JP4924400B2 - ボンド磁石用組成物およびそれを用いたボンド磁石。 - Google Patents

ボンド磁石用組成物およびそれを用いたボンド磁石。 Download PDF

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Description

本発明は、希土類−鉄−窒素系磁性粉末とフェライト磁性粉末と樹脂バインダとを含むボンド磁石組成物およびそれを用いたボンド磁石に関する。
磁石の形態としては、凡そ、焼結磁石とボンド磁石に分類される。焼結磁石は、高い磁気特性を有する一方で、成形の自由度が小さく、機械強度が弱い等の欠点を有する。これに対して、磁性粉末と樹脂バインダからなるボンド磁石は、樹脂ボンドが成分となるため磁気特性は弱くなるが、成形の自由度や機械強度に優れている。例えば、ボンド磁石は、小型モータのロータ、小型センサ等の耐衝撃性あるいは耐食性が要求される分野で使用されている。さらに、ボンド磁石を適用する分野によっては、ボンド磁石の重量が10gを下回るような比較的小さい成形品を要求されることがある。このような、成形品においては、その一部に、厚みが1mm以下と薄い部分を有することがあり、焼結磁石はもちろんのこと、ボンド磁石であっても、使用する磁性粉末や樹脂バインダの種類によっては成形不能な場合もある。
また、ボンド磁石の製造方法としては、樹脂バインダとしてゴム系材料を用いる場合はカレンダーロールや押出成形が、熱硬化樹脂の場合はプレス成形が主に適用される。そして、熱可塑性樹脂の場合であれば、射出成形が適用される。この射出成形は、寸法精度の高い成形品、あるいは、特殊な形状を有する成形品を製造する場合に適しており、ボンド磁石の加工方法の中でも特に重要な技術である。
そして、ボンド磁石や焼結磁石に用いられる磁性粉末には、大きく分類して、フェライト磁性粉末と希土類系磁性粉末がある。フェライト磁性粉末には、バリウムフェライトとストロンチウムフェライトがある。希土類系磁性粉末には、Sm−Co系、Nd−Fe−B系、Sm−Fe−N系が含まれる。また、磁性粉末には、磁気異方性をもった異方性材料と、磁気異方性がない等方性材料とがある。異方性材料は、磁石の製造時に、金型内で磁化容易方向に粒子を回転かつ固定させる必要があるが、得られる磁気特性は比較的高い。等方性材料は、金型内で上記粒子の回転および固定を行う必要はないものの、磁気特性は比較的低い。
一方、ボンド磁石の磁気特性を調整するために、上記の磁性粉末を複数種混合した、所謂、ハイブリッド磁石が提案されている。
例えば、特開昭55−99703号公報(特許文献1)、特開昭57−39102号公報(特許文献2)には、フェライト磁性粉末とSm−Co系磁性粉末とを用いたハイブリッド磁石が、特開昭61−284906号公報(特許文献3)、特開昭62−257703号公報(特許文献4)には、フェライト磁性粉末とNd−Fe−B系磁性粉末とを用いたハイブリッド磁石が提案されている。また、特開平05−144621号公報(特許文献5)では、Sm−Co系磁性粉末とSm−Fe−N系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石が、特開平05−152116号公報(特許文献6)では、Nd−Fe−B系磁性粉末とSm−Fe−N系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石が提案されている。
しかし、上記のハイブリッド磁石では、粒径の比較的大きいSm−Co系磁性粉末やNd−Fe−B系磁性粉末を用いるため、サイズの比較的大きい成形品にしか、それらの磁性粉末を適用できないといった問題があった。
これに対して、粒径の小さい磁性粉末の組み合わせである、フェライト磁性粉末とR(希土類)−Fe−N系磁性粉末のハイブリッド磁石が、特開2002−33205号公報(特許文献7)、特開2004−266151号公報(特許文献8)に提案されている。このハイブリッド磁石は、Sm−Co系磁性粉末やNd−Fe−B系磁性粉末を用いたハイブリッド磁石と比較して、成形の自由度が高く、高い磁気特性を得ることができるという利点を有する。
