以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における通信装置を有した多機能周辺装置(以下、「MFP(Multi Function Peripheral)」と称する)1と、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」と称する)51と、DCL子機61との電気的構成を示したブロック図である。
MFP1およびPC51は、アクセスポイント(図示しない)を介さずに、直接、無線通信200を行うと共に、その無線通信200を介して互いにデータ通信が可能に構成されている。また、MFP1およびDCL子機61は、無線通信300を介して互いに通話が行えるように構成されている。
本実施形態のMFP1は、2.4GHz帯(2.4GHz〜2.5GHz)に設けられている89のDCLチャンネル(dch1〜dch89)のうち、電波干渉が少ない45のDCLチャンネルを選択してDCL子機61との間で無線通信300を行い、そして、同じ2.4GHz帯に設けられている14の無線LANチャンネル(wch1〜wch14)のうち、選択された45のDCLチャンネルに対して電波干渉の影響が最も少ない一の無線LANチャンネルを選択してPC51との間で無線通信200を行うものである。
次に、MFP1の電気的構成について説明する。MFP1は、CPU11、ROM12、RAM13、操作ボタン15、LCD16、無線LAN通信制御回路17、デジタルコードレス通信制御回路(以下、「DCL(Digital Cordless)通信制御回路」と称する)19、スキャナ21、プリンタ22、送受話器23、音声処理回路24、NCU25を主に有している。
CPU11、ROM12、及びRAM13は、バスライン28を介して互いに接続されている。また、送受話器23とNCU25とは、音声処理回路24に接続されている。更に、操作ボタン15、LCD16、無線LAN通信制御回路17、DCL通信制御回路19、スキャナ21、プリンタ22、音声処理回路24、NCU25、及びバスライン28は、入出力ポート29を介して互いに接続されている。
CPU11は、ROM12やRAM13に記憶される固定値やプログラム或いは、無線LAN通信制御回路17、DCL通信制御回路19、またはNCU25を介して送受信される各種信号に従って、MFP1が有している各機能の制御や、入出力ポート29と接続された各部を制御する演算装置である。
ROM12は、MFP1で実行される制御プログラムなどを格納した書換可能な不揮発性のメモリである。図3のフローチャートに示す通信チャンネル選定処理、図4のフローチャートに示すDCLチャンネル選定処理、および図6のフローチャートに示す無線LANチャンネル選定処理を実行する各プログラムは、このROM12に格納されている。
また、ROM12には、チャンネル対応テーブルメモリ12aが設けられている。このチャンネル対応テーブルメモリ12aは、無線LANチャンネル(wch1〜wch14)と周波数帯域が重複するDCLチャンネル(dch1〜dch89)を示すチャンネル対応テーブルが格納されるメモリである。
ここで、図2を参照してチャンネル対応テーブルについて説明する。図2は、チャンネル対応テーブルの内容を模式的に示した模式図である。チャンネル対応テーブルは、無線LANチャンネルと、DCLチャンネルとにより構成されており、一の無線LANチャンネル毎に、その一の無線LANチャンネルと周波数帯域が重複する全てのDCLチャンネルが関連づけられている。
例えば、無線LANチャンネル「wch1」で使用される周波数帯域は、DCLチャンネル「dch4〜dch25」で使用される周波数帯域と重複しているため、チャンネル対応テーブルにおいて、無線LANチャンネル「wch1」と、DCLチャンネル「dch4〜dch25」とが関連づけられている。
以下同様に、無線LANチャンネル「wch2」と、DCLチャンネル「dch9〜dch30」とが関連づけられ、無線LANチャンネル「wch3」と、DCLチャンネル「dch15〜dch36」とが関連づけられている。他の無線LANチャンネル(wch4〜wch14)についても同様に、各無線LANチャンネルに対して、その無線LANチャンネルと周波数帯域が重複する全てのDCLチャンネルが関連づけられているので、その説明を省略する。
