JP4933091B2 - 表面プラズモン共鳴センサー素子 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、バイオセンサー、光センサー、ガスセンサー、濃度センサー、イオンセンサー等に用いられる表面プラズモン共鳴センサー素子に関するものである。
近年、表面プラズモン共鳴を利用して、バイオセンサー、光センサー、ガスセンサー、濃度センサー、イオンセンサー等の各種センサーが提案されている。
前記表面プラズモン共鳴とは、例えば、ガラスプリズムの一面にナノメートルオーダーの厚さの金属薄膜を形成しておき、該金属薄膜の裏面側から全反射条件にて入射光を照射したときに、該金属薄膜の表面に沿って発生するエバネッセント波が該金属薄膜の反対側に達して、該エバネッセント波と波数が一致する表面プラズモンを共鳴励起する現象である。尚、前記金属薄膜は、所定間隔で均一に分布している金属微粒子からなる金属微粒子状薄膜であってもよく、この場合に金属微粒子の表面に共鳴励起される表面プラズモンは局在表面プラズモンと呼ばれることがある。
前記エバネッセント波の波数は前記入射光の入射角により変化するので、該入射角を調整することにより、前記金属薄膜の反対側で前記表面プラズモンを強制的に共鳴励起させることができる。一方、前記入射光は、前記エバネッセント波が前記表面プラズモンを共鳴励起することによりエネルギーを消費するので、反射光の強度低下(反射率低下)が生じる。前記強度低下が最も強く生じる角度は共鳴角と呼ばれ、前記表面プラズモンの波数と直接的な関係がある。また、共鳴励起される前記表面プラズモンの波数は、前記金属薄膜の該表面プラズモンが励起される表面の特性により変化する。
従って、前記反射光の強度の角度分布から前記共鳴角を求め、該共鳴角の変化を把握することにより、前記金属薄膜表面における物質の特性、変化等を検知することが可能になる。また、前記共鳴角の変化に代えて、反射光の吸収スペクトルの変化、反射強度の変化等を把握することによっても、前記金属薄膜表面における物質の特性、変化等を検知することができる。そして、前記原理を応用することにより前記各種センサーを構成することができる。
従来、前記表面プラズモン共鳴を利用するセンサーとして、光ファイバーの導光コアの先端部を導光方向に沿って先鋭化し、先鋭化された該先端部に金属薄膜を形成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
前記センサーは、前記光ファイバーの導光コアの先端部を導光方向に沿って先鋭化して測定面とすることにより、該測定面と該導光コアによる導光方向との間に、前記表面プラズモン共鳴に必要な所定の光の入射角を設定する。前記センサーでは、光源から照射されたレーザー光等の光線を前記光ファイバーにより、該光ファイバー先端部の先鋭化された測定面に導光すると、入射光は測定対象物質に応じて反射される。そこで、前記測定対象物質に応じて反射された反射光の強度変化を検出することにより、測定対象物質の特性、変化等を測定する。
前記共鳴角の変化を把握して測定対象物質の特性、変化等を測定する方法によれば、入射光の角度を変化させる必要があるため、装置が大型化、高価格化するという問題がある。この点、前記光ファイバーの導光コアの先端部を導光方向に沿って先鋭化して測定面としたセンサーによれば、入射光を導光コアを介して前記測定面に案内すると共に、該測定面で反射された反射光を該導光コアを介して検出器に導き、該反射光の強度変化を検出すればよいので、装置構成が簡略化される。
しかしながら、前記従来のセンサーによれば、前記光ファイバーの導光コアの先端部を導光方向に沿って先鋭化して測定面としているために、該測定に有効な面積が限定され、十分な測定精度を得ることが難しいという不都合がある。
特開2001−165852号公報
本発明は、かかる不都合を解消して、優れた測定精度を備える表面プラズモン共鳴センサー素子を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明の表面プラズモン共鳴センサー素子は、一端から入射された光を他端に導く光ファイバーと、該光ファイバーの途中にコアを露出させて形成されたコア露出部と、該コア露出部に、該コア露出部の一部を溶解して球状化し、該コアの表面に発生したエバネッセント波を閉じ込めて共振させる該コアと一体に形成された微小球と、該微小球を被覆して形成された表面プラズモンを励起可能な金属薄膜とを備えることを特徴とする。
