本発明は、車両の走行中にその車両に対して相対的に生起される風を主として利用して回転する風車を用いて発電するために前記車両に搭載されて使用される車載型風力発電装置であって、前記風車を収容するとともに前記車両の外面に搭載されて使用されるデフレクタを有するものを改良することを課題としてなされたものである。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
[1] 車両の走行中にその車両に対して相対的に生起される風を主として利用して発電するために前記車両に搭載されて使用される車載型風力発電装置であって、
前記車両走行中に前記風が流入する流入口と、
その流入口から流入した前記風を受けて回転する風車と、
その風車の回転によって発電する発電機と、
前記流入口を閉塞する閉状態と開放する開状態とに切り換わることが可能なシャッタと、
そのシャッタを前記閉状態と前記開状態とに選択的に切り換えるアクチュエータと、
そのアクチュエータを電気的に制御し、それにより、前記シャッタの開閉状態を切り換えるコントローラと、
前記車両の外面に搭載され、前記車両の走行中にその車両の外面に沿って流れる空気の流れを制御し、それにより、その車両の空気抵抗を低減させるデフレクタと
を含み、
前記風車は、そのデフレクタの内部に配置されており、
前記シャッタは、前記流入口を前記閉状態と前記開状態とに選択的に切り換えるために前記流入口に配置されており、
そのシャッタは、それぞれが前記車両の横方向に平行に延びる複数の可動ウイングを有しており、
それら複数の可動ウイングは、いずれも前記車両の横方向に平行であるが互いに異なる複数のウイング軸線まわりにそれぞれ回動可能であり、
前記アクチュエータは、前記複数の可動ウイングの各々を正逆両方向に選択的に回動させて前記閉状態と前記開状態とに選択的に切り換える車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、デフレクタがシャッタを有するように構成されるため、デフレクタが、空気がシャッタを通過してデフレクタ内に進入して風車に作用する状態と、空気がシャッタによって遮断されてデフレクタ内への進入も風車への作用も阻止される状態とに切り換えられる。
この風力発電装置に従い、シャッタを、それぞれが車両の横方向に平行に延びる複数の可動ウイングを有する態様として具体化すると、それぞれが車両の上下方向に平行に延びる複数の可動ウイングを有する態様として具体化する場合より、同じ全受風面積を実現するために必要な可動ウイングの数を減少させることが容易となる。
なぜなら、車両においては、一般に、寸法増加に関する制約が車両上下方向寸法の方が車両横方向寸法より厳しく、よって、このような車両においては、車両横方向に延びる領域の方が、車両上下方向に延びる領域より、連続した領域を確保し易く、ひいては、1つの可動ウイング当たりの個別受風面積を拡大し易いからである。
本項において「車両」なる用語は、自動車(乗用車、荷物搬送車両等を含む。)のみならず、他の車両、例えば、鉄道車両を意味する用語として使用される。
また、本項において「風車」は、例えば、車両の横方向に延びる回転軸線を有する形式としたり、車両の前後方向に延びる回転軸線を有する形式としたり、車両の上下方向に延びる回転軸線を有すると形式とすることが可能である。
また、本項において「風車」は、例えば、1台の車両に1基搭載したり、複数基搭載することが可能である。複数基の風車を1台の車両に搭載する場合には、それら風車を車両の前後方向に対して、並列に配置したり、直列に配置することが可能である。
[2] 各ウイング軸線は、対応する可動ウイングに対し、その可動ウイングの受風面積が、対応するウイング軸線より上側の領域と下側の領域との間で実質的に二等分されるように相対的に配置される[1]項に記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置においては、車両が走行しているために各可動ウイングに風が当たっている場合には、その風によって各可動ウイングにそれのウイング軸線まわりにモーメントが発生する可能性がある。さらに、そのようなモーメントが発生すると、前記アクチュエータは、そのようなモーメントに打ち勝たないと、各可動ウイングを所望方向に回動させることができない。
これに対し、本項に係る風力発電装置においては、各可動ウイングの受風面積が、対応するウイング軸線より上側の領域と下側の領域との間で実質的に二等分されるように、各可動ウイングに対するウイング軸線の相対位置関係が設定されている。
したがって、この風力発電装置によれば、車両が走行しているために各可動ウイングに風が当たっている場合であっても、その風によって各可動ウイングのウイング軸線まわりにモーメントが実質的に発生しない。
よって、この風力発電装置によれば、アクチュエータが各可動ウイングを回動させるために出力しなければならないモーメントの大きさが減少し、その結果、アクチュエータの小形化および軽量化が容易となるとともに、アクチュエータによる消費電力の節減も容易となる。
[3] 前記コントローラは、前記シャッタを前記閉状態と前記開状態との一方から他方に切り換えるための信号を前記アクチュエータに出力した場合、その後、前記シャッタが前記閉状態と前記開状態との一方から他方に切り換わることが完了するまでは、別の信号を前記アクチュエータに出力しない[1]または[2]項に記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、アクチュエータへの信号出力に対して不感帯が与えられ、それにより、アクチュエータに出力される信号、ひいては、そのアクチュエータの動作が頻繁に変化することが防止される。
[4] 前記アクチュエータは、そのアクチュエータに電力が供給されない状態で当該アクチュエータの作動状態を保持する自己保持型である[1]ないし[3]項のいずれかに記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、アクチュエータの作動状態を変化させることが必要とならない限り、そのアクチュエータに電力を供給することが不要であるため、そのアクチュエータによる消費電力の節電が容易となる。
(1) 車両の走行中にその車両に対して相対的に生起される風を主として利用して発電するために前記車両に搭載されて使用される車載型風力発電装置であって、
前記車両走行中に前記風が流入する流入口と、
その流入口から流入した前記風を受けて回転する風車と、
その風車の回転によって発電する発電機と、
前記流入口を閉塞する閉状態と開放する開状態とに切り換わることが可能なシャッタと、