ここで図1に戻り、説明を続ける。RAM13は、書き替え可能な揮発性のメモリであり、MFP1の各操作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリである。このRAM13には、DCLチャンネルメモリ13aと、無線LANチャンネルメモリ13bと、受信電界強度メモリ13cと、無線LANチャンネル選定テーブルメモリ13dとが設けられている。
DCLチャンネルメモリ13aは、DCL通信制御回路19が、DCL子機61のDCL通信制御回路61aとの間の無線通信300に使用する45のDCLチャンネルが記憶されるメモリである。このDCLチャンネルメモリ13aに記憶される45のDCLチャンネルは、後述するDCLチャンネル選定処理(図4参照)によって決定される。また、決定された各DCLチャンネルは、DCL子機61に対して通知される。
詳細については後述するが、DCL通信制御回路19は、ホッピング周期(例えば、1/100秒)毎に、DCLチャンネルメモリ13aに記憶される45のDCLチャンネルの中から、一のDCLチャンネルを選択してDCL子機61との間の無線通信300を行う。
無線LANチャンネルメモリ13bは、無線LAN通信制御回路17がPC51の無線LAN通信制御回路51aとの間の無線通信200に使用する一の無線LANチャンネルが記憶されるメモリである。この無線LANチャンネルメモリ13bに記憶される一の無線LANチャンネルは、後述する無線LANチャンネル選定処理(図6参照)によって決定される。また、決定された無線LANチャンネルは、PC51に対して通知される。
受信電界強度メモリ13cは、DCLチャンネル(dch1〜dch89)に対応する帯域の受信電界強度が、各DCLチャンネル毎に記憶されるメモリである。各DCLチャンネル(dch1〜dch89)の受信電界強度は、後述するDCL通信制御回路19の受信電界強度測定回路19aによって測定され、その測定結果がこの受信電界強度メモリ13cに記憶される(図5(a)参照)。
受信電界強度とは、測定対象となる帯域(ここでは、一のDCLチャンネルに対応する帯域)において受信された電波の強度のことを示し、「0」から「10」までの値で示される。そして、受信電界強度が「0」に近いほど、受信した電波の強度が弱いことを示し、受信電界強度が「10」に近いほど、受信した電波の強度が強いことを示す。
例えば、測定した一のDCLチャンネルの受信電界強度が「0」であった場合は、測定したDCLチャンネルに対応する帯域において、電波を受信しなかったことを示す。つまり、測定したDCLチャンネルは、MFP1周辺における無線通信で使用されていないことを示す。
一方、測定した一のDCLチャンネルの受信電界強度が「10」であった場合は、測定したDCLチャンネルに対応する帯域において、非常に強い電波を受信したことを示す。具体的には、測定したDCLチャンネルが、MFP1周辺における無線通信で使用されており、そのDCLチャンネルをDCL子機61との間の無線通信300に使用すると、電波干渉が生じて通話が行えない状態を示す。なお、その他の受信電界強度(「1」〜「9」)については、受信電界強度「0」と「10」との間を等分に区切るものである。
無線LANチャンネル選定テーブルメモリ13dは、無線LANチャンネル選定テーブルが記憶されるメモリである。無線LANチャンネル選定テーブルは、各無線LANチャンネル(wch1〜wch14)の中で、DCL子機61との間の無線通信300に使用される45のDCLチャンネルに対して、電波干渉が最も少ない無線LANチャンネルを選定するためのテーブルである(図7(a),(b)参照)。
