本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(位置合わせ装置400)
まず、本実施形態で用いる位置合わせ装置400について説明する。本発明の一実施形態にかかる位置合わせ装置400は、図1に示すように、主として、固定治具10
0と、固定治具100を着脱可能に固定する架台部300とを有する。架台部300は、主として、台座302と、台座302に固定された移動機構310と、台座302に固定された台座側マスク固定板(台座側マスク固定部材)304とを有している。
(台座302)
台座302は、板状をなす部材であり、上面が水平面となるように配置されている。移動機構310は、この台座302の上面に固定されている。
(移動機構310)
図1に示す、移動機構310は、移動部材320と、移動部材320を移動させる移動部310Aとを有する。移動部310Aは、回動部310θと、Y移動部310Yと、X移動部310Xとを有しており、移動部材320を、台座302に対して、水平面(XY面)と平行な方向に移動可能、かつ、水平面と垂直な軸(Z軸)周りに回動可能である。また、移動部310Aは、Z移動部310Zを有することができる。
回動部310θは、ハンドル310θaの操作に応じて、台座302に対して、移動部材320を鉛直軸(Z軸)周りに回動、すなわち、正逆両方向に回転する。Y移動部310Yは、ハンドル310Yaの操作に応じて、台座302に対して、移動部材320を±Y方向に移動させる。X移動部310Xは、ハンドル310Xaの操作に応じて、台座302に対して、移動部材320を±X方向に移動させる。Z移動部310Zは、ハンドル310Zaの操作に応じて、台座302に対して、移動部材320を±Z方向に移動させる。
図14は、図1の位置合わせ装置400から、固定治具100を取り外した状態の架台部300を示すものである。移動部材320は、移動部310Aとの接続部320bと、接続部320bに接続された円板状の円板部320a、及び、円板部320aの上面中央に設けられた凸部320cとを有する。
(固定治具100)
図1〜図4に示すように、移動部材320上に載置される固定治具100は、主として、固定治具台座10、エアピッカー30、電磁ホルダ(固定治具側マスク固定部材)20を有する。図2の(a)は本実施形態に係る固定治具100の上面斜視図、図2の(b)は固定治具100の下面斜視図、図3は固定治具100の側面図、図4は固定治具100の上面図である。
固定治具台座10は、図2に示すように、概ね円板状をなし、上面中央部に円板状の凸部12を有する。凸部12の上面中央部には、円板状の凹部14が形成され、凹部14の上面が、ハニカム構造体の端面を載置する載置面14aとなる。凹部14の直径は、図5に示すように、ハニカム構造体70の下端部を収容できる大きさとされている。図2の(b)及び図3に示すように、固定治具台座10の底面には凹部10aが形成されている。固定治具台座10の凹部10aは、図14に示す、移動部材320の凸部320cと嵌合可能とされている。
図2に戻って、エアピッカー30は、支持棒31の上端に取り付けられている。支持棒31は、載置面14aを取り囲むように3つ配置されている。したがって、本実施形態では、エアピッカー30を3つ備えている。3つのエアピッカー30は、図4に示すように、載置面14aの中心O周りに互いに120度離れた位置に配置されており、図5に示すように、載置面14a上に載置されるハニカム構造体の側面70sを3方から挟持可能な位置に配置されている。
図2に戻って、エアピッカー30は、ガス出入口30cを有するベース部30aと、ガス出入口30cから供給されるガスにより膨らむことの出来るゴム中空体30bと、を備える。エアピッカー30に対して、ガス出入口30cからガスを供給すると、ゴム中空体30bが膨らんでハニカム構造体の側面を3方から押圧できる一方、ガス出入口30cからガスを排出すると、ゴム中空体30bがしぼんでハニカム構造体の側面を押圧しなくなる。なお、ガスの配管は図示を省略している。
電磁ホルダ20は、支持棒21の上端に取り付けられている。支持棒21は、載置面14aを取り囲むように3つ配置されている。したがって、本実施形態では、電磁ホルダ20を3つ備えている。3つの電磁ホルダ20は、図4に示すように、載置面14aの中心O周りに互いに120度離れた位置に配置されており、図7に示すように、ハニカム構造体70の上面に配置される位置合わせ用マスク270や封口用マスク170(図12参照)の外周部170pの下面に3方から対向する位置に配置されている。図4に示すように、電磁ホルダ20と、エアピッカー30とは、載置面14aの中心O周りに互いに60度離れた位置に配置されている。