そのシャッタを前記閉状態と前記開状態とに選択的に切り換えるアクチュエータと、
前記車両の走行速度を検出する速度センサと、
前記車両の加速度を検出する加速度センサと、
前記速度センサの出力信号と前記加速度センサの出力信号とに基づいて前記アクチュエータを電気的に制御し、それにより、前記シャッタの開閉状態を、前記走行速度と前記加速度との双方に応答して切り換えるコントローラと
を含む車載型風力発電装置。
前掲特許文献1に開示された技術を採用すると、風車に向かう風量が高速走行中に低速走行中より減少する。しかし、風車に当たる風が少なからず存在してしまう。そのため、高速走行中に、風車に向かう空気の流れの存在が原因で、車両全体としての空気抵抗が十分に低減しない可能性がある。
さらに、同文献に開示された技術を採用すると、高速走行中には、車両の加速中であるか減速中であるかを問わず、風車に向かう風量が減少させられる。たしかに、車両加速中には、車両空気抵抗の増加が車両加速性能に悪影響を及ぼすため、風車による発電性能を犠牲にしてでも、風車に向かう風量を減少させることが重要である。
しかし、高速走行中であっても、車両減速中には、車両空気抵抗の増加が車両走行性能に悪影響を及ぼすことはなく、車両空気抵抗の増加はむしろ、車両の減速性能をみかけ上向上させるように寄与する。
したがって、高速走行中であっても、車両減速中には、風車に向かう風量を増加させることが、車両減速性能を向上させる観点からも、風車による発電性能を向上させる観点からも、有効である。
以上説明した知見に基づき、本項に係る風力発電装置は、車両の走行中にその車両に対して相対的に生起される風を主として利用して発電するために前記車両に搭載されて使用される車載型風力発電装置であって、その風力発電装置の作動状態が車両の走行状態との関係において適正化されるものを提供することを課題としてなされたものである。
この風力発電装置によれば、風車の上流側に配置された流入口が、シャッタにより、閉塞された閉状態と、開放された開状態とに選択的に切り換えられる。シャッタは、流入口の閉状態において、風車に向かう風量が実質的に完全に存在しないように、構成することが可能である。
よって、この風力発電装置によれば、シャッタを閉状態に切り換えることにより、風車に向かう風量が実質的に完全に存在しなくなるようにすることが可能となる。したがって、例えば、風車に向かう空気の流れの存在が原因で車両空気抵抗が増加する可能性がある場合に、風車による車両空気抵抗の増加を効果的に抑制することが可能となる。
さらに、この風力発電装置によれば、シャッタの開閉状態が、車両の走行速度のみならず、車両の加速度にも応答するように、切り換えられる。
よって、この風力発電装置によれば、シャッタの開閉状態を、車両の走行速度のみに応答するように切り換える場合に比較して、車両の走行状態の種類に応じてきめ細かく切り換えることが可能となる。
本項において「車両」なる用語は、自動車(乗用車、荷物搬送車両等を含む。)のみならず、他の車両、例えば、鉄道車両を意味する用語として使用される。
また、本項において「シャッタ」は、例えば、少なくとも1個の可動部材を有し、その可動部材を前記流入口に対してスライドさせたり、回転させたり、傾斜させたりして、前記流入口の実効開口面積を変化させるように構成することが可能である。
また、本項において「風車」は、例えば、車両の横方向に延びる回転軸線を有する形式としたり、車両の前後方向に延びる回転軸線を有する形式としたり、車両の上下方向に延びる回転軸線を有すると形式とすることが可能である。
また、本項において「風車」は、例えば、1台の車両に1基搭載したり、複数基搭載することが可能である。複数基の風車を1台の車両に搭載する場合には、それら風車を車両の前後方向に対して、並列に配置したり、直列に配置することが可能である。
また、本明細書において「加速度」は、狭義の加速度(速度が上昇する際の速度変化率)のみならず、狭義の減速度(速度が下降する際の速度変化率)をも意味する用語として使用される。ただし、本明細書において「減速度」は、特に断りがない限り、狭義の減速度のみを意味する用語として使用される。
(2) 前記コントローラは、
(a)前記車両が、前記走行速度が設定速度より大きい高速走行中であり、かつ、加速走行中である場合には、前記シャッタが前記閉状態にあるように前記アクチュエータを電気的に制御し、
(b)前記車両が、前記高速走行中であり、かつ、減速走行中である場合には、前記シャッタが前記開状態にあるように前記アクチュエータを電気的に制御し、
(c)前記車両が、前記走行速度が前記設定速度以下である低速走行中である場合には、前記シャッタが前記開状態にあるように前記アクチュエータを電気的に制御する(1)項に記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、車両が高速走行中である場合に、少なくとも加速走行中には、シャッタが閉状態に切り換えられ、それにより、風が風車に向かうことがシャッタによって阻止される。したがって、少なくとも加速走行中に、風車に向かう空気の流れの存在が原因で車両空気抵抗が増加することが抑制される。
これに対し、車両が高速走行中である場合に、少なくとも減速走行中には、シャッタが開状態に切り換えられ、それにより、風が風車に向かうことが許可される。その結果、風車による発電も許可される。したがって、高速走行中、かつ、少なくとも減速走行中である場合に、風車に向かう空気の流れの存在が原因で車両空気抵抗が増加することによって車両の減速性能が向上するとともに、風車による発電性能も向上する。
(3) 前記コントローラは、
(a)前記車両が、前記走行速度が設定速度より大きい高速走行中であり、かつ、加速走行中または定速走行中である場合には、前記シャッタが前記閉状態にあるように前記アクチュエータを電気的に制御し、
(b)前記車両が、前記高速走行中であり、かつ、減速走行中である場合には、前記シャッタが前記開状態にあるように前記アクチュエータを電気的に制御し、
(c)前記車両が、前記走行速度が前記設定速度以下である低速走行中である場合には、前記シャッタが前記開状態にあるように前記アクチュエータを電気的に制御する(1)項に記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、車両が高速走行中である場合に、加速走行中および定速走行中には、シャッタが閉状態に切り換えられ、それにより、風が風車に向かうことがシャッタによって阻止される。したがって、高速走行中、かつ、加速走行中または定速走行中である場合に、風車に向かう空気の流れの存在が原因で車両空気抵抗が増加することが抑制される。
