しかしながら、大画面のテレビに上記の多面体のスピーカを適用し、当該多面体スピーカを構成する各スピーカユニットに同位相・同振幅の同一の音声信号を供給して、それぞれのスピーカユニットにおいて同じ音声を再生する構成の場合、各スピーカユニットは、異なる方向を向いているため、それぞれのスピーカユニットから出力される音声は、部屋の反射の影響によって、結果として、聴取者には、異なる位相や振幅の音声として到達する。また、スピーカの指向特性によりスピーカの中心からはずれた位置になるほど高域の周波数特性が落ちる。
図7は、多面体スピーカにおいて再生される原音の波形と各スピーカユニットから出力される音の聴取位置における波形とそれらの合成波形のイメージを示す図である。図7(a)は原音の波形のイメージを示す図であり、図7(b)は正面のスピーカユニットから出力される音の聴取位置における波形のイメージを示す図であり、図7(c)は側面のスピーカユニットから出力される音の聴取位置における波形のイメージを示す図であり、図7(d)は背面のスピーカユニットから出力される音の聴取位置における波形のイメージを示す図であり、図7(e)は(b)〜(d)の波形を合成した波形のイメージを示す図である。図7(b)に示すとおり、正面のスピーカユニットから出力される音の波形は、聴取位置において、ほぼ原音と同じ波形を示しており、ほぼ原音に近い音となる。また、図7(c)および(d)に示すとおり、側面のスピーカユニットおよび背面のスピーカユニットから出力される音の波形は、指向特性の影響によって高域成分が劣化し、信号の立ち上がりがなまる。そして、聴取位置における音の波形、すなわち、図7(b)〜(d)の波形を合成した音の波形は、図7(e)に示すとおり、図7(a)に示す波形から大きく変化していることがわかる。図7では、スピーカユニットから聴取位置に直接到達する音の波形のイメージを示しているが、実際には、更に、壁や床からの反射音も聴取位置に到達する。
これにより、最終的に、聴取者の位置においては、壁や床からの反射音が合成されるため、異なる位相や振幅の音が合成されることとなる。したがって、波形のなまりはさらに悪化し、さらには、振幅の変動も生じることになり、音の明瞭性が失われ、聴取者にとって快適な音響環境を実現することができないという問題がある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、複数のスピーカユニットを含んで構成されるスピーカによって音声を出力する場合において、聴取位置における音の明瞭性を損なうことなく、聴取者にとって快適な音響環境を実現させることが可能な音声再生装置、音声再生方法、音声再生システム、制御プログラム、および、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
本発明に係る音声再生装置は、複数のスピーカユニットからなる複数のスピーカを介して音声を再生する音声再生装置であって、上記スピーカごとに、当該スピーカを構成する上記複数のスピーカユニットのうち、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出する検出手段と、上記スピーカごとに、上記検出手段によって検出された上記スピーカユニットを、当該スピーカにおける音声を出力するスピーカユニットとして選択する選択手段とを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、音声再生装置は、複数のスピーカを介して音声を再生する。そして、各スピーカは、例えば、多面体スピーカなど、複数のスピーカユニットによって構成される。
また、上記の構成によれば、検出手段が、上記スピーカごとに、各スピーカを構成するスピーカユニットのうち、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出する。つまり、検出手段は、上記の各スピーカについて、利用者の聴取位置に最も近い1つのスピーカユニットを検出する。
また、上記の構成によれば、選択手段が、上記検出手段によって検出された各スピーカユニットを、上記の各スピーカにおける音声を出力するスピーカユニットとして選択する。つまり、選択手段は、上記全てのスピーカについて、利用者の聴取位置に最も近い1つのスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択する。
つまり、本発明に係る音声再生装置によれば、複数のスピーカユニットによって構成される複数のスピーカにおいて、利用者の聴取位置に最も近い1つのスピーカユニットから音声を出力することができる。
これにより、本発明に係る音声再生装置によれば、複数のスピーカユニットによって構成される1つのスピーカにおいて、複数のスピーカユニットから音声が出力されることはない。そのため、聴取位置には、1つのスピーカから、振幅や位相が異なる複数の音声が到達することはない。しかも、スピーカを構成する複数のスピーカユニットのうち、利用者の聴取位置に最も近いスピーカユニットから音声が出力されるため、壁や床などによる反射の影響を低減できる。したがって、各スピーカから出力される音声について、聴取位置において、振幅や位相が異なる複数の音声が合成されることがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者は、明瞭な音質の音声を聴くことができるようになる。
本発明に係る音声再生方法は、複数のスピーカユニットからなる複数のスピーカを介して音声を再生する音声再生方法であって、上記スピーカごとに、当該スピーカを構成する上記複数のスピーカユニットのうち、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出する検出ステップと、上記スピーカごとに、上記検出手段によって検出された上記スピーカユニットを、当該スピーカにおける音声を出力するスピーカユニットとして選択する選択ステップとを含んでいることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係る音声再生装置と同様の作用効果を奏する。
本発明に係る音声再生装置では、上記検出手段は、上記スピーカごとに、同一の音声信号に基づいて上記複数のスピーカユニットから出力される音声のうち、上記聴取位置における振幅が最大の音声を出力するスピーカユニットを、上記聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットとして検出することが好ましい。
上記の構成によれば、上記検出手段は、上記の各スピーカについて、スピーカを構成する各スピーカユニットから出力される音声波形の聴取位置における振幅を検出し、振幅が最大の音声を出力するスピーカユニットを、聴取位置の最も近くに配置されているスピーカユニットとして検出する。