無線LANチャンネル選定テーブルは、無線LANチャンネルと、重複値とにより構成されており、一の無線LANチャンネル毎に、その一の無線LANチャンネルに対応する重複値が関連づけられている。なお、この重複値が小さい無線LANチャンネルほど、DCL子機61との間の無線通信300に使用される45のDCLチャンネルに対して、電波干渉が少ないことを示す。つまり、この無線LANチャンネル選定テーブルにおいて、最も重複値の小さい無線LANチャンネル(wch1〜wch14)が、無線LANチャンネルメモリ13bに記憶されることになる。
操作ボタン15には、無線LANによる無線通信機能、DCLによる無線通信機能、およびプリント機能などの各機能の設定を行うためのボタンや、各種動作の指示を行うための入力ボタンや、電話番号を入力するための数字ボタンなどが設けられている。LCD16は、操作ボタン15の操作に応じてメニューや動作状態などを表示するための表示デバイスである。ユーザは操作ボタン15を操作することにより、その操作に対応する情報がLCD16に表示される。
無線LAN通信制御回路17は、無線LAN用アンテナ18を有しており、PC51の無線LAN通信制御回路51aとの間で、直接拡散方式(特許請求の範囲に記載のスペクトラム拡散方式の一例)による無線通信200を行いながら、各種のデータを構成するデジタル信号を送受信する既知の回路であり、CPU11からの指示に応じて、無線通信200を一時的に停止する機能を有している。
この無線LAN通信制御回路17は、アクセスポイント(図示しない)を介さずに、直接、PC51の無線LAN通信制御回路51aとの間で無線通信200が可能なアドホックモードで動作しており、無線LANチャンネルメモリ13bに記憶されている一の無線LANチャンネルを使用して、直接、PC51と無線通信200を行う。なお、この無線通信200に使用される一の無線LANチャンネルが示す帯域の中で、中心周波数に近い周波数ほど、無線通信200に使用される頻度が高い。
また、無線LANチャンネルメモリ13bに記憶される一の無線LANチャンネル(wch1〜wch14の一つ)が変更された場合は、変更された無線LANチャンネルをPC51へ通知し、通知後は、変更された無線LANチャンネルが使用して、PC51との間で無線通信200を行う。
DCL通信制御回路19は、DCL用アンテナ20を有しており、DCL子機61のDCL通信制御回路61aとの間で無線通信300を行いながら、通話の音声を構成するデジタル信号(音声データ)を送受信する回路であり、CPU11からの指示に応じて、無線通信300を一時的に停止する機能を有している。
このDCL通信制御回路19と、DCL子機61のDCL通信制御回路61aとの間では、ホッピング周期(例えば、1/100秒)毎に、無線通信300に使用するDCLチャンネルを変更する周波数ホッピング方式により無線通信300が行われる。
また、DCL通信制御回路19には、受信電界強度測定回路19aが設けられている。受信電界強度測定回路19aは、測定対象となる帯域(指定した帯域)の受信電界強度を測定する既知の回路である。この受信電界強度測定回路19aによって、各DCLチャンネル(dch1〜dch89)に対応する帯域の受信電界強度が、各DCLチャンネル毎に測定されると、その測定結果が、受信電界強度メモリ13cに記憶される。
スキャナ21は、所定の読取位置(非図示)にセットされた原稿から画像の読み取りを行うと共に、その画像をLCD16に表示したりプリンタ22で印刷可能な画像データを生成するものである。このスキャナ21により読み取られた画像データは、RAM13における所定の記憶領域に記憶される。
プリンタ22は、所定の給紙位置(非図示)にセットされた記録用紙に画像を印刷するインクジェット方式のプリンタで構成されている。プリンタ22は、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを使用する印刷ヘッド、紙送り装置、回復装置を備えカラー印刷を行う。印刷ヘッドには複数個のノズル(インク吐出口)が設けられており、ノズルからインク吐出を行いながら、紙送り装置で記録用紙を送り画像を記録用紙に印刷する。
