JP4932171B2 - 柱梁接合部の評価システム及び評価プログラム - Google Patents

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本発明は、木質ラーメン構造における柱梁接合部の剛性を評価する評価システムに関する。
従来から、木造建築物において柱と梁とを剛接合とするために、柱の下端の切り欠きにねじ込まれた2本のスクリュー部材と、この柱にねじ込まれたスクリュー部材と対向する位置の梁にねじ込まれた2本のスクリュー部材とを連結する連結部材によって構成される木質ラーメン構造における柱梁接合構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この柱梁接合構造は、柱と梁の接合面が強く圧接されるため、高い剛性を有した構造物を得ることが可能となり、柱の位置の自由度が増すため、住宅の間取りの自由度を向上させることができるという特徴を有している。
特開2004−308348号公報
ところで、木質ラーメン構造における柱梁接合部は、完全な剛接合ではなく、半剛接合として扱わなければならないため、木質ラーメン構造の構造物は、柱梁接合部の実験値を用いて設計を行う必要がある。
しかしながら、特許文献1に示す柱梁接合構造の構造物は、柱の位置の自由度が増すという特徴を有している反面、任意の間取りの構造物を設計する場合は、新たな構造物毎に実験を行わなければならず、多大な手間がかかるという問題がある。
このような問題を解決するためには、想定される構造物に加わる外力の最大値に耐える剛性を有した柱梁接合部とすればよいが、剛性を高めるために、複雑な接合方法を用いると、組み立て時間が長くなったり、柱梁接合部の部材のコストが増大するなどの問題がある。また、柱梁接合部の位置に応じて、接合部の部材や接合方法を変えるのは、組み立ての作業性が悪くなるとともに、柱梁接合部の部材のコストが増大してしまうという問題があるため、柱梁接合部を構成する部材を最適化する必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、木質ラーメン構造の構造物内に用いられる柱梁接合部の耐力を評価する評価システム及び評価プログラムを提供することを目的とする。
本発明は、柱の長辺方向の端部に設けられた切り欠き部に該柱の軸線方向にねじ込まれた第1のスクリュー部材と、該スクリュー部材と対向する位置の梁にねじ込まれた第2のスクリュー部材と、前記切り欠き部に介挿され、前記第1のスクリュー部材と前記第2のスクリュー部材の双方をボルトにより結合する接合金具とからなる柱梁接合部を有する木質ラーメン構造を用いた構造物における前記柱梁接合部の剛性を評価するためにコンピュータによって構成された評価システムであって、入力操作を行う入力手段と、前記柱梁接合部の剛性を評価した結果を表示する表示手段と、柱梁接合タイプそれぞれに、バネ要素バネ定数が関係付けられて予め記憶されたバネ要素記憶手段と、前記入力手段における入力操作に基づき、前記柱梁接合部を有する構造物データを定義する構造物定義手段と、前記入力手段における入力操作に基づき、前記構造物定義手段によって定義された前記柱梁接合部それぞれに対して前記柱梁接合タイプを選択し、該柱梁接合タイプそれぞれに応じたバネ要素のバネ定数を前記バネ要素記憶手段から読み出して前記柱梁接合部毎のモデルデータを定義する接合部モデル化手段と、前記入力手段から入力された外力の値と、前記構造物データと、前記柱梁接合部毎のモデルデータとから力の釣合い条件の計算式を使用して、前記バネ要素の節点変位を計算し、前記バネ要素の点変位を柱梁接合部の剛性の評価結果として前記表示手段に表示する計算手段とを備えたことを特徴とする。