特開昭55−99703号公報 特開昭57−39102号公報 特開昭61−284906号公報 特開昭62−257703号公報 特開平05−144621号公報 特開平05−152116号公報 特開2002−33205号公報 特開2004−266151号公報
しかし、特許文献7乃至8に記載される、R−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末とのハイブリッド磁石は、成形の自由度が高いといっても、例えば、1mm以下といった厚みの薄い成形品を作製する場合においては、射出成形時の流動性には、更なる改善が必要とされる。これは、厚みの薄い成形品を作製する場合、射出成形時に、成形品の厚みと同じ幅あるいはそれよりは細い幅のゲートあるいは金型に、ボンド磁石用組成物からなるコンパウンドを送り込む必要があるためである。
元来、1mm以下の薄肉領域の成形は、単一磁性材料を使った場合でも簡単ではない。これは、送り込まれるコンパウンドと金型内面との間で大きな摩擦が生じるからである。さらに、異方化方向は、成形品の厚み方向であり、コンパウンドを送り込む方向に対して垂直方向であるため、摩擦に加えて磁気的な力が、金型内のコンパウンドの流動性を低下させる。当然のことながら、異方化させながらの成形は、それがない場合に比べて非常に困難である。したがって、R−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末のハイブリッド材料においては、劇的に流動性を向上させる樹脂や添加剤の開発には至っていないという事情もあって、1mm以下の薄い成形品の形成は極めて困難な状況にある。
フェライト磁性粉末の粒径は、R−Fe−N系磁性粉末のだいたい1/3〜1/5程度と小さい。コンパウンド中に小さい粒子が増えると、当然流動性は悪くなる。そのためR−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末を含有するボンド磁石では、フェライト磁性粉末による流動性悪化を如何にして抑制するかが課題となる。
したがって、本発明の目的は、良好な流動性を有するボンド磁石用組成物およびそれを用いたボンド磁石を提供することにある。
上記の問題点を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
本発明は、ThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄−窒素系磁性粉末と、フェライト磁性粉末と、樹脂バインダとを含むボンド磁石用組成物において、前記フェライト磁性粉末は、板状粒子を含み、該板状粒子の個数割合は、30%以上であることを特徴とするボンド磁石用組成物に関する。
ここで、フェライト磁性粉末に含まれる板状粒子とは、板状比が2.0以上である粒子を意味する。結晶形が六方晶であるフェライト磁性粉末は、結晶のc面に六角形の面と、c軸方向に粒子の厚みを有する六角板状の粒子である。板状比の測定は、配向方向に対して平行に切断したボンド磁石の面を、走査電子顕微鏡(SEM)によって5000倍で撮影することにより行う。フェライト磁性粉末は、粒子の厚み方向(c軸方向)が、磁化容易方向である。そのため、ボンド磁石の切断面で観察されるフェライト磁性粉末の形状は、粒子の厚みを短辺とし、磁化容易方向に対して垂直な方向の径を長辺とする、ほぼ長方形状となる。板状比とは、磁化容易方向に対して垂直な方向の径を粒子の厚みで割った値である。本発明では、SEM画面の写し出された約300個のフェライト磁性粉末について計測を行い、その中に含まれる板状比が2.0以上の粒子の個数割合を求める。
また、本発明は、上記ボンド磁石組成物を用いたボンド磁石に関する。
本発明は、特定の粉体特性を有するフェライト磁性粉末を用いることで、磁気特性に優れるとともに、従来得られなかった流動性を有するボンド磁石用組成物およびボンド磁石を提供することができる。
以下、本発明にかかる実施の形態について詳述するが、本発明の技術思想を具体化するための一例であり、本発明は、この実施の形態及び実施例に限定するものではない。
(磁性粉末)
本発明で用いられる、希土類−鉄−窒素系磁性粉末(以下、R−Fe−N系磁性粉末と略す。)とフェライト磁性粉末は、いずれも異方性の磁性粉末である。
