JP4924862B2 - 燃料電池セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面の親水性が向上した親水性導電層を有する燃料電池セパレータ及びその製造方法に関する。
燃料電池は、電極に燃料の供給を受けて燃料が有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するものであり、エネルギー変換効率の高い発電方法として知られている。このような燃料電池は、陽極には水素を含有する燃料ガスの供給を受け、陰極には酸素を含有する酸化ガスの供給を受けるが、各電極で電気化学反応が進行する際、陽極側又は陰極側において生成水が生じる。
通常、生じた生成水は、陽極側に供給されている酸化ガス中に気化し、酸化ガスとともに燃料電池外に排出される。しかし、生じる生成水の量が多くなると、酸化ガス中に気化させるだけでは生成水を排出しきれなくなってしまう。このように酸化ガス中に気化されずに残った生成水が陽極の周辺で水滴を成すと、ガス流路が閉塞されて陽極周辺での酸化ガスの流れが妨げられて電池性能の低下につながってしまう。
このようなガス流路の閉塞は、陽極ばかりではなく陰極でも起こり得る。通常、電気化学反応が進行する時、陰極側では陰極反応で生じたプロトンは所定の数の水分子と水和した状態で電解質膜中を陽極側へ移動するので、電解質膜の陰極側において水分が不足して導電性が低下してしまうのを防ぐ為に、陰極側に供給する燃料ガスに水蒸気を加えて、電解質膜に対して水を補う構成となっている。
このため、固体高分子型燃料電池の陰極では電池反応によって上記したような生成水が生じることはないが、陰極に供給される燃料ガス中の水蒸気の凝縮が起こりうる。
このように燃料ガス中に加えられた水蒸気は、燃料電池の始動時や、燃料電池の運転温度が低下して飽和蒸気圧が下がった時等に、ガス流路において凝縮してしまうことがあり、この場合には、陰極側においてもガスの流路が閉塞されて燃料ガスの流れが妨げられて、電池性能の低下につながることがある。
この場合、さらに上記したように陰極反応で生じたプロトンは水和した状態で陽極側に移動する為、陽極側では、前記生成水に加えて、プロトンの移動とともに持ち込まれる水分子も加わるので、水が過剰な状態となり、ガス流路がさらに閉塞され易い状態になる。
そこで、従来、燃料電池を構成する所定の部材に対して親水処理を施し、これによって生成水の排出性の向上が図られて来た。燃料電池を構成する部材を親水処理することによって、生成水は水滴として留まることなく、この親水部材によって所定の流路まで導かれるようになり、生成水がガスの拡散を阻害するのを防ぐことができる。
既述した固体高分子型燃料電池は、電解質層として固体高分子膜を用い、この固体高分子膜を挟持する一対のガス拡散電極と、ガス拡散電極を更に外側から挟持して燃料ガスと酸化ガスとを分離するセパレ−タとを有する単セルを基本単位として、この単セルを複数個積層した構造を備えている。
このような固体高分子型燃料電池では、上記したような親水処理は、ガス拡散電極の他、セパレ−タに対しても行われることが必要である。
セパレ−タは、通常緻密性カ−ボン等のようなガス不透過性導電性部材によって形成されており、その表面にはガス拡散電極との間でガス流路を形成するリブ構造が形成されている。
このセパレ−タを親水処理する方法としては、従来から種々の方法が提案されている。 すなわちセパレ−タを構成する原材料中に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、デンプンアクリル酸共重合体樹脂、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコ−ル等の親水性物質を添加混合して、セパレ−タ材質自体を親水化する方法(例えば特許文献1参照)が提案されている。
また各種素材からなるセパレ−タ表面を、親水化ガス中で低温プラズマ処理等の処理を行うことにより親水性を賦与する方法(例えば特許文献2参照)、セパレ−タ表面を1000℃前後の炎で処理することにより親水性を賦与する方法(例えば特許文献3参照)等が提案されている。
さらに、各種セパレ−タ表面に樹脂バインダ−を含む導電性被膜を形成させ、被膜に細孔を保持させたり、マイクロクラックを生じさせたり、内部に微細な凹凸を生じさせて親水性を賦与する方法(例えば特許文献4参照)、セパレ−タ表面に親水性フェノ−ル樹脂及びエポキシ樹脂の混合物を塗工し、硬化させることにより親水性を賦与する方法(例えば特許文献5参照)や、セパレ−タ表面に金属酸化物を含む親水性エポキシ樹脂を塗布、含浸させるか、又は金属酸化物とセパレ−タ表面に親水性エポキシ樹脂のみを塗布、含浸させた後、加熱により前記親水性樹脂を硬化させることで、それぞれ親水性を賦与する方法(例えば特許文献6及び特許文献7参照)等の親水性部材を備えたり親水性被膜を形成する方法が提案されている。
しかし、セパレータ材質自体を親水化する方法は、成形品全体の強度が低下し、高温で発電が行われると元の形状を維持できなくなるという問題がある。
またリブ構造を有するセパレ−タ表面の被膜にプラズマ処理等を行った場合は、表面の親水化層の厚みがサブミクロン程度と薄く、表面親水性を長期間保持することが難しく、親水性の低下とともに生成水の滞留によって起電力の減少を招来する。
また親水性被膜を形成する方法は、リブ構造を有するセパレータの表面の凸部には容易に親水性物質を塗布できるが、親水性を必要とする凹部のガス流路には塗布できず、親水性を付与することができない可能性がある。また親水性被膜は、一般に吸水により膨潤し体積変化を起こし易く、基材から剥離する可能性が極めて高く、あるいは剥離しなくとも、使用中、被膜が徐々に溶出し、凹部の親水性が失われる恐れがある。