本発明は、柱の長辺方向の端部に設けられた切り欠き部に該柱の軸線方向にねじ込まれた第1のスクリュー部材と、該スクリュー部材と対向する位置の梁にねじ込まれた第2のスクリュー部材と、前記切り欠き部に介挿され、前記第1のスクリュー部材と前記第2のスクリュー部材の双方をボルトにより結合する接合金具とからなる柱梁接合部を有する木質ラーメン構造を用いた構造物における前記柱梁接合部の剛性を評価するために、入力操作を行う入力手段と、前記柱梁接合部の剛性を評価した結果を表示する表示手段と、柱梁接合タイプそれぞれに、バネ要素バネ定数が関係付けられて予め記憶されたバネ要素記憶手段とを備える評価システム上のコンピュータに前記評価処理を行わせる柱梁接合部の評価プログラムであって、前記入力手段における入力操作に基づき、前記柱梁接合部を有する構造物データを定義する構造物定義処理と、前記入力手段における入力操作に基づき、前記構造物定義処理によって定義された前記柱梁接合部それぞれに対して前記柱梁接合タイプを選択し、該柱梁接合タイプそれぞれに応じたバネ要素のバネ定数を前記バネ要素記憶手段から読み出して前記柱梁接合部毎のモデルデータを定義する接合部モデル化処理と、前記入力手段から入力された外力の値と、前記構造物データと、前記柱梁接合部毎のモデルデータとから力の釣合い条件の計算式を使用して、前記バネ要素の節点変位を計算し、前記バネ要素の点変位を柱梁接合部の剛性の評価結果として前記表示手段に表示する計算処理とを前記コンピュータに行わせることを特徴とする。
本発明によれば、柱梁接合部を構成する部材のそれぞれに対して、1対1に対応するようにバネ要素を定義し、計算により柱梁接合部の耐力を評価するようにし、柱梁接合部を構成する部材それぞれの影響を把握することができるため、柱梁接合部を構成する部材の改良検討を容易に行うことが可能になり、各部材の最適化を図ることができるという効果が得られる。
以下、本発明の一実施形態による評価システムを図面を参照して説明する。初めに、図4、5を参照して、評価する対象である木質ラーメン構造の構造物の概略と柱梁接合部を構成する部材について説明する。図4は、木質ラーメン構造の木造建築物の構造躯体を示す概略斜視図である。この構造躯体は、1階を構成する下層部分及び2階を構成する上層部分が、それぞれラーメン架構体を複数組み合わせて形成されており、これらを積層することによって全体の構造躯体が形成されている。それぞれのラーメン架構体は、木製の柱1、3の上に木製の梁2、4を載置して接合するいわゆる梁勝ち構造となっており、それぞれのラーメン架構体を構成する柱1、3及び梁2、4は、これらの軸線を含む立面と平行な方向の断面寸法を大きく、これと直角方向の断面寸法を小さくして扁平な部材となっている。したがって、各ラーメン架構体の接合部は一方向の曲げに抵抗する構造となっている。
これらのラーメン架構体は、平面上で方向が互いに直角となるように、すなわち複数のラーメン架構体の梁2−1、2−2、4−1、4−2が互いに直角となるように接合されている。これにより、異なる方向の水平力に抵抗する複数のラーメン架構体が互いに組み合わされ、あらゆる方向の水平力に抵抗可能な構造躯体となっている。そして、上層部分の柱3は、下層のラーメン架構体の梁2上に立設されている。
図5は、図4に示すラーメン架構体で用いられる下層部分の梁2と上層部分の柱3との接合構造の詳細を示す分解斜視図である。ラーメン架構体を形成する木製梁2と木製柱3との接合構造において、柱3の下端における長辺方向の両端部に切り欠き3bを設け、この切り欠き3bから柱3の軸線方向に2本のスクリュー部材11をねじ込む。この柱3にねじ込まれたスクリュー部材11と対向する位置の梁2に2本のスクリュー部材12がねじ込まれる。切り欠き3b内にはそれぞれ接合金具31を介挿し、柱3にねじ込まれたスクリュー部材11と梁2にねじ込まれたスクリュー部材12との双方にボルト41で結合する。接合金具31は、側部に開口を有するもので、開口の背面側は鉛直方向の円筒曲面を有している。これにより、ボルト41を中心に切り欠き3b内で接合金具31が回動が可能となり、ボルト41の締め付け時において開口部を作業が容易な方向に向けることができる。
このような部材を用いて柱梁接合部を構成することにより、組み立てを迅速に行うことが可能であるとともに、柱3と梁2の接合面が強く圧接されるため、高い剛性を有した柱梁接合部を実現することが可能となる。
