JP4914362B2 - 超電導マグネット並びにそれを用いた電磁撹拌装置、電動機及び発電機 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は超電導マグネット並びにそれを用いた電磁撹拌装置、電動機及び発電機に関する。さらに詳述すると、本発明は、交流電流により磁界を発生させるのに適した超電導マグネット、さらには貫通磁束により回転磁場を発生させる磁場発生装置並びにその回転磁場を利用して非接触で溶融状態にある導電性物質例えば溶融金属を撹拌する電磁撹拌装置、電動機及び発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電磁撹拌装置などの回転磁界を発生させる磁場発生装置に用いられるマグネットとしては、銅やアルミなどの常伝導金属を図24に示すような亀の子状に巻回したものが用いられている。例えば、特許文献1の電磁撹拌装置においては、図28に示すように亀の子状のコイル101が回転磁界を発生させるマグネットとして採用され、溶融金属を収める坩堝102の周囲に60°置きに6個配置され、3相2極で回転磁界を印加するように設けられている。説明を簡単にするため、図25に示すように、3個の亀の子状コイルを180°置きに配置した亀の子状マグネットを想定し、その回転磁界分布図を図26に示す。この回転磁界分布図から解るように、理想的な形状・配置の亀の子状マグネットの場合、溶融金属さらには坩堝の中心を貫通する磁束が形成され、ほぼ均一で乱れのない磁場が形成されるため、回転磁界を得るには理想的な巻線構造と考えられている。また、磁界の時間変化も図27に示すように中心並びにその周辺では安定したものとなっている。このような回転磁界は、坩堝の中の撹拌対象たる溶融金属の中に磁場がかからない部分が発生しないため、圧力が無くなってしまって圧力勾配が部分的にできてしまうことがない。このため、撹拌する溶融金属の逆流が起こることがなく、溶融金属が振動したり、坩堝全体ががたつくなどの問題を生ずる虞が無く、効率の良い撹拌を可能とすることができる。
【0003】
また、酸化物超電導体から成る電線を巻回した空芯コイルによって回転磁界を得ようとする電磁撹拌装置も提案されている(特許文献2)。この電磁撹拌装置では、酸化物超電導導体の空芯コイルを電磁シールドに収めて冷却媒体と共に鋳型の周りに配置されたタンクに収納して、三相電流を供給して回転磁界を発生させて鋳型内の溶鋼を撹拌するようにしている。
【0004】
また、上述の電磁撹拌装置のような電磁発生装置の他、例えば電動機及び発電機などの超電導マグネットを利用した装置においても、強磁場を得るために超電導マグネット、中でも交流超電導マグネットを用いることが望まれている。この交流超電導マグネットにおいては、通電中の交流損失などに起因する発熱によって臨界電流値が低下したり、巻線の温度が臨界温度を越えて上昇して瞬時に常伝導性に転移する、いわゆるクエンチを起こすなどの超電導特性上の障害が起こり易い。また、超電導コイル自体の発生磁場と電流とにより超電導線に作用する大きな電磁力によって、交流通電時には、超電導線が振動してクエンチ電流値を低下させるという問題もある。このため、コイル要素(線材)間の固定が十分でなければならないが、その反面、超電導線材は過大な外力を加えると超電導特性の劣化が発生する虞がある。更には、巻枠として円筒形以外のもの、例えば曲線部と直線部とを併せ持つレーストラック形状の巻枠を用いる場合には、線材を巻枠に押しつける力がほとんど0に近い直線部において超電導線材が大電流密度と強い交番磁界の影響により大きな電磁振動を生じ易く、これに起因する発熱でクエンチに至る虞もある。そこで、従来の交流超電導マグネットは、円筒形の巻枠を用い、コイル巻枠に超電導線を巻回した後にエポキシ樹脂などを含浸させて固定したり、あるいはエポキシ樹脂を予め含浸させた超電導線材を所定の張力をかけて巻回し樹脂で固めるように製作されている(特許文献3,4)。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−220323号
【特許文献2】
特開平1−181954号
【特許文献3】
特開平9−289112号
【特許文献4】
特開平9−102414号
【非特許文献1】
綾田研三:移動磁界の利用技術(西山記念技術講座、pp.105-123, 第129回, 平成元年5月10日、東京、日本鉄鋼協会)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、常伝導金属による亀の子状マグネットを用いた電磁撹拌装置によると、ほぼ均一で乱れのない理想的な磁場が形成されるため、撹拌する溶融金属の逆流を起こさずに効率の良い撹拌を可能とすることができるが、通電による発熱の影響などから、大電流を印加することができず、電磁撹拌に限界がある。
【0007】
他方、超電導線によるマグネットでは、図24のような亀の子形状のコイルを巻線することは、端部(屈曲部)において数mmの曲率半径で曲げる必要があることからストレスに弱い超電導線の巻線に大きなダメージを与える可能性があり、現在の製造技術レベル(線材製造レベル、巻線レベル)では、歪な形をした変形亀の子コイルは可能であっても、理想的な亀の子形状に巻き線することは非常に困難がある。しかも、歪な形状のコイルでは、通電した際に受ける電磁力から電磁力振動が発生し、運転を継続することができない。このため、交流超伝導体を用いてほぼ均一で乱れのない理想的な回転磁場を形成する超電導マグネットあるいはそれを利用した電磁撹拌装置などの磁場発生装置や電動機、発電機などを実現することは困難である。
【0008】
