JP4930097B2 - 音響処理装置及び音響処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、音響処理装置及び音響処理方法に関し、例えば視聴ルーム等の静かな音響環境において、5.1chのマルチチャンネル音声聴取システムにおける各スピーカからリスニングポイントまでの距離を算出し、その算出結果に基づいてタイムアライメント処理を自動的に実行するような音響処理装置に適用して好適なものである。
近年、DVD(Digital Versatile Disc)に記録された映画等のコンテンツやディジタルテレビ放送等においては、5.1チャンネルや7.1チャンネルなどの所謂マルチチャンネルの音声データが扱われており、ユーザが5.1チャンネルや7.1チャンネル等のマルチチャンネル音声聴取システムを設定する機会が増えつつある。
例えば、5.1チャンネルのマルチチャンネル音声聴取システムでは、前方左チャンネル、前方中央チャンネル、前方右チャンネル、後方左チャンネル、後方右チャンネル及びサブウーファーチャンネルからなる6つの音声チャンネルからなり、これら6つの音声チャンネルにそれぞれ対応した6個のスピーカを用いて音声を再生することが可能である。なお、5.1チャンネル等における「.1」という表現は、低周波数成分を補うサブウーファーチャンネルのことを意味している。
このマルチチャンネル音声聴取システムにおいては、複数のスピーカを用いるため、それぞれのスピーカから放音される音声をユーザが聴取するリスニングポジションにおける各スピーカとユーザとの距離、各スピーカの出力特性、スピーカとユーザとの間に存在する障害物などの影響を受けて、当該マルチチャンネル音声聴取システムによって形成される再生音場が適切なものとならない場合がある。例えば、前方中央に定位すべきボーカルの音像が右側又は左側に片寄ってしまうといったことが起こり得る。
このためマルチチャンネル音声聴取システムのなかには、各スピーカから放音する音声を適切に遅延させることにより、適切な再生音場を生成する所謂タイムアライメント機能を備えたものがある。
このようなタイムアライメント機能を備えたマルチチャンネル音声聴取システムでは、インパルス信号のエネルギーを時間軸上に分散させたTSP(Time-Stretched Pulse)測定用信号をディジタルシグナルプロセッサーにより生成し、これを各スピーカから放音させ、リスニングポジションに設置されたマイクロフォンによって集音した後、ディジタル変換して解析することによりインパルス応答を求めるようになされている。
そしてマルチチャンネル音声聴取システムでは、先程求めたインパルス応答に基づいて各スピーカから放音される音声のリスニングポジションまでの到達時間を算出し、各スピーカから出力する音声の遅延時間を調整することにより、リスニングポジションに居るユーザに対して各スピーカから放音された音声を同じタイミングで聴取させ、リスニングポジションに応じた最適な再生音場を簡易かつ適正に形成し得るようになされている。
しかしながらマルチチャンネル音声聴取システムにおいては、超低域乃至低域の周波数帯域を持つサブウーファーのインパルス応答が、特に家庭内のような部屋であれば壁の反射や定在波の影響で収束するまでの時間が長く、測定時間が長くなって記憶容量の大きなメモリーが必要になってしまう。
そこでサブウーファーから放音する音声に対する遅延時間を迅速かつ小容量のメモリーで算出できるようにするため、測定用信号として単一周波数の正弦波信号を用い、サブウーファーから正弦波信号の測定音を出力した後、それをマイクロフォンで集音したときにおける最初の波形部分の立上りエッジを受信タイミングとして推定することにより、サブウーファーからリスニングポジションまでの時間遅延を求めるようになされたマルチチャンネル音声聴取システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006-310930公報
ところでかかる構成のマルチチャンネル音声聴取システムでは、例えば図1に示すように、各スピーカのうちサブウーファーから出力する測定音の正弦波信号を任意の振幅及び任意の周期に設定した場合、その測定音量が大きくなり、かつその出力時間が長くなってユーザに耳障りな印象を与え、かつ不愉快な思いをさせかねないという問題があった。
また上述したマルチチャンネル音声聴取システムでは、サブウーファーから放音した正弦波信号の測定音をマイクロフォンで集音したときにおける最初の波形部分の立上りエッジを受信タイミングとして推定することにより時間遅延を求めているため、その推定結果に誤りがあった場合、自動音場補正を行うのに必要なサブウーファーからリスニングポジションまでの到達時間や距離を必ずしも正確に算出できていないという問題もあった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ユーザに対して耳障りな測定音によって不愉快な思いをさせることなく、スピーカからリスニングポジションまでの到達時間を正確に算出し得る音響処理装置及び音響処理方法を提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明の音響処理装置においては、スピーカから測定音として出力させるための正弦波信号を生成する正弦波信号生成と、正弦波信号に基づく測定音をスピーカから出力したとき、任意のリスニングポジションで測定音を集音する集音と、測定音を集音したときに得られる測定音波形の高周波成分を除去するために時間軸方向のフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理をそれぞれ施すフィルタと、フィルタ部により2回のフィルタリング処理が施されたフィルタ処理後測定音波形に対して全波整流処理を施す全波整流処理部と、全波整流処理部により全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形における第1波の立上りエッジを閾値判定により測定音の受信タイミングとして検出する検出と、測定音を出力したときの出力タイミングと、検出による受信タイミングとの時間差をスピーカから集音までの到達時間として算出する算出とを具え、正弦波信号生成は、正弦波信号の周期を1周期乃至2周期とし、検出部は、全波整流処理部により全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値を検出し、さらに全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値と第1波の振幅レベルの最大値とオーバーシュートの振幅レベルの最大値とを予め様々な環境で測定した結果得られた、全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値に対する、第1波の振幅レベルの最大値の割合と、オーバーシュートの振幅レベルの最大値の割合とをもとに、第1波を判定するための閾値を、検出した全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値に対し、予め測定した結果得られた第1波の振幅レベルの最大値の割合以下で、且つ予め測定した結果得られたオーバーシュートの振幅レベルの最大値の割合以上の割合を乗算した値に設定し、全波整流処理部により全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形の振幅レベルが、設定した閾値を最初に越えたときに、その時点の波が第1波であると判定して、当該第1波の立上りエッジを受信タイミングとして検出するようにする。
