以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの内部構成を概略的に示す模式図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は直方体形状の筐体1aを有している。筐体1a内には、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出するインクジェットヘッド100a〜100d(液体吐出ヘッド;以下、ヘッド100a等とする)が設けられている。筐体1aの天板内面には、ヘッド100a等の動作を制御する制御部80が取り付けられている。
ヘッド100a〜100dは、互いに異なる色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)を吐出する。ヘッド100a〜100dの下面は、インクを吐出する複数の吐出口が開口したインク吐出面101となっている。ヘッド100a〜100dのそれぞれは、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。また、ヘッド100a〜100dは、用紙Pの搬送方向Aに沿って並べて固定されている。つまり、このプリンタ1はライン式のプリンタであり、搬送方向Aと主走査方向とは互いに直交する関係にある。
筐体1a内の底面近くには、各ヘッド100a〜100dへとインクを供給するインクタンクユニット1cが設置されている。インクタンクユニット1cは、ヘッド100a〜100dとそれぞれ接続されたインクタンク17a〜17dを有している。インクタンク17a〜17d(液体タンク)には互いに異なる色のインクが貯留されている。インクタンク17a〜17dからは、チューブを介してヘッド100a〜100dにそれぞれインクが供給される。
ヘッド100a〜100dの下方には、ヘッド100a〜100dによって印刷処理が施される印刷用紙(記録媒体)を供給する給紙ユニット1bが収容されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ11と、給紙ローラ12とを有している。給紙トレイ11は、上方に向かって開口した箱形状を有しており、複数枚の用紙Pが積層された状態で収納される。給紙ローラ12は、給紙トレイ11の最も上方にある用紙Pを送り出す。
ヘッド100a〜100dと給紙ユニット1bとの間には、給紙ユニット1bから送り出された用紙Pをヘッド100a〜100dの下方において水平に搬送する搬送機構16が構築されている。搬送機構16は、制御部80によって制御され、図1の太矢印に示す用紙搬送経路に沿って印刷用紙を搬送する。給紙ユニット1bから送り出された用紙Pは、ガイド13a、13bによりガイドされると共に、送りローラ対14によって挟持されつつ搬送機構16へと送られる。
搬送機構16は、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8(搬送部材)と、テンションローラ10と、プラテン18とを有している。搬送ベルト8は、両ローラ6、7の間に架け渡されるように巻回されたエンドレスのベルトである。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループにおいて、その内周面に接触しつつ下方に付勢されており、搬送ベルト8にテンションを付加している。
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、その軸に搬送モータ19から駆動力が与えられることで、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行することによって、図1中時計回りに回転する。なお、搬送モータ19の駆動力は、複数のギアを介してベルトローラ7に伝達される。
プラテン18は、搬送ベルト8によって囲まれた領域内に配置され、ヘッド1と対向する位置において、搬送ベルト8が下方に撓まないように搬送ベルト8を支持している。