送受話器23は、通話を行うための装置であり、マイクロフォンとスピーカとを有している。音声処理回路24は、アナログ音声信号をデジタル信号へ、デジタル信号をアナログ音声信号へ変換する回路であり、DCL子機61から送信されDCL通信制御回路19により受信されるデジタル信号をアナログ音声信号に変換して、送受話器23やNCU25へ出力する。
また、送受話器23に音声が入力された時に出力されるアナログ音声信号、及び、外部装置(図示しない)から電話回線網100を介してNCU25によって受信されるアナログ音声信号をデジタル信号(音声データ)に変換して、DCL通信制御回路19へ出力する。なお、DCL通信制御回路19に入力されたデジタル信号(音声データ)は、無線通信300を介してDCL子機61へ送信される。
NCU25は、電話回線網100と接続されており、電話回線網100へのダイヤル信号の送出や、電話回線網100からの呼出信号の応答などを行って、外部装置(図示しない)との通話を制御するものである。
次に、PC51の電気的構成について説明する。PC51は、MFP1との間で行われる無線通信200を介して、MFP1が有する各種機能を利用するための装置であり、主に、無線LAN通信制御回路51aを有している。
無線LAN通信制御回路51aは、無線LAN用アンテナ51bを有しており、MFP1の無線LAN通信制御回路17との間で、直接拡散方式による無線通信200を行いながら、各種のデータを構成するデジタル信号を送受信する既知の回路である。
この無線LAN通信制御回路51aは、アクセスポイント(図示しない)を介さずに、直接、MFP1の無線LAN通信制御回路17との間で無線通信200が可能なアドホックモードで動作しており、MFP1の無線通信制御回路17から通知される無線LANチャンネルを使用して、MFP1との間で無線通信200を行う。
次に、DCL子機61の電気的構成について説明する。DCL子機61は、MFP1との間で行われる無線通信300を介して、MFP1や電話回線網100を介して接続される外部装置(図示しない)との間で通話を行うための装置である。DCL子機61は、主に、DCL通信制御回路61aを有している。
DCL通信制御回路61aは、DCL用アンテナ61bを有しており、親機であるMFP1のDCL通信制御回路19との間で無線通信300を行いながら、通話の音声を構成するデジタル信号を送受信する既知の回路である。DCL通信制御回路61aは、MFP1のDCL通信制御回路19から通知される45のDCLチャンネルを使用して、周波数ホッピング方式によりMFP1との間で無線通信300を行う。
次に、図3を参照して、MFP1のCPU11により実行される通信チャンネル選定処理について説明する。図3は、MFP1の通信チャンネル選定処理を示すフローチャートである。
この通信チャンネル選定処理は、DCL通信制御回路19とDCL子機61との間の無線通信300に使用する45のDCLチャンネルを選定すると共に、その45のDCLチャンネルに対して電波干渉が最も少ない無線LANチャンネル(wch1〜wch14の一つ)を選定するための処理である。この通信チャンネル選定処理は、MFP1とDCL子機61との間、または、電話回線網100に接続される外部装置(図示しない)とDCL子機61との間で、通話が開始される場合に実行される処理である。
この通信チャンネル選定処理では、まず、DCL通信制御回路19および無線LAN通信制御回路17による無線通信200,300をそれぞれ停止させ(S1)、RAM13の各メモリ13a〜13dを初期化し(S2)、DCLチャンネル選定処理を実行する(S3)。
詳細については後述するが、DCLチャンネル選定処理(S3)は、DCL通信制御回路19とDCL子機61との間の無線通信300に使用する45のDCLチャンネルを選定するための処理である。DCLチャンネル選定処理(S3)が実行されると、89のDCLチャンネルの中で、受信電波強度の弱い45のDCLチャンネルが選定され、その選定された各DCLチャンネルが、RAM13のDCLチャンネルメモリ13aに記憶される。
次に、DCL通信制御回路19の動作を開始させて、DCLチャンネルメモリ13aに記憶されている全て(45個)のDCLチャンネルを、DCL子機61へ通知し(S4)、DCL子機61との間で、周波数ホッピング方式による無線通信300を開始する(S5)。
