以下、本発明の一実施形態に係るたタフティングマシンについて、添付図面を参照して説明する。
本実施形態に係るタフティングマシンは、ループパイル及びカットパイルの何れもを形成可能としたものであり、図1に示す如く、パイル糸Yを送り出す糸送り装置10と、該糸送り装置10から送られてくるパイル糸Yを、上流側から供給(搬送)されてくる基布Xに対して刺し通す刺衝部11と、該刺衝部11で基布Xに刺し通されたパイル糸Yをループパイル又はカットパイルに形成するパイル形成手段12とを備えている。
前記糸送り装置10は、パイル糸Yの送り出し速度が可変となっており、本実施形態においては、高速、中速、低速の三段階の送り出し速度でパイル糸Yを刺衝部11に向けて送り出すように構成されている。これにより、刺衝部11で基布Xにパイル糸Yが刺し通されるに際し、基布Xの他方の面側でパイル糸を大中小の三つのサイズでループ状にすることができるようになっている。即ち、本実施形態に係るタフティングマシンは、糸送り装置10が高速でパイル糸Yを送り出すと、基布Xの他方の面側において、パイル糸Yが大きいサイズのループ状(ループパイル)となり、糸送り装置10が中速でパイル糸Yを送り出すと、基布Xの他方の面側において、パイル糸Yが標準サイズのループ状(ループパイル)となり、糸送り装置10が低速でパイル糸Yを送り出すと、基布Xの他方の面側において、パイル糸Yが小さなサイズのループ状(ループパイル)になるようになっている。
具体的に説明すると、本実施形態に係る糸送り装置10は、図2に示す如く、パイル糸Yを圧着する圧着ローラ対100…と、該圧着ローラ対100…の一方のローラ(作動体)100aを前記パイル糸Yに対する交差線(パイル糸Yに対して略平面交差する仮想線:図示しない)上で一方向及び他方向に移動させ、該一方のローラ100aが他方のローラ100bと共にパイル糸Yを圧着する圧着位置(第一位置)Aと、該一方のローラ100aが他方のローラ100bから離間してパイル糸Yの圧着を解除する圧着解除位置(第二位置)Bとに位置変更させるローラ100a用の位置変更装置(以下、第一位置変更装置という)101とで一組をなす送り出しユニット10a,10b,10cを備えている。本実施形態においては、上述の如く、三段階の送り出し速度でパイル糸Yを刺衝部11に送り出すべく、パイル糸Yの送り出し速度を異にする送り出しユニット10a,10b,10cが、パイル糸Yに沿って上下に三組設けられている(図1参照)。
各送り出しユニット10a,10b,10cは、後述する針111…に挿通されるパイル糸Yの配置に対応して、前記圧着ローラ対100…が複数対並列に配設されている。各圧着ローラ対100…は、一方のローラ100aがフリーローラとされ、他方のローラ100bが駆動を受けて常時回転するようになっており、パイル糸Yを圧着した状態で一方のローラ100aが他方のローラ100bに従動するようになっている。そして、各送り出しユニット10a,10b,10cにおける他方のローラ100bは、それぞれ異なる回転速度に設定されており、何れか一組の送り出しユニット10a,10b,10cの圧着ローラ対100…でパイル糸Yを圧着することで、そのユニット10a,10b,10cの設定送り出し速度でパイル糸Yを刺衝部11に向けて送り出せるようになっている。
第一位置変更装置101は、図3乃至図5に示す如く、第一ベース体130と、該第一ベース体130に対し、一方のローラ(作動体)100aの移動方向に沿ってスライド自在に設けられると共に他方向(本実施形態においては他方のローラ100bから離間する方向)に向けて付勢され、各一方のローラ100aが接続される複数の第一接続バー131…と、第一接続バー131…毎に設けられ、一方のローラ100aが圧着位置Aに到達した状態で第一接続バー131…が他方向に移動するのを規制し、一方向(本実施形態においては一方のローラ100aが他方のローラ100bに接近する方向)に向けて付勢されることで、該第一接続バー131…の移動の規制を解除する第一規制手段132…と、前記第一ベース体130に対し、一方のローラ100aの移動方向に沿ってスライド自在に設けられると共に他方向に向けて付勢され、各第一接続バー131…及び第一規制手段132…に対応して配置された複数対の第一付勢バー133a,133b…と、第一接続バー131…と同様に、一方向及び他方向に移動可能に設けられた第一装置本体134と、帯状に形成され且つ電圧の印加により湾曲する第一圧電素子体135…と、第一圧電素子体135…の湾曲により回動する第一回動子136…とを備えている。
前記第一ベース体130は、該タフティングマシンのフレーム(図示しない。)に固定されたもので、平面視略矩形状の第一ベースプレート130aと、該第一ベースプレート130a上に固着された複数の支持部材130b,130c,130d,130eとで構成されている。
前記第一ベースプレート130aは、長手方向を刺衝部11の上流側で並列をなす複数本のパイル糸Yの並び(配列方向)に合わせて配置されている。複数の支持部材130b,130c,130d,130eは、第一ベースプレート130aの短手方向に間隔をおいて第一ベースプレート130a上に固定されており、何れも第一ベースプレート130aの長手方向に延びるように設けられている。本実施形態においては、前記支持部材130b,130c,130d,130eが四つ設けられており、そのうち、第一ベースプレート130aの短手方向の一端側の二つが第一接続バー131…を支持し、短手方向の他端側の二つが第一付勢バー133a,133b…を支持するように構成されている。
第一接続バー131…を支持する二つの支持部材130b,130cのうち、一方の支持部材(以下、第一支持部材という。)130bが第一ベースプレート130aの一端縁に沿って配設され、他方の支持部材(以下、第二支持部材という。)130cが第一支持部材130bに対して間隔をおいて略平行に配設されている。そして、第一及び第二支持部材130b,130cの何れにも、第一接続バー131…を挿通するための第一接続バー挿通孔H1が略同心で形成されている。各第一接続バー挿通孔H1は、第一接続バー131…の断面形状に対応した形状で形成されている。そして、第二支持部材130cには、第一規制手段132…の後述する第一ロック体132bが挿通される第一ロック体挿通孔H2が第一接続バー挿通孔H1と横並びに形成されている。かかる第一ロック体挿通孔H2についても、第一ロック体132bの断面形状に即して形成されている。
