JP4907714B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略すことがある。)素子に関するものである。
有機EL素子は、自己発色により視認性が高いこと、液晶ディスプレイと異なり全固体ディスプレイであるため耐衝撃性に優れていること、応答速度が速いこと、温度変化による影響が少ないこと、および、視野角が大きいことなどの利点を有しており、画像表示装置における発光素子としての利用が注目されている。
有機EL素子の構成は、陽極/発光層/陰極の積層構造を基本とし、ガラス基板等の基材上に透明電極である陽極を形成する構成が通常採用されている。この場合、発光は基材側(陽極側)から取出される。
一方、近年では陰極を透明電極として発光を陰極側から取出す、すなわち上面発光させる試みがなされている。この上面発光の実現により、陰極と共に陽極も透明電極とした場合、全体として透明な発光素子とすることが可能となり、両面発光が実現できる。このような透明な発光素子は、背景色として任意の色が採用できるので、発光時以外においても着色されたディスプレイとすることが可能となり、装飾性が向上する。また、発光素子にカラーフィルタ層または色変換層を形成する場合、従来の下面発光の発光素子と同様に、上面発光が可能な発光素子においても、発光層上にカラーフィルタ層または色変換層を貼り合わせて配置することができる。さらに、上面発光が可能な発光素子では、アクティブ駆動表示装置のTFT(薄膜トランジスタ)により発光が遮蔽されることがないため、開口率の高い表示装置とすることが可能となる。
陰極を透明電極とすることにより上面発光を可能とした有機EL素子の例としては、特許文献1に、陽極と陰極との間に発光層を含む有機EL層が介在し、陰極は電子注入層と透明電極層とからなり、この電子注入層が有機EL層に接するように配置されている有機EL素子が開示されている。
しかしながら、上面発光または両面発光を可能とした従来の有機EL素子においては、一般にITO等の透明電極はスパッタリング法により成膜されるものであり、透明電極を形成する際に、発光層を含む有機EL層や、電子注入層または正孔注入層がスパッタされた粒子、スパッタ時のAr、および電離した電子等の衝撃を受けて、発光特性の低下(電流密度の低下、発光効率の低下、リーク電流)が生じるという問題があった。さらに、透明電極である陰極を形成する際に、酸素導入またはターゲットからの酸素の放出により、電子注入層に含有される反応性の高い金属が酸化されてしまい、有機EL層や電子注入層の特性低下(電流密度特性の低下、発光効率の低下、ダークスポットの増大)を引き起こすという問題もあった。このような問題がある場合、高品質な画像表示を得ることはできない。
そこで、陰極成膜時の衝撃により発光特性の低下または有機EL層や電子注入層の特性低下を改善するために、陰極と有機EL層との間に緩衝層やバリア層等を形成する試みがなされている。例えば、特許文献2には、陰極を成膜する際のスパッタリングによる有機EL層のダメージを防止する目的で、CuPcを緩衝層として用いた有機EL素子が開示されている。また、特許文献3には、陰極の構成材料が発光層を含む有機EL層へ拡散するのを防止するために、陰極と有機EL層との間にCa拡散バリア層を設け、有機EL素子の短絡、特性の低下を防止する方法が開示されている。さらに、特許文献4および特許文献5には、陰極からの電子輸送を良好にするために、ZnSe、ZnS、CdSなどの半導体を陰極と有機EL層との間に介在させた有機EL素子が開示されている。また、特許文献6には、陰極を低抵抗化させるために、陰極と発光層を含む有機EL層との間にAg、Mg、TiN等の導電体層を介在させた有機EL素子が開示されている。
しかしながら、上述したような緩衝層やバリア層等(有機物、半導体など)を挿入すると、特に高電流密度下で駆動する有機EL素子(導電性高分子を用いた有機EL素子)では、従来の下面から発光を取り出す有機EL素子に比べて、電流密度―電圧特性が低下するという問題があった。
特開平10−162959号公報 特開2002−75658号公報 特開平10−144957号公報 特開平10−223377号公報 特開2000−215984号公報 特開平10−125469号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、電極層を成膜する際の有機EL層のダメージを緩和することができ、高品質の画像表示が可能な有機EL素子を提供することを主目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、基材と、上記基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機EL層と、上記有機EL層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体緩衝層と、上記半導体緩衝層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とする有機EL素子を提供する。
本発明によれば、有機EL層と第2電極層との間に半導体緩衝層が形成されているため、第2電極層の成膜時におけるスパッタリングされた粒子、スパッタ時のプラズマガスイオン、および電離した電子による衝撃を緩和することができ、有機EL層の特性低下および有機EL素子の発光特性の低下を防止することができる。また、半導体緩衝層は、無機化合物と金属とを含有するものであり、この金属の電気抵抗率は無機化合物に比べて低いことから、電流密度−電圧特性の低下を防止することができる。これにより、高品質の画像表示が可能な有機EL素子とすることが可能となる。
本発明は、また、基材と、上記基材上に形成された電極層と、上記電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機EL層と、上記有機EL層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体電極層とを有することを特徴とする有機EL素子を提供する。
本発明によれば、半導体電極層は例えば真空蒸着法により成膜されるものであるので、半導体電極層形成時に有機EL層は衝撃を受けることがなく、有機EL素子の発光特性の低下を回避することができる。また、真空蒸着法では、通常酸素導入が行われないため、例えば発光層と半導体電極層との間に電子注入層が形成されている場合であっても、この電子注入層に含有される金属の酸化を回避することができる。
また本発明においては、上記半導体緩衝層または上記半導体電極層は、上記無機化合物中に上記金属が分散された混合半導体層であってもよい。
さらに本発明においては、上記半導体緩衝層は、上記無機化合物からなる無機層と、上記金属からなる金属層とを有し、上記金属層は、上記無機層中あるいは上記無機層と上記第2電極層との間に形成されていてもよい。一方、上記半導体電極層は、上記無機化合物からなる無機層と、上記金属からなる金属層とを有し、上記金属層は、上記無機層中あるいは上記有機EL層が形成されている面と反対の面に形成されていてもよい。
また本発明においては、上記半導体緩衝層または上記半導体電極層は、上記無機化合物中に上記金属が分散された混合半導体層と、上記無機化合物からなる無機層とを有していてもよい。また、上記半導体緩衝層または上記半導体電極層は、上記無機化合物中に上記金属が分散された混合半導体層と、上記金属からなる金属層とを有していてもよい。
さらに本発明においては、上記金属の電気抵抗率ρが、1×10−5Ω・cm未満であることが好ましい。金属の電気抵抗率が上記範囲内であることにより、半導体緩衝層または半導体電極層の電気伝導性を高めることができるからである。