親水性被膜が導電性材料を含まない場合には、セパレ−タ表面に絶縁性被膜を形成することになり、ガス拡散電極との間の導電性確保の為の処理が必要となるという問題がさらに発生する。
さらに、前記特許文献1には、親水性物質を含まない非親水性シートに親水性シートを積層し成形する方法が提案されている。
しかしながら、この方法では、ガス流路の親水性が高くなるものの、熱水環境での強度を維持することができず、燃料電池用セパレータの構造が維持できなくなる恐れがある。
特開平10−3931号公報 国際公開第99/40642号パンフレット 特開2002−313356号公報 特開2000−58083号公報 特開2000−251903号公報 特開2003−217608号公報 特開2003−297385号公報
上述したように、リブ構造を有するセパレ−タにおいて、溝部に生成した水が滞留し、スムーズに排出できないことによる、起電力の低下がなく、高い導電性を確保でき、且つ安定した親水性を賦与することができるセパレ−タを提供することが要請されていた。
そのような要請に鑑み、本発明は、燃料ガスの通路である溝部の広範囲に亘る水の濡れ性を改良し、かつ長期間使用した場合にもその親水性を持続することができ、しかも導電性にも優れた燃料電池セパレータ及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明者は、前記課題について検討した結果、基体用成形材料に、粉末状炭素材料を表面に有し、親水性樹脂を含有する親水性樹脂シートを積層すると、ガス流路での親水性を確保することができ、しかもその導電性を長期間維持することができることを発見するに及んで、本発明を完成させるに至った。
本発明は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と炭素材料とを構成成分とする基体表面の少なくとも一部に、粉末状炭素材料及びカプロラクタム基を有する親水性樹脂を含有する親水性樹脂シートを積層してなる燃料電池セパレータに関する。
又、本発明は、熱硬化性樹脂と炭素材料とを含む基体用シート状成形材料を予備硬化し、その少なくとも片面の一部に、粉末状炭素材料及びカプロラクタム基を有する親水性樹脂を含有する親水性樹脂シートを積層して成形することを特徴とする燃料電池セパレータの製造法、及び、熱可塑性樹脂と炭素材料とを含むシート状成形材料を予め加熱し、次いでその少なくとも片面の一部に、粉末状炭素材料及びカプロラクタム基を有する親水性樹脂を含有する親水性樹脂シートを積層して成形することを特徴とする燃料電池セパレータの製造法に関する。さらに本発明は、前記燃料電池セパレータを組み込んでなる燃料電池に関する。
本発明の燃料電池セパレータは、親水性導電層を有することにより、溝部での高い濡れ性を示すものであり、酸化剤ガスが溝部に流入しても、生成水が溝部に滞留することなく流動し、スムーズに排出することができるものである。それにより、過剰な水により燃料ガスの供給が妨げられることが無く、起電力が安定するので、本発明のセパレータを用いた燃料電池スタックは、長期間に亘って安定的な発電が可能となる。
本発明における基体とは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と炭素材料とを構成成分とする燃料電池セパレータ成形品の土台となる部分を意味する。
基体を構成する炭素材料としては、人造黒鉛、リン片状天然黒鉛、塊状天然黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック又は非晶質炭素を挙げることができる。これらのうち、導電性と価格の点で、人造黒鉛、リン片状天然黒鉛、塊状天然黒鉛、膨張黒鉛が好ましい。これらの炭素材料を一種又は2種以上混合して用いることができる。また炭素材料の粒子径は、平均粒子径が100〜400μmであることが好ましく、平均粒子径が200〜300μmであることがより好ましい。また炭素材料のアスペクト比は1〜5が好ましい。アスペクト比が1〜5で、かつ200〜300μmである炭素材料が特に好ましい。上記の炭素材料からなる繊維、例えば1〜15mmの繊維長の炭素繊維、マット、シート、ペーパーなどを使用することもできる。
これらの炭素材料は、基体中50〜95重量%であることが好ましく、65〜90重量%であることがより好ましい。
又、基体を構成する熱硬化性樹脂としては、例えばポリカルボジイミド樹脂、フェノール樹脂、フルフリルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂などを挙げることができ、これらのうち、耐食性、耐久性の点でビニルエステル樹脂が好ましい。この熱硬化性樹脂は、粉末状や粘ちょう液状のまま用いることができるし、またこれらの形態でない場合、水、アルコール、ケトンなどの溶媒やスチレンなどの液状の反応性希釈剤と混合して液状にして用いられる。
又、熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ポリエステルなどを挙げることができるが、耐熱性や耐酸性に優れることから、ポリフェニレンスルフィドが好ましい。かかる樹脂の形状としては、粉末状、フィルム状、織布、不織布、マットなどであるが、取り扱いの簡便さから、特に不織布が好ましい。
