一般に、自動車等の車両には、操縦安定性や乗り心地等を向上させるために、スタビライザブッシュ付きスタビライザバーが用いられている。このスタビライザブッシュ付きスタビライザバーは、公知の如く、スタビライザバーの中間部位に、複数(通常では2個)のスタビライザブッシュが位置固定に取り付けられており、スタビライザバーが車両左右両側のサスペンションアームに連結される一方、各スタビライザブッシュが車両のボデーに取り付けられることによって、スタビライザバーが、スタビライザブッシュにて、車両のボデーに対して弾性支持せしめられるようになっている。
ところで、このようなスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにおいては、通常、スタビライザブッシュが、軸方向に延びる内孔が設けられた筒状ゴム弾性体を含んで構成され、その内孔内にスタビライザバーが挿通された状態で、かかる筒状ゴム弾性体が、適当なブラケット(取付金具)によってボデーに取り付けられるようになっている。
そして、そのようなスタビライザブッシュを備えたスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの一種として、スタビライザブッシュの筒状ゴム弾性体の内孔内に挿通されるスタビライザバーが、かかる内孔の内周面に接着固定されると共に、筒状ゴム弾性体の軸直角方向中間部に、筒状ゴム弾性体を軸直角方向中間部よりも内周側の部分と外周側の部分とに仕切る、半割円筒状の二つの仕切部材が埋設されてなる構造を有するものがある(例えば、下記特許文献1参照)。
このような構造を有するスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、スタビライザブッシュの筒状ゴム弾性体の内孔の内周面に、スタビライザバーが接着固定されているところから、スタビライザバーに対する捩り力(軸心回りに回動させる作用力)の入力により、スタビライザバーと筒状ゴム弾性体との間でスリップが生ずることが解消され、以て、そのようなスリップに起因して、スタビライザバーの外周面と筒状ゴム弾性体の内孔の内周面との間できしみ音や擦れ音等の異音が発生することも、効果的に防止され得る。
また、かかるスタビライザブッシュ付きスタビライザバーでは、スタビライザブッシュの筒状ゴム弾性体が、仕切部材よりも内側に位置する内側ゴム部分と、それよりも外側に位置する外側ゴム部分とに二分されているため、スタビライザバーを筒状ゴム弾性体の内孔の内周面に接着させる際に、仕切部材を所定の加圧治具にて径方向内方に加圧すれば、筒状ゴム弾性体のうちの内側ゴム部分のみが圧縮されて、外側ゴム部分は圧縮されることがなく、それによって、接着時における過度の圧縮による影響が、外側ゴム部分において生ずることが回避されて、筒状ゴム弾性体とスタビライザバーとの間の十分な接着力と、筒状ゴム弾性体における所望のばね特性の安定的な確保が図られ得るのである。これは、接着剤として、熱硬化性樹脂が用いられて、接着操作が高温雰囲気下で実施されるときに、特に有効となる。
ところが、そのような従来のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにおいては、スタビライザブッシュの筒状ゴム弾性体が、周方向において二分割された分割筒体形状を呈する二つの分割ゴムにて構成されると共に、それら各分割ゴムの内部に、半割円筒状の仕切部材が、それぞれ同軸的に位置するように埋設されていた。また、ブラケットも、筒状ゴム弾性体に外挿可能な筒状部が軸方向に延びる分割面にて二分された分割筒部と、この分割筒部の周方向の両側端部から径方向外方に向かってそれぞれ一体的に突出する外フランジ状の取付部とを備えた二つの分割金具にて構成されていた。そして、それら各分割ゴムの外周面に、分割金具が、分割筒部の内周面において加硫接着されて、二つの加硫成形品が形成されると共に、それら二つの加硫成形品が互いに組み付けられることによって、スタビライザブッシュが形成されていた。
それ故、そのような二つの加硫成形品からなるスタビライザブッシュを備えた従来のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、スタビライザブッシュのブラケットが車両のボデーに取り付けられる際に、例えば、各分割金具の二つの取付部が水平方向に延びるように位置せしめられて、水平方向に広がるボデーの下面に重ね合わされた状態で、車両のボデーに取り付けられる場合、つまり、ブラケットが、上下方向において車両のボデーに取り付けられる場合に、各分割ゴム同士や各仕切部材同士が、それぞれ上下方向に並んで位置せしめられるようになる。また、各分割金具の二つの取付部が上下方向に延びるように位置せしめられて、上下方向に広がるボデーの側面に重ね合わされた状態で、車両のボデーに取り付けられる場合、つまり、ブラケットが、水平方向において車両のボデーに取り付けられる場合には、各分割ゴム同士や各仕切部材同士が、それぞれ水平方向に並んで位置せしめられるようになる。
すなわち、従来のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーでは、ブラケットのボデーへの取付方向の違いによって、各分割ゴムや各仕切部材の配置位置(向き)が異なるようになり、そのため、スタビライザブッシュへの主たる入力振動としての上下方向の入力振動に対する筒状ゴム弾性体のばね特性、ひいては防振特性にバラツキが生ずる恐れが大きかったのである。これは、分割ゴムの周方向両端部に、周方向内方に凹陥するすぐり部が設けられる場合において、特に顕著となる。
しかも、従来のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーでは、スタビライザブッシュのブラケットが二つの分割金具にて構成されているために、部品点数が多くなってしまうばかりでなく、それら二つの分割金具が、二つの分割ゴムに対して、それぞれ加硫接着されているところから、2回の加硫成形操作を行わなければならず、それ故に、筒状ゴム弾性体の成形操作が煩雑なものとなっていた。
なお、軸直角断面の外周形状がU字状(略蒲鉾状の全体形状)を呈する一つの筒状ゴム弾性体の内部に、C字状の仕切部材が、筒状ゴム弾性体を内側ゴム部分と外側ゴム部分とに仕切るように埋設されると共に、そのような筒状ゴム弾性体が、その外周面のうちの円弧状の先端面と二つの側面とを包囲する包囲部を備えた一つのブラケットにて、車両のボデーに取り付けられるように構成されたスタビライザブッシュを備えたスタビライザブッシュ付きスタビライザバーも、知られている(例えば、下記特許文献2参照)。
このようなスタビライザブッシュ付きスタビライザバーでは、スタビライザブッシュの筒状ゴム弾性体とブラケットが、それぞれ一つのものからなるため、二つの加硫成形品からなるスタビライザブッシュを備えた従来品とは異なって、部品点数の増加の問題や筒状ゴム弾性体の成形操作の煩雑化についての問題が、何れも解消され得る。しかしながら、筒状ゴム弾性体が蒲鉾形状を呈すると共に、ブラケットの包囲部も、そのような筒状ゴム弾性体に対応した略U字形状とされているところから、ブラケットのボデーへの取付方向の違いによって、筒状ゴム弾性体とその内部に埋設される仕切部材の向きが異なるようになり、そのため、上下方向の入力振動に対する筒状ゴム弾性体のばね特性や防振特性にバラツキが生ずる恐れを払拭することは、極めて困難であったのである。
