JP4937210B2 - 有機性廃棄物処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機性廃棄物を処理するための効率的な方法に関する。
地球環境保全の重要性や省エネルギーの観点から、食品工場などから排出される有機性廃棄物、ホテル、飲食店、一般家庭などから排出される有機性廃棄物(生ゴミ)、畜産廃棄物、下水汚泥などの有機性廃棄物を、メタン発酵によりメタンガスとして回収する技術開発が進められており、有機物からできるだけ多くのメタンを回収し、最終廃棄物の量を削減するため、有機物分解率を向上させる方法が開発されている。
例えば、有機性廃棄物に対して効率的にメタン発酵を行う方法として、メタン発酵に先だって、有機性廃棄物を各種の前処理に供する方法が提案されている。例えば、メタン発酵の前処理として、有機性廃棄物を加熱処理する方法(特許文献1参照)や有機性廃棄物を超高熱嫌気性菌により分解する方法(特許文献2参照)、または高温下で有機性廃棄物に含まれる有機物をメタン発酵汚泥により分解する方法(特許文献3)が知られている。
しかしながら、従来技術における廃棄物のメタン発酵では、廃棄物が含む水の処理が必須であり、水処理の設備および大きな電力コストという問題があった。
今日、天然エネルギーの枯渇や廃棄物処理能力の限界が懸念されており、益々、エネルギーの有効利用や廃棄物の軽減化の技術を実用化することが強く望まれている。そのため、有機性廃棄物の処理において排水量を減らし、より一層効率的に、有機性廃棄物からエネルギーを回収し、廃棄物量を軽減する技術を開発することが重要になっている。
特開昭58−41916号公報 特開2003−326237号公報 特開2006−15331号公報
本発明はこのような従来の事情および最近の動向に対処してなされたもので、有機物を効率よく分解でき、かつ処理必要な排水を生じさせない有機性廃棄物の処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ねた結果、メタン発酵工程及び可溶化工程を含む有機性廃棄物処理方法において、メタン発酵工程に供される有機性廃棄物の含水率及び可溶化工程におけるアンモニア水の回収量を調整することにより、排水を生ずることなく有機性廃棄物を処理できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき、さらに研究を重ねることによって、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
項1.有機性廃棄物を処理する方法であって、
有機性廃棄物に含まれる有機物を乾式メタン発酵するメタン発酵工程(a)と有機物を低分子化させる可溶化工程(b)とを含み、
(1)メタン発酵工程(a)により得られるメタン発酵処理物から必要量の発酵処理物を引き抜き、第一処理物及び第二処理物に分け、第一処理物を固液分離処理により液体と残渣に分離し、第一処理物から分離された液体と有機性廃棄物との混合物をメタン発酵工程(a)又は可溶化工程(b)に供すること、
(2)可溶化工程(b)により得られる可溶化処理物をメタン発酵工程(a)に供すること、
(3)第二処理物を可溶化工程(b)に供すること、
(4)可溶化工程(b)が、70℃以上で加熱処理し、かつアンモニア水を回収する工程であること、
並びに、
(5)排水が生ずることなく、かつメタン発酵工程(a)において乾式メタン発酵が可能となるように、可溶化工程(b)におけるアンモニア水の回収量を制御すること、
を特徴とする処理方法。
項2.有機性廃棄物を処理する方法であって、
有機性廃棄物に含まれる有機物を乾式メタン発酵するメタン発酵工程(a)と有機物を低分子化させる可溶化工程(b)とを含み、
(1)メタン発酵工程(a)により得られるメタン発酵処理物から必要量の発酵処理物を引き抜き、第一処理物及び第二処理物に分け、第一処理物を固液分離処理により液体と残渣に分離し、第一処理物から分離された液体と有機性廃棄物との混合物をメタン発酵工程(a)に供すること、