さらに、銅線のような常伝導金属では問題になりにくいが、超電導線の場合は、亀の子形状に巻線できたとしても、線材を巻枠に押しつける力がほとんど0に近い巻線直線部においては大電流密度と強い交番磁界の影響により大きな電磁振動を生じやすい。このことは鞍型コイルのような、曲線部と直線部とを併せ持つ巻枠全般において言えることである。この電磁振動は巻線の温度上昇につながり、最悪の場合にはクエンチに至ってしまう。
【0009】
また、エポキシ樹脂などでコイル要素たる線材の間を固定した場合には、冷却用の液体ヘリウムが超電導線の間を流れずに十分な冷却ができないという問題が生ずる。交流超電導マグネットの場合には、通電中の交流損失などに起因する発熱によって臨界電流値が低下したり、巻線の温度が臨界温度を越えて上昇して瞬時に常伝導性に転移する、いわゆるクエンチを起こすなどの超電導特性上の障害が起こり易い。
【0010】
そこで、製作困難な亀の子形状に代えて、円形ないしレーストラック形状のコイルを回転磁界を与えようとする領域例えば坩堝の周りに配置して回転磁界を得ようとしても、磁界分布にむらが生じ磁束密度の変動も大きいことから、撹拌対象たる溶融金属の中に圧力勾配が局所的に生じて溶融金属の逆流、溶融金属の振動、坩堝全体のがたつきなどの問題を生ずる虞があり、効率の良い撹拌を行うことができない。また、磁界分布のむらを少なくするため、単純にコイル数を増やしていっても中心にまで届く磁束が発生しないために、回転磁界を与えようとする領域内例えば坩堝内において溶融金属を撹拌するようなほぼ均一で乱れのない回転磁界が得られ難い。
[0011]
さらに、発電機の固定子として、超電導線を亀の子状に巻いたコイルを用いる場合にも、組線工程の都合上180°配置とできず、若干いびつな形状となってしまうことから、回転時にアンバランスを生じる問題点がある。
[0012]
本発明は180°配置の亀の子状のマグネットと同等の理想的な回転磁界を発生可能な巻き線構造が形成できる超電導マグネットを提供することを目的とする。また、本発明は、交流超電導線を用いてむら無く均一で乱れのない回転磁界が得られる超電導マグネット並びに電磁撹拌装置、あるいは電動機若しくは発電機を提供することを目的とする。さらに、本発明は、交流通電時にも超電導特性上の障害が起こり難い超電導マグネット、具体的には電磁振動や交流損失などによる発熱によって臨界電流値が低下したり、巻線の温度が臨界温度を越えていわゆるクエンチを起こすことなどがない超電導マグネットを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0013]
かかる目的を達成するため、本発明にかかる請求項1記載の超電導マグネットは、超電導線をレーストラック状に巻線した単コイルを、回転磁界を発生させようとする領域の中心を中心として同心状に内側に3個、その外側に3個ずつ少なくとも2層配置し、内層並びに外層の各コイルは互いに120°ずつずらして内層コイルと外層コイルとが対極に配置され、互いに対向する外層コイルと内層コイルとで形成される磁束の方向が同一方向でかつ前記回転磁界の中心において同じ磁束密度となる磁束を三相交流の通電により発生させるようにしている。
[0014]
また、本発明の超電導マグネットにおいて、外層コイルは内層コイルの巻線よりも距離に按分して多く巻かれ磁界中心において発生する磁束密度を同じにしたものであることが好ましい。
[0015]
また、本発明の超電導マグネットにおいて、外層コイルと内層コイルの中心角は同じであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の超電導マグネットにおいて、外層のコイルは内層のコイルよりも縦方向を大きくして、内層のコイルの横方向の両端部が外層のコイルの中に入り込むことができるようにすることで、外層と内層のコイルを接近させることが好ましい。
【0017】
また、本発明の超電導マグネットにおいて、単コイルは樹脂などで固められたものでも良いが、巻枠に固定されているものであることが好ましい。
【0018】
ここで、巻枠は、コイル胴体の上下端に、コイル固定用のねじ穴が穿孔されている固定部が備えられ、該ねじ穴を利用して吊下げ用アングルをねじ止めして、上下方向に吊り下げ固定されるものであることが好ましい。
【0019】
さらに、巻枠において、コイル胴体の上下端には、コイル固定用のねじ穴が穿孔されている固定部が備えられ、該ねじ穴を利用して吊下げ用アングルをねじ止めして、上下方向に吊り下げ固定されるものであることが好ましい。
【0020】
また、巻枠において、外層コイルの両フランジ部には、さらにストレート部を固定するためのストレート部固定用ねじ穴を設け、巻線の上から板を当て、その板を巻枠にねじ込み強く押し当てることにより巻線の固定を強化しているものであることが好ましい。
【0021】
さらには、巻枠は、内層コイル並びに外層コイルのそれぞれのフランジの少なくとも一方には、ヘリウムガスを巻枠の外に抜くためのガス抜き穴が設けられ、前記スペーサで区切られた各段の超電導線の間からヘリウムガスを抜き出して、ヘリウム液が循環して超電導線が冷却されるように設けられているものであることが好ましい。
【0022】
また、本発明にかかる磁場発生装置は、上述の超電導マグネットを用いるようにしている。
【0023】
また、本発明にかかる磁場発生装置は電磁撹拌装置であり、溶融状態の導電性物質を収容する容器と、容器の周りに配置される上述の超電導マグネットを配置し、容器内に容れられた溶融状態の導電性物質に対して容器の周方向に移動する回転磁力線を発生させるようにしている。尚、撹拌対象となる溶融状態の導電性物質としては、金属の他、導電性プラスチックや導電性セラミックなどでも撹拌可能であるが、溶融金属であることが好ましい。