また本発明においては、上記半導体電極層中に含有される金属の仕事関数が4.2eV以上であることが好ましい。
さらに本発明においては、上記無機化合物は、無機半導体化合物であってもよい。この際、上記無機半導体化合物は、18族型元素周期律表の12族から16族までの元素から選択される少なくとも1種の元素を含有する化合物であることが好ましい。このような化合物は、バンドギャップが大きく、透明であるからである。
また本発明においては、上記無機化合物は、18族型元素周期律表の17族の元素から選択される少なくとも1種の元素を含有する金属化合物であってもよい。
さらに本発明においては、上記半導体緩衝層または上記半導体電極層は、厚みが1nm〜500nmの範囲内であり、可視領域における平均光透過率が30%以上であることが好ましい。上記半導体緩衝層または上記半導体電極層の厚みが厚すぎると、光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、上記半導体緩衝層の厚みが薄すぎると、有機EL層を第2電極層成膜時の衝撃から保護する効果が得られない可能性があり、また、上記半導体電極層の厚みが薄すぎると、電極として機能しなくなる可能性があるからである。
また本発明においては、上記半導体緩衝層中または上記半導体電極層中の上記金属の含有量は、0.0001体積%〜90体積%の範囲内であることが好ましい。上記金属の含有量が多すぎると、半導体緩衝層または半導体電極層の光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、上記金属の含有量が少なすぎると、半導体緩衝層または半導体電極層の電気伝導性を高める効果が得られない可能性があるからである。
さらに本発明においては、上記金属は、上記半導体緩衝層または上記半導体電極層中に含有される金属を、金属のみからなる層とした場合、上記金属のみからなる層の厚みが100nm以下となるように、上記半導体緩衝層または上記半導体電極層中に含有されていることが好ましい。上記金属のみからなる層の厚みが厚すぎると、半導体緩衝層または半導体電極層の光透過率が低下する可能性があるからである。
また本発明においては、上記半導体緩衝層または上記半導体電極層は、真空蒸着法により成膜されたものであることが好ましい。真空蒸着法では、通常酸素導入が行われないことから、例えば発光層と半導体緩衝層または半導体電極層との間に電子注入層が形成されている場合であっても、この電子注入層に含有される金属の酸化を回避することができるからである。
さらに本発明においては、上記発光層と、上記半導体緩衝層または上記半導体電極層との間に電荷注入輸送層が形成されていてもよい。これにより、発光層への電荷の注入が安定化し、発光効率を高めることができるからである。
本発明においては、有機EL層と第2電極層との間に半導体緩衝層が形成されているため、第2電極層の成膜時の衝撃による有機EL層のダメージを緩和することができる。また、例えば発光層と半導体緩衝層との間に電子注入層が形成されている場合であっても、この電子注入層に含有される金属の酸化を防止することができる。以上のことから、本発明においては、有機EL層の特性低下および有機EL素子の発光特性の低下を抑制することができるという効果を奏する。
本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。
以下、本発明の有機EL素子について詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、有機EL素子の構成により2つの実施態様に分けることができる。本発明の有機EL素子の第1実施態様は、基材と、上記基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機EL層と、上記有機EL層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体緩衝層と、上記半導体緩衝層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とするものである。また、本発明の有機EL素子の第2実施態様は、基材と、上記基材上に形成された電極層と、上記電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機EL層と、上記有機EL層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体電極層とを有することを特徴とするものである。以下、各実施態様について説明する。
1.第1実施態様
本発明の有機EL素子の第1実施態様は、基材と、上記基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機EL層と、上記有機EL層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体緩衝層と、上記半導体緩衝層上に形成された第2電極層とを有することを特徴とするものである。
本実施態様の有機EL素子について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施態様の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図1において、有機EL素子は、基材1と、上記基材1上に形成された第1電極層2と、上記第1電極層2上に形成され、少なくとも発光層を有する有機EL層3と、上記有機EL層3上に形成された電子注入層6と、上記電子注入層6上に形成された半導体緩衝層4と、上記半導体緩衝層4上に形成された第2電極層5とを有している。
従来では、例えば電極層をスパッタリングにより有機EL層上に成膜する場合、数百ボルトで高エネルギー量のAr、スパッタリングされた粒子および電離した電子等による衝撃を有機EL層が受けるため、有機EL層の構造が変化してしまい、電荷注入において有機EL層と電極層との界面で無放射消光を引き起こし発光特性の低下を招くという不具合が生じていた。また、例えば発光層と半導体緩衝層との間にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する電子注入層が形成されている場合、これらの金属が酸化されやすいので、電極層成膜時のスパッタリングにおける酸素導入またはターゲットからの酸素放出により上記の金属が酸化し、電荷注入機能が失われてしまう可能性があった。一方、本実施態様においては、有機EL層と第2電極層との間に半導体緩衝層が形成されていることから、第2電極層をスパッタリングにより成膜する場合であっても、スパッタ時のプラズマガスイオン、スパッタリングされた粒子および電離した電子等による有機EL層への衝撃を緩和することができるので、有機EL層の特性低下および有機EL素子の発光特性の低下を防止することができる。また、例えば発光層と半導体緩衝層との間に電子注入層が形成されている場合は、電子注入層が半導体緩衝層により保護されているので、電子注入層に含有される金属の酸化を防止することができる。これにより、有機EL素子の発光効率および耐久性を改善することができ、高品質の画像表示が可能な有機EL素子とすることが可能となる。
また、無機化合物は一般に電気抵抗率が低くないため、無機化合物のみからなる層を有機EL層と第2電極層との間に形成した場合、高電圧下(高電流密度域)における電流密度が増大せず、輝度が向上しないという不具合があった。一方、本実施態様に用いられる半導体緩衝層は、無機化合物と金属とを含有するものであり、この金属の電気抵抗率は無機化合物に比べて低いことから、電流密度−電圧特性の低下を防止することができる。これにより、例えば高電流密度下で駆動する有機EL素子(導電性高分子を用いた有機EL素子)に好適に用いることができる。