これに対し、車両が高速走行中である場合に、減速走行中には、シャッタが開状態に切り換えられ、それにより、風が風車に向かうことが許可される。その結果、風車による発電も許可される。したがって、高速走行中、かつ、減速走行中である場合に、風車に向かう空気の流れの存在が原因で車両空気抵抗が増加することによって車両の減速性能が向上するとともに、風車による発電性能も向上する。
(4) 前記加速度センサは、前記加速度の大小に応じてレベルが2状態に変化する信号を出力する加速度スイッチを含む(1)ないし(3)項のいずれかに記載の車載型風力発電装置。
前記(1)ないし(3)項のいずれかにおける「加速度センサ」は、例えば、車両の加速度を実質的な連続値として表す信号を出力する連続値センサとして具体化することが可能である。
これに対し、本項に従い、車両の加速度の大小に応じてレベルが2状態に変化する信号を出力する加速度スイッチとして具体化すると、上記連続値センサとして具体化する場合より、加速度センサの構造単純化およびコスト低減が容易となる。
(5) さらに、前記車両の外面に搭載され、前記車両の走行中にその車両の外面に沿って流れる空気の流れを制御し、それにより、その車両の空気抵抗を低減させるデフレクタを含み、
前記風車は、そのデフレクタの内部に配置されており、
前記シャッタは、前記流入口を前記閉状態と前記開状態とに選択的に切り換えるために前記流入口に配置されている(1)ないし(4)項のいずれかに記載の車載型風力発電装置。
(6) 前記風車は、前記車両の横方向に平行な風車軸線まわりに回転させられる横置き型であり、
その風車は、それぞれが前記風車軸線に沿って延びる複数の受風ブレードを有し、それら受風ブレードは、それら受風ブレードの横断面視において、前記風車軸線まわりに等角度間隔で配置されており、
その風車は、その風車の正面視において、前記風車軸線より上側に位置する上側部分と下側に位置する下側部分とを有し、それら上側部分および下側部分は、それぞれが前記風を受けると、互いに逆向きである2種類のモーメントをそれぞれ前記風車軸線まわりに発生させ、
前記流入口は、前記デフレクタのうち、そのデフレクタの正面視において、前記風車の前記上側部分と前記下側部分とのうちの一方に対向する領域に配置されており、
前記デフレクタのうち、そのデフレクタの正面視において、前記風車の前記上側部分と前記下側部分とのうちの他方に対向する領域は、空気開口を実質的に有しない(5)項に記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、風車が、その風車の正面視において、車両の横方向に延びる風車軸線より上側に位置する上側部分と下側に位置する下側部分とを有する態様であって、かつ、それら上側部分および下側部分は、それぞれが風を受けると、互いに逆向きである2種類のモーメントをそれぞれ風車軸線まわりに発生させる態様である場合に、風車の上側部分と下側部分とが同時に、同じ向きの風を受けずに済む。
風車の上側部分と下側部分とが同時に、同じ向きの風を受けると、互いに逆向きである2種類のモーメントが同時に風車軸線まわりに発生させられる。それら2種類のモーメントは打ち消し合うため、風車軸線まわりに最終的に発生するモーメントが、打ち消し合う前のモーメントより減少してしまう。
これに対し、本項に係る風力発電装置によれば、風車の上側部分と下側部分とのうちの一方しか風を受けないため、それら上側部分と下側部分とが同時に同じ向きの風を受ける場合より、風車軸線まわりに発生するモーメントが増加する。その結果、風力が効果的に利用されて風車が回転させられ、それにより、風車による発電効率が向上する。
(7) 前記デフレクタは、前記シャッタが前記閉状態にあるときに、そのシャッタを有しないデフレクタによって実現される空力特性と実質的に等しい空力特性を実現し、
そのデフレクタは、前記車両の空気抵抗を低減させる効果が、前記シャッタが前記閉状態にあるときに前記開状態にあるときより大きい(5)または(6)項に記載の車載型風力発電装置。
(8) 前記シャッタは、それぞれが前記車両の横方向に平行に延びる複数の可動ウイングを有しており、
それら複数の可動ウイングは、いずれも前記車両の横方向に平行であるが互いに異なる複数のウイング軸線まわりにそれぞれ回動可能であり、
前記アクチュエータは、前記複数の可動ウイングの各々を正逆両方向に選択的に回動させて前記閉状態と前記開状態とに選択的に切り換える(5)ないし(7)項のいずれかに記載の車載型風力発電装置。
前記(5)ないし(7)項のいずれかにおける「シャッタ」は、例えば、それぞれが車両の上下方向に平行に延びる複数の可動ウイングを有する態様として具体化することが可能である。
これに対し、本項に従い、シャッタは、それぞれが車両の横方向に平行に延びる複数の可動ウイングを有する態様として具体化すると、それぞれが車両の上下方向に平行に延びる複数の可動ウイングを有する態様として具体化する場合より、同じ全受風面積を実現するために必要な可動ウイングの数を減少させることが容易となる。
なぜなら、車両においては、一般に、寸法増加に関する制約が車両上下方向寸法の方が車両横方向寸法より厳しく、よって、このような車両においては、車両横方向に延びる領域の方が、車両上下方向に延びる領域より、連続した領域を確保し易く、ひいては、1つの可動ウイング当たりの個別受風面積を拡大し易いからである。
(9) 各ウイング軸線は、対応する可動ウイングに対し、その可動ウイングの受風面積が、対応するウイング軸線より上側の領域と下側の領域との間で実質的に二等分されるように相対的に配置される(8)項に記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置においては、車両が走行しているために各可動ウイングに風が当たっている場合には、その風によって各可動ウイングにそれのウイング軸線まわりにモーメントが発生する可能性がある。さらに、そのようなモーメントが発生すると、前記アクチュエータは、そのようなモーメントに打ち勝たないと、各可動ウイングを所望方向に回動させることができない。
これに対し、本項に係る風力発電装置においては、各可動ウイングの受風面積が、対応するウイング軸線より上側の領域と下側の領域との間で実質的に二等分されるように、各可動ウイングに対するウイング軸線の相対位置関係が設定されている。
したがって、この風力発電装置によれば、車両が走行しているために各可動ウイングに風が当たっている場合であっても、その風によって各可動ウイングのウイング軸線まわりにモーメントが実質的に発生しない。
