以降に示す第6〜14の実施形態(図13〜31)が本発明に含まれるアンテナ装置および通信端末装置の実施形態である。
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態のアンテナ装置101の回路図、図1(B)はその等価回路図である。
図1(A)に示すように、アンテナ装置101は、アンテナ素子11と、このアンテナ素子11に接続されたインピーダンス変換回路45とを備えている。アンテナ素子11はモノポール型アンテナであり、このアンテナ素子11の給電端にインピーダンス変換回路45が接続されている。インピーダンス変換回路45はアンテナ素子11と給電回路30との間に挿入されている。給電回路30は高周波信号をアンテナ素子11に給電するための給電回路であり、高周波信号の生成や処理を行うが、高周波信号の合波や分波を行う回路を含んでいてもよい。
インピーダンス変換回路45は、給電回路30に接続された第1インダクタンス素子L1と、第1インダクタンス素子L1に結合した第2インダクタンス素子L2とを備えている。より具体的には、第1インダクタンス素子L1の第1端は給電回路30に、第2端はグランドにそれぞれ接続されていて、第2インダクタンス素子L2の第1端はアンテナ素子11に、第2端はグランドにそれぞれ接続されている。
そして、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2とは密結合している。このことにより擬似的に負のインダクタンス成分が生じている。この負のインダクタンス成分で、アンテナ素子11自身が持つインダクタンス成分が打ち消されることにより、アンテナ素子11のインダクタンス成分は見かけ上小さい。すなわち、アンテナ素子11の実効的な誘導性リアクタンス成分が小さくなるため、アンテナ素子11は高周波信号の周波数に依存しにくくなる。
このインピーダンス変換回路45は、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2とを相互インダクタンスMを介して密結合したトランス型回路を含む。このトランス型回路は、図1(B)に示すように、三つのインダクタンス素子Z1,Z2,Z3によるT型回路に等価変換できる。すなわち、このT型回路は、給電回路に接続される第1ポートP1、アンテナ素子11に接続される第2ポートP2、グランドに接続される第3ポートP3、第1ポートP1と分岐点との間に接続された第1インダクタンス素子Z1、第2ポートP2と分岐点Aとの間に接続された第2インダクタンス素子Z2、および第3ポートP3と分岐点Aとの間に接続された第3インダクタンス素子Z3で構成される。
図1(A)に示した第1インダクタンス素子L1のインダクタンスをL1、第2インダクタンス素子L2のインダクタンスをL2、相互インダクタンスをMで表すと、図1(B)の第1インダクタンス素子Z1のインダクタンスは、L1−M、第2インダクタンス素子Z2のインダクタンスはL2−M、第3インダクタンス素子Z3のインダクタンスは+Mである。ここで、L2<Mの関係であれば、第2インダクタンス素子Z2のインダクタンスは負の値である。すなわち、ここに擬似的な負の合成インダクタンス成分が形成されている。
一方、アンテナ素子11は図1(B)に表れているように、等価的にインダクタンス成分LANT、放射抵抗成分Rr、およびキャパシタンス成分CANTで構成される。このアンテナ素子11単体のインダクタンス成分LANTは、インピーダンス変換回路45における前記負の合成インダクタンス成分(L2−M)によって打ち消されるように作用する。すなわち、インピーダンス変換回路のA点からアンテナ素子11側を見た(第2インダクタンス素子Z2を含めたアンテナ素子11の)インダクタンス成分は小さく(理想的にはゼロに)なり、その結果、このアンテナ装置101のインピーダンス周波数特性が小さくなる。
このように負のインダクタンス成分を生じさせるためには、第1インダクタンス素子と第2インダクタンス素子とを高い結合度で結合させることが重要である。具体的には、この結合度は1以上であればよい。
トランス型回路によるインピーダンス変換比は、第1インダクタンス素子L1のインダクタンスL1に対する第2インダクタンス素子L2のインダクタンスL2の比(L1:L2)である。
図2は、前記インピーダンス変換回路45で擬似的に生じる負のインダクタンス成分の作用およびインピーダンス変換回路45の作用を模式的に示す図である。図2において曲線S0はアンテナ素子11の使用周波数帯域に亘って周波数をスイープしたときのインピーダンス軌跡をスミスチャート上に表したものである。アンテナ素子11単体ではインダクタンス成分LANTが比較的大きいので、図2に表れているようにインピーダンスは大きく推移する。
図2において曲線S1はインピーダンス変換回路のA点からアンテナ素子11側を見たインピーダンスの軌跡である。このように、インピーダンス変換回路の擬似的な負のインダクタンス成分によってアンテナ素子のインダクタンス成分LANTが相殺されて、A点からアンテナ素子側を見たインピーダンスの軌跡は大幅に縮小される。
図2において曲線S2は給電回路30から見たインピーダンスすなわちアンテナ装置101のインピーダンスの軌跡である。このように、トランス型回路によるインピーダンス変換比(L1:L2)によって、アンテナ装置101のインピーダンスは50Ω(スミスチャートの中心)に近づく。なお、このインピーダンスの微調整は、トランス型回路に、別途インダクタンス素子やキャパシタンス素子を付加することで行ってもよい。
このようにして、広帯域に亘ってアンテナ装置のインピーダンス変化を抑制できる。ゆえに、広い周波数帯域に亘って給電回路とインピーダンス整合がとれる。
《第2の実施形態》
図3(A)は第2の実施形態のアンテナ装置102の回路図、図3(B)はその各コイル素子の具体的な配置を示す図である。
第2の実施形態の基本構成は第1の実施形態と同様であるが、第1インダクタンス素子と第2インダクタンス素子とを極めて高い結合度で結合(密結合)させるための、より具体的な構成を示すものである。
図3(A)に表れているように、第1インダクタンス素子L1は第1コイル素子L1aおよび第2コイル素子L1bで構成されていて、これらのコイル素子は互いに直列的に接続され、且つ閉磁路が構成されるように巻回されている。また、第2インダクタンス素子L2は第3コイル素子L2aおよび第4コイル素子L2bで構成されていて、これらのコイル素子は互いに直列的に接続され、且つ閉磁路を構成するように巻回されている。換言すると、第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとは逆相で結合(加極性結合)し、第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとは逆相で結合(加極性結合)する。
さらに、第1コイル素子L1aと第3コイル素子L2aとは同相で結合(減極性結合)するとともに、第2コイル素子L1bと第4コイル素子L2bとは同相で結合(減極性結合)することが好ましい。
図4は、図3(B)に示した回路に磁界結合と電界結合の様子を示す各種矢印を書き入れた図である。図4に示すように、給電回路から図中矢印a方向に電流が供給されたとき、第1コイル素子L1aに図中矢印b方向に電流が流れるとともに、第2コイル素子L1bには図中矢印c方向に電流が流れる。そして、これらの電流により、図中矢印Aで示されるように、閉磁路を通る磁束が形成される。