これにより、聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットの検出を、簡素な構成によって、正確に行うことができる。
本発明に係る音声再生装置では、上記検出手段は、上記スピーカごとに、同一の音声信号に基づいて上記複数のスピーカユニットから出力される音声のうち、上記聴取位置における上記音声信号に対する遅延が最小の音声を出力するスピーカユニットを、上記聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットとして検出することが好ましい。
上記の構成によれば、上記検出手段は、上記の各スピーカについて、スピーカを構成する各スピーカユニットから出力される音声波形の聴取位置における遅延を検出し、遅延が最小の音声を出力するスピーカユニットを、聴取位置の最も近くに配置されているスピーカユニットとして検出する。
これにより、聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットの検出を、簡素な構成によって、正確に行うことができる。
本発明に係る音声再生装置では、上記の各スピーカにおいて上記選択手段によって選択された各スピーカユニットから出力される全ての音声の位相が、上記聴取位置において等しくなるように、それぞれのスピーカへの音声信号の供給を遅延させる遅延手段をさらに備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、遅延手段は、各スピーカの音声を出力するスピーカユニットとして選択されたスピーカユニットから出力される音声の位相を、上記聴取位置において等しくなるように、それぞれのスピーカに供給する音声信号を遅延させる。例えば、聴取位置から最も遠いスピーカから出力される音声が聴取位置に到達するタイミングにおいて、他のスピーカから出力される音声も聴取位置に到達するように、他のスピーカに供給する音声信号を、スピーカごとに遅延させる。あるいは、各スピーカから出力される音声が、あらかじめ定められた遅延時間において聴取位置に到達するように、各スピーカに供給する音声信号を、スピーカごとに遅延させてもよく、特に限定はされない。
これにより、全てのスピーカから出力される音声は、聴取位置において、位相が等しくなる。このため、聴取位置において、位相の異なる音声が合成されることがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者は、明瞭な音質の音声を聴くことができるようになる。
本発明に係る音声再生装置では、上記の各スピーカにおいて上記選択手段によって選択された各スピーカユニットから出力される全ての音声の振幅が、上記聴取位置において等しくなるように、それぞれのスピーカに供給される音声信号の大きさを変化させる振幅調整手段をさらに備えていることを特徴とする。
上記の構成によれば、振幅調整手段は、各スピーカの音声を出力するスピーカユニットとして選択されたスピーカユニットから出力される音声の振幅を、上記聴取位置において等しくなるように、それぞれのスピーカに供給する音声信号の大きさを変化させる。例えば、聴取位置から最も近いスピーカから出力される音声の聴取位置における振幅と、他のスピーカから出力される音声の聴取位置における振幅とが等しくなるように、他のスピーカに供給する音声信号の大きさをスピーカごとに変化させる。あるいは、各スピーカから出力される音声の聴取位置における振幅が、あらかじめ定められた大きさとなるように、各スピーカに供給する音声信号の大きさを、スピーカごとに変化させてもよく、特に限定はされない。
これにより、全てのスピーカから出力される音声は、聴取位置において、振幅が等しくなる。このため、聴取位置において、振幅の異なる音声が合成されることがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者は、明瞭な音質の音声を聴くことができるようになる。
本発明に係る音声再生装置では、上記の各スピーカにおいて上記選択手段によって選択された各スピーカユニットから出力される全ての音声の振幅周波数特性が、上記聴取位置において、少なくとも可聴周波数帯域で略一定となるように、それぞれのスピーカに供給される音声信号に補正特性を付与する周波数特性補正手段をさらに備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、周波数特性補正手段は、各スピーカの音声を出力するスピーカユニットとして選択されたスピーカユニットから出力される音声の振幅周波数特性が、上記聴取位置において、少なくとも可聴周波数帯域で略一定となるように、それぞれのスピーカに供給される音声信号に補正特性を付与する。なお、全周波数帯域において、振幅周波数特性がフラットになる構成であってもよく、特に限定はされない。
これにより、全てのスピーカから出力される音声は、聴取位置において、振幅周波数特性のピークやディップが打ち消され、フラットな振幅周波数特性となるため、聴取位置において、より原音に忠実に音声を再生できる。
本発明に係る音声再生装置は、複数のスピーカユニットからなるスピーカを介して音声を再生する音声再生装置であって、上記スピーカユニットのうち、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出する検出手段と、上記検出手段によって検出されたスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択する選択手段とを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、音声再生装置は、例えば、多面体スピーカなど、複数のスピーカユニットによって構成されるスピーカを介して、音声を再生する。
また、上記の構成によれば、検出手段が、スピーカを構成するスピーカユニットのうち、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出する。つまり、検出手段は、利用者の聴取位置に最も近い1つのスピーカユニットを検出する。
また、上記の構成によれば、選択手段が、上記検出手段によって検出されたスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択する。つまり、選択手段は、利用者の聴取位置に最も近い1つのスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択する。
つまり、本発明に係る音声再生装置によれば、複数のスピーカユニットによって構成される複数のスピーカにおいて、利用者の聴取位置に最も近い1つのスピーカユニットから音声を出力することができる。