本発明で、熱硬化性樹脂による基体用シート状成形材料を、一定の形状に安定して保つため、熱硬化性樹脂と炭素材料とを含む組成物に、樹脂中の溶剤を吸着できる微粒子状物質を添加することが好ましい。かかる微粒子状物質を添加した後に、プリプレグ状に成形したシートを用いて成形すると、樹脂シートの取り扱い性がよく、積層したシート間の密着性が優れるセパレータを得ることができる。これらの微粒子状物質は通常の有機溶剤を吸収してゲル状になり、樹脂シート中の未硬化部分と基体中の熱硬化性樹脂とが硬化することにより、基体と親水性樹脂シートとの密着性を向上することができる。
前記溶剤を吸着することができる微粒子状物質としては、例えばアクリル系重合体、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステルからなる微粒子等が挙げられる。これらのうち、溶剤吸着特性の点でアクリル系重合体、ポリスチレンが好ましい。これらの微粒子の平均粒子径は取り扱い性と溶剤吸着能力の点を考慮すると、数百nm〜数十μmが好ましい。
基体を構成する原料としてその他、スチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸、t−ブチルスチレン、ビニルナフタレン等のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体、ジアシルパーオキサイドやパーオキシエステルなどの硬化開始剤、ナフテン酸コバルト等の硬化促進剤、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン等の硬化遅延剤、可塑剤、低収縮剤、チクソ剤、界面活性剤等が挙げられる。
本発明のセパレータは、基体表面の少なくとも一部に後記の親水性樹脂シートを積層してなるものである。
基体の表面には、燃料ガス、酸化剤ガス、及び冷却水が流通する、いわゆるガス流路(溝)部分があり、この部分の親水性が必要とされるため、この部分のみ親水性樹脂シートを積層することが好ましいが、基体表面全面に親水性樹脂シートを積層してもかまわない。「基体表面の少なくとも一部」とはこのことを意味する。ガス流路のみ親水性樹脂シートを積層する場合、後記基体用成形材料のガス流路の該当部分に親水性樹脂シートを積層してから成形すればよい。
本発明に使用する親水性樹脂シートは、粉末状炭素材料及びカプロラクタム基を有する親水性樹脂を含むものであれば、いかなるものでも使用することができる。
粉末状炭素材料及びカプロラクタム基を有する親水性樹脂を含む親水性樹脂シートとしては、例えば粉末状炭素材料が均一に分散している親水性樹脂シート、粉末状炭素材料を表面に有する親水性樹脂シート等が挙げられる。
粉末状炭素材料が均一に分散している親水性樹脂シートとしては、例えば粉末状炭素材料と親水性熱可塑性樹脂繊維とから形成された不織布状シート、粉末状炭素材料と粉末状親水性熱硬化性樹脂との混合物を成形した樹脂シート、等が挙げられる。
粉末状炭素材料を表面に有する親水性樹脂シートとしては、例えば不織布等の親水性熱可塑性樹脂シートに粉末状炭素材料を熱融着により固着した親水性樹脂シート、熱硬化性樹脂溶液の表面に粉末状炭素材料を散布した後加熱して、熱硬化性樹脂を部分硬化させ粉末状炭素材料を固着し親水性樹脂シート等が挙げられる。使用する樹脂の特性に応じて、適宜これらの樹脂シートを用いることができる。
前記親水性樹脂の上に粉末状炭素材料が固着されている親水性樹脂シートは、その表面部分の少なくとも一部に粉末状炭素材料が表出しているものであることが特に好ましい。炭素材料が表出していると、得られるセパレータの表面にも炭素材料が露出しやすくなり、その結果セパレータに要求される導電性が高くなる。
本発明に使用する親水性樹脂シートの粉末状炭素材料の含有量については、基体を構成する粉末状炭素材料の場合と同様であることが好ましい。すなわち、親水性樹脂シート中50〜95重量%であることが好ましく、65〜90重量%であることがより好ましい。
粉末状炭素材料としては、前記の基体中の炭素材料として掲げたものを使用することができる。
また粉末状炭素材料の粒子径についても、基体を構成する粉末状炭素材料の場合と同様、好ましくは150〜400μm、より好ましくは200〜300μmである。
粉末状炭素材料を表面に有する親水性樹脂シートの表面における炭素材料の面積は、圧縮成形により基体用成形材料と親水性樹脂シートとが一体化されたセパレータにおいて、その表面の20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましい。かかる炭素材料の面積が20〜80%の範囲であれば、導電性が良好であるだけでなく、水に対する濡れ性にも優れるものになる。
かかる親水性樹脂シートの厚みは、圧縮成形されたとき変形によりシートがちぎれてしまわない程度であることが必要である。また、あまりに厚すぎるとセパレータ中に含まれる基体の含有量が減少し、強度等の要求特性が満足できなくなる懸念があることから、親水性樹脂シートの厚みは、好ましくは0.05〜5mm、より好ましくは0.05〜3mmである。
かかる粉末状炭素材料を用いることによって、親水性樹脂シートに導電性が付与されるが、シートの厚さや粉末状炭素材料の含有量によって導電性が不十分な場合には、有効な導電性を付与するために炭素繊維からなるシート(以後炭素繊維シートという)を基布として使用するのが好ましい。炭素繊維シートを使用することにより、併せて親水性樹脂シートの強度や耐熱性をも向上することができる。