【0024】
また、本発明にかかる電動機は、上述の電磁場発生装置をステータコイルあるいは電機子コイルとして用いるものである。
【0025】
さらに、本発明にかかる発電機は、上述の超電導マグネットを用いて発電するものである。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の本発明の超電導マグネットによれば、レーストラック形状あるいは円形状の超電導線によって、対極である内層と外層のコイル間で同じ方向の磁束が発生しながらこれが周方向に移動するため、回転磁界を発生させようとする領域の中心を貫通し、かつほぼ均一で乱れのない強力な回転磁場が形成される。即ち、180°配置の理想的な形の亀の子状マグネットと同じ磁界分布の回転磁界が得られる。そして、このような回転磁界は、回転磁界を発生させようとする領域の内側特に中心付近において回転時にアンバランスを生じることがなくかつ磁場がかからない部分を発生させないため、均一でむらのない回転磁場が要求される磁場発生装置、特に電磁撹拌装置並びに電動機、発電機などのさまざまな装置において有用である。しかも、亀の子状に巻線する場合とは異なり屈曲する部分が存在しないので、超電導線を用いても巻線時に大きなダメージを受けることがないので、超電導特性の劣化が発生する虞が少なく、超電導特性上の障害が起こり難い。
【0027】
さらに、請求項2記載の超電導マグネットによれば、内層コイルと外層コイルとにそれぞれ同じ大きさの電流を流す場合にも磁界中心において発生する磁束密度を同じにすることができるので、内層コイルと外層コイルとを1つの商用電源で駆動でき、別々の電源を必要とする場合に比べて設備費を大幅に削減できる。しかも、磁界分布にむらがなく均一となるため、乱れのない回転磁界が得られる。
【0028】
さらに、請求項3記載の超電導マグネットによれば、磁界の回転に伴う変動がなくなる。
【0029】
さらには、請求項4記載の超電導マグネットによれば、内層の両側端部を外層コイルの内側に部分的に侵入させることにより、内層コイルと外層コイルとの距離を接近させて配置できるので、漏れ磁束が減って効率が良くなると共に磁場の不要な乱れが減らせる。また、内層コイルでの交流損失を無駄に増やさずに済むので、外層コイルのアンペアターンを下げられる。
【0030】
さらには、請求項5記載の超電導マグネットによれば、巻枠に超電導線が固定されることにより、電磁振動が抑制されるため、巻線の温度上昇に起因するクエンチを防ぐことができる。また、巻枠に固定されているので、電磁振動の抑制さらには電磁振動の抑制と超電導線の冷却の両立を可能としている。このため、超電導マグネットの特性の劣化が少なく、安定して駆動できる。したがって、従来の常伝導金属の亀の子状のマグネットを用いたときのほぼ均一で乱れのない理想的な磁場を、より格段に強力なものとして得ることができる。しかも、超電導マグネットの場合、大型化したほうが効率、構成上の容易さなどが向上するため、装置の実用化、大型化には非常に容易に対応できる。
【0031】
さらに、請求項6記載の超電導マグネットによれば、巻枠にスペーサを入れながら、巻線間に液体ヘリウムの流れる空間を確保して巻線することができるので、スペーサの厚み分だけコイル要素たる線材間に隙間が形成された状態で一定張力下に巻線され、密巻となることがない。しかも、スペーサを介して対向配置された巻線間に液体ヘリウムの流れる空間を確保して巻線することができるので、周方向に配置されたスペーサとスペーサとの間では巻線の列と列の間に液体ヘリウムを流す空間が形成されるため、確実な冷却が実現される。したがって、交流通電時の交流損失などに起因する発熱が起きても、液体ヘリウムで確実に冷却されるため、臨界電流値が低下したり、巻線の温度が臨界温度を越えて上昇して瞬時に常伝導性に転移する、いわゆるクエンチを起こすなどの超電導特性上の障害を起こすことが少ない。
【0032】
さらに、請求項7記載の超電導マグネットによれば、超電導マグネット全体が巻枠を介して装置本体などに固定されるため、交流通電によって生じる超電導コイル自体の発生磁場と電流とに起因する大きな電磁力によって、マグネット全体が振動することがない。したがって、電磁振動に起因する発熱でクエンチに至る虞が少なくなると共に超電導マグネットの大型化を可能とする。しかも、超電導マグネットの大型化は、より効率、構成上の容易さなどが向上する。そしてこのことは、装置の実用化、大型化に対して非常に容易に対応できることを意味している。
【0033】
さらに、請求項8記載の超電導マグネットによれば、線材を巻枠に押しつける力がほとんど0に近い直線部において超電導線材がコイル要素(線材)間の固定が十分にされるので、直線部において超電導線材が大電流密度と強い交番磁界の影響により大きな電磁振動を起こして発熱することがなく、クエンチに至る虞が少ない。
【0034】
さらに、請求項9記載の超電導マグネットによれば、超電導線を冷却することにより液体ヘリウムがガス化しても、ガス抜き穴から巻枠の外に流出されるため、常に超電導線の間には液体ヘリウムが流れて十分な冷却が維持されるので、通電中の交流損失などに起因する発熱が生じても、液体ヘリウムで確実に冷却されるため、臨界電流値が低下したり、巻線の温度が臨界温度を越えて上昇して瞬時に常伝導性に転移する、いわゆるクエンチを起こすなどの超電導特性上の障害を起こすことが少ない。
【0035】