特開2006−264435号公報
特開2000−46110号公報
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、スタビライザブッシュのブラケットのボデーへの取付方向に拘わらず、スタビライザブッシュにおいて所望の防振特性が安定的に発揮され得る構造が、優れた製作性と経済性とをもって有利に実現され得るスタビライザブッシュ付きスタビライザバーを提供することにある。
そして、本発明にあっては、スタビライザブッシュ付きスタビライザバーに係る課題の解決のために、その要旨とするところは、スタビライザバーの所定部位に、スタビライザブッシュが位置固定に取り付けられてなるスタビライザブッシュ付きスタビライザバーであって、前記スタビライザブッシュが、(a)前記スタビライザバーが挿通位置せしめられた状態で接着固定される、軸方向に延びる内孔を備えた円筒状ゴム弾性体と、(b)該円筒状ゴム弾性体の径方向中間部に、該円筒状ゴム弾性体を径方向中間部よりも内周側の部分と外周側の部分とに仕切るように埋設された、分割筒体形状を呈する複数の仕切部材と、(c)前記円筒状ゴム弾性体の外周面に対応した円形の内周面を有する挿入孔を備えた筒状部を有し、該筒状部の挿入孔内に、前記スタビライザバーが接着固定された円筒状ゴム弾性体が圧入された形態において、車両のボデーに取り付けられるブラケットとを含んで構成されると共に、前記スタビライザバーが、前記円筒状ゴム弾性体の内孔内に接着固定された状態において、該円筒状ゴム弾性体が、前記ブラケットの筒状部の挿入孔内に圧入されることによって、該スタビライザブッシュが該スタビライザバーに位置固定に取り付けられていることを特徴とするスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにある。
すなわち、この本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、スタビライザバーが内孔の内周面に接着固定されたスタビライザブッシュの円筒状のゴム弾性体が、ブラケットの筒状部の挿入孔内に圧入されることによって形成されるようになっている。そのため、ブラケットを車両のボデーに取り付けた後に、スタビライザバーが接着固定されたゴム弾性体をブラケットの筒状部の挿入孔内に圧入することによって、スタビライザバーがボデーに対して弾性支持せしめられるようになっている。しかも、ゴム弾性体が円筒形状を呈すると共に、筒状部の挿入孔の内周面も、それに対応した円形とされているところから、筒状部の挿入孔内へのゴム弾性体の圧入に際して、ゴム弾性体の筒状部に対する周方向の位置を任意の位置と為すことが可能となる。
それ故、本発明に係るスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにおいては、車両への取付状態下で、スタビライザブッシュのブラケットのボデーへの取付方向に拘わらず、円筒状ゴム弾性体の内部に埋設された分割筒体形状を呈する複数の仕切部材を上下方向に並んで位置させることが出来、それによって、スタビライザブッシュへの主たる入力振動としての上下方向の入力振動に対する円筒状ゴム弾性体の所望のばね特性、ひいては防振特性が、ブラケットのボデーへの取付方向とは無関係に、常に安定的に発揮され得る。
また、本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーでは、スタビライザブッシュのゴム弾性体が一つの円筒体からなると共に、ブラケットを、筒状部を備えた一つのものにて構成することが出来、更に、そのような円筒状のゴム弾性体が、ブラケットの筒状部の挿入孔内に圧入されることで、それらゴム弾性体とブラケットとが組み付けられているところから、二つの分割ゴムのそれぞれに、二つの分割金具がそれぞれ一つずつ加硫接着されてなる加硫成形品の二つのものが組み付けられて構成されたスタビライザブッシュを有する従来品に比して、部品点数が有利に削減され得るだけでなく、ゴム弾性体が、1回の加硫成形操作で容易に成形され得る。
なお、このような本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの好ましい態様の一つによれば、前記スタビライザブッシュにおける前記円筒状ゴム弾性体の周上の1箇所に、軸方向の全長に亘って延びる切割り部が設けられる。
このような本態様によれば、円筒状ゴム弾性体を、切割り部とは径方向の反対側部分を中心として、側方に拡開するように回動させることが出来、それによって、円筒状ゴム弾性体の内孔内へのスタビライザバーの挿通(挿入)が容易となる。そして、その結果として、スタビライザブッシュ付きスタビライザバー全体の製作性の向上が、有利に図られ得ることとなる。
また、本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーによれば、前記スタビライザブッシュと前記スタビライザバーとが車両に取り付けられた初期の時点で、該スタビライザバーへの車両全体の重量荷重の入力により、該スタビライザバーに初期捩りが生ぜしめられたときの該スタビライザバーの捩り角の値に基づいて、第一の基準値が設定される一方、該スタビライザバーに捩りが生ぜしめられたときの該スタビライザバーの捩り角の値が該第一の基準値よりも大きくなったときに、前記ブラケットの筒状部に対する前記円筒状ゴム弾性体の周方向への摺動が許容されるように、該円筒状ゴム弾性体の該ブラケットの筒状部に対する圧入代が設定されることとなる。
このようにすることによって、例えば、車両のボデーをジャッキアップ等により浮上させた状態、所謂フルリバウンド乃至はフルリバウンドに満たないリバウンド状態、つまり、車両の重量荷重の全部又は一部が車輪にて支持されないように、車両のボデーが浮上せしめられた状態で、スタビライザブッシュが車両のボデーに取り付けられると共に、スタビライザバーがサスペンションアームに取り付けられた後、ボデーの浮上状態が解消されて、車両全体の重量荷重が車輪にて支持されることにより、サスペンションアームを介して車輪に取り付けられるスタビライザバーに車両の重量荷重が入力されることで、かかるスタビライザバーにおいて、車両に対してバウンド方向やリバウンド方向の振動荷重が入力される前の初期段階での初期捩りが発生せしめられたときのスタビライザバーの捩り角の値に基づいて、第一の基準値が設定されている。そして、スタビライザバーに外力が加えられることで、スタビライザバーに捩りが生ぜしめられたときのスタビライザバーの捩り角が第一の基準値よりも大きくなったときに、円筒状ゴム弾性体が、ブラケットの筒状部に対して、軸心回りに回転せしめられ得るようになっている。