コイル素子L1aとコイル素子L2aは互いに並走しているので、コイル素子L1aに電流bが流れて生じる磁界がコイル素子L2aに結合して、コイル素子L2aに誘導電流dが逆方向に流れる。同様に、コイル素子L1bとコイル素子L2bは互いに並走しているので、コイル素子L1bに電流cが流れて生じる磁界がコイル素子L2bに結合して、コイル素子L2bに誘導電流eが逆方向に流れる。そして、これらの電流により、図中矢印Bで示されるように、閉磁路を通る磁束が形成される。
コイル素子L1a,L1bによる第1インダクタンス素子L1に生じる磁束Aの閉磁路と、コイル素子L1b,L2bによる第2インダクタンス素子L2に生じる磁束Bの閉磁路とは独立しているので、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2との間には等価的な磁気障壁MWが生じることになる。
また、コイル素子L1aとコイル素子L2aとは電界によっても結合されている。同様に、コイル素子L1bとコイル素子L2bとは電界によっても結合されている。したがって、コイル素子L1aおよびコイル素子L1bに交流信号が流れるとき、コイル素子L2aおよびコイル素子L2bには電界結合により電流が励起される。図4中のキャパシタCa,Cbは前記電界結合のための結合容量を表象的に表した記号である。
第1インダクタンス素子L1に交流電流が流れるとき、前記磁界を介した結合により第2インダクタンス素子L2に流れる電流の向きと、前記電界を介した結合により第2インダクタンス素子L2に流れる電流の向きとは同じである。したがって、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2とは磁界と電界の両方で強く結合することになる。すなわち、損失を抑え、高周波エネルギーを伝搬させることができる。
インピーダンス変換回路35は、第1インダクタンス素子L1に交流電流が流れるとき、磁界を介した結合により第2インダクタンス素子L2に流れる電流の向きと、電界を介した結合により第2インダクタンス素子L2に流れる電流の向きとが同じになるよう構成された回路であると言うこともできる。
図5は、マルチバンドに対応させたアンテナ装置102の回路図である。このアンテナ装置102は、GSM(登録商標)方式やCDMA方式に対応可能なマルチバンド対応型移動体無線通信システム(800MHz帯、900MHz帯、1800MHz帯、1900MHz帯)に用いられるアンテナ装置である。アンテナ素子11は分岐モノポール型アンテナである。
ここで用いられているインピーダンス変換回路35′は、コイル素子L1aおよびコイル素子L1bで構成される第1インダクタンス素子L1と、コイル素子L2aおよびコイル素子L2bで構成される第2インダクタンス素子L2との間にキャパシタC1を挿入したもので、他の構成は上記のインピーダンス変換回路35と同様である。
このアンテナ装置102は通信端末装置のメインアンテナとして利用される。分岐モノポール型のアンテナ素子11の第1放射部は主にハイバンド側(1800〜2400MHz帯)のアンテナ放射素子として作用し、第1放射部と第2放射部の両者で主にローバンド側(800〜900MHz帯)のアンテナ素子として作用する。ここで、分岐モノポール型のアンテナ素子11は、必ずしもそれぞれの対応周波数帯で共振する必要はない。なぜなら、インピーダンス変換回路35′が、各放射部のもつ特性インピーダンスを給電回路30のインピーダンスにマッチングさせているからである。インピーダンス変換回路35′は、例えば、800〜900MHz帯で、第1放射部と第2放射部のもつ特性インピーダンスを給電回路30のインピーダンス(通常は50Ω)にマッチングさせている。これにより、給電回路30から供給されたローバンドの高周波信号を第1放射部および第2放射部から放射させ、または、第1放射部および第2放射部で受信したローバンドの高周波信号を給電回路30に供給することができる。同様に、給電回路30から供給されたハイバンドの高周波信号を第1放射部から放射させ、または、第1放射部で受信したハイバンドの高周波信号を給電回路30に供給することができる。
なお、インピーダンス変換回路35′のうちキャパシタC1はハイバンドの高周波信号のうち特に高い周波数帯域の信号を通過させる。このことにより、アンテナ装置のさらなる広帯域化が図れる。また、本実施形態の構造によれば、アンテナと給電回路は直流的には分離されているため、ESDに対して強い。
《第3の実施形態》
図6(A)は第3の実施形態のインピーダンス変換回路35の斜視図、図6(B)はそれを下面側から見た斜視図である。また、図7はインピーダンス変換回路35を構成する積層体40の分解斜視図である。
図7に示すように、積層体40の最上層の基材層51aに導体パターン61が形成され、2層目の基材層51bに導体パターン62(62a,62b)が形成され、3層目の基材層51cに導体パターン63,64が形成されている。4層目の基材層51dに二つの導体パターン65,66が形成され、5層目の基材層51eに導体パターン67(67a,67b)が形成されている。さらに、6層目の基材層51fにグランド導体68が形成され、7層目の基材層51gの裏面に給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43が形成されている。なお、最上層の基材層51a上には図示しない無地の基材層が積層される。
前記導体パターン62a,63によって第1コイル素子L1aが構成されていて、前記導体パターン62b,64によって第2コイル素子L1bが構成されている。また、前記導体パターン65,67aによって第3コイル素子L2aが構成されていて、前記導体パターン66,67bによって第4コイル素子L2bが構成されている。
前記各種導体パターン61〜68には、銀や銅などの導電性材料を主成分として形成することができる。基材層51a〜51gには、誘電体であればガラスセラミック材料、エポキシ系樹脂材料などを用いることができ、磁性体であればフェライトセラミック材料やフェライトを含有する樹脂材料などを用いることができる。基材層用の材料としては、特に、UHF帯用のインピーダンス変換回路を形成する場合は誘電体材料を用いることが好ましく、HF帯用のインピーダンス変換回路を形成する場合は磁性体材料を用いることが好ましい。
前記基材層51a〜51gを積層することで、導体パターン61〜68および端子41,42,43は層間接続導体(ビア導体)を介して接続され、図4に示す回路を構成する。
図7に示すように、第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bは、それぞれのコイルパターンの巻回軸が互いに平行になるように隣接配置されている。同様に第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bは、それぞれのコイルパターンの巻回軸が互いに平行になるように隣接配置されている。さらに、第1コイル素子L1aと第3コイル素子L2aは、それぞれのコイルパターンの巻回軸がほぼ同一直線になるように(同軸関係に)近接配置されている。同様に、第2コイル素子L1bと第4コイル素子L2bは、それぞれのコイルパターンの巻回軸がほぼ同一直線になるように(同軸関係に)近接配置されている。すなわち、基材層の積層方向からみたとき、各コイルパターンを構成する導体パターンは重なるように配置されている。
なお、各コイル素子L1a,L1b,L2a,L2bはそれぞれほぼ2ターンのループ状導体にて構成されているが、ターン数はこれに限らない。また、第1コイル素子L1aおよび第3コイル素子L2aのコイルパターンの巻回軸は厳密に同一直線になるように配置されている必要はなく、平面視で第1コイル素子L1aおよび第3コイル素子L2aのコイル開口が互いに重なるように巻回されていればよい。同様に、第2コイル素子L1bおよび第4コイル素子L2bのコイルパターンは巻回軸が厳密に同一直線になるように配置されている必要はなく、平面視で第2コイル素子L1bおよび第4コイル素子L2bのコイル開口が互いに重なるように巻回されていればよい。