前記光ファイバーに入射した入射光は、該光ファイバーにより一端から他端に導かれるが、その途中、前記コア露出部において、コアの表面に沿ってエバネッセント波を発生させる。そして、前記コア露出部に該コア露出部の一部を溶解して球状化し、該コアの表面に発生したエバネッセント波を閉じ込めて共振させる該コアと一体に形成された微小球と、該微小球を被覆して形成された表面プラズモンを励起可能な金属薄膜とを備えるときには、前記エバネッセント波が、該金属薄膜の外表面に表面プラズモンを共鳴励起させる。この結果、前記入射光が前記光ファイバーにより導かれる方向に沿って、前記コア露出部の全表面積を、前記物質の特性、変化等の測定に有効な面積とすることができ、測定精度が著しく増大される。
発明の表面プラズモン共鳴センサー素子において、前記金属薄膜は、前記コア露出部に該コアと一体に形成され該コアの表面に発生したエバネッセント波を閉じ込めて共振させる微小球を被覆して形成されている。前記コア露出部に該コアと一体に前記微小球が形成されていると、該コア露出部において、コアの表面に沿って発生した前記エバネッセント波が、該微小球内に閉じ込められて繰り返し回転することにより共振する。このとき、前記エバネッセント波が前記微小球内で回転することにより、微小球の表面に形成されたエバネッセント波が、該金属薄膜の外表面に表面プラズモンを共鳴励起させる。
ここで、前記エバネッセント波は前記微小球内でその表面に沿って、例えば1010回/ms程度の割合で、1μs〜1msの間、回転する。直径10μm程度の微小球の場合、この結果、前記物質の特性、変化等の測定に有効な面積は、前記エバネッセント波が前記微小球内部を回転する数に比例して、該微小球の実際の表面積の10〜1010倍となり、さらに該微小球の数に比例して増加する。従って、前記コア露出部に該コアと一体に形成された微小球を備え、該微小球を被覆して形成された前記金属薄膜を備える表面プラズモン共鳴センサー素子によれば、前記コア露出部の表面積をさらに有効に使用することができ、測定精度をさらに著しく増大させることができる。
本発明の表面プラズモン共鳴センサー素子において、前記金属薄膜は、10〜100nmの範囲の厚さを備える被覆層により構成されていることが好ましい。前記金属薄膜は、厚さが10nm未満では均一な被覆層を形成することが難しくなることがあり、100nmを超えるとエバネッセント波が該被覆層を透過しにくくなり、表面プラズモンを共鳴励起させることが難しくなることが考えられる。
前記被覆層は、例えば、金、銀、銅、アルミニウムからなる群から選択される1種以上の金属により構成することができる。
た、本発明の表面プラズモン共鳴センサー素子において、前記光ファイバーは、石英ファイバーであってもよく、プラスチックファイバーであってもよい。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は表面プラズモン共鳴センサー素子の一態様の構成を示す説明的断面図であり、図2は表面プラズモン共鳴センサー素子を用いる測定装置の構成例を示すシステム構成図であり、図3は図1に示す表面プラズモン共鳴センサー素子の作動説明図であり、図4は表面プラズモン共鳴の検出方法を示すグラフである。また、図5は本実施形態の表面プラズモン共鳴センサー素子の構成を示す説明的断面図である。
まず、図1を参照して、表面プラズモン共鳴センサー素子1aの構成について説明する。表面プラズモン共鳴センサー素子1aを構成する光ファイバー2は、中心をなす導光コア3と、導光コア3の周囲を包囲するクラッド4とからなり、導光コア3の長さ方向に沿って光を伝達できるようになっている。そして、表面プラズモン共鳴センサー素子1aは、光ファイバー2の途中に、所定の長さに亘ってクラッド4が剥離されて導光コア3が露出されたコア露出部3aを備え、コア露出部3の表面に形成された金属薄膜からなる被覆層5を備えている。前記光ファイバー2は、石英ファイバーであってもよく、またはポリカーボネート等のプラスチックからなるプラスチックファイバーであってもよい。
被覆層5は、コア露出部3aの全表面を被覆して形成された金属薄膜であり、10〜100nmの範囲の厚さを備えることにより、表面プラズモンを励起可能とされている。被覆層4は、例えば、金、銀、銅、アルミニウムからなる群から選択される単一の金属または合金により形成されている。
面プラズモン共鳴センサー素子1aは、次のようにして製造することができる。まず、光ファイバー2の所定の部分のクラッド4を化学的薬品を用いてエッチング、またはCOレーザー等を用いて溶融加熱し引き伸ばすこと等によりコア露出部3aを形成する。
次に、前述のようにして形成されたコア露出部3aの表面全面に被覆層4を形成する。コア露出部3aの表面に被覆層4を形成する方法は、特に限定されず、真空蒸着、スパッタリング、メッキ等のそれ自体公知の方法により行うことができる。前記真空蒸着により被覆層4の形成を行う場合に、光ファイバー2がプラスチックファイバーであるときには、プラスチックファイバーが損傷を受けないように低温蒸着を行うことが好ましい。