搬送ベルト8の外周面8aにはシリコン樹脂層が形成されており、これによって外周面8aが粘着性を有している。ベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット1bから送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。用紙Pは、その粘着力によって外周面8a上に保持されながら用紙搬送方向(図1中右方であって副走査方向)へと搬送される。用紙Pがヘッド100a〜100dのすぐ下方を通過する際に、用紙Pの上面に向けて吐出口から各色のインクが順に吐出される。これにより、用紙Pの印刷面に所望のカラー画像が形成される。
ベルトローラ7と対向する位置には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、用紙Pを外周面8aから剥離する。剥離された用紙Pは、ガイド29a、29bによりガイドされ、且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送される。そして用紙Pは、筐体1aの上部に形成された排出口27から排紙部15へと排出される。
図2は、インクタンク17aからヘッド100aへとインクを供給する供給機構を示す模式図である。なお、図2は、インクタンク17aに関連した構成を示しているが、インクタンク17b〜17dからヘッド100b〜100dへとインクを供給する構成もこれと同様である。
ヘッド100aは、フレーム7に固定されている。ヘッド100a内には、インク吐出面101に開口した各インク吐出口にインクを供給するインク流路102、104及び105が形成されている。インク流路102、104及び105は互いに連通しており、インク流路105は各インク吐出口と連通している。ヘッド100aの主走査方向に関して一端付近の上部には、インク導入部110(流路管受け部材)が設けられている。インクタンク17aからのインクは、インク導入部110を通じてインク流路102に導入され、インク流路102に連通したインク流路104に貯留される。インク流路104に貯留されたインクは、インク流路104から下方へと延びたインク流路105を通じて各インク吐出口へと供給される。
また、インク導入部110の近傍には、インク排出部130(流路管受け部材)が設けられている。インク排出部130にはインク流路103が形成されており、インク流路103は、インク流路102から離隔した位置でインク流路104と連通している。インク流路103は、インク排出部130を通じてヘッド100aの外部へと、インク流路104内に滞留した空気を排出するための流路である。例えば、インク流路102を通じてインク流路104内へと浸入した空気は、インク流路103及びインク排出部130を通じて、ヘッド100aの外部へと排出される。
インク導入部110にはアタッチメント部材200の導入ニードル224(流路管)が上方から挿入され、インク排出部130にはアタッチメント部材200の排出ニードル225(流路管)が上方から挿入されている。図2に示すように、アタッチメント部材200は、フレーム7上に固定された2本の支柱7aと、これらの支柱7aに架け渡された支持プレート7bとによって、フレーム7上で支持されている。
図3は、アタッチメント部材200の上面図(図3(a))、図3のb-b線に沿う断面図(図3(b))、及びアタッチメント部材200の下面図(図3(c))をそれぞれ示している。アタッチメント部材200は、アタッチメント本体部221、導入ニードル224及び排出ニードル225を有している。アタッチメント本体部221は概略的に、鉛直方向の厚みが小さい直方体の形状を有しており、主走査方向に長尺な長方形の平面形状を有している。導入ニードル224及び排出ニードル225は、アタッチメント本体部221の下面から鉛直下方に突出している。また、導入ニードル224及び排出ニードル225は、平面視において、アタッチメント本体部221の長尺方向に関して一端付近に配置されており、アタッチメント本体部221の幅方向に互いに離隔している。導入ニードル224及び排出ニードル225の下端には、ヘッド100a側との連通口通過口224a及び225aがそれぞれスリット状に形成されている。
アタッチメント本体部221の長尺方向に関して導入ニードル224及び排出ニードル225が配置された側とは反対側の端部には、インクチューブ33a及び33bがそれぞれ接続されるチューブ接続部227a及び227bが設置されている。チューブ接続部227a及び227bは、アタッチメント本体部221の上面から鉛直上方に突出しており、平面視で互いにアタッチメント本体部221の幅方向に離隔している。