第一付勢バー133a,133b…を支持する二つの支持部材130d,130eのうち、一方の支持部材(以下、第三支持部材という。)130dは、第一ベースプレート130aの他端縁に沿って配設され、他方の支持部材(以下、第四支持部材という。)130eが第三支持部材130dに対して間隔をおいて略平行に配設されている。そして、第三及び第四支持部材130d,130eの何れにも、第一付勢バー133a,133b…を挿通するための第一付勢バー挿通孔H3が略同心で形成されている。各第一付勢バー挿通孔H3は、第一付勢バー133a,133b…の断面形状に対応した形状で形成されている。各対の第一付勢バー挿通孔H3は、装置全体を小型化すること考慮して、第一付勢バー133a,133bの横並び方向の間隔を極力狭くするべく、第一付勢バー133a、133bの横並び方向とスライド方向とに直交する方向において、互いに変位した位置に形成されている。
本実施形態において、前記第一接続バー131…は、角棒状に形成されており、第一接続バー挿通孔H1から抜けるのを防止すべく、先端部が第一接続バー挿通孔H1よりも大径に形成され、当該先端部にローラ100aが接続されるようになっている。また、該第一接続バー131…は、第一支持部材130bと第二支持部材130cとの間でコイルバネS1が外嵌されており、他方向に向けての付勢力を作用させるべく、第一支持部材130bと共にコイルバネS1を保持する第一鍔部材137が先端から所定距離おいた位置に取り付けられている。
前記第一規制手段132…は、第一接続バー131…毎に設けられており、固定配置された第一規制体132aと、該第一規制体132aと係合する係合姿勢と係合が解除される解除姿勢とに姿勢変更可能に第一接続バー131…毎に設けられた第一ロック体132bとで構成されている。
本実施形態において、上述の如く、第一ロック体132bを第二支持部材130cの第一ロック体挿通孔H2に挿通させるようにしているため、該第二支持部材130cを第一規制体132aとして兼用させるようにしている。即ち、本実施形態においては、第二支持部材130cを各第一規制手段132…の第一規制体132aを一体化させたものとして活用するようにしている。
第一ロック体132bは、第一接続バー131…と同様に角棒状に形成されており、一端部が第一接続バー131…の側面に枢着されて回転可能に設けられている。該第一ロック体132bは、第一接続バー131…のスライドによって一方向及び他方向の何れに移動しても他端側が第二支持部材130cの第一ロック体挿通孔H2から脱落することのない長さ、即ち他端側が第二支持部材130cから第四支持部材130eに向けて延出した態様となる長さに設定され、他端から一端に向けて所定長さの範囲において該第一ロック体132bの回転方向と一致する寸法が第一ロック体挿通孔H2よりも小さく設定されている。これにより、第一ロック体挿通孔H2と対応する断面形状となる一端側と、第一ロック体挿通孔H2よりも断面形状が小さい他端側との間であって、第一ロック体132bの一回転方向に位置する面(本実施形態においては下面)側に第一段差部139が形成されている。
該第一段差部139は、第一接続バー131…が一方向に移動し、一方のローラ100aが圧着位置Aに到達した状態で、第二支持部材130cの第一ロック体挿通孔H2の開口端縁と係合する位置に形成されている。即ち、該第一ロック体132bは、一方のローラ100aが圧着位置Aに到達した状態で、姿勢変更(一回転方向に回転)することで第一段差部139を形成する立面と第二支持部材130c(第一規制体132a)の立面とが当接した状態で係合し、第一接続バー131…に外嵌されたコイルバネS1による他方向への付勢力が作用しても、該第一ロック体132bが連結されている第一接続バー131…が他方向にスライドするのを規制できるようになっている。
本実施形態においては、前記第一ロック体132bを第一接続バー131…に枢着するための枢着ピン138にねじりコイルバネSTを外嵌し、第一接続バー131…と第一ロック体132bとの間に回転力が作用するようになっている。これにより、上述の如く、一方のローラ100aが圧着位置Aに位置した状態で、ねじりコイルバネSTの付勢力で第一ロック体132bが強制的に一回転方向に回転し、第一段差部139が第二支持部材130cの第一ロック体挿通孔H2の開口縁部に嵌り込んで他方向への移動が強制的に規制されるようになっている。
さらに、該第一ロック体132bは、一方向に付勢力が他端側に作用したときに、第二支持部材130c(第一規制体132a)との係合が解除されるようになっている。具体的には、該第一ロック体132bの他端部は、一方向の付勢力が作用したとき(第一付勢バー133a,133b…の後述する当接部が当接したとき)に、他回転方向の分力が作用するテーパー面140が形成されている。このようにすることで、一方向の付勢力で第一ロック体132bが他回転方向に回転し、第一段差部139と第二支持部材130cとの係合が解除するようになっている。これにより、第一接続バー131…にはコイルバネS1の付勢力が作用しているため、上述の如く、移動の規制が解除されると、当該付勢力によって第一接続バー131…が他方向にスライドし、一方のローラ100aが圧着解除位置Bに到達するようになっている。前記第一接続バー131…は、ローラ100a毎に設けられているので、第一接続バー131…に枢着される第一ロック体132bも複数設けられており、各第一接続バー131…のそれぞれを独立してスライドさせ得るようになっている。即ち、各一方のローラ100aを別個独立に圧着位置Aと圧着解除位置Bとに切り換えることができるようになっている。
一対の第一付勢バー133a,133b…は、何れも棒材(丸棒材)で構成されており、一端部(先端部)に大径の当接部141が形成されている。各第一付勢バー133a,133b…は、第二支持部材130cと第四支持部材130eとの間に当接部141が位置するようにして、第三支持部材130d及び第四支持部材130eに形成された第一付勢バー挿通孔H3に挿通されている。該第一付勢バー133a,133b…は、第一接続バー131…及び第一ロック体132bの配置に対応して設けられている。
具体的には、一対の第一付勢バー133a,133bのうち、一方133aは第一接続バー131…の軸線と略同軸となるように設けられ、他方133b…は第一ロック体132bが第二支持部材130cとの係合が解除されて第一接続バー131…に沿った姿勢(一端側が第一ロック体挿通孔H2に挿通した状態)を基準に、当接部141の外周面と第一ロック体132bの他端側の下面とが一致、或いはそれよりも下方に位置するように配設されている。即ち、他方の第一付勢バー133b…は、第一接続バー131…のスライド方向に沿って一方向側にスライドしたとき、第二支持部材130cと係合状態にある第一ロック体132bのテーパー面140と接触(当接)して第一ロック体132bを押し上げた後、第一接続バー131…の移動に伴い、当接部141を躱して第一ロック体132bがスライドできる配置となっている。