(2)可溶化工程(b)により得られる可溶化処理物をメタン発酵工程(a)に供すること、
(3)第二処理物を可溶化工程(b)に供すること、
(4)可溶化工程(b)が、70℃以上で加熱処理し、かつアンモニア水を回収する工程であること、
並びに、
(5)排水が生ずることなく、かつメタン発酵工程(a)において乾式メタン発酵が可能となるように、可溶化工程(b)におけるアンモニア水の回収量を制御すること、
を特徴とする処理方法。
項3.項1.有機性廃棄物を処理する方法であって、
有機性廃棄物に含まれる有機物を乾式メタン発酵するメタン発酵工程(a)と有機物を低分子化させる可溶化工程(b)とを含み、
(1)メタン発酵工程(a)により得られるメタン発酵処理物から必要量の発酵処理物を引き抜き、第一処理物及び第二処理物に分け、第一処理物を固液分離処理により液体と残渣に分離し、第一処理物から分離された液体と有機性廃棄物との混合物を可溶化工程(b)に供すること、
(2)可溶化工程(b)により得られる可溶化処理物をメタン発酵工程(a)に供すること、
(3)第二処理物を可溶化工程(b)に供すること、
(4)可溶化工程(b)が、70℃以上で加熱処理し、かつアンモニア水を回収する工程であること、
並びに、
(5)排水が生ずることなく、かつメタン発酵工程(a)において乾式メタン発酵が可能となるように、可溶化工程(b)におけるアンモニア水の回収量を制御すること、
を特徴とする処理方法。
項4.メタン発酵工程(a)において引き抜かれるメタン発酵処理物の比率が、第一処理物:第二処理物=1:1〜4となる、項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5.アンモニアストリッピング法によって、可溶化工程(b)におけるアンモニア水の除去量を制御する、項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6.投入する有機性廃棄物の含水率が60%以下である、項1〜5のいずれかに記載の方法。
項7.排水を生じさせないために回収するアンモニア水量が、以下の式:
W−1.5×(1−p/100)Q
(式中、Qは投入有機廃棄物の固形物重量、Wは投入有機廃棄物の水分量、pはメタン発酵効率(%)を示す)
で表される、項1〜6のいずれかに記載の方法。
本発明により、処理の必要な排水を出すことなく、効率よく有機性廃棄物を処理することができる。本発明の処理方法によれば、廃棄物が含む水の処理を行う必要がなく、そのため水処理の設備も不要であり、電力コストも削減することができる。また、本発明の処理方法において処理中に回収される残渣及びアンモニア水は、焼却炉やエンジンの脱硝液などの有価物として利用することができるため、無駄な廃棄物が出ることもなく、さらに本発明の処理方法に必要なエネルギーは処理中に発生するバイオガスを発電利用する際に発生する廃熱でまかなえるため、環境的にもコスト的にも極めて有用である。
有機性廃棄物
本発明の方法で処理される有機性廃棄物は、有機物を含むものであれば特に制限されないが、例えば、動物又は植物由来のものが挙げられる。具体的には、固形の有機性廃棄物、半固形の有機性廃棄物、不溶性固形分として有機物を含む有機性廃棄物、スラリー状の有機性廃棄物[以下、これらを“固形有機性廃棄物”という場合がある。]などが例示される。更に具体的には、厨芥,生ゴミ,生ゴミの乾燥物、食品工場廃棄物,下水汚泥,畜産廃棄物(家畜のし尿と、わら、おがくず等との混合物)などが例示される。また、本発明の方法で処理される有機性廃棄物は、濃厚廃液(糖廃蜜、焼酎の廃液等)、下水や有機排水(ビール工場の排水等)など、有機物を可溶性成分として含む液状のもの、有機物濃度の濃厚な廃液又は希薄な廃液であってもよい。ただし、本発明の方法におけるメタン発酵は乾式メタン発酵であるため、有機性廃棄物の含水率が高い場合は、前処理によって調節する。
これら有機性廃棄物のpHは、種類によって異なるものであり、特に限定されないが、通常、生ゴミの場合は、pHは5程度である。