また、上述の超電導マグネットを利用した請求項10記載の磁場発生装置によれば、大電流を印加でき、非常に大きな撹拌磁界を印加することができるので、回転磁界を発生させようとする領域の中心を貫通し、かつほぼ均一で乱れのない理想的な磁場を、より格段に強力なものとして得ることができる。したがって、この磁場発生装置を電磁撹拌装置に適用すれば、常伝導金属の亀の子状のマグネットを用いた従来のものよりも格段に強力な電磁撹拌を行なうことができるので、従来混合できないような溶融金属の混合が可能になったり、密度差を利用した溶融金属の強力な分離に応用できる。特に、超電導マグネットの場合、大型化したほうが効率、構成上の容易さなどが向上するため、電磁撹拌装置の実用化、大型化に対して非常に容易に対応できる。また、理想的な巻線構造である亀の子状のマグネットと同様の磁界分布の回転磁界を得るので、溶融状態の導電性物質例えば溶融金属などを撹拌しようとする場合に、溶融状態の導電性物質中に圧力が無くなって圧力勾配が部分的にできてしまうことがなく、撹拌しようとする溶融状態の導電性物質の逆流が起きて液体が振動したり、容器全体ががたつくなどの問題を生ずることなく、効率の良い撹拌を可能とする。
【0036】
また、上述の電磁場発生装置をステータコイルあるいは電機子コイルとして用いる請求項13記載の電動機によれば、変動が少なく回転バランスの良い、強力な電動機や発電機が構成できる。
【0037】
また、上述の超電導マグネットを用いて発電する請求項14記載の発電機によれば、変動が少なくバランスの良い回転により、品質の良い電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の超電導マグネットの一実施形態を全体外観で示す斜視図である。
【図2】図1の超電導マグネットの平面図である。
【図3】図1の超電導マグネットの側面図である。
【図4】図1の超電導マグネットの概念を示す斜視図である。
【図5】図4のマグネット組み合わせの断面図である。
【図6】図4のマグネット組み合わせの回転磁界分布である。
【図7】図4のマグネット組み合わせの磁界の時間変化を示すグラフである。
【図8】本発明にかかる超電導マグネットを電磁撹拌装置に適用した実施形態の一例を示す全体構造を示す縦断面図である。
【図9】クライオスタットのマグネット収容部の横断面図であり、コイルの配置状態を示す。
【図10】レーストラック形状のコイル枠体(巻枠)を示す正面図であり、内層コイルの枠体を仮想線で示して、大きさを比較して示している。
【図11】図10のコイル枠体の側面図である。
【図12】図10のコイル枠体のストレート部における横断面図である。
【図13】図10のコイル枠体を構成する第1のフランジの正面図である。
【図14】第1のフランジの斜視図である。
【図15】図10のコイル枠体を構成するコイル胴体の正面図である。
【図16】コイル胴体の平面図とストレート部における拡大横断面図である。
【図17】図10のコイル枠体を構成する第2のフランジの正面図である。
【図18】スペーサの斜視図である。
【図19】円筒形状のコイル枠体(巻枠)の一実施形態を示す平面図である。
【図20】図19の円筒形状のコイル枠体(巻枠)の第1のフランジの斜視図である。
【図21】図19の円筒形状のコイル枠体(巻枠)のコイル胴体の斜視図である。
【図22】本発明の超電導マグネットの他の実施形態を平面図である。
【図23】本発明の超電導マグネットのさらに他の実施形態を示す平面図である。
【図24】常導電線で構成された亀の子コイルのイメージ図である。
【図25】亀の子状コイルで構成したマグネットの模式図である。
【図26】亀の子コイルによる回転磁界分布図である。
【図27】亀の子コイルによる磁界の時間変化を示すグラフである。
【図28】常導電線で構成された亀の子コイルでつくられた従来の電磁撹拌装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 単コイル
2 回転磁界を発生させようとする領域
O 回転磁界を発生させようとする領域の中心
10 超電導マグネット
11 クライオスタット11
13 クライオスタット11の内部空間(回転磁界を発生させようとする領域)
14 容器(回転磁界を発生させようとする領域)
15 コイル枠体
16 コイル胴体
17 第1のフランジ
18 第2のフランジ
19 スペーサ
20 超電導線
21 スペーサを装入する溝
25 ストレート部固定用ねじ穴
26 ストレート部を固定する板
27 ガス抜き穴27
θ 外層コイルと内層コイルの中心角
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0041】
図1から図7に本発明の超電導マグネットの実施の一形態を示す。この超電導マグネットは、電磁撹拌に適用するためのものであり、磁束を溶融金属に貫通させる方が効率が良いため、3相2極で回転磁界を印加するように構成されている。尚、「マグネット」と「コイル」とは一般的に同義であり区別されずに使われることも多いが、主に積極的に電流を流して磁界を発生させるものが「マグネット」、磁界の変化を受けて電流を発生させるものが「コイル」と呼ばれている。しかし、本明細書においては、複数の超電導マグネットによって1つの磁場発生装置などを構成する場合には、装置全体と個々のマグネットとを区別するために、1つ1つの「マグネット」を「コイル」とも呼んでいる。
【0042】