次に、評価システムの構成を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号51は、キーボードやマウス等から構成する入力部であり、使用者が入力操作を行うことにより、構造物の定義や計算条件の入力を行う。符号52は、前述した柱梁接合部を使用した木質ラーメン構造の構造物を定義する構造物定義部であり、例えば、図4に示す構造物を定義する。符号53は、柱と梁との接合部をバネ要素でモデル化する接合部モデル化部である。符号54は、柱と梁との接合タイプ毎にバネ要素の特性(バネ定数)が予め定義されたバネ要素データベースである。符号55は、構造物定義部52において接合部モデルの組み合わせにより定義された構造物のデータと入力部2から入力された計算条件に基づいて、各バネ要素の節点変位を計算して出力する計算部である。符号56は、計算部55から出力される各バネ要素の節点変位の値を表示する表示部である。
ここで、図2、3を参照して、バネ要素を用いた柱梁接合部のモデルについて説明する。図2は、柱梁接合部をバネ要素によりモデル化した例を示す図である。図2において、バネ要素KCSは、柱にねじ込まれるスクリュー部材の軸方向バネであり、バネ要素KBSは、梁にねじ込まれるスクリュー部材の軸方向バネである。また、バネ要素KFLは、基礎接合要素の軸方向バネであり、バネ要素KCLは、接合金具の軸方向バネである。図2に示すように、柱梁接合部を構成する部材のそれぞれに対して、1対1に対応するようにバネ要素を定義し、柱梁接合部のモデル化を行う。図2に示すような柱梁接合部モデルを用いた簡易な骨組構造物を定義し、この構造物に水平力Pを作用させた場合の層間変形δは、力の釣合い条件より、次式によって求めることができる。
Figure 0004932171
次に、任意形状の骨組構造物については、一般的によく知られている「マトリクス法」を用いて対象構造物の応力と変形を算定する。構造物全体を対象とした座標系を基準座標系とし、構造物を構成する部材(バネ要素を含む)を対象とした座標系を部材座標系とした時、構造物の節点荷重Pと節点変位Dは以下のように定式化される。なお、ここでは平面骨組構造物を対象とするが、立体骨組構造物に拡張することは可能である。
任意な部材mの基準座標系における部材剛性マトリクスKは、その部材の部材座標系における部材剛性マトリクスKを用いて以下のように表せる。
Figure 0004932171
一方、対象構造物の基準座標系における節点荷重Pと節点変位Dは、全体剛性マトリクスKを用いて以下のように表せる。
Figure 0004932171
全体剛性マトリクスKは、部材mの部材剛性マトリクスKにおける4つのマトリクスKijが、部材mの両端部における2つの節点I,Jと対応して、次のように順次構成される。
Figure 0004932171
ここで、本モデル化におけるバネ要素Xの部材剛性マトリクスKは下式のように表せる。なお、通常の部材に関する部材剛性マトリクスについてはここでは説明を省略する。
Figure 0004932171
この時、図3に示すモデル化の種類別に全体剛性マトリクスに組み込むための部材剛性マトリクスKにおける4つのマトリクスKijを以下に示す。
Figure 0004932171
次に、図1を参照して、図1に示す評価システムの処理動作を説明する。まず、評価システムを使用する者(以下、使用者という)は、入力部51から、例えば図4に示す構造物を定義するデータ(柱の寸法及び位置、梁の寸法及び位置等)を入力する。この構造物を定義するデータの入力は、建築用のCADシステム等を用いて定義したデータを用いてもよい。このデータ入力を受けて、構造物定義部52は、入力された構造物データを内部に保持する。そして、使用者は、入力部51から各柱と梁の接合部に対して、接合タイプを選択する。これを受けて、接合部モデル化部53は、選択された接合タイプに応じたバネ要素の特性をバネ要素データベース54から読み出し、各柱梁接合部毎に図2、3に示すモデルを定義して、構造物定義部52へ受け渡す。
次に、構造物定義部52は、内部に保持している構造物データと柱梁接合部毎のモデルデータ(モデルの種類とバネ特性)を計算部55へ出力する。そして、使用者は、入力部51から水平力(外力)の値を入力するとともに、計算開始を指示する。これを受けて、計算部55は、構造物データと柱梁接合部毎のモデルデータと水平力の値とから各バネ要素の節点変位を計算して表示部56へ出力する。これにより、表示部56には、各バネ要素の節点変位の値が表示されることになる。