アタッチメント部材200内には、チューブ接続部227aから導入ニードル224の下端に形成された通過口224aまで連通するインク流路が形成されている。このインク流路は、インク流路231a〜234aから構成されている。これらのインク流路について、図3(a)〜図3(c)に基づいて説明する。なお、図3(b)は、後述する別のインク流路231b〜234bの縦断面を示しているが、インク流路231b〜234bの構造は基本的にインク流路231a〜234aと同じである。
インク流路231aは、チューブ接続部227a内に鉛直方向に沿って形成されている。インク流路231aの下端は、インク流路232aの図3中右端と連通している。インク流路232aはアタッチメント本体部221の長尺方向に図3中左方へと延びている。インク流路232aは、アタッチメント本体部221の下面に開口した凹部によって形成されている。この凹部の周囲には平面視で凹部を取り囲むように環状突起212が形成されており、環状突起212の先端面には、凹部の開口を塞ぐように可撓性のフィルム216が接着されている。凹部、フィルム216及び環状突起212に囲まれた空間がインク流路232aを構成している。このとき、フィルム216は、インクを伝播する圧力波を抑制するダンパーとして機能する。
インク流路232aの図3中左端は、インク流路233aの右端と連通している。インク流路233aはインク流路232aとの連通部から図3中左方へと延びている。インク流路233aは、アタッチメント本体部221の上面に開口した凹部によって形成されている。この凹部の周囲には平面視で凹部を取り囲むように環状突起211が形成されており、環状突起211の先端面には、凹部の開口を塞ぐように可撓性のフィルム215が接着されている。凹部、フィルム215及び環状突起211に囲まれた空間がインク流路233aを構成している。フィルム215は、フィルム216と同様の機能を持つ。
インク流路233aの図3中左端は、インク流路234aの上端に連通している。インク流路234aは、導入ニードル224内を鉛直下方に延びており、導入ニードル224の下端に形成された通過口224aに連通している。
また、アタッチメント部材200内には、チューブ接続部227bから排出ニードル225の下端に形成された通過口225aまで連通するインク流路が形成されている。このインク流路は、インク流路231b〜234bから構成されている。これらのインク流路は、図3(a)〜図3(c)に示すように、チューブ接続部227b内のインク流路231b、インク流路231bに連通したインク流路232b、インク流路232bの開口を囲む環状突起214、環状突起214に接着された可撓性フィルム218、インク流路232bに連通したインク流路233b、インク流路233bの開口を囲む環状突起213、環状突起213に接着された可撓性フィルム217、インク流路233bに連通したインク流路234b、及び、排出ニードル225の先端部に形成された通過口225aから構成されている。可撓性フィルム217、218は、可撓性フィルム215、216と同様の機能を持つ。
環状突起213の周囲には、環状突起213の外縁に沿って延びるU字形のスリット223aが形成されている。スリット223aはアタッチメント本体部221を鉛直方向に貫通している。これにより、排出ニードル225及び環状突起213に囲まれた領域からなる部分は、アタッチメント本体部221の他の部分からスリット223aによって一部を残して分離された、片持ち梁状の梁状流路部223となっている。この梁状流路部223は、図3中右端部のみにおいてアタッチメント本体部221の他の部分と結合しており、全体が図3(a)、図3(c)の矢印A、Cの方向に変位可能となっている。
図2に示すように、アタッチメント部材200のチューブ接続部227aにはインクチューブ33aの一端が接続されている。インクチューブ33aの他端はポンプ24に接続されている。ポンプ24には3つのポートが設けられており、このうち1つとインクチューブ33aとが接続されている。ポンプ24の他の2つのポートのうち、1つはインクチューブ33cを介してインクタンク17aに接続され、1つはインクチューブ33dを介してサブタンク31に接続されている。サブタンク31は、インクを一時的に貯留するインク室を内部に有しており、インクチューブ33bを介してアタッチメント部材200のチューブ接続部227bと接続されている。また、サブタンク31には排気部32が設けられている。