この超電導マグネット10は、6個の単コイル1で構成され、回転磁界を発生させようとする領域2の中心Oを中心として同心状に内側に3個、その外側に3個ずつ少なくとも2層配置し、内層並びに外層の各コイル1は互いに120°ずつずらすと共に内層コイルと外層コイルとが対極に配置され、互いに対向する外層コイルと内層コイルとで形成される磁束の方向が同一方向となるように三相交流が通電される。そして、2極貫通磁界を発生している。この構造の場合、それぞれのマグネット同士で交差することなく構成できる。ここで、各コイル1は、超電導線にかかる張力の方向が急激に変化することのない巻線構造、即ち屈曲する部分が存在しない環状物例えばレーストラック形状や真円形を含むものであり、ほぼ同じ平面上で巻回される平面的な形状のものであることが好ましい。したがって、同心状に単コイルを配置するとは、図2に示すように、回転磁界を発生させようとする領域2の中心Oを中心とする円の接線となるように配置されることを意味している。尚、本明細書において、レーストラック形状に巻線するとは、長尺なストレート部の両端に半円部をそれぞれ有するものの他、ストレート部の短い楕円形などを含むものであり、特に本来のレーストラック形状に限られる合理的理由がない限り、円筒形状を除外するものでもない。
【0043】
図2におけるコイル1は、120°位相差を有する三相交流をそれぞれ流すA,B,Cの3種類の内層コイルと、これらとそれぞれ結線されて逆向きに巻回されるX,Y,Zの3種類の外層コイルとを設定している。コイル1の配置順序は、三相交流の各相のコイルをA,B、C、それらと逆の向きに巻いたコイルをX,Y,Zとすると、例えばAとX、BとY、CとZがそれぞれ結線されて対向する位置関係となるように各コイルの位相差が60°に設定されている。つまり、内層の3コイルは各々120°間隔で配置され、かつ外層の3コイルも各々120°間隔で配置されているが、内層のコイルと外層のコイルとの間では60°ずつ互いにずれ、内層コイルと外層コイルのAとX,BとY,CとZが対極となるように配置されている。即ち、Aが0°のとき、Zが60°、Bが120°、Xが180°、Cが240°、Yが300°である。したがって、コイル1に図示していない電源より三相交流の電流が供給されると、対極となる内層と外層の各コイル間で同じ方向の磁束が形成される。このとき、磁力線は各コイル毎に発生するが、隣り合うコイル同士の位相差や巻き方向、各コイルに流れる電流の変化によって回転磁界を発生させようとする領域2の中心Oを貫通する磁束が形成される。
【0044】
ここで、外層のX,Y,Zの各コイル1は内層のA,B,Cの各コイル1の巻線よりも距離に按分して多く巻かれていることが好ましい。内層のコイルと外層のコイルとが同じ巻き数(アンペアターン数)であると、磁界のアンバランスが生じる。また、電磁力にも差が生ずるので、互いに干渉して振動する虞がある。この振動は、交流損失となって発熱を伴い、クエンチを起こすなど、超電導コイルにおいて著しく不利である。そこで、設備上同じ大きさの電流を流すことが有利であることから、本実施形態においては、外層コイルのターン数を内層のコイルのターン数よりも多くして、中心部においてなるべく同じ磁束密度となるようにしている。勿論、内層の3個のコイル1と外層の3個のコイル1とは、同じ巻数として異なる大きさの電流をそれぞれ流すことによって磁界中心において発生する磁束密度を同じにすることも可能である。この場合には異なる大きさの電流を供給する電源をそれぞれ必要とするため、設備コストが高くなる問題を有しているが、超電導マグネットそのものをコンパクトにすることができる。
【0045】
また、X,Y,Zの外層のコイル1はA,B、Cの内層のコイル1よりも周方向(幅方向)に大きくして外層コイルと内層コイルの中心角θが同じとなるように設けられている。この場合、X,Y,Zの外層のコイル1とA,B、Cの内層のコイル1とで形成される磁界の中心が一致するため、磁界の回転に伴う変動がなくなる。
【0046】
また、内層のコイル1(A,B、C)と外層のコイル1(X,Y,Z)とは互いに接近させて配置することが好ましい。このように接近させることにより、漏れ磁束を減らすことができるので効率が良くなる。また、磁場の不要な乱れも減らせる。さらに、外層のコイルのアンペアターンを下げられるので、内層のコイルでの交流損失を無駄に増やさずに済む。つまり、磁界の強さはアンペアターンに比例し、距離に反比例する。したがって、内側のコイルと外側のコイルとが接近させられずに離れれば離れるほど、外側のコイルのアンペアターンを大きくしなければ中心における磁束密度を同じにできない。そして、アンペアターンを大きくすればするほど、その内側のコイルに与える交流損失が大きくなる。また、外側のコイルと内側のコイルとの距離が離れるに従って漏れ磁束が増えるので、効率が悪化すると共に磁場の乱れが生じる。そこで、X,Y,Zの外層のコイル1をA,B、Cの内層のコイル1よりも縦方向(高さ方向)を一回り大きくして内層のコイルの両端が外層のコイルの中に入り込むことができる(図2に示すように上から見て重なるように)ようにすることで、外層と内層のコイルの接近配置を可能としている。これによりコスト的、効率的に相当有利になる。
【0047】
ここで、コイルは、図9に示すように、巻枠に巻き付けられて固定されることが好ましいが、これに特に限られるものではなく、場合によってはエポキシ樹脂などで固めて用いるようにしても良い。いずれにしても、レーストラック状に巻線することにより屈曲部を無くして巻線時のダメージを無くし、さらに直線部を巻枠に固定するか、あるいはエポキシ樹脂で固めることにより電磁振動を極力抑えるようにしている。
【0048】