次に、無線LANチャンネル選定処理を実行する(S6)。詳細については後述するが、無線LANチャンネル選定処理(S6)は、PC51との間の無線通信200に使用する一の無線LANチャンネルを選定するための処理である。無線LANチャンネル選定処理(S6)が実行されると、MFP1とDCL子機61との間の無線通信300に使用される45のDCLチャンネルに対して、最も電波干渉が少ない一の無線LANチャンネルが選定され、その選定された無線LANチャンネルが、RAM13の無線LANチャンネルメモリ13bに記憶される。
次に、無線LAN通信制御回路17の動作を開始させて、無線LANチャンネルメモリ13bに記憶されている一の無線LANチャンネルを、PC51へ通知し(S7)、PC51との間で無線通信200を開始する(S8)。
以上の図3のフローチャートの通信チャンネル選定処理により、S3の処理のDCLチャンネル選定処理によって選定された45のDCLチャンネルを使用して、MFP1とDCL子機61との間で、無線通信300を行うことができる。また、S6の処理の無線LANチャンネル選定処理によって選定された一の無線LANチャンネルを使用して、MFP1とPC51との間で、無線通信200を行うことができる。
また、S1の処理により、MFP1が行う無線通信200,300をそれぞれ停止させてから、DCLチャンネル選定処理(S3)を実行するので、DCLチャンネル選定処理(図4参照)において、各DCLチャンネルの受信電界強度の測定が行われる場合に、外部通信装置(図示しない)からの電波出力により生じた受信電界強度を測定しているのか、MFP1からの電波出力により生じた受信電界強度を測定しているのかを区別することができる。つまり、MFP1が行う無線通信200,300をそれぞれ停止することで、外部通信装置からの電波出力によってMFP1周辺に生じている電界強度を測定することができるので、受信電界強度を精度良く測定することができる。
次に、図4および図5を参照して、MFP1のCPU11により実行されるDCLチャンネル選定処理(S3)について説明する。図4は、MFP1のDCLチャンネル選定処理(S3)を示すフローチャートである。図5(a)は、受信電界強度メモリ13cの内容の一例を模式的に示した模式図であり、図5(b)は、DCLチャンネルメモリ13aの内容の一例を模式的に示した模式図である。
このDCLチャンネル選定処理(S3)は、DCL通信制御回路19とDCL子機61との間の無線通信300に使用する45のDCLチャンネルを選定するための処理であり、89のDCLチャンネルの中で、受信電波強度の弱い45のDCLチャンネルを選定する処理である。
このDCLチャンネル選定処理(S3)では、まず、DCL通信制御回路19の受信電界強度測定回路19aによって、各DCLチャンネル(dch1〜dch89)の受信電界強度を、全てのDCLチャンネルについて測定し(S11)、その測定結果を、RAM13の受信電界強度メモリ13cに記憶する(S12)。
例えば、図5(a)に示すように、受信電界強度メモリ13cには、DCLチャンネル「dch1」および「dch2」の受信電界強度が「7」と記憶され、DCLチャンネル「dch3」の受信電界強度が「5」と記憶され、DCLチャンネル「dch50」および「dch60」の受信電界強度が「1」と記憶される。また、その他のDCLチャンネルについても同様に、測定された受信電界強度がそれぞれ記憶される。
次に、受信電界強度メモリ13cに記憶されている受信電界強度のうち、受信電界強度が弱い順(値が小さい順)に、45個のDCLチャンネルを抽出して、RAM13のDCLチャンネルメモリ13aに記憶する(S13)。
例えば、受信電界強度メモリ13cの内容が、図5(a)に示す状態であれば、受信電界強度「1」が最も弱い受信電界強度であるので、まず、DCLチャンネル「dch50」および「dch60」が、図5(b)に示すように、DCLチャンネルメモリ13aに記憶される。そして、以下同様に、45個のDCLチャンネルの抽出が終了するまで、受信電界強度の弱い順に各DCLチャンネル(dch1〜dch89)が、DCLチャンネルメモリ13aに記憶される。