インクチューブ33c及び33dの途中部には電磁弁21及び23が設けられている。電磁弁21及び23を切り替えることにより、これらのインクチューブ内をインクが流通するのを停止させることができる。また、排気部32にも電磁弁22が設けられている。電磁弁21〜23やポンプ24の動作は、制御部80によって制御される。
制御部80は、電磁弁21〜23やポンプ24に以下の動作を実行させることにより、インクタンク17a、ヘッド100a及びサブタンク31間を流れる以下のインク流を発生させる。例えば、ヘッド100aに初めてインクを導入する際の動作は以下の通りである。まず、電磁弁21を閉じた状態にし、電磁弁22及び23を開いた状態にしてポンプ24を駆動する。これにより、インクタンク17aからのインクが、インクチューブ33c、33a、アタッチメント部材200を介して導入ニードル224からヘッド100aのインク導入部110へと流れ込む。そして、ヘッド100a内のインク流路102及び104にインクが満たされたところで、ポンプ24を強めに駆動し、インク流路104からインク流路105を経てインク吐出口側へとインクを流れ込ませる。
この間、ヘッド100aから流出したインクは、排出ニードル225及びインクチューブ33bを介してサブタンク31に流れ込む。このインクにはヘッド100a内の空気が含まれているが、サブタンク31でインクと分離され、排気部32から大気側に排出される。
ヘッド100aにインクを追加供給する際には、電磁弁21〜23をいずれも開いた状態にしてポンプ24を駆動する。これにより、インクタンク17aからのインクがヘッド100aに供給されると共に、ヘッド100a内のインク流路104内のインクが、インク流路103、インク排出部130、排出ニードル225、アタッチメント部材200及びインクチューブ33bを経て、サブタンク31へと流れ込む。サブタンク31内では、インク中の空気がインクから分離され、排気部32を介して大気中に排出される。
インクを供給せず、サブタンク31とヘッド100a間でインクを循環させる循環流を発生させる場合には、電磁弁21を開いた状態にし、電磁弁22及び23を閉じた状態にしてポンプ24を駆動する。これにより、サブタンク31からのインクが、インクチューブ33d、ポンプ24、インクチューブ33a及びアタッチメント部材200を経て、ヘッド100aへと流れ込む。また、ヘッド100aからのインクが、アタッチメント部材200及びインクチューブ33bを経てサブタンク31へと流れ込む。
以上のように、本実施形態では、インク排出部130に形成された開口が本発明の排出口に対応し、ヘッド100a内のインク流路102〜104により、本発明の供給排出流路が構成されている。また、ポンプ24、電磁弁21〜23、サブタンク31、インクチューブ33a、33b等により、本発明の液体流形成機構が構築されている。
また、本実施形態においては、ヘッド100a〜100dに設けられたインク導入部110と、インク導入部110に挿入されたアタッチメント部材200の導入ニードル224とによって、本発明の液体供給ジョイントが実現されている。以下、インク導入部110及び導入ニードル224についてより詳細に説明する。図4は、図2のインク導入部110周辺の拡大図である。図5は、図4の縦断面図であり、導入ニードル224に関しては図3(c)のV−V線断面図に相当する。図6(a)は、導入ニードル224の底面図である。なお、本実施形態では、インク排出部130、及び、インク排出部130に挿入された排出ニードル225にも、本発明の液体供給ジョイントが採用されている。これらも、インク導入部110及び導入ニードル224と基本的な構造が同じであるため、これらについての詳細な説明は省略する。
導入ニードル224は、鉛直方向に平行な図4、図5に示すL−L線(仮想直線)に沿った中心軸(以下、L−L中心軸とする)を有する円筒形の概略形状を有しており、その内部にインク流路234aが形成されている。導入ニードル224の外周面には、L−L中心軸に関する径方向に沿って互いに逆方向に突出した2本のガイド突起224bが形成されている。ガイド突起224bは、いずれもL−L中心軸に沿った方向に延びている。