よって、この風力発電装置によれば、アクチュエータが各可動ウイングを回動させるために出力しなければならないモーメントの大きさが減少し、その結果、アクチュエータの小形化および軽量化が容易となるとともに、アクチュエータによる消費電力の節減も容易となる。
なお付言するに、本項に記載の技術的特徴は、前記(5)ないし(7)項のいずれかにおける「シャッタ」を、それぞれが車両の上下方向に平行に延びる複数の可動ウイングを有する態様として具体化する場合にも適用することが可能である。
(10) 前記風車は、前記複数の受風ブレードがそれらの横断面視においていずれも概してアーチ状を成すサボニウス型である(5)ないし(9)項のいずれかに記載の車載型風力発電装置。
(11) 前記コントローラは、前記シャッタを前記閉状態と前記開状態との一方から他方に切り換えるための信号を前記アクチュエータに出力した場合、その後、前記シャッタが前記閉状態と前記開状態との一方から他方に切り換わることが完了するまでは、別の信号を前記アクチュエータに出力しない(1)ないし(10)項のいずれかに記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、アクチュエータへの信号出力に対して不感帯が与えられ、それにより、アクチュエータに出力される信号、ひいては、そのアクチュエータの動作が頻繁に変化することが防止される。
(12) 前記アクチュエータは、そのアクチュエータに電力が供給されない状態で当該アクチュエータの作動状態を保持する自己保持型である(1)ないし(11)項のいずれかに記載の車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、アクチュエータの作動状態を変化させることが必要とならない限り、そのアクチュエータに電力を供給することが不要であるため、そのアクチュエータによる消費電力の節電が容易となる。
(13) 車両の走行中にその車両に対して相対的に生起される風を主として利用して発電するために前記車両に搭載されて使用される車載型風力発電装置であって、
前記車両走行中に前記風が流入する流入口と、
その流入口から流入した前記風を受けて回転する風車と、
その風車の回転によって発電する発電機と、
前記流入口を閉塞する閉状態と開放する開状態とに切り換わることが可能なシャッタと、
そのシャッタを前記閉状態と前記開状態とに選択的に切り換えるアクチュエータと、
そのアクチュエータを電気的に制御し、それにより、前記シャッタの開閉状態を切り換えるコントローラと、
前記車両の外面に搭載され、前記車両の走行中にその車両の外面に沿って流れる空気の流れを制御し、それにより、その車両の空気抵抗を低減させるデフレクタと
を含み、
前記風車は、そのデフレクタの内部に配置され、前記車両の横方向に平行な風車軸線まわりに回転させられる横置き型であり、
その風車は、それぞれが前記風車軸線に沿って延びる複数の受風ブレードを有し、それら受風ブレードは、それら受風ブレードの横断面視において、前記風車軸線まわりに等角度間隔で配置されており、
その風車は、その風車の正面視において、前記風車軸線より上側に位置する上側部分と下側に位置する下側部分とを有し、それら上側部分および下側部分は、それぞれが前記風を受けると、互いに逆向きである2種類のモーメントをそれぞれ前記風車軸線まわりに発生させ、
前記流入口は、前記デフレクタのうち、そのデフレクタの正面視において、前記風車の前記上側部分と前記下側部分とのうちの一方に対向する領域に配置されており、
前記デフレクタのうち、そのデフレクタの正面視において、前記風車の前記上側部分と前記下側部分とのうちの他方に対向する領域は、空気開口を実質的に有しない車載型風力発電装置。
この風力発電装置によれば、前記(6)項に係る風力発電装置と同じ原理に従い、風車による発電効率が向上する。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に従う風力発電装置10が斜視図で示されている。この風力発電装置10は、車両としてのトラック(以下、「車両」ともいう。)12に搭載されている。そのトラック12は、それの前側において、そのトラック12を運転する運転者が乗車するキャビン14を有する一方、後側において、荷物を収容する荷物室16を有する。
キャビン14のルーフ20の高さは、荷物室16のルーフ22より低いため、キャビン14のルーフ20の上面と荷物室16の前面26との間に段差が存在する。その段差を埋めるように、風力発電装置10がキャビン14のルーフ20上に搭載されている。
風力発電装置10は、デフレクタ30を備えている。デフレクタ30は、よく知られているように、トラック12の走行中にそのトラック12に対して相対的に生起される空気の流れの方向を変え、それにより、トラック12全体としての空気抵抗を低減させる機能を有する。
デフレクタ30は、概して中空箱状を成す本体部32を備えている。その本体部32は、天板部34と前板部36と一対の側板部38,38とを有するように一体的に成形された板状の合成樹脂製品である。この本体部32は、それの下部と後方とにおいて開放されている。デフレクタ30の天板部34の高さは、荷物室16のルーフ22より高い。
図2に正面図で示すように、デフレクタ30の内部に2基の風車40,40と発電機42とが配置されている。各風車40は、トラック12の横方向に延びる風車軸線まわりに回転させられる横置き型のサボニウス型である。
図3に横断面図で示すように、各風車40は、各々概して半円弧状の断面を有する複数の受風ブレード50(本実施形態においては、受風ブレード50の枚数は3枚)が、風車軸線まわりに等角度間隔で配置されている。各風車40は、風車軸線の方向に互いに対向する一対の側板52,52を備えており、それら側板52,52に、複数の受風ブレード50が、それぞれの両端部において固定されている。
図2に示すように、各風車40の両側板52,52から一対の回転シャフト54,54がそれぞれ、互いに逆向きに突出している。一方の回転シャフト54,54は、発電機42の回転シャフト60に同軸に連結されている。発電機42は、減速機(図示しない)を内蔵した形式とすることが可能であり、この場合には、上記減速機によって各風車40の回転速度が増速されて発電機42のロータ(図示しない)に伝達される。本実施形態においては、1つの発電機42が、2つの風車40,40に共通に使用される。
図1に示すように、デフレクタ30の前板部36は、垂直面に対してトラック12の後方に傾斜させられた一平面に沿って延びている。この前板部36に、それの左右に1個ずつ、概して矩形状を成す空気開口部70(図2ないし図4参照)が形成されている。各空気開口部70は、前記(1)項における「流入口」の一例を構成している。