それ故、スタビライザブッシュとスタビライザバーとが車両に取り付けられると共に、かかる車両の車輪が走向可能に接地された状態下で、スタビライザバーにおいて既に初期捩りが発生していて、そのために、円筒状ゴム弾性体に捩り歪みが生じている場合にあっても、初期捩りが発生しているスタビライザバーの捩り角が第一の基準値よりも大きな値となるように、かかるスタビライザバーに対して、所定の捩り力が、初期捩りの捩り方向に加えられることにより、円筒状ゴム弾性体がブラケットの筒状部に対して周方向に摺動せしめられ(軸心回りに回転せしめられ)、以て、円筒状ゴム弾性体の捩り歪みが可及的に緩和され得る。そして、その結果として、円筒状ゴム弾性体、ひいてはスタビライザブッシュ全体の耐久性が、飛躍的に高められ得ることとなる。しかも、第一の基準値が、初期捩りが発生せしめられたときのスタビライザバーの捩り角の値に基づいて設定されているところから、上記せる円筒状ゴム弾性体の捩り歪みの緩和のために、スタビライザバーに加えられる捩り力が、極めて適正な大きさと為され得る。
さらに、本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの有利な態様の一つによれば、前記スタビライザバーに前記初期捩りが生ぜしめられたときの該スタビライザバーの捩り角の値が、前記第一の基準値とされる。
このような本態様によれば、スタビライザブッシュとスタビライザバーとが車両に取り付けられると共に、かかる車両の車輪が走行可能に接地された状態下で、スタビライザバーにおいて既に初期捩りが発生していて、そのために、円筒状ゴム弾性体に捩り歪みが生じている場合に、例えば、初期捩りが発生しているスタビライザバーの捩り角が第一の基準値の2倍の大きさとなるように、かかるスタビライザバーに対して、所定の捩り力が、初期捩りの捩り方向に加えられることにより、理論的には、円筒状ゴム弾性体の捩り歪みがゼロと為され得ることとなる。
更にまた、本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの別の好適な態様の一つによれば、車両の通常走行状態において前記スタビライザバーに入力される捩り力によって捩りが生ぜしめられるときの該スタビライザバーの捩り角の値に基づいて、第二の基準値が設定されて、該スタビライザバーに捩りが生ぜしめられたときの捩り角の値が、該第二の基準値と前記第一の基準値のうちの何れか大なる値よりも更に大きくなったときに、前記ブラケットの筒状部に対する前記円筒状ゴム弾性体の周方向への摺動が許容されるように、該円筒状ゴム弾性体の該ブラケットの筒状部に対する圧入代が設定されることとなる。
この本態様によれば、第二の基準値が第一の基準値よりも小さい場合は勿論、第二の基準値が第一の基準値よりも大きい場合にあっても、初期捩りが発生しているスタビライザバーの捩り角が、第一の基準値と第二の基準値のうちの大なるものよりも更に大きな値となるように、かかるスタビライザバーに対して、所定の捩り力が、初期捩りの捩り方向に加えられることにより、円筒状ゴム弾性体の捩り歪みが有利に緩和乃至は解消され得る。
そして、本態様にあっては、特に、第二の基準値が第一の基準値よりも大きな値とされている場合において、車両の通常走行状態に入力される捩り力によってスタビライザバーに捩りが生ぜしめられるときに、円筒状ゴム弾性体がブラケットの筒状部に対して周方向に摺動せしめられることが有利に阻止され得る。その結果、車両の通常走行状態でのスタビライザバーの捩りによって、円筒状ゴム弾性体が確実に弾性変形せしめられ、以て、そのような円筒状ゴム弾性体の弾性変形に基づく、スタビライザバーの捩り量の抑制効果が更に確実に発揮されて、乗り心地と走行安定性の向上が、より有利に図られ得ることとなる。
また、本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの他の有利な態様の一つによれば、前記スタビライザブッシュの前記複数の仕切部材が、分割円筒体形状を有して、前記円筒状ゴム弾性体の径方向中間部に、同軸的に位置せしめられた状態で埋設される。
この本態様によれば、外側ゴム部分の厚さが、周方向の如何なる位置においてもバラツキのない均一な大きさとされ、それによって、円筒状ゴム弾性体のばね特性、ひいてはスタビライザブッシュの防振特性が、周方向において均一に発揮され得る。
さらに、本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの好適な別の態様の一つによれば、前記スタビライザブッシュにおける前記円筒状ゴム弾性体の軸方向の両端部に、周方向に連続して延びるすぐり部がそれぞれ設けられていると共に、かかる両端部における該すぐり部よりも軸方向外方に位置する部分に、径方向外方に突出する外フランジ部がそれぞれ一体的に周設され、更に、前記ブラケットの前記筒状部の挿入孔内への該円筒状ゴム弾性体の圧入状態下で、それら各外フランジ部が、該筒状部から軸方向外方に突出位置せしめられて、該筒状部の軸方向の両側端面にそれぞれ係合せしめられるように構成される。
このような本態様によれば、円筒状ゴム弾性体が、軸方向両端部のすぐり部同士の間に位置する軸方向中間部部位において、ブラケットの筒状部の挿入孔内に圧入されるようになる。また、そのような筒状部の挿入孔内への円筒状ゴム弾性体の圧入部分と、円筒状ゴム弾性体の軸方向両端部にそれぞれ設けられた外フランジ部とが、それらの間のすぐり部の存在によって、あたかも、互いに独立した弾性変形作用を発揮するようになる。そのため、かかる円筒状ゴム弾性体の圧入部分が、筒状部に対して周方向に摺動せしめられた際に、それに追従して、外フランジ部が、筒状部に対して周方向に摺動せしめられることが可及的に抑制され、その結果、外フランジ部の筒状部に対する周方向への摺動に起因して、それら外フランジ部と筒状部の軸方向端面との間できしみ音や擦れ音等の異音が生ずることが、効果的に防止され得る。
そして、本発明にあっては、前記せるスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの製造方法に係る課題を解決するために、上記の如き種々の特徴を備えたスタビライザブッシュがスタビライザバーに取り付けられてなるスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの製造方法であって、(a)前記複数の仕切部材が径方向中間部に埋設されて、該複数の仕切部材にて、径方向中間部よりも内周側の部分と外周側の部分とに仕切られた前記円筒状ゴム弾性体を準備する工程と、(b)該準備された円筒状ゴム弾性体の内孔内に、スタビライザバーを挿通位置せしめて、接着する工程と、(c)前記スタビライザバーが接着された前記円筒状ゴム弾性体を、前記ブラケットの前記筒状部の挿入孔内に圧入する工程とを含むことを特徴とするスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの製造方法をも、また、その要旨とするものである。
このような本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの製造方法によれば、スタビライザバーが内孔内に挿通状態で接着された円筒状ゴム弾性体を、ブラケットの筒状部の円筒状内周面を備えた挿入孔内に、任意の周方向位置において圧入することが出来る。そのため、前記せる本発明に従うスタビライザブッシュと実質的に同一の作用・効果が発揮され得ることとなる。