以上のごとく、各コイル素子L1a,L1b,L2a,L2bを誘電体や磁性体の積層体40に内蔵し、一体化すること、特に、コイル素子L1a,L1bによる第1インダクタンス素子L1とコイル素子L2a,L2bによる第2インダクタンス素子L2との結合部となる領域を積層体40の内部に設けることによって、インピーダンス変換回路35を構成する素子の素子値、さらには第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2との結合度が、積層体40に隣接して配置される他の電子素子からの影響を受けにくくなる。その結果、周波数特性の一層の安定化を図ることができる。
ところで、前記積層体40を搭載するプリント配線基板(図示せず)には各種の配線が設けられており、これらの配線とインピーダンス変換回路35とが干渉するおそれがある。本実施例のように、積層体40の底部にグランド導体68を導体パターン61〜67によって形成されるコイルパターンの開口を覆うように設けることにより、コイルパターンにて生じる磁界がプリント配線基板上の各種配線からの磁界に影響されにくくなる。換言すれば、各コイル素子L1a,L1b,L2a,L2bのインダクタンス値にばらつきが生じにくくなる。
図8は前記インピーダンス変換回路35の動作原理を示す図である。図8に示すように、給電端子41から入力された高周波信号電流が、矢印a,bに示すように流れると、第1コイル素子L1a(導体パターン62a,63)に矢印c,dで示すように導かれ、さらに、第2コイル素子L1b(導体パターン62b,64)に矢印e,fで示すように導かれる。第1コイル素子L1a(導体パターン62a,63)と第3コイル素子L2a(導体パターン65,67a)とは互いに並走しているので、相互の誘導結合および電界結合により、第3コイル素子L2a(導体パターン65,67a)に矢印g,hに示す高周波信号電流が誘導される。
同様に、第2コイル素子L1b(導体パターン62b,64)と第4コイル素子L2b(導体パターン66,67b)とは互いに並走しているので、相互の誘導結合および電界結合により、第4コイル素子L2b(導体パターン66,67b)に矢印i,jに示す高周波信号電流が誘導される。
その結果、アンテナ端子43には矢印kで示す高周波信号電流が流れ、グランド端子42には矢印lで示す高周波信号電流が流れる。なお、給電端子41に流れる電流(矢印a)が逆向きであれば、他の電流の向きも逆になる。
ここで、第1コイル素子L1aの導体パターン63と第3コイル素子L2aの導体パターン65とが対向しているので、両者間に電界結合が発生し、この電界結合によって流れる電流は、前記誘導電流と同じ方向に流れる。すなわち、磁界結合と電界結合とで結合度を強めている。同様に第2コイル素子L1bの導体パターン64と第4コイル素子L2bの導体パターン66とでも磁界結合と電界結合が生じる。
第1コイル素子L1aおよび第2コイル素子L1bは互いに同相で結合し、第3コイル素子L2aおよび第4コイル素子L2bは互いに同相で結合し、それぞれ閉磁路を形成している。そのため、前記二つの磁束C,Dが閉じ込められて、第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとの間、並びに第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとの間のエネルギーの損失を小さくすることができる。なお、第1コイル素子L1aおよび第2コイル素子L1bのインダクタンス値、第3コイル素子L2aおよび第4コイル素子L2bのインダクタンス値を実質的に同じ素子値にすると、閉磁路の漏れ磁界が少なくなり、エネルギーの損失をより小さくすることができる。もちろん、各コイル素子の素子値を適宜設計して、インピーダンス変換比をコントロールすることができる。
また、グランド導体68を介して、キャパシタCag,Cbgにより第3コイル素子L2aおよび第4コイル素子L2bが電界結合するので、この電界結合により流れる電流がL2a,L2b間の結合度をより強めている。もし、上側にもグランドがあれば、このキャパシタCag,Cbgにより第1コイル素子L1aおよび第2コイル素子L1b間に電界結合を発生させることでL1a,L1b間の結合度をより強めることができる。
また、第1インダクタンス素子L1に流れる一次電流によって励起される磁束Cと、第2インダクタンス素子L2に流れる二次電流によって励起される磁束Dは、誘導電流によって互いの磁束をしりぞけ合うように(反発しあうように)生じる。その結果、第1コイル素子L1aおよび第2コイル素子L1bに生じる磁界と第3コイル素子L2aおよび第4コイル素子L2bに生じる磁界とが、それぞれ狭空間に閉じ込められるので、第1コイル素子L1aおよび第3コイル素子L2a、並びに第2コイル素子L1bおよび第4コイル素子L2bは、それぞれより高い結合度で結合する。すなわち、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2とは高い結合度で結合する。
《第4の実施形態》
図9は第4の実施形態のアンテナ装置の回路図である。ここで用いられているインピーダンス変換回路34は、第1インダクタンス素子L1と二つの第2インダクタンス素子L21,L22を備えたものである。第2インダクタンス素子L22を構成する第5コイル素子L2cと第6コイル素子L2dとは互いに同相で結合している。第5コイル素子L2cは第1コイル素子L1aと逆相で結合していて、第6コイル素子L2dは第2コイル素子L1bと逆相で結合している。第5コイル素子L2cの一端は放射素子11に接続され、第6コイル素子L2dの一端はグランドに接続されている。
図10は前記インピーダンス変換回路34を構成する積層体40の分解斜視図である。この例は、第3の実施形態で図7に示した積層体40の上に、さらに第5コイル素子L2cおよび第6コイル素子L2dを構成する導体71,72,73を形成した基材層51i,51jを積層したものである。すなわち、前述した第1〜第4コイル素子と同様、第5および第6コイル素子をそれぞれ構成し、これらの第5および第6コイル素子L2c,L2dをコイルパターンの導体で構成し、且つ、第5および第6コイル素子L2c,L2dに生じる磁束が閉磁路を形成するように第5および第6コイル素子L2c,L2dを巻回している。
この第4の実施形態のインピーダンス変換回路34の動作原理は前記第1〜第3の実施形態と基本的には同様である。この第4の実施形態においては、第1インダクタンス素子L1を二つの第2インダクタンス素子L21,L22で挟み込むように配置することによって、第1インダクタンス素子L1とグランドとの間に生じる浮遊容量が抑制される。このような放射に寄与しない容量成分が抑制されることによって、アンテナの放射効率を高めることができる。
また、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L21,L22とがより密結合し、つまり、漏れ磁界が少なくなり、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L21,L22との間の高周波信号のエネルギー伝達ロスが少なくなる。
《第5の実施形態》
図11(A)は第5の実施形態のインピーダンス変換回路135の斜視図、図11(B)はそれを下面側から見た斜視図である。また、図12はインピーダンス変換回路135を構成する積層体40の分解斜視図である。