以上の図4のフローチャートのDCL通信チャンネル選定処理により、89のDCLチャンネルの中から、受信電界強度が弱い順に45のDCLチャンネルを、MFP1がDCL子機61との間の無線通信300に使用するDCLチャンネルとして設定することができる。
DCLチャンネルの受信電界強度が弱いほど、そのDCLチャンネルがMFP1周辺において使用されていない可能性が高い、または、使用されていても電波干渉を受けにくいので、受信電界強度が弱い順に45のDCLチャンネルを、MFP1とDCL子機61との間の無線通信300に使用することで、外部通信装置(図示しない)の無線通信によって電波干渉を受ける可能性を極力低下させることができる。
よって、MFP1とDCL子機61との間、または、電話回線網100に接続される外部装置(図示しない)とDCL子機61との間で通話が行われる場合に、通話品質が低下する可能性を極力低下させることができる。
次に、図6および図7を参照して、MFP1のCPU11により実行される無線LANチャンネル選定処理について説明する。図6は、MFP1の無線LANチャンネル選定処理を示すフローチャートである。図7(a),(b)は、無線LANチャンネル選択テーブルの内容の一例を模式的に示した模式図である。
この無線LANチャンネル選定処理(S6)は、無線LAN通信制御回路17が、PC51との間の無線通信200に使用する一の無線LANチャンネルを選定するための処理であり、DCL通信制御回路19とDCL子機61との間の無線通信300に使用される45のDCLチャンネルに対して、最も電波干渉が少ない一の無線LANチャンネルを選定する処理である。
この無線LANチャンネル選定処理(S6)では、まず、RAM13のDCLチャンネルメモリ13aに記憶されている45のDCLチャンネルの中から、DCLチャンネルを一つ読み取る(S21)。例えば、DCLチャンネルメモリ13aの内容が、図5(b)に示す状態であれば、まず、先頭に位置しているDCLチャンネル「dch50」が読み取られる。
次に、チャンネル対応テーブルメモリ12aのチャンネル対応テーブルを参照して、読み取ったDCLチャンネルに対応する(帯域が重複している)無線LANチャンネルを全て抽出する(S22)。
例えば、先ほど読み取られたDCLチャンネル「dch50」は、図2のチャンネル対応テーブルにより示される通り、無線LANチャンネル「wch6」、「wch7」、「wch8」、「wch9」と帯域が重複しているので、ここでは、4つのDCLチャンネル(wch6〜wch9)が抽出されることになる。
そして、RAM13の無線LANチャンネル選定テーブルメモリ13dに記憶される無線LAN選定テーブルにおいて、S22の処理で抽出した各無線LANチャンネルに対応する重複値にそれぞれ「1」を加算する(S23)。
例えば、ここでは、図7(a)に示すように、無線LANチャンネル選択テーブルにおいて、4つのDCLチャンネル(wch6〜wch9)に対応する重複値に、それぞれ「1」が加算される。
次に、RAM13のDCLチャンネルメモリ13aに記憶されている全て(45個)のDCLチャンネルを読み取ったかを判定し(S24)、まだ全てのDCLチャンネルを読み取っていない場合は(S24:No)、S21の処理に戻り、上述したS21〜S24の各処理を繰り返す。
つまり、図5(b)に示すDCLチャンネルメモリ13aの中の全てのDCLチャンネルを読み取るまで、一つずつDCLチャンネルを読み出し、そのDCLチャンネルと帯域が重複する各無線LANチャンネルを抽出し、無線LANチャンネル選択テーブルにおいて、抽出した各無線LANチャンネルに対応する重複値に「1」を加算する。この処理を繰り返すことで、図7(b)に示す無線LANチャンネル選択テーブルが生成される。
一方、全てのDCLチャンネルを読み取った場合は(S24:Yes)、無線LANチャンネル選定テーブルメモリ13dの無線LAN選定テーブルにおいて、重複値が最小値である無線LANチャンネルが複数あるかを判定する(S25)。