上述の説明から明らかなように、本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、スタビライザブッシュのブラケットのボデーへの取付方向に拘わらず、スタビライザブッシュにおいて、所望の防振特性が安定的に発揮され得るのであり、また、そのような優れた特徴を生ぜしめるための構造が、簡便な製作操作で、しかも低コストに実現され得るのである。
また、本発明に従うスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの製造方法によれば、スタビライザブッシュのブラケットのボデーへの取付方向に拘わらず、スタビライザブッシュにおいて所望の防振特性が安定的に発揮され得るスタビライザブッシュ付きスタビライザバーが、優れた製作性をもって、経済的に有利に製造され得るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1には、本発明に従う構造を有するスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの一実施形態として、自動車のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーが、その正面形態において、概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーは、所定長さを有する金属の丸棒からなるスタビライザバー10の軸方向両端側部位に、スタビライザブッシュ12が、それぞれ一つずつ位置固定に取り付けられて、構成されている。
そして、スタビライザバー10に取り付けられるスタビライザブッシュ12は、図2及び図3に示される如く、スタビライザバー10が挿通される内孔14が軸方向に延びるように設けられた本体ゴム弾性体16と、かかる本体ゴム弾性体16が固定されて、車体に取り付けられるブラケット18とを備えた、従来と同様な基本構造を有している。
より具体的には、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16は、図4及び図5から明らかなように、全体として、略厚肉円筒形状を有している。つまり、ここでは、この本体ゴム弾性体16にて、円筒状ゴム弾性体が構成されている。そして、かかる円筒状の本体ゴム弾性体16にあっては、その周上の一箇所に、筒壁部を軸方向の全長に亘って周方向に分断するように、外周面から内孔14に達する切割り部20が、設けられている。これにより、図4に二点鎖線で示される如く、切割り部20とは径方向の反対側に位置する筒壁部分を中心として回動せしめられ得るようになっている。換言すれば、かかる筒壁部分をヒンジ部として、内孔14を側方に向かって開口させるように、拡開可能とされている。
また、本体ゴム弾性体16の内部には、二つの仕切部材22,22が、埋設されている。この仕切部材22は、本体ゴム弾性体16よりも十分に薄肉で、且つ本体ゴム弾性体16に比して、所定寸法大きな内径と、所定寸法大きな軸方向長さとを備えた、半円に満たない横断面形状を呈する分割円筒金具にて、構成されている。
そして、そのような二つの仕切部材22,22が、本体ゴム弾性体16の内部における径方向中間部において、本体ゴム弾性体16と同軸上で、互いに周方向に所定距離を隔て、且つ互いに離間する周方向の一方側の端面同士の間に前記切割り部20が位置するように配置され、また、かかる配置下で、軸方向両側端部を本体ゴム弾性体16の軸方向両側端面から所定長さだけ突出させるように位置せしめられている。
かくして、二つの仕切部材22,22が、本体ゴム弾性体16を、径方向中間部よりも内周側に位置する内側ゴム部24と、それよりも外周側に位置する外側ゴム部26とに仕切るように、埋設されているのである。なお、ここでは、各仕切部材22と本体ゴム弾性体16との内径同士の差が、それらの外径同士の差よりも十分に小さくされており、それによって、内側ゴム部24の肉厚が、外側ゴム部26の肉厚よりも十分に薄くされている。また、そのような内側ゴム部24と外側ゴム部26とが、切割り部20とは径方向反対側において、二つの仕切部材22,22の周方向の各端面同士の間に位置する本体ゴム弾性体16部分にて、互いに連結されている。更に、本体ゴム弾性体16の軸方向両側端面から突出する仕切部材22の軸方向両側端部が、それぞれ突出部28とされており、また、かかる突出部28は、内側ゴム部24や外側ゴム部26から一体に延びる薄肉のゴム膜にて、全体が被覆されている。
そして、ここでは、そのような二つの仕切部材22,22よりも外周側に位置する厚肉の外側ゴム部26の軸方向両端部に、外フランジ部30が、それぞれ一つずつ一体形成されている。それら各外フランジ部30は、外側ゴム部26の軸方向両側の各端部に、径方向外方に所定高さ突出し且つ周方向に連続して延びる略円環板形状を有し、外側ゴム部26の軸方向内方に位置する内側端面が、略円環面からなる係合面32とされている。
また、外側ゴム部26においては、軸方向両端側部位における外フランジ部30よりも軸方向内方に位置する部分に、すぐり部34が、所定の幅と外側ゴム部26の厚さの略半分に相当する深さを有する凹溝形態をもって、それぞれ一つずつ周設されており、更に、それら各すぐり部34同士の間に位置する軸方向中間部分が、円筒状の外周面を有する圧入部36とされている。
これにより、外側ゴム部26が、各すぐり部34にて、それらの軸方向内方に位置する圧入部36と、各すぐり部34の軸方向外方に位置する各外フランジ部30とに実質的に分断せしめられている。そうして、例えば、圧入部36が、径方向内方や周方向に押圧されて、弾性変形せしめられた際に、その弾性変形作用が各外フランジ部30に及ぼされて、それら各外フランジ部30が、圧入部36と共に弾性変形せしめられるようなことが、可及的に回避され得るようになっている。
一方、ブラケット18は、図1乃至図3に示される如く、略厚肉円筒状の筒状部38と、この筒状部38の外周面における一径方向の両側部分に、所定高さをもって、それぞれ一つずつ一体形成された矩形ブロック状の取付部40,40とを有する筒金具にて、構成されている。また、かかるブラケット18の筒状部38は、本体ゴム弾性体16における外側ゴム部26の圧入部36の外径よりも所定寸法小さな内径の円筒状内周面を備えた挿入孔42を有している。更に、この筒状部38においては、その外径が、外側ゴム部26における二つの外フランジ部30の外径よりも所定寸法大きくされ、そして、その軸方向長さが、それら二つの外フランジ部30の各係合面32同士の間の距離と略同じ大きさとされている。また、かかるブラケット18の各取付部40には、ブラケット18を自動車のボデーに取り付けるためのボルトが挿通されるボルト孔44が、それぞれ高さ方向において穿設されている。