この積層体140は誘電体または磁性体からなる複数の基材層を積層したもので、その裏面には給電回路30に接続される給電端子141、グランドに接続されるグランド端子142、アンテナ素子11に接続されるアンテナ端子143が設けられている。裏面には、それ以外に、実装のために用いられるNC端子144も設けられている。なお、積層体140の表面に、必要に応じてインピーダンス整合用のインダクタやキャパシタを搭載してもよい。また、積層体140内に電極パターンでインダクタやキャパシタを形成してもよい。
前記積層体140に内蔵されたインピーダンス変換回路135は、図12に表れているように、1層目の基材層151aに前記各種端子141,142,143,144が形成され、2層目の基材層151bに第1および第3コイル素子L1a,L2aとなる導体パターン161,163が形成され、3層目の基材層151cに第2および第4コイル素子L1b,L2bとなる導体パターン162,164が形成されている。
導体パターン161〜164としては、銀や銅などの導電性材料を主成分とするペーストのスクリーン印刷や、金属箔のエッチングなどで形成することができる。基材層151a〜151cとしては、誘電体であればガラスセラミック材料、エポキシ系樹脂材料などを用いることができ、磁性体であればフェライトセラミック材料やフェライトを含有する樹脂材料などを用いることができる。
前記基材層151a〜151cを積層することで、それぞれの導体パターン161〜164および端子141,142,143は層間接続導体(ビアホール導体)を介して接続され、前述した図3(A)に示す等価回路を構成する。すなわち、給電端子141はビアホール導体パターン165aを介して導体パターン161(第1コイル素子L1a)の一端に接続され、導体パターン161の他端はビアホール導体165bを介して導体パターン162(第2コイル素子L1b)の一端に接続される。導体パターン162の他端はビアホール導体165cを介してグランド端子142に接続され、分岐した導体パターン164(第4コイル素子L2b)の他端はビアホール導体165dを介して導体パターン163(第3コイル素子L2a)の一端に接続される。導体パターン163の他端はビアホール導体165eを介してアンテナ端子143に接続される。
以上のごとく、コイル素子L1a,L1b,L2a,L2bを誘電体や磁性体からなる積層体140に内蔵すること、特に、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2との結合部となる領域を積層体140の内部に設けることによって、インピーダンス変換回路135が積層体140に隣接して配置される他の回路や素子からの影響を受けにくくなる。その結果、周波数特性の一層の安定化を図ることができる。
また、第1コイル素子L1aと第3コイル素子L2aとを積層体140の同じ層(基材層151b)に設け、第2コイル素子L1bと第4コイル素子L2bとを積層体140の同じ層(基材層151c)に設けることにより、積層体140(インピーダンス変換回路135)の厚みが薄くなる。さらに、互いに結合する第1コイル素子L1aと第3コイル素子L2aおよび第2コイル素子L1bと第4コイル素子L2bを、それぞれ同一工程(例えば、導電性ペーストの塗布)で形成できるため、積層ずれなどに起因する結合度のばらつきが抑制され、信頼性が向上する。
《第6の実施形態》
図13は第6の実施形態のアンテナ装置106の回路図、図13(B)はその等価回路図である。
図13(A)に示すように、アンテナ装置106は、アンテナ素子11と、このアンテナ素子11に接続されたインピーダンス変換回路25とを備えている。アンテナ素子11はモノポール型アンテナであり、このアンテナ素子11の給電端にインピーダンス変換回路25が接続されている。インピーダンス変換回路25は(厳密に言うと、インピーダンス変換回路25のうち第1インダクタンス素子L1は)アンテナ素子11と給電回路30との間に挿入されている。給電回路30は高周波信号をアンテナ素子11に給電するための給電回路であり、高周波信号の生成や処理を行うが、高周波信号の合波や分波を行う回路を含んでいてもよい。
インピーダンス変換回路25は、給電回路30に接続された第1インダクタンス素子L1と、第1インダクタンス素子L1に結合した第2インダクタンス素子L2とを備えている。より具体的には、第1インダクタンス素子L1の第1端は給電回路30に、第2端はアンテナにそれぞれ接続されていて、第2インダクタンス素子L2の第1端はアンテナ素子11に、第2端はグランドにそれぞれ接続されている。
そして、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2とは密結合している。このことにより擬似的に負のインダクタンス成分が生じている。そして、この負のインダクタンス成分によって、アンテナ素子11自身が持つインダクタンス成分を打ち消すことにより、アンテナ素子11のインダクタンス成分が見かけ上小さくされている。すなわち、アンテナ素子11の実効的な誘導性リアクタンス成分が小さくなるため、アンテナ素子11は高周波信号の周波数に依存しにくくなる。
このインピーダンス変換回路25は、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2とを相互インダクタンスMを介して密結合したトランス型回路を含む。このトランス型回路は、図13(B)に示すように、三つのインダクタンス素子Z1,Z2,Z3によるT型回路に等価変換できる。すなわち、このT型回路は、給電回路に接続される第1ポートP1、アンテナ素子11に接続される第2ポートP2、グランドに接続される第3ポートP3、第1ポートP1と分岐点Aとの間に接続された第1インダクタンス素子Z1、第2ポートP2と分岐点Aとの間に接続された第2インダクタンス素子Z2、および第3ポートP3と分岐点Aとの間に接続された第3インダクタンス素子Z3で構成される。
図13(A)に示した第1インダクタンス素子L1のインダクタンスをL1、第2インダクタンス素子L2のインダクタンスをL2、相互インダクタンスをMで表すと、図13(B)の第1インダクタンス素子Z1のインダクタンスは、L1+M、第2インダクタンス素子Z2のインダクタンスは−M、第3インダクタンス素子Z3のインダクタンスはL2+Mである。すなわち、第2インダクタンス素子Z2のインダクタンスは、L1,L2の値に関わらず負の値である。すなわち、ここに擬似的な負のインダクタンス成分が形成されている。
一方、アンテナ素子11は図13(B)に表れているように、等価的にインダクタンス成分LANT、放射抵抗成分Rr、および、キャパシタンス成分CANTで構成される。このアンテナ素子11単体のインダクタンス成分LANTは、インピーダンス変換回路25における前記負のインダクタンス成分(−M)によって打ち消されるように作用する。すなわち、インピーダンス変換回路のA点からアンテナ素子11側を見た(第2インダクタンス素子Z2を含めたアンテナ素子11の)インダクタンス成分は小さく(理想的にはゼロにすることが)なり、その結果、このアンテナ装置106のインピーダンス周波数特性が小さくなる。
このように負のインダクタンス成分を生じさせるためには、第1インダクタンス素子と第2インダクタンス素子とを高い結合度で結合させることが重要である。具体的には、インダクタンス素子の素子値によもよるが、この結合度は0.5以上、さらには0.7以上あることが好ましい。すなわち、このような構成であれば、第1の実施形態における結合度のような極めて高い結合度が必ずしも要求されるわけではない。
《第7の実施形態》
図14(A)は第7の実施形態のアンテナ装置107の回路図、図14(B)はその各コイル素子の具体的な配置を示す図である。