面プラズモン共鳴センサー素子1aは、例えば図2(a)に示す測定装置11に用いることができる。測定装置11は、光ファイバー2の一端部に接続された光源12と、光ファイバー2の途中に備えられたスプライサー13,13間に接続された表面プラズモン共鳴センサー素子1aと、光ファイバー2の他端部に接続された光検出器14とを備えている。表面プラズモン共鳴センサー素子1aは、測定対象に接触されており、例えば測定対象が容器15に収容された溶液16である場合には溶液16中に浸漬されている。尚、表面プラズモン共鳴センサー素子1aは、スプライサー13を介して光ファイバー2に接続されることにより、使い捨てが可能になる。
次に、図2乃至図4を参照して、測定装置11の作動について、表面プラズモン共鳴センサー素子1aを用いて抗原抗体反応を検出する場合を例として説明する。
測定装置11では、まず、図2に示す光源12からチタン−サファイアレーザー等の周波数可変単一周波数レーザー光17を、光ファイバー2に照射する。すると、図3(a)に示すように、レーザー光17は、導光コア5を介して光ファイバー2の一端から他端に案内される。そこで、光源12によりレーザー光17の波長を調整すると、コア露出部3aの表面に沿ってエバネッセント波(図示せず)が発生し、金属薄膜からなる被覆層5を透過した該エバネッセント波が、金属薄膜からなる被覆層5の外表面に表面プラズモンを共鳴励起させる。表面プラズモン共鳴センサー素子1aでは、導光コア3の長さ方向に沿って案内されるレーザー光17に対して、垂直方向に電場が作用するので、被覆層5の外表面において表面プラズモンが共鳴励起されやすくなる。
このとき、図3(b)に拡大して示すように、金属薄膜からなる被覆層5の表面に、非特異的な吸着を無くすための自己組織化単分子膜18を形成し、自己組織化単分子膜18上に抗体19をリガンドとして固定しておく。一方、図2に示す溶液16には、抗体19に対し特異的に反応する抗原20をアクセプターとして一定割合で含有させておく。
この状態で、溶液16に浸漬された表面プラズモン共鳴センサー素子1a上の抗体19と、溶液16中の抗原20との間で特異的抗原抗体反応が起き、抗体19に抗原20が結合(分子吸着)すると、反応前の状態に比べて金属薄膜からなる被覆層5の表面における誘電率(反射・屈折率)が変化する。この結果、金属薄膜からなる被覆層5の表面における表面プラズモンの共鳴励起条件が変化して、前記レーザー光17に変化が起きる。そこで、前記レーザー光17の変化を光検出器14により検出することにより、前記抗原抗体反応を検出することができる。
図2(a)の光源12としては、例えば周波数可変単一周波数レーザーを用いることができ、この場合には、光検出器15として例えば光強度検出器を用いることにより、レーザー光17の変化をレーザー光17の透過光強度により検出することができる。この場合、図4(a)に示すように、反応(分子吸着)後には、透過光強度が急激に低下する。
また、前記レーザー光17の変化は、表面プラズモンによる発光強度を検出することにより間接的に検知するようにしてもよい。この場合には、図2(b)に示すように、試料溶液16の容器15の壁面等の表面プラズモンによる発光を検出できる位置にアダプター21を設け、アダプター21に光ファイバー22を介して光検出器14を接続する。
図2(b)の光源12としては、例えば周波数可変単一周波数レーザーを用いることができ、光検出器15としては、例えば分光器と光強度検出器とからなるものを用いることができる。この場合、図4(b)に示すように、反応(分子吸着)前には非共鳴のため観測されなかった発光が、反応(分子吸着)後にはエバネッセント光と表面プラズモンとが共鳴するようになり、表面プラズモン特有の発光(例えば、金の微粒子ならば波長630nm程度の赤色発光)を示すようになる。
面プラズモン共鳴センサー素子1aでは、レーザー光17が案内される方向に沿って形成されたコア露出部3aの表面積全てを前記レーザー光17の変化を測定するために用いることができ、しかもレーザー光17の案内される方向に対して垂直方向に電場が作用し、被覆層5の外表面において表面プラズモンが共鳴励起されやすくなる。従って、前記レーザー光17の変化、換言すれば前記抗原抗体反応の測定精度を著しく増大させることができる。
次に、図5を参照して、本実施形態の表面プラズモン共鳴センサー素子の構成について説明する。
まず、図5に示す表面プラズモン共鳴センサー素子1bは、図1に示す表面プラズモン共鳴センサー素子1aと全く同一にして形成されたコア露出部3aに、導光コア3と同一材料からなる複数の微小球6が付着されており、コア露出部3aと微小球6との表面に形成された金属薄膜からなる被覆層5とを備えている。