電磁ホルダ20は、図3に示すように、上面20aが平面とされている。図3に示すように、この電磁ホルダ20の上面20aの位置は、載置面14a上に載置されるハニカム構造体70の上端面と同一平面となるようにされている。
電磁ホルダ20は、図2に示すように、上面20aから磁束を放出する永久磁石20bと、この磁束と逆向きの磁束を放出可能な電磁石20cと、を内部に有している。電磁石20cに電流が流れていない場合には、永久磁石20bの磁界により、上面20a上の磁性を有する金属板の下面を吸着してこれを固定できる一方、電磁石20cに電流が流れている場合には、永久磁石20bの磁界が電磁石の磁界により弱められるため、上面20a上の金属板を容易に移動させることができる。
(台座側マスク固定板(台座側マスク固定部材)304)
図1に戻って、台座側マスク固定板304(台座側マスク固定部材)は、移動機構310を間に挟んで台座302と対向配置されている。
台座側マスク固定板304は、支持棒306により、台座302と所定距離離間するように台座302に固定されている。台座側マスク固定板304の上面には、位置合わせ用マスク270(図7参照)及び封口用マスク170(図12参照)を収容して固定可能な凹部304bが形成されている。凹部304bは、図7及び図12に示すように、位置合わせ用マスク270(図7参照)及び封口用マスク170(図12参照)の中央部がハニカム構造体70の上端面に対向するように、マスクを収容しXY面内での動きを固定する。また、凹部304bには、位置合わせ用マスク270のオリエンテーションフラット270of1、270of2(図7参照)、及び封口用マスク170のオリエンテーションフラット170of1、170of2(図12参照)に当接可能な平坦な当接部304o1、304of2が形成されており、これらのマスク170,270の固定時に、これらマスク170,270の向きが固定されると共に、マスクのZ軸周りの回転も規制される。
さらに、図1に示すように、台座側マスク固定板304には、その側面の一端から凹部304bの中央部までに亘って延びる切欠き304aが形成されている。切欠き304aは、図5に示すように、固定治具100が移動部材320に固定された状態において、ハニカム構造体70及び電磁ホルダ20の上端部を収容する。また、切欠き304aは、移動部材320から離脱した固定治具100を外部に持ち出す際に、ハニカム構造体70や電磁ホルダ20が台座側マスク固定板304に引っかからずに容易に持ち出せるようになっている。切欠き304aのX方向の幅は、凹部304bのX方向の幅、すなわち、マスクの直径よりは小さくされている。
また、台座側マスク固定板304の凹部304bの底面は平面とされ、その高さは、固定治具100が移動部材320上に固定された状態において、固定治具100の電磁ホルダ20の上面20aと同一面上にあるようにされる。したがって、台座側マスク固定板304の凹部304bの底面と、載置されるハニカム構造体70の上端面とは同一面上にあることとなる。凹部304bの底面と、ハニカム構造体70の上端面とが同一面上でない場合には、後述する位置合わせ工程の前等に、移動部310Zのハンドル310Zaを適宜回して調節すればよい。
(製造方法)
続いて、このような位置合わせ装置400を使用したハニカムフィルタの製造方法について説明する。
まず、図2のように位置合わせ装置400から分離された状態の固定治具100に対して、ハニカム構造体70を、開口がある一端面(下面)が載置面14aと対向するように、固定治具100の載置面14a上に載置する。その後、エアピッカー30のガス出入口30cからガスを供給することにより、ゴム中空体30bを膨らませ、ゴム中空体30bによりハニカム構造体70の側面70sを3方から挟持する。これにより、ハニカム構造体70が、固定治具台座10に対して固定される(固定治具固定工程)。
続いて、図5に示すように、位置合わせ装置400の移動機構310の移動部材320上に、ハニカム構造体70を固定した固定治具100を載置し、固定治具100を移動部材320に固定する。このとき、図14の移動部材320の凸部320cと、固定治具100の固定治具台座10の底面の凹部10aとを嵌合させる。
