JP3849824B2 - 傾斜磁場コイル及びこれを備えた磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に適した傾斜磁場コイルに関し、特に、傾斜磁場コイルによるパルス状磁場により発生する渦電流を抑制し、また、通電による温度上昇を抑制できるとともに、製造のしやすさを兼ね備えた傾斜磁場コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
図5,図6に水平磁場方式の超電導磁石に使用されている傾斜磁場コイルを示す。超電導磁石は、水平方式(Z軸方向)の磁場を発生させている。磁石のコイルは超電導線材を用いるため、所定の温度(例えば、合金系超電導体の場合には液体ヘリウム温度(4.2K)のレベル)にまで冷却する必要がある。このため超電導コイルは、真空容器50や冷媒容器51(図では、液体ヘリウム容器)などから構成される冷却容器の中に保持される。この場合には、傾斜磁場コイル52は1組の円筒上に構成され、真空容器50の中空に収納されて、3次元空間に併せて、X,Y,Zの3方向の傾斜磁場を発生させる。この傾斜磁場コイル52は、図6に示すように、一組の絶縁ポビン60,61に形成された銅板よりなる主コイル62、およびシールドコイル63よりなる。主コイル62は、主に均一磁場領域に所定の傾斜磁場を発生させ、シールドコイルは主コイルと逆方向の磁場を発生することにより、傾斜磁場コイルの外部に生じる磁場強度を低減させる作用をする。
【0003】
また、図7は永久磁石方式の磁気共鳴イメージング装置の構成を示し、図8はその内部の一部を示すもので、装置は、4本のヨーク70と、その上下に配置された継鉄71,72と、この継鉄に設けたポールピース73を有する永久磁石74とよりなり、傾斜磁場コイル75はポールピース73の内部に収納されている。これは、上下のポールピース間の距離をできるだけ縮めることにより、磁気回路の製造原価を抑制するために重要である。したがって、この場合の傾斜磁場コイル75の外部形状は、ポールピース73の形状に合わせて円板形状とすることが通常である。
【0004】
このような傾斜磁場コイルを作成する従来の方法の一つとして、銅板を加工することにより、必要な電流パターンを得ることが知られている。
具体的には、銅板をエッチングによって加工したり、ウォータージェット加工などにより銅板を切断加工することにより、傾斜磁場コイルに必要な電流パターンを得ることが知られている。エッチング加工の例を図9に示した。この例では基板90上にエッチングにより導体91,92を形成して電流パターンとしている。
【0005】
一方、傾斜磁場コイルに要求される特性の一つとして、導体での発熱を抑制するため、傾斜磁場コイルの電流経路となる導体は抵抗値の低いことが要求される。ところが、上記の方法によって傾斜磁場コイルを作成する場合には、その技術的限界から厚い銅板を用いることが困難である。従って、抵抗値を低くするためには、傾斜磁場コイルの構成面に沿って幅の広いコイルとなる。この結果、傾斜磁場コイルが発生するパルス状の磁場により、幅の広いコイル部分に渦電流が発生する。この渦電流は撮影空間内に不要な磁場を発生させ、しかも、この不要磁場は時間的、空間的に抑制不可能である。従って、必要とする磁場特性を悪化させるために、画像に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
また、傾斜磁場コイルを作成する従来の方法としては、図10に示すように、基板101に所定パターンの溝103を作成し、この溝103に単線もしくは撚り線による導体102を挿入して傾斜磁場コイルを構成する技術が、特開平1−64638号等により公知である。
【0007】
この時、導体として撚り線を用いた場合には、撚り線が柔軟であるため製作が容易となるが、撚り線自体の線占率は単線よりも低いので、実質の導体断面積を大きくすることは困難であり、大電流を流すには適当でない。
また、単線を用いた場合は、導体断面を大きくとろうとすれば、導体は太く固くなり、容易に加工出来ない、という欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記に述べたように、従来技術では、容易な加工性と渦電流発生の防止、発熱低減の為の小さい導体抵抗、の全てを両立するようなコイル構造はできなかった。