前記一対の第一付勢バー133a,133b…は、第三支持部材130dと第四支持部材130eとの間でコイルバネS2が外嵌されており、他方向に向けての付勢力を作用させるべく、第四支持部材130eと共にコイルバネS2を保持する第一鍔部材142が当接部141から所定距離おいた位置に取り付けられている。該第一付勢バー133a,133b…は、第一接続バー131…及び第一ロック体132bの一組に対して一対設けられており、第一接続バー131…及び第一ロック体132bは、圧着ローラ対100(一方のローラ100a)に対応して設けられるため、第一付勢バー133a,133b…は、一方のローラ100aの数に対応して複数対設けられている。そして、各対の第一付勢バー133a,133b…は、第一接続バー131…及び第一ロック体132bに対応して横並び(並列)に設けられている。
前記第一装置本体134は、電動シリンダー或いはエアーシリンダー等のアクチュエータ(図示しない。)が接続され、該アクチュエータが駆動することでローラ101aの移動方向に沿って(第一接続バー131…のスライド方向と同方向で)一方向及び他方向に移動するようになっている。該第一装置本体134は、図6に示す如く、極薄な箱状をなす第一ケース143と、該第一ケース143の上面開口を塞ぐ第一カバー144とで構成されており、前記第一圧電素子体135…、第一回動子136…が複数組内装されている。なお、図示しないが、該第一装置本体134には、第一圧電素子体135…の作動状態を切り換える制御基板も内装されている。
前記第一ケース143は、樹脂成形品であり、内部に真っ直ぐに伸びる複数の壁部H…が所定間隔をおいて形成されており、第一圧電素子体135…及び第一回動子136…を各組毎に収容する複数の収容空間145…が形成されている。
各壁部H…の一端部において、対向する相手方の壁部H…の面に向かって突出した凸部146…が形成されており、該凸部146…間に第一圧電素子体135…の一端部を圧入することで、該第一圧電素子体135…の一端部を固定できるようになっている。そして、図3に戻り、各壁部H…の他端部間における底面には、第一回動子136…を枢支するためのピン147が凸設されている。さらに、該第一ケース143は、各壁部H…の他端が接続された外壁Wには、一対の第一付勢バー133a,133b…を挿通させるための貫通孔H4…が、第一付勢バー挿通孔H3の配置に対応するように収容空間145…毎に二つずつ形成されている。
前記第一圧電素子体135…は、上述の如く一端部が第一ケース143の凸部146,146間に圧入され、他端部が第一回動子136…の後述する一対の作用杆151,151間に圧入されており、第一ケース143と第一回動子136によって両端支持された態様で設けられている。該第一圧電素子体135…は、例えば、曲げ易く且つ曲げ強度に優れた金属基材を帯状に形成し、表面に圧電セラミック層を被覆したもので、該金属基材及び圧電セラミック層間に電圧を印加すると、圧電セラミック層が電歪現象を呈し、金属基材に曲げ応力が生じるもので、印加する電圧の電極の切り換え(正負の切り換え)によって、湾曲する方向が変わるようになっている。即ち、該第一圧電素子体135…は、正の電圧を印加すると一方の面が凸となるように湾曲し、負の電圧を印加すると他方の面が凸となるように湾曲するようになっている。
前記第一回動子136…は、第一ケース143の底に凸設された前記ピン147が挿入されるピン孔148が穿設された第一回動子本体部149と、該第一回動子本体部149の外周からピン孔148の径方向に延出した第一付勢片150と、第一回動子136…本体の外周から第一付勢片150とは反対側に延出した一対の第一作用杆151,151とで構成されている。該第一回動子136…は、前記第一付勢片150を貫通孔H4…の形成された外壁W側に向け、第一ケース143のピン147がピン孔148に挿入されると共に、一対の第一作用杆151,151で第一圧電素子体135…の他端部の両面(金属基材の帯面)を挟み込んだ状態で第一ケース143に取り付けられている。
これにより、第一回動子136…は、第一圧電素子体135…の湾曲する方向が切り換わることで、ピン147周りでの回転方向が切り替わり、第一付勢片150が、収容空間145…内における一方の貫通孔H4…に対応した位置(第一接続バー131…を付勢可能な位置)となる作動体押出位置P1と、収容空間145…内における他方の貫通孔H4…に対応した位置(第一規制手段132…(第一ロック体132b)を付勢可能な位置)となる規制解除位置P2とに切り替わるようになっている。
即ち、第一回動子136…の第一付勢片150は、作動体押出位置P1に位置しているときに、先端部が貫通孔H4…に挿通された一方の第一付勢バー133a…(本実施形態においては、第一接続バー131…に対応する第一付勢バー133a…)の基端部に当接可能となり、規制解除位置P2に位置しているときに、先端部が貫通孔H4…に挿通された他方の第一付勢バー133b…(本実施形態においては、第一ロック体132bに対応する第一付勢バー133b…)の基端部に当接可能となる。そして、該第一付勢片150は、第一回動子本体部149の径方向に延出しているので、何れかの一方の第一付勢バー133a…,133b…に先端部が当接している状態において、他方の第一付勢バー133a…,133b…を躱した姿勢となる。
これにより、第一付勢片150が当接していない第一付勢バー133a,133b…は、第一回動子136…に一切押されることなく、コイルバネS2の付勢のみが作用した状態となる。なお、上述の如く、第一装置本体134は、アクチュエータによって第一接続バー131…のスライド方向に往復動可能となっているので、前記第一回動子136…の位置変更を行うに際し、貫通孔H4…に挿通状態にある第一付勢バー133a,133b…が回動する第一回動子136…に干渉するのを防止すべく、第一装置本体134を第一付勢バー133a,133b…に対して離間する方向に一旦移動させた後に第一回動子136…の回動させるようになっている。
図1に戻り、前記刺衝部11は、搬送されてくる基布Xを支持するフィンガープレート110と、パイル糸Yが挿通される複数の針111…が取り付けられ、各針111…をフィンガープレート110上の基布Xに刺衝すべく基布Xの面に対して交差方向(図においては直交方向)に往復動させる針駆動装置122…とを備えている。
前記フィンガープレート110は、平板状のプレート支持部113と、該プレート支持部113に連設された櫛状のフィンガー部114とで構成されている。該フィンガープレート110は、プレート支持部113が基布Xの搬送方向において上流側に形成され、フィンガー部114がプレート支持部113の下流側に形成されている。そして、フィンガー部114は、各スリットが基布Xの搬送方向に沿うように配設されており、上面が前記プレート支持部113の上面と略連続面を形成している。
前記針駆動装置122…は、複数の針111…を基布Xの搬送方向と直交方向に並列に配設できるようになっている。具体的には、針駆動装置122…は、針111…が交換可能に取り付けられる複数の針保持体115…と、各針保持体115…を基布Xに対して接離方向に往復動させる往復機構116とを備えている。