(ハニカム構造体70)
ここでハニカム構造体70について説明する。ハニカム構造体70は、図5及び図6に示すように、互いに平行に伸びる複数の貫通孔70aを有する円柱体である。
ハニカム構造体70の貫通孔70aが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。本実施形態では、貫通孔70aの断面形状は正方形であり、例えば、貫通孔の断面のサイズは、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。貫通孔70a間の間隔である隔壁の厚みは、0.05〜0.5mmとすることができる。
図6はハニカム構造体70の端面図である。図6に示すように、ハニカム構造体70の端面70eにおいて、多数の断面正方形の貫通孔70aはマトリクス状に配置、特に、正方形配列、すなわち、各貫通孔70aの中心が、仮想的な正方形の頂点に配置されている。また、外壁の輪郭70pは、円形である。ここで、端面における中心をOとする。
ハニカム構造体70は、後で焼成することにより多孔性セラミクスとなるグリーン(未焼成体)とでき、この場合、セラミクス原料を含む成形体や、セラミクス粒子の成形体であることができる。セラミクスは特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。このようなハニカム構造体70は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、メチルセルロース等の有機バインダ及び必要に応じて添加される添加剤を含む。
例えば、セラミクスがチタン酸アルミニウムの場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜10重量部とでき、0.1〜5重量部とできる。
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜20重量部とでき、2〜8重量部とできる。
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。
このようなハニカム構造体70は例えば以下のようにして製造することができる。まず、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物を用意する。そして、これらを混練機等により混合して原料混合物を得、得られた原料混合物を隔壁の形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、所望の長さに切断後、公知の方法で乾燥することにより、ハニカム構造体70を得ることができる。
なお、ハニカム構造体は、未焼成体でなくて、焼成済みのもの(例えば、多孔質セラミクス)であってもよい。
続いて、図7に示すように、位置合わせ用マスク270を、その中央部がハニカム構造体70の上端面と対向し、かつオリエンテーションフラット270of1が凹部304bの当接部304of1と当接し、かつ、オリエンテーションフラット270of2が凹部304bの当接部304of2と当接するように、台座側マスク固定板304の凹部304bに嵌め込む。これにより、位置合わせ用マスク270は、台座302に対して、水平面(XY面)の並進方向、及び、鉛直軸(Z軸)周りの回転方向の動きが規制される(台座への位置合わせ用マスク固定工程)。
ここで、図8〜図11を参照して位置合わせ用マスク270について説明する。位置合わせ用マスク270の外径は、ハニカム構造体70の外径よりも大きくなっており、位置合わせ用マスク270は、ハニカム構造体70とは対向しない環状の外周部270pを有する。位置合わせ用マスク270の材料は特に限定されず、後述する電磁ホルダ20による吸着が可能である必要もない。例えば、材質としては、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板(SECC)、冷間圧延鋼板(SPCC)、樹脂板等が挙げられる。
図8に示すように、位置合わせ用マスク270は、円板状の板270bと、この板270bに形成された矩形の開口270aを4つ備える。各開口270aの長軸の延長線axは板270b上の一点Pを通り、かつ、互いに隣り合う長軸の延長線axがなす角はそれぞれ90度である。一点Pは円板の中心にできる。また、位置合わせ用マスク270は、円板状の板270bの中心Pを中心とする中央開口部270hを備える。