それら空気開口部70,70はそれぞれ、電気的に開閉可能な2つのシャッタ72,72で塞がれている。したがって、各空気開口部70,70は、対応するシャッタ72,72により、閉塞された閉状態と、開放された開状態とに選択的に切り換えられる。
図1には、各シャッタ72が、閉状態で示され、一方、図4には、一方のシャッタ72が、開状態で示されている。左右のシャッタ72,72はそれぞれ、横置きかつ並列の複数の可動ウイング74(本実施形態においては、シャッタ1台当たり、可動ウイング74の枚数は4枚)を備えている。
図2に示すように、2つのシャッタ72,72の背後に2基の風車40,40がそれぞれ位置させられている。図5に側面断面図で示すように、それらシャッタ72,72は、デフレクタ30の前板部36のうちの上側部分80と下側部分82とのうち、キャビン14のルーフ20に近い下側部分82に位置させられている。
上記のように配置されたシャッタ72,72に対し、風車40,40は、各風車40のうちの下側部分90(図3参照)が、対応するシャッタ72の背後に位置する一方、各風車40のうちの上側部分92(図3参照)は、デフレクタ30の前板部36のうちの上側部分80、すなわち、空気開口部70が形成されていない部分に位置させられている。
したがって、図3に示すように、風が、各風車40の下側部分90のみに当たり、その結果、各風車40が、同図において反時計方向(風車40の下側部分90において各受風ブレード50がトラック12の前方から後方に向かって移動する方向)に回転させられる。
各シャッタ72の開状態においては、そのシャッタ72から空気がデフレクタ30の内部に流入して、対応する風車40に当たる。その結果、その風車40が回転する。その風車40を通過した空気は、デフレクタ30の後部から排出される。前述のように、デフレクタ30の天板部34の高さは、荷物室16のルーフ22より高いため、風車40を通過した空気はスムーズにデフレクタ30の後部から流出して荷物室16のルーフ22に沿って流れる。
図5に示すように、デフレクタ30は、本体部32に加えて、デフレクタ30をトラック12のキャビン14のルーフ20の上面に搭載するためのアタッチメント100を備えている。
図5に示すように、そのアタッチメント100は、一対のサイドメンバ102,102と、それらサイドメンバ102,102を互いに連結する複数本のビーム104とを備えている。一対のサイドメンバ102,102は、図5に示すように、キャビン14のルーフ20の左右端部にそれぞれ、複数本のボルトで取り付けられる。複数本のビーム104は、例えば、トラック12の横方向に延びる複数本のパイプとして構成される。
図5に示すように、デフレクタ30は、さらに、架台106を備えている。架台106は、アタッチメント100に取り付けられるとともに、デフレクタ30、風車40,40および発電機42を支持する矩形状のフレームである。この架台106においては、例えば、トラック12の前後方向に延びる複数本のパイプ108と、トラック12の横方向に延びる複数本のパイプ110とが一平面上において互いに連結されている。
図2および図5に示すように、この架台106は、風車40,40および発電機42を支持するための複数本のステー112を備えている。各ステー112は、それの軸方向において2部分に分割されるとともに、それら2部分がゴム等の弾性体114を介して互いに連結されている。これにより、各ステー112は、吸振機能を発揮する。
図5に示すように、デフレクタ30は、さらに、本体部32の天板部34をそれの内側から補強する補強枠120と、その補強枠120の左端部と架台106の左側後端部とを互いに連結する支持棒122と、補強枠120の右端部と架台106の右側後端部とを互いに連結する支持棒124とを備えている。
図5に示すように、デフレクタ30は、さらに、本体部32の一対の側板部38,38の各々につき、下部かつ後部に位置するコーナ部126をそれの裏側から補強する概してL字状を成す補強板130を供えている。各補強板130は、各側板部38のコーナ部126の裏面に固着されるとともに、架台106の左右端部のうち対応するものにボルトによって固定される。
図5に示すように、デフレクタ30は、さらに、本体部32のうち、2つの空気開口部70,70を補強する補強フレーム140を備えている。この補強フレーム140に2つのシャッタ72,72が装着され、さらに、図6に示すように、それらシャッタ72,72を開閉させるために駆動されるアクチュエータ150も補強フレーム140に装着される。図5に示すように、補強フレーム140は、架台106に固定される。
その補強フレーム140は、2つの空気開口部70,70の上方においてトラック12の横方向に延びる横部材152と、2つの空気開口部70,70の下方においてトラック12の横方向に延びる横部材154とを備えている。図6に示すように、それら横部材152,154は、本体部32の前板部36の裏面に沿って延びる左右の縦部材156,156と、中央の縦部材158とによって互いに連結されている。補強フレーム140は左右対称の構造を有している。
図6には、補強フレーム140、シャッタ72およびアクチュエータ150が、本体部32の前板部36の背後から、その前板部36に直角な方向に見た図で示されている。図6には、補強フレーム140の左右対称性を考慮し、補強フレーム140の左部のみが示されている。
以下、2つのシャッタ72,72の構造を説明するが、図6に示されている左側のシャッタ72のみについて代表的に説明する。
この代表的なシャッタ72は、前述のように、トラック12の横方向に延びる4枚の可動ウイング74を備えている。図6には、それら可動ウイング74が閉状態で示されている。図7には、それら可動ウイング74が側面図で示されている。同図には、閉状態にある可動ウイング74が実線で示される一方、開状態にある可動ウイング74が二点鎖線で示されている。
図6に示すように、閉状態にある4枚の可動ウイング74は、互いに隣接する端部同士においてオーバラップしている。このオーバラップにより、閉状態にある4枚の可動ウイング74間に隙間が形成されずに済む。閉状態にある4枚の可動ウイング74は、それらの表面が同一平面を形成するとともに、本体部32の前板部36のうちそれら可動ウイング74の周辺に位置する部分と同一平面上に位置するように、設計されている。
各可動ウイング74は、対応するウイング軸線まわりに一定角度範囲で揺動させられる。4枚の可動ウイング74にそれぞれ対応する4本のウイング軸線は、互いに平行であり、いずれもトラック12の横方向に延びている。