本発明の方法では、アンモニアを除去できるので、窒素含有量が多い有機性廃棄物(例えば、厨芥や生ゴミなど、たんぱく質を多く含む有機性廃棄物、好ましくは窒素含有量が0.5重量%以上程度の有機性廃棄物)を処理する場合に有利である。
有機物が順調に分解されているかどうかは、各工程におけるVTS(Volatile Total Solids;強熱減量)量及びVSS(Volatile Suspended Solid; 浮遊物質の強熱減量)量の変化(VSSの減少速度)を指標として判断することができる。
以下、本発明の方法に供する有機性廃棄物を投入有機性廃棄物と称することがある。
有機性廃棄物の処理方法
本発明の処理方法は、以下に詳述するようなメタン発酵工程(a)及び可溶化工程(b)を含む。これらの工程はそれぞれ、どちらの工程を先に行ってもよく、また回分形式で実施してもよいが、投入有機性廃棄物の供給と工程(a)又は工程(b)において発酵又は分解された発酵物・分解物の抜き取りと搬送(返送)を連続的又は断続的に行うことにより、工程(a)及び工程(b)を連続的に繰り返し、全体のシステムが定常状態になるように実施するのが好ましい。これにより全体としての有機物分解率を向上させることができる。
さらに、本発明は以下に詳述するように、メタン発酵残渣の脱水濾液を原料希釈水として利用し、また可溶化工程(b)において、アンモニア回収装置を備えることにより、処理必要な排水をなくすことを特徴とする。
(1)メタン発酵工程(a)
メタン発酵工程(a)では、有機廃棄物と後述する第一処理物から分離された液体との混合物に含まれる有機物又は工程(b)で得られる分解物に含まれる有機物が、メタンと二酸化炭素に分解される。本工程におけるメタン発酵は、従来公知のメタン発酵菌及びメタン発酵槽を用いて嫌気性雰囲気下で行うことができる。本発明におけるメタン発酵は乾式メタン発酵であるため、有機性廃棄物は、全固形物(TS)濃度が20〜40重量%程度というほぼ固体に近い状態で混合槽に導入され、発酵槽内には、TS濃度が10〜20質量%程度の固形状のメタン汚泥(乾式メタン汚泥)が保持される。
本工程(a)において、嫌気性雰囲気の調製・維持は、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水素、天然ガス、メタン、都市ガスなどを用いて行うことができる。また、必要に応じて、硫化ナトリウムなどの酸素除去剤を使用してもよい。
本工程(a)のメタン発酵時の温度条件は、用いるメタン発酵菌の種類に応じて広い温度範囲から適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、一般には20〜60℃程度、例えば、35℃程度のいわゆる中温でも、55℃程度のいわゆる高温でもよい。好ましくは、可溶化槽との熱交換の観点から50〜55℃で行う。
後述の工程(b)で得られた分解物が80℃以上の高温を保持している場合には、当該分解物をメタン発酵に著しく悪影響を及ぼすことがない程度(例えば、60℃以下)に冷却した後に、メタン発酵槽に供給し本工程(a)を実施することが望ましい。
本工程(a)におけるメタン発酵処理時間としては、供する分解物の種類や量、使用するメタン発酵菌の種類、発酵温度、発酵形態等によって異なり、一律に規定することはできないが、通常10〜30日、好ましくは10〜20日、更に好ましくは10〜14日を挙げることができる。
本工程(a)のメタン発酵において発生するメタン発酵処理物からは必要量(適当量)の発酵処理物が引き抜かれ、第一処理物及び第二処理物に分けられる。引き抜く量は、投入する有機性廃棄物の量等の各種条件に応じて適宜決定できる。
第一処理物は、公知の固液分離処理によって液体と固形残渣に分離される。固液分離の方法は、特に限定されるものではなく、例えば沈殿分離、膜分離、遠心分離などの公知の方法を採用することができる。
分離された固形残渣は、種々の方法で処理される。例えば、そのまま、堆肥として農地還元する、コンポスト化して農地還元をする、廃棄する、焼却する等の処理が行われる。また、乾燥には低温廃熱を有効利用することができ、生成されるメタンガスをガスエンジンやマイクロガスタービン、ボイラー等で利用する場合、その廃熱を利用して乾燥することが可能である。