これにより、本発明に係る音声再生装置によれば、複数のスピーカユニットによって構成される1つのスピーカにおいて、複数のスピーカユニットから音声が出力されることはない。そのため、聴取位置には、振幅や位相が異なる複数の音声が到達することはない。しかも、スピーカを構成する複数のスピーカユニットのうち、利用者の聴取位置に最も近いスピーカユニットから音声が出力されるため、壁や床などによる反射の影響を低減できる。したがって、聴取位置において、振幅や位相が異なる複数の音声が合成されることがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者は、明瞭な音質の音声を聴くことができるようになる。
本発明に係る音声再生方法は、複数のスピーカユニットからなるスピーカを介して音声を再生する音声再生方法であって、上記スピーカユニットのうち、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出する検出ステップと、上記検出手段によって検出されたスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択する選択ステップとを含んでいることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係る音声再生装置と同様の作用効果を奏する。
本発明に係る音声再生装置では、上記検出手段は、同一の音声信号に基づいて上記複数のスピーカユニットから出力される音声のうち、上記聴取位置における振幅が最大の音声を出力するスピーカユニットを、上記聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットとして検出することが好ましい。
上記の構成によれば、上記検出手段は、スピーカを構成する各スピーカユニットから出力される音声波形の聴取位置における振幅を検出し、振幅が最大の音声を出力するスピーカユニットを、聴取位置の最も近くに配置されているスピーカユニットとして検出する。
これにより、聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットの検出を、簡素な構成によって、正確に行うことができる。
本発明に係る音声再生装置では、上記検出手段は、同一の音声信号に基づいて上記複数のスピーカユニットから出力される音声のうち、上記聴取位置における遅延が最小の音声を出力するスピーカユニットを、上記聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットとして検出することが好ましい。
上記の構成によれば、上記検出手段は、スピーカを構成する各スピーカユニットから出力される音声波形の聴取位置における遅延を検出し、遅延が最小の音声を出力するスピーカユニットを、聴取位置の最も近くに配置されているスピーカユニットとして検出する。
これにより、聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットの検出を、簡素な構成によって、正確に行うことができる。
本発明に係る音声再生システムは、上記音声再生装置と、上記音声再生装置から出力された音声を収音し、収音した音声を電気的な受信信号に変換して、上記音声再生装置に出力するマイクとを含んでいることを特徴とする。
上記の構成によれば、上記音声再生装置は、上記スピーカに対して音声信号を供給する。そして、各スピーカユニットからは、スピーカに供給される上記音声信号に基づいて音声が出力される。さらに、各スピーカユニットから出力される音声をマイクが収音し、受信信号に変換して、上記音声再生装置に出力する。
これにより、上記音声再生装置は、上記マイクによって収音された各スピーカユニットからの音声の受信信号に基づいて、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出し、音声を出力するスピーカユニットして選択できる。そのため、複数のスピーカユニットによって構成される1つのスピーカにおいて、複数のスピーカユニットから音声が出力されることはない。したがって、聴取位置には、振幅や位相が異なる複数の音声が到達することはなく、聴取位置において、振幅や位相が異なる複数の音声が合成されることがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者が明瞭な音質の音声を聴くことができる音声再生システムを実現できる。
また、上記音声再生装置は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記音声再生装置をコンピュータにおいて実現する制御プログラム、およびその制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
本発明に係る音声再生装置は、複数のスピーカユニットからなる複数のスピーカを介して音声を再生する音声再生装置であって、上記スピーカごとに、当該スピーカを構成する上記複数のスピーカユニットのうち、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出する検出手段と、上記スピーカごとに、上記検出手段によって検出された上記スピーカユニットを、当該スピーカにおける音声を出力するスピーカユニットとして選択する選択手段とを備えていることを特徴としている。
また、複数のスピーカユニットからなるスピーカを介して音声を再生する音声再生装置であって、上記スピーカユニットのうち、利用者の聴取位置の最も近くに位置するスピーカユニットを検出する検出手段と、上記検出手段によって検出されたスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択する選択手段とを備えていることを特徴としている。
これにより、聴取位置には、1つのスピーカから、振幅や位相が異なる複数の音声が到達することがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者は、明瞭な音質の音声を聴くことができるようになる。
(音声再生装置1)
以下、本発明の実施形態に係る音声再生装置1について、図1〜3を用いて説明する。図1は、本発明に係る音声再生装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すとおり、音声再生装置1は、入力端子2とアナログデジタルコンバータ(ADC)3と遅延回路4(遅延手段)と周波数補正部5(周波数特性補正手段)と利得調整部6(振幅調整手段)と選択回路7とデジタルアナログコンバータ(DAC)8とアンプ9とスピーカ選択回路10(選択手段)とテスト信号生成回路11と遅延量検出部12と振幅検出部13とアナログデジタルコンバータ(ADC)14と制御部15とメモリ16とを含んで構成される。
