JP4921493B2 - カムシャフトタイミング調整装置 - Google Patents

Description

本発明は、請求項１の上位概念に記載のカムシャフトタイミング調整装置に関するものである。

従来から、カムシャフトタイミングの調整動作を、磨耗することがない非接触な制動システムによって行うことが知られている。

例えば特許文献１には、内燃機関のクランクシャフトにより駆動される被駆動要素、内燃機関のカムシャフトを駆動する駆動要素及び制動の影響を受ける調整要素を備えた内燃機関用カムシャフトタイミング調整装置が開示されている。この特許文献１に記載されたものにおいては、調整要素への制動トルクを変化させることで、被駆動要素と駆動要素の間の相対回転運動が可能となっている。

そして、このようなタイプのカムシャフトタイミング調整装置によれば、被駆動要素と駆動要素の間の位相角を適宜調整することが可能である。また、制動は非接触の電磁的な制動として行われるが、特にヒステリシス制動が用いられ、その制動トルクは内燃機関の回転数に依存しないものとなっている。
独国特許出願第１０３５５５６０号明細書

ところで、上記のような従来のシステムにおいては、非接触の構成要素が高価であるという問題があるとともに、フェイルセーフ的な係止のために更なるアクチュエータが必要となってしまうという問題もある。

本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、安価に製造可能なカムシャフトタイミング調整装置を提供することにある。

上記目的は、請求項１記載の特徴によって達成される。また、本発明の他の形態及び利点は、従属請求項に記載されている。

すなわち、上記目的は、制動システムと、被駆動側及び駆動側にそれぞれカムシャフト及びクランクシャフトが接続された多段ギヤ機構とを備え、カムシャフトタイミングを調整するために、前記多段ギヤ機構が駆動側のエネルギーの一部を前記制動システムへ伝達するよう構成されたカムシャフトタイミング調整装置において、前記制動システムを摩擦式の制動システムとして構成するとともに、必要な制動力を連続的に滑り状態にある摩擦ライニングによって発生させることにより達成される。なお、本発明によるカムシャフトタイミング調整装置は、更に機械的な係止機構を備えている。

本発明における摩擦式の制動システムによれば、駆動側のタイミングプーリ又はベルトプーリと被駆動側のカムシャフトの間で位相角調整を行うことができ、あるいは一度調整された位相角を維持することが可能である。

また、本発明の一実施形態においては、制動システムを電磁式の摩擦制動システムとして構成しているとともに、多段ギヤ機構を、遊星歯車機構又は２つのサンギヤ及び１つの２段式プラネタリギヤとして構成している。なお、多段ギヤ機構としては、いずれの形態も本発明における使用に当たって適したものとなっている。

本発明によれば、非接触のシステムにおける高価な部材が不要である上、システムに必要なフェイルセーフ的な係止を摩擦ライニングにおける切換動作によって行うため、コストの削減を図ることが可能であるとともに、アクチュエータを削減することも可能である。

以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。

本発明によるカムシャフトタイミング調整装置の機械的な係止機構を備えた摩擦式制動システムは、摩擦面８を備えつつ電気により操作される切換用コイル１、磁性を有しつつ係止突起６を備えた摩擦ライニング２及びバネ３を含んで構成されている。なお、係止突起６は多段ギヤ機構７の駆動側部材５と係合できるようになっているとともに、摩擦ライニング２は多段ギヤ機構７のサンギヤ４に固着されつつ軸方向（図における左右方向）に摺動可能に構成されている。

図示の実施の形態においては、多段ギヤ機構７が２つのサンギヤ４，９と２段のプラネタリギヤ１０を備えた遊星歯車機構として形成されている。ここで、カムシャフト（不図示）は多段ギヤ機構７のサンギヤ９に結着されており、駆動手段（不図示）はプラネタリキャリア（不図示）に接続されている。

また、遊星歯車機構としての多段ギヤ機構７の一実施形態においては、摩擦ライニング２をサンギヤに設けるのが好ましい。なお、このとき、カムシャフトはリングギヤ（不図示）に結着されている。

しかして、切換用コイル１に通電されていない場合には、摩擦ライニング２に対する電磁力が発生しないため、縮設されたバネ３により摩擦ライニング２がこれに結着されたサンギヤ４と共に図における右方へ付勢され、摩擦ライニング２に設けられた係止突起６が多段ギヤ機構７の駆動側部材５と係合するようになっている。