かかる炭素繊維シートの単位重量は、1〜30g/m、より好ましくは5〜20g/mである。また炭素繊維シートの形態は、繊維方向性の少ない不織布状のものが望ましい。なお単位重量が増えると厚みが増大し、樹脂含浸性が悪化したり、圧縮成形時にセパレータの溝転写性が悪化したりするので、溝形状に応じて、最適なものを選択する。
使用される炭素繊維としては、繊維径1〜10μmの一般的な炭素繊維の他、1μm以下の炭素ナノファイバー、ナノチューブも利用可能であり、適宜選択し使用される。
親水性樹脂シートを構成する親水性樹脂としては、保水性を有するが、水で膨潤しないものであることが好ましい。さらに粉末状炭素材料を表面に有する親水性樹脂シートの場合、粉末状炭素材料を固着できることが、シート表面に粉末状炭素材料の層を形成することができるので、特に好ましい。
本発明に使用する親水性樹脂は、親水性能を発揮するアミド結合を含む環を形成しているカプロラクタム基を有する樹脂である。かかる樹脂は、例えばビニルカプロラクタムなどの親水性官能基を有する化合物と、その他のビニル化合物、例えば酢酸ビニル、スチレン、疎水性(メタ)アクリル酸エステル等を重合して得られるものである。
ビニルカプロラクタムは、親水性樹脂の構成成分中30〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは40〜85重量%である。ビニルカプロラクタムが上記の範囲にあれば、親水性に優れ、強度や熱水に対する強度の耐久性などの特性が向上したセパレータを得ることができる。
カプロラクタム基は、親水性樹脂を構成する主鎖からの脱離が起こりにくいため、この官能基を含む親水性樹脂は、高温・高湿度の雰囲気下で使用される燃料電池セパレータに用いると、耐加水分解性にも優れたものになる。
またビニルカプロラクタムの重合体である、ポリビニルカプロラクタムを親水性樹脂として用いた場合、ガラス転移温度が固体高分子型燃料電池の運転温度よりもはるかに高い155℃付近であるため、燃料電池の運転中に含水しても、セパレータが変形する恐れがないという効果をも有する。
かかる親水性樹脂は、例えばビニルカプロラクタムに非親水性のエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂とを反応させる方法、ビニルカプロラクタムとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物とを反応させて得られる長鎖の親水性熱可塑性樹脂に非親水性の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を混合する方法、又はビニルカプロラクタムと前記非親水性のエチレン性不飽和二重結合を有する熱硬化性樹脂又はエチレン性不飽和二重結合を有する化合物とを半硬化させる方法等により製造することができる。
本発明に使用する親水性樹脂シートは、セパレータの親水性が維持される限度で、強度や目的に応じて、前記親水性樹脂に非親水性樹脂を併用することができる。これらの非親水性樹脂は、上記の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を使用することができる。
親水性樹脂シートの親水性樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、前記基体用成形材料と同様に、熱硬化性樹脂と炭素材料とを含む組成物に、樹脂中の溶剤を吸着できる微粒子状物質を添加することが好ましい。溶剤を吸着する微粒子状物質としては、前記のものを使用することができる。
次に親水性樹脂シートの具体的製造方法について、親水性樹脂シートの樹脂が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の場合に分けて説明する。
親水性樹脂シートの樹脂が熱硬化性樹脂の場合における、代表的な製造方法を2つ以下に例示する。
1つ目としては、粉末状炭素材料がシート中に均一に存在する場合である。成形材料の構成成分である前記原料を、所定の配合で均一になるように混練し混合物を作成する。次に混練後に2本ロール等を用いてシート状に形状を整え、その後そのままの形状を維持するとゲル状態のシート状成形材料を得ることができる。また2本ロールを用いず、ゲル状の塊状成形材料を作製し、これを2本ロール等を用いてシート状に形状を整えることにより、所望のシート状成形材料を得ることができる。
2つ目としては、粉末状炭素材料が表面に多く分布する、親水性樹脂シートを作成する場合である。
セパレータの平面の大きさ、もしくは電極部分の形状の大きさに相当する容器に、親水性樹脂及びその他熱硬化性樹脂を含有する樹脂溶液を所定量注ぎ込む。炭素繊維シートを基布として用いる場合には、容器底面にこの炭素繊維シートを予め敷いた上に樹脂溶液を注ぎ込む。次いで所定量の炭素粉末を容器底面に対して均一に分布するように樹脂溶液の上に散布する。次にその樹脂溶液が入った容器を一定時間加熱し、樹脂成分を部分架橋又は予備架橋し、プリプレグを成形する。
前記樹脂溶液中には、プリプレグ状態にするとき、又はプレス成形時に完全硬化させるときに、重合開始剤及び重合禁止剤を適宜配合することができる。また、その他可塑剤、低収縮剤、チクソ剤、界面活性剤等を含んでいてもよい。
親水性樹脂シートの樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、樹脂が溶融する温度以上に保温した容器内に熱可塑性樹脂を入れて、樹脂の厚みが容器底面で均一になるようにする。その上に炭素粉末を更に均一になるように散布する。基布として炭素繊維シートを用いる場合には熱硬化性樹脂の場合と同様、容器底面にこの炭素繊維シートを敷いた上に樹脂を入れる。このような方法により、炭素粉末が均一に分布し、かつ炭素粉末が表出した構造の、親水性樹脂シートを作成することができる。