以上のように構成された超電導マグネットにおける磁界分布を計算すると、図6に示すように、回転磁界を発生させようとする領域2の中心Oまで均一で強力な回転磁界を得られた。ここで、マグネット近傍での若干の磁界の乱れはあるが、超電導マグネットの場合、内側の回転磁界を発生させようとする領域2との間に液体ヘリウムの断熱領域があるため、実際に領域2内の被撹拌物質例えば溶融金属のような導電性物質に回転磁界が印加される部分における回転磁界は均一で安定したものとなり、図26の亀の子形状のマグネットの場合と同様の回転磁界を与えることができていることから、問題がないものと思われる。また、回転磁界を発生させようとする領域2の中での磁界の時間変化を図7に示す。この図の破線βが回転磁界を発生させようとする領域2の中のデータであるが、中心部でも強い磁界が貫通し、安定して印加されていることがわかる。しかも、亀の子形状のマグネットの磁界の時間変化を示す図26と比較して、ほぼ同等の安定度で、より強力な磁界印加が可能となることが明らかである。尚、回転磁界を得る目的の場合、あえて磁界の乱れを利用するような機器でない限り、磁界の乱れはデメリットであり、基本的にはあってはならないものと考えられる。例えば、電磁撹拌装置などに適用した場合、きれいな回転磁場が得られない場合は、液体金属に圧力変動が生じ、それが回転運動を乱す要因となるからである。尚、図6の磁界分布は図2のコイル配置において、内層のコイルと中心Oの間隔を43mm、外層のコイルと中心Oの間隔を84mmとして、コイル厚み(巻枠を含む)を38mmとしたときのものである。
【0049】
以上のように構成された超電導マグネットは、交流電流により磁界を発生させるのに適した超電導マグネットであることから、磁場発生装置として様々な応用分野において利用することができる。例えば、貫通磁束により回転磁場を発生させる磁場発生装置並びにその回転磁場を利用して非接触で溶融状態にある導電性物質例えば溶融金属を撹拌する電磁撹拌装置、電動機及び発電機などに適用することができる。
【実施例】
【0050】
図8〜図18に本発明の超電導マグネットを電磁撹拌装置に適用した実施の一例を示す。本実施例の電磁撹拌装置は、超電導マグネット10を浸漬したクライオスタット11の環状の超電導マグネット収容部12の内部空間13に磁場をかける物体つまり溶融状態にある導電性物質例えば金属(以下、溶融金属と呼ぶ)を収容する容器(回転磁界を発生させようとする領域2)14が図示しない架台などに搭載されて収納されるものである。ここで、容器14は、予め高周波加熱などにより加熱された後に、図示していない昇降装置によってクライオスタット11の内部空間13に装入される。そして、所定の電磁撹拌工程が終了した後、凝固させながら、あるいは凝固後に昇降装置の降下により取り出されるように設けられている。尚、クライオスタット11は、冷却液体例えばヘリウムを貯留し、コイル収容部12に図1〜図3に示す超電導マグネット10を収容させることにより、コイルをヘリウムにどぶ付けして冷却可能としたものである。
【0051】
ここで、単コイル1は、レーストラック形状のコイル枠体15に巻かれて固定されている。コイル枠体15は、超電導線20を巻回するレーストラック形状(楕円形筒形状)のコイル胴体16と、その両側縁でそれぞれ超電導線20の脱落を防止するレーストラック形状の第1及び第2のフランジ17,18とを備え、第1及び第2のフランジ17,18の間にスペーサ19を介して超電導線20が巻回されている。コイル枠体(巻枠)15にスペーサ19を入れながら巻線することにより密巻を回避し、巻線間に液体ヘリウムの流れる空間を確保することができるので、交流損失による発熱を避けることが可能となる。
【0052】
スペーサ19は、図12に示すように、コイル胴体16を挟んで対向した第1及び第2のフランジ17,18の内側面にそれぞれ形成された放射方向の溝21にスペーサ19を嵌め込んで超電導線20を巻回可能としている。スペーサ19は例えば図18に示すような薄板状のガラス繊維強化プラスチック(FRP)を積層することによって形成され、両端に各フランジ17,18の内側面の溝21と嵌合する係止部19aを備えると共にそれら係止部19aの間に超電導線20を2層程度巻回可能とする溝19bが形成されている。スペーサ19は超電導線20を保持すると共に線同士の密着を防いでヘリウム液が通る空間をつくるためのものである。コイル胴体16とその両側の第1及び第2のフランジ17,18は、それぞれ一定ピッチで設けられた取付用のネジ穴22を利用してコイル胴体16とネジ止めと接着によって一体化されている。
【0053】
コイル胴体16の上下端(半円形部)には、図15に示すように、半円形状の固定部16aが設けられ、その両面にコイル固定用のねじ穴16bが穿孔されている。このねじ穴16bを利用して、半円形の固定部16aに吊下げ固定手段例えばアングル23をねじ止めして、そこに固定手段例えば上下方向に延びるに支持棒24を通し固定する。また、各コイルのコイル枠体15の両フランジ部17,18には、さらにストレート部を固定するためのストレート部固定用ねじ穴25を設けている。レーストラックコイルのストレート部はコイル胴体16へ向けて超電導線20を押しつける張力を付与できないので固定が難しいため、超電導線20の上から板26を当て、その板26を巻枠15にねじ込み強く押し当てることにより超電導線20の固定を強化している。
【0054】
さらに、図13及び14に示すように、内層コイル並びに外層コイルのそれぞれの少なくとも一方のフランジ17には、ヘリウムガスを巻枠15の外に抜くためのガス抜き穴27が設けられている。このガス抜き穴27は、スペーサ19を積み重ねる方向に長い長穴あるいは円形穴であり、スペーサ19で区切られた各段の超電導線20の間からヘリウムガスを抜き出して、ヘリウム液の循環を促して超電導線20が冷却されるように設けられている。
【0055】
また、フランジ18には、図17に示すように電流端子固定用ねじ穴28が設けられている。このねじ穴28は、コイルの巻きはじめと巻き終わりを接続するためのもので、この部分に超電導線20を半田付けする電流端子が取り付けられる。本実施形態の場合、メンテナンス性を考え、コイル単独で取り外したりテストができるように、電流端子板を巻枠15に固定しうるようにコイル巻線の直近で例えば銅板などから成る電流端子と接続させる構造にしている。