また、分離された液体は脱水濾液として、投入有機性廃棄物と混合され、再度工程(a)に供される。この液体の量は、投入される有機性廃棄物の含水量などによって適宜決定し、もし余剰が出れば、当該余剰の液体はそのまま可溶化工程(b)に搬送しても良い。
次に、第二処理物は工程(b)に送られ、以下の可溶化工程(b)に供される。
これらの操作により、固形分が更に徹底的に分解され、かつ液体分が効率的に再利用されるので、廃棄分量が更に低減でき、メタンガス発生量も増大するというメリットが得られると共に、メタン細菌が系内に返送されるので、メタン発酵の安定度が向上するというメリットも得られる。
上記2つのメタン発酵処理物の比率は、後述するように、排水処理が不要となるような投入有機性廃棄物の含水量などを総合的に判断して適宜決定できるが、具体的な一実施形態としては、例えば、第一処理物:第二処理物=1:1〜4となるように調整する。
本工程(a)で発生するメタンガスは、発電して排熱エネルギーとして回収でき、後述の工程(b)の温度調節などに用いることもできるが、工程(b)のアンモニア回収工程に用いるのが最も好ましい。
本工程(a)のメタン発酵の形式は特に制限されず、回分式、固定床式等のメタン発酵において利用されている公知のいずれの形式であってもよい。
(2)可溶化工程(b)
可溶化工程では、70℃以上の温度条件下で加熱処理をし、有機性廃棄物に含まれる有機物をメタン発酵汚泥により分解する。
本工程により、有機性廃棄物に含まれる有機物が分解されて可溶化、液状化される。メタン発酵汚泥に含まれるメタン細菌は、60℃以上では生育不能であるが、該メタン発酵汚泥にはメタン細菌以外に、60以上で生育可能な細菌も存在している。本工程では、メタン発酵汚泥に含まれる60℃以上で生育可能な細菌の内の高分子有機物を低分子化できる細菌(以下、可溶化菌と表記することもある)の働きか、メタン発酵汚泥に含まれる酵素の作用により、高温条件下で溶解度が上昇した有機物(炭水化物、蛋白質、脂質)が、低分子量化(例えば、糖、アミノ酸、ペプチドなどまで)され、更にその一部又は大部分は酸分解を受けてプロピオン酸、酪酸等の有機酸まで分解されていると思われるが、詳細は完全には解明されていない。
本工程(b)でいう「分解」とは、有機性廃棄物の全てが可溶化している程度に低分子化されていることに限らず、有機性廃棄物に含まれる不溶化有機物が、好ましくは20重量%以上程度、より好ましくは25重量%以上程度の不溶化有機物が水に溶ける程度まで低分子化されることを意味する。
本工程(b)において使用するメタン発酵汚泥とは、有機物をメタン発酵することにより得られる発酵物、又は該発酵物の固形分のことである。当該メタン発酵汚泥として、例えば、メタン発酵工程(a)で得られるメタン発酵処理物(前記第二処理物)を使用できる。また、メタン発酵汚泥として、有機物をメタン発酵することにより得られる発酵物そのものを使用する場合、固形分が0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上含まれているものが望ましい。なお、ここでいう固形分には、メタン発酵により得られる発酵物中の不溶化残渣と、メタン細菌菌や可溶化菌等の細菌が含まれる。
本工程のメタン発酵汚泥による分解において、温度条件は70℃以上であれば、特に制限されないが、好ましくは70〜90℃程度、更に好ましくは75〜85℃程度、特に好ましくは80〜85℃程度である。本工程において、70℃以上の所定温度に保つためには重油、都市ガス、電力等を利用することもできる。しかし、該温度の維持には相当量の熱量が必要となるので、電力源として重油等を単独で利用するよりも、前述の工程(a)で発生するメタンガスを利用して熱と電力を得るコジェネレーション手段(ガスエンジン、燃料電池等)を利用し、発生する排熱を有効利用することが望ましい。