親水性樹脂シートを作成する際、基布として炭素繊維シートを用いる場合、炭素繊維に対する濡れ性を改善するために、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を溶剤に希釈することができる。希釈剤としては、例えばスチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸、t−ブチルスチレン、ビニルナフタレン等の反応性希釈剤、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン等の非反応性希釈剤などが挙げられる。
次に、本発明の基体用成形材料の表面の少なくとも一部に親水性樹脂シートを積層し成形することによって燃料電池用セパレータを製造する方法について説明する。
かかる方法としては、以下の方法が挙げられる。
(i)基体用成形材料を構成する樹脂と親水性樹脂シートの親水性樹脂とが熱硬化性樹脂からなる場合には、熱硬化性樹脂と炭素材料とを含む基体用成形材料を予備硬化し、その少なくとも片面の一部に、粉末状炭素材料を含む親水性樹脂シートを積層し、次いで得られる積層体を成形する方法が挙げられる。具体的には、金型内でプリプレグ状にした樹脂と炭素材料とからなる基体用成形材料の上に粉末状炭素材料を含むプリプレグ状の親水性樹脂シートを積層し、成形するものである。この方法は、基体用成形材料と親水性樹脂シートとの積層位置を安定化させ、両者の密着性を向上させる点で好ましい。
(ii)基体用成形材料を構成する樹脂が熱可塑性樹脂からなり、親水性樹脂シートの親水性樹脂が熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる場合には、熱可塑性樹脂と炭素材料とを含む基体用成形材料を予め加熱し、その少なくとも片面の一部に、粉末状炭素材料を含む親水性樹脂シートを積層し、次いで得られる積層体を成形する方法が挙げられる。具体的には、樹脂と炭素材料とからなる混合物を成形し基体用のシート状成形材料を作製し、前記成形材料を成形材料中の樹脂のガラス転移点以上で融点以下の温度に加熱し、前記の成形材料を金型に入れ、その上に予め作製した粉末状炭素材料を含む親水性樹脂シートを積層し成形するものである。
前記基体用成形材料は、公知慣用の方法により製造することができる。
すなわち、まず基体用成形材料の構成成分である前記原料を、所定の配合で均一になるように混練し混合物を作成する。
次にこの混合物中の樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、混練後に2本ロール等を用いてシート状に形状を整え、その後そのままの形状を維持するとゲル状態のシート状成形材料を得ることができる。また2本ロールを用いず、ゲル状の塊状成形材料を作製し、これを2本ロール等を用いてシート状に形状を整えることにより、所望のシート状成形材料を得ることができる。又は粉末状炭素材料と繊維とから炭素材料が分散した不織布を作製し、この不織布を複数枚積層することにより、シート状成形材料を得ることができる。
また混合物中の樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、混練後に2本ロール等を用いてシート状に形状を整えると、その後成形材料の温度が低下するに伴い粘度が上昇し、形状が安定化して、所望のシート状成形材料を得ることができる。
2本ロールを用いてシート状に形状を整えることは、炭素材料が破壊されず、平均粒子径が変化しないため、高い導電性を維持した燃料電池用のセパレータを得ることができる点で好ましい方法である。
その他、前記の親水性樹脂シートの親水性樹脂を非親水性樹脂に変えて非親水性樹脂シートを作製し、このシートを複数枚積層したものを使用することもできる。
熱硬化性樹脂を含む基体用成形材料には、樹脂中の溶剤を吸着することができる微粒子状物質を含むことが好ましい。溶剤を吸着することができる微粒子状物質としては、例えばアクリル系重合体、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステルからなる微粒子等が挙げられる。これらのうち、溶剤吸着特性の点でアクリル系重合体、ポリスチレンが好ましい。これらの微粒子の平均粒子径は取り扱い性と溶剤吸着能力の点を考慮すると、数百nm〜数十μmが好ましい。
基体用成形材料に親水性樹脂シートを積層し、成形する方法については、公知慣用の手法を用いることができる。成形法は、成形材料を所定の形状に保持しつつ成形することにより本発明の特徴を発現させるためには、プレス成形、トランスファー成形が特に好ましい。
基体用成形材料を構成する樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合、加熱温度は、使用する熱硬化性樹脂の種類により相違するが、成形条件は、通常温度が100〜200℃であり、又加える圧力が15〜60MPaであることが適切である。またこの場合、金型内に積層体を裁置し、加熱せずに圧縮成形、いわゆる冷間成形を行い、その後3次元形状が変わらないように維持しながら、エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる方法も挙げられる。ここでエネルギー線とは、紫外線、赤外線、電子線、放射線等、可視光波長以下の波長の光を指す。この冷間成形の場合の圧力は、通常10〜50MPaであることが適切である。