そして、このようなブラケット18の筒状部38の挿入孔42内に、本体ゴム弾性体16が、圧入部36において圧入されることで、挿入、固定されている。それによって、それら本体ゴム弾性体16とブラケット18とが一体的に組み付けられて、スタビライザブッシュ12が構成されている。また、かかるスタビライザブッシュ12の二つのものの本体ゴム弾性体16の内孔14内に、スタビライザバー10の軸方向両側部分の二箇所において挿通された状態で固定されることによって、スタビライザブッシュ付きスタビライザバーが形成されているのである。
ところで、かくの如き本体ゴム弾性体16とブラケット18との一体組付品からなるスタビライザブッシュ12が位置固定に取り付けられたスタビライザブッシュ付きスタビライザバーを作製する際には、例えば、先ず、二つの仕切部材22,22をインサート品として用いた、公知のインサート射出成形等の公知の金型成形手法が実施されることにより、内部に二つの仕切部材22,22が埋設された本体ゴム弾性体16が、形成される。また、その一方で、スタビライザバー10が、別途に形成されて、準備される。その後、二つの仕切部材22,22の周方向の端面間に位置する本体ゴム弾性体16部分が所定の治具等を用いて切断されて、切割り部20が形成された後、本体ゴム弾性体16の内孔14の内周面や、スタビライザバー10の所定部位の外周面に、熱硬化性樹脂等からなる適当な接着剤が塗布される。
次に、図4に二点鎖線で示されるように、本体ゴム弾性体16が、切割り部20とは径方向の反対側に位置する筒壁部分をヒンジ部として、内孔14を側方に向かって開口させるように拡開せしめられて、スタビライザバー10の接着剤が塗布された部位が、本体ゴム弾性体16の内孔14内に収容されることで、スタビライザバー10が、本体ゴム弾性体16の内孔14内に挿通される。
その後、例えば、特開2006−264435号公報の図5乃至図9に示されるように、所定の加圧治具が用いられて、本体ゴム弾性体16の軸方向両側端面から突出する二つの仕切部材22,22の各突出部28が、径方向内方にそれぞれ押圧されることにより、内側ゴム部24のみに所定の押圧力が及ぼされた状態で、本体ゴム弾性体16の内孔14の内周面やスタビライザバー10の挿通部位の外周面に塗布された接着剤の硬化作業が、公知の手法に従って実施される。
これによって、図6に示されるように、本体ゴム弾性体16の内孔14内に、スタビライザバー10が挿通されて、接着されてなるスタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との一体品が作製される。そして、その後、そのようなスタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との一体品が、別途に、プレス成形や鋳造により作製されたブラケット18の筒状部38の挿入孔42内に挿入される。
この筒状部38の挿入孔42内へのスタビライザバー10と本体ゴム弾性体16との一体品の挿入操作は、図2及び図3に示されるように、本体ゴム弾性体16が、外側ゴム部26の圧入部36において、ブラケット18の筒状部38の挿入孔42内に圧入されることによって実施される。そうして、スタビライザバー10と本体ゴム弾性体16の一体品が、ブラケット18の筒状部38に固定される。
このとき、外側ゴム部26の二つの外フランジ部30の各係合面32が、ブラケット18の筒状部38の軸方向両側端面にそれぞれ接触し、係合せしめられ、それにより、筒状部38の挿入孔42内からの本体ゴム弾性体16の容易な抜脱が阻止されるようになる。なお、各外フランジ部30においては、係合面32とは反対側の軸方向外側に位置する端面が、径方向外方に向かって、軸方向内方に傾斜する傾斜面とされており、それによって、ブラケット18の筒状部38の挿入孔42内への本体ゴム弾性体16の挿入(圧入)時に、外フランジ部30の軸方向外方に位置する傾斜端面が案内面とされて、かかる挿入操作が可及的に容易となるようにされている。また、筒状部38の挿入孔42内への本体ゴム弾性体16の圧入部36の圧入によって、圧入部36が、ある程度、圧縮せしめられた状態で、筒状部38内に位置せしめられることとなるが、かかる圧入操作が常温で行われるため、例えば、高温雰囲気下で本体ゴム弾性体16に圧縮力を加える場合とは異なって、圧入部36の圧縮により、圧入部36、ひいては本体ゴム弾性体16全体のばね特性が不安定なものとなる恐れはない。
かくして、スタビライザブッシュ12が、本体ゴム弾性体16の内孔14内にスタビライザバー10が挿通、固定された状態で、形成されるようになっている。即ち、スタビライザバー10に位置固定に取り付けられた状態で、スタビライザブッシュ12が構成されている。また、図1に示される如く、そのようなスタビライザブッシュ12の二つが、スタビライザバー10の軸方向両端側部位に、それぞれ一つずつ位置固定に取り付けられることによって、本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーが形成されるようになっているのである。
そして、そのようにして形成されたスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、図7に示される如く、スタビライザバー10が、軸方向両端部において、例えば、自動車のサスペンションアーム(図示せず)に固定される一方、各スタビライザブッシュ12のブラケット18が、自動車のボデー46の水平方向に広がる下面に重ね合わされて、配置された状態(二つの取付部40,40が水平方向に並んで配置された状態)で、かかるブラケット18の各取付部40の上下方向に延びるボルト孔44に挿通された固定ボルト48にて、自動車のボデー46に、上下方向において取り付けられるようになっている。
かくして、スタビライザブッシュ付きスタビライザバーが、自動車に対して防振的に支持されて、スタビライザバー10と自動車のボデー46との間に入力される上下方向や前後方向の振動、更にはスタビライザバー10に入力される捩り振動(スタビライザバー10の軸心回りの回転方向の振動)等が、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16のうちの、主に、外側ゴム部26の圧入部36の弾性変形作用に基づいて、吸収され得るようになっている。
而して、本実施形態においては、特に、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16の内部に埋設された二つの仕切部材22,22が、自動車のボデー46に対するスタビライザブッシュ12のブラケット18の取付方向であって、且つスタビライザブッシュ12への主たる振動の入力方向の上下方向において、内側ゴム部24やスタビライザバー10の内孔14内への挿通部位を介して、互いに対向するように位置せしめられている。即ち、二つの仕切部材22,22の周方向の端面同士の間に位置する本体ゴム弾性体16部分と、かかる本体ゴム弾性体16部分に設けられた切割り部20とが、スタビライザブッシュ12への主たる振動入力方向の上下方向とは直角な水平方向に並んで位置せしめられている。