また、上記問題に加え、最近のMRI装置においては傾斜磁場パルスが高速に立ち上がるので、導体表面付近にのみ電流が流れる表皮効果が発生し、導体断面積に対して実質の抵抗が反比例しないという問題が発生していた。
【0009】
本発明の目的は、渦電流を抑制すると同時に、導体の抵抗値を低くすることでコイル駆動時の発熱を抑制し、製作が容易である傾斜磁場コイルを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は磁気共鳴イメージング装置に用いられ傾斜磁場コイルにおいて、傾斜磁場コイルを構成する導体の断面が、その電流パターン面に対して垂直な方向に長いことを特徴とする。
【0011】
さらに、電流パターン面に対して垂直な方向に長い断面を有する導体を複数本まとめて一組の導体としたことを特徴とする。また、電気絶縁体よりなる基板に所望の傾斜磁場を発生させるための電流パターンに一致する溝を形成し、この溝の中に前記導体を埋設したことを特徴とする。さらに、前記導体を可撓性のある素材により被覆したことを特徴とする。
また、前記導体を有する傾斜磁場コイルを磁気共鳴イメージング装置に用いたことを特徴とする。
また、所定方向に静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記静磁場に重ねて傾斜磁場を発生するためのコイルパターンが形成された平板状の傾斜磁場発コイルを有し、前記傾斜磁場コイルの平面が前記静磁場方向と垂直となる様に配置された磁気共鳴イメージング装置において、前記電流パターンを形成する導体の断面形状は、前記傾斜磁場コイルの平面に略平行な方向を略垂直な方向よりも短くすることを特徴とする。
或いは、所定方向に静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記静磁場に重ねて傾斜磁場を発生するためのコイルパターンが形成された円筒状の傾斜磁場発コイルを有し、前記傾斜磁場コイルの平面が前記静磁場方向と平行となる様に配置された磁気共鳴イメージング装置において、前記電流パターンを形成する導体の断面形状は、前記円筒の軸に略平行な方向を略垂直な方向よりも短くすることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に沿って具体的に説明する。
図1に本発明に係わる傾斜磁場コイルの実施例を示す。また、図2は永久磁石を用いた対向型の磁気回路において使用される傾斜磁場コイルのz方向の傾斜磁場コイルのパターン図を示す。図1は、図2におけるコイル導体にかかる断面図を示している。
【0013】
傾斜磁場コイルは、電気絶縁体からなる基板10に掘られた溝11に、電気導体12,13を挿入することにより作成される。溝11のパターンは所定の撮影領域に所定の傾斜磁場分布を得るように、エンドミル加工などにより形成する。また、図中の導体12及び13は端部にて並列に接続されている。溝の深さは、本発明によれば、従来例に比較して加工上の制限とならないが、MRI装置内における傾斜磁場コイルの置き得る空間を考えると、傾斜磁場コイルはある程度の厚さ内に収める必要があり、この時、本発明の効果を発揮するためには、パターン面方向(磁束突入方向14と直角方向)に厚くするよりは、薄い導体を並列に接続した方が望ましい。
【0014】
本発明においては、電気導体としてパターン面に対して垂直方向に長い断面形状をもった導体を用いることで、従来技術で課題となった点を以下のように解決している。
【0015】
一つには、第1の従来技術のように、傾斜磁場コイルを形成する面に垂直な方向に対し、導体が幅の広い部分を持たないために、導体に発生する渦電流の発生を抑制することができる。また、発生した渦電流に対しても、渦電流のループサイズが単一線材と比べ小さくなるため、渦電流の時定数は短くなり、画像への悪影響も減少する。
【0016】
第2に、実施例のような形状ならば、導体の長手方向長さに加工上の制限は無いので、これを長くすることにより導体抵抗を十分小さくすることが出来る。
第3に、本実施例のような薄板状を用いれば、導体はその厚さ方向に対して柔軟であるから、傾斜磁場コイルを容易に製作することが可能である。