前記複数の針保持体115…は、フィンガー部114の各スリットに対応した位置で各針111…を保持できるように、基布Xの搬送方向と直交する方向で並列に配設されている。そして、往復機構116には、リンク機構やクランク機構が採用され、駆動モータの駆動を受けて各針保持体115…を往復動させるようになっている。これにより、針保持体115…に保持された針111…は、軸線方向に往復移動して基布Xに刺衝した状態と、基布Xから抜けた状態とになり、基布Xの搬送と針111…の往復動との相関により、針111…の先端部に挿通したパイル糸Yが基布Xに対して搬送方向で順々に刺し通されるようになっている。従って、針駆動装置122…と対向する基布Xの一方の面側からパイル糸Yが刺し通され、針111…が基布Xから抜ける際に、ループ状のパイル糸Yが基布Xの他方の面側において形成されることになる。
前記パイル形成手段12は、形成されるループパイルのサイズに対応して設けられており、本実施形態においては、上述の如く、大中小の三つのサイズのループパイルを形成できるように構成されているので、これに伴って、パイル形成手段12は、上下に三段設けられている。なお、図においては、パイル形成手段12を一段のみ示している。
かかるパイル形成手段12は、刺衝部11において基布Xの他方の面側に形成されたループ状のパイル糸Yに挿通されるルーパー(作動体)120…と、該ルーパー120…が挿通状態にあるパイル糸Yを切断するナイフ121…と、基布Xに刺し通されたパイル糸Yからカットパイルを形成する状態(図7(イ)参照)と基布Xに刺し通されたパイル糸Yからループパイルを形成する状態(図7(ロ)、(ハ)参照)とに切り替える切換体(作動体)122…と、ルーパー120…を基布Xに刺し通されたパイル糸Xに対する交差線(仮想線:図示しない)上で一方向及び他方向に移動させるルーパー120…用の位置変更装置(以下、第二位置変更装置という)201と、切換体122…を基布Xに刺し通されたパイル糸Xに対する交差線上で一方向及び他方向に移動させる切換体122…用の位置変更装置(以下、第三位置変更装置という)301とで構成されている。
前記ルーパー120…は、図7(イ)〜図7(ハ)に示す如く、基布Xの搬送方向に延びて棒状をなす挿通部125と、該挿通部125に連設されたルーパー本体部126とで構成されている。該ルーパー120…は、基布Xに刺し通されてループ状をなすパイル糸Yに対する交差線(パイル糸Yに対して立体交差する仮想線:図示しない)上で一方向及び他方向に移動可能に設けられており、第二位置変更手段201の作動によって、挿通部125が基布Xの他方の面側に形成されるループ状のパイル糸Yに挿入可能な位置となる挿通位置(第一位置)Cと、そのパイル糸Yから抜け出る非挿通位置(第二位置)Dとに位置変更するようになっている。
前記ナイフ121…は、刃部が挿通部125に対して交差方向に延びるように設けられ、ルーパー120…の挿通部125に対して交差方向に往復移動可能に設けられている。より具体的には、該ナイフ121…は、刃部を後述するカット領域Z内に位置させ、挿通部125に挿通状態にあるパイル糸Yに対して接触可能(切断可能)な切断位置と、刃部がカット領域Zから退避して挿通部125に挿通状態にあるループに対して非接触状態となる(切断不可能)な退避位置とに切り換え可能に設けられている。そして、該ナイフ121…は、切断位置にある状態で、基布Xの搬送に伴ってカット領域Z内で挿通部125が挿通状態のまま移動するパイル糸Yが刃部に接触することで、ループ状のパイル糸Yを略半分に切断してカットパイルを形成できるようになっている。
前記切換体122…は、バネ鋼等の弾性に富む薄板材を切断或いは打ち抜き加工等を行って形成されたもので、略L字状をなし、一方の片122…aが他方の片122…bよりも長く形成されている。
該切換体122…は、一方の片122…aがルーパー120…のルーパー本体部126に対し、基布Xに刺し通されたパイル糸Yに対する交差線(パイル糸Yに対して立体交差する仮想線:図示しない)に沿ってスライド可能に挿通され、一方の片122…aがスライドしたときに他方の片122…bの先端部が挿通部125の外周面に摺動するようになっている。
該切換体122…は、第三位置変更装置301の作動によって基布Xに刺し通されたループ状のパイル糸Yに対する交差線上で一方向及び他方向に移動することで、他方の片122…bの外縁が、挿通位置Cにあるルーパー120…の挿通部125の先端と略一致、或いは該挿通部125の先端よりもやや内方に位置したカットパイル形成位置(第一位置)Eと、他方の片122…bが挿通部125の基端側に位置するループパイル形成位置(第二位置)Fとに位置変更できるようになっている。即ち、該切換体122…は、基布Xに刺し通されたパイル糸Yに対する交差線上で一方向に移動することで、カットパイル形成位置Eに位置する一方、基布Xに刺し通されたパイル糸Yに対する交差線上で他方向に移動することで、ループパイル形成位置Fに位置するようになっている。
そして、該切換体122…は、上述のように略L字状に形成されているため、カットパイル形成位置Eに位置した状態で、ルーパー120…の挿通部125、ルーパー本体部126と共に包囲したカット領域Zを形成するようになっている。
第二位置変更装置201は、第一位置変更装置101と配置位置が異なるだけで第一位置変更装置101と同一の構成である。即ち、第一位置変更装置101において、刺衝部11に送り出すパイル糸Yに対する交差線上でローラ100aを一方向及び他方向に移動させるべく、ローラaの移動方向に沿ってスライド自在に設けられた第一接続バー131…にローラ100aを接続したが、第二位置変更装置201は、前記第一接続バー131…に相当する構成(接続バー)にルーパー120…が接続され、ルーパー120…を基布Xに刺し通されたパイル糸Yに対する交差線上で一方向及び他方向に移動させ、挿通位置Cと非挿通位置Dとに位置変更させるように構成されたものである。
従って、各構成における説明が重複するため、第一位置変更装置101の説明を参照することとし、第二位置変更装置201として説明を割愛することとする。なお、以下の説明において、第一位置変更装置101と第二位置変更装置201との作動状態を明確にすべく、第二位置変更装置201の各構成に対し、名称については、支持部材130b,130c,130d,130eを除いて第一位置変更装置101の各構成の名称に付した「第一」を「第二」として表し、符号については、第一位置変更装置101の各構成の符号(100番台)を200番台にして以下の説明及び図面(図3〜図6、図9及び図10)に表すこととする。