導入ニードル224の先端には、外周面からインク流路234aまで至るインクの通過口224aが形成されている。この通過口224aは全部で4つ形成されており、L−L中心軸周りの周方向Bに関して互いに等間隔で配列されている(図6(a)参照)。導入ニードル224の先端部において、4つの通過口224aに挟まれた4つの領域のうち、3つの先端は互いに同じ水平面に沿っている。残り一つの先端には、下方に向かって突出する突起224d(凸部)が形成されている。
インク導入部110は、樹脂製のニードル受け部材111と導入部本体112とを有している。ニードル受け部材111の内部には、導入ニードル224の先端が通過するニードル通過孔111c(第1の液体室)が形成されており、ニードル通過孔111cの上端には、導入ニードル224が挿入される開口111bが形成されている。開口111bは、外部に対して拡開した傾斜面によって形成されている。
ニードル受け部材111の上端には、外周面からニードル通過孔111cまで貫通する2つのガイド孔111aが形成されている。図4中には、2つのガイド孔111aのうち一方のみ示されており、他方はL−L中心軸に関して対称な位置に形成されている。ガイド孔111aは、ニードル受け部材111の上端からL−L中心軸に沿って鉛直下方に延びている。導入ニードル224は、2つのガイド突起224bがちょうど2つのガイド孔111aに嵌まり込むようにニードル受け部材111に挿入されている。ガイド突起224bの表面(規制面)とガイド孔111aの内表面(規制面)とが当接することにより、L−L中心軸周りの周方向Bに関する互いの移動を規制している。このように、本実施形態においては、ガイド突起224bとガイド孔111aとが、本発明の第2の案内手段を構成している。
ニードル受け部材111内に形成されたニードル通過孔111cには、可撓性を有する樹脂製の嵌め込み部材113が収容されている。嵌め込み部材113は円筒形の概略形状を有し、鉛直方向に沿って導入ニードル224が挿入される貫通孔113aが形成されている。貫通孔113aの内面には突起113bが形成されており、導入ニードル224の外周面に形成された凹部224cとちょうど嵌まり合うようになっている。
ニードル受け部材111の下端は開口しており、この開口から導入部本体112の上部が挿入されている。導入部本体112の上端は、ニードル受け部材111側のニードル通過孔111c内に挿入されていると共に、嵌め込み部材113をニードル通過孔111cの内面に押し付けるように、嵌め込み部材113に下方から水密に当接している。そして、この状態で、ニードル受け部材111と導入部本体112とが固定されている。導入部本体112の内部には、導入ニードル224の先端が進入するニードル進入孔112a(第2の液体室)が形成されている。ニードル進入孔112aの上端は、ニードル通過孔111c内に向かって開口しており、この開口から嵌め込み部材113の下部がニードル進入孔112a内に入り込んでいる。
以上の構成のうち、ニードル通過孔111c、貫通孔113a及びニードル進入孔112aはL−L中心軸上に並ぶように配置されており、これらによって、導入ニードル224がL−L中心軸に沿って挿入される挿入経路がインク導入部110内に確保されている。
ニードル進入孔112aの下部には弁体120が収容されている。図6(b)は、弁体120と導入ニードル224の先端付近の拡大正面図である。図7(a)は弁体の斜視図である。図7(b)は、弁体120とその周辺の平面拡大図である。弁体120は、L−L中心軸に軸方向が沿った円筒形の概略形状を有している。弁体120の内部には、円筒形の概略形状を有する空洞126が形成されており(図5、図6(b)参照)、この空洞126は、弁体120の下方へと開口している。空洞126には、図5に示すように、下方から付勢部材115が入り込んでいる。付勢部材115は弁体120を上方へと付勢している。ここで、付勢部材115には、コイルバネが用いられている。
弁体120の外周壁には、図7(a)に示すように、外周面から空洞126まで貫通する4つの貫通孔121が形成されている。貫通孔121は、図7(b)に示すように、角度が90度であるD1〜D4のそれぞれの範囲内で、L−L中心軸周りの周方向Bに沿って延びている。また、貫通孔121は、図7(b)に示すように、ニードル進入孔112aの内壁面と弁体120との隙間を形成している。これにより、貫通孔121は、ニードル進入孔112a内において、弁体120より下方の領域と上方の領域とを連通させる連通部(第2の連通孔)として機能している。つまり、貫通孔121が形成されていることによって、弁体120がニードル進入孔112a内を閉鎖することなく、ニードル進入孔112a内の上部の領域から下部の領域へとインクを流通させることが可能になっている。