このような位置合わせ用マスク270によれば、図9に示すように、ハニカム構造体70の端面70eと対向したときに、位置合わせ用マスク270の各開口270aから、それぞれハニカム構造体70の端面70eの外壁の輪郭の部分70p1、70p2,70p3,70p4を見ることができる。特に、本実施形態では、開口270aは、輪郭70pの内、図9に示すように、ハニカム構造体70の端面70eの中心Oの周りに90度ずつ離れた4つの輪郭の部分70p1、70p2,70p3,70p4を露出させることが出来る。このとき、4つの開口270aにおいて、輪郭の部分70p1〜70p4と、開口270aの外周側の短辺270asとの最短距離D1、D2、D3,D4がすべて等しくなった場合に、位置合わせ用マスク270の中心Pと、ハニカム構造体70の端面の中心Oとが合致したものとすることができる。ここで、最短距離D1〜D4は、0〜10mmとできる。また、本実施形態では、中央開口部270hからも、ハニカム構造体70の端面70eの部分70p0を見ることができる。これにより、位置合わせ用マスク270の中心Pと、ハニカム構造体70の端面の中心Oとを合致させ易くなる。
また、この状態で、さらに、開口270aから、ハニカム構造体70の隣り合う複数の貫通孔70aの輪郭が並ぶ方向Eを見ることができ、本実施形態の位置合わせ用マスク270は、貫通孔70aの輪郭が並ぶ方向Eと、開口270aの内の半径方向に延びる長辺270arとが平行となりうるようにされている。開口270aの幅Wは特に限定されないが、隣り合う貫通孔70aの輪郭が並ぶ方向が見えるようにすべく、貫通孔70aの径よりも広いことが必要である。特に、開口270aの短辺の幅Wは、その幅方向に2列以上の貫通孔70aの輪郭を露出させることができる距離とでき、5列以下とでき、また4列以下とできる。また、開口270aの半径方向の長さRは、貫通孔70aの輪郭が2つ以上並ぶことができる長さである必要があるが、3つ以上、また10個以上並ぶことができる長さである。本実施形態では、隣り合う複数の貫通孔70aの輪郭が並ぶ方向Eと、開口270aの長辺270arとが平行になった状態で、ハニカム構造体70のZ軸まわりの回転位置と、位置合わせ用マスク270の回転位置とが合致したこととすることができる。すなわち、本実施形態では、4つの開口270から見えるD1〜D4の距離が同じでかつ、貫通孔70aの輪郭が並ぶ方向Eが長辺270arと平行になる図9の状態が、ハニカム構造体70と、位置合わせ用マスク270との位置合わせが完了した状態である。この場合、中央開口部270hから見えるハニカム構造体70の端面70eの部分70p0において、位置合わせ用マスク270の中央開口部270hの中心Pに貫通孔70aの隔壁の交差部が位置するか否かによっても、位置合わせが完了したか否かを判断することができる。
通常、位置合わせ用マスク270を、凹部304bにはめ込んだ状態では、図9のように4つの開口270から見えるD1〜D4の距離が同じでかつ、かつ、位置合わせ用マスク270の中央開口部270hの中心Pに貫通孔70aの隔壁の交差部が位置し、貫通孔70aの輪郭が並ぶ方向Eが長辺270arと平行になることは少ない。したがって、必要に応じて移動部310Aの各ハンドル310θa、310Xa、310Yaを回すことにより、ハニカム構造体70の貫通孔70aと、位置合わせ用マスク270の開口270aとの位置合わせを行い、これにより、ハニカム構造体70の端面のXY方向の水平位置、及び、Z軸周りの回転位置を、位置合わせ用マスク270に対して所定の正しい位置にあわせ、図9の状態にする(ハニカム構造体位置合わせ工程)。
例えば、ハニカム構造体70の端面70eの中心位置Oと、位置合わせ用マスク270の中心位置PとがX方向にずれている場合、図10に示すように、−X側の開口270a内にハニカム構造体の外壁の輪郭70pが見えなくなって距離D2が定義できなくなったり、距離D4が、他の距離D3,D4等よりも大きくなる。中央孔部270hから見えるハニカム構造体70の端面70eの部分70p0においても、位置合わせ用マスク270の中央開口部270hの中心Pに貫通孔70aの隔壁の交差部が位置しなくなる。この場合には、X移動部310を駆動して、ハニカム構造体70を移動させ、D1〜D4が同じとなり、位置合わせ用マスク270の中央開口部270hの中心Pに貫通孔70aの隔壁の交差部が位置するように、位置を合わせればよい。