本発明で用いられるR−Fe−N系磁性粉末の組成式は、RFe(100−x−y)(但し、RはYを含むランタノイド元素のうち少なくとも一種であり、xは3≦x≦30、yは5≦y≦15、を満たす。)で表され、結晶形は六方晶に属している。
ここに、Rを3原子%以上30原子%以下と規定するのは、3原子%未満では、鉄成分の未反応部分(α−Fe相)が分離して窒化物の保磁力が低下し、実用的な磁石ではなくなり、30原子%を越えると、Yを含むランタノイド元素が析出し、磁性粉末が大気中で不安定になり、残留磁化が低下するからである。また、窒素を5原子%以上15原子%以下と規定するのは、5原子%未満では、ほとんど保磁力が発現できず、15原子%を越えるとYを含むランタノイド元素、鉄及びアルカリ金属自体の窒化物が生成するからである。最も好ましい組成は、SmFe17で表すことができる組成である。組成式中のRやFeをその他の希土類元素で置換することも可能であるが、その置換量は多くとも20原子%程度である。また、不純物である酸素の混入は、2重量%以下、好ましくは1.4重量%以下である。
R−Fe−N系磁性粉末の平均粒子径は、2.0μm以上、5.0μm以下とするのが好ましく、より好ましくは、2.5μm以上、4.0μm以下とする。平均粒子径を5.0μm以下とするのは、有効な保磁力をだすためであり、粒子径を2.0μm以上とするのは、発火等のリスクを低減するためである。目的とする粒子径を得るために、粉砕を行うことがある。粉砕機には、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用いる。
R−Fe−N系磁性粉末の粒子形状の指標である円形度係数は、0.60以上が好ましい。R−Fe−N系磁性粉末より粒径の小さいフェライト磁性粉末を混合させることによってコンパウンドの流動性を悪化させることとなるが、円形度係数が0.6以上のR−Fe−N系磁性粉末を用いることで、流動性の悪化を抑制することができる。希土類−鉄−窒素系磁性粉末における円形度係数は、本願出願人が先に出願した特開2004−115921号公報で用いた定義式:円形度係数=(4πS/L)によって求める。但し、Sは、粒子の二次元投影面積、Lは二次元投影周囲長である。粒子が球形であれば円形度係数は、最大の1となる。正方形では0.785となり、表面にでこぼこが出来て周囲長Lが長くなると、数値は小さくなる。測定には、走査電子顕微鏡を用い、住友金属テクノロジーの粒子解析Ver.3を画像解析ソフトとして用いる。3000倍で撮影したSEM画像を画像処理装置で二値化し、約500個の粒子を計測して求めた平均値を円形度係数とする。
R−Fe−N系磁性粉末の製造方法には、金属溶解凝固法や還元拡散法、およびメルトスピニング法等がある。この中でも、還元拡散法は、微粒子を合成するのに適した方法である。例えば、特開平11−189811号公報に記載される、陽イオンと不溶性の塩を生成する物質を溶液中で反応させ沈殿物を析出させる工程、該沈殿物を焼成して金属酸化物を得る工程、該金属酸化物を還元雰囲気で加熱する工程を有する製造方法を好適に適用することができる。希土類金属イオンと鉄イオンとの共沈物を原料として用いることで、目的とする円形度係数を有するR−Fe−N系磁性粉末を得ることができる。
次に、本発明で用いられるフェライト磁性粉末は、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト、あるいはそれらの混合物または固溶体であり、性能向上を目的として、アルカリ土類金属の一部を亜鉛で置換したり、鉄の一部をコバルトで一部置換したりすることも可能である。フェライトの平均粒子径は、0.8μm以上、1.5μm以下とするのが好ましい。
ここで、ボンド磁石に用いるフェライト粒子の形状およびフェライトを用いたボンド磁石の製造方法について説明する。ボンド磁石が開発された初期からの流れであって、優れたボンド磁石を作製するために、フェライト粒子の形状は、できるだけ扁平な六角板状であることが求められている(例えば、特公昭58−27212)。一方では、フェライト粒子の形状は、同じ六角板状でもc軸が伸張した中高である、あるいは板状比が出来るだけ小さい、要するに、丸い形が望ましいとされている(例えば、特公平8−22744)。つまりは、扁平な六角板状と中高な六角板状の、いずれもがボンド磁石に適しているとされたのである。一見、矛盾する話ではあるが、現在の技術水準においては、適切なすみわけがなされている。すなわち、扁平な六角板状は、主としてゴムに練りこみ、さらにロールによって機械配向する場合に使用される(例えば特開平7−240309号公報)。一方、中高な六角板状は熱可塑性樹脂に練りこみ、さらに磁場中での射出成形で使用されることが多い(例えば特開2005−268729号公報)。