第三位置変更装置301についても、第一位置変更装置101と配置位置が異なるだけで第一位置変更装置101と同一の構成である。即ち、第一位置変更装置101において、刺衝部11に送り出すパイル糸Yに対する交差線上でローラ100aを一方向及び他方向に移動させるべく、ローラaの移動方向に沿ってスライド自在に設けられた第一接続バー131…にローラ100aを接続したが、第三位置変更装置301は、前記第一接続バー131…に相当する構成(接続バー)に切換体122…が接続され、切換体122…を基布Xに刺し通されたパイル糸Yに対する交差線上で一方向、及び他方向に移動させ、カットパイル形成位置Eとループパイル形成位置Fとに位置変更させるように構成されたものである。
従って、第三位置変更装置301についても、各構成における説明が重複するため、第一位置変更装置101の説明を参照することとし、説明を割愛することとする。また、以下の説明において、第一位置変更装置101、第二位置変更装置201、及び第三位置変更装置301との作動状態を明確にすべく、第二位置変更装置201の各構成に対し、名称については、支持部材130b,130c,130d,130eを除いて第一位置変更装置101の各構成の名称に付した「第一」を「第三」として表し、符号については、第一位置変更装置101の各構成の符号(100番台)を300番台にして以下の説明及び図面(図3〜図6、図9及び図10)に表すこととする。
上記構成のパイル形成手段12は、切換体122…が弾性に富む薄板材で形成されているので、切換体122…がカットパイル形成位置Eに位置した状態で、基布Xの搬送に伴って移動するループ状のパイル糸Yに挿通部125が挿通されつつ、該パイル糸Y自体が他方の片122…bを挿通部125に対して離間する方向に押しやってカット領域Zに入り込むようになっている。その結果、基布Xの搬送に伴ってカット領域Z内で移動するループ状のパイル糸Yがナイフ121…の刃部に接触して切断され、カットパイルが形成され、基布Xの搬送に伴うルーパー120…とパイル糸Xとの干渉が防止されるようになっている。その一方で、該切換体122…がループパイル形成位置Fに位置した状態で、ルーパー120…を挿通位置Cと非挿通位置Dとに位置変更を繰り返し行い、挿通位置Cにあるルーパー120…の挿通部125がループ状のパイル糸Yに挿通されることで、高さが一定のループパイルが形成され、その状態からルーパー120…を非挿通位置Dに位置変更することで、基布Xの搬送に伴うループパイルとルーパー120…との干渉を防止できるようになっている。
本実施形態に係るタフティングマシンは、以上の構成からなり、次に、該タフティングマシンの作動について説明することとする。
まず、糸送り装置10の作動について説明すると、三つの送り出しユニット10a,10b,10cの中から、基布X上に形成したいパイルのサイズに対応する送り出しユニット10a,10b,10cが選択される。
そして、選択された送り出しユニット10a,10b,10cは、第一位置変更装置101において、第一回動子136…が回動し、第一付勢片150が一方の第一付勢バー133a…に当接可能な位置(第一接続バー131…を付勢可能な作動体押出位置P1)となる。しかる後、図8(イ)に示す如く、第一装置本体134が刺衝部11に向けて略真っ直ぐに延びるパイル糸Yと交差する仮想線(交差線)上で一方向に移動する。
そうすると、第一回動子136…の第一付勢片150が作動体押出位置P1に位置することで他方の第一付勢バー133b…を躱した状態となっているので、他方の第一付勢バー133b…はその状態を維持するが、一方の第一付勢バー133a…は、第一装置本体134の移動に伴って第一付勢片150を介して一方向に押されることになる。その結果、一方の第一付勢バー133a…が第一接続バー131…を押し、第一接続バー131…及び第一ロック体132bが第一装置本体134の移動方向と同方向にスライドする。
そして、第一接続バー131…の移動により、これに接続された一方のローラ100aが圧着位置Aに到達すると、第一ロック体132bの第一段差部139が第二支持部材130cを通過する。そうすると、ねじりコイルバネSTの付勢によって第一ロック体132bが一回転方向(図においては下方)に向けて回転し、第一段差部139を形成する立面が第二支持部材130cの立面と対向した状態、即ち、第一ロック体132bと第一規制体132aとしての第二支持部材130cとが係合する。この状態で、外嵌されたコイルバネS1によって第一接続バー131…が他方向に付勢されているが、第一ロック体132bと第二支持部材130c(第一規制体132a)との係合によって第一接続バー131…の移動が規制される。
そして、図8(ロ)に示す如く、一旦、第一装置本体134が他方向に向けて移動し、第一付勢片150が何れの第一付勢バー133a,133b…にも当接しない位置になると、一方の第一付勢バー133aと第一付勢片150との当接による付勢が解除され、コイルスプリングS2の付勢によって一方の第一付勢バー133a…が、他方の第一付勢バー133b…と同様の態様となる。
この状態において、第一装置本体134(第一付勢片150)による一方向への付勢が解除されているが、上述の如く、規制手段132によって第一接続バー131…の他方向への移動が規制されているため、第一接続バー131…に連結されたローラ100a…が圧着位置Aで維持することになる。これにより、一方のローラ100aは、駆動を受けて回転する他方のローラ100bに従動することになり、当該圧着ローラ対100…で圧着されているパイル糸Yは、当該送り出しユニット10a,10b,10cに設定されている送り出し速度で刺衝部11に向けて送り出されることになる。
そして、パイル糸Yの送り出し速度の変更を行うには、図8(ハ)に示す如く、第一位置変更装置101において、第一圧電素子体135…の電圧の極性が換わることで第一回動子136…が回動する。この状態において、第一付勢片150が何れの第一付勢バー133a,133b…にも当接しない位置にまで第一装置本体134が移動して待機しているので、第一付勢片150が何れの第一付勢バー133a,133bにも干渉することなく、第一回動子136…は円滑に回動することになる。
そうすると、第一付勢片150が他方の第一付勢バー133b…に対応した位置(規制解除位置P2)になることで、当該第一付勢片150は、一方の第一付勢バー133a…を躱した状態となる一方で、他方の第一付勢バー133b…に当接可能な状態となる。
そして、第一装置本体134がパイル糸Yに対する交差線上で一方向に移動すると、一方の第一付勢バー133a…はその状態を維持するが、他方の第一付勢バー133b…は、第一装置本体134の移動に伴って第一付勢片150を介して一方向に押されることになる。その結果、他方の第一付勢バー133b…は、一方向に移動し、当該該第一付勢バー133a,133b…の当接部(先端部)141が第一ロック体132bのテーパー面140と接触する。そうすると、当接部141が第一ロック体132bを一方向に向けて付勢し、テーパー面140の作用によって付勢力の分力が第一ロック体132bに作用する。