第7の実施形態の基本構成は第6の実施形態と同様であるが、第1インダクタンス素子と第2インダクタンス素子とを極めて高い結合度で結合(密結合)させるための、より具体的な構成を示すものである。
図14(A)に表れているように、第1インダクタンス素子L1は第1コイル素子L1aおよび第2コイル素子L1bで構成されていて、これらのコイル素子は互いに直列的に接続され、且つ閉磁路が構成されるように巻回されている。また、第2インダクタンス素子L2は第3コイル素子L2aおよび第4コイル素子L2bで構成されていて、これらのコイル素子は互いに直列的に接続され、且つ閉磁路を構成するように巻回されている。換言すると、第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとは逆相で結合(加極性結合)し、第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとは逆相で結合(加極性結合)する。
さらに、第1コイル素子L1aと第3コイル素子L2aとは同相で結合(減極性結合)するとともに、第2コイル素子L1bと第4コイル素子L2bとは同相で結合(減極性結合)することが好ましい。
図15(A)は図14(B)に示した等価回路を基にしてインピーダンス変換回路のトランス比を示す図である。また、図15(B)は、図14(B)に示した回路に磁界結合と電界結合の様子を示す各種矢印を書き入れた図である。
図15(B)に示すように、給電回路から図中矢印a方向に電流が供給されたとき、第1コイル素子L1aに図中矢印b方向に電流が流れるとともに、コイル素子L1bには図中矢印c方向に電流が流れる。そして、これらの電流により、図中矢印Aで示される磁束(閉磁路を通る磁束)が形成される。
コイル素子L1aとコイル素子L2aは互いに並走しているので、コイル素子L1aに電流bが流れて生じる磁界がコイル素子L2aに結合して、コイル素子L2aに誘導電流dが逆方向に流れる。同様に、コイル素子L1bとコイル素子L2bは互いに並走しているので、コイル素子L1bに電流cが流れて生じる磁界がコイル素子L2bに結合して、コイル素子L2bに誘導電流eが逆方向に流れる。そして、これらの電流により、図中矢印Bで示されるように、閉磁路を通る磁束が形成される。
コイル素子L1a,L1bによる第1インダクタンス素子L1に生じる磁束Aの閉磁路と、コイル素子L1b,L2bによる第2インダクタンス素子L2に生じる磁束Bの閉磁路とは独立しているので、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2との間には等価的な磁気障壁MWが生じることになる。
また、コイル素子L1aとコイル素子L2aとは電界によっても結合されている。同様に、コイル素子L1bとコイル素子L2bとは電界によっても結合されている。したがって、コイル素子L1aおよびコイル素子L1bに交流信号が流れるとき、コイル素子L2aおよびコイル素子L2bには電界結合により電流が励起される。図4中のキャパシタCa,Cbは前記電界結合のための結合容量を表象的に表した記号である。
第1インダクタンス素子L1に交流電流が流れるとき、前記磁界を介した結合により第2インダクタンス素子L2に流れる電流の向きと、前記電界を介した結合により第2インダクタンス素子L2に流れる電流の向きとは同じである。したがって、第1インダクタンス素子L1と第2インダクタンス素子L2とは磁界と電界の両方で強く結合することになる。
インピーダンス変換回路25は、第1インダクタンス素子L1に交流電流が流れるとき、磁界を介した結合により第2インダクタンス素子L2に流れる電流の向きと、電界を介した結合により第2インダクタンス素子L2に流れる電流の向きとが同じになるよう構成された回路であると言うこともできる。
このインピーダンス変換回路25を等価変換すると、図15(A)の回路のように表わすことができる。すなわち、給電回路とグランドとの間の合成インダクタンス成分は、図中一点鎖線で示すように、L1+M+L2+M=L1+L2+2Mとなり、アンテナ素子とグランドとの間の合成インダクタンス成分は、図中二点鎖線で示すように、L2+M−M=L2となる。すなわち、このインピーダンス変換回路におけるトランス比はL1+L2+2M:L2となり、トランス比の大きなインピーダンス変換回路を構成できる。
図16は、マルチバンドに対応させたアンテナ装置107の回路図である。このアンテナ装置107は、GSM(登録商標)方式やCDMA方式に対応可能なマルチバンド対応型移動体無線通信システム(800MHz帯、900MHz帯、1800MHz帯、1900MHz帯)に用いられるアンテナ装置である。アンテナ素子11は分岐モノポール型アンテナである。
このアンテナ装置102は通信端末装置のメインアンテナとして利用される。分岐モノポール型のアンテナ素子11の第1放射部は主にハイバンド側(1800〜2400MHz帯)のアンテナ放射素子として作用し、第1放射部と第2放射部の両者で主にローバンド側(800〜900MHz帯)のアンテナ素子として作用する。ここで、分岐モノポール型のアンテナ素子11は、それぞれの対応周波数帯で共振する必要はない。なぜなら、インピーダンス変換回路25が、各放射部のもつ特性インピーダンスを給電回路30のインピーダンスにマッチングさせているからである。インピーダンス変換回路25は、例えば、800〜900MHz帯で、第2放射部のもつ特性インピーダンスを給電回路30のインピーダンス(通常は50Ω)にマッチングさせている。これにより、給電回路30から供給されたローバンドの高周波信号を第2放射部から放射させ、または、第2放射部で受信したローバンドの高周波信号を給電回路30に供給することができる。同様に、給電回路30から供給されたハイバンドの高周波信号を第1放射部から放射させ、または、第1放射部で受信したハイバンドの高周波信号を給電回路30に供給することができる。
《第8の実施形態》
図17は第8の実施形態に係るインピーダンス変換回路25を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図17に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
図17に示した範囲で基材層51aの裏面に導体パターン73が形成され、基材層51bの裏面に導体パターン72,74が形成され、基材層51cの裏面に導体パターン71,75が形成されている。基材層51dの裏面に導体パターン63が形成され、基材層51eの裏面に導体パターン62,64が形成され、基材層51fの裏面に導体パターン61,65が形成されている。基材層51gの裏面に導体パターン66が形成され、基材層51hの裏面には給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43が形成されている。図17中の縦方向に延びる破線はビア電極であり、導体パターン同士を層間で接続する。これらのビア電極は実際には所定の径寸法を有する円柱形の電極であるが、ここでは単純な破線で表している。