また、フェライト粒子のコストについて、扁平な六角板状は、比較的単純な方法で合成される上に、ゴム磁石が大量に生産される関係上、射出成形用の中高な六角板状に比べて安価であるとされる。また、中高な六角板状は配合成分が複雑であり、粉砕工程をはじめとし、後処理が煩雑ということもあって、その分高価であるとされる。
本発明のボンド磁石は、磁場中での射出成形によって作製されるが、本発明で用いるフェライト磁性粉末は、扁平な形状の粒子を含むほうが好ましく、つまりは、板状粒子の個数割合が30%以上である粉末を用いる。フェライト磁性粉末は、ボンド磁石内で、ボンド磁石の厚み方向(配向方向)と粒子の厚み方向とが平行となるように配置されるが、上記範囲の板状粒子を含むことで、R−Fe−N系磁性粉末の間を、フェライトの粒子同士が折り重なるように整然と並んで固定されるため、結果として、磁気特性の向上につながる。また、上記範囲の板状粒子を含むことで、流動性に優れるボンド磁石とすることができる。さらに、比較的な安価である扁平な六角板状のフェライト磁性粉末が使用できることは、コストの面でも好ましいことである。
(ボンド磁石)
本発明では、磁気特性として、最大エネルギー積(BHmax)が20kJ/m〜70kJ/mであるボンド磁石を提供することを目的としている。そのため、R−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末との配合量を適宜調整して、上記磁気特性となるようにボンド磁石を作製する。
また、本発明のボンド磁石を得るためには、上記したR−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末と樹脂バインダと、好ましくは、カップリング剤、酸化防止剤、滑剤を混合して得る。カップリング剤は、R−Fe−N系磁性粉末およびフェライト磁性粉末と樹脂バインダとの濡れ性、ボンド磁石の強度の改善する目的で添加される。酸化防止剤は、製造工程における混練および成形の際の熱履歴による樹脂バインダの劣化を防止する目的で添加される。そして、滑剤は、コンパウンドの溶融粘度を低下させ、射出成形性を向上させる目的で添加される。
用いる樹脂バインダは、熱可塑性樹脂の場合、12−ナイロン、6ナイロン、6、6ナイロン、11ナイロン、6,12−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、ナイロン6T、ナイロンMXD6、芳香族ナイロン、11−ナイロン、非晶質ナイロン、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂エチレン系アイオマー樹脂等のアイオマー樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のEEA樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体等のアクリロニトリル系樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂等のポリビニル系樹脂、酢酸繊維素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキシルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等のフッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・エチルアクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニルスルフィド、ポリオキシペンジレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアリルエーテルニトリル、ポリベンゾイミダール、ポリアラミド、ポリエステルアミド、全芳香族アミド、半芳香族アミド等の液晶樹脂といったエンジニアリングプラスチックス、スーパーエンジニアリングプラスチックス等の少なくとも1種または2種以上が使用できる。