これによって、スタビライザバー10と自動車のボデー46との間に、主たる振動たる上下方向の振動が入力された際に、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16における外側ゴム部26の圧入部36の略全体が、ブラケット18の筒状部38の内周面と二つの仕切部材22,22の各外周面との間で、主に圧縮されるように弾性変形せしめられ、その結果として、そのような外側ゴム部26の圧入部36の弾性変形に基づく振動吸収作用が、外側ゴム部26の圧入部36の略全体において均一に発揮され得るようになっている。
そして、本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、特に、内孔14内にスタビライザバー10を挿通、固定せしめられた本体ゴム弾性体16が、円筒状外周面を有する外側ゴム部26の圧入部36において、ブラケット18の筒状部38の円筒状内周面を有する挿入孔42内に圧入されることにより、方向性を有することなく、挿入、固定され得るようになっている。そのため、本体ゴム弾性体16をブラケット18の筒状部38の挿入孔42内に挿入、固定するのに、本体ゴム弾性体16の外側ゴム部26の圧入部36を、かかる筒状部38の挿入孔42内に圧入するに際して、筒状部38に対する外側ゴム部26の圧入部36の周方向位置を、任意の位置と為すことが出来る。
それ故、本実施形態に係るスタビライザブッシュ付きスタビライザバーでは、例えば、スタビライザブッシュ12のブラケット18が、自動車のボデー46の上下方向に広がる側面に重ね合わされて、配置された状態(ブラケット18の二つの取付部40,40が上下方向に並んで配置された状態)で、かかるブラケット18の各取付部40の水平方向に延びるボルト孔44に挿通された固定ボルトにて、自動車のボデー46に固定される場合、つまり、ブラケット18が、水平方向において自動車のボデー46に取り付けられる場合に、二つの仕切部材22,22の周方向の端面同士の間に位置する本体ゴム弾性体16部分と、かかる本体ゴム弾性体16部分に設けられた切割り部20とが、上下方向に並んで位置せしめられることなく、二つの仕切部材22,22が、上下方向において互いに対向位置せしめられるように、本体ゴム弾性体16の外側ゴム部26の圧入部36が、ブラケット18の筒状部38の挿入孔42内に、圧入されて、固定され得るように為すことが出来る。即ち、圧入部36の筒状部38に対する周方向の位置を、図2に示される如き状態から、90°だけ、左右の何れか一方の側に回転させた位置と為すことが出来る。
従って、このようなスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにおいては、スタビライザブッシュ12のブラケット18が、自動車のボデー46に対して水平方向に取り付けられる場合にあっても、ブラケット18が自動車のボデー46に対して上下方向において取り付けられる場合と同様に、スタビライザバー10と自動車のボデー46との間に、主たる振動たる上下方向の振動が入力された際に、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16における外側ゴム部26の圧入部36の略全体が、ブラケット18の筒状部38の内周面と二つの仕切部材22,22の各外周面との間で、主に圧縮されるように弾性変形せしめられ、その結果として、そのような外側ゴム部26の圧入部36の弾性変形に基づく振動吸収作用が、外側ゴム部26の圧入部36の略全体において均一に発揮され得るようになるのである。
要するに、本実施形態に係るスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、自動車への装着状態下で、スタビライザブッシュ12のブラケット18のボデー46への取付方向に拘わらず、本体ゴム弾性体16の内部に埋設された二つの仕切部材22,22を上下方向に並んで位置させることが出来、それによって、スタビライザブッシュ12への主たる入力振動としての上下方向の入力振動に対する本体ゴム弾性体16、特に外側ゴム部26の圧入部36の所望のばね特性、ひいてはスタビライザブッシュ12全体の防振特性が、スタビライザブッシュ12のボデー46への取付方向とは無関係に、常に安定的に発揮され得ることとなる。
そして、本実施形態に係るスタビライザブッシュ付きスタビライザバーでは、スタビライザブッシュ12が、ブラケット18において、自動車のボデー46に取り付けられる一方、スタビライザバー10が、軸方向両側の端部において、自動車のサスペンションアームに固定されて、自動車が走行可能とされた状態下で、スタビライザバー10に捩りが生ぜしめられたときのスタビライザバー10の捩り角の大きさが、予め定められた第一の基準値よりも大きくなったときに、ブラケット18の筒状部38に対する本体ゴム弾性体16の圧入部36の周方向への摺動が許容されるように、かかる圧入部36の筒状部38に対する圧入代が設定されている。
より詳細には、本実施形態では、自動車の重量荷重の全部が車輪にて支持されないように、自動車のボデー46をジャッキアップ等により浮上させた、所謂フルリバウンド状態(サスペンション機構のコイルスプリング等が伸びきった状態)で、スタビライザブッシュ12がボデー46に取り付けられると共に、スタビライザバー10がサスペンションアームに取り付けられるようになっている。このとき、スタビライザバー10は、図7に二点鎖線で示されるように、軸方向両側の端部50(図7には、一方の端部のみを示す)が、水平位置から下側に所定の角度:θだけ傾斜して延びる状態で位置せしめられるようになる。
そして、スタビライザバー10とスタビライザブッシュ12とが自動車に取り付けられた後、フルリバウンド状態が解消されて、車輪が走行可能に接地されたときには、図7に実線で示されるように、スタビライザバー10の軸方向両側の端部50が、水平に延びるように位置せしめられるようになる。このとき、自動車全体の重量荷重が車輪にて支持されることで、サスペンションアームを介して車輪に取り付けられるスタビライザバー10に自動車の重量荷重が入力され、それにより、かかるスタビライザバー10に対して、自動車にバウンド方向やリバウンド方向の振動荷重が入力される前の初期段階での初期捩りが生ぜしめられる。このスタビライザバー10の初期捩りは、スタビライザバー10の端部50が、図7に二点鎖線で示された下傾状態から図7に実線で示された水平状態となるまで、スタビライザバー10の中間部の軸心周り回転せしめられた角度に一致した大きさを有する捩り角:θをもって生ぜしめられる。また、このようなスタビライザバー10に初期捩りが発生されることで、かかるスタビライザバー10が接着固定された本体ゴム弾性体16の圧入部36において、捩り歪みが、初期捩りに対応した分だけ惹起されることとなる。
そして、本実施形態においては、スタビライザバー10の初期捩り角:θに対して、それよりも十分に小さな加算値:αを加えた値:θ+αが、前記せる第一の基準値として、設定されている。なお、この加算値:αの具体的数値は、特に限定されるものではないが、後述する如く、スタビライザバー10の初期捩りを解消させたときに、本体ゴム弾性体16の弾性変形作用を加味した上で、かかる本体ゴム弾性体16の捩り歪みが可及的に解消され得るように、スタビライザバー10の初期捩り角:θの大きさ等に応じて適宜に決定されるものであり、例えば、初期捩り:θが20°程度とされる場合には、加算値:αが5°程度とされる。