また、ハニカム構造体の端面70e及び位置合わせ用マスク270のZ軸周りの回転位置が異なっている場合には、図11に示すように、開口における貫通孔70aの輪郭が並ぶ方向Eと、開口270aの長辺270arの方向とが平行でなく、斜めとなる。この場合には、回動部310θを駆動して、ハニカム構造体70を時計回りに回転させ、これらが平行となるように位置を合わせればよい。
なお、位置合わせの具体的方法は特に限定されず、距離D1〜D4、方向E及び長辺270arの方向を目視で判断しながら、ハンドル310θa、310Xa、310Yaを手で回して合わせてもよい。また、カメラで撮影した画像に基づいて、公知の画像解析法により距離D1〜D4、方向E及び長辺270arの方向を認識し、必要な移動量をコンピュータにより求め、移動部をコンピュータにより自動的に制御してもよい。
この位置合わせの際に、図7に示す各電磁ホルダ20の上面20aは、位置合わせ用マスク270の外周部170pと対向している。そして。位置合わせ用マスク270が磁石に吸着する材料である場合には、電磁ホルダ20の電磁石20cに電流を流しておき、永久磁石20bの磁束をキャンセルすることにより、電磁ホルダ20の上面20aによる吸着力の発生を抑制し、位置合わせ用マスク270が電磁ホルダ20の上面20aの上で水平方向に自由に動けるようにしておく。なお、位置合わせ用マスク270が磁石に吸着しない材料の場合にはこのような工程は不要である。
続いて、台座側マスク固定板304の凹部304bから位置合わせ用マスク270を除去する(位置合わせ用マスク除去工程)。その後、図12に示すように、この凹部304bに、封口用マスク170をそのオリエンテーションフラット170of1が凹部304bの当接部304of1と当接し、かつ、オリエンテーションフラット170of2が凹部304bの当接部304of2と当接するように、嵌め込む(封口用マスク配置工程)。これにより、封口用マスク170が、台座302に対して、水平面の並進方向、及び、鉛直軸周りの回転方向の動きが規制される。
(封口用マスク170)
ここで、封口用マスク170について説明する。封口用マスク170は、図12及び図13の(a)に示すように、位置合わせ用マスク270と同一の外形形状の略円板状の部材であり、多数の貫通孔170aを有する。すなわち、封口用マスク170の外径は、ハニカム構造体70の外径よりも大きくなっており、封口用マスク170は、ハニカム構造体70とは対向しない環状の外周部170pを有する。また、封口用マスク170には、位置合わせ用マスク270と同様に、マスクの回転方向の動きを固定すべく端面に平坦切欠部としてのオリエンテーションフラット170of1、170of2が設けられている。特に、封口用マスク170は、電磁ホルダ20による吸着を可能とすべく、磁力により吸着可能な強磁性材料、例えば、フェライト系ステンレスからなることができる。
封口用マスク170の貫通孔170aの平面形状は、例えば、ハニカム構造体70の貫通孔70a(図6参照)に対応する正方形とすることができる。これらの複数の貫通孔170aは、図13の(a)に示すように、千鳥配置とされており、各貫通孔170aは、図6の正方配置されたハニカム構造体70の複数の貫通孔70aのうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数の貫通孔のみに対向して配置される。特に、この封口用マスク170は、上述のようにして、ハニカム構造体70の端面70eと、位置合わせ用マスク270とが正確に位置合わせされた状態、すなわち、ハニカム構造体の端面70eと台座側マスク固定板304の凹部304bとが位置合わせされた状態で、凹部304bに嵌め込むことによって、封口すべき貫通孔70aと貫通孔170aとが連通し、かつ、封口すべきでない貫通孔70aが遮蔽されるように、予め、オリエンテーションフラット170of1,170of2に対して各貫通孔170aが配置されている。