メタン発酵汚泥による有機性廃棄物に含まれる有機物の分解は、上記温度条件を調節・保持できる槽(以下、高温可溶化槽という)内で、有機性廃棄物とメタン発酵汚泥とを共存させ上記条件下で保持することにより行うことができる。
有機性廃棄物とメタン発酵汚泥とを高温可溶化槽内で共存させるには、例えば、以下の方法が例示される:(1)有機性廃棄物を高温可溶化槽に供給し、また別にメタン発酵汚泥を高温可溶化槽に供給して、高温可溶化槽内で有機性廃棄物とメタン発酵汚泥とを混合する方法、及び(2)有機性廃棄物を混合手段を備えた混合槽に供給し、またメタン発酵汚泥を該混合槽に供給し、該混合槽内で両者を予め混合し、得られた有機性廃棄物・汚泥混合物を高温可溶化槽に供給する方法。後者の(2)の方法の場合、有機性廃棄物・汚泥混合物の固形分濃度を10重量%以下にすることによって、小型で安価なポンプにより該混合物を高温可溶化槽に供給することが可能になる。また、後者の(2)の方法の場合、具体的には、本工程(b)には、以下態様の工程が含まれる:
(B-1)有機性廃棄物を、混合槽に供給する工程
(B-2)メタン発酵汚泥を混合槽に供給する工程、
(B-3)混合槽において、有機性廃棄物とメタン発酵汚泥とを混合する工程、
(B-4)工程(B-3)で得られた有機性廃棄物・汚泥混合物を高温可溶化槽に供給する工程、及び
(B-5)高温可溶化槽において、70℃以上の温度下で、有機性廃棄物に含まれる有機物を分解する工程。
本工程(b)のメタン発酵汚泥による分解は、有機性廃棄物とメタン発酵汚泥とを共存させ、上記条件下で静置することによって行うことができ、また有機性廃棄物とメタン発酵汚泥とを上記条件下で撹拌しながら行うこともできる。
本工程(b)のメタン発酵汚泥による分解において、使用するメタン発酵汚泥と本工程に供する有機性廃棄物との割合については、使用するメタン発酵汚泥や有機性廃棄物の種類、分解条件等に応じて適宜設定することができる。これらの混合割合の一例として、有機性廃棄物に含まれる固形分1重量部に対して、メタン発酵汚泥(固形分換算)を0.1〜10重量部となる割合が例示される。
メタン発酵汚泥による分解時間は、使用するメタン発酵汚泥の種類や量、処理対象の有機性廃棄物の種類や量によって異なり一律に規定することはできないが、通常1〜10日、好ましくは1〜5日、更に好ましくは1〜2日が例示される。
本工程のメタン発酵汚泥による分解は、嫌気性雰囲気、好気性雰囲気の何れの雰囲気で行ってもよい。
本工程(b)を嫌気性雰囲気下で行う場合であれば、有機性廃棄物に含まれる有機物の分解(可溶化)に伴ってガスが発生し、これによって高温可溶化槽内の酸素がパージされてその雰囲気が嫌気性に保たれるので、嫌気性雰囲気を作り、これを維持するための特段の操作は必ずしも必要ではない。もちろん、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水素、天然ガス、メタン、都市ガス等を用いて嫌気性雰囲気を作成・維持してもよく、また、硫化ナトリウム等の酸素除去剤用いて嫌気性雰囲気を作成・維持してもよい。
さらに、本工程(b)においては、メタン発酵工程(a)に供される全水分量が乾式メタン発酵が可能な量となるように、有機性廃棄物に含まれているアンモニア及びメタン発酵汚泥による分解で生じたアンモニアを回収する量を制御して、可溶化処理物の水分量を調整する。
メタン細菌の活性は、高濃度の遊離性のアンモニア態窒素により阻害され、メタン汚泥中のアンモニウム濃度が上がると、メタン発酵活性が著しく阻害され、メタン発酵が停止することが知られている。このため、有機性廃棄物のメタン発酵処理においては、アンモニアの除去は必須であり、さらに、系外に処理中に発生する不要な排水を取り除く必要がある。そこで、これらを本工程においてアンモニア水として合わせて回収すれば、アンモニア水は有価物として利用でき、かつ不要な水も排出されなくなるため、非常に効率的である。