これにより、2周期を超えるような長い正弦波信号の測定音を出力するときに比べて、測定音の出力時間を短くすることができると共に、1周期乃至2周期からなる正弦波信号に基づく測定音を出力すれば、他の周期からなる正弦波信号に基づく測定音を出力する場合に比べて、フィルタ処理後測定音波形の前段に現れるオーバーシュートのレベルを小さくし、かつフィルタ処理後測定音波形の第1波のレベルを大きくすることが出来るので、オーバーシュートのレベルと第1波のレベルとの間に生じる大きなレベル差の中で余裕をもって設定した閾値の判定により測定音の受信タイミングを正確に検出し、スピーカから集音手段までの到達時間を正確に算出することができる。
また本発明の音響処理方法においては、スピーカから測定音として出力させるその周期が1周期乃至2周期からなる正弦波信号を正弦波信号生成によって生成する正弦波信号生成ステップと、正弦波信号に基づく測定音をスピーカから出力したとき、所定の集音により任意のリスニングポジションで測定音を集音する集音ステップと、測定音を集音したときに得られる測定音波形の高周波成分を除去するために時間軸方向のフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理を所定のフィルタによってそれぞれ施すフィルタリング処理ステップと、フィルタリング処理ステップで2回のフィルタリング処理が施されたフィルタ処理後測定音波形に対して全波整流処理を全波整流処理部によって施す全波整流処理ステップと、全波整流処理ステップで全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形における第1波の立上りエッジを閾値判定により測定音の受信タイミングとして所定の検出により検出する検出ステップと、測定音を出力したときの出力タイミングと、検出ステップによる受信タイミングとの時間差をスピーカから集音までの到達時間として所定の算出により算出する時間差算出ステップとを具え、検出ステップでは、検出部が、全波整流処理ステップで全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値を検出し、さらに全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値と第1波の振幅レベルの最大値とオーバーシュートの振幅レベルの最大値とを予め様々な環境で測定した結果得られた、全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値に対する、第1波の振幅レベルの最大値の割合と、オーバーシュートの振幅レベルの最大値の割合とをもとに、第1波を判定するための閾値を、検出した全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値に対し、予め測定した結果得られた第1波の振幅レベルの最大値の割合以下で、且つ予め測定した結果得られたオーバーシュートの振幅レベルの最大値の割合以上の割合を乗算した値に設定し、全波整流処理ステップで全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形の振幅レベルが、設定した閾値を最初に越えたときに、その時点の波が第1波であると判定して、当該第1波の立上りエッジを受信タイミングとして検出するようにする。
これにより、2周期を超えるような長い正弦波信号の測定音を出力するときに比べて、測定音の出力時間を短くすることができると共に、1周期乃至2周期からなる正弦波信号に基づく測定音を出力すれば、他の周期からなる正弦波信号に基づく測定音を出力する場合に比べて、フィルタ処理後測定音波形の前段に現れるオーバーシュートのレベルを小さくし、かつフィルタ処理後測定音波形の第1波のレベルを大きくすることが出来るので、オーバーシュートのレベルと第1波のレベルとの間に生じる大きなレベル差の中で余裕をもって設定した閾値の判定により測定音の受信タイミングを正確に検出し、スピーカから集音手段までの到達時間を正確に算出することができる。
本発明によれば、2周期を超えるような長い正弦波信号の測定音を出力するときに比べて、測定音の出力時間を短くすることができると共に、1周期乃至2周期からなる正弦波信号に基づく測定音を出力すれば、他の周期からなる正弦波信号に基づく測定音を出力する場合に比べて、フィルタ処理後測定音波形の前段に現れるオーバーシュートのレベルを小さくし、かつフィルタ処理後測定音波形の第1波のレベルを大きくすることが出来るので、オーバーシュートのレベルと第1波のレベルとの間に生じる大きなレベル差の中で余裕をもって設定した閾値の判定により測定音の受信タイミングを正確に検出し、スピーカから集音手段までの到達時間を正確に算出することができ、かくしてユーザに対して耳障りな測定音によって不愉快な思いをさせることなく、スピーカからリスニングポジションまでの到達時間を正確に算出し得る音響処理装置及び音響処理方法を実現することができる。
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)本発明の基本原理
本発明においても、図2に示すように、例えば5.1チャンネルのマルチチャンネル音声聴取システム1を対象とし、サブウーファーSWから出力する測定音には当該サブウーファーSWにとって最も効率良く出力可能な100[Hz]の正弦波信号S1を用い、前方左スピーカFL、前方中央スピーカCT、前方右スピーカFR、後方左スピーカRL、後方右スピーカRR及びサブウーファーSWのうち、特にサブウーファーSWからユーザの位置するリスニングポジションに設置されたマイクロフォンMFまでの距離L1を測定することを前提とする。
この場合、正弦波信号S1の周期を短くすれば測定音の出力時間が短くなるため、振幅レベルを多少大きくしてSN比を改善するようにしても、ユーザに対して耳障りな印象を持たせずに済むが、その周期を幾つにするのかが問題となり、それを決定するまでの基本的な考え方について最初に説明する。
(1−1)正弦波信号の周期決定の考え方
具体的には、サブウーファーSWから正弦波信号S1に応じた測定音を出力した出力タイミングtと、マイクロフォンMFでその測定音を集音したときの受信タイミングtとの差分すなわち到達時間Δt(t−t)を基にサブウーファーSWからマイクロフォンMFまでの距離L1を算出するが、図3に示すように当該マイクロフォンMFで集音した測定音の波形(以下、これを測定音波形と呼ぶ)WV1は一般的に高周波成分HFが乗った状態であり、かつマイクロフォンMFが動作してから測定音波形WV1を受信するまでの間にノイズ成分NZが存在している。
このような例えば1.5周期の正弦波信号S1に対応した測定音波形WV1では、マイクロフォンMFによる無音検出期間(ノイズ成分NZ検出期間)の後に、当該測定音波形WV1における第1波WF1の立上りエッジ(すなわち受信タイミングtに相当)を検出する必要があるものの、その測定音波形WV1に重畳された高周波成分HFによって立上りエッジを正確に検出することが出来ない状態であるため、測定音波形WV1に対してローパスフィルタをかけることにより高周波成分HFを除去する必要がある。