弁体120の外周面には、L−L中心軸に沿って弁体120の上端から下端まで延びた4つのガイド溝122が形成されている。ガイド溝122は、周方向Bに関して貫通孔121同士の間にそれぞれ形成されている。
一方、ニードル進入孔112aの下部は、軸方向がL−L中心軸に沿った円筒形状を有しており、弁体120がその中をL―L軸に沿って移動可能な大きさを有している。そして、ニードル進入孔112aの下部内面には、弁体120側のガイド溝122とちょうど嵌まり合う大きさ及び形状のガイド突起112bが4つ形成されている。ガイド突起112bは、ガイド溝122と嵌まりつつ弁体120がL−L中心軸に沿って移動することができるように形成されている。ガイド溝122の内表面(規制面)とガイド突起112bの表面(規制面)とが当接することにより、L−L中心軸周りの周方向Bに関する互いの移動が規制されている。このように、本実施形態においては、ガイド溝122とガイド突起112bが、本発明の第1の案内手段を構成している。なお、図5の状態においては、弁体120の下端がニードル進入孔112aの内面下端に当接しており、これ以上下方へと移動できない位置となっている。
弁体120の上面123は水平に沿っており、導入ニードル224の先端が上方から当接する。上面123には、導入ニードル224の先端に形成された突起224dがちょうど嵌まり込む大きさ及び形状の凹部124が形成されている。突起224dがちょうど凹部124に嵌まり込むように、周方向Bに関する位置を調整して導入ニードル224の先端を上面123に当接させることにより、導入ニードル224の先端面が上面123との間に隙間を空けることなく上面123に当接する。
このとき、導入ニードル224側の4つの通過口224aと、弁体120側の4つの貫通孔121とは、図6(a)、図6(b)に示す位置関係になる。つまり、各通過口224aが周方向Bに関してちょうど各貫通孔121と重なり合う位置関係となる。換言すると、周方向Bに関する各通過口224aの形成範囲が、各貫通孔121の形成範囲と重なっている。
以下、導入ニードル224からヘッド100aへインクが流れ込む際のインクの流れ方について説明する。まず、導入ニードル224の内部に形成されたインク流路234aを通じて、インクが下方へと流れる(図5参照)。そして、導入ニードル224の下端において4つの通過口224aを通じ、ニードル進入孔112a内において導入ニードル224の外部へとインクが流れだす。
各通過口224aを通じて導入ニードル224から流れ出たインクは、図6(b)の太い矢印で示すように、そのまま下方の各貫通孔121へと向かう。そして、各貫通孔121から空洞126を通って下方へと流れる。空洞126の下方へと流れ出したインクは、ヘッド100a内のインク流路102へと流れ込む(図5参照)。
以下、図8を参照しつつ、導入ニードル224をインク導入部110に挿入する手順について説明する。導入ニードル224が挿入される前には、インク導入部110内において、弁体120が付勢部材115によって上方に向かって付勢され、嵌め込み部材113の下端に弁体120の上面123が当接している。これによって、貫通孔113aの下端の開口113c(連通部)が閉鎖されている。このときの弁体120の位置が、本発明の第1の位置に対応する。
上記の状態で、ニードル受け部材111の開口111bからニードル通過孔111c内へと導入ニードル224を挿入する。ここで、導入ニードル224の周方向Bに関する位置は、先端の突起224dが弁体120側の凹部124のちょうど上方に位置するように調整される。そして、図8の白抜き矢印に示すように、導入ニードル224をさらに下方へと挿入する。このとき、導入ニードル224の外周面が、嵌め込み部材113側の突起113bに当接するが、嵌め込み部材113の弾性により突起113bの周辺を変形させて貫通孔113aの下部を外側へと押し広げつつ、導入ニードル224を下方へと押し込むことができる。