その結果、図8(ニ)に示す如く、第一ロック体132bが回転し、第一規制手段132による規制状態(第一規制体132aと第一ロック体132bとの係合状態)が解除されると共に、第一ロック体132bに対する当接部141の一方向への付勢が作用しなくなり、第一接続バー331…に対する規制が解除される。即ち、他方の第一付勢バー133b…は、第一ロック体132bと第一支持部材130cとの係合が解除された状態で、第一ロック体132bの下面に当接部141の外周が沿った状態となって、当接部141による付勢が作用しなくなる。
そうすると、第一接続バー131…に外嵌したコイルバネS1の付勢力により、第一接続バー131…が他方向に向けてスライドし、該第一接続バー131…に連結されたローラ100aが圧着解除位置Bに移動し、パイル糸Yの送り出しが停止することになる。
そして、そのパイル糸Yの送り出しの停止に併せて、希望するパイルのサイズに対応する送り出しユニット10a,10b,10cが選択され、選択された送り出しユニット10a,10b,10cの第一位置変更装置101が上述と同様に作動する。これにより、選択された送り出しユニット10a,10b,10cの圧着ローラ対100…がパイル糸Yを圧着し、所望する送り出し速度でパイル糸Yが送り出されることになる。
そして、刺衝部11において、糸送り装置10から送り出されたパイル糸Yを基布Xの一方の面側から他方の面に向けて多数箇所で刺し通し、当該パイル糸Yが基布X上で糸送り装置10の送り出し速度に対応するサイズのループ状となり、このループ状のパイル糸YからカットパイルPCやループパイルPLを形成することで基布Xの他方の面上に種々の模様等が形成される。これに伴い、各段において横並びした複数のパイル形成手段12のそれぞれが、カットパイルPCを形成する態様(ルーパー120…が挿通位置Cに位置すると共に、切換体122…がカットパイル形成位置Eに位置するパイル形成手段12)と、ループパイルPLを形成する態様(ルーパー120…が挿通位置C又は非挿通位置Dに位置すると共に、切換体122…がループパイル形成位置Fに位置するパイル形成手段12)とが混在した態様となる。
ここで、一つのパイル形成手段12の作動を通じてカットパイルPC及びループパイルPLの形成について説明すると、刺衝部11において基布Xに刺し通されたパイル糸YからカットパイルPCを形成するには、第二位置変更装置201において、第二圧電素子体135の作動で第二回動子236…が回動し、第二付勢片250が一方の第二付勢バー233a…に当接可能な位置(作動体押出位置P1)となる。しかる後、図9(イ)に示す如く、第二装置本体234が基布Xに刺し通されてループ状をなすパイル糸Yに対して交差方向の仮想線(交差線)上で一方向に移動する。
そうすると、第二回動子236…の第二付勢片250が作動体押出位置P1に位置することで他方の第二付勢バー233b…を躱した状態となっているので、他方の第二付勢バー233b…はその状態を維持するが、一方の第二付勢バー233a…は、第二装置本体234の移動に伴って第二付勢片250を介して一方向に押されることになる。その結果、一方の第二付勢バー233a…が第二接続バー231…を押し、第二接続バー231…及び第二ロック体232bが第二装置本体234の移動方向と同方向にスライドする。
そして、第二接続バー231…の移動により、これに接続されたルーパー120…が挿通位置Cに到達すると、第二ロック体232bの第二段差部239が第二支持部材230cを通過する。そうすると、ねじりコイルバネSTの付勢によって第二ロック体232bが一回転方向(図においては下方)に向けて回転し、第二段差部239を形成する立面が第二支持部材230cの立面と対向した状態、即ち、第二ロック体232bと第二規制体232aとしての第二支持部材230cとが係合する。この状態で、外嵌されたコイルバネS1によって第二接続バー231…が他方向に付勢されているが、第二ロック体232bと第二支持部材230c(第二規制体232a)との係合によって第二接続バー231…の移動が規制され、当該第二接続バー231…に連結されたルーパー120…が挿通位置Cで維持することになる。
そして、ルーパー120…が挿通位置Cに位置した後、或いは、第二位置変更装置201の作動と略同時に、第三位置変更装置301においても、第三回動子336…が回動し、第三付勢片350が一方の第三付勢バー333a…に当接可能な位置(第三接続バー331…を付勢可能な作動体押出位置P1)となる。しかる後、第三装置本体334が基布Xに刺し通されてループ状をなすパイル糸Yに対して交差方向の仮想線(交差線)上で一方向に移動する。
そうすると、第三回動子336…の第三付勢片350が作動体押出位置P1に位置することで他方の第三付勢バー333b…を躱した状態となっているので、他方の第三付勢バー333b…はその状態を維持するが、一方の第三付勢バー333a…は、第三装置本体334の移動に伴って第三付勢片350を介して一方向に押されることになる。その結果、一方の第三付勢バー333a…が第三接続バー131…を押し、第三接続バー331…及び第三ロック体332bが第三装置本体334の移動方向と同方向にスライドする。
そして、第三接続バー331…の移動により、これに接続された切換体122…がカットパイル形成位置Eに到達すると、第三ロック体332bの第三段差部339が第二支持部材330cを通過する。そうすると、ねじりコイルバネSTの付勢によって第三ロック体332bが一回転方向(図においては下方)に向けて回転し、第三段差部339を形成する立面が第二支持部材330cの立面と対向した状態、即ち、第三ロック体332bと第三規制体332aとしての第二支持部材330cとが係合する。この状態で、第三接続バー331…に外嵌されたコイルバネS1によって第三接続バー331…が他方向に付勢されているが、第三ロック体332bと第二支持部材330c(第三規制体332a)との係合によって第三接続バー331…の移動が規制され、当該第三接続バー331…に連結された切換体122…(他方の片122…b)は、カットパイル形成位置Eで維持することになる。
そして、図9(ロ)に示す如く、一旦、第二装置本体234が他方向に向けて移動し、第二付勢片250が何れの第二付勢バー233a,233b…にも当接しない位置になると、一方の第二付勢バー233aと第二付勢片250との当接による付勢が解除され、コイルスプリングS2の付勢によって一方の第二付勢バー233a…が、他方の第二付勢バー233b…と同様の態様となる。
また、第三装置本体334についても他方向に向けて移動し、第三付勢片350が何れの第三付勢バー333a,333b…にも当接しない位置になると、一方の第三付勢バー333aと第三付勢片350との当接による付勢が解除され、コイルスプリングS2の付勢によって一方の第三付勢バー333a…が、他方の第三付勢バー333b…と同様の態様となる。