そこで、カットオフ周波数200[Hz]のローパスフィルタにより測定音波形WV1に対して時間軸方向に沿ったフィルタリング処理を施したとすると、図4に示すように、元の測定音波形WV1における第1波WF1〜第3波WF3の振幅レベルよりもそれぞれ所定レベルだけ低下する所謂なまりが発生し、そのなまりが発生したときの第3波WF3Aの隣にオーバーシュートOS1が発生し、かつ全体的に位相遅れが生じたローパスフィルタ1回通過後の測定音波形WV1Aが得られることとなる。
この場合、ローパスフィルタ通過前の測定音波形WV1に比べてローパスフィルタ1回通過後の測定音波形WV1Aでは位相遅れが生じているため、高周波成分HFが除去されていたとしても、元の測定音波形WV1における第1波WF1の立上りエッジ(すなわち受信タイミングtに相当)を正確に検出することができず、ローパスフィルタ1回通過後の測定音波形WV1Aに対して時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理を再度施す必要がある。
この場合、ローパスフィルタ1回通過後の測定音波形WV1A(図4)に対し、カットオフ周波数200[Hz]のローパスフィルタにより時間軸を遡る方向に沿って再度フィルタリング処理を施したとすると、図5に示すように、ローパスフィルタ1回通過後の測定音波形WV1Aに対して更になまりが発生し、2度目のなまりが発生した第1波WF1Bの隣に、ノイズ成分NZが含まれたオーバーシュートOS2が発生し、かつ最初の時間軸方向に沿ったフィルタリング処理に係る位相の遅れを打ち消すように位相が変化したローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bが得られることとなる。
これにより1回目の時間軸方向に沿ったフィルタリング処理と、2回目の時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理とが施されたローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bの総合特性としては、元の測定音波形WV1における第1波WF1〜第3波WF3よりも振幅レベルが下がり、かつその両側にオーバーシュートOS1及びOS2が発生するものの、元の測定音波形WV1に比べて何ら位相特性に変化が生じておらず、かつ高周波成分HFが殆ど除去されたことにより、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの立上りエッジを正確に検出し得る状態にある。
従って、このローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bに対して全波整流処理を施して絶対値を取った後、図6に示すように、第1波WF1Bの立上りエッジUE(すなわち検出タイミングtに相当)を検出するための閾値TH1を設定すれば、その閾値TH1を最初に超えたとき、それを第1波WF1Bであると認識し、その立上りエッジUE1を正弦波信号S1に応じた測定音の受信タイミングtとして検出することが出来るのである。
但し、図6との対応部分に同一符号を付した図7に示すように、例えばマイクロフォンMFによって測定音波形WV1を検出する前に表れるノイズ成分NZ(図3)のピーク値の1.2倍に相当するレベルを閾値TH2として設定したような場合、その閾値TH2がオーバーシュートOS2の振幅レベルよりも低くなることがあり、そのようなときはオーバーシュートOS2を測定音波形WV1Bの第1波WF1Bであると誤認識してしまい、その結果、そのオーバーシュートOS2の立上りエッジUE2を正弦波信号S1に応じた測定音の受信タイミングt1であると誤検出してしまうことになる。
また、図6との対応部分に同一符号を付した図8に示すように、例えばマイクロフォンMFによって測定音波形WV1を検出する前に表れるノイズ成分NZ(図3)のピーク値の1.2倍に相当するレベルを閾値TH2として設定した場合、その閾値TH3が第1波WF1の振幅レベルよりも高くなることがあり、そのようなときは測定音波形WV1Bの第2波WF2Bを第1波WF1Bであると誤認識してしまい、その結果、その第2波WF2Bの立上りエッジUE3を正弦波信号S1に応じた測定音の受信タイミングt1であると誤検出してしまうことになる。
このような誤検出を未然に防ぐため、第1波WF1Bの振幅レベルの最大値と、オーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値との差を出来るだけ大きくし、オーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値よりも大きく、かつ第1波WF1の振幅レベルの最大値よりも小さい値に設定することができれば、本来閾値TH1と設定すべきところを閾値TH2又はTH3と誤まって設定してしまうことを未然に防止できると考えられる。そのためには、第1波WF1Bの振幅レベルの最大値をなるべく大きくさせる一方、オーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値を極力小さくして、閾値設定のマージンを十分に取ることが望ましい。
そこで、実際には、どのような周期の正弦波信号S1を用いれば、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値をなるべく大きくさせる一方、オーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値を極力小さくできるのかを検証する。
図9〜図12に示すように、0.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1、1周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1、1.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1若しくは2周期の正弦波信号S1F2に応じた測定音波形WV1F2に対して、時間軸方向に沿ったフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理をそれぞれ施すことにより得られるローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1B、WV1B、WV1B、WV1BF2ついてそれぞれ確認する。
この場合、0.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1(図9)、1周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1(図10)、1.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1(図11)、若しくは2周期の正弦波信号S1F2(図12)については、ローパスフィルタ2回通過前であっても、説明の便宜上、高周波成分HFについては図中省略している。