以下、このような有機EL素子の各構成について説明する。
(1)半導体緩衝層
まず、本実施態様に用いられる半導体緩衝層について説明する。本実施態様に用いられる半導体緩衝層は、有機EL層と第2電極層との間に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有するものである。
本実施態様における半導体緩衝層は、上述したように、第2電極層成膜時において有機EL層を保護する機能、および、有機EL層に電荷を輸送・注入する機能の2つの機能を有するものである。また、半導体緩衝層と発光層との間に電荷注入輸送層が形成されている場合、上記半導体緩衝層は、電荷注入輸送層を保護する機能、および、電荷注入輸送層に電荷を輸送・注入する機能も有するものである。本実施態様においては、有機EL層と第2電極層との間に半導体緩衝層を形成することにより、有機EL層への第2電極層成膜時の衝撃を緩和することができる。また、発光層と半導体緩衝層との間に電子注入層が形成されている場合は、この電子注入層に含まれる金属の酸化を防止することができる。さらに、半導体緩衝層が金属を含有することにより、電流密度−電圧特性の低下を抑制することができる。これにより、有機EL素子の発光効率および耐久性を改善することができる。
本実施態様に用いられる半導体緩衝層は、この半導体緩衝層の構成により4つの態様に分けることができる。すなわち、上記半導体緩衝層が、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層である場合(第1の態様)、上記半導体緩衝層が、無機化合物からなる無機層と金属からなる金属層とを有する場合であって、この金属層が無機層中あるいは無機層と第2電極層との間に形成されている場合(第2の態様)、上記半導体緩衝層が、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層と無機化合物からなる無機層とを有する場合(第3の態様)、および、上記半導体緩衝層が、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層と金属からなる金属層とを有する場合(第4の態様)である。
以下、このような半導体緩衝層の各態様について説明する。
(i)第1の態様
本実施態様に用いられる半導体緩衝層の第1の態様は、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層であるものである。本態様においては、混合半導体層中に金属が分散されていることから、混合半導体層の電気抵抗率を低くすることができ、電流密度−電圧特性の低下を抑制することが可能となる。
以下、このような混合半導体層の構成材料について説明する。
(無機化合物)
本態様に用いられる無機化合物は、そのバンドギャップが2.0eV以上であるものである。本態様に用いられる無機化合物としては、上述したような第2電極層成膜時の有機EL層または電荷注入輸送層への衝撃を軽減するような保護機能を有する層とすることが可能なものであれば特に限定されるものではない。また、上記無機化合物のバンドギャップとしては、2.0eV以上であればよいが、好ましくは2.4eV以上、特に2.6eV以上であることが好ましい。無機化合物のバンドギャップが上記範囲であることにより、混合半導体層の可視領域における光透過率を高めることができるからである。また、上記バンドギャップが小さすぎると、混合半導体層が着色する可能性があり、可視領域の光透過率を低下させるおそれがあるからである。一方、無機化合物のバンドギャップの上限値としては、バンドギャップが大きいほど光透過性が増すので特に限定はされないが、通常は30eV以下とする。
このような無機化合物としては、所定のバンドギャップを有する無機半導体化合物または光透過性を有する絶縁性化合物を挙げることができる。本態様においては、中でも、無機半導体化合物を用いることが好ましい。
上記無機半導体化合物としては、上述したように、第2電極層成膜時の有機EL層または電荷注入輸送層への衝撃を軽減するような保護機能を有する層とすることが可能なものであれば特に限定されるものではない。また、無機半導体化合物のバンドギャップとしては、2.0eV以上であればよいが、好ましくは2.4eV以上、中でも2.6eV以上であることが好ましい。無機半導体化合物のバンドギャップが上記範囲であることにより、混合半導体層の可視領域における光透過率を高めることができるからである。また、上記バンドギャップが小さすぎると、混合半導体層が着色する可能性があり、可視領域の光透過率を低下させるおそれがあるからである。一方、無機半導体化合物のバンドギャップの上限値としては、上述したように、バンドギャップが大きいほど光透過性が増すので特に限定はされないが、通常は8eV以下とする。
このような無機半導体化合物としては、例えば18族型元素周期律表の12族から16族までの元素から選択される少なくとも1種の元素を含有する化合物を挙げることができる。具体的には、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaN、GaS、Ga、GaP、GaSe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、AlSe、BN、BP、BAs、CdS、HgS、SiC等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。本態様においては、上記の中でも、ZnS、ZnSe、GaNおよびGaSから選択される少なくとも1種の化合物を用いることが好ましく、特にZnSまたはZnSeであることが好ましい。上記の化合物は、バンドギャップが大きく、透明であるからである。
また、光透過性を有する絶縁性化合物としては、上述したように、第2電極層成膜時の有機EL層または電荷注入輸送層への衝撃を軽減するような保護機能を有する層とすることが可能なものであれば特に限定されるものではない。また、絶縁性化合物のバンドギャップとしては、2.0eV以上であればよいが、絶縁性を示すことから通常は8eV以上のものが用いられる。また、絶縁性化合物のバンドギャップの上限値としては、上述したように、バンドギャップが大きいほど光透過性が増すので特に限定はされないが、通常は30eV以下とする。絶縁性化合物のバンドギャップが上記範囲であることにより、混合半導体層の可視領域における光透過率を高めることができるのである。
このような絶縁性化合物としては、例えば18族型元素周期律表の17族の元素から選択される少なくとも1種の元素を含有する金属化合物を挙げることができる。具体的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素または遷移元素のフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物等が挙げられる。さらに具体的には、LiF、NaF、KF、MgF、CaF、BaF、LaF、AlF、ZnF、CuF、LiCl、RbCl、MgCl、BeCl、NaBr、GeBr、NaI、KI等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。本態様においては、中でも、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素または遷移元素のフッ化物を用いることが好ましく、特にLiF、MgFまたはCaFを用いることが好ましい。
(金属)
本態様に用いられる金属としては、上述したような有機EL層に電荷を輸送・注入する機能を有するものであれば特に限定はされないが、電気抵抗率ρが1×10−5Ω・cm未満であることが好ましく、中でも3×10−6Ω・cm以下、特に1×10−6Ω・cm以下であることが好ましい。金属の電気抵抗率が上記範囲であることにより、混合半導体層の電気伝導性を高めることができるからである。