また、図1に示すとおり、音声再生装置1には、スピーカ17が接続される。スピーカ17は、スピーカユニット17a、17b、17c、17d、17、および17fを含んで構成される。なお、スピーカユニットの概観は、図2に示すとおり、六面体の形状であり、6つの各面にスピーカユニット17a〜fが配置されている。
図2は、音声再生システム100の構成を示す図である。図2に示すとおり、音声再生装置1は、スピーカ17、17’とマイク18と共に、音声再生システム100を構成している。本実施の形態では、音声再生装置1は、無線により音声信号をスピーカ17および17’に供給する。また、同様に、音声再生装置1は、無線によりマイク18からの音声信号を受信する。しかしながら、音声再生装置1は、スピーカ17、17’およびマイク18と、通信用のケーブルによって接続された構成であってもよく、特に限定はされない。また、本実施の形態では、音声再生装置1は、外部から音声信号が入力される構成であるが、コンパクトディスクやカセットテープの再生機能を備えた構成であってもよく、特に限定はされない。
本実施の形態では、音声再生システム100は、ステレオ再生システムとして構成されており、音楽再生装置1には、Lチャンネルのオーディオ信号とRチャンネルのオーディオ信号とが入力される。スピーカ17は、Lチャンネルのオーディオ信号に基づいて音声を出力し、スピーカ17’はRチャンネルのオーディオ信号に基づいて音声を出力する。また、マイク18は、スピーカ17および17’から出力される音声を収音して、電気的な音声信号に変換することができる。なお、本実施の形態では、六面体のスピーカ17を構成するスピーカユニット17a〜fには、同一のLチャンネル信号が供給される。同様にスピーカ17’を構成するスピーカユニット17’a〜fには、同一のRチャンネル信号が供給される。
以下に、音声再生装置1を構成する各部の機能の概要について説明する。なお、図1では、簡単のため、スピーカ17のみが示されており、Lチャンネルのオーディオ信号の音声再生を制御する構成についてのみ示されているが、音声再生装置1は、Rチャンネルのオーディオ信号の音声再生についても同様の構成によって制御する。
入力端子2は、外部からのオーディオ信号を音声再生装置1に入力するための端子である。ADC3は、入力端子2を介して入力されたアナログ信号であるLチャンネルのオーディオ入力信号を、Lチャネルのデジタル信号(以下では、Lch信号と称する)に変換し、遅延回路4に出力する。なお、音楽再生装置1では、Rチャンネルのオーディオ入力信号は、Rチャネルのデジタル信号(以下では、Rch信号と称する)に変換される。
遅延回路4は、Lch信号を遅延させて周波数特性補正部5に出力する。周波数特性補正部5は、Lch信号の周波数特性を補正して、利得調整部6に出力する。周波数特性補正部5は、所望の周波数特性が得られるように、Lch信号にフィルタを施し、特定の周波数領域におけるLch信号のゲインを調整する。利得調整部6は、Lch信号全体の利得を調整し、選択回路7に出力する。また、音声再生装置1では、テスト信号生成回路11が生成するテスト信号に基づいてスピーカ17を介してテスト音声が再生される。このとき、テスト信号生成回路11は、テスト信号を選択回路7に出力する。なお、テスト信号を表すテスト信号データは、メモリ16に格納されており、制御部15によって、テスト信号生成回路11に供給される。また、本実施の形態では、テスト信号は、スピーカユニット17a〜fに時分割で供給される1つの信号として生成される。
選択回路7は、制御部15からの制御信号に基づき、利得調整部6からのLch信号とテスト信号生成回路11からのテスト信号とのいずれを出力するかを選択し、選択した信号をDAC8に出力する。DAC8は、選択回路7において、デジタル信号であるLch信号が選択された場合、アナログのLch信号に変換してアンプ9に出力する。また、DAC8は、デジタル信号であるテスト信号が選択された場合、アナログのテスト信号に変換してアンプ9に出力する。アンプ9は、Lch信号あるいはテスト信号を増幅し、スピーカ選択回路10に出力する。そして、アンプ9からLch信号が出力される場合、スピーカ選択回路10は、制御部15からの制御信号に応じて、スピーカ17を構成するスピーカユニット17a〜fのうち、Lch信号に基づいて音声を出力するスピーカユニットを選択する。また、本実施の形態では、アンプ9からテスト信号が出力される場合、スピーカユニット17a〜fに供給するテスト信号が1つの信号によって時分割で供給される構成である。この場合、スピーカ選択回路10において、制御部15からの制御信号に基づいて、各スピーカユニットに対応するテスト信号が供給されているタイミングに応じて、テスト音声を出力するスピーカユニットを順次切り替える。
マイク18は、スピーカ17から出力されるテスト音声(すなわち、スピーカユニット17a〜fから順次出力されるテスト音声)を収音し、電気的な信号(以下では、受信信号と称する)に変換し、マイク用の入力インターフェース(図示せず)を介して、ADC14に出力する。ADC14は、上記の受信信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換し、振幅検出部13に出力する。さらに、振幅検出部13は、スピーカユニット17a〜fから出力されて、マイク18によって収音されたテスト音声の受信信号うち、振幅の最大値を検出し、制御部15に検出結果を出力すると共に、受信信号を遅延量検出部12に出力する。また、遅延量検出部12は、各スピーカユニットからのテスト音声の受信信号について、テスト音声の原信号であるテスト信号に対する遅延量を検出し、制御部15に検出結果を出力する。本実施の形態では、遅延量検出部12と振幅検出部13と制御部15とは、マイクロコンピュータによって実現される。なお、遅延量検出部12と振幅検出部13とは、専用の回路として構成されてもよく、特に限定はされない。
そして、本発明に係る音声再生装置1は、スピーカ17を構成するスピーカユニット17a〜fのうち、音声を出力するスピーカユニットとして、聴取者の位置にもっとも近いスピーカユニットを選択する構成に特徴を有している。
本実施の形態では、マイク18は、ユーザの聴取位置に設置されており、音声再生装置1は、振幅検出部13からの最大値の検出結果、あるいは、遅延量検出部12からの遅延量の検出結果に基づいて、スピーカ選択回路10(選択手段)において、音声を出力するスピーカユニットとして、マイク18から最も近くのスピーカユニットを選択する構成である。ここで、特許請求の範囲における検出手段は、遅延量検出部12、振幅検出部13、および、制御部15によって実現される。
