部設置位置に接着剤BZが塗布され、その上に別途製造された吸収部20が載置され接着される。次に、外装シート12の前後端部上に接着剤BYが塗布されるとともに、その上に、上面側に接着剤が塗布された胴端部弾性伸縮部材12Dが配置された後、外装シート12の前後端部が吸収部20の前端部および後端部上にそれぞれ折り返され接着固定される。次いで、外装シート12の胴回り部12Tが脇部で切り離されて個片化された後、腹側Fと背側Bとが重なるように前後に折り畳まれ、外装シート12の腹側F及び背側Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、胴開口部WOと一対の脚開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつとなる。
胴回り弾性伸縮部材12Cに対する接着剤の塗布方法としては、少なくとも内側層12Hとの接触部分および外側層12Sとの接触部分に接着剤を塗布できるものであれば特に限定されないが、少なくとも周方向全体に前記接着剤を塗布できるものが好ましい。塗布方法としては、接触塗布の他、サミットスプレーやスパイラルスプレー、コントロールシーム等の非接触塗布も用いることができ、特にノードソン社のシュアラップノズルによる塗布が好ましい。この塗布方法は、図8に概略的に示すように、細長状の弾性伸縮部材12Cを空中に張り渡し、この弾性伸縮部材12Cの長手方向に沿って、上方から接着剤BAを、弾性伸縮部材12Cの周長以上の往復幅をもってスパイラル塗布し、同図(b)に矢印で示すように、弾性伸縮部材12Cの両側に食み出る接着剤BAを弾性伸縮部材12Cの下面側に巻き付かせるというものである。この方法によれば、接着剤BAは、弾性伸縮部材12Cの少なくとも周方向全体に塗布されるとともに、同図(A)からも判るように、弾性伸縮部材12Cの長手方向に間欠的に塗布される。よって、非常に少ない接着剤使用量で、外側層12S及び内側層12Hの両者に対して確実に接着できる。
Claims (3)
- 通気性の外側層、通気性の内側層、及びこれらの間に介在され、相互に間隔を空けて配置され且つ伸張状態で固定された複数本の細長状弾性伸縮部材を有する外装シートと、この外装シートの身体側に設けられた、対象物を吸収し保持する吸収部とを備え、
前記外装シートは、胴開口部から脚開口部の上端に至る前後方向範囲として定まる胴周り部と、脚開口部を形成する部分の前後方向範囲として定まる中間部とを有し、前記胴周り部は、胴周り上端部と胴周り下部とを有しており、
前記外装シートは、前記中間部の前後縁部間の領域が、前記弾性伸縮部材と外側層及び内側層の少なくとも一方とを有しない省層部とされており、
前記胴周り下部に、前記弾性伸縮部材が幅方向に沿い且つ前後方向に間隔を空けて複数配置されており、
これら弾性伸縮部材が配置された部分が、前記弾性伸縮部材が接着剤を介して外側層及び内側層の両者に接着されるとともに、弾性伸縮部材の接着部分間における外側層及び内側層間に接着剤の無い部分を有する少接着剤部分とされるとともに、
前記少接着剤部分のうちの省層部側の端部では、弾性伸縮部材の接着部分間における外側層及び内側層間に、弾性伸縮部材の延在方向に沿って間欠的に塗布された補助接着剤によっても外側層及び内側層間が接着されている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。 - 前記少接着剤部分における弾性伸縮部材は、少なくとも周方向全体に前記接着剤が塗布されている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
- 前記少接着剤部分における弾性伸縮部材は、太さが1000dtex以下であり、かつ1〜20mmの間隔で設けられており、かつ前記弾性伸縮部材を外側層及び内側層の両者に接着するための接着剤は、弾性伸縮部材の単位長さあたり0.01〜0.04g/mの量で塗布されている、請求項1又は2に記載の使い捨ておむつ。
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