本工程(b)では、70℃以上の温度条件が採用されるため、有機性廃棄物に含まれているアンモニア及びメタン発酵汚泥による分解で生じたアンモニアが格段に揮発され易くなっている(Journal of Hazardous Materials 37 (1994)191-206)。そのため、工程(b)において、高温可溶化槽内に気体を吹き込み、アンモニアストリッピング法によりアンモニアを揮発させて回収できる。回収するアンモニア水量は、アンモニアストリッピング装置における曝気風量を調節することにより調整可能である。
例えば、1m3の樹脂性タンクに800Lのメタン発酵汚泥を投入し、温度を80℃に保ってタンク下部から7.5m3/minの曝気風量でストリッピングガス(嫌気性ガス)を吹き込みアンモニアおよび水を蒸発させた場合、アンモニアストリッピングガス中のアンモニア濃度は8000ppm、水分は38%、回収アンモニア水量は100L/日となる。
ここで、排水処理が不要となる場合の、アンモニア水回収量及び投入有機性廃棄物の含水率について、具体的な一実施形態を挙げて説明する。
投入有機性廃棄物の固形物重量をQ(トン)、水分量をW(トン)で表し、固形物のメタン発酵効率(バイオガス化効率)(%)をpとすると、バイオガスの発生量はp/100*Q(トン)、残渣の乾燥重量は(1−p/100)Q(トン)となる。発酵残渣は通常含水率60%程度で場外搬出されるため、発酵残渣中の水分量は(1-p/100)Q(1/0.4-1)(トン)である。このことから、排水を発生させないために回収することが必要なアンモニア水量はW-1.5×(1-p/100)×Q(トン)となる。
ここで、pを一般的なメタン発酵効率(80 %)とすると、排水を発生させないために回収することが必要なアンモニア水量はW-0.3Q(トン)となる。
次に、メタン発酵汚泥の温度を50℃とすると、超高温可溶化槽でのアンモニア回収に必要な熱量は、
(W-0.3Q)×(50+540)/760 (MWh)(式(I))
で表すことができる。
他方、本プロセスで発生した0.8Q(トン)のバイオガスを発電してエネルギー回収するとき、排熱(蒸気)として回収できる熱量は
0.8Q×0.2(回収効率)×6.1(バイオガス1トン当たりの熱量)(MWh)(式(II))
となる。
本プロセスで発生する排熱のみを用いて排水処理が不要となるようにアンモニア水を回収するためには、式(II)>式(I)となることから、
0.8Q×02×6.1>(W-0.3Q)×[(50+540)/760]
すなわちQ/W > 0.63 (式(III))となる。
投入廃棄物の含水率は1/(1+Q/W)であるから、式(III)を代入すると、含水率<61.3%と算出される。このことから、排水処理が不要となる乾式メタン発酵システムは、含水率が60%以下であり、当然ながら希釈水を用いないことが前提となる。
上記の条件を満たすようにアンモニア水量を調整すれば、無駄な排出物又は排水を生ずることなく、効率的に有機性廃棄物を処理することができる。
本工程(b)によって、有機性廃棄物に含まれる有機物が低分子化されるので、得られた分解物をメタン発酵処理に供すると、その処理効率が向上する。
本工程(b)に供された固形有機性廃棄物は、固形有機性廃棄物に含まれる有機物が分解されて可溶化し、液状になるので、本工程(b)で得られた分解物をそのままメタン発酵処理に供することが可能になる。これによって、固形有機性廃棄物をメタン発酵処理に直接供する場合に、メタン発酵により有機物が十分に処理されないという問題が解消される。
本工程(b)により得られた分解物は、そのまま前述の工程(a)に供してもよく、混合槽において、あるいは投入有機性廃棄物と混合してから工程(a)に供してもよい。
(3)搬送・供給・排出工程
1.メタン発酵工程(a)を先に行う場合
本発明の方法には、投入有機性廃棄物、前記第一処理物から分離された液体及び可溶化工程(b)により得られる可溶化処理物をメタン発酵工程(a)に供するため、これらをメタン発酵工程(a)に供給する工程が含まれる。供給手段は、従来公知のポンプを利用するものであってもよく、その他の手段によるものであってもよい。