そして、導入ニードル224の下端が弁体120に到達すると、導入ニードル224の先端の突起224dが弁体120側の凹部124に嵌め込まれ、導入ニードル224の先端面が弁体120の上面123に接触する。さらに、付勢部材115の付勢力に抗しつつ導入ニードル224を押し込むと、弁体120が嵌め込み部材113から離隔し、下方へと移動し始める。そして、弁体120を下方へと移動させつつ導入ニードル224を押し込み、導入ニードル224の外周面に形成された凹部224cが突起113bに嵌まるまで導入ニードル224を挿入する。これにより、弁体120が最も下方に移動した図5に示す状態まで、導入ニードル224を挿入することができる。このときの弁体120の位置が、本発明の第2の位置に対応する。
以下、ヘッド100a以外のヘッド100b〜100dに設けられた導入ニードル224及びインク導入部110について説明する。ヘッド100a〜100dの4つのヘッドにおいて、インク導入部110の基本的な構成はいずれも同じであるが、弁体120に形成された凹部124の位置及び導入ニードル224に形成された突起224dの位置のみが異なっている。図9(a)〜図9(d)は、ヘッド100a〜100dのそれぞれに設けられたインク導入部110に挿入される導入ニードル224の底面と弁体120との位置関係を示す図である。
図9(a)に示すように、ヘッド100aに挿入される導入ニードル224では、突起224dの位置が、図中上側のガイド突起224bに対して、0時の方向から周方向Bに関して時計回りに90度回転させた位置になっている。これに対して、図9(b)に示すように、ヘッド100bに挿入される導入ニードル224では、突起224dの位置がちょうど0時の方向に配置されており、ヘッド100aにおける突起224dの位置より、周方向Bに関して反時計回りに90度移動している。
また、図9(c)に示すように、ヘッド100cに挿入される導入ニードル224では、突起224dの位置がヘッド100aにおける突起224dの位置より、周方向Bに関して反時計回りに180度移動している。さらに、図9(d)に示すように、ヘッド100dに挿入される導入ニードル224では、突起224dの位置がヘッド100bにおける突起224dの位置より、周方向Bに関して反時計回りに180度移動している。ヘッド100b〜100dのそれぞれにおいて、弁体120側の凹部124の位置も、導入ニードル224側の突起224dに合わせた位置となっている。
このような構成により、本実施形態では、ヘッド100a〜100dに使用する導入ニードル224を区別している。例えば、ヘッド100aのインク導入部110に、ヘッド100bに使用するべき導入ニードル224を挿入しようとすると、突起224dと凹部124とが、周方向Bに関して90度ずれている。このため、インク導入部110内に導入ニードル224を押し込んでも、突起224dが凹部124に嵌まらず、弁体120の上面123に当接する。したがって、弁体120を最も奥まで押し込んでも、突起224dの高さの分だけ導入ニードル224が上方に浮いてしまい、導入ニードル224の外周面に形成された凹部224cと嵌め込み部材113に形成された突起113bとがうまく嵌まり合わない。
そこで、本実施形態には、図2に示すように、導入ニードル224がインク導入部110に完全に挿入されたかどうかを検出可能な挿入センサ40(検出手段)が設けられている。挿入センサ40は、例えば光学センサなどから構成されており、導入ニードル224がインク導入部110に対して所定の位置まで完全に挿入されたか否かを検出できるようになっている。本実施の形態では、挿入センサ40は、導入ニードル224に形成されたガイド突起224bの上端の位置を検出可能に配置されている。導入ニードル224の先端の突起224dが弁体120の凹部124に嵌まり込まないと、光学センサにおける検出光がガイド突起224bによって遮られたままとなる。
そして、本実施形態の制御系は、挿入センサ40による検出結果に基づき、所定の制御を実行するように構成されている。図10は、本実施形態の制御系を示すブロック図である。制御部80は、挿入センサ40による検出結果に基づき、導入ニードル224が完全に挿入されたと判定すると、ポンプ24及び電磁弁21〜23を制御し、上述のインク供給動作等を実行させる。これにより、インクタンク17a〜17dからヘッド100a〜100dへとインクが供給されたり、ヘッド100a〜100dとサブタンク31との間で循環流が形成されたりする。さらに、各ヘッド100a〜100dを駆動して画像の形成処理を行う。