また、本発明に係る音声再生装置1は、複数のスピーカユニットからなるスピーカを複数台用いて音声出力する場合に、振幅検出部13からの最大値の検出結果、あるいは、遅延量検出部12からの遅延量の検出結果に基づいて、遅延回路4におけるLch信号の遅延、周波数特性補正部5におけるLch信号の周波数特性の補正、および、利得調整部6におけるLch信号の利得の調整を行うことにより、スピーカ間の音声出力を制御する構成においても特徴を有している。
以下に、本発明に係る音声再生装置1の特徴的な構成について、より詳細に説明する。
(スピーカユニットの選択)
本発明に係る音声再生装置1では、音声を出力するスピーカユニットの選択を行う場合、テスト信号に基づいて各スピーカユニットからテスト音声を出力し、それをマイク18によって収音して得られる受信信号を用いて検出する。
図3は、聴取位置に最も近いスピーカユニットの検出を説明するための図であり、(a)はスピーカ17を構成する各スピーカユニット17a〜fに供給されるテスト信号の時間波形を示す図であり、(b)はマイク18における受信信号の時間波形を示す図である。
図3(a)、(b)の横軸は時間を示している。図3(a)に示すとおり、スピーカユニット17a〜fに供給される各テスト信号は、いずれも正弦波の1周期分であり、波形そのものは同一であるが、位相はスピーカユニット17a、17b、17c、17d、17e、17fに供給されるテスト信号の順に遅れている。すなわち、テスト信号に含まれる正弦波の1周期分は、時間的に、スピーカユニット17a、17b、17c、17d、17e、17fの順に供給される。また、上述のとおり、メモリ16には、テスト信号を表すテスト信号データが格納されているが、テスト信号データは、例えば、テスト信号そのものを表す音声信号データが圧縮されて記憶されてもよいし、あるいは、テスト信号の振幅や周波数などを表すパラメータとして記憶されていてもよく、特に限定はされない。
テスト音声が再生される場合、制御部15は、メモリ16からテスト信号データを読み出し、テスト信号生成回路11に供給する。そして、テスト信号生成回路11は、供給されたテスト信号データに基づいてテスト信号を生成する。例えば、テスト信号データが圧縮された音声信号データの場合には、テスト信号生成回路11は、デコード処理を行い、音声信号の伸張処理を行う。また、テスト信号データがパラメータの場合には、テスト信号生成回路11は、パラメータによって指定された波形の信号を生成する。
また、この場合、制御部15は、選択回路7に、テスト信号を出力することを指示する制御信号を供給する。これにより、選択回路7は、テスト信号を出力し、スピーカ選択回路10には、DAC8およびアンプ9を介して、アナログのテスト信号が供給される。
なお、上述のとおり、スピーカユニット17a〜fに供給するテスト信号が1つの信号によって時分割で供給される構成であり、制御部15は、スピーカ選択回路10に対し、各スピーカユニットに対応するテスト信号が供給されているタイミングに応じて、テスト音声を出力するスピーカユニットの切替を指示する制御信号を供給する。
また、テスト音声の再生は、ユーザが音声再生装置1に対して聴取を開始する操作を行ったことをきっかけに行われる構成であっても良いし、図示しないリモートコントローラなどを用いてユーザが操作に応じて行われる構成であってもよく、特に限定はされない。
さらに、スピーカユニット17a〜fは、図3(a)に示すテスト信号に基づいて、順次、テスト音声を出力する。そして、マイク18は、スピーカ17a〜fが出力するテスト音声を収音し、図3(b)に示す受信信号に変換する。図3(b)に示す受信信号は、マイク18が図2に示す位置に配置されている場合の例を示している。すなわち、図3(b)に示す受信信号は、マイク18がスピーカ17を構成するスピーカユニット17aの正面に配置されている場合の波形を示している。図3(b)に示すとおり、受信信号は、振幅の異なる正弦波の1周期分の波形を6つ含んでいる。図3(b)に示す各正弦波の1周期分の波形は、左から順に、スピーカユニット17a、17b、17c、17d、17e、17fから出力されたテスト音声に対応している。
ここで、上述のとおり、マイク18は、スピーカ17を構成するスピーカユニット17aの正面に配置されている。つまり、スピーカユニット17aは、ユーザの聴取位置であるマイク18の最も近くに位置している。一方、スピーカユニット17cは、スピーカ17において、マイク18に対して背面に位置しており、ユーザの聴取位置から最も離れたところに位置している。
そして、図3(b)に示すとおり、各スピーカユニットからのテスト音声に対応する受信信号の波形のうち、マイク18の最も近くに位置するスピーカユニット17aに対応する波形の振幅が最大となっており、マイク18から最も離れたところに位置するスピーカユニット17cに対応する波形の振幅が最小となっている。つまり、受信信号に含まれる波形のうち、振幅が最大の波形に対応するスピーカユニットが、ユーザの聴取位置であるマイク18の最も近くに位置していることがわかる。
そこで、本発明に係る音声再生装置1では、マイク18からの受信信号がADC14においてアナログ信号からデジタル信号に変換された後、振幅検出部13に供給され、振幅検出部13が、受信信号に含まれる波形のうち、振幅が最大の波形を検出する。そして、振幅検出部13は、振幅が最大の波形に対応するスピーカユニットを表すスピーカユニット検出情報を、制御部15に出力する。これにより、音声再生装置1では、ユーザの聴取位置の最も近くに位置しているスピーカユニットが検出されることになる。
さらに、制御部15は、スピーカ選択回路10に対して、上記スピーカユニット検出情報によって指定されるスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択することを指示する制御信号を出力する。そして、スピーカ選択回路10は、制御部15からの上記制御信号に従って、スピーカユニットを選択する。
つまり、図3(b)に示す例では、振幅検出部13は、スピーカユニット17aに対応する波形の振幅が最大であることを検出する。そして、振幅検出部13は、スピーカユニット検出情報として、スピーカユニット17aを表す情報を、制御部15に出力する。さらに、制御部15は、スピーカ選択回路10に対して、スピーカユニット17aを、音声を出力するスピーカユニットとして選択することを指示する制御信号を出力する。そして、スピーカ選択回路10は、制御部15からの制御信号に従い、スピーカユニット17aを選択する。これにより、本実施の形態に係る音声再生装置1では、スピーカ17を構成するスピーカユニット17a〜fのうち、スピーカユニット17aからのみ、音声が出力されることになる。
上記の構成は、受信信号に含まれる波形の振幅に基づいて、ユーザの聴取位置に最も近いスピーカユニットを検出する構成であるが、各スピーカユニットに供給されるテスト信号に対する受信信号の遅延量に基づいて、ユーザの聴取位置に最も近いスピーカユニットを検出する構成とすることも可能である。この構成について、より詳細に説明すれば、以下のとおりである。