このように、ルーパー120…を挿通位置Cに位置させると共に切換体122…をカットパイル形成位置Eに位置させると、刺衝部11において基布Xに刺し通されたループ状のパイル糸Yは、基布Xの搬送に伴ってパイル形成手段12側に送られることになり、その結果、該パイル糸Y内にルーパー120…の挿通部125が挿入し、パイル糸Yが切換体122…を外側に押しやりつつカット領域Zに入り込み、該カット領域Z内のナイフ121との接触で略半分に切断され、カットパイルPCが形成される(図7(イ)参照)。そして、挿通部125が挿入されていたパイル糸Yが半分に切断されてカットパイルPCとなっているため、パイル糸Yとルーパー120…(ルーパー本体部126)とが干渉することなく基布Xが下流側に連続的に搬送されることになる。
そして、模様の変更等の理由により、カットパイルPCを形成していたパイル形成手段12でループパイルPLを形成するようにするには、図10(イ)に示す如く、第三位置変更装置301において、制御基盤からの信号で第三圧電素子体335…の電圧の極性が換わって第三回動子336…が回動し、第三付勢片350が他方の第一付勢バー133b…に当接可能な位置(第三規制手段332を付勢可能な規制解除位置P2)となる。しかる後、第三装置本体334が基布X上のパイル糸Yと交差する仮想線(交差線)上で一方向に移動する。
そうすると、第三付勢片350は、規制解除位置P2に位置することで一方の第三付勢バー333a…を躱した状態となっているので、一方の第三付勢バー333a…はその状態を維持するが、第三付勢片350の当接した他方の第三付勢バー333b…は、第三装置本体334の移動で同方向に移動(スライド)する。そして、該第三付勢バー333b…の当接部(先端部)341が第三ロック体332bのテーパー面340と接触し、さらに一方向に向けて当接部341が移動して第三ロック体332bを付勢する。
そうすると、テーパー面340の作用によって付勢力の分力が第三ロック体332bに作用し、係合状態が解除される方向に第三ロック体332bを回転させることになる。
その結果、図10(ロ)に示す如く、第三規制手段332による規制状態(第二支持部材330c(第三規制体332a)と第三ロック体332bとの係合状態)が解除されると共に、第三ロック体332bに対する当接部341の一方向への付勢が作用しなくなり、第三接続バー331…に対する規制が解除される。即ち、他方の第三付勢バー333b…は、第三ロック体332bと第二支持部材330cとの係合が解除された状態で、第三ロック体332bの下面に当接部341の外周が沿った状態となって、当接部341による付勢が作用しなくなる。そうすると、第三接続バー331…に外嵌したコイルバネS1の付勢力により、第三接続バー331…が他方向に向けてスライドし、該第三接続バー331…に連結された切換体122…(他方の片122…b)がループパイル形成位置Fに移動することになる。これに併せてナイフ121が退避位置に位置変更する。
そして、上述の如く、切換体122…がループパイル形成位置Fに到達すると、ルーパー120…が挿通位置Cで維持しているため、ループ状のパイル糸Yにルーパー120…の挿通部125が挿入した状態となる。この状態においては、基布Xの搬送に伴い、挿通部125が挿通状態にあるループ状のパイル糸Yがルーパー120…に干渉し(引っ掛かり)、基布Xの搬送が阻害される。そこで、ルーパー120…を非挿通位置Dに位置変更し、挿通部125をループ状のパイル糸Yから抜くことで、ループパイルPLが形成される。
このように、ルーパー120…を非挿通位置Dに位置変更するには、第二位置変更装置201において、切換体122…をループパイル形成位置Fに位置変更したのと同様に、第二圧電素子体235…の電圧の極性を換え、第二付勢片250が他方の第二付勢バー233b…に対応した位置となるように第二回動子236…を回動させた後、第二装置本体234を第二接続バー231…のスライド方向の一方向に向けて移動させ、第二ロック体232bと第二支持部材230cとの係合を解除し、ルーパー120…を他方向に移動させて非挿通位置Dに位置変更させる。
そして、ルーパー120…が非挿通位置Dに位置した後、第二圧電素子体235…の電圧の極性を換えて第二装置本体234を一方向に移動させ、ルーパー120…を挿通位置Cに位置変更すると、再度、ループ状のパイル糸Yにルーパー120…の挿通部125が挿入した状態となる。従って、第二圧電素子体235…の電圧の極性の切り換えと、第三装置本体334に対する一方向及び他方向への移動の切り換えとを行うことで、ルーパー120…が挿通位置Cと非挿通位置Dとに交互に位置変更し、パイル糸Yとルーパー120…との干渉が防止された上でループパイルPLが連続的に形成されることになる。
以上のように、本実施形態に係るタフティングマシンは、各位置変更装置101,201,301において、単体の装置本体134,234,334のみを移動させるだけで、ローラ100aや、ルーパー120…、切換体122…等の作動体を第一位置と第二位置とに位置変更することができるので、作動体毎に占有領域の大きなエアーシリンダー等のアクチュエータを設ける必要がなく、当該タフティングマシンの小型化を図ることができる。特に、帯状に形成した圧電素子体135…,235,335…により、回動子136…,236…,336…を回動させるようにしたので、装置本体134,234,334を極めて薄く且つ計量なものにすることができ、その結果、装置本体134,234,334を移動させる手段(アクチュエータ)に出力の小さなものを採用することができる。
そして、多数の作動体(ローラ100a,ルーパー120…,切換体122…)のそれぞれ作動させるのに、圧電素子体135…,235…,335…の作動と、装置本体134,234,334一つ当たりに一つの駆動のみでよいので、全体的なエネルギー消費を極めて低くすることができる。
尚、本発明のタフティングマシン及びタフティングマシン用の位置変更装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記実施形態において、位置変更装置101,201,301を組み込んだタフティングマシンについて説明したが、例えば、上記構成の位置変更装置13を独立したユニットとして構成し、タフティングマシンに組み込めるようにしてもよい。