このように、柱梁接合部を構成する部材(柱側のスクリュー部材、梁側のスクリュー部材及びこれらのスクリュー部材を接合する接合金具)のそれぞれに対して、1対1に対応するようにバネ要素を定義し、計算により柱梁接合部の耐力を評価するようにし、柱梁接合部を構成する部材それぞれの影響を把握することができるため、柱梁接合部を構成する部材の改良検討を容易に行うことが可能になり、各部材の最適化を図ることができる。
なお、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより柱梁接合部の評価処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。 柱梁接合部をモデル化した例を示す説明図である。 柱梁接合部のモデル化の種類を示す説明図である。 木質ラーメン構造の木造建築物の構造躯体を示す概略斜視図である。 図4に示すラーメン架構体で用いられる下層部分の梁2と上層部分の柱3との接合構造の詳細を示す分解斜視図である。
符号の説明
51・・・入力部、52・・・構造物定義部、53・・・接合部モデル化部、54・・・バネ要素データベース、55・・・計算部、56・・・表示部

Claims (2)

  1. 柱の長辺方向の端部に設けられた切り欠き部に該柱の軸線方向にねじ込まれた第1のスクリュー部材と、該スクリュー部材と対向する位置の梁にねじ込まれた第2のスクリュー部材と、前記切り欠き部に介挿され、前記第1のスクリュー部材と前記第2のスクリュー部材の双方をボルトにより結合する接合金具とからなる柱梁接合部を有する木質ラーメン構造を用いた構造物における前記柱梁接合部の剛性を評価するためにコンピュータによって構成された評価システムであって、
    入力操作を行う入力手段と、
    前記柱梁接合部の剛性を評価した結果を表示する表示手段と、
    柱梁接合タイプそれぞれに、バネ要素バネ定数が関係付けられて予め記憶されたバネ要素記憶手段と、
    前記入力手段における入力操作に基づき、前記柱梁接合部を有する構造物データを定義する構造物定義手段と、
    前記入力手段における入力操作に基づき、前記構造物定義手段によって定義された前記柱梁接合部それぞれに対して前記柱梁接合タイプを選択し、該柱梁接合タイプそれぞれに応じたバネ要素のバネ定数を前記バネ要素記憶手段から読み出して前記柱梁接合部毎のモデルデータを定義する接合部モデル化手段と、
    記入力手段から入力された外力の値と、前記構造物データと、前記柱梁接合部毎のモデルデータとから力の釣合い条件の計算式を使用して、前記バネ要素の節点変位を計算し、前記バネ要素の点変位を柱梁接合部の剛性の評価結果として前記表示手段に表示する計算手段と
    を備えたことを特徴とする柱梁接合部の評価システム。
  2. 柱の長辺方向の端部に設けられた切り欠き部に該柱の軸線方向にねじ込まれた第1のスクリュー部材と、該スクリュー部材と対向する位置の梁にねじ込まれた第2のスクリュー部材と、前記切り欠き部に介挿され、前記第1のスクリュー部材と前記第2のスクリュー部材の双方をボルトにより結合する接合金具とからなる柱梁接合部を有する木質ラーメン構造を用いた構造物における前記柱梁接合部の剛性を評価するために、入力操作を行う入力手段と、前記柱梁接合部の剛性を評価した結果を表示する表示手段と、柱梁接合タイプそれぞれに、バネ要素バネ定数が関係付けられて予め記憶されたバネ要素記憶手段とを備える評価システム上のコンピュータに前記評価処理を行わせる柱梁接合部の評価プログラムであって、
    前記入力手段における入力操作に基づき、前記柱梁接合部を有する構造物データを定義する構造物定義処理と、
    前記入力手段における入力操作に基づき、前記構造物定義処理によって定義された前記柱梁接合部それぞれに対して前記柱梁接合タイプを選択し、該柱梁接合タイプそれぞれに応じたバネ要素のバネ定数を前記バネ要素記憶手段から読み出して前記柱梁接合部毎のモデルデータを定義する接合部モデル化処理と、
    記入力手段から入力された外力の値と、前記構造物データと、前記柱梁接合部毎のモデルデータとから力の釣合い条件の計算式を使用して、前記バネ要素の節点変位を計算し、前記バネ要素の点変位を柱梁接合部の剛性の評価結果として前記表示手段に表示する計算処理と
    を前記コンピュータに行わせることを特徴とする柱梁接合部の評価プログラム。
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