S25の処理において、重複値が最小値である無線LANチャンネルが一つだけの場合は(S25:No)、その重複値が最小値である一つの無線LANチャンネルの値を、RAM13の無線LANチャンネルメモリ13bに記憶して(S26)、この無線LANチャンネル選定処理を終了する。
例えば、無線LANチャンネル選択テーブルの内容が、図7(b)に示す状態であれば、重複値が「0」である無線LANチャンネル「wch12」が、無線LANチャンネルメモリ13bに記憶される。
S25の処理において、重複値が最小値である無線LANチャンネルが複数ある場合は(S25:Yes)、重複値が最小値である複数の無線LANチャンネルの中で、各無線LANチャンネルの中心周波数が含まれているDCLチャンネルの受信電界強度が最も弱い無線LANチャンネル値を、RAM13の無線LANチャンネルメモリ13bに記憶して(S27)、この無線LANチャンネル選定処理を終了する。
ここで、重複値が最小である無線LANチャンネルが2つ(「wch1」と「wch8」)ある場合について説明する。無線LANチャンネル「wch1」の中心周波数は「2412MHz」と定められており、その中心周波数は、DCLチャンネル「dch14」の中に含まれている。また、無線LANチャンネル「wch8」の中心周波数は「2447MHz」と定められており、その中心周波数は、DCLチャンネル「dch52」の中に含まれている。
従って、DCLチャンネル「dch14」および「dch52」の受信電波強度が比較され、その結果、受信電波強度が最も弱いDCLチャンネルに対応する無線LANチャンネルが無線LANチャンネルメモリ13bに記憶されることになる。
なお、各無線LANチャンネル(wch1〜wch14)の中心周波数を含むDCLチャンネルについては、2.4GHz帯において定義されている各無線LANチャンネル(wch1〜wch14)および各DCLチャンネル(dch1〜dch89)に基づいて、一意的に決まっているものであるので、その説明を省略する。
以上の図6のフローチャートの通信チャンネル選定処理により、14の無線LANチャンネルの中から、重複値が最小値である一の無線LANチャンネルを、MFP1がPC51との間の無線通信200に使用する無線LANチャンネルとして設定することができる。
すなわち、MFP1とDCL子機61との間の無線通信300で使用される例えば45のDCLチャンネルと、周波数帯域の重複が最も少ない一の無線LANチャンネルが、無線200に使用されることになるので、無線通信200および無線通信300が同時に行われた場合でも、無線通信300が、無線通信200から受ける電波干渉を極力少なくすることができる。
特に、無線通信200により使用される周波数帯域と、無線通信300により使用される周波数帯域とが重複していない場合は、無線通信300が、無線通信200から受ける電波干渉を最も少なくすることができるので、MFP1とDCL子機61との間、または、電話回線網100に接続される外部装置(図示しない)とDCL子機61との間で通話が行われる場合に、通話品質が低下する可能性を最も低下させることができる。
また、重複値が最小値である無線LANチャンネルが複数ある場合には、その複数の無線LANチャンネルの中で、各無線LANチャンネルの中心周波数が含まれているDCLチャンネルの受信電界強度が最も弱い無線LANチャンネルが、無線通信200で使用される無線LANチャンネルに設定される。上述したように、無線通信200で使用される一の無線LANチャンネルが示す帯域の中で、中心周波数に近い周波数ほど、無線通信200において使用される頻度が高いので、中心周波数を含むDCLチャンネルの受信電界強度が弱い無線LANチャンネルを、無線通信200で使用することにより、無線通信200が、外部通信装置(図示しない)による無線通信から受ける電波干渉を抑制することができる。
また、上述したように、加算および比較を繰り返すという簡単な処理(S21〜S24)で、各無線LANチャンネル(wch1〜wch14)の重複値を算出しているので、無線通信200に使用する一の無線LANチャンネルを迅速に設定することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