このような封口用マスク170を、図12に示すように、オリエンテーションフラット170ofが凹部304bの当接部304ofと当接するように、台座側マスク固定板304の凹部304bに嵌め込むことにより、何ら位置合わせ作業をすることなく、図13の(b)に示すように、封口すべきハニカム構造体70の貫通孔70aと、封口用マスク170の貫通孔170aとが互いに連通し、かつ、封口したくないハニカム構造体70の貫通孔70aが封口用マスク170により遮蔽される。すなわち、封口用マスク170の貫通孔170aからハニカム構造体の端面70eを見ながらこれらの位置合わせをする必要がない。この時、嵌め込まれた封口用マスク170は、台座302に対する、水平面の並進方向、及び、鉛直軸周りの回転方向の動きが規制される(台座へのマスク固定工程)。
また、この封口用マスク170は、図13の(b)に示すように、貫通孔170aの断面形状がテーパ状である。これにより、ハニカム構造体70と、封口用マスク170との間に少々の位置ズレがあっても、所望の貫通孔70aに対して選択的に封口材を供給可能である。これを実現するためには、封口用マスク170の表裏を認識した上で、貫通孔70a側(図13の(b)の上側)の貫通孔170aの径が大きくなるように、封口用マスク170を凹部304bに嵌め込む必要がある。特に本実施形態では、図13の(a)に示すように、封口用マスク170のオリエンテーションフラット170of1、170of2の円板の中心Pを通る垂線f1、f2がなす角が180度以外であり、かつ、オリエンテーションフラット170of1,of2の長さWof1、Wof2が互いに異なっている。本実施形態では、Wof1>Wof2である。したがって、封口用マスク170を目視して、例えば、2つのオリエンテーションフラットの長さの順番等に基づいて(具体的には、例えば、短いオリエンテーションフラットから長いオリエンテーションフラットまで最短距離で向かう方向が時計回りとなる面を表面とする)ことにより、封口用マスク170の表裏を容易に正しい向きに配置することができる。また、凹部304bに対して、このように形成された2つのオリエンテーションフラット170of1,170of2にそれぞれ当接することができる互いに長さの異なる当接部304of1,304of2を設けておくことにより、表裏を逆にした状態で封口用マスク170を凹部304bに配置することを規制することも出来る。特に、本実施形態では、垂線f1、f2のなす角が、20〜160度であることができる。また、オリエンテーションフラット170of1,of2の長さWof1、Wof2の比は、1:1.1〜3であることができる。
続いて、ハニカム構造体70と封口用マスク170との位置があった状態で、電磁ホルダ20により封口用マスク170を固定治具台座10に対して固定する(固定治具へのマスク固定工程)。例えば、電磁ホルダ20の電磁石に電流を流している場合には、各電磁ホルダ20の電磁石20cの電流を切ることにより、永久磁石20bによる磁束により封口用マスク170の外周部170pの下面を吸着できる。なお、封口用マスク170をはめ込む前に、電流を切っていていても構わない。
続いて、図14に示すように、固定治具100を、固定されていた移動部材320からリリースすると共に、封口用マスク170を、固定されていた台座側マスク固定板304からリリースする(固定治具の移動部材からの開放工程)。ここでは、例えば、図14の矢印Aに示すように、固定治具100の固定治具台座10を少し上方に動かした後、切欠き304aに沿って−Y方向に動かせばよい。これにより、ハニカム構造体70の貫通孔70aと、封口用マスク170の貫通孔170aとの位置があった状態で、これらを固定治具100と共に位置合わせ装置400の台座302から離れた場所の封口装置に搬送可能である。
続いて、図15に示す封口装置200において、封口用マスク170の貫通孔170aを介して、ハニカム構造体70の所望の貫通孔70aに封口材を供給する(封口工程)。本実施形態に係る封口装置200は、主として、本体部210、弾性板220、ポンプ250を備える。
本体部210は、剛性材料から形成されている。剛性材料としては、ステンレス等の金属や、繊維強化プラスチック等のポリマー材料が挙げられる。本体部210の上面210aには、円柱状の凹部210dが形成されている。凹部210dの内面には、多孔質部材210pが貼り付けられている。
弾性板220は、凹部210dの開口面を覆うように、本体部210の上面210a上に、配置されている。弾性板220は、弾性を有し、容易に変形しうる。弾性板220としては、ゴム板とできる。ゴムとしては、天然ゴムや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ふっ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが挙げられる。弾性板220の厚みは特に限定されないが、例えば、0.3〜3.0mmとすることができる。