実際上、図9(A)に示すように、振幅レベルが「1.000」でなる0.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1に対し、上述したような時間軸方向に沿ったフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理を順次施す。
これにより、図9(B)に示すように、測定音波形WV1の振幅レベルになまりが生じると共に、時間軸方向及び時間軸を遡る方向にそれぞれオーバーシュートOS1及びOS2が発生したローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bとなり、その第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1が「0.5000」となり、かつオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2が「−0.222」となる。
また図10(A)に示すように、振幅レベルが「1.000」でなる1周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1に対し、上述したような時間軸方向に沿ったフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理をそれぞれ施す。
これにより、図10(B)に示すように、測定音波形WV1の振幅レベルになまりが生じると共に、時間軸方向及び時間軸を遡る方向にそれぞれオーバーシュートOS1及びOS2が発生したローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bとなり、その第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1が「0.681」となり、かつオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2が「−0.213」となる。
さらに図11(A)に示すように、振幅レベルが「1.000」でなる1.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1に対し、上述したような時間軸方向に沿ったフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理をそれぞれ施す。
これにより、図11(B)に示すように、測定音波形WV1の振幅レベルになまりが生じると共に、時間軸方向及び時間軸を遡る方向にそれぞれオーバーシュートOS1及びOS2が発生したローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bとなり、その第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1が「0.685」となり、かつオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2が「−0.198」となる。
さらに図12(A)に示すように、振幅レベルが「1.000」でなる2周期の正弦波信号S1F2に応じた測定音波形WV1F2に対し、上述したような時間軸方向に沿ったフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理をそれぞれ施す。
これにより、図12(B)に示すように、測定音波形WV1F2の振幅レベルになまりが生じると共に、時間軸方向及び時間軸を遡る方向にそれぞれオーバーシュートOS1F2及びOS2F2が発生したローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1BF2となり、その第1波WF1BF2の振幅レベルの最大値V1が「0.672」となり、かつオーバーシュートOS2F2の振幅レベルの最大値V2が「−0.201」となる。
この結果をまとめた図13から明らかなように、1.5周期の正弦波信号S1に応じたローパスフィルタ通過前の測定音波形WV1に対し、時間軸方向に沿ったフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理をそれぞれ施したときのローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1(「0.685」)とオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2(「0.198」)との絶対値差ΔV(「0.487」)が最も大きくなることが判明した。
これは、図14(A)に示すように、1.5周期の正弦波信号S1に応じたローパスフィルタ通過前の測定音波形WV1に対し、時間軸方向に沿ったフィルタリング処理を施すことにより得られたローパスフィルタ1回通過後の測定音波形WV1Aにおける第1波WF1A及び第2波WF2Aのオーバーシュート分がそれぞれ第3波WF3Aに重畳される分だけ、当該第3波WF3Aの振幅レベルが増加し、大きくなまることを防止しているからだと予想される。
同様に、図14(B)に示すように、ローパスフィルタ1回通過後の測定音波形WV1Aに対し、時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理を施すことにより得られたローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第3波WF3B及び第2波WF2Bのオーバーシュート分がそれぞれ第1波WF1Bに重畳される分だけ、当該第1波WF1Bの振幅レベルが増加し、大きくなまることを防止しているからだと予想される。
これに対して、図9(A)及び(B)に示したように、0.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1では、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにそもそも第1波WF1Bしか存在しないので、オーバーシュート分を重畳すべき対象が存在しない。
また、図10(A)及び(B)に示したように、1周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1では、時間軸方向のフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理の際、オーバーシュート分を重畳する元となる波形が互いに1つしかないため、第1波WF1B及び第2波WF2Bの振幅レベルを僅かに増加するに留まり、1.5周期の正弦波信号S1の場合に比べて第1波WF1Bの振幅レベルが低い値となっていると考えられる。
これに対して、図12に示したように、2周期の正弦波信号S1F2に応じた測定音波形WV1F2でも、1.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1と同様に、時間軸方向のフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理の際、オーバーシュート分を重畳する元となる波形が互いに複数(この場合、3つ)存在することになるため、第1波WF1BF2の振幅レベルが増加し、1.5周期の正弦波信号S1の場合と同様、大きくなまることを防止しているからだと予想される。