また、本発明の方法は、メタン発酵工程(a)において生成したメタン発酵処理物を排出する工程を含み、さらに、メタン発酵工程(a)において生成したメタンガスを回収する工程も含む。ここで排出されたメタン発酵処理物のうち、前述の第一処理物は固液分離処理されて、固形は堆肥などとして利用され、液体はメタン発酵処理槽の上流にある混合槽へ搬送されて、投入有機性廃棄物と混合されてから、再度メタン発酵工程に供される。第二処理物は可溶化工程に供するため、高温可溶化槽へ搬送される。搬送するそれぞれのメタン発酵処理物の量及び割合は、工程(a)及び(b)の処理条件等を考慮して、前述したように、排水処理が不要となるような投入有機性廃棄物の含水量などを総合的に判断して適宜決定すればよい。
また、回収されたメタンガスは、発電してエネルギーとして回収され、本発明の方法における温度制御などに用いることができる。
2.可溶化工程(b)を先に行う場合
本発明の方法は、投入有機性廃棄物及び工程(a)で得られたメタン発酵処理物(前記第二処理物)及び第一処理物から分離された液体を可溶化工程(b)に供するため、これらを工程(b)に供給する工程が含まれる。供給手段は、従来公知のポンプを利用するものであってもよく、その他の手段によるものであってもよい。
さらに、工程(b)においてメタン発酵汚泥として、工程(a)で得られた第二処理物を使用する場合、本発明の方法は工程(a)で得られた第二処理物を可溶化工程(b)又はそれより上流側に搬送する工程を含有する。搬送される場合、メタン発酵処理物は、工程(b)を実施する高温可溶化槽に直接搬送してもよく、また高温可溶化槽の上流に混合槽を設ける場合には該混合槽に搬送してもよい。搬送工程において返送するメタン発酵処理物の量及び割合は、前述したように、排水処理が不要となるような投入有機性廃棄物の含水量などを総合的に判断して適宜決定すればよい。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
下記条件・方法に従って、人工生ゴミを作成し、該生ゴミの処理実験を行った。
<人工生ゴミの作成>
以下の材料をそれぞれ5mm角に切り、各材料をよく攪拌する。1回の粉砕操作に指定の割合で全種類が含まれるように秤量し、フードカッターを用いて砕き混ぜる(10000rpm, 5min.)。含水率を測定しTS(固形物重量)を求める(保存する場合はディープフリーザへ)。
・果実類(30%) リンゴ 2.5%
オレンジ(皮) 7.5%
バナナ(皮) 10%
・野菜類(36%) キャベツ 10%
ジャガイモ 10%
ニンジン 10%
大根 10%
白菜 10%
・肉(14%) 挽肉 2.5%
・魚介類 魚 3.5%
骨 1.5%
・卵類 卵 2.5%
・残飯類(20%) 米飯 10%
パン 2.5%
麺類 7.5%
上記の単位「%」は、いずれも「重量%」である。
<有機物処理方法>
100gの生ゴミ(TS40%)に脱水濾液80mlを添加してTS22%とし、乾式メタン発酵装置(発酵槽体積3.6L、運転温度55℃)に毎日投入した。
メタン発酵槽から1日あたり140gを引き抜いて超高温可溶化槽(可溶化槽体積0.09L、運転温度80℃)に搬送し、メタン発酵汚泥の可溶化処理を行うとともに、3L/日のガス流量でアンモニアストリッピングを行い、超高温可溶化槽内のアンモニア濃度を1500mg/Lとした。この操作で32gのアンモニア水(アンモニア濃度0.5%)を回収することができた。残り108gの可溶化液はメタン発酵槽に返送した。
<結果>
超高温可溶化処理によりバイオガス化効率が改善したため、メタン発酵槽から1日あたり40gのバイオガスが発生するとともに、108gのメタン発酵廃液が発生した。これを脱水により固液分離すると、含水率40%の発酵残渣(堆肥)が28g発生するとともに80mlの脱水濾液が発生したが、これは全量生ゴミの希釈水として用いるため、処理が必要な排水は発生しなかった。
以上より、本発明の方法によれば、回収するアンモニア水量を調整することにより処理が必要な排水が生じなくなり、またプロセス中に発生するバイオガスによる排熱エネルギーのみでアンモニア水の回収に必要なエネルギーをまかなうことが可能であることが示された。