このような金属としては、例えばアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、遷移金属(Cu、Ag、Au、Cr、Fe、Mo、Mn、Ni、Ta、W、Pt、Ti、Os)、希土類金属(Sc、Y、Eu、Er、Yb)、およびAl、Ga、In、Zn等を挙げることができる。これらの金属は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本態様においては、上記の中でも、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Cu、Ag、Au、Alを用いることが好ましく、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いることが好ましい。金属としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いると、例えば後述するように、発光層と混合半導体層との間に電子注入層を形成する場合、この電子注入層は一般にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いて形成されることから、有機EL素子を作製するために使用する材料の種類を少なくすることができ、製造工程が簡便となるからである。また、例えば第2電極層が陰極である場合、アルカリ金属またはアルカリ土類金属は仕事関数の値が小さいので、これらの金属が有機EL層に直接接することにより良好な電子注入を行うことができるからである。一方、金属としてCu、Ag、Au、Alを用いると、これらの金属は仕事関数が4.0eV以上と大きいため、第2電極層が陽極である場合、この第2電極層から注入された正孔を発光層へ安定に注入することができるからである。
また、本態様において、上記金属は混合半導体層中に分散されていれば特に限定はされなく、金属が均一に分散されていても、不均一に分散されていてもよい。特に、上記金属がアルカリ金属またはアルカリ土類金属である場合は、有機EL層側に金属が多く偏在し、第2電極層側にはほとんど金属が存在しないことが好ましい。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、反応性が高い金属であることから酸化されやすく、アルカリ金属およびアルカリ土類金属が第2電極層側に多く存在すると、第2電極層成膜時における酸素導入またはターゲットからの酸素放出により容易に酸化されてしまい、有機EL素子の電流密度や輝度特性が低下する可能性からである。
上記金属の含有量としては、混合半導体層中に通常0.0001体積%〜90体積%の範囲内で設定することができ、好ましくは0.01体積%〜60体積%、中でも0.1体積%〜50体積%、特に1体積%〜20体積%の範囲内であることが好ましい。上記金属の含有量が多すぎると、混合半導体層の光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、上記金属の含有量が少なすぎると、混合半導体層の電気伝導性を高める効果が得られない可能性があるからである。
なお、上記金属の含有量は、X線光電子分光分析法(XPS)またはラザフォード後方散乱分析法(RBS)を用いて測定することができる。
また、混合半導体層中に含有される金属を、金属のみからなる層とした場合、この金属のみからなる層の厚みは100nm以下であることが好ましく、中でも1nm〜30nm、さらには1nm〜20nm、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。上記金属のみからなる層の厚みが厚すぎると、混合半導体層の光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、上記金属のみからなる層の厚みが薄すぎると、半導体緩衝層の導電性が低くなる可能性があるからである。
なお、上記金属のみからなる層の厚みは、混合半導体層中の金属の含有量と、混合半導体層の体積および面積とから算出することができる。この場合、
(金属のみからなる層の厚み)=(混合半導体層の体積)×(金属の含有量)÷(混合半導体層の面積)
となる。また、上記金属のみからなる層の厚みは、混合半導体層を蒸着する際の蒸着速度と蒸着時間とからも算出することができる。例えば混合半導体層を共蒸着する場合、
(金属のみからなる層の厚み)=(金属の蒸着速度)×(蒸着時間)
となる。
(半導体緩衝層)
本態様における半導体緩衝層としては、可視領域380〜780nmにおける平均光透過率が30%以上であることが好ましく、中でも50%以上であることが好ましい。これにより、第2電極層側から光を取出す場合であっても、光が遮蔽されることがないからである。なお、上記平均光透過率は、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製 UV−2200A)を用い、室温、大気中で測定した値とする。
また、上記半導体緩衝層の電気抵抗率は、第2電極層の電気抵抗率と有機EL層の電気抵抗率との間の値となることが好ましい。これにより、第2電極層から注入された電荷を有機EL層に効率的に注入することができるからである。具体的に、上記半導体緩衝層の電気抵抗率は1×10−4Ω・cm〜1×10Ω・cm、中でも1×10−4Ω・cm〜1×10Ω・cm、特に1×10−4Ω・cm〜10Ω・cmの範囲内であることが好ましい。なお、上記電気抵抗率は、ダイヤインスツルメンツLoresta−GP(MCP−T600)を用いて四探針法により測定した値とする。
上記半導体緩衝層の厚みとしては、上記平均光透過率および上記電気抵抗率を満たすような厚みであれば特に限定はされないが、具体的に1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも1nm〜100nm、特に10nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。半導体緩衝層の厚みが厚すぎると、光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、半導体緩衝層の厚みが薄すぎると、有機EL層または電荷注入輸送層を第2電極層成膜時の衝撃から保護する効果が得られない可能性があるからである。
本態様における半導体緩衝層の形成方法としては、有機EL層に影響を及ぼさない方法であれば特に限定はされなく、例えば真空蒸着法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることができるが、中でも真空蒸着法を用いることが好ましい。例えば半導体緩衝層と発光層との間に電子注入層が形成されている場合であっても、真空蒸着法では通常酸素導入が行われないため、半導体緩衝層形成時に電子注入層に含まれる金属が酸化されるおそれがないからである。このような真空蒸着法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、フラッシュ蒸着法等を挙げることができる。特に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法を用いた1源蒸着法、2源蒸着法または3源蒸着法が好ましい。一方、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法を用いる場合には、上述した理由から、酸素導入が行われないことが好ましい。この際、酸素ではなく、アルゴン等の希ガスや窒素等を導入すればよく、中でもアルゴンを導入することが好ましい。