前記エッチングはHF等の導光コア3とクラッド4とを溶解することができる成分を含むエッチング液、例えば、40%フッ化アンモニウム水溶液:50%HF:H O=X:1:1(重量比)の組成を備えるエッチング液を用いて行うことができる。前記エッチングにより、クラッド4が除去されると同時に、導光コア3が細線化される。前記エッチング液によるエッチングレートは40%フッ化アンモニウム水溶液の濃度に依存し、Xの値が大きくなるほど遅くなる。前記エッチングレートは、例えばX=10の場合には8μm/時となる。
一方、光ファイバー2がプラスチックファイバーの場合には、前記細線化は、加熱による引き伸ばし、またはアセトン、酢酸メチル等の有機溶剤を用いた溶解により行われる。
前述のようにして導光コア3の先端部が細線化されたならば、次に導光コア3の細線化された部分に、例えばCO レーザー等のレーザー光を照射して、高いエネルギー密度で該部分を溶解させて球状化させる。導光コア3の細線化された部分は、前述のようにして溶解させると、石英またはプラスチックの高い表面張力によって自己形成的に球状化し、高い真球度を備える微小球6が形成される。
導光コア3の細線化された部分は、ガスバーナー等により加熱して溶解させるようにしてもよいが、該部分は微小であるので前記CO レーザー等のレーザー光を照射して加熱する方が適している。CO レーザーの照射による場合、そのパワー密度は石英ファイバーに対しては約1000W/cm とし、プラスチックファイバーに対しては約100W/cm とすることが適している。また、微小球6の大きさは、例えば10μm程度であり、導光コア3の細線化された部分の長さを調整することにより制御することができる。
ア露出部3aと微小球6との表面に対する被覆層5の形成は、図1に示す表面プラズモン共鳴センサー素子1aの場合と全く同一にして行うことができる。
前記構成を備える表面プラズモン共鳴センサー素子1bは、図1に示す表面プラズモン共鳴センサー素子1aと全く同一に用いることができる。そして、本態様の表面プラズモン共鳴センサー素子1bによれば、図2に示す光源12から光ファイバー2に照射される前記レーザー光17の波長を調整すると、コア露出部3aの表面に沿ってエバネッセント波(図示せず)が発生する。
前記エバネッセント波は、微小球6の光共振モードと結合し、閉じ込められて繰り返し回転することにより共振する光閉じ込めモード(WG(whispering−Garelly)mode)が発現する。前記WGモードが発現すると、この微小球6のWGモードのエバネッセント波が、被覆層5の外表面に表面プラズモンを共鳴励起させる。前記WGモードにおいて、レーザー光17は微小球6内でその表面に沿って、1010回/ms程度の割合で、1μs〜1msの間、回転する。
この結果、前記レーザー光17の変化を検出するために有効な面積が、1個の微小球6当たり、その実際の表面積に対して10〜1010倍となり、さらに該微小球6の数に比例して増加する。従って、表面プラズモン共鳴センサー素子1bによれば、コア露出部3aの表面積をさらに有効に使用することができ、測定精度をさらに著しく増大させることができる。
面プラズモン共鳴センサー素子の一態様の構成を示す説明的断面図。 表面プラズモン共鳴センサー素子を用いる測定装置の一構成例を示すシステム構成図。 図1に示す表面プラズモン共鳴センサー素子の作動説明図。 表面プラズモン共鳴の検出方法を示すグラフ。 本発明の表面プラズモン共鳴センサー素子の構成を示す説明的断面図。
符号の説明
1a,1b,1c…表面プラズモン共鳴センサー素子、 2…光ファイバー、 3…コア、 3a…コア露出部、 5…被覆層、 6…微小球、 7…金属微粒子、 8…微粒子状薄膜。

Claims (3)

  1. 一端から入射された光を他端に導く光ファイバーと、
    該光ファイバーの途中にコアを露出させて形成されたコア露出部と、
    該コア露出部に、該コア露出部の一部を溶解して球状化し、該コアの表面に発生したエバネッセント波を閉じ込めて共振させる該コアと一体に形成された微小球と、
    該微小球を被覆して形成された表面プラズモンを励起可能な金属薄膜とを備えることを特徴とする表面プラズモン共鳴センサー素子。
  2. 前記金属薄膜は、10〜100nmの範囲の厚さの被覆層により構成されていることを特徴とする請求項1記載の表面プラズモン共鳴センサー素子。
  3. 前記被覆層は、金、銀、銅、アルミニウムからなる群から選択される1種以上の金属により構成されていることを特徴とする請求項2記載の表面プラズモン共鳴センサー素子。
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