燃料電池セパレータは、通常片面に水素ガス等の燃料ガスの流路の溝が形成され、他の面に冷却水の流路の溝が形成されたものと、片面に空気等の酸化剤ガスの流路が形成され、他の面に冷却水の流路の溝が形成されたものとが一対になって使用される。また片面のみにガスの流路の溝を形成し、他の片面を平板状としたものを一対で用いる場合もある。
本発明の燃料電池は、前記燃料電池セパレータを組み込んでなるものである。すなわち
電解質が電極で挟持され、更に外側に、前記セパレータが配設された基本構成単位である単セルのみから構成されるものか、又はこの単セルを複数積層してなるものである。
ここで、燃料電池は、燃料を改質して得られた水素を主燃料として、この水素が酸素と反応した時の化学エネルギーを電力として取り出す発電方式を利用するものである。本発明における燃料電池は、この発電を生ぜしめる単セルを単一あるいは直列に複数重ねたスタック構造とし、スタックの両端に設けた集電板で集電することにより形成されるものである。かかる燃料電池としては、固体高分子型燃料電池、リン酸型燃料電池などが挙げられる。
本発明の燃料電池は、例えば電気自動車用電源、ポータブル電源、非常用電源等の他、人工衛星、飛行機、宇宙船等各種の移動体電源として使用することができる。
[熱硬化性樹脂の調製]
(調製例1)
窒素および空気導入管を設けた2Lの4つ口フラスコに、エピクロン850[ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、大日本インキ化学工業(株)製]910g、メタクリル酸398g、ハイドロキノン0.4gを仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール2.0gを入れ、105℃に昇温して10時間反応させた。このようにしてビニルエステル樹脂を得た。以後このビニルエステル樹脂を熱硬化性樹脂R−1という。
次に、このビニルエステル樹脂R−1をスチレン503g、ジビニルベンゼン(純度80%)201g、トルハイドロキノン0.2gに溶解させ、固形分65重量%のビニルエステル樹脂液を得た。以後これを熱硬化性樹脂V−1という。
[基体に使用する熱硬化性樹脂成形材料の調製]
(調製例2)
攪拌容量2Lのニーダーに、SGS250(平均粒子径250μmの炭素粉末、(株)エスイーシー製)1235g、熱硬化性樹脂V−1 315g、硬化剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート3.2g、平均粒子径1μmのポリメタクリル酸メチル微粒子43.2gを仕込み、室温にて攪拌混合した。
次に、ステンレス製バットに取り出し、厚さ10mm程度になるように、平坦化した後、揮発防止のためPET製シートで蓋をした。さらにスチレン不透過性の多層フィルム製の袋にバットごと挿入し、封をした。このバットを45℃の貯蔵庫にて24時間静置した後取り出し、室温にて放冷し、成形材料を得た。以後この成形材料を熱硬化性樹脂成形材料C−1という。
[親水性樹脂シートの調製]
(調製例3)
ポリビニルカプロラクタム(Luviskol Plus;BASF製)35g、熱硬化性樹脂V-1を4.68g、重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.1g、メチルエチルケトン20g、をそれぞれ計量し、均一になるまで混合し、親水性樹脂シート用の樹脂溶液H−1を調製した。底面が16cm角のガラス製容器に、底面と同じ大きさの炭素繊維シート0.28g(単位重量12g/m)を敷き、その上から樹脂溶液H−1 22.4gを、炭素繊維シートが均一に濡れるように少しずつ投入した。次にその上からSGS250 7.0gを均一に散布し、付着させた。その後70℃の恒温槽中で30分間加熱した。容器が室温まで冷却した後、容器からシートを引き剥がし、親水性樹脂シートを得た。以後この親水性樹脂シートを親水性樹脂シートS−1という。
(調製例4)
ビニルカプロラクタム単量体35gと、その他は調製例3と同様の処方により、恒温槽内で同様の処理を行い、親水性樹脂シートを得た。以後この樹脂シートを親水性樹脂シートS−2という。
この場合、恒温槽内でビニルカプロラクタム及び熱硬化性樹脂V−1を重合反応させたが、反応は完全に進行させずに半硬化のゲル状態になった。
(調製例5)
調製例1と同様の4つ口フラスコに、エピクロン850 910g、メタクリル酸398g、ハイドロキノン0.4gを仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール2.0gを入れ、105℃に昇温して10時間反応させた。このようにしてビニルエステル樹脂を得た。次に、このビニルエステル樹脂をビニルカプロラクタム503g、ジビニルベンゼン(純度80%)201g、トルハイドロキノン0.2gに溶解させ、固形分65重量%のビニルエステル樹脂液を得た。以後この樹脂液をビニルエステル樹脂液V−2という。次いで攪拌容量2Lのニーダーに、SGS250を1235g、熱硬化性樹脂V−2を315g、硬化剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート3.2g、平均粒子径1μmのポリメタクリル酸メチル微粒子43.2gを仕込み、室温にて攪拌混合させた。次に、ステンレス製バットに取り出し、厚さ1mm程度になるように、平坦化した後、揮発防止のため、PET製シートで蓋をした。さらにジビニルベンゼン不透過性の多層フィルム製の袋にバットごと挿入し、封をした。このバットを45℃の貯蔵庫にて24時間静置した後取り出し、室温にて放冷した。以上のような方法で、親水性樹脂シートを得た。以後このシートを親水性樹脂シートS−3という。