一方で、制御部80は、挿入センサ40による検出結果に基づき、導入ニードル224が完全に挿入されていない場合には、ポンプ24や電磁弁21〜23を動作させず、インク供給を開始させない。これにより、誤って異なる導入ニードル224をヘッドに挿入してしまった場合に、異なるインクがヘッド内に流入することが防止される。このとき、各ヘッド100a〜100dの駆動も不能となる。
なお、以上のように、導入ニードル224の先端に形成された突起224dと、弁体120の上面123に形成された凹部124とは、導入ニードル224と弁体120との周方向Bに関する位置を規定する手段であることから、本発明の位置規定手段に対応する構成の一つである。
以上説明したように、本実施形態では、図6に示すように、導入ニードル224側の通過口224aと弁体120側の貫通孔121とが、L−L中心軸周りの周方向Bに関して重なる位置関係を有している。一方、通過口224aと貫通孔121とが周方向Bに関して重ならず、例えば、通過口224aが周方向Bに関してちょうどガイド溝122の位置に配置されている場合には、通過口224aから流れ出たインクは、下方に向かいつつ周方向Bに沿ってガイド溝122を回り込まないと貫通孔121まで到達しない。したがって、インク流の圧力損失が大きくなる。
これに対して、本実施形態のように、通過口224aと貫通孔121とが周方向Bに関して重なる位置関係を有している場合には、通過口224aから流れ出たインクがそのまま下方の貫通孔121に流れ込むため、周方向Bに沿って回り込んだりせず、圧力損失が発生するのを適切に回避できる。
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
例えば、上述の実施形態では、突起224d及び凹部124の位置をヘッドごとに異ならせることにより、誤って異なるヘッドに導入ニードル224を挿入するのを抑制している。しかし、突起224d及び凹部124の位置を変えるのではなく、ガイド突起224bの位置を変えてもよい。例えば、図11(a)は、ヘッド100aに挿入される導入ニードル224を示している。これに対して、ヘッド100bでは、図11(b)に示すように、ガイド突起224bをヘッド100aにおける位置から周方向Bに関して90度回転させた位置に配置してもよい。この場合、インク導入部110側のガイド孔111aも、ガイド突起224bに合わせて配置される。これにより、誤ってヘッド100bに用いる導入ニードル224をヘッド100aに挿入しようとしても、ガイド突起224bとガイド孔111aを合わせると突起224d及び凹部124同士が合わなくなるため、うまく挿入できない。このように、ガイド突起224b及びガイド孔111aに対する突起224d及び凹部124の相対位置を変えることにより、ヘッドごとの区別を確保することができる。
また、上述の実施形態では、円筒形の概略形状を有する弁体120を用いているが、そのほかの形状を有する弁体を採用してもよい。例えば、図12に示すように、平面形状が多角形である弁体320を採用してもよい。もちろん、弁体320を収容するニードル進入孔も、弁体320の形状に合わせた多角形の平面形状を有する構成とする。これによると、ガイド溝やガイド突起を形成しなくても、弁体320の周方向Bに関する移動を規制しつつ、弁体320を鉛直方向に移動させることができる。この場合、弁体320の側面と弁体320を収容したニードル進入孔の内表面とが、本発明の第1の案内手段における規制面に相当する。なお、弁体320には、ニードル進入孔の内表面との隙間を構成する連通孔320aが形成されている。各連通孔320aは、周方向Bに関して、導入ニードル224側の通過口224aと重なる位置関係を有している。
また、上述の実施形態は、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な対象はこのようなインクジェットヘッドに限られない。例えば、導電ペーストを吐出して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に吐出して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に吐出して光導波路等の微小電子デバイスを形成するための、液滴吐出ヘッドに適用することができる。