(ii)第2の態様
本実施態様に用いられる半導体緩衝層の第2の態様は、無機化合物からなる無機層と、金属からなる金属層とを有するものであって、この金属層が無機層中あるいは無機層と第2電極層との間に形成されているものである。例えば図2において、半導体緩衝層4は、無機層14aと金属層14bと無機層14bとがこの順に積層された構成となっている。本態様においては、半導体緩衝層が金属からなる金属層を有することにより、半導体緩衝層全体としての電気抵抗率を低くすることができ、電流密度−電圧特性の低下を抑制することが可能となる。
本態様における無機層および金属層の形成位置としては、例えば図2に示すように金属層14bが、無機層14aに挟まれるように形成されていてもよく、図3に示すように金属層14bが、無機層14aと第2電極層5との間に形成されていてもよい。また、金属層が有機EL層と接しないような構成となっていればよく、複数の金属層および複数の無機層が積層されたものであってもよい。
以下、このような半導体緩衝層の各構成について説明する。
(無機層)
本態様に用いられる無機層は、無機化合物からなる層である。本態様においては無機化合物として、所定のバンドギャップを有する無機半導体化合物を用いることができる。なお、無機半導体化合物については、上記第1の態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記無機層の厚みとしては、半導体緩衝層全体としたときに第2電極層成膜時の衝撃から有機EL層を保護することができる厚みであれば特に限定されるものではない。例えば図2に示すように金属層14bを無機層14a間に挟んでいる場合、本態様においては金属層14bが有機EL層3と接しないように形成されることから、有機EL層3側に設けられた無機層14aは、その厚みを1nm〜500nm程度に設定することができる。
また、上記無機層の形成方法としては、有機EL層に影響を及ぼさない方法であれば特に限定はされなく、例えば真空蒸着法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることができるが、中でも真空蒸着法を用いることが好ましい。例えば半導体緩衝層と発光層との間に電子注入層が形成されている場合であっても、真空蒸着法では通常酸素導入が行われないため、無機層形成時に電子注入層に含まれる金属が酸化されるおそれがないからである。このような真空蒸着法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法等を挙げることができる。特に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法を用いた1源蒸着法、2源蒸着法または3源蒸着法が好ましい。一方、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法を用いる場合には、上述した理由から、酸素導入が行われないことが好ましい。この際、酸素ではなく、アルゴン等の希ガスや窒素等を導入すればよく、中でもアルゴンを導入することが好ましい。
(金属層)
本態様に用いられる金属層は、金属からなる層である。上記金属層に用いられる金属としては、半導体緩衝層全体としての電気抵抗率を下げることができるものであれば特に限定はされなく、上記第1の態様に記載したような電気抵抗率を有するものであることが好ましい。
本態様において、例えば図2に示すように金属層14bが無機層14aに挟まれている場合、用いられる金属としては、例えばアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、遷移金属(Cu、Ag、Au、Cr、Fe、Mo、Mn、Ni、Ta、W、Pt、Ti、Os)、希土類金属(Sc、Y、Eu、Er、Yb)、およびAl、Ga、In、Zn等を挙げることができる。これらの金属は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、例えば図3に示すように金属層14bが無機層14aと第2電極層5との間に形成されている場合、用いられる金属としては上述した金属を挙げることができるが、中でも、仕事関数が4.0〜5.5eV程度である金属を用いることが好ましい。このような金属としては、例えばAg、Au、Al、Cr、Cu、Fe、Mo、Mn、Ni、Ta、W等が挙げられる。また、これらの金属は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの金属は反応性が低く、第2電極層成膜時における酸素導入またはターゲットからの酸素放出により酸化されにくいため、有機EL素子の耐久性を高めることができる。
上記金属層の厚みは100nm以下であることが好ましく、中でも1nm〜30nm、さらには1nm〜20nm、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。上記金属層の厚みが厚すぎると、半導体緩衝層の光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、上記金属層の厚みが薄すぎると、半導体緩衝層の導電性が低くなる可能性があるからである。
また、上記金属層は、有機EL層に影響を及ぼさない方法であれば特に限定はされなく、例えば真空蒸着法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることができるが、中でも真空蒸着法を用いることが好ましい。例えば半導体緩衝層と発光層との間に電子注入層が形成されている場合であっても、真空蒸着法では通常酸素導入が行われないため、金属層形成時に電子注入層に含まれる金属が酸化されるおそれがないからである。このような真空蒸着法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法等を挙げることができる。特に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法を用いた1源蒸着法、2源蒸着法または3源蒸着法が好ましい。一方、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法を用いる場合には、上述した理由から、酸素導入が行われないことが好ましい。この際、酸素ではなく、アルゴン等の希ガスや窒素等を導入すればよく、中でもアルゴンを導入することが好ましい。
なお、半導体緩衝層のその他の点については、上記第1の態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(iii)第3の態様
本実施態様に用いられる半導体緩衝層の第3の態様は、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層と、無機化合物からなる無機層とを有するものである。本態様においては、半導体緩衝層を構成する混合半導体層が無機化合物中に金属が分散されたものであることから、電流密度−電圧特性の低下を抑制することが可能となる。
本態様における混合半導体層および無機層の形成位置としては、特に限定されるものではなく、有機EL層側から混合半導体層および無機層の順に積層されていてもよく、無機層および混合半導体層の順に積層されていてもよい。また、混合半導体層および無機層が複数積層されていてもよい。
なお、混合半導体層および半導体緩衝層のその他の点については上記第1の態様に記載したものと同様であり、無機層については上記第2の態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(iv)第4の態様