図17において、導体パターン63の右半分と導体パターン61,62によって第1コイル素子L1aを構成している。また、導体パターン63の左半分と導体パターン64,65によって第2コイル素子L1bを構成している。また、導体パターン73の右半分と導体パターン71,72によって第3コイル素子L2aを構成している。また、導体パターン73の左半分と導体パターン74,75によって第4コイル素子L2bを構成している。各コイル素子L1a,L1b,L2a,L2bの巻回軸は多層基板の積層方向に向いている。そして、第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bの巻回軸は異なる関係で並置されている。同様に、第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bは、それぞれの巻回軸が異なる関係で並置されている。そして、第1コイル素子L1aと第3コイル素子L2aのそれぞれの巻回範囲が平面視で少なくとも一部で重なり、第2コイル素子L1bと第4コイル素子L2bのそれぞれの巻回範囲が平面視で少なくとも一部で重なる。この例ではほぼ完全に重なる。このようにして8の字構造の導体パターンで4つコイル素子を構成している。
なお、各層は誘電体シートで構成されていてもよい。但し、比透磁率の高い磁性体シートを用いれば、コイル素子間の結合係数をより高めることができる。
図18は、図17に示した多層基板の各層に形成された導体パターンによるコイル素子を通る主な磁束を示している。磁束FP12は導体パターン61〜63による第1コイル素子L1aおよび導体パターン63〜65による第2コイル素子L1bを通る。また、磁束FP34は導体パターン71〜73による第3コイル素子L2aおよび導体パターン73〜75による第4コイル素子L2bを通る。
図19は第8の実施形態に係るインピーダンス変換回路25の4つコイル素子L1a,L1b,L2a,L2bの磁気的結合の関係を示す図である。このように、第1コイル素子L1aおよび第2コイル素子L1bは、この第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとによって第1の閉磁路(磁束FP12で示すループ)が構成されるように巻回されていて、第3コイル素子L2aおよび第4コイル素子L2bは、第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとによって第2の閉磁路(磁束FP34で示すループ)が構成されるように巻回されている。このように、第1の閉磁路を通る磁束FP12と第2の閉磁路を通る磁束FP34とが互いに逆方向になるように4つコイル素子L1a,L1b,L2a,L2bが巻回されている。図19中の二点鎖線の直線はこの2つの磁束FP12とFP34とが結合しない磁気障壁を表している。このようにコイル素子L1aとL2aの間、およびL1bとL2bの間に磁気障壁が生じる。
《第9の実施形態》
図20は第9の実施形態に係るインピーダンス変換回路の構成を示す図であり、このインピーダンス変換回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層の導体パターンは図20に示す向きでは裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
図20に示した範囲で基材層51aの裏面に導体パターン73が形成され、基材層51bの裏面に導体パターン72,74が形成され、基材層51cの裏面に導体パターン71,75が形成されている。基材層51dの裏面に導体パターン63が形成され、基材層51eの裏面に導体パターン62,64が形成され、基材層51fの裏面に導体パターン61,65が形成されている。基材層51gの裏面に導体パターン66が形成され、基材層51hの裏面には給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43が形成されている。図20中の縦方向に延びる破線はビア電極であり、導体パターン同士を層間で接続する。これらのビア電極は実際には所定の径寸法を有する円柱形の電極であるが、ここでは単純な破線で表している。
図20において、導体パターン63の右半分と導体パターン61,62によって第1コイル素子L1aを構成している。また、導体パターン63の左半分と導体パターン64,65によって第2コイル素子L1bを構成している。また、導体パターン73の右半分と導体パターン71,72によって第3コイル素子L2aを構成している。また、導体パターン73の左半分と導体パターン74,75によって第4コイル素子L2bを構成している。
図21は、図20に示した多層基板の各層に形成された導体パターンによるコイル素子を通る主な磁束を示す図である。また、図22は第9の実施形態に係るインピーダンス変換回路の4つのコイル素子L1a,L1b,L2a,L2bの磁気的結合の関係を示す図である。磁束FP12で示すように、第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとによる閉磁路が構成され、磁束FP34で示すように、第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとによる閉磁路が構成される。また、磁束FP13で示すように、第1コイル素子L1aと第3コイル素子L2aとによる閉磁路が構成され、磁束FP24で示すように、第2コイル素子L1bと第4コイル素子L2bとによる閉磁路が構成される。さらに、4つのコイル素子L1a,L1b,L2a,L2bによる閉磁路FPallも構成される。
この第9の実施形態の構成によっても、コイル素子L1aとL1b、L2aとL2bのインダクタンス値はそれぞれの結合により小さくなるため、第9の実施形態で示したインピーダンス変換回路も第7の実施形態のインピーダンス変換回路25と同様の効果を奏する。
《第10の実施形態》
図23は、多層基板に構成された第10の実施形態に係るインピーダンス変換回路の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図23に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
図23に示した範囲で基材層51aの裏面に導体パターン73が形成され、基材層51bの裏面に導体パターン72,74が形成され、基材層51cの裏面に導体パターン71,75が形成されている。基材層51dの裏面に導体パターン61,65が形成され、基材層51eの裏面に導体パターン62,64が形成され、基材層51fの裏面に導体パターン63が形成されている。基材層51gの裏面には給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43が形成されている。図23中の縦方向に延びる破線はビア電極であり、導体パターン同士を層間で接続する。これらのビア電極は実際には所定の径寸法を有する円柱形の電極であるが、ここでは単純な破線で表している。
図23において、導体パターン63の右半分と導体パターン61,62によって第1コイル素子L1aを構成している。また、導体パターン63の左半分と導体パターン64,65によって第2コイル素子L1bを構成している。また、導体パターン73の右半分と導体パターン71,72によって第3コイル素子L2aを構成している。また、導体パターン73の左半分と導体パターン74,75によって第4コイル素子L2bを構成している。
図24は第10の実施形態に係るインピーダンス変換回路の4つコイル素子L1a,L1b,L2a,L2bの磁気的結合の関係を示す図である。このように、第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとによって第1の閉磁路(磁束FP12で示すループ)が構成される。また、第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとによって第2の閉磁路(磁束FP34で示すループ)が構成される。第1の閉磁路を通る磁束FP12と第2の閉磁路を通る磁束FP34の向きは互いに逆方向である。