各ウイング軸線は、対応する可動ウイング74の幅方向中心線とほぼ一致する位置に配置されている。この配置により、トラック12の走行中に各可動ウイング74が風を受ける面積が、各可動ウイング74のうち、対応するウイング軸線より上側の部分と下側の部分とで実質的に二等分される。その結果、トラック12の走行中に各可動ウイング74が受ける風が原因でウイング軸線まわりにモーメントが発生することが抑制される。
図6および図7に示すように、4枚の可動ウイング74は、リンク機構160によって互いに連結されている。具体的には、互いに隣接する可動ウイング74同士が、リンクロッド162によって互いに連結されている。各リンクロッド162の往復直線運動が、対応するアーム164により、対応する可動ウイング74の往復揺動運動に変換される。
4枚の可動ウイング74のうち最も下側に位置する可動ウイング74が駆動部材、残りの3枚の可動ウイング74がいずれも被動部材とされている。駆動部材である可動ウイング74は、図6に示すアクチュエータ150によって駆動される。そのアクチュエータ150は、中央の縦部材158の裏面に搭載されている。
図8には、駆動部材である可動ウイング74とアクチュエータ150とが側面図で示されている。図8において、上側は可動ウイング74の裏面側に当たり、下側は可動ウイング74の表面側に当たる。アクチュエータ150は、リニア駆動式であり、ハウジング170と、そのハウジング170から部分的に突出した、進退可能なプランジャ172と、モータ(図示しない)と、運動変換機構(図示しない)とを備えている。ハウジング170は、縦部材158の裏面に、その縦部材158に対して揺動可能に連結されている。
上記モータは、後述のバッテリ184(図9参照)からの電力によって回転する。そのバッテリ184には、発電機42によって発電された電力が蓄積されるため、上記モータは、結局、風力を利用して発電された電力によって回転することになる。
上記運動変換機構は、上記モータの双方向回転運動をプランジャ172の往復直線運動に変換するねじ機構を有する。その運動変換機構は、上記モータへの電力供給が遮断された状態でも、プランジャ172を同じ位置に保持する自己保持機能を有する。
図8に示すように、駆動部材としての可動ウイング74の裏面には、アーム178が固定されており、その可動ウイング74はこのアーム178を介してプランジャ172に連結されている。そのアーム178により、プランジャ172の往復直線運動が、可動ウイング74の、対応するウイング軸線まわりの往復揺動運動に変換される。
以上、風力発電装置10の機械的構成を説明したが、次に、その電気的構成を説明する。
図9には、風車40,40によって発電・充電を行うための電気系統(以下、「発電・充電系統」という。)と、シャッタ72,72を制御するための電気系統(以下、「シャッタ制御系統」という。)とが一緒にブロック図で概念的に表されている。
発電・充電系統においては、風車40,40によって回転させられる前記ロータを有する発電機42に充電コントローラ179が接続されている。その充電コントローラ179は、整流器180および充電回路182を含むように構成されている。この充電コントローラ179にバッテリ184が電気的に接続されている。この発電・充電系統により、風力を利用して発電された電力がバッテリ184に蓄積される。充電コントローラ179およびバッテリ184は、例えば、トラック12のキャビン14内や、エンジン室(図示しない)内に設置される。
これに対し、シャッタ制御系統は、コントローラ190を備えている。そのコントローラ190は、例えば、トラック12のキャビン14内や上記エンジン室内に設置される。このコントローラ190は、コンピュータ200を主体として構成されている。
コンピュータ200は、よく知られているように、CPU202と、必要なプログラムを記憶しているROM204と、RAM206とがバス208によって互いに接続されることによって構成されている。コントローラ190は、さらに、バス208に接続された入出力インタフェース210を備えている。
風力発電装置10は、さらに、各種センサおよびスイッチを備えている。具体的には、風力発電装置10は、風車40,40の回転状態を監視するために、風車40,40の回転数を検出する回転数センサ220を備えている。風力発電装置10は、さらに、車両の走行状態を監視するために、車両の走行速度を検出する車速センサ222と、車両に一定以上の減速度が発生したか否かを検出する減速度スイッチ224とを備えている。
減速度スイッチ224は、例えば、マス(例えば、ボール、水銀)と、そのマスに設定値以上の減速度が作用しない限り、そのマスの移動を阻止する手段(例えば、スプリング、マスが移動すべき斜面)と、マスが初期位置にあるときとその初期位置から移動したときとで電気流通状態が変化する接点とを含むように構成される。
風力発電装置10は、さらに、シャッタ72,72の作動状態を監視するために、それらシャッタ72,72が開状態にあるか閉状態にあるかを検出するシャッタ開閉センサ226を備えている。
風力発電装置10は、さらに、モード選択スイッチ230と、手動開閉スイッチ232と、メインスイッチ234とを備えている。
モード選択スイッチ230は、シャッタ72,72を開閉させるための制御モードとして手動モードか自動モードを選択するためにユーザによって操作される。手動開閉スイッチ232は、ユーザによって手動モードが選択された場合に、シャッタ72,72を開く開指令と閉じる閉指令とを選択的に発令するためにユーザによって操作される。メインスイッチ234は、車両の主電源の投入および切断を選択的に行うために運転者によって操作される。
それら回転数センサ220、車速センサ222、減速度スイッチ224、モード選択スイッチ230、手動開閉スイッチ232、シャッタ開閉センサ226およびメインスイッチ234は、いずれも、入出力インタフェース210に電気的に接続されている。その入出力インタフェース210には、バッテリ184を過充電から保護するために、充電コントローラ179も接続されている。
図10には、ROM204に記憶されている複数のプログラムのうちの一つとしての第1制御プログラムがフローチャートで概念的に表されている。
この第1制御プログラムがコンピュータ200によって実行されると、車速センサ222の出力信号と減速度スイッチ224の出力信号とに基づいてアクチュエータ150が電気的に制御され、それにより、シャッタ72,72の開閉状態が、車速Vと減速度aとの双方に応答して切り換えられる。
具体的には、図11に表で示すように、車両が、車速Vが設定速度V0より大きい高速走行中であり、かつ、加速走行中または定速走行中である場合には、シャッタ72,72が閉状態にあるようにアクチュエータ150が電気的に制御される。