本実施態様に用いられる半導体緩衝層の第4の態様は、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層と、金属からなる金属層とを有するものである。本態様においては、半導体緩衝層を構成する混合半導体層が無機化合物中に金属が分散されたものであり、また、半導体緩衝層が金属からなる金属層を有することにより、半導体緩衝層全体としての電気抵抗率を低くすることができ、電流密度−電圧特性の低下を抑制することが可能となる。
本態様における混合半導体層および金属層の形成位置としては、特に限定されるものではなく、有機EL層側から混合半導体層および金属層の順に積層されていてもよく、金属層および混合半導体層の順に積層されていてもよい。また、混合半導体層および金属層が複数積層されていてもよい。
以下、このような半導体緩衝層の各構成について説明する。なお、混合半導体層については上記第1の態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(金属層)
本態様に用いられる金属層は、金属からなる層である。上記金属層に用いられる金属としては、半導体緩衝層全体としての電気抵抗率を下げることができるものであれば特に限定はされなく、上記第1の態様に記載したような電気抵抗率を有するものであることが好ましい。
本態様における金属層に用いられる金属としては、例えばアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、遷移金属(Cu、Ag、Au、Cr、Fe、Mo、Mn、Ni、Ta、W、Pt、Ti、Os)、希土類金属(Sc、Y、Eu、Er、Yb)、およびAl、Ga、In、Zn等を挙げることができる。これらの金属は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
例えば金属層が混合半導体層に挟まれて形成されている場合、上記金属としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であることが好ましい。例えば後述するように、有機EL層と半導体緩衝層との間に電子注入層を形成する場合、この電子注入層は一般にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いて形成されることから、有機EL素子を作製するために使用する材料の種類を少なくすることができ、製造工程が簡便となるからである。
また、例えば金属層が第2電極層と接するように形成されている場合、上記金属としては、仕事関数が4.0〜5.5eV程度のものを用いることが好ましい。このような金属としては、例えばAg、Au、Al、Cr、Cu、Fe、Mo、Mn、Ni、Ta、W等が挙げられる。また、これらの金属は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの金属は反応性が低く、第2電極層成膜時における酸素導入またはターゲットからの酸素放出により酸化されにくいため、有機EL素子の耐久性を高めることができる。
さらに、例えば金属層が有機EL層と接するように形成されている場合は、後述する第2電極層の種類(陽極、陰極)によって好ましい金属が異なるものとなる。第2電極層が陰極である場合、上記金属としてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であることが好ましい。これにより、有機EL層へ安定して電子を注入することができるからである。また、上述したように有機EL層と半導体緩衝層との間に電子注入層を形成する場合、この電子注入層は一般にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いて形成されることから、有機EL素子を作製するために使用する材料の種類を少なくすることができ、製造工程が簡便となるからである。一方、第2電極層が陽極である場合、上記金属としては仕事関数が4.0〜5.5eV程度であることが好ましく、具体的にはAg、Au、Al、Cr、Cu、Fe、Mo、Mn、Ni、Ta、W等を用いることが好ましい。これにより、有機EL層へ安定して正孔を注入することができるからである。
なお、金属層のその他の点については、上記第2の態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、半導体緩衝層のその他の点については上記第1の態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(v)その他
本実施態様における半導体緩衝層は、上述した構成の他に、混合半導体層、金属層および無機層が積層されたものであってもよい。この場合、混合半導体層、金属層および無機層の形成位置としては特に限定されるものではない。例えば有機EL層側から混合半導体層、金属層および無機層の順に積層されたもの、無機層、混合半導体層および金属層の順に積層されたものなどが挙げられる。
また、本実施態様に用いられる半導体緩衝層においては、無機層および金属層が積層されたものよりも混合半導体層であるものの方が、半導体緩衝層中全域に金属が拡散(存在)しているので、電気伝導性が高くなる。
(2)有機EL層
次に、本実施態様に用いられる有機EL層について説明する。本実施態様に用いられる有機EL層は、上記半導体緩衝層と後述する第1電極層との間に形成されるものである。
本実施態様における有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布による湿式法で有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
発光層以外に有機EL層内に形成される有機層としては、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層を挙げることができる。さらに、その他の有機層としては、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を挙げることができるが、通常これらは上記電荷注入層に電荷輸送の機能を付与することにより、電荷注入層と一体化されて形成される場合が多い。その他、有機EL層内に形成される有機層としては、キャリアブロック層のような正孔あるいは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
以下、このような有機EL層において、必須の構成である発光層について説明する。
(i)発光層
本実施態様に用いられる発光層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有するものである。上記発光層を形成する材料としては、通常、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、または高分子系発光材料を挙げることができる。
色素系発光材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
また、金属錯体系発光材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)を用いることができる。
さらに、高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記色素系発光材料および金属錯体系発光材料を高分子化したものも挙げられる。
本実施態様に用いられる発光材料としては、上記の中でも、金属錯体系発光材料または高分子系発光材料であることが好ましく、さらには高分子系発光材料であることが好ましい。また、高分子系発光材料の中でも、π共役構造をもつ導電性高分子であることが好ましい。このようなπ共役構造をもつ導電性高分子としては、上述したようなポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。