但し、図13に示した実験結果によれば、0.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1乃至2周期の正弦波信号S1F2に応じた測定音波形WV1F2のなかでは、結果的に1.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音波形WV1の方が、第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1(「0.685」)と、オーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2(「0.198」)との絶対値差ΔV(「0.487」)が最も大きくなったので、この1.5周期の正弦波信号S1を用いることが閾値TH1を設定するのに最適であると判断した。
(1−2)閾値の設定手法
次ぎに、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1B(図6)における第1波WF1Bの立上りエッジUE1(すなわち受信タイミングt1に相当)を検出するための閾値TH1をどのように設定すれば、誤ってオーバーシュートOS2を第1波WF1Bであると誤認識してしまったり、或いは、第2波WF2Bを第1波WF1Bであると誤認識してしまうという事態を回避できるかについて検討する。
図15に示すように、1.5周期の正弦波信号S1を用いれば、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1B(図6)における第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1及びオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2の絶対値差ΔV(|V1−V2|)が最大となるため、その絶対値差ΔVの間に閾値TH1を設定すれば良い。
ここで、1.5周期の正弦波信号S1の信号レベル全体が大きくなれば、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1及びオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2も大きくなり、逆に、1.5周期の正弦波信号S1の信号レベル全体が小さくなれば、第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1及びオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2も小さくなる。
このため、一般的には、第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1に対してある一定の割合を乗算した結果を閾値TH1として設定すれば、オーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2よりも大きく、第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1よりも小さくすることが出来ると考えられる。
しかしながら、閾値TH1を設定する前の段階では、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bがいずれであるのかを判別することが出来ていない関係上、第1波WF1B〜第3波WF3Bのうち最大ピーク値PK1(この場合は第2波WF2B)を検出し、その最大ピーク値PK1に対してオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2よりも大きく、第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1よりも小さくなるような割合を乗算することにより閾値TH1を設定するようにすれば良い。
実際上、図16では、測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1と、その第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1及びオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2との関係を様々な部屋で実験した結果をグラフに示した。
この場合、横軸が測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1であり、縦軸が測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1とオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2である。
この結果から、測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1は、測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1の10.4%よりも大きく、測定音波形WV1BにおけるオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2は、測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1の6.2%よりも小さくなることが判明した。
従って、閾値TH1を設定する際には、測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1に対し、6.2%以上で10.4%以下(特に、安全を見越して8%〜9%付近)の割合を乗算して設定すれば、閾値TH1を要因として正弦波信号S1に応じた測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtを誤検出することを防止して、正確な受信タイミングtを検出することができると考えられる。
(2)マルチチャンネル音声聴取システムの構成
上述したような(1)基本原理の内容を反映させた本発明の音響処理装置を有するマルチチャンネル音声聴取システムの構成を次に説明する。
(2−1)マルチチャンネル音声聴取システムの回路構成
図17に示すようにマルチチャンネル音声聴取システム1では、例えばCD(Compact Disc)プレイヤー2によって再生したオーディオデータD1を、音響処理装置3のディジタルオーディオインタフェースレシーバ5を介してDSP(Digital Audio Receiver)6に入力する。
DSP6は、ユーザインタフェース11から与えられた命令を認識したホストCPU(Central Processing Unit)10からの制御によって動作し、オーディオデータD1に対して所定の信号処理を施した後、アンプ7を介して増幅させ、視聴ルーム4に設置された前方左スピーカFL、前方中央スピーカCT、前方右スピーカFR、後方左スピーカRL、後方右スピーカRRやサブウーファーSWから再生音声として出力させる。