(調製例6)
SGS−250を使用しない以外は、調製例4と同様にして親水性樹脂シートを得た。このシートの重量は、4.9gであった。同様な操作を繰り返し、複数枚のシートを得た。以後このシートを親水性樹脂シートPS−1という。
(調製例7)
SGS-250を77g、調製例1で作成したビニルエステル樹脂R−1を10.3g、ビニルカプロラクタムを10.3g、硬化剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.5g、平均粒子径1μmのポリメタクリル酸メチル微粒子2.3gを仕込み、室温にて攪拌混合させた。次に、ステンレス製バットに取り出し、厚さ1mm程度になるように、平坦化した後、揮発防止のため、PET製シートで蓋をした。さらにカプロラクタム不透過性の多層フィルム製の袋にバットごと挿入し、封をした。このバットを45℃の貯蔵庫にて24時間静置した後取り出し、室温にて放冷した。以上のような方法で、親水性樹脂シートを得た。以後このシートを親水性樹脂シートS−4という。
[燃料電池セパレータの製造]
《実施例1》
調製例2で得られた熱硬化性樹脂成形材料C−1を、ロールを用いてシート状に賦形した。このシート状の成形材料に必要な重量及び厚みは、目的の成形品規格により微調整した。すなわち、単位重量2700g/mとなるようにシート化を行い、成形品に合わせて、形状を決め、切断し、重量を調整した。成形品のガス流路の形状は、およそ14.5cm角であった。
次いで調製例3で得られた親水性樹脂シートS−1 2枚をガス流路の形状に合わせて切断加工を行った。この時2枚合わせた重量は、12gであった。次に前記の熱硬化性樹脂成形材料シートを14.5cm角に切断し、重量が69gになるように微調整した。このシートを親水性樹脂シートS−1 2枚で挟み、サンドイッチ構造のシートを得た。電極部以外の外周部は、熱硬化性樹脂成形材料シートのみを必要な形状に加工、重量調整した。外周部の総重量は、90gとした。材料は、流路部1枚、周辺部4枚の計5枚に分割して燃料電池用セパレータ形状金型にチャージした。圧縮成形機で、油圧出力160t(ゲージ圧力)、上型140℃、下型150℃、成形時間5分の条件で成形し、23cm角、厚み2.8mm、流路深さ0.8mmの燃料電池セパレータ状成形品を製造した。その後、不要部分を切断等加工した後、燃料電池セパレータを得た。このセパレータの流路部表面に固定されたシートの厚みは、平均0.1mmであった。このセパレータについては、外観の評価、水濡れ性、導電性及び、耐熱水性の評価を行った。評価結果を表−1に示す。
《実施例2、3、4》
親水性樹脂シートを、実施例2ではシートS−2を用い、実施例3ではシートS−3を用い、実施例4でシートS−4を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、燃料電池セパレータを製造した。
《比較例1》
親水性樹脂シートS−1を2枚使用する代わりに、調製例6で得た親水性導電シートPS−1 2枚を切断加工したものを用いる以外、実施例1と同様の操作を行い、セパレータを製造した。この時2枚合わせた重量は、8gであった。さらに流路部の成形材料C−1の重量(14.5cm角)を74gに調整した以外は、同様にして圧縮成形及び加工を行い、実施例1と同形状の燃料電池セパレータを得た。このセパレータの流路部表面に固定されたシートの厚みは、平均0.1mmであった。このセパレータについても、実施例1と同様に外観の評価、水濡れ性、導電性及び、耐熱水性の評価を行った。評価結果を表−1に示す。
《比較例2》
親水性樹脂シートS−1の2枚を使用しない以外、実施例1と同様の操作を行い、セパレータを製造した。さらに流路部の成形材料C−1の重量(14.5cm角)を82gに調整した以外は、同様にして圧縮成形及び加工を行い、実施例1と同形状の燃料電池セパレータを得た。このセパレータについても、実施例1と同様に外観の評価、水濡れ性、導電性及び、耐熱水性の評価を行った。評価結果を表−1に示す。
本発明で用いた測定方法及び評価基準を以下に述べる。
[成形品の外観評価]
実施例で得られた燃料電池セパレータを試料として、目視観察を行うことにより、燃料電池セパレータの表裏両面の溝(流路)が均質に形成されているものを「良好」とした。また燃料電池セパレータの表裏両面の溝(流路)に欠陥、白化が認められるものを「不良」とした。
[成形品の親水性の評価]
実施例で得られた成形品を試料として、協和界面科学製CA−Z型(イオン交換水を用いた液滴法による接触角の測定機械)を用いて、溝の凸部の接触角を測定した。測定は、8回の平均値を結果とした。測定は、22℃、湿度60%の雰囲気で行った。
[成形品の排水性の評価]
実施例で得られた成形品のみを用いた簡易な方法により排水性を評価した。
成形品を水平な台上に置き、溝の凹部に注射器及び注射針を用いてイオン交換水を一滴(0.012g)、溝上5mmの高さから滴下した。5秒後に溝内に展開した長さを測定した。測定6回の平均値を結果とした。なお測定雰囲気は、22℃、湿度60%であった。
この時、溝内が親水性で水との濡れ性が優れる場合には、速やかに水が展開する。その時の目安は、10mm以上である。溝部が水との濡れ性に劣る場合には、水は滴下した直後のままの状態を保持する。その時の目安は、5mm以下である。つまり、水滴が速やかに溝内に展開する場合には、溝を詰まらせることなく安定した排水性が期待できる。一方、水滴が速やかに溝内に展開しない場合には、溝を詰まらせ、燃料ガス等の供給及び、水の排出が不安定となり発電特性に悪影響を与える可能性が高くなる。