上記発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定はされなく、例えば1nm〜200nm程度とすることができる。
また、上記発光層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で蛍光発光または燐光発光するドーパントを添加してもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
また、本実施態様においては、異なる色を発光する発光層を組み合わせることが可能であり、フルカラーおよびマルチカラーのディスプレイを作製する際には、パターニングを必要とする。
上記発光層の形成方法としては、高精細なパターニングが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、またはスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、および自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができる。中でも、蒸着法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることが好ましい。また、発光層をパターニングする際には、異なる発光色となる画素のマスキング法により塗り分けや蒸着を行ってもよく、または発光層間に隔壁を形成してもよい。このような隔壁を形成する材料としては、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等を用いることができる。さらに、これらの隔壁を形成する材料の表面エネルギー(濡れ性)を変化させる処理を行ってもよい。
(3)第1電極層
次に、本実施態様に用いられる第1電極層について説明する。本実施態様に用いられる第1電極層は、上記有機EL層と後述する基材との間に形成されるものであり、後述する第2電極層に対向する電極として形成されるものである。上記第1電極層は、陽極であっても陰極であってもよく、また、透明または半透明であっても透明または半透明でなくてもよい。例えば基材側から光を取出す場合には、第1電極層が透明または半透明であることが要求され、第2電極層側から光を取出す場合は、第1電極層は透明または半透明でなくてもよい。また、基材側および第2電極層側の両側から光を取出す場合は、第1電極層および第2電極層の両方が透明または半透明であることが要求される。
上記第1電極層の形成材料としては、導電性材料であれば特に限定はされなく、例えばAu、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属、これらの金属の酸化物、およびAlLi、AlCa、AlMg等のAl合金、MgAg等のMg合金、Ni合金、Cr合金、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属の合金等の合金などを挙げることができる。これらの導電性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を用いて積層させてもよい。さらに、上記導電性材料としては、In−Sn−O、In−Zn−O、In−O、Zn−O、Zn−O−Al、Zn−Sn−O等の導電性無機酸化物、金属ドープされたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体等の導電性高分子、α−Si、α−SiCなどを用いることもできる。
本実施態様において、第1電極層は陽極であっても陰極であってもよいが、通常は第1電極層が陽極として形成される。上記第1電極層が陽極として形成される場合は、正孔が注入しやすいように、仕事関数の値の大きい導電性材料を用いることが好ましい。中でも、仕事関数が4.5eV以上の金属、このような金属の合金、および上述した導電性無機酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。上記金属の仕事関数が4.5eV未満であると、正孔注入効率が低下する場合があるからである。
また、第1電極層の仕事関数の値を大きくするために、UVオゾン処理、酸素プラズマ処理、アルゴンプラズマ処理などを行ってもよい。例えば、金属からなる第1電極層に酸素プラズマ処理を行い、最表面の金属のみを酸化させると、仕事関数の値が大きくなるので正孔注入効率を向上させることができる。この場合、酸素プラズマ処理を行うのは第1電極層の最表面のみである。これは、酸化された金属からなる層の厚みが厚くなると絶縁性となるからである。また、第1電極層に用いた金属が自然酸化されている場合は、アルゴンプラズマ処理を行うことにより、表面に存在する酸化された金属を除去することができるので、正孔注入効率を向上させることができる。
さらに、有機EL素子の短絡やリーク電流を防止するために、第1電極層に鏡面研磨処理を行ってもよい。鏡面研磨処理では、第1電極層を平坦化することができるため、有機EL素子の短絡やリーク電流を防止することができるのである。
また、上記第1電極層が陰極として形成される場合は、電子が注入しやすいように、仕事関数の値の小さい導電性材料を用いることが好ましい。仕事関数の値の小さい導電性材料としては、陽極に用いられる導電性材料より仕事関数の値が小さいものであればよいが、上述したように、上記金属の仕事関数が4.5eV未満であると酸化されやすくなることから、仕事関数が4.2eV以上の金属、このような金属の合金、および上述した導電性無機酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
上記第1電極層の固有抵抗値としては、1×10−2Ω・cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5×10−4Ω・cm以下である。第1電極層の固有抵抗値が上記範囲であることにより、電極抵抗による電力の回路損失を防ぐことができるからである。なお、上記固有抵抗値は、ダイヤインスツルメンツLoresta−GP(MCP−T600)を用いて四探針法により測定した値とする。
本実施態様において、基材側から光を取出す場合、第1電極層は透明または半透明であることが要求されるが、具体的な光透過率としては、可視領域380〜780nmにおける平均光透過率が50%以上であることが好ましく、中でも80%以上、特に85%以上であることが好ましい。
また、上記第1電極層の厚みとしては、上記固有抵抗値および上記平均光透過率を満たすような厚みであれば特に限定はされなく、用いる導電性材料によっても異なるが、例えば40nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。第1電極層の厚みが薄すぎると、抵抗が高くなる場合があり、また、第1電極層の厚みが厚すぎると、例えばパターン状に形成された第1電極層の端部に存在する段差により、有機EL層、半導体緩衝層または第2電極層等に切れや断線が発生したり、第1電極層と第2電極層との短絡が生じたりする可能性があるからである。
上記第1電極層の形成方法としては、スパッタリング法、真空加熱蒸着法、EB蒸着法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。
(4)第2電極層
次に、本実施態様に用いられる第2電極層について説明する。本実施態様に用いられる第2電極層は、上記半導体緩衝層上に形成されるものであり、上記第1電極層に対向する電極として形成されるものである。
