JP4915903B2 - 多孔体の酸素拡散係数測定方法およびその測定装置 - Google Patents
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すなわち、容器内に収容した多孔体の細孔内に液水が存在している場合において、容器内を高圧にするとガスが凝縮して多孔体内に浸入する一方で、容器内を低圧にすると多孔体内に含まれた液水が蒸発する。このように、容器内のガス圧力を変動させると、多孔体内の含水量が変動することになるので、基礎データとして検出するガスの容積変動と圧力変動との位相差および振幅の検出値が不安定となり、多孔体のガス拡散係数を正確に求めることができなかった。
図1は本発明による多孔体の酸素拡散係数測定方法およびその測定装置の基本的な構成を示す断面図である。この装置は、測定対象となる多孔体1の酸素拡散係数を測定するもので、ガルバニ電池式の酸素センサー2と、多孔体ホルダー3と、演算手段4とを含んで構成されている。
O2+2H2O+4e- → 4OH- ・・・(1)
一方、酸素センサー2の陽極6では、以下の(2)〜(4)式に示す一連の酸化反応が起きている。
2Pb2++4OH- → 2Pb(OH)2 ・・・(3)
2Pb(OH)2+2KOH → 2KHPbO2+2H2O ・・・(4)
そして、箱体7の外面には、陰極5に接続された端子11と、陽極6に接続された端子12とが設けられており、これらの二つの端子11,12は、演算手段4に接続されている。この演算手段4は、測定対象となる多孔体1を透過する酸素の速さを示す酸素拡散係数を算出するものである。この演算手段4により、多孔体1の酸素拡散係数を算出する処理については、後に詳しく説明する。
このような構成の酸素センサー2の陰極5側には、多孔体ホルダー3が取り付けられている。この多孔体ホルダー3は、測定対象となる多孔体1を保持する部材であって、酸素センサー2の隔膜9をカバー部3aで覆うようになっており、このカバー部3aの略中央部には、鉛直方向に延びた円筒状の筒状部3bが形成されている。この多孔体ホルダー3は、多孔体1の形状や性質等に合わせて、筒状部3bの内径や長さを異ならせたものが複数種類ある。
そして、この多孔体ホルダー3の筒状部3bには、例えば燃料電池を構成するMEAやGDLなどの多孔体1が保持されている。このとき、多孔体1の一端面が外部の気体に接し、その他端面が酸素センサー2の陰極5に対向するように保持されている。なお、本実施形態では、多孔体1は乾燥、あるいは含水しており、その厚さを2mmとする。
多孔体1を保持した多孔体ホルダー3および酸素センサー2からなる測定装置10において、酸素センサー2の隔膜9と、多孔体ホルダー3と、多孔体1とで囲まれた狭い空間A内には空気が存在している。この空間A内の空気中に含まれる酸素は、隔膜9を透過して陰極5で還元反応するので、空間A内における酸素濃度は徐々に低下していく。これにより、多孔体1の下面側の酸素濃度は、多孔体1の上面側の空気中の酸素濃度と比べて低くなっていくので、この多孔体1の上下両面間で酸素濃度差ΔCが生じる。すると、この酸素濃度差ΔCにより、多孔体1の上面側の空気中に含まれる酸素が多孔体1を透過して空間A内に拡散していくようになる。
酸素量Vo2=酸素濃度差ΔC×酸素拡散係数D/厚さL ・・・(5)
この(5)式を変形すると、以下の(6)式が得られる。
ここで、空気中における酸素の体積比は20.9%であることから、空気中の酸素濃度C1を求めることができる。よって、多孔体1の上下面間における酸素濃度差ΔCは、演算手段4で算出した酸素濃度C(I)を用いて、以下の(7)式で表せる。
酸素濃度差ΔC=(空気中の酸素濃度C1)−C(I) ・・・(7)
なお、多孔体1の厚さLは既知であり、本実施形態では、上述のように2mmである。
このように、本実施形態によれば、ガルバニ電池式の酸素センサー2を用いて、多孔体1の酸素拡散係数Dを簡便に測定することができる。なお、以上の説明では、多孔体1は乾燥しているとしたが、内部に液水が含まれた湿状態のものでもよい。