因みにDSP6は、各スピーカFL、CT、FR、FL及びRRやサブウーファーSWから出力される再生音声の音圧レベルを同一にするためのレベル補正計算や、各スピーカFL、CT、FR、FL及びRRやサブウーファーSWにおける再生周波数特性が目標の例えば全再生周波数領域において均一(フラット)とするための周波数補正計算処理を行うと共に、上述した時間軸方向及び時間軸に遡る方向のフィルタリング処理をIIR(Infinite Impulse Response)フィルタによって行うようになされている。
ところで、音響処理装置3のホストCPU10は、ユーザインタフェース11を介してタイムアライメント処理を実行するための命令が与えられたことを認識すると、予めハードディスク等にインストールされている所定のアプリケーションプログラムである測定音受信タイミング検出処理プログラムに従って、図18に示すように、サブウーファーSWから放音された測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtを検出するための測定音受信タイミング検出処理手順RT1を実行するようになされている。
実際上、音響処理装置3のホストCPU10は、ルーチンRT1の開始ステップから入って次のステップSP1へ移り、DSP6に対して上述したような1.5周期の正弦波信号S1を生成させ、次のステップSP2へ移る。
ステップSP2において音響処理装置3のホストCPU10は、DSP6によって生成された1.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音を、アンプ7を介してサブウーファーSWから出力させ、次のステップSP3へ移る。因みに音響処理装置3のホストCPU10は、DSP6に対して中高音用の周波数帯域に相当する測定音信号をも生成させ、これをアンプ7経由で各スピーカFL、CT、FR、FL及びRRから出力させる。
ステップSP3において音響処理装置3のホストCPU10は、視聴ルーム4のリスニングポジションに設置されたマイクロフォンMFにより集音したサブウーファーSWからの測定音信号S2をマイクアンプ8により増幅させた後、アナログディジタル変換回路9により所定サンプリング周波数でアナログディジタル変換させることにより測定音データD3(すなわち上述した測定音波形WV1)に変換させ、これをDSP6へ送出させた後、次のステップSP4へ移る。
ステップSP4において音響処理装置3のホストCPU10は、DSP6に対し、測定音波形WV1に対して上述したような時間軸方向に沿ったフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向に沿ったフィルタリング処理を実行させ、次のステップSP5へ移る。
ステップSP5において音響処理装置3のホストCPU10は、ステップSP4でフィルタリング処理が施されたローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1とオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2との絶対値差ΔV(|V1−V2|)をDSP6によって算出させ、次のステップSP6へ移る。
ステップSP6において音響処理装置3のホストCPU10は、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1B〜第3波WF3Bのうち最大ピーク値PK1を検出し、その最大ピーク値PK1に対してオーバーシュートOS2の最大値V2よりも大きく、第1波WF1Bの最大値V1よりも小さくなるような割合を乗算することにより、ステップSP5で求めた絶対値差ΔVの間で十分なマージンを取った閾値TH1を設定し、次のステップSP7へ移る。
ステップSP7において音響処理装置3のホストCPU10は、閾値TH1を設定することが出来たので、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの立上りエッジを正弦波信号S1に応じた測定音の受信タイミングtとして検出し、次のステップSP8へ移って処理を終了する。
なお音響処理装置3のホストCPU10は、正弦波信号S1に応じた測定音をサブウーファーSWから出力したときの出力タイミングtを記憶しているので、サブウーファーSWからマイクロフォンMFに到達した正弦波信号S1に応じた測定音の受信タイミングtと、出力タイミングtとの差分を到達時間Δt(t−t)として算出し、これを基にサブウーファーSWからマイクロフォンMFまでの距離L1を測定したり、到達時間Δt(t−t)を用いて他の各スピーカFL、CT、FR、FL及びRRからマイクロフォンMFまでの到達時間との時間差を基に遅延時間を設定し、タイムアライメント処理を実行し得るようになされている。
(3)動作及び効果
以上の構成において、マルチチャンネル音声聴取システム1の音響処理装置3では、正弦波信号S1に応じたローパスフィルタ通過前の測定音波形WV1に対し、時間軸方向のフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理をそれぞれ施したことにより得られるローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1とオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2との絶対値差ΔVが最も大きくなるのが1.5周期であることを検証した。
従って音響処理装置3では、1.5周期の正弦波信号S1に応じた測定音をサブウーファーSWから出力し、それをマイクロフォンMFで集音し、その測定音波形WV1に対して時間軸方向及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理を施したときに、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1とオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2との絶対値差ΔVが最も大きくなるので、測定音の受信タイミングtを正確に検出するための閾値TH1の設定に十分な巾と余裕を持たせることができる。
具体的には、図16に示した実験結果のように、測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1が測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1の10.4%よりも大きく、測定音波形WV1BにおけるオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2が測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1の6.2%よりも小さくなる。
このため音響処理装置3では、閾値TH1を設定する際、測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1に対し、6.2%以上で10.4%以下(特に、安全を見越して8%〜9%付近)の割合を乗算すれば、閾値TH1を要因として正弦波信号S1に応じた測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtの誤検出を確実に防止し、サブウーファーSWから放音される測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtを常時正確に検出することができる。