熱可塑性エラストマーの場合、エステル系、特殊エステル系エーテル系、カプロラクトン系、アジペート系、カーボネート系、ラクトン系等の熱可塑性ウレタンエラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ニトリル系熱可塑性エラストマー、水添SBS系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーといった熱可塑性エラストマーの少なくとも1種または2種以上が使用できる。
カップリング剤、酸化防止剤、滑剤としては、特に限定されないが、特開2004−266151号公報に記載される公知のものが使用できる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(Sm−Fe−N系磁性粉末Aの調整)
〔1.沈澱反応〕無水塩化サマリウムSmClを513.4g、無水塩化鉄FeClを2757.6g秤量し、10リットルのイオン交換水に同時に投入し、反応器の中で攪拌しながら完全に溶解させメタル液とする。反応器の攪拌を続けながら、その中に15wt%の苛性ソーダ溶液5.1Kgを静かに投入する。溶液のpHが10以上になったことを確認の後、攪拌を止め静置すると、生成物は容器底部に沈殿してくる。
〔2.ろ過洗浄〕沈澱生成物を濾紙上にとり、上部よりイオン交換水を供給しながら吸引する。ろ液の電気導電率が50μS/mを下回るまでこのデカンテーションを続ける。洗浄され、吸引濾過して得られる沈殿物ケーキを80℃の乾燥機中で乾燥する。
〔3.大気焼成〕乾燥されたケーキをアルミナのるつぼに入れ、1000℃で酸素を流通させながら、5時間焼成する。
〔4.粒度調整〕焼成物を手でほぐした後、ハンマーミルで粉砕する。フィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)で測定したこの粉末の平均粒径は1.2μmである。
〔5.水素還元〕粉砕粉末を鋼製のトレーに充填し、それを管状炉に入れ、純度100%の水素を20リットル/分で流通させながら700℃で10時間の熱処理を施す。得られた黒色粉末の酸素濃度は7.0wt%である。
〔6.還元拡散反応〕前工程で得られた黒色粉末1000gと粒状Ca350.7gを混合し、鋼製のトレーに入れてアルゴンガス雰囲気炉にセットする。炉内を真空排気した後、アルゴンガスを通じながら1050℃、0.5時間加熱する。次いで、加熱を止め、引き続いてアルゴンガス中で450℃まで冷却し、以後この温度で一定に保持する。その後、炉内を再び真空排気した後、窒素ガスを導入する。大気圧以上の圧力で窒素ガスを通じながら5時間加熱した後、加熱を停止し放冷する。
〔7.水洗〕得られた反応生成物をイオン交換水5リットルに投入し、これにより、反応生成物が直ちに崩壊し、合金粉末とCa成分との分離が始まる。水中での撹拌、静置、上澄み液の除去を5回繰り返し、最後に2wt%酢酸水溶液5リットル中で洗浄し、Ca成分の分離が完了する。これを真空乾燥することで、約700gのSmFe17合金粉末を得る。さらに、ここまでの操作を10回繰り返して、7kgのSm−Fe−N系磁性粉末を得る。
〔8.特性評価〕得られた粉末は分散性が良く、走査電子顕微鏡による観察でも球状の形状を持つものである。粉末の平均粒子径はフィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)による測定で2.5μmである。粉末の磁気特性はBr1.3T、iHc1080kA/mである。また粉末に含まれる酸素の濃度は0.2wt%であり、EPMAによる断面観察ではSmとFeの偏析は確認できない。またCu−Kαを線源とするX線回折によれば主相である六方晶のほか何も観察されず、特に純鉄成分であるα−Feは痕跡すら発見できない。なお、SEM画像で二次元画像解析を施した結果、この粉末の円形度係数は0.67である。得られた粉末を磁性粉末Aとする。
(フェライト磁性粉末a〜mの準備)