また、車両が、高速走行中であり、かつ、減速走行中である場合には、シャッタ72,72が開状態にあるようにアクチュエータ150が電気的に制御される。
また、車両が、車速Vが設定速度V0以下である低速走行中である場合には、減速度aの大小を問わず、シャッタ72,72が開状態にあるようにアクチュエータ150が電気的に制御される。
したがって、本実施形態においては、結局、車両が、高速走行中であり、かつ、加速走行中である場合には、シャッタ72,72が閉状態にあるようにアクチュエータ150が電気的に制御され、また、車両が、高速走行中であり、かつ、減速走行中である場合には、シャッタ72が開状態にあるようにアクチュエータ150が電気的に制御され、また、車両が、低速走行中である場合には、シャッタ72,72が開状態にあるようにアクチュエータ150が電気的に制御されることになる。
シャッタ72,72が閉状態にあるときには、デフレクタ30の効果、すなわち、車両空気抵抗の低減が最大限に発揮される。したがって、本実施形態においては、高速走行中であり、かつ、減速走行中ではないときには、シャッタ72,72が閉状態にされる結果、風車40,40に向かう空気の流れが生起されることが原因で車両空気抵抗が増加することが回避される。それにより、風車40,40による発電が原因で車両の加速性能が犠牲にならずに済む。
さらに、本実施形態においては、高速走行中であるからといって、風車40,40による発電が画一的に禁止されるのではなく、高速走行中であっても、減速走行中である場合には、シャッタ72,72が開状態にされ、それにより、車両空気抵抗が増加させられるとともに、風車40,40による発電が許可される。したがって、高速走行中であり、かつ、減速走行中である場合には、風車40,40による発電を行いつつ、風車40,40が事実上空力ブレーキとして作用することによって車両が効果的に減速させられる。
ここで、図10を参照することにより、上述の第1制御プログラムを具体的に説明する。
この第1制御プログラムは、運転者によってメインスイッチ234がオンに操作された後、定期的に実行される。各回の実行時には、まず、ステップS1において、モード選択スイッチ230によって選択された制御モードが自動モードであるか否かが判定される。
今回は、手動モードが選択されたと仮定すると、ステップS1の判定がNOとなり、ステップS2において、手動開閉スイッチ232の操作によって閉指令が発令されたか否かが判定される。今回は、閉指令が発令されたと仮定すると、ステップS2の判定がYESとなり、ステップS3に進む。
このステップS3においては、アクチュエータ150に閉信号が出力され、それにより、シャッタ72,72が開状態から閉状態に切り換わるように、アクチュエータ150が駆動される。続いて、ステップS4において、シャッタ開閉センサ226によってシャッタ72,72が閉状態にあることが検出されたか否かが判定される。この判定がYESになるまで、それらステップS3およびS4の実行が反復される。
本実施形態においては、ステップS3の実行が開始されると、ステップS4の判定がYESとなるまで、アクチュエータ150に対して別の信号、すなわち、開信号が出力されずに済み、その結果、アクチュエータ150が閉動作を安定的に行い得る。
ステップS4の判定がYESになると、この第1制御プログラムの一回の実行が終了する。
これに対し、今回は、手動開閉スイッチ232の操作によって開指令が発令されたと仮定すると、ステップS2の判定がNOとなり、ステップS5に進む。
このステップS5においては、アクチュエータ150に開信号が出力され、それにより、シャッタ72,72が閉状態から開状態に切り換わるように、アクチュエータ150が駆動される。続いて、ステップS6において、シャッタ開閉センサ226によってシャッタ72,72が開状態にあることが検出されたか否かが判定される。この判定がYESになるまで、それらステップS5およびS6の実行が反復される。
本実施形態においては、ステップS5の実行が開始されると、ステップS6の判定がYESとなるまで、アクチュエータ150に対して別の信号、すなわち、閉信号が出力されずに済み、その結果、アクチュエータ150が開動作を安定的に行い得る。
車両走行中にシャッタ72,72が開状態に切り換えられると、車両走行中に車両に対して相対的に生起された風がシャッタ72,72を通過して風車40,40に到達する。その風によって風車40,40が回転し、ひいては、その回転によって発電機42が発電を行う。一般に、風車40,40の回転数Nが大きいほど、発電機42の発電量が多い。そのため、風車40,40の回転数Nが上限値N0を超えた後にも、発電機42による発電を許可すると、バッテリ184が過充電によって損傷する可能性がある。
このような事態を回避するために、ステップS7において、回転数センサ220によって検出された風車40,40の回転数Nが上限値N0より大きいか否かが判定される。今回は、回転数Nが上限値N0より大きくはないと仮定すれば、その判定がNOとなり、直ちにこの第1制御プログラムの一回の実行が終了する。
これに対し、今回は、回転数Nが上限値N0より大きいと仮定すれば、ステップS7の判定がYESとなり、ステップS8において、バッテリ184の充電を停止させることを指令する信号が充電コントローラ179に出力される。その結果、発電機42によるバッテリ184の充電が停止させられる。以上で、この第1制御プログラムの一回の実行が終了する。
以上、モード選択スイッチ230の操作によって手動モードが選択された場合についてこの第1制御プログラムを説明したが、自動モードが選択された場合には、ステップS1の判定がYESとなり、ステップS9に進む。
このステップS9においては、車速センサ222によって検出された車速Vが設定車速V0より大きいか否か、すなわち、高速走行中であるか否かが判定される。
今回は、車速Vが設定車速V0より大きくはない、すなわち、低速走行中であると仮定すると、そのステップS9の判定がNOとなり、ステップS5以下のステップが実行される。その実行により、シャッタ72,72が開状態にあるようにされる。その結果、車両走行中に車両に対して相対的に生起された風がシャッタ72,72を通過して風車40,40に到達する。その風によって風車40,40が回転し、ひいては、その回転によって発電機42が発電を行う。
これに対し、今回は、車速Vが設定車速V0より大きい、すなわち、高速走行中であると仮定すると、ステップS9の判定がYESとなり、ステップS10に進む。