【0056】
超電導線20としては、巻線の張力を確保するストレスメンバーとして中心にCu10%Ni線を入れ、その周りにPVF付きφ0.3mmの素線(裸径0.25mm)を6本均等に配置した外径1mm程度の7本撚り線を使用した。言うまでもないが、ストレスメンバーのある撚り線であれば、1+8本や2重撚り線など、あらゆる撚り線が使用可能である。また、ストレスメンバーとしては、Cu10%Ni線に限られず、SUS、Cu30%Ni線などが用いられることもある。
【0057】
ここで、電磁撹拌装置用の容器14は、磁力線を貫通させ易い材質でかつ撹拌しようとする溶融金属の融点よりも高い融点の材料、例えば透磁率の低いオーステナイト系ステンレス、銅やアルミニウムなどの非鉄金属、黒鉛、セラミックなどで溶融金属を撹拌させるに十分な容積と撹拌に適した形状に形成されている。尚、本実施形態ではクライオスタットの環状部の断面形状は円環状とされているが、特にこれに限られるものではなく、矩形状あるいは三角形若しくは多角形状、楕円形状などの様々な形状において実施可能である。
【0058】
この容器14とクライオスタット11のマグネット収容部12の内壁面との間には断熱構造物(図示省略)が介在され、容器14から放射される溶融金属からの輻射熱を遮蔽してクライオスタット11内の液体ヘリウムの蒸発を防いでいる。断熱構造物は、容器14とクライオスタット11の超電導マグネット収容部12との間に介在されることで、容器14の外壁面から放射される輻射熱を遮蔽すると同時に磁力線を貫通させる必要があるので、例えば比透磁率が1に近いオーステナイト系ステンレス、銅やアルミニウムなどの非鉄金属、黒鉛、セラミックなどで構成されており、容器14を包み込むように筒形に形成されている。
【0059】
以上のように構成された電磁撹拌装置によると、クライオスタット11の内部空間13へ装入された容器14内の溶融金属には、図1〜図3の配置のレーストラック形状あるいは円形状の超電導マグネット10によって、回転磁界を得るのに理想的な巻線構造と考えられる180°配置の亀の子状のマグネットと同等あるいはそれ以上の回転磁界が形成される。即ち、回転磁界を発生させようとする領域の中心を貫通し、かつほぼ均一で乱れのない強力な回転磁場が形成される。このような回転磁界は、磁場がかからない部分が発生しないため、溶融状態の導電性物質例えば溶融金属などを撹拌しようとする電磁撹拌装置に利用する場合には、溶融状態の導電性物質中に圧力が無くなって圧力勾配が部分的にできてしまうことがないので、撹拌使用とする溶融状態の導電性物質の逆流が起こることがなく、液体が振動したり、容器全体ががたつくなどの問題を生ずる虞が無く、効率の良い撹拌を可能とする。また、回転周波数を制御することにより、金属表面に表皮効果を起こし、回転電磁力が加わる深さを制御できる。この場合には、回転深さを制御して、回転電磁力が加わらない領域は、液体金属の粘性で回転することになり、剛性回転を避けられる。
【0060】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では、電磁撹拌装置に適用した例を挙げて主に説明したが、本発明の超電導マグネットによる回転磁界の利用技術は限られず、その他の磁場発生装置や誘導電動機などの電動機、発電機などに対しても適用可能である。超電導マグネットをステータコイルあるいは電機子コイルとして利用し回転機を作る場合、発生磁界が強い、鉄心を使うメリットがない場合がある(飽和磁束、冷却効率)などの点から、あえて漏れ磁束の不利があっても磁束を貫通させる本発明の超電導マグネットの方が有利な場合がある。また、回転磁場の利用技術としては、例えば単結晶引き上げ装置において交流回転磁場を印加したり、連続鋳造において鋳型内の未凝固部の溶融金属に対して強力な撹拌を与えて結晶成長の制御を行うことを可能とする。例えば、等軸樹枝状晶を増し、最終凝固位置の溶質元素の偏析を多数の等軸晶間に分散することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、内層3個、外層3個から成る6個のコイルを1組として少なくとも2層配置した3相2極で回転磁界を印加する構成とされているが、これに特に限定されるものではなく、例えば図22に示すように、さらに外側に内層3個外層3個の2組目のコイルを配置した4層のコイルから成る超電導マグネットとしても良い。この場合、1層目と3層目のコイルが同じ法線上に配置され、2層目と4層目とが同じ法線上に配置されて、同様に通電される。つまり、1層目と3層目並びに2層目と4層目との間で形成される磁界は同じになり、3相2極で回転磁界が形成される。この場合、メリットとして、外側のコイルに加わる磁界は小さくできるので交流損失を抑制できる。また、各コイルの巻線を少なくすることができ、直線部で受ける電磁力による機械振動を抑えることができる。更に、コイルの冷却も、各コイルによる発熱を分散させることができるため容易になりうる。なお、内側のコイルに加わる磁界が大きくなることによる交流損失が増えることが考えられるが、それは内側のコイルに低損失な超電導線を用い、外側のコイルに交流損失は多少大きくても臨界電流の大きな超電導線を用いるなどの工夫を行うことにより抑制することができる。また、図23に示すように、通電電源を6層にして、1層目と3層目を60°ずらして配置しても良いし、9層電源にして1,3,5層目を30°ずつずらすようにしても良い。
【0062】