本発明に係る音声再生装置1では、マイク18からの受信信号がADC14においてアナログ信号からデジタル信号に変換された後、振幅検出部13に供給される。さらに、振幅検出部13は、上記の受信信号を遅延量検出部12に出力する。また、テスト信号生成回路11は、各スピーカユニットから出力されるテスト音声の原信号であるテスト信号を遅延量検出部12に出力する。
そして、遅延量検出部12は、各スピーカユニットから出力されるテスト音声の受信信号について、原信号のテスト信号に対する遅延量を検出する。この遅延量は、スピーカユニットとマイク18との距離が近い方が小さくなる。したがって、この遅延量が最小となる受信信号に対応するスピーカユニットが、マイク18の位置(すなわち、聴取位置)から最も近くに位置していることになる。
本実施の形態では、遅延量検出部12は、図3(a)に示す各スピーカユニットに供給されるテスト信号と、図3(b)に示す各スピーカユニットから出力されるテスト音声のマイク18における受信信号とを比較し、スピーカユニットごとにテスト信号に対する受信信号の遅延量を検出する。そして、遅延量検出部12は、最も遅延量の小さいスピーカユニットを表すスピーカユニット検出情報を、制御部15に出力する。これにより、音声再生装置1では、ユーザの聴取位置の最も近くに位置しているスピーカユニットが検出されることになる。つまり、図3(b)に示す例では、スピーカユニット17aの遅延量が最も小さいため、遅延量検出部12は、スピーカユニット検出情報として、スピーカユニット17aを表す情報を、制御部15に出力する。
さらに、制御部15は、スピーカ選択回路10に対して、上記スピーカユニット検出情報によって指定されるスピーカユニット17aを、音声を出力するスピーカユニットとして選択することを指示する制御信号を出力する。そして、スピーカ選択回路10は、制御部15からの上記制御信号に従って、スピーカユニット17aを選択する。これにより、本実施の形態に係る音声再生装置1では、スピーカ17を構成するスピーカユニット17a〜fのうち、スピーカユニット17aからのみ、音声が出力されることになる。
これにより、スピーカユニット17a〜fによって構成される1つのスピーカ17において、複数のスピーカユニットから音声が出力されることはない。そのため、聴取位置には、スピーカ17から、振幅や位相が異なる複数の音声が到達することはない。しかも、スピーカ17を構成する複数のスピーカユニット17a〜fのうち、利用者の聴取位置に最も近いスピーカユニット17aから音声が出力されるため、壁や床などによる反射の影響を低減できる。したがって、聴取位置において、振幅や位相が異なる複数の音声が合成されることがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者は、明瞭な音質の音声を聴くことができるようになる。
(2個スピーカ間の調整)
本発明に係る音声再生装置1は、上述のとおり、複数のスピーカユニットからなるスピーカにおいて、聴取位置に最も近いスピーカユニットからのみ音声を出力する。さらに、本発明に係る音声再生装置1は、複数のスピーカユニットからなるスピーカを複数含んで構成される音声再生システムにおいて、スピーカ間の音声出力を制御する。
以下では、図2に示すステレオ音声再生システムを構成するスピーカ17と17’との間における音声出力を調整する構成について説明する。
図4は、図2に示すステレオ再生システムを構成するスピーカ17および17’と聴取者との位置関係を示す図である。図4に示すとおり、マイク18の設置位置(すなわち、聴取位置)は、スピーカ17の正面であり、スピーカ17’よりもスピーカ17に近い。なお、図4に示す聴取者の位置には、図2に示すとおりマイク18が設置される。
また、図2に示すとおり、スピーカ17および17’は、いずれも、6つのスピーカユニットによって構成される六面体スピーカである。そして、スピーカ間の音声出力を調整する場合、音声再生装置1は、先に、上述した方法によって、スピーカ17および17’のそれぞれについて、聴取位置に最も近いスピーカユニットを検出し、音声を出力するスピーカユニットとして選択しておく。つまり、スピーカ17および17’からは、6つのスピーカユニットのうち、1つのスピーカユニットからのみ、音声が出力される。
そして、本発明に係る音声再生装置1では、スピーカ間の音声出力を調整する場合、テスト信号に基づいて各スピーカからテスト音声を出力し、それをマイク18によって収音して得られる受信信号を用いて調整する。
図5は、2つのスピーカ間における音声出力の制御について説明するための図であり、(a)はスピーカ17および17’に供給されるテスト信号の時間波形を示す図であり、(b)はスピーカ17および17’から出力されたテスト音声のマイク18における受信信号の時間波形を示す図である。
図5(a)、(b)の横軸は時間を示している。図5(a)に示すとおり、スピーカ17および17’に供給される各テスト信号は、いずれも正弦波の1周期分であり、波形そのものは同一であるが、スピーカ17’に供給されるテスト信号は、スピーカ17に供給されるテスト信号に比べて、位相が遅れている。すなわち、テスト信号に含まれる正弦波の1周期分がスピーカ17’に供給されるタイミングは、スピーカ17に供給されるタイミングよりも遅れる。また、図3におけるテスト信号の説明と同様、メモリ16には、テスト信号を表すテスト信号データが格納されている。
テスト音声が再生される場合、制御部15は、メモリ16からテスト信号データを読み出し、テスト信号生成回路11に供給する。そして、テスト信号生成回路11は、供給されたテスト信号データに基づいてテスト信号を生成する。
また、この場合、制御部15は、選択回路7に、テスト信号を出力することを指示する制御信号を供給する。これにより、選択回路7は、テスト信号を出力し、スピーカ選択回路10には、DAC8およびアンプ9を介して、図5(a)に示すアナログのテスト信号が供給される。そして、スピーカ17は、図5(a)に示すテスト信号に基づいて、テスト音声を出力する。
なお、図1には、スピーカ17のみが示されているが、同様の構成によって、スピーカ17’にも同じテスト信号が供給される。そして、スピーカ17’は、図5(a)に示すテスト音声に基づいて、テスト音声を出力する。
そして、マイク18は、スピーカ17および17’が出力するテスト音声を収音し、図5(b)に示す受信信号に変換する。図5(b)に示す受信信号は、図2に示すとおり、マイク18がスピーカ17’に比べてスピーカ17に近い位置に配置されている場合の例を示している。図5(b)に示すとおり、受信信号は、振幅の異なる正弦波の1周期分の波形を2つ含んでおり、それぞれ、スピーカ17および17’から出力されたテスト音声に対応している。