ここで、第1コイル素子L1aおよび第2コイル素子L1bを「1次側」、第3コイル素子L2aおよび第4コイル素子L2bを「2次側」と表すと、図24に示すように、1次側のうちの2次側に近い方に給電回路がつながるので、1次側のうちの2次側近傍の電位を高くすることができ、コイル素子L1aとコイル素子L2aとの間での電界結合が高まり、この電界結合による電流が大きくなる。
この第10の実施形態の構成によっても、コイル素子L1aとL1b、L2aとL2bのインダクタンス値はそれぞれの結合により小さくなるため、この第10の実施形態で示したインピーダンス変換回路も第7の実施形態のインピーダンス変換回路25と同様の効果を奏する。
《第11の実施形態》
図25は第11の実施形態に係るインピーダンス変換回路の回路図である。このインピーダンス変換回路は、給電回路30とアンテナ素子11との間に接続された第1の直列回路26、給電回路30とアンテナ素子11との間に接続された第3の直列回路28、およびアンテナ素子11とグランドとの間に接続された第2の直列回路27とで構成されている。
第1の直列回路26は第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとが直列に接続された回路である。第2の直列回路27は第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとが直列に接続された回路である。第3の直列回路28は第5コイル素子L1cと第6コイル素子L1dとが直列に接続された回路である。
図25において、囲みM12はコイル素子L1aとL1bとの結合、囲みM34はコイル素子L2aとL2bとの結合、囲みM56はコイル素子L1cとL1dとの結合をそれぞれ表している。また、囲みM135はコイル素子L1aとL2aとL1cとの結合を表している。同様に、囲みM246はコイル素子L1bとL2bとL1dとの結合を表している。
この第11の実施形態においては、第2インダクタンス素子を構成するコイル素子L2a,L2bを、第1のインダクタンス素子を構成するコイル素子L1a,L1b,L1c,L1dで挟み込むように配置することによって、第2インダクタンス素子とグランドとの間に生じる浮遊容量が抑制される。このような放射に寄与しない容量成分が抑制されることによって、アンテナの放射効率を高めることができる。
図26は第11の実施形態に係るインピーダンス変換回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図26に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
図26に示した範囲で基材層51aの裏面に導体パターン82が形成され、基材層51bの裏面に導体パターン81,83が形成され、基材層51cの裏面に導体パターン72が形成されている。基材層51dの裏面に導体パターン71,73が形成され、基材層51eの裏面に導体パターン61,63が形成され、基材層51fの裏面に導体パターン62が形成されている。基材層51gの裏面には給電端子41、グランド端子42、アンテナ端子43がそれぞれ形成されている。図26中の縦方向に延びる破線はビア電極であり、導体パターン同士を層間で接続する。これらのビア電極は実際には所定の径寸法を有する円柱形の電極であるが、ここでは単純な破線で表している。
図26において、導体パターン62の右半分と導体パターン61とによって第1コイル素子L1aを構成している。また、導体パターン62の左半分と導体パターン63とによって第2コイル素子L1bを構成している。また、導体パターン71と導体パターン72の右半分とによって第3コイル素子L2aを構成している。また、導体パターン72の左半分と導体パターン73とによって第4コイル素子L2bを構成している。また、導体パターン81と導体パターン82の右半分とによって第5コイル素子L1cを構成している。また、導体パターン82の左半分と導体パターン83とによって第6コイル素子L1dを構成している。
図26において破線の楕円形は閉磁路を表している。閉磁路CM12はコイル素子L1aとL1bとに鎖交する。また、閉磁路CM34はコイル素子L2aとL2bとに鎖交する。さらに、閉磁路CM56はコイル素子L1cとL1dとに鎖交する。このように、第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとによって第1の閉磁路CM12が構成され、第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとによって第2の閉磁路CM34が構成され、第5コイル素子L1cと第6コイル素子L1dとによって第3の閉磁路CM56が構成される。図26において二点鎖線の平面は、前記三つの閉磁路の間にコイル素子L1aとL2a、L2aとL1c、L1bとL2b、L2bとL1dが各々逆向きに磁束が発生するように結合しているために等価的に生じる二つの磁気障壁MWである。換言すると、この二つの磁気障壁MWでコイル素子L1a,L1bによる閉磁路の磁束、コイル素子L2a,L2bによる閉磁路の磁束、およびコイル素子L1c,L1dによる閉磁路の磁束をそれぞれ閉じ込める。
このように、第2の閉磁路CM34が第1の閉磁路CM12および第3の閉磁路CM56で層方向に挟み込まれた構造とする。この構造により、第2の閉磁路CM34は二つの磁気障壁で挟まれて充分に閉じ込められる(閉じ込められる効果が高まる)。すなわち、結合係数の非常に大きなトランスとして作用させることができる。
そのため、前記閉磁路CM12とCM34との間、およびCM34とCM56との間をある程度広くすることができる。ここで、コイル素子L1a,L1bによる直列回路と、コイル素子L1c,L1dによる直列回路とが並列接続された回路を一次側回路と称し、コイル素子L2a,L2bによる直列回路を二次側回路と称すると、前記閉磁路CM12とCM34との間、およびCM34とCM56との間を広くすることによって、第1の直列回路26と第2の直列回路27との間、第2の直列回路27と第3の直列回路28との間のそれぞれに生じるキャパシタンスを小さくできる。すなわち、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のキャパシタンス成分が小さくなる。
また、第11の実施形態によれば、コイル素子L1a,L1bによる第1の直列回路26と、コイル素子L1c,L1dによる第3の直列回路28とが並列接続された構造であるので、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のインダクタンス成分が小さくなる。
このようにして、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のキャパシタンス成分もインダクタンス成分も小さくなって、自己共振点の周波数を使用周波数帯域から充分に離れた高い周波数に定めることができる。
《第12の実施形態》
第12の実施形態では、第11の実施形態とは異なる構成で、トランス部の自己共振点の周波数を第8〜第10の実施形態で示したものより高めるための構成例を示す。
図27は第12の実施形態に係るインピーダンス変換回路の回路図である。このインピーダンス変換回路は、給電回路30とアンテナ素子11との間に接続された第1の直列回路26、給電回路30とアンテナ素子11との間に接続された第3の直列回路28、およびアンテナ素子11とグランドとの間に接続された第2の直列回路27とで構成されている。
第1の直列回路26は第1コイル素子L1aと第2コイル素子L1bとが直列に接続された回路である。第2の直列回路27は第3コイル素子L2aと第4コイル素子L2bとが直列に接続された回路である。第3の直列回路28は第5コイル素子L1cと第6コイル素子L1dとが直列に接続された回路である。