上記実施形態において、ループパイルPL及びカットパイルPCの両方を形成することができるタフティングマシンを一例にして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ループパイルPLを形成するタフティングマシンであってもよい。この種のタフティングマシンは、図11に示す如く、切換体122…を備えずにルーパー120…を基布Xの搬送方向に沿って一方向及び他方向(往復)させるように構成されているので、上記実施形態に係る位置変更装置(タフティングマシン用の位置変更装置201の接続バー131…にルーパー120…を接続するようにすればよい。即ち、パイル糸Yが最終形態としてのループパイルPL或いはカットパイルPCとなる前段におけるパイル糸Yに対する交差線上で一方向及び他方向に移動して第一位置と第二位置とに位置変更する作動体が、複数のパイル糸Yの配置に対応して複数設けられ、これらを独立した位置変更させるように構成されたタフティングマシン、或いはそのタフティングマシンに適用する位置変更装置であればよい。
上記実施形態において、ループパイルPLを複数サイズを形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、一定サイズのループパイルを形成するものであってもよい。この場合、パイル形成手段12を一段設けるようにすればよい。
上記実施形態において、第二支持部材130c,230c,330cを各規制手段132,232,332…の規制体132a,232a,332aとして共用するようにしたが、これに限定されるものではなく、各規制手段132…,232…,332…毎に規制体132a,232a,332aを独立して設けるようにしても勿論よい。
上記実施形態において、規制手段132…,232…、332…を規制体132a,232a,332aとロック体132b,232b,332bとで構成し、ロック体132b,232b,332bを接続バー131…,232…,332bに枢着することで、ロック体132b,232b,332bの姿勢変更を行えるようにしたが、例えば、上記実施形態と同様に段差部139の形成されたロック体132b,232b,332bを接続バー131…,231…,331…に対し、該接続バー131…,231…,331…のスライド方向と直交する方向に移動可能に取り付けるようにしてもよい。このようにしても、ロック体132b,232b,332bに一方向の付勢力が作用したときに、ロック体132b,232b,332bが持ち上げられた態様となり、規制体132a,232a,332bに対する係合とその解除を行うことができる。但し、この場合においては、ロック体132b,232b,332bにおける付勢力が作用する部分をテーパー面に形成し、付勢力の分力が一方向と直交する方向に作用するようにすればよい。また、一方向の付勢力の分力がロック体132b,232b,332bを持ち上げる(移動させる)ように作用させるには、必ずしも付勢力の作用する部分をテーパー面にする必要はなく、例えば、R面で構成するようにしてもよい。
上記実施形態において、ロック体132b,232b,332bと規制体132a,232a,332aとの係合状態を付勢力の分力を作用させて解除すべく、ロック体132b,232b,332bの付勢力が作用する部分をテーパー面140にするようにしたが、例えば、付勢バー133a,133b…、233a,233b…、333a,333b…の当接部141,241,341の一部(ロック体132b,232b,332bと当接する部分)をテーパー面或いはR面状に形成してもよい。このようにしても、一方向の付勢力の分力がロック体132b,232b,332bに作用し、上記実施形態と同様に、ロック体132b,232b,332bを係合姿勢から解除姿勢に変更させ、接続バー131…,231…,331…の規制を解除することができる。
上記実施形態において、各接続バー131…,231…,331…と位置変更装置101,201,301との間に複数対の付勢バー133a,133b…,233a,233b…,333a,333b…を介在させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、位置変更装置101,201,301の回動子136…,236…,336…を正逆転させることで、付勢片150,250,350が接続バー131…,231…,331…又は規制手段132,232,332(ロック体132b,232b,332b)の何れか一方に当接可能な状態と、該付勢片150,250,350が接続バー131…,231…,331…又は規制手段132,232,332(ロック体132b,232b,332b)の何れか他方に当接可能な状態とに切り替わるようにしてもよい。即ち、回動子136…,236…,336…の付勢片150,250,350が接続バー131…,231…,331…、又は規制手段132,232,332…に直接当接できる構成にしてもよい。このようにしても、装置本体134,234を一方向に移動させることで、接続バー131…,231…,331…又は規制手段132,232,332の何れか一方のみを一方向に付勢することができる。但し、回動子136,236,336の付勢片150,250,350が接続バー131…,231…,331…及び規制手段132,232,332に対して直接当接できるようにするには、接続バー131…,231…、331…や規制手段132,232,332、付勢片150,250,350の形状を適宜設定する必要があるため、接続バー131…,231…,331…や規制手段132,232,332の基本的な構成に極力変更を加えないためには、上記実施形態と同様に、付勢バー133a,133b,233a、233b,333a、333bを介して接続バー131…,231…,331…及び規制手段132,232,332を付勢するようにすることが好ましい。
101,201,301…位置変更装置(タフティングマシン用の位置変更装置)、101…針、102…針駆動装置、100…圧着ローラ対、100a…ローラ(作動体)、110…ルーパー(作動体)、122…切換体(作動体)、131,231,331…接続バー、132,232,332…規制手段(第一規制手段、第二規制手段、第三規制手段)、132a,332a,332a…規制体(第一規制体、第二規制体、第三規制体)、132b,232b,332b…ロック体(第一ロック体、第二ロック体、第三ロック体)、133a,133b,233a,233b,333a,333b…付勢バー(第一付勢バー、第二付勢バー、第三付勢バー)、134,234,334…装置本体(第一装置本体、第二装置本体、第三装置本体)、135,235,335…圧電素子体(第一圧電素子体、第二圧電素子体、第三圧電素子体)、136,236,336…回動子(第一回動子、第二回動子、第三回動子)、139,239,339…段差部(第一段差部、第二段差部、第三段差部)、140,240,340…テーパー面、141,241,341…当接部(第一当接部、第二当接部、第三当接部)、150,250,350…付勢片(第一付勢片、第二付勢片、第三付勢片)、A,C,E…第一位置(圧着位置,挿通位置,カットパイル形成位置)、B,D,F…第二位置(圧着解除位置,非挿通位置,ループパイル形成位置)、P1…作動体押出位置、P2…規制解除位置、X…基布、Y…パイル糸