上述のとおり、マイク18は、スピーカ17’に比べてスピーカ17に近い位置に設置されている。このため、図5(b)に示す例では、スピーカ17から出力されるテスト音声に対応する受信信号の振幅は、スピーカ17’から出力されるテスト音声に対応する受信信号の振幅に比べて大きい。また、スピーカ17のテスト信号に対する受信信号の遅延量は、スピーカ17’のテスト信号に対する受信信号の遅延量に比べて小さい。
このため、同一の音声信号に基づいて、2つのスピーカから出力される音声は、聴取位置において、位相や振幅が異なる。したがって、聴取位置において、位相や振幅の異なる音声が合成されることになるため、ユーザの耳に到達する音の波形はなまり、明瞭性が失われる。
そこで、本発明に係る音声再生装置1では、同一の音声信号に基づいてスピーカ17とスピーカ17’とから出力される音声の波形が、聴取位置において、同一の波形となるように、スピーカ間における音声出力の調整を行う。以下では、音声再生装置1において、スピーカ間における音声出力の調整を行う構成について、より詳細に説明する。
マイク18は、スピーカ17および17’が出力するテスト音声を収音し、図5(b)に示す受信信号に変換する。さらに、音声再生装置1では、マイク18からの受信信号がADC14においてアナログ信号からデジタル信号に変換された後、振幅値検出部13に供給される。そして、振幅値検出部13は、スピーカ17から出力されるテスト音声に対応する受信信号の振幅(スピーカ17からの受信信号の振幅と称す)と、スピーカ17’から出力されるテスト音声に対応する受信信号の振幅(スピーカ17’からの受信信号の振幅と称す)とを検出し、制御部15に出力する。
制御部15は、スピーカ17からの受信信号の振幅と、スピーカ17’からの受信信号の振幅との比率を算出し、メモリ16に書き込む。そして、制御部15は、スピーカ17および17’から音声を出力する場合、上記比率を用いて、聴取位置において、同一の音声信号に基づいてスピーカ17および17’から出力される音声の波形の振幅が同一になるように調整を行う。
例えば、図5(b)に示すスピーカ17からの受信信号の振幅が、スピーカ17’からの受信信号の振幅の4倍である場合、制御部15は、スピーカ17に供給する音声信号のレベル値が、スピーカ17’に供給する音声信号のレベル値の1/4になるように、利得調整部6を制御する。より具体的には、Lch信号およびRch信号として、振幅が同一の音声信号が供給される場合、制御部15は、Lch信号の利得を調整する利得調整部6に対し、利得を1/4に設定する指示を表す制御信号を供給し、Rch信号の利得を調整する利得調整部(図示せず)に対しては、利得を1に設定する指示を表す制御信号を供給する。あるいは、スピーカ17’に供給する音声信号のレベル値が、スピーカ17に供給する音声信号のレベル値の4倍になるように、制御部15が利得調整部6を制御する構成であってもよく、特に限定はされない。
これにより、スピーカ17および17’から出力される音声は、聴取位置において、振幅が等しくなる。このため、聴取位置において、振幅の異なる音声が合成されることがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者は、明瞭な音質の音声を聴くことができるようになる。
また、音声再生装置1では、上述のとおり、マイク18からの受信信号が振幅値検出部13に供給されるが、さらに、振幅値検出部13は、受信信号を遅延量検出部12に供給する。また、テスト信号生成回路11は、各スピーカユニットから出力されるテスト音声の原信号であるテスト信号を遅延量検出部12に出力する。
遅延量検出部12は、図5(a)に示す各スピーカに供給されるテスト信号と、図5(b)に示す各スピーカから出力されるテスト音声のマイク18における受信信号とを比較し、スピーカごとにテスト信号に対する受信信号の遅延量を検出する。そして、遅延量検出部13は、スピーカ17のテスト信号に対する受信信号の遅延量(スピーカ17’からの受信信号の遅延量と称す)と、スピーカ17’のテスト信号に対する受信信号の遅延量(スピーカ17’からの受信信号の遅延量と称す)とを制御部15に出力する。
制御部15は、スピーカ17からの受信信号の遅延量とスピーカ17’からの受信信号の遅延量との差分値を算出し、メモリ16に書き込む。そして、制御部15は、スピーカ17および17’から音声を出力する場合、上記差分値を用いて、聴取位置において、同一の音声信号に基づいてスピーカ17および17’から出力される音声の位相が同一になるように調整を行う。
例えば、図5(b)に示すスピーカ17からの受信信号の遅延量が、スピーカ17’からの受信信号の遅延量に比べて0.1ms小さい場合、制御部15は、スピーカ17’に音声信号を供給するタイミングに対して、0.1ms遅れてスピーカ17に音声信号を供給するように、遅延回路4を制御する。より具体的には、Lch信号およびRch信号として、位相が同一の音声信号が供給される場合、制御部15は、Lch信号の遅延を調整する遅延回路4に対し、Lch信号を0.1ms遅延させる指示を表す制御信号を供給し、Rch信号の遅延を調整する遅延回路(図示せず)に対しては、Rch信号を遅延させない指示を表す制御信号を供給する。あるいは、遅延回路4に対して、スピーカ17に供給するLch信号を0.2ms遅延させる指示を表す制御信号を供給し、Rch信号の遅延を調整する遅延回路(図示せず)に対して、スピーカ17’に供給するRch信号を0.1ms遅延させる指示を表す制御信号を供給する構成であってもよく、特に限定はされない。
これにより、スピーカ17および17’から出力される音声は、聴取位置において、位相が等しくなる。このため、聴取位置において、位相の異なる音声が合成されることがないため、聴取者の耳に到達する音圧波形のなまりを低減することができ、利用者は、明瞭な音質の音声を聴くことができるようになる。
また、音声再生装置1では、スピーカ17および17’から出力される音声の聴取位置における振幅周波数特性がフラット(略一定)となるように、スピーカ17および17’に供給する音声信号を補正できる。以下に、音声再生装置1において振幅周波数特性をフラットにするための処理について説明する。
はじめに、音声再生装置1は、テスト信号に基づいてスピーカ17から出力された音声をマイク18によって収音し、得られた受信信号から聴取位置における振幅周波数特性を測定する。より具体的には、例えば、テスト信号としてサイン波形の周波数スイープ信号をスピーカ17に供給し、そのスイープ信号に基づいて出力される音声をマイク18によって収音し、得られた受信信号の振幅を振幅検出部13が検出していくことによって、聴取位置における音圧の周波数特性が得られる。通常、スピーカの特性や周辺の環境によって、ある周波数帯域の音圧は、上がったり、下がったりしており、振幅周波数特性はフラットにはなっておらず、ピークやディップを含む。なお、振幅周波数特性を測定する構成としてはスイープ信号以外のテスト信号を用いる構成であってもよく、特に限定はされない。