また、本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーでは、自動車に取り付けられた状態下で、フルリバウンド状態から、それが解消されて、スタビライザバー10に初期捩りが生ぜしめられたときの初期捩り角の大きさがθとされているため、自動車の通常走行状態において、車輪の上下動に伴ってスタビライザバー10に捩り力が入力されたときのスタビライザバー10の捩り角の大きさが、±θとされる。つまり、スタビライザバー10の軸方向両側の端部50が、水平状態から、上方と下方とに、図7において一点差線と二点鎖線で示される回動範囲内で回動せしめられるようになる。換言すれば、自動車の通常走行状態において、スタビライザバー10に生ずる捩りの最大角度の大きさ:θとなっており、ここでは、それが第二の基準値として、設定されている。
そして、本実施形態では、特に、スタビライザバー10に捩りが生ぜしめられたときのスタビライザバー10の捩り角の大きさが、第二の基準値:θよりも大きな値である第一の基準値:θ+αを超えたときに、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16における外側ゴム部26の圧入部36の外周面が、ブラケット18の筒状部38における挿入孔42の内周面に対して、周方向に摺動されるように、圧入部36の筒状部38に対する圧入代、つまり、圧入部36の外径と筒状部38の挿入孔42の内径との差が、設定されている。
かくして、本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにおいては、スタビライザバー10とスタビライザブッシュ12とが自動車に取り付けられた後、フルリバウンド状態が解消されて、車輪が走行可能に接地されると共に、スタビライザバー10の端部50が水平に延びるように位置せしめられた状態、換言すれば、スタビライザバー10に対して、初期捩りが、初期捩り角:θにおいて生ぜしめられている状態で、スタビライザバー10の端部50が水平に延びる位置(図7に実線で示される位置)から上方に回動せしめられて、スタビライザバー10が、初期捩りの捩り方向と同一方向に、第一の基準値:θ+αと初期捩り角:θとの差であるところの加算値:αよりも大きな捩り角で更に捩りが生ぜしめられたときに、スタビライザバー10の捩り角が第一の基準値:θ+αを超えるようになる。そして、その際に、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16における圧入部36の外周面が、ブラケット18の筒状部38の内周面に対して周方向に摺動せしめられるようになっている。
それ故、本実施形態では、スタビライザバー10とスタビライザブッシュ12とが自動車に取り付けられた後、初期捩りが生ぜしめられた状態で、端部50が水平に位置せしめられているスタビライザバー10に対して、初期捩り角:θと同じ角度だけ捩りを加えることにより、即ち、スタビライザバー10の端部50が、図7の実線で示される位置から一点鎖線で示される位置にまで回動せしめられることにより、スタビライザバー10の初期捩りに起因して本体ゴム弾性体16の圧入部36に発生していた捩り歪みが、効果的に緩和され得るようになっている。なお、ここでは、そのような捩り歪みを緩和させる操作を行った後にも、理論上では、スタビライザバー10において、前記加算値:αと同じ大きさの捩り角をもって、捩りが生じている状態が維持されるようになるが、かかる捩り角:αが十分に小さな値であるため、それが、本体ゴム弾性体16やスタビライザブッシュ12、更にはスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの耐久性に悪影響を与えることはない。
そして、かかる本実施形態にあっては、自動車の通常走行状態においてスタビライザバー10に生ずる捩りの最大角度たる第二の基準値:θよりも、第一の基準値:θ+αが、加算値:αの分だけ大きくされているため、自動車の通常走行状態においてスタビライザバー10に捩りが生じても、本体ゴム弾性体16の圧入部36がブラケット18の筒状部38に対して周方向に摺動せしめられることが効果的に防止され得る。
このように、本実施形態に係るスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、自動車への装着状態下で、スタビライザブッシュ12のブラケット18のボデー46への取付方向(ブラケット18のボデー46への重合せ方向)に拘わらず、本体ゴム弾性体16の内部に埋設された二つの仕切部材22,22を上下方向に並んで位置させることが出来、それによって、スタビライザブッシュ12への主たる入力振動としての上下方向の入力振動に対する本体ゴム弾性体16、特に外側ゴム部26の圧入部36の所望のばね特性、ひいてはスタビライザブッシュ12全体の防振特性が、スタビライザブッシュ12のボデー46への取付方向とは無関係に、常に安定的に発揮され得ることとなる。
しかも、本実施形態においては、上記の如き優れた特徴が、単に、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16の圧入部36の外周面と、ブラケット18の筒状部38の挿入孔42の内周面が、共に円筒形状とされて、かかる圧入部36が筒状部38の挿入孔42内に圧入されるようなっていることで、確実に発揮され得るようになっている。また、本体ゴム弾性体16とブラケット18とが、共に一つの部材にて構成されており、それによって、それら本体ゴム弾性体16とブラケット18とが、それぞれ二つの分割体からなる分割構造を有する従来品に比して、部品点数の減少と、各部品の組付工数の簡素化、更には本体ゴム弾性体16に対する二つの仕切部材22,22の一体加硫成形操作における工数の簡素化も、有利に実現されている。
従って、かくの如き本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにおいては、自動車のボデー46に対するスタビライザブッシュ12のブラケット18の取付方向に拘わらず、スタビライザブッシュ12において、所望の防振特性が極めて安定的に発揮され得るだけでなく、そのような優れた特徴を生ぜしめるための構造が、簡便な製作操作で、しかも低コストに実現され得るのである。