比較例1
100gの生ゴミ(TS40%)に希釈水80mlを添加してTS22%とし、乾式メタン発酵装置(発酵槽体積3.6L、運転温度55℃)に毎日投入した。
メタン発酵槽から1日あたり140gを引き抜いて、超高温可溶化槽(可溶化槽体積0.09L、運転温度80℃)に搬送し、メタン発酵汚泥の可溶化処理を行った。その後、同量(140g)の可溶化液をメタン発酵槽に返送した。
その結果、1日あたり40gのバイオガスが発生するとともに、147gのメタン発酵処理物が発生した。これを脱水すると、含水率40%の発酵残渣(堆肥)が28g発生するとともに112gの排水が発生した。
参考例1
上述の実施例に基づいて、実スケールにおける実施を想定すると、以下のようになる。
1日あたり100tの生ゴミ(TS40%)を実施例と同様に脱水濾液80mを添加してTS22%とし、乾式メタン発酵装置(55℃)に投入する。
メタン発酵槽から1日あたり140tを引き抜いて超高温可溶化槽(可溶化槽体積90m、運転温度80℃)に搬送し、メタン発酵汚泥の可溶化処理を行うとともに、3000m/日のガス流量でアンモニアストリッピングを行い、超高温可溶化槽内のアンモニア濃度を1500mg/Lとする。この操作で32tのアンモニア水(アンモニア濃度0.5%)を回収することができる。残り108tの可溶化液はメタン発酵槽に返送する。
結果として、メタン発酵槽から1日あたり40tのバイオガスが発生するとともに、108tのメタン発酵廃液が発生する。これを脱水により固液分離すると、含水率40%の発酵残渣(堆肥)が28t発生するとともに80mの脱水濾液が発生するが、これは全量生ゴミの希釈水として用いるため、処理が必要な排水は発生しないことになる。
図1は、実施例の概略図である。 図2は、比較例の概略図である。

Claims (5)

  1. 有機性廃棄物を処理する方法であって、
    有機性廃棄物に含まれる有機物を乾式メタン発酵するメタン発酵工程(a)と有機物を低分子化させる可溶化工程(b)とを含み、
    (1)メタン発酵工程(a)により得られるメタン発酵処理物から必要量の発酵処理物を引き抜き、第一処理物及び第二処理物に分け、第一処理物を固液分離処理により液体と残渣に分離し、第一処理物から分離された液体と有機性廃棄物との混合物をメタン発酵工程(a)又は可溶化工程(b)に供すること、
    (2)可溶化工程(b)により得られる可溶化処理物をメタン発酵工程(a)に供すること、
    (3)第二処理物を可溶化工程(b)に供すること、
    (4)可溶化工程(b)が、70℃以上で加熱処理し、かつアンモニア水を回収する工程であること、
    並びに、
    (5)排水が生ずることなく、かつメタン発酵工程(a)において乾式メタン発酵が可能となるように、可溶化工程(b)におけるアンモニア水の回収量を制御すること、
    を特徴とする処理方法。
  2. メタン発酵工程(a)において引き抜かれるメタン発酵処理物の比率が、第一処理物:第二処理物=1:1〜4となる、請求項1に記載の方法。
  3. アンモニアストリッピング法によって、可溶化工程(b)におけるアンモニア水の除去量を制御する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 投入する有機性廃棄物の含水率が60%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 排水を生じさせないために回収するアンモニア水量が、以下の式:
    W−1.5×(1−p/100)Q
    (式中、Qは投入有機廃棄物の固形物重量、Wは投入有機廃棄物の水分量、pはメタン発酵効率(%)を示す)
    で表される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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