一方、切換用コイル１に通電されると、摩擦ライニング２に対する電磁力が発生し、摩擦ライニング２の摩擦面が切換用コイル１における摩擦面８と当接する。このとき、同時に、前記係止突起６と前記駆動側部材５の係合が解除され、切換用コイル１により発生する制動トルクがサンギヤ４を介して多段ギヤ機構７に伝達されることになる。

切換用コイル１を電気的に制御することにより、所望の位相位置を遊星歯車機構その他の多段ギヤ機構によって調整又は保持することが可能である。また、摩擦ライニング２を高い滑り性能で動作させるために、摩擦ライニング２に油を貫流させるようにすることが考えられる。これについて、摩擦ライニングの外側（油霧など）、中央部のいずれから行ってもよい。

また、摩擦ライニング２を、突起を備え、かつ、例えば径方向へ延びるハニカム状の溝を備えた紙製のライニング又はカーボンライニングとすることも可能である。ここで、摩擦ライニング２をカーボンライニングとした場合には、その厚さを０．０５ｍｍとする。このように、カーボンライニングを採用することで、磨耗が極めて小さくなるという利点が得られる。

さらに、本発明の一実施形態においては、制動トルクを流体力学的な滑り軸受面に発生させることが考えられる。この場合、制動トルクは、摩擦ライニング２の油膜におけるせん断力により調整される。これにより、摩擦面には磨耗が生じない。なお、本発明においては、制動トルクを混合摩擦によって発生するようにしてもよい。

本発明によるカムシャフトタイミング調整装置の概要を示す断面図である。

符号の説明

１ 切換用コイル
２ 摩擦ライニング
３ バネ
４，９ サンギヤ
５ 多段ギヤ機構の駆動側部材
６ 係止突起
７ 多段ギヤ機構
８ 摩擦面
１０ プラネタリギヤ

Claims (5)

1. 制動システムと、
   被駆動側及び駆動側にそれぞれカムシャフト及びクランクシャフトが接続された多段ギヤ機構と
   を備え、カムシャフトタイミングを調整するために、前記多段ギヤ機構が駆動側のエネルギーの一部を前記制動システムへ伝達するよう構成され、
   前記制動システムが摩擦式の制動システムとして構成されているとともに、必要な制動力が連続的に滑り状態にある摩擦ライニングによって発生され、
   前記制動システムが電磁式の摩擦制動システムとして構成されている
   カムシャフトタイミング調整装置において、
   前記制動システムを、摩擦面（８）を備えた電気的に制御可能な切換用コイル（１）、前記多段ギヤ機構（７）の駆動側部材（５）に係合する係止突起（６）及びバネ（３）を含んで構成し、
   前記摩擦ライニング（２）を前記多段ギヤ機構（７）におけるサンギヤ（４）に固着しつつ軸方向に摺動可能に構成し、
   前記切換用コイル（１）に通電していない場合には前記サンギヤ（４）を前記バネ（３）の付勢力により前記摩擦ライニング（２）及び前記係止突起（６）を介して前記多段ギヤ機構（７）の駆動側部材（５）と係合させるとともに、前記切換用コイル（１）に通電している場合には前記摩擦ライニング（２）に対して発生する電磁力により該摩擦ライニング（２）の摩擦面を前記切換用コイル（１）における前記摩擦面（８）と当接させ、前記切換用コイル（１）により発生する制動トルクを、前記サンギヤ（４）を介して前記多段ギヤ機構（７）に伝達するよう構成したことを特徴とするカムシャフトタイミング調整装置。
2. 前記摩擦ライニング（２）に油を貫流させるとともに、油の貫流を前記摩擦ライニング（２）の外側又は中央部から行うことを特徴とする請求項１記載のカムシャフトタイミング調整装置。
3. 前記摩擦ライニング（２）を、突起を備えた紙製のライニング又はカーボンライニングとしたことを特徴とする請求項２記載のカムシャフトタイミング調整装置。
4. 制動トルクを流体力学的な滑り軸受面に発生させるとともに、該制動トルクを前記摩擦ライニング（２）の油膜におけるせん断力によって調整するよう構成したことを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載のカムシャフトタイミング調整装置。
5. 前記多段ギヤ機構（７）を、遊星歯車機構又は２つのサンギヤ及び１つの２段式プラネタリギヤとしたことを特徴とする請求項１〜４のいずれか１項に記載のカムシャフトタイミング調整装置。

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