第4に、本実施例のような細長い断面の導体を用いれば、正方形や円の断面を持つ導体に比べ表面積が増大するため、表皮効果による抵抗の増大は生じにくい。
【0017】
上記のように、本発明では、パターン面に対して垂直方向に長い断面形状をもった導体を傾斜磁場コイルの導体とすることで、導体に発生す渦電流が少なく、かつ、抵抗値の低い傾斜磁場コイルを容易に製作することができる。実際に適用する導体としては、電気抵抗が低いことはもちろんであるが、溝に埋め込む作業を容易にするために適度な柔らかさを持った材質を選択することが望ましい。このような素材としては、ホルマール銅線などがある。
【0018】
本発明の他の実施例を図3により説明する。本実施例では、第1の実施例と同様の電気絶縁体からなる基板30に所望の傾斜磁場を発生させるための電気パターンに一致する第1の溝31と第2の溝32とを形成する。この場合、第2の溝32は第1の溝31の2倍の大きさになっている。この第1の溝31に4本の導体よりなる一組の導体33を埋設する。この導体33は可撓性被覆材34で被覆されている。導体33の各々の導体は第1の実施例と同様に、パターン面に対して垂直方向に長い断面形状をもつ導体を用いるが、各導体の厚さは第1の実施例に比べて薄くしている。各導体は裸導線により構成されているが各々を絶縁覆被材で被覆してもよい。次に、溝32には導体33と同一構成の導体35,36を埋設し、溝31に対する導体33に比べて2倍の電流が流れるようになる。
【0019】
本実施例によれば、各溝の中に挿入した各導体の面方向の厚さを第1の実施例の場合よりもさらに薄くすることができる。すなわち、渦電流の発生する領域を細分化しているので、薄電流を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0020】
また、1枚あたりが薄くなることにより、導体の機械的な柔軟性が増すので、厚い1本の導体に比べて扱いやすくなり、導体を溝の中に挿入する作業が行いやすくなる。さらに、傾斜磁場コイルのパターンは通常は一方向に渦を巻いた形状となるために、導体の内側と外側とで周に沿った長さが異なる。このため、導体の内周側に皺がよるといった問題の発生する可能があるが、導体が薄ければこの差が小さくなり、実質的にこの問題を回避することができる。
【0021】
また、図4に示すように、予め複数の導体40を一つの袋状の可撓性のある被覆材41で被覆して一体化しておくと、複数の導体を個別に管理する必要がなく取り扱いやすくなる。また、導体が3個以上となる場合には、導体を溝の中に入れる際に、溝の壁部分と両端に配列した導体の間にだけ摩擦が働き、導体の挿入深さがばらつく可能性がある。複数の導体を被覆することで、このような問題も回避することができる。また、導体を被覆の中に入れる場合にも、被覆の中で各導体が互いにずれるようにしておけば、上記と同様に内外周の周長の差による皺の問題を回避することができる。
【0022】
ここで用いる被覆は、溝の中に挿入する際に、各導体がばらつかずまとまって溝の中に入るようにすればよい。このため、導体の周囲を完全に覆う必要はなく、片開きの被覆の中に導体を入れることで、導体の一体を図ることが可能である。さらに、被覆の中へ導体を入れる際に、粘度の高い液体や可撓性のある瞬間接着剤等を用いることで、導体の一体化をより促進できる。
【0023】
また、上記可撓性被覆材として、例えば銅あみ線のような導電性のある素材を用いれば、この被覆自体も傾斜磁場コイルの導体の一部として使えるので、傾斜磁場コイルとしての抵抗値を低くすることができる。
【0024】
あるいは逆に、この被覆に電気絶縁体のある素材を用いれば、溝と溝の間の仕切りの役割を兼用することができる。従って、仕切りには導体の位置を決定するためのガイド的な役割だけを果たさせればよい。すなわち、仕切りを薄くすることにより、導体と導体の間隔を狭めることが可能になり、ターン数を増やすことが可能となる。あるいは、仕切り板の高さを低くすることも可能であり、この場合には、薄い基板を用いることができ、溝を作成する作業工数も減るので、製造原価を低くすることができる。
【0025】