また、本実施形態では、外層側のコイルの巻線数を内層側のコイルの巻き線数に対して距離に按分して多く巻くようにして、磁界をかけようとする領域の中心における磁束密度が同じになるようにしているが、外層側のコイルと内層側のコイルとで流す電流の大きさを制御できる設備を備えるのであれば、巻き線数は同じでもかまわない。もっとも、層毎に流す電流の大きさを変える電源設備のコストは超電導線材のコストよりも遙かに高額なものとなるので、巻き線数を内側の層のコイルよりも外側の層のコイルの方が多くなるように巻く、あるいは外側のコイルよりも内側のコイルの巻き数の方が少なくなるように巻くことによって、中心の磁束密度を同じになるように調整する方が安価なものとなる。
【0063】
また、内コイルと外コイルとを接近させて配置するために、外コイルを内コイルよりも一回り大きくすることが有利であるが、必ずしも接近させずとも外側のコイルのアンペアターンを大きくすることにより坩堝へ同じ磁界を印加することはできる。また、あえて磁界の乱れを利用するような機器のように、内コイルと外コイルとを離すことが望まれる場合もある。
【0064】
さらに、本実施形態では、単コイルは図1に示すストレート部の両端に半円部をそれぞれ有する楕円形のレーストラック形状を成す巻枠に固定されたものを挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、場合によっては図19〜図21に示すような真円形の巻枠に固定されたレーストラック形状の単コイルであっても良い。この場合においても、内コイルと外コイルとを接近させて配置するために、外コイルを内コイルよりも一回り大きくすることが有利であるが、外層側のコイルの巻線数を内層側のコイルの巻き線数に対して距離に按分して多く巻くようにして、磁界をかけようとする領域の中心における磁束密度が同じになるようにしているすることは効果的であることはいうまでもない。また、真円形のコイルの場合、線材を巻枠に押しつける力がほとんど0に近くなる直線部が存在しないため、超電導線材が大電流密度と強い交番磁界の影響により大きな電磁振動を生じ難く、これに起因する発熱でクエンチに至る虞もなくなる。尚、図中の符号において図10〜図18において付されているものと同じ符号は枠体の形状を除いて同様の構造のものである。
【0065】
さらに、単コイルは巻枠に固定されていなくとも良く、内部を冷却液が通る超電導線であればエポキシ樹脂などで固めても良い。コイルの中に冷却液例えば液体ヘリウムを循環させる構造を有する超電導線を用いる場合には必ずしもコイルの表面を液体ヘリウムに接触させる必要もなければ、液体ヘリウムを貯留するクライオスタットのようなものも不要である。
Claims (14)
- 超電導線をレーストラック状に巻線した単コイルを、回転磁界を発生させようとする領域の中心を中心として同心状に内側に3個、その外側に3個ずつ少なくとも2層配置し、前記内層並びに外層の各コイルは互いに120°ずつずらして前記内層コイルと前記外層コイルとが対極に配置され、互いに対向する前記外層コイルと前記内層コイルとで形成される磁束の方向が同一方向でかつ前記回転磁界の中心において同じ磁束密度となる磁束を三相交流の通電により発生させる超電導マグネット。
- 前記外層コイルは前記内層コイルの巻線よりも距離に按分して多く巻かれ磁界中心において発生する磁束密度を同じにしたものである請求項1記載の超電導マグネット。
- 前記外層コイルと前記内層コイルの中心角は同じである請求項1記載の記載の超電導マグネット。
- 前記外層のコイルは内層のコイルよりも縦方向を大きくして、前記内層のコイルの横方向の両端部が前記外層のコイルの中に入り込むことができるようにすることで、外層と内層のコイルを接近させたものである請求項1記載の超電導マグネット。
- 前記単コイルは巻枠に固定されているものである請求項1記載の超電導マグネット。
- 前記巻枠は、コイル胴体と、その両側縁でそれぞれコイルの脱落を防止する第1及び第2のフランジとを備え、前記第1及び第2のフランジの間に装入された複数のスペーサの間に前記コイルが巻回されているものである請求項1記載の超電導マグネット。
- 前記コイル胴体の上下端には、コイル固定用のねじ穴が穿孔されている固定部が備えられ、該ねじ穴を利用して吊下げ用アングルをねじ止めして、上下方向に吊り下げ固定されるものである請求項6記載の超電導マグネット。
- 前記外層コイルの両フランジ部には、さらにストレート部を固定するためのストレート部固定用ねじ穴を設け、巻線の上から板を当て、その板を巻枠にねじ込み強く押し当てることにより巻線の固定を強化しているものである請求項6記載の超電導マグネット。
- 前記内層コイル並びに外層コイルのそれぞれのフランジの少なくとも一方には、ヘリウムガスを巻枠の外に抜くためのガス抜き穴が設けられ、前記スペーサで区切られた各段の超電導線の間からヘリウムガスを抜き出して、ヘリウム液が循環して超電導線が冷却されるように設けられているものである請求項6記載の超電導マグネット。
- 請求項1記載の超電導マグネットを用いる磁場発生装置。
- 請求項10記載の磁場発生装置は電磁撹拌装置であり、溶融状態の導電性物質を収容する容器と、前記容器の周りに配置される請求項1記載の超電導マグネットを配置し、前記容器内に容れられた溶融状態の導電性物質に対して前記容器の周方向に移動する回転磁力線を発生させる電磁撹拌装置。
- 前記溶融状態の導電性物質が溶融金属である請求項11記載の電磁撹拌装置。
- 請求項10記載の電磁場発生装置をステータコイルあるいは電機子コイルとして用いる電動機。
- 請求項1記載の超電導マグネットを用いて発電する発電機。
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