これにより音響処理装置3は、正弦波信号S1に応じた測定音をサブウーファーSWから出力させたときの出力タイミングtと、測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtとに基づく到達時間Δt(t−t)に応じたサブウーファーSWからマイクロフォンMFまでの距離L1を算出することができ、また他の各スピーカFL、CT、FR、FL及びRRからマイクロフォンMFまでの到達時間との時間差を基にタイムアライメント処理を実行することもできる。
また音響処理装置3は、図13に示した実験結果のように、0.5周期の正弦波信号S1以外となる1周期の正弦波信号S1や2周期の正弦波信号S1であれば、ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1とオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2との絶対値差ΔVが1.5周期の正弦波信号S1のときとほぼ同様の値となっている。
従って音響処理装置3は、必ずしも1.5周期の正弦波信号S1に限ることなく、1周期の正弦波信号S1や2周期の正弦波信号S1を用いても、その正弦波信号S1に応じた測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtの誤検出を防止し、サブウーファーSWから放音される測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtを常時正確に検出することができる。
なお、このとき音響処理装置3は、サブウーファーSWから放音させるための正弦波信号S1の周期として従来よりも格段に短い1周期乃至2周期とした関係で、振幅レベルを多少大きくしてSN比を改善するようにしても、測定音の出力時間を従来よりも格段に短くすることが出来るので、その分ユーザに対して耳障りな印象や不愉快な思いをさせずに済む。
以上の構成によれば、マルチチャンネル音声聴取システム1の音響処理装置3では、サブウーファーSWから測定音を放音させるのに、1.5周期の正弦波信号S1を用いるようにしたことにより、その測定音波形WV1に対して時間軸方向及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理を施したときのローパスフィルタ2回通過後の測定音波形WV1Bにおける第1波WF1Bの振幅レベルの最大値V1とオーバーシュートOS2の振幅レベルの最大値V2との絶対値差ΔVを最も大きくさせ、閾値TH1の設定に十分な巾と余裕を持たせることができるので、測定音の受信タイミングtを正確に検出することができる。
また音響装置3では、その閾値TH1を設定するに際し、測定音波形WV1Bの振幅レベルの最大ピーク値PK1に対し、実験結果から得られた所定の割合を乗算することにより、その閾値TH1を要因として正弦波信号S1に応じた測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtの誤検出を確実に防止し、サブウーファーSWから放音される測定音のマイクロフォンMFによる受信タイミングtを常時正確に検出することができる。
さらに音響装置3は、これらの処理を行うのに、新たな回路構成を加えることなく、既存のDSP6及びホストCPU10による処理を幾つか追加しただけの簡易な構成で、上述したような測定音の受信タイミングtを正確に検出することができるので、ソフトウェアのアップデートだけで機能追加を図り、大幅なコストダウンにも貢献することができる。
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、サブウーファーSWから出力する測定音に100[Hz]の正弦波信号S1を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、一般的に低音と呼ばれる50[Hz]や150[Hz]等のその他種々の周波数帯域からなる正弦波信号S1を用いるようにしても良い。
また上述の実施の形態においては、音響処理装置3のホストCPU10が、予めハードディスク等にインストールされている所定の測定音受信タイミング検出処理プログラムに従って上述した測定音受信タイミング検出処理手順RT1(図18)を実行するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、記録媒体からインストールした測定音受信タイミング検出処理プログラムや、インターネットからダウンロードした測定音受信タイミング検出処理プログラムに従ってルーチンRT1における測定音受信タイミング検出処理手順を実行するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、スピーカとしてサブウーファーSWに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、前方左スピーカFL、前方中央スピーカCT、前方右スピーカFR、後方左スピーカRL、後方右スピーカRRに適用するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、5.1chのマルチチャンネル音声聴取システムに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、7.1chや9.1ch等の他の複数chからなるマルチチャンネル音声聴取システムに適用するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、正弦波信号生成手段としてのDSP6、集音手段としてのマイクロフォンMF、フィルタ手段としてのDSP6、検出手段及び算出手段としてのホストCPU10によって本発明の音響処理装置としての音響処理装置3を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる正弦波信号生成手段、集音手段、フィルタ手段、検出手段及び算出手段によって音響処理装置を構成するようにしても良い。
本発明の音響処理装置及び音響処理方法は、視聴ルームだけではなく、車両内空間に設定されたマルチチャンネル音声聴取システムに適用することができる。