上記では、基板に形成した溝に導体を挿入する方法を例として説明を行った。しかし、本発明の趣旨は、傾斜磁場コイルの実質的なパターン面に対して垂直な方向に断面積の大きな導体を用いることにあり、傾斜磁場コイルとしての作成方法は上記説明以外にも種々のものが可能である。
【0026】
一例としては、傾斜磁場コイルのパターンに合った枠を幾つかに分割して作成しておき、この枠に順次沿わせる格好で導体を巻きつけて行く方法を採用することも可能である。導体表面を絶縁被覆しておければ、外周部におけるコイルの配置密度が高い部分では巻き枠を置く必要が無いので、導体の配置間隔を非常に小さいものとできる。上記構造だけでは、電流を流した際に発生するローレンツ力に耐えられないが、傾斜磁場コイルの表側、または裏側に構造的強度に優れた部材を貼り合わせることにより、これを補強することが可能である。当然、この補強部材にも渦電流の発生が無いように、電気抵抗の高い素材を用いるか、電気的に渦電流の発生が生じにくいようにスリットを設けるなどの必要がある。
【0027】
また、以上の説明は、平板型の主コイルだけの場合について行った。しかし、本発明は、円筒形状の傾斜磁場コイル、あるいは、シールドコイルを設けた場合についても、同様に実施できることは容易に推察されよう。
【0028】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明によれば、以下の効果が得られる。すなわち、傾斜磁場コイルの導体において、磁束が突入する方向に対し導体幅が狭いので、傾斜磁場コイルを駆動した際の導体に誘起される渦電流を抑制することができ、また、発生した渦電流に対しても、渦電流のループサイズが単一線材と比べ小さくなるため、渦電流の時定数は短くなる。この結果、画像に対する悪影響を抑えることができるので、良好な画質を得ることを可能とする。さらに、従来に比べて、導体断面積を増すことができるので、傾斜磁場コイルの抵抗値を低くでき、傾斜磁場コイル駆動時を抑制することができる。また、導体表面積が従来より大きいため、傾斜磁場の高速立ち上げ時における表皮効果の影響は低減される。そして、これらの効果を保ちながら、製作も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例を示す部分断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明の第二の実施例を示す部分断面図である。
【図4】本発明の第三の実施例を示す部分傾斜図である。
【図5】水平磁場方式の磁気共鳴イメージング装置を示す断面図である。
【図6】図5の傾斜磁場コイルを示す斜視図である。
【図7】垂直磁場方式の磁気共鳴イメージグ装置を示す斜視図である。
【図8】図7の一部の拡大斜視図、及び、断面図である。
【図9】従来の傾斜磁場コイルを示す部分斜視図である。
【図10】従来の傾斜磁場コイルの他の例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10 基板
11 溝
12,13 導体
30 基板
31,32 溝
33 導体
34,41 可撓性被覆材
Claims (2)
- 磁気共鳴イメージング装置に用いられる傾斜磁場コイルであって、所望の傾斜磁場を発生させるための電流パターンを形成する導体で構成され、前記導体は、その断面が電流パターン面に対して垂直な方向に長い導体を複数本まとめて一組の導体とし形成されたものである傾斜磁場コイルにおいて、
前記一組の導体は、導電性を有する可撓性部材により被覆されていることを特徴とする傾斜磁場コイル。 - 所定方向に静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記静磁場に重ねて傾斜磁場を発生するためのコイルパターンが形成された傾斜磁場発コイルと、を有する磁気共鳴イメージング装置において、
前記電流パターンを形成する導体は、断面形状における前記傾斜磁場コイルの面に略平行な方向が略垂直な方向よりも短い導体を複数本まとめて一組の導体として形成され、該一組の導体は、導電性を有する可撓性部材により被覆されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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