図27において、囲みM12はコイル素子L1aとL1bとの結合、囲みM34はコイル素子L2aとL2bとの結合、囲みM56はコイル素子L1cとL1dとの結合をそれぞれ表している。また、囲みM135はコイル素子L1aとL2aとL1cとの結合を表している。同様に、囲みM246はコイル素子L1bとL2bとL1dとの結合を表している。
図28は第12の実施形態に係るインピーダンス変換回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図28に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
図26に示したインピーダンス変換回路と異なるのは、導体パターン81,82,83によるコイル素子L1c,L1dの極性である。図28の例では、閉磁路CM36はコイル素子L2a,L1c,L1d,L2bに鎖交する。したがって、コイル素子L2a,L2bとL1c,L1dとの間には等価的な磁気障壁が生じない。その他の構成は第11の実施形態で示したとおりである。
第12の実施形態によれば、図28に示した閉磁路CM12,CM34,CM56が生じるとともに閉磁路CM36が生じることにより、コイル素子L2a,L2bによる磁束がコイル素子L1c,L1dによる磁束で吸い込まれる。そのため、第12の実施形態の構造でも磁束が漏れ難く、その結果、結合係数の非常に大きなトランスとして作用させることができる。
第12の実施形態でも、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のキャパシタンス成分もインダクタンス成分も小さくなって、自己共振点の周波数を使用周波数帯域から充分に離れた高い周波数に定めることができる。
《第13の実施形態》
第13の実施形態では、第11の実施形態および第12の実施形態とは異なる構成で、トランス部の自己共振点の周波数を第8〜第10の実施形態で示したものより高めるための別の構成例を示す。
図29は第13の実施形態に係るインピーダンス変換回路の回路図である。このインピーダンス変換回路は、給電回路30とアンテナ素子11との間に接続された第1の直列回路26、給電回路30とアンテナ素子11との間に接続された第3の直列回路28、およびアンテナ素子11とグランドとの間に接続された第2の直列回路27とで構成されている。
図30は第13の実施形態に係るインピーダンス変換回路を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。各層は磁性体シートで構成され、各層の導体パターンは図30に示す向きでは磁性体シートの裏面に形成されているが、各導体パターンは実線で表している。また、線状の導体パターンは所定の線幅を備えているが、ここでは単純な実線で表している。
図26に示したインピーダンス変換回路と異なるのは、導体パターン61,62,63によるコイル素子L1a,L1bの極性、および導体パターン81,82,83によるコイル素子L1c,L1dの極性である。図30の例では、閉磁路CM16はすべてのコイル素子L1a〜L1d,L2a,L2bに鎖交する。したがって、この場合は等価的な磁気障壁は生じない。その他の構成は第11の実施形態および第12の実施形態で示したとおりである。
第13の実施形態によれば、図30に示した閉磁路CM12,CM34,CM56が生じるとともに閉磁路CM16が生じることにより、コイル素子L1a〜L1dによる磁束が漏れ難く、その結果、結合係数の大きなトランスとして作用させることができる。
第13の実施形態でも、自己共振点の周波数を定めるLC共振回路のキャパシタンス成分もインダクタンス成分も小さくなって、自己共振点の周波数を使用周波数帯域から充分に離れた高い周波数に定めることができる。
《第14の実施形態》
第14の実施形態では通信端末装置の例を示す。
図31(A)は第14の実施形態の第1例である通信端末装置、図31(B)は第2例である通信端末装置のそれぞれの構成図である。これらは、例えば携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス(通称:ワンセグ)の高周波信号の受信用(470〜770MHz)の端末である。
図31(A)に示す通信端末装置1は、蓋体部である第1筺体10と本体部である第2筺体20とを備え、第1筺体10は第2筺体20に対して折りたたみ式あるいはスライド式で連結されている。第1筺体10にはグランド板としても機能する第1放射素子11が設けられ、第2筺体20にはグランド板としても機能する第2放射素子21が設けられている。第1および第2放射素子11,21は金属箔などの薄膜あるいは導電性ペーストなどの厚膜からなる導電体膜で形成されている。この第1および第2放射素子11,21は給電回路30から差動給電することでダイポールアンテナとほぼ同等の性能を得ている。給電回路30はRF回路やベースバンド回路のような信号処理回路を有している。
なお、インピーダンス変換回路35のインダクタンス値は、二つの放射素子11,21を結ぶ接続線33のインダクタンス値よりも小さいことが好ましい。周波数特性に関する接続線33のインダクタンス値の影響を小さくすることができるからである。
図31(B)に示す通信端末装置2は、第1放射素子11をアンテナ単体として設けたものである。第1放射素子11はチップアンテナ、板金アンテナ、コイルアンテナなど各種アンテナ素子を用いることができる。また、このアンテナ素子としては、例えば、筺体10の内周面や外周面に沿って設けられた線状導体を利用してもよい。第2放射素子21は第2筺体20のグランド板としても機能するものであり、第1放射素子11と同様に各種のアンテナを用いてもよい。ちなみに、通信端末装置2は、折りたたみ式やスライド式ではないストレート構造の端末である。なお、第2放射素子21は、必ずしも放射体として十分に機能するものでなくてもよく、第1放射素子11がいわゆるモノポールアンテナのように振る舞うものであってもよい。
給電回路30は一端が第2放射素子21に接続され、他端がインピーダンス変換回路35を介して第1放射素子11に接続されている。また、第1および第2放射素子11,21は接続線33によって互いに接続されている。この接続線33は第1および第2筺体10,20のそれぞれに搭載されている電子部品(図示省略)の接続線として機能するもので、高周波信号に対してはインダクタンス素子として振る舞うがアンテナの性能に直接的に作用するものではない。
インピーダンス変換回路35は、給電回路30と第1放射素子11との間に設けられ、第1および第2放射素子11,21から送信される高周波信号、あるいは、第1および第2放射素子11,21にて受信する高周波信号の周波数特性を安定化させる。それゆえ、第1放射素子11や第2放射素子21の形状、第1筺体10や第2筺体20の形状、近接部品の配置状況などに影響されることなく、高周波信号の周波数特性が安定化する。特に、折りたたみ式やスライド式の通信端末装置にあっては、蓋体部である第1筺体10の本体部である第2筺体20に対する開閉状態に応じて、第1および第2放射素子11,21のインピーダンスが変化しやすいが、インピーダンス変換回路35を設けることによって高周波信号の周波数特性を安定化させることができる。すなわち、アンテナの設計に関して重要事項である、中心周波数の設定・通過帯域幅の設定・インピーダンスマッチングの設定などの周波数特性の調整機能をこのインピーダンス変換回路35が担うことが可能になり、アンテナ素子そのものは、主に、指向性や利得を考慮するだけでよいため、アンテナの設計が容易になる。