[成形品の導電性の評価]
実施例で得られた成形品の導電性は、電極部(溝、流路部)の接触抵抗を測定することにより評価した。
実際には、成形品の電極部と同じ寸法(14.5cm角)の金メッキ電極を2枚と、同寸法のカーボンペーパー(厚さ0.4mm)を用意し、成形品の電極部を同カーボンペーパー及び電極で挟み、さらに油圧プレスにて1MPaの圧力下、10mAの交流を印加した。この時の電極間の電圧降下ΔV(μV)を測定し、導電性の指標とする。測定3回の平均値を結果とした。電圧降下ΔVが低い値を示す程、導電性に優れ、接触抵抗が低いと判断することができる。同条件で測定することにより相対比較できる。
[成形品の耐熱水性の評価]
実施例で得られた成形品の電極部(溝、流路部)のみを25mm×50mmのサイズに切断し試料片を作製した。この試料片をイオン交換水の入ったフッ素樹脂容器に入れ封をし、この容器を95℃の乾燥器に入れ、200時間煮沸を行った。その後、室温まで徐冷し試料片を取り出した。その時の外観を目視にて評価した。その時の評価基準を以下に示す。
成形品の両面の溝とも良好に形状が保持されており、親水性も維持されているとき「良好」とし、成形品の両面の溝の一部が、崩壊している、また表面のシートが剥離したり、膨れたりしているときを「不良」とした。
[成形品の耐熱変形性の評価]
実施例で得られたセパレータを、80℃に恒温された平らなホットプレートの上に静置し、その電極部(溝、流路部)に先端の平坦な1Φの端子を押し付け、その端子により溝部に面圧10Kgf/cm2の荷重を与えた。そのとき溝部が変形したかどうかにより耐熱変形性を評価した。変形がほとんど見られないものを「良好」とし、そうでなく溝部が変形してしまうものを「不良」とした。
Figure 0004924862
表−1の評価結果のとおり、本発明の実施例に従って作製したセパレータは、比較例に従って作製したセパレータに比べて、排水性や導電性に優れ、かつ耐熱水性にも優れている。
実施例1は、外観品質が良好で、高品質な成形品が得られ、さらに溝(流路)部が水との濡れ性に優れかつ導電性、耐熱水性も良好であり、排水性の優れた高性能の燃料電池用セパレータが提供できる。
又、実施例1のセパレータを用いて固体高分子型燃料電池の単セルに組み込んで、セル温度80℃にて発電させ、電流−電圧特性を測定したところ、1(A/cm)以上の高電流密度の範囲でも出力(電圧)が安定していた。
一方、比較例1は、水との濡れ性は改善されているが、外観品質が不良で、導電性も低い。よって、燃料電池用セパレータとして使用できず、比較例2は、外観品質が良好で導電性にも優れるが、水との濡れ性が悪い。
又、比較例2のセパレータを用いて固体高分子型燃料電池の単セルに組み込んで、セル温度80℃にて発電させ、電流−電圧特性を測定したところ、排水性が劣るため、1(A/cm)以上の高電流密度の範囲では、出力(電圧)が不安定になり低かった。

Claims (10)

  1. 熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と炭素材料とを構成成分とする基体の少なくとも一部に、粉末状炭素材料及びカプロラクタム基を有する親水性樹脂を含有する親水性樹脂シートを積層してなる燃料電池セパレータ。
  2. 前記カプロラクタム基を有する親水性樹脂が、ビニルカプロラクタムを構成成分とする請求項1記載の燃料電池セパレータ。
  3. 前記粉末状炭素材料の含有量が、親水性樹脂シート中50〜95重量%である請求項1又は2記載の燃料電池セパレータ。
  4. 前記粉末状炭素材料の含有量が、基体中50〜95重量%である請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ。
  5. 前記粉末状炭素材料の平均粒子径が150〜400μmである請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ。
  6. 前記親水性樹脂シートが、炭素繊維からなるシートを基布として使用してなる請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ。
  7. 前記親水性樹脂シートの厚さが、0.05〜5.0mmである請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池セパレータ。
  8. 熱硬化性樹脂と炭素材料とを含む基体用成形材料を予備硬化し、その少なくとも片面の一部に、粉末状炭素材料及びカプロラクタム基を有する親水性樹脂を含有する親水性樹脂シートを積層し、次いで得られる積層体を成形することを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。
  9. 熱可塑性樹脂と炭素材料とを含む基体用成形材料を予め加熱し、次いでその少なくとも片面の一部に、粉末状炭素材料及びカプロラクタム基を有する親水性樹脂を含有する親水性樹脂シートを積層し、次いで得られる積層体を成形することを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の燃料電池セパレータを組み込んでなる燃料電池。
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