弾性板220は、リング部材225、及び、ボルト231により本体部210に固定されている。リング部材225は、本体部210の凹部210dに対応する位置に開口225aを有し、これにより環状形状をなしている。そして、リング部材225は、弾性板220における中央部(凹部210dとの対向部)が露出するように弾性板220上に配置されている。これにより、弾性板220の外周部が、本体部210とリング部材225とにより挟まれている。リング部材225及び弾性板220には貫通孔hがそれぞれ形成され、本体部210には、これら貫通孔hに対応するねじ孔jが形成されており、ボルト231がこれらの貫通孔hを貫通して配置され、ねじ孔jにねじ込まれて固定されることにより、本体部210の上面210aにおける凹部210dのまわりの部分に、弾性板220の外周部が密着して固定されている。
本体部210は、さらに、凹部210dの底面の多孔質部材210pに連通する連通路210eを有している。連通路210eには、接続パイプ214を介してポンプ250が接続されている。
ポンプ250は、シリンダ251、シリンダ251内に配置されたピストン253及びピストン253に接続されたピストンロッド254を備える。ピストンロッド254には、ピストンロッド254を軸方向に往復移動させるモータ255が接続されている。
本実施形態では、弾性板220と、ピストン253と、の間には、本体部210、接続パイプ214、及び、シリンダ251により形成される閉鎖空間Vが形成され、閉鎖空間V内には、気体、液体等の流体FLが充填されている。そして、ピストン53を移動させることにより、本体部210の凹部210d内から流体FLを排出して弾性板220を凹部210dの内面に密着させて弾性板220による凹部220dを形成することができ(図5の凹部210dの左側の状態)、また、凹部210d内に流体FLを供給することに弾性板220を凹部210dの底部から引き離すこと(図5の凹部210dの右側の状態)が出来る。
そして、予め、ピストン253を下げることにより、図15の凹部210dの左側のように、弾性板220による凹部220dを形成し、この凹部220d内に封口材130を貯留しておく。
封口材130は、ハニカム構造体70の貫通孔70aの端部を閉鎖できるものであれば特に限定されないが、液状とできる。例えば、封口材として、セラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、溶媒とを含むスラリーが例示できる。
セラミクス材料としては、上述のハニカム構造体の構成材料や、その原料が挙げられる。
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダを例示できる。バインダの使用量は、セラミックス源粉末を100質量部に対して、例えば、30.2〜5000質量部とすることができる。
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤の使用量は、セラミックス源粉末の100質量部に対して、2〜20質量部とすることができる。
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水、イオン交換水などを用いることができる。なかでも、水とでき、不純物が少ない点で、イオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、セラミックス材料を100質量部に対して、例えば、1520〜460質量部とすることができる。
続いて、本体部210の凹部210d上に、上述した固定治具100を配置する。ここでは、固定治具100を、図14の状態から、封口用マスク170が下側になりかつ固定治具台座10が上側になるように天地をひっくり返し、封口用マスク170をリング部材225の開口225a内に配置し、封口用マスク170が弾性板220の凹部220dと対向するように配置する。
続いて、ポンプ250のピストンを上方に移動させることにより、凹部210d内に流体FLを供給し、これによって、図15の凹部210dの右側に示すように、弾性板220を封口用マスク170に向かって移動させる。これにより、封口材130が封口用マスク170の貫通孔170aを介して、ハニカム構造体70の一部の貫通孔70a内に供給され、封口部が形成する。