振幅検出部13は、検出した受信信号の振幅を制御部15に出力する。制御部15は、スピーカ17から出力される音声の聴取位置における振幅周波数特性のデータをメモリ16に記憶する。また、制御部15は、テスト信号に基づいて測定した振幅周波数特性の逆特性のフィルタを算出する。
そして、外部から入力される音声信号に基づいてスピーカ17から音声を出力する場合、制御部15は、周波数特性補正部5に対して、算出した逆特性のフィルタを音声信号に対して適用することを指示する制御信号を供給する。周波数特性補正部5は、複数バンドのイコライザー(IIRフィルタ)として構成されて、制御部15からの制御信号に応じて音声信号に逆特性を付与する構成であってもよいし、あるいは、FIRフィルタとして構成されて、制御部15から補正特性(すなわち逆特性)を表すフィルタ係数を取得し、音声信号に対して畳み演算を実行する構成であってもよく、特に限定はされない。また、周波数特性補正部5において、全周波数帯域の振幅周波数特性が補正される構成であってもよいし、可聴周波数帯域においてのみ振幅周波数特性が補正される構成であってもよく、特に限定はされない。
そして、スピーカ17から出力される音声の振幅周波数特性を補正した後、スピーカ17’から出力される音声についても、同様の処理によって、振幅周波数特性を補正する。
これにより、スピーカ17および17’から出力される音声の聴取位置における振幅周波数特性の上がり下がり(すなわち、ピークやディップ)が打ち消され、周波数に対して平坦な音圧特性(すなわち振幅周波数特性)に補正することが可能となるため、聴取位置において、より原音に忠実に音声を再生できる。
本実施の形態では、2個の六面体スピーカによる音声出力を制御する構成について説明したが、本発明に係る音声再生装置1によって制御されるスピーカは2個に限られない。例えば、音声再生装置1は、2個の六面体スピーカによる音声出力を制御する場合と同様の方法によって、1個の六面体スピーカによる音声出力を制御する構成であってもよいし、あるいは、6個の六面体スピーカによる音声出力を制御する構成であってもよい。
図6は、6個の六面体スピーカによって音声を再生する場合の様子を示す図であり、(a)は、1つのスピーカにおいて、聴取者の位置に最も近い位置スピーカユニットが選択されることを示す図であり、(b)は、6個の各スピーカにおいて、スピーカを構成する6つのスピーカユニットのうち、聴取者の位置に最も近いスピーカユニットから音声が出力されていることを示す図である。
図6に示す構成では、左チャンネル(Lch)、センターチャンネル(Cch)、右チャンネル(Rch)、右サラウンドチャンネル(RSch)、サブウーハーチャンネル(SW)、および、左サラウンドチャンネル(LSch)の各音声信号を出力するスピーカが用意されている。
6個の六面体スピーカによって音声を出力する場合においても、2個の六面体スピーカによって音声を出力する場合と同様、音声再生装置1は、各六面体スピーカについて、六面体スピーカを構成するスピーカユニットのうち、ユーザの聴取位置に最も近いスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択する。
図6(a)に示す例では、破線で囲まれているLchの音声信号を出力する六面体スピーカにおいて、破線の矢印によって表される音声に比べて、実線の矢印によって表される音声は、聴取位置における波形の振幅が最も大きく、遅延量が最も小さい。したがって、音声再生装置1は、図6(a)に示す破線で囲まれた六面体スピーカにおいて、実線の矢印によって表される音声を出力するスピーカユニットを、音声を出力するスピーカユニットとして選択する。
さらに、音声再生装置1は、Cch、Rch、RSch、SW、および、LSchの音声信号を出力する各六面体スピーカについても、順次、聴取位置に最も近いスピーカユニットを選択する。
これにより、図6(b)に示すとおり、6個の各スピーカにおいて、スピーカを構成する6つのスピーカユニットのうち、聴取者の位置に最も近いスピーカユニットのみから音声が出力されることになる。
さらに、音声再生装置1は、6個の六面体スピーカについて、スピーカ間における音声出力の調整を行う。すなわち、音声再生装置1は、2個の六面体スピーカによる音声出力を制御する場合と同様の方法によって、ユーザの聴取位置において、各六面体スピーカから出力される音声の波形の振幅(すなわち、音圧)や原信号からの遅延量(すなわち、位相差)や周波数特性が同じになるように、6個の六面体スピーカからの音声出力を調整する。
また、本発明に係る音声再生装置1は、六面体のスピーカを制御する構成に限定されることはなく、複数のスピーカユニットを含んで構成される各種のスピーカを制御することが可能であり、特に限定はされない。
なお、本発明の構成について、以下のように表現することも可能である。
また、本発明の構成では、1つの筐体に音の放射方向を変えた複数個のスピーカユニットを組み込み、かつ、各々のスピーカユニットを独立に駆動し、音圧や周波数特性も独立に制御することで、視聴位置に最適な音質環境を実現する。
また、本発明の構成では、上記、各々のスピーカユニットから個々にテスト信号を出力し、視聴位置に置かれた集音用マイクによって検出した信号の振幅を求めることで、どのスピーカユニットが視聴者の方向を向いているかを検出する。
また、本発明の構成では、上記の方法で求めたスピーカユニットと視聴者の位置関係から視聴者に最も近い位置にあるスピーカを一つ選択する。
また、本発明の構成では、上記の方法で調整済みの「複数個のスピーカユニットを組み込んだ筐体」が2個以上存在する場合、再度テスト信号を加え筐体間の音量バランスと遅延を視聴位置で最適になるよう調整する。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
最後に、音声再生装置に含まれる各ブロック、特に遅延量検出部12、振幅検出部13、および、制御部15は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、音声再生装置は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである音声再生装置の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記音声再生装置に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、音声再生装置を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。