また、本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにあっては、それが自動車に取り付けられた初期段階において、スタビライザバー10に初期捩りが発生せしめられているような場合においても、スタビライザバー10に対して、例えば、初期捩り角:θと同じ程度の捩り角で更に捩りが生ずるように、捩り力を入力すれば、スタビライザバー10の初期捩りに起因して、本体ゴム弾性体16の圧入部36に生ずる捩り歪みが可及的に緩和され得るようになっている。また、自動車の通常走行状態において、スタビライザバー10の捩りにより、本体ゴム弾性体16の圧入部36が、ブラケット18の筒状部38に対して周方向に摺動せしめられることがないようになっている。それ故、それらの結果として、本体ゴム弾性体16、ひいてはスタビライザブッシュ12全体の耐久性が、飛躍的に高められ得るだけでなく、自動車の通常走行状態でのスタビライザバー10の捩りによって、本体ゴム弾性体16の圧入部36が確実に弾性変形せしめられて、そのような圧入部36の弾性変形に基づく、スタビライザバー10の捩り量の抑制効果が更に確実に発揮され、以て、乗り心地と走行安定性の向上が、より有利に図られ得る。
さらに、本実施形態では、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16の外側ゴム部26が、すぐり部34にて、圧入部36と外フランジ部30とに実質的に分断せしめられていることで、例えば、圧入部36が径方向内方や周方向に押圧されて弾性変形せしめられた際に、外フランジ部30が圧入部36と共に弾性変形せしめられるようなことが可及的に回避され得るようになっている。そのため、本体ゴム弾性体16の圧入部36がブラケット18の筒状部38に対して周方向に摺動せしめられたときに、外フランジ部30が、圧入部36と共に、筒状部38に対して周方向に摺動せしめられて、それら外フランジ部30と筒状部38の軸方向端面との間できしみ音や擦れ音等の異音が生ずることが、効果的に防止され得る。
更にまた、本実施形態においては、スタビライザブッシュ12における円筒状の本体ゴム弾性体16の周上の一箇所に、外周面から内孔14に達する切割り部20が設けられており、本体ゴム弾性体16が、切割り部20とは径方向の反対側に位置する筒壁部分をヒンジ部として、内孔14を側方に向かって開口させるように拡開せしめられることで、スタビライザバー10が、本体ゴム弾性体16の内孔14内に、容易に収容されて、挿通され得るようになっているところから、スタビライザブッシュ12の内孔14内へのスタビライザバー12の挿通作業、ひいてはスタビライザブッシュ付きスタビライザバーの製作作業における作業性の向上が、有利に図られ得る。
また、本実施形態では、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16の内部に、半円に満たない横断面形状を呈する分割円筒金具からなる二つの仕切部材22,22が、同軸的に位置せしめられた状態で埋設されているところから、各仕切部材22よりも外側に位置して、スタビライザブッシュ12の防振特性を大きく左右する外側ゴム部26の厚さが、周方向の如何なる位置においても均一な大きさとされ、それによって、スタビライザブッシュ12の防振特性が、周方向において均一に発揮され得る。
さらに、本実施形態のスタビライザブッシュ付きスタビライザバーにおいては、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16の外側ゴム部26の軸方向両端部に設けられた外フランジ部30の係合面32が、ブラケット18の筒状部38の軸方向両側端面に係合せしめられて、本体ゴム弾性体16の筒状部38からの無用な抜脱が阻止されるようになっているところから、本体ゴム弾性体16の筒状部38からの抜脱や軸方向への位置ズレによるスタビライザブッシュ12の防振特性や耐久性の低下が、効果的に防止され得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示であって、本発明は、そのような実施形態における具体的な記述によって何等限定的に解釈されるものでない。
例えば、前記実施形態では、スタビライザブッシュ12の本体ゴム弾性体16が円筒形状を呈する一つの部材からなり、周上の一箇所に切割り部20が設けられて、この切割り部20とは径方向反対側の筒壁部分をヒンジ部として、側方に拡開せしめられるようになっていたが、そのような切割り部20を省略したり、或いは本体ゴム弾性体16を、複数の分割円筒体が組み付けられてなる分割構造をもって形成したりすることも出来る。
また、本体ゴム弾性体16を一つの円筒体にて構成する場合にあっても、その全体形状が例示のものに何等限定されるものではない。従って、例えば、外フランジ部30やすぐり部34を省略することも出来る。
さらに、本体ゴム弾性体16の内部に埋設される複数の仕切部材22を、分割筒体形状を呈する三つ以上の分割体にて構成しても良い。
更にまた、ブラケット18も、円筒状の本体ゴム弾性体16が圧入可能な円筒状内周面を有する挿入孔42を備えた筒状部38が設けられておれば、その全体の構造が、例示されたもに、特に限定されるものではなく、従って、取付部40の形状が、前記実施形態に示されるものとは異なる形状とされていても、何等差し支えない。
また、ブラケット18や仕切部材22の形成材料も、適度な剛性を有するものであれば、例示の金属材料に、決して限定されるものではない。
さらに、前記実施形態では、第一の基準値が、スタビライザバー10の初期捩り角に、予め設定された加算値を加えた値において設定されていたが、かかる第一の基準値をスタビライザバー10の初期捩り角と同一の値において設定することも出来る。
また、前記実施形態では、第二の基準値が、自動車の走行状態でのスタビライザバー10の最大捩り角と同一の値において設定されていたが、かかる第二の基準値を、自動車の走行状態でのスタビライザバー10の最大捩り角よりも小さな値で、自動車の通常走行状態において日常的に入力されるであろうと予測される捩り角と同一の値において設定することも出来る。
さらに、前記実施形態では、スタビライザブッシュ12とスタビライザバー10とがフルリバウンド状態(自動車の重量荷重の全部が車輪にて何等支持されていない状態)の自動車に取り付けられたときに、スタビライザバー10に生ずる初期捩りの捩り角に基づいて、第一の基準値や第二の基準値が設定されていたが、スタビライザブッシュ12とスタビライザバー10とが、フルリバウンドに満たないリバウンド状態(自動車の重量荷重の一部が車輪に支持された状態)の自動車に取り付けられたときに、スタビライザバー10に生ずる初期捩りの捩り角に基づいて、第一の基準値や第二の基準値を設定しても良い。
更にまた、スタビライザバー10に捩りが生ぜしめられたときの捩り角の値が、第一の基準値と第二の基準値のうちの何れか大なる値よりも更に大きくなったときに、ブラケット18の筒状部38に対する本体ゴム弾性体16の圧入部36の周方向への摺動が許容されるように構成することも出来る。
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車用のスタビライザブッシュ、自動車用のスタビライザブッシュ付きスタビライザバー及びその製造方法に適用したものの具体例を示したが、本発明は、自動車用以外のスタビライザブッシュ、自動車用以外のスタビライザブッシュ付きスタビライザバー及びその製造方法の何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。