続いて、ピストン53をさらに上昇させ弾性板220と本体部210との間にさらに流体FLを供給し、弾性板220を上方向に凸状に変形させ、ハニカム構造体70及びマスクを固定する固定治具100を、弾性板220から引き離す。その後、電磁ホルダ20の電磁石を駆動し、マスクを除去し、その後、エアピッカー30を収縮させることにより、ハニカム構造体70を固定治具台座10から外すことが出来る。そして、必要に応じて、同様の操作により、ハニカム構造体70の他の面のマスク固定及び封口を行うことができる。そして、封口されたハニカム構造体を乾燥、焼成することにより、ハニカムフィルタを製造することが出来る。
続いて、本実施形態の作用を説明する。本実施形態では、一対のオリエンテーションフラット170of1,170of2の垂線同士のなす角が180度以外であり、かつ、一対のオリエンテーションフラット170of1,170of2の長さWof1,W0f2が互いに異なるので、短いオリエンテーションフラットWof2と、長いオリエンテーションフラットWof1とが円周方向に配置される順番(例えば、短いオリエンテーションフラットW0f2から長いオリエンテーションフラットWof1まで最短距離で向かう方向が時計回りとなる面を表面とする)に基づいて、封口用マスク170の表裏の判別が容易に行なえる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
例えば、上記実施形態では、封口用マスク170の開口170aの形状や配置や大きさは、特に限定されない。
例えば、封口用マスク170の貫通孔170aの断面形状は必ずしもテーパ形状でなくても良い。例えば、貫通孔170aの断面形状がテーパ状でない場合でも、千鳥配列の位相が上下左右反転しないようにという理由から、封口用マスク170の表裏を判定する場合がある。
また、封口用マスク170の貫通孔70aの配置パターンも自由であり、ハニカム構造体70の貫通孔70aの配置等の態様にあわせて変更できる。例えば、ハニカム構造体70の貫通孔70aの配置は、正方形配置でなくてもよく、例えば、3角配置、千鳥配置等でも構わない。この場合、貫通孔70aの配置に合わせて、封口用マスク170や位置合わせ用マスク270の開口270aの数や角度を変更することができる。
ハニカム構造体70の形状や構造も上述に限定されない。例えば、ハニカム構造体70の外形形状も円柱でなくてもよく、例えば、四角柱等の角柱でもよい。また、ハニカム構造体70の貫通孔70aの断面形状は、正方形でなくてもよく、例えば、長方形、三角形、多角形、円形等でも構わない。
また、封口用マスク170や封口用マスク170の外形形状も略円形には限定されず、楕円形、四角形等でも実施可能である。また、封口用マスク170において、開口270aの長軸の延長線が交差する一点Pは、主面の形状の重心とすることができ、正多角形等であれば中心となる。なお、一点Pが、主面の重心とは異なる位置に配置され、偏心していても実施は可能である。
さらに、封口装置200の形態も特に限定は無い。
また、位置合わせ用マスク270の開口の数や配置は特に限定されず、ハニカム構造体70の貫通孔70aが中央部から外側に向かって放射状に並ぶ方向に合わせて、適切に定めることができる。
また、位置合わせ用マスク270を用いることなく、封口用マスク170の開口から、ハニカム構造体70の端面70eの外壁の輪郭70pや貫通孔の輪郭の位置を判断しながら封口用マスク170とハニカム構造体70の端面7070eとの位置合わせをしても実施は可能である。
また、固定治具100や、位置合わせ装置400の態様は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形態様が可能である。
また、上記実施形態では、位置合わせ用マスク270を固定し、移動機構310によりハニカム構造体70を移動させて位置合わせしているが、ハニカム構造体70を固定し、位置合わせ用マスク270や封口用マスク170を移動して位置合わせをしてもよく、両方を動かして位置合わせをしてもよい。
さらに、上記実施形態では、移動機構310が移動する面及びマスクが配置される面及びハニカム構造体の端面が配置される面は水平面であるが、これに限定されず、例えば、鉛直面、斜面等であっても実施は可能である。また、台座302の形態も自由である。