例えば、本実施形態のMFP1は、無線LAN通信制御回路17と、DCL通信制御回路19とを備えた構成であるが、無線LAN通信制御回路17の代わりに、DCL通信制御回路19と同じ周波数帯域を使用して無線通信を行うその他の通信制御回路(例えば、Bluetooth(登録商標)通信制御回路)であっても良い。もちろん、無線LAN通信制御回路17と、その他の通信制御回路と、DCL通信制御回路19とを備えた構成であっても良い。そして、このような場合でも、その他の通信制御回路が無線通信に使用するチャンネルを、無線通信200において使用される45のDCLチャンネルとの重複を避けるように選択することができるので、無線通信200が、その他の通信制御回路による無線通信から受ける電波干渉を抑制することができる。
また、本実施形態は、2.4GHz帯の一部または全部を使用した無線通信の電波干渉を抑制または低下させるものであるが、例えば、5GHz帯や、2.5GHz帯など、他の周波数帯域を使用する無線通信においても適用することができる。
また、本実施形態では、直接拡散方式により無線通信200を行う無線LAN通信制御回路17が用いられているが、スペクトラム拡散方式により無線通信を行う他の無線通信制御回路を用いても良い。例えば、スペクトル拡散方式の一例である周波数ホッピング方式や、直接拡散方式および周波数ホッピング方式を組み合わせたハイブリッド方式を用いた無線通信制御回路などが該当する。
また、本実施形態では、受信電界強度を電波干渉(通信状況)の判断基準としているが、MFP1のDCL通信制御回路19にBER(ビットエラーレート)検出回路を設けて、検出されるBER値を電波干渉の判断基準としても良い。例えば、BER値が低いほど電波干渉が弱く、BER値が高いほど電波干渉が強いと判断することができる。また、BER検出回路の検出値と、受信電界強度測定回路19aの検出値とを組み合わせて判断基準とすれば、さらに精度良く通信状況を判定することができる。
また、本実施形態では、MFP1において受信電界強度を測定しているが、DCL子機61にも受信電界強度測定回路を設け、MFP1で測定される受信電界強度と、DCL子機61で測定される受信電界強度とをそれぞれ測定するように構成しても良い。そして、MFP1で測定される受信電界強度と、DCL子機61で測定される受信電界強度との値を平均した受信電界強度に基づいて、例えば45のDCLチャンネルを選択すれば、MFP1およびDCL子機61において受ける電波干渉をそれぞれ抑制することができる。よって、MFP1とDCL子機61との間、または、電話回線網100に接続される外部装置(図示しない)とDCL子機61との間で通話が行われる場合に、通話品質の低下を最も抑制することができる。
また、本実施形態では、受信電界強度を電波干渉(通信状況)の判断基準としているが、MFP1のDCL通信制御回路19と、DCL子機61のDCL通信制御回路61aとの間において、所定時間内に正常に送受信されたパケット数を判断基準としても良い。正常に送受信されたパケット数が多いほど電波干渉が弱く、正常に送受信されたパケット数が少ないほど電波干渉が強いと判断することができる。また、正常に送受信されたパケット数と、受信電界強度測定回路19aの検出値とを組み合わせて判断基準とすれば、さらに精度良く通信状況を判定することができる。
また、本実施形態では、受信電界強度を測定する(図4のS11の処理)前に、無線LAN通信制御回路17およびDCL通信制御回路19による無線通信200,300を停止させているが(図3のS1の処理)、加えて、PC51の無線LAN通信制御回路51aやDCL子機61のDCL通信制御回路61aによる無線通信200,300を停止させるように構成しても良い。そうすることで、外部通信装置(図示しない)からの電波出力により生じた電界強度をさらに精度良く測定することができるので、MFP1周辺の受信電界強度をさらに精度良く測定することができる。