ここで、測定対象となる多孔体1に液水を含浸させる処理について説明する。まず、多孔体ホルダー3に取り付ける前に、多孔体1を超音波洗浄して細孔内のゴミを取り除いておく。この多孔体1を十分に乾燥させ、そのときの重さを予め計測する。次に、図4に示すように、このような前処理によりゴミが取り除かれた多孔体1を、トレー18中の純水19に浸し、それを気密容器20内に収納した状態で真空ポンプ21を作動する。これにより、気密容器20内の空気が外部に排出されて真空状態となり、その状態で多孔体1の細孔内に純水19を含浸させることができる。そして、この液水を含浸させた多孔体1の重さも計測する。なお、本実施形態では、多孔体1の厚さを1mmとし、その空隙率εを60%とする。このように多孔体1に液水を含浸させたことによって、例えば重さが6.0mgだけ増加したときは、その細孔内に6.0mgの液水が含浸したことになる。
このとき、密閉容器14に収容された測定装置10の質量が電子天秤15で計測されている。このように、測定装置10の全体の質量を電子天秤15で継続的に計測し、その計測結果を演算手段4に出力することで、多孔体ホルダー3に保持された多孔体1内の含水量の経時変化を測定することができる。この電子天秤15は、多孔体1内の含水量の経時変化を高精度に測定できるものが用いられる。
次に、このように構成された多孔体の酸素拡散係数測定装置による測定方法について、図5〜図7を参照して説明する。
図6において、曲線Sは、電子天秤15で測定した多孔体1内の含水量の経時変化を示すもので、多孔体1に含まれる液水が徐々に蒸発することにより、多孔体1の含水率Sが時間経過に伴って減少していくことが分かる。また、曲線Aは酸素の移動速度の経時変化を示し、曲線Bは水蒸気の移動速度の経時変化を示している。
その後、図3に示す密閉容器14の内部の温度や湿度を調整し、多孔体1内に含浸させた液水が蒸発するように設定すると、多孔体1に含浸させた液水は、水蒸気となって多孔体1の外部に移動していく。
このとき、酸素センサー2で検出する酸素の量Vo2は、筒状部3bの先端部と基部との酸素濃度差ΔCに比例し、拡散抵抗Rに反比例することから、以下の(9)式に示す関係が成立している。
酸素量Vo2=酸素濃度差ΔC/拡散抵抗R ・・・(9)
この(9)式に上記(8)式を代入すると、以下の(10)式が得られる。
なお、本実施形態では、上述のように、多孔体1の厚さL2が1mmであり、多孔体ホルダー3の筒状部3bの長さLが50mmであるので、L1=49mmである。また、湿度および温度が標準状態のときは、空気中の酸素拡散係数D1の値は、D1=Dair-O2=2×10-5(m2/s)であることが知られている。よって、これらの値を上記(10)式に代入すると、液水を含む多孔体1の酸素拡散係数D2を算出することができる。
また、上述したように、密閉容器14は、その内部の温度および湿度を調整する機能を備えており、多孔体ホルダー3に保持された多孔体1内に含浸させた液水の蒸発速度を制御できるようになっている。
している。ここでは、多孔体1内に含まれた液水を蒸発し易くすると、図6の曲線B′に示すように、水蒸気の移動速度が曲線Bに比べて大きくなる。また、水蒸気の移動する方向と、酸素が多孔体1内を拡散していく方向とは反対方向であるので、曲線A′に示すように、酸素の移動速度が曲線Aに比べて小さくなる。
なお、以上の説明においては、多孔体1に含まれる液水の蒸発速度と、多孔体1の酸素拡散係数Dとの関係についてのみ説明したが、密閉容器14内に収容された気体が、水蒸気と酸素の他に、ヘリウム(He)または窒素(N2)などを含む多成分共存のものであっても、同様に測定することができる。
この場合は、多孔体1に含浸させた液水は、酸素センサー2と多孔体ホルダー3と多孔体1とに囲まれた広い空間B側にも蒸発していき、この空間B内の気体に占める水蒸気の割合が徐々に大きくなる。そして、所定時間が経過すると、空間B内は水蒸気で飽和した状態となる。
このように、本実施形態においては、測定対象となる多孔体1内に液水を含浸させておき、この多孔体1を多孔体ホルダー3の先端部にて酸素センサー2から離れた位置に保持することにより、本装置を有効に利用して、飽和水蒸気中の酸素拡散係数を求めることができる。
ここでは、空気中の酸素が、多孔体ホルダー3の筒状部3bに保持された二つの多孔体(1,22)を通過するときの拡散抵抗Rを用いて、これらの多孔体(1,22)の酸素拡散係数を同時に求める。この拡散抵抗Rは、第1の多孔体1の厚さをL1とし、その酸素拡散係数をD1とし、第2の多孔体22の厚さをL2とし、その酸素拡散係数をD2とすると、上記(8)式で表すことができ、上記(10)式が成立する。
Vo2/ΔC=(L1/D1wet+L2/D2dry) ・・・(11)
なお、(11)式において、D1wetとは、第1の多孔体1に液水を含浸させたときの酸素拡散係数を示し、D2dryとは、第2の多孔体22が乾燥した状態の酸素拡散係数を示している。