任意周期で出力する正弦波信号を示す略線図である。 5.1chのマルチチャンネル音声聴取システムを示す略線図である。 高周波成分が乗った測定音波形を示す略線図である。 時間軸方向に沿ったローパスフィルタ通過後の測定音波形を示す略線図である。 時間軸を遡る方向に沿ったローパスフィルタ通過後の測定音波形を示す略線図である。 ローパスフィルタ2回通過後の測定音波形に対する反転処理結果と閾値との関係の説明に供する略線図である。 オーバーシュートを第1波と誤認識してしまう閾値設定の例を示す略線図である。 第2波を第1波と誤認識してしまう閾値設定の例を示す略線図である。 0.5周期の正弦波信号に応じた測定音波形のLPF2回通過前とLPF2回通過後の様子を示した略線図である。 1周期の正弦波信号に応じた測定音波形のLPF2回通過前とLPF2回通過後の様子を示した略線図である。 1.5周期の正弦波信号に応じた測定音波形のLPF2回通過前とLPF2回通過後の様子を示した略線図である。 2周期の正弦波信号に応じた測定音波形のLPF2回通過前とLPF2回通過後の様子を示した略線図である。 第1波の最大値とオーバーシュートの最大値との絶対値差を示す図表である。 1.5周期の正弦波信号に応じた測定音波形に対してフィルタリング処理を施したときの振幅特性を示す略線図である。 閾値の設定手法の説明に供する略線図である。 閾値設定に用いる割合の算出の説明に供する分布図である。 マルチチャンネル音声聴取システムの回路構成を示す略線的ブロック図である。 測定音受信タイミング検出処理手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1……マルチチャンネル音声聴取システム、2……CDプレイヤー、3……音響処理装置、4……視聴ルーム、5……ディジタルオーディオインタフェースレシーバ、6……DSP、7……アンプ、8……マイクアンプ、9……アナログディジタル変換回路、10……ホストCPU、11……ユーザインタフェース。

Claims (6)

  1. スピーカから測定音として出力させるための正弦波信号を生成する正弦波信号生成と、
    上記正弦波信号に基づく上記測定音を上記スピーカから出力したとき、任意のリスニングポジションで上記測定音を集音する集音と、
    上記測定音を集音したときに得られる測定音波形の高周波成分を除去するために時間軸方向のフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理をそれぞれ施すフィルタと、
    上記フィルタ部により2回のフィルタリング処理が施されたフィルタ処理後測定音波形に対して全波整流処理を施す全波整流処理部と、
    上記全波整流処理部により全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形における第1波の立上りエッジを閾値判定により上記測定音の受信タイミングとして検出する検出と、
    上記測定音を出力したときの出力タイミングと、上記検出による上記受信タイミングとの時間差を上記スピーカから上記集音までの到達時間として算出する算出
    を具え、
    上記正弦波信号生成は、
    上記正弦波信号の周期を1周期乃至2周期とし、
    上記検出部は、
    上記全波整流処理部により全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値を検出し、さらに全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値と第1波の振幅レベルの最大値とオーバーシュートの振幅レベルの最大値とを予め様々な環境で測定した結果得られた、全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値に対する、第1波の振幅レベルの最大値の割合と、オーバーシュートの振幅レベルの最大値の割合とをもとに、第1波を判定するための閾値を、検出した上記全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値に対し、予め測定した結果得られた第1波の振幅レベルの最大値の割合以下で、且つ予め測定した結果得られたオーバーシュートの振幅レベルの最大値の割合以上の割合を乗算した値に設定し、上記全波整流処理部により全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形の振幅レベルが、設定した上記閾値を最初に越えたときに、その時点の波が第1波であると判定して、当該第1波の立上りエッジを受信タイミングとして検出する
    音響処理装置。
  2. 上記正弦波信号生成は、上記正弦波信号を1.5周期とする
    求項1に記載の音響処理装置。
  3. 上記算出は、上記到達時間を用いて上記スピーカと上記集音との間の距離を算出する
    求項1に記載の音響処理装置。
  4. さらに、上記算出によって算出された上記到達時間を用いてタイムアライメント処理を実行するタイムアライメント処理部を具え
    求項1に記載の音響処理装置。
  5. 上記スピーカは、低音乃至超低音用のサブウーファーである
    求項1に記載の音響処理装置。
  6. スピーカから測定音として出力させるその周期が1周期乃至2周期からなる正弦波信号を正弦波信号生成によって生成する正弦波信号生成ステップと、
    上記正弦波信号に基づく上記測定音を上記スピーカから出力したとき、所定の集音により任意のリスニングポジションで上記測定音を集音する集音ステップと、
    上記測定音を集音したときに得られる測定音波形の高周波成分を除去するために時間軸方向のフィルタリング処理及び時間軸を遡る方向のフィルタリング処理を所定のフィルタによってそれぞれ施すフィルタリング処理ステップと、
    上記フィルタリング処理ステップで2回のフィルタリング処理が施されたフィルタ処理後測定音波形に対して全波整流処理を全波整流処理部によって施す全波整流処理ステップと、
    上記全波整流処理ステップで全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形における第1波の立上りエッジを閾値判定により上記測定音の受信タイミングとして所定の検出により検出する検出ステップと、
    上記測定音を出力したときの出力タイミングと、上記検出ステップによる上記受信タイミングとの時間差を上記スピーカから上記集音までの到達時間として所定の算出により算出する時間差算出ステップと
    を具え、
    上記検出ステップでは、
    上記検出部が、上記全波整流処理ステップで全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値を検出し、さらに全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値と第1波の振幅レベルの最大値とオーバーシュートの振幅レベルの最大値とを予め様々な環境で測定した結果得られた、全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値に対する、第1波の振幅レベルの最大値の割合と、オーバーシュートの振幅レベルの最大値の割合とをもとに、第1波を判定するための閾値を、検出した上記全波整流処理後測定音波形の振幅レベルの最大ピーク値に対し、予め測定した結果得られた第1波の振幅レベルの最大値の割合以下で、且つ予め測定した結果得られたオーバーシュートの振幅レベルの最大値の割合以上の割合を乗算した値に設定し、上記全波整流処理ステップで全波整流処理が施された全波整流処理後測定音波形の振幅レベルが、設定した上記閾値を最初に越えたときに、その時点の波が第1波であると判定して、当該第1波の立上りエッジを受信タイミングとして検出する
    響処理方法。
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