市販のマグネトプランバイト型のストロンチウムフェライト磁性粉末を使用する。粉末の磁気特性Br、iHcは試料振動型磁束計(VSM)で測定する。粉末の平均粒子径は、フィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)で測定する。さらに、板状粒子の個数割合の測定は、最終的に作製したボンド磁石を用いる。配向方向と平行に切断したボンド磁石の断面を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて5000倍で撮影し、その画像から、フェライト磁性粉末300個の計測を行い、その中に含まれる板状粒子の個数割合を求める。
上記の各種磁性粉末の磁気特性、平均粒子径、板状粒子の個数割合を表1に示す。
Figure 0004924400
<実施例1〜7、参考例1〜6>
実施例1〜7、比較例1〜6におけるSm-Fe-N系磁性粉末とストロンチウムフェライト磁性粉末の組み合わせを表2に示す。
106.6gのSm−Fe−N系磁性粉末Aと71.2gのフェライト磁性粉末と樹脂バインダとして、15.7gの12ナイロンを混合する。220℃〜270℃に設定したラボプラストミルで、混合物を混練し、ボンド磁石用組成物を得る。この配合により、Sm−Fe−N系磁性粉末とフェライト磁性粉末の体積基準の配合比は1:1となり、ボンド磁石中の両磁性粉末の充填率を63体積%とすることができる。得られたボンド磁石用組成物を、粉砕機にて粉砕し、ボンド磁石用コンパウンドとする。
得られたボンド磁石用コンパウンドをバーフロー金型により射出成形を行う。金型キャビティーとして、形状が、幅10mm、最大長さ100mm、厚み1mmのものを用いる。ゲート形状は、1mm×0.5mmの1点サイドゲートである。射出成形の条件は、シリンダー温度は250℃−170℃、金型温度90℃、配向磁場は成形品厚み方向に720kA/m印加、射出速度25mm/s、射出圧力170MPa、射出時間3s、保圧なしで行う。
流動性の評価は、得られた板状のバーフロー成形品の長さで比較する。また、バーフロー成形品をゲート側端面から13mmのところで切り出し、10mm×13mm×1mmの成形品を作製し、配向方向と同方向に2400kA/mの磁場で着磁する。この成形品を専用治具で固定し、中央部分の表面磁束をガウスメータで測定し磁気特性を評価する。結果を表2に示す。
<実施例8〜14、比較例7〜12>
実施例8〜14、比較例7〜12におけるSm-Fe-N系磁性粉末とストロンチウムフェライト磁性粉末の組み合わせを表2に示す。
93.1gのSm−Fe−N系磁性粉末Aと62.1gのフェライト磁性粉末と樹脂バインダとして、19.4gの12ナイロンを混合し、磁性粉末の充填率を体積分率で55%に変更する以外は、実施例1と同様の方法でボンド磁石用組成物及びボンド磁石用コンパウンドを作製する。実施例1と同様に、流動性及び磁気特性を評価する。結果を表2に示す。
Figure 0004924400
厚みが1mmと薄い金型キャビティーを用いた場合であっても、表2の結果から明らかなように、板状粒子を30%以上含有するフェライト磁性粉末を用いることで、射出成形時の流動性は優れたものとなる。しかも、板状粒子を30%以上含有するフェライト磁性粉末を含むボンド磁石用組成物を用いて作製したボンド磁石は、磁気特性にも優れる。
本発明は、小型モータのロータ、小型センサ用の永久磁石材料として利用することができる。

Claims (2)

  1. ThZn17型結晶構造を有する希土類−鉄−窒素系磁性粉末と、フェライト磁性粉末と、樹脂バインダとを含むボンド磁石において、
    前記フェライト磁性粉末は、板状比2.0以上である板状粒子の個数割合が30%以上であり、
    その板状粒子の厚み方向とボンド磁石の配向方向とが平行となるように、前記希土類−鉄−窒素系磁性粉末の粒子と粒子の間に、前記板状粒子が、折り重なり並んで配置されていることを特徴とするボンド磁石。
  2. 前記希土類−鉄−窒素系磁性粉末と、前記フェライト磁性粉末と、前記樹脂バインダとを含むボンド磁石用組成物を射出成形して得られる請求項1に記載のボンド磁石。
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