Vo2/ΔC=(L1/D1dry+L2/D2dry) ・・・(12)
なお、(11)式において、D1dryとは、第1の多孔体1が乾燥した状態の酸素拡散係数を示している。
Vo2/ΔC=(L1+L2)D1dry ・・・(13)
なお、二つの多孔体(1,22)の厚さL1,L2は、予め計測されている。また、上述したように、酸素センサー2の出力を用いて酸素濃度差ΔCを求めることができる。よって、上記(11)式および(13)式から、二つの変数D1wetおよびD2dryを求めることができる。
図10は、本発明の第5の実施形態を示す説明図である。この実施形態は、酸素センサー2と多孔体ホルダー3とからなる測定装置10を、電子天秤15の秤量皿15aに吊り下げて、この測定装置10のみを密閉容器14に収容したものである。
本実施形態では、測定装置10を収容する密閉容器14と、電子天秤15とを分離したので、電子天秤15は、密閉容器14内の温度変化の影響を受けることがない。これにより、この密閉容器14内の温度を、例えば50℃以上の高温に設定したときでも、電子天秤15は温度変化の影響を受けることがなく、上述したと同様に、多孔体1の酸素透過係数の経時変化を計測することができる。
Claims (8)
- 測定対象となる多孔体の一端面を所定の酸素濃度の気体に接するようにし、該多孔体の他端面をガルバニ電池式の酸素センサーの陰極側に対向させておき、
前記酸素センサーの出力および前記多孔体内に含まれる液水の質量の経時変化に基づいて、前記多孔体の含水量に対する酸素拡散係数を算出することを特徴とする多孔体の酸素拡散係数測定方法。 - ガルバニ電池式の酸素センサーと、
前記酸素センサーに取り付けられており、測定対象となる多孔体の一端面が所定の酸素濃度の気体に接し、その他端面が前記酸素センサーの陰極側に対向するように該多孔体を保持する多孔体ホルダーと、
前記酸素センサーおよび前記多孔体ホルダーからなる測定装置を収容する密閉容器と、
前記密閉容器に収容された前記測定装置の質量を計測する電子天秤と、
前記酸素センサーの出力を用いて前記多孔体の酸素拡散係数を算出する演算手段と、
を含んで構成されることを特徴とする多孔体の酸素拡散係数測定装置。 - 前記演算手段は、
前記多孔体ホルダーの長さと、
前記多孔体の厚さと、
前記酸素センサーの出力に基づいて求められる該酸素センサーに到達した酸素の量と、
同じく前記酸素センサーの出力に基づいて求められる前記多孔体の両端面側における酸素濃度差と、
を用いて前記多孔体の酸素拡散係数を算出することを特徴とする請求項2に記載の多孔体の酸素拡散係数測定装置。 - 前記多孔体ホルダーは、両端が開口した筒形状をしており、前記酸素センサーの陰極側に近いほうの開口端部に液水を含浸させた状態の多孔体を保持することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の多孔体の酸素拡散係数測定装置。
- 前記多孔体ホルダーは、両端が開口した筒形状をしており、前記酸素センサーの陰極側から離れたほうの開口端部に液水を含浸させた状態の多孔体を保持することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の多孔体の酸素拡散係数測定装置。
- 前記多孔体ホルダーは、両端が開口した筒形状をしており、前記酸素センサーの陰極側に近いほうの開口端部に液水を含浸させた状態の第1の多孔体を保持するとともに、前記酸素センサーの陰極側から離れたほうの開口端部に乾燥状態の第2の多孔体を保持することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の多孔体の酸素拡散係数測定装置。
- 前記演算手段は、前記酸素センサーの出力および前記電子天秤で計測した前記測定装置の質量の経時変化に基づいて、前記多孔体の含水量に対する酸素拡散係数を算出することを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか一つに記載の酸素拡散係数測定装置。
- 前記密閉容器は、その内部の温度および湿度を調整する機能を備えており、前記多孔体ホルダーに保持された前記多孔体内の液水の蒸発速度を制御することを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか一つに記載の多孔体の酸素拡散係数測定装置。
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