このステップS10においては、減速度スイッチ224の出力信号がオフ状態にあるか否か、すなわち、車両が加速走行中または定速走行中にあるか否かが判定される。今回は、減速度スイッチ224の出力信号がオフ状態にはない、すなわち、車両が減速走行中にあると仮定すれば、ステップS10の判定がNOとなり、ステップS9の判定がNOである場合と同様に、ステップS5以下のステップが実行される。
これに対し、今回は、減速度スイッチ224の出力信号がオフ状態にある、すなわち、車両が加速走行中または定速走行中にあると仮定すれば、ステップS10の判定がYESとなり、ステップS3以下のステップが実行される。その実行により、シャッタ72,72が閉状態にあるようにされ、風がシャッタ72,72を通過して風車40,40に到達することが阻止され、その結果、風車40,40による発電が禁止される。
図12には、ROM204に記憶されている第2制御プログラムがフローチャートで概念的に表されている。
この第2制御プログラムも、第1制御プログラムと同様に、運転者によってメインスイッチ234がオンに操作された後、定期的に実行される。各回の実行時には、まず、ステップS101において、メインスイッチ234がオンからオフに操作されたか否かが判定される。今回は、メインスイッチ234がオンに操作されたままであると仮定すると、その判定がNOとなり、直ちにこの第2制御プログラムの一回の実行が終了する。
これに対し、今回は、メインスイッチ234がオンからオフに操作されたと仮定すると、ステップS101の判定がYESとなり、ステップS102において、モード選択スイッチ230の操作によって自動モードが選択されているか否かが判定される。今回は、自動モードが選択されていないと仮定すると、その判定がNOとなり、直ちにこの第2制御プログラムの一回の実行が終了する。
また、今回は、自動モードが選択されていると仮定すると、ステップS102の判定がYESとなり、ステップS103において、アクチュエータ150に閉信号が出力され、それにより、シャッタ72,72が開状態から閉状態に切り換わるように、アクチュエータ150が駆動される。続いて、ステップS104において、シャッタ開閉センサ226によってシャッタ72,72が閉状態にあることが検出されたか否かが判定される。この判定がYESになるまで、それらステップS103およびS104の実行が反復される。
ステップS104の判定がYESとなると、この第2制御プログラムの一回の実行が終了する。
自動モードが選択されている場合には、メインスイッチ234がオンからオフに操作されると、この第2制御プログラムの実行により、シャッタ72,72が閉状態にあることが保証される。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、重複した説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態に従う風力発電装置250も、第1実施形態に従う風力発電装置10と同様に、トラック12のキャビン14のルーフ20上に搭載されるとともに、デフレクタ30内に配置されている。
第1実施形態においては、2基の風車40,40が共に横置きでデフレクタ30内に配置されているが、これに対し、本実施形態においては、図13ないし図15に示すように、2基の風車260,260が、共に、トラック12の前後方向に平行な風車軸線を有する姿勢で、デフレクタ30内に配置されている。それら風車260,260は、トラック12の進行方向に対して並列に並んでいる。それら風車260,260は、起動応答性の改善が容易なプロペラ型である。
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、デフレクタ30の前板部36に、2つの空気開口部70,70が形成され、それら空気開口部70,70がそれぞれ、2つのシャッタ72,72によって塞がれている。各空気開口部70は、対応するシャッタ72により、開状態と閉状態とに切り換えられる。シャッタ72,72を揺動可能に支持する構造およびシャッタ72,72を電気的に作動させる構造は、第1実施形態と共通する。
図13に示すように、各風車260は、トラック12の前後方向に延びる風車軸線まわりに回転可能な回転シャフト262を有する。その回転シャフト262に複数枚の受風ブレード264が固定されている。回転シャフト262は、支持フレーム266により、デフレクタ30内において、回転可能に支持されている。
図14に示すように、本実施形態においては、互いに対応する空気開口部70と風車260との相対位置関係が、各風車260の受風ブレード264の回転軌跡の投影図形(図14において、破線の円で示す。)がすべて、空気開口部70の内側領域に位置し、空気開口部70の外側領域に位置する部分が存在しないように、設定されている。その投影図形の面積が、受風ブレード264の理論受風面積に相当する。
したがって、本実施形態によれば、受風ブレード264が、それの全体において風を有効に受けるように設計すること、すなわち、実効受風面積が理論受風面積に一致するように設計することが容易となる。
図13に示すように、各風車260の回転シャフト262に同軸に発電機270が連結されている。この発電機270も、支持フレーム266によって支持されている。本実施形態においては、2つの風車260,260に個別に発電機270が使用される。
図13および図15に示すように、デフレクタ30内に、2つのダクト280,280が配置されている。それらダクト280,280は、2つの風車260,260にそれぞれ対応している。
各ダクト280は、概して円形断面を有するエルボ形状を成している。各ダクト280は、対応する風車260に対向する空気開口部(吸気口)70の背後から、その風車260を通過して、デフレクタ30の後部に延びている。このように、各ダクト280は、対応する風車260に風を導入するための風路と、その風車260を通過した風を外部に排出するための風路とを有している。
図13および図15に示すように、各ダクト280は、それの下流端部において、デフレクタ30の各側板部38に開口している。各側板部38に、風車280からの風の排出を促進するための排気口282が開口させられており、その排気口282に、各ダクト280の下流端部が結合されている。
本実施形態においては、風車280,280からの排気が、トラック12の上下方向を向くのではなく、横方向を向いている空気開口部を利用して行われる。したがって、雨、雪や異物などが空気開口部に侵入する可能性を軽減することが容易となる。
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。