本実施態様に用いられる第2電極層は、陽極であっても陰極であってもよく、また、透明または半透明であっても透明または半透明でなくてもよい。例えば第2電極層側から光を取出す場合には、第2電極層は透明または半透明であることが要求されるが、基材側から光を取出す場合は、第2電極層は透明または半透明でなくてもよい。また、基材側および第2電極層側の両側から光を取出す場合は、第1電極層および第2電極層の両方が透明または半透明であることが要求される。
なお、第2電極層の形成材料、固有抵抗値、および平均光透過率については、上記第1電極層の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記第2電極層の厚みとしては、上記固有抵抗値および上記平均光透過率を満たすような厚みであれば特に限定はされなく、用いる導電性材料によっても異なるが、例えば10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。第2電極層の厚みが薄すぎると、導電性が不十分となる可能性があるからである。逆に、第2電極層の厚みが厚すぎると、光透過性が不十分となり、また、有機EL素子の製造工程中あるいは製造後において有機EL素子を変形させた際に、クラック等の欠陥が発生しやすくなる可能性があるからである。
また、上記第2電極層の形成方法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム法等の真空成膜法を挙げることができる。本実施態様においては、有機EL層と第2電極層との間に半導体緩衝層が形成されていることから、第2電極層成膜時の衝撃から有機EL層を保護することができる。また、有機EL層が反応性の高い金属を含有する場合であっても、第2電極層成膜時の酸素導入またはターゲットからの酸素放出による上記金属の酸化が半導体緩衝層により阻止されるので、有機EL層内の発光層への電荷注入特性の劣化を防止することができる。
(5)基材
次に、本実施態様に用いられる基材について説明する。本実施態様に用いられる基材の形成材料としては、自己支持性を有する材料であれば特に限定はされない。また、基材側から光を取出す場合は透明である必要があるが、第2電極層側から光を取出す場合は透明性を有していなくてもよい。
このような基材に用いられる材料としては、例えば、石英、ガラス、シリコンウェハ、TFT(薄膜トランジスタ)が形成されたガラス等の無機材料、またはポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の高分子材料を挙げることができる。上記の中でも、石英、ガラス、シリコンウェハ、またはスーパーエンジニアリングプラスチックであるポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いることが好ましい。これらの材料は200℃以上の耐熱性を有しており、製造工程での基材温度を高くすることができるからである。特にTFTを用いたアクティブ駆動表示装置を製造する場合、製造工程中に高温となるので、上記の材料を好適に用いることができる。
また、基材に上述した高分子材料を用いた場合、この高分子材料から発生するガスによって有機EL層が劣化する可能性があることから、基材と第1電極層との間にガスバリア層を設けることが好ましい。このようなガスバリア層としては、シリコン酸化物やシリコン窒化物等が挙げられる。
さらに、基材表面に光取出し効率を高めるようなマイクロレンズ加工等を施したものも用いることができる。この場合、マイクロレンズ加工等が施されている面とは反対側の面に第1電極層や有機EL層が形成される。
上記基材の厚みとしては、用いる材料および有機EL素子の用途により適宜選択されるが、例えば0.005mm〜5mm程度とすることができる。
(6)電荷注入輸送層
本実施態様においては、例えば図4に示すように、上記有機EL層3中の発光層と第1電極層2との間、あるいは上記有機EL層3中の発光層と半導体緩衝層4との間に電荷注入輸送層6を形成することができる。ここでいう電荷注入輸送層とは、上記発光層に第1電極層または第2電極層からの電荷を安定に輸送する機能を有するものであり、このような電荷注入輸送層を発光層と第1電極層との間あるいは発光層と半導体緩衝層との間に設けることにより、発光層への電荷の注入が安定化し、発光効率を高めることができる。
このような電荷注入輸送層としては、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送する正孔注入輸送層、さらに、同様に陰極から注入された電子を発光層内へ輸送する電子注入輸送層とがある。以下、正孔注入輸送層および電子注入輸送層について説明する。
(i)正孔注入輸送層
本実施態様に用いられる正孔注入輸送層としては、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送することが可能である層であれば特に限定されない。例えば、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ注入する機能を有する正孔注入層、および、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送する機能を有する正孔輸送層のいずれか一方を有する場合であってもよく、正孔注入層および正孔輸送層の両方を有する場合であってもよく、または、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単層からなる場合であってもよい。
また、本実施態様において、正孔注入輸送層は陽極となる電極層側に形成されるものである。例えば第1電極層が陽極である場合、正孔注入輸送層は発光層と第1電極層との間に形成されるものであり、また、第2電極層が陽極である場合、正孔注入輸送層は発光層と半導体緩衝層との間に形成されるものである。
このような正孔注入輸送層の形成材料としては、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定はされない。例えば、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムなどの酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどの誘導体等を挙げることができる。具体的には、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等を用いることができる。
上記正孔注入層の厚みとしては、第1電極層または第2電極層から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されないが、具体的には、0.5nm〜300nmの範囲内、中でも10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
(ii)電子注入輸送層
次に、本実施態様に用いられる電子注入輸送層について説明する。本実施態様に用いられる電子注入輸送層としては、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能である層であれば特に限定はされない。例えば、陰極から注入された電子を安定に発光層内へ注入する機能を有する電子注入層、および、電子を発光層内へ輸送する機能を有する電子輸送層のいずれか一方を有する場合であってもよく、電子注入層および電子輸送層の両方を有する場合であっても、または、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単層からなる場合であってもよい。
また、本実施態様において、電子注入輸送層は陰極となる電極層側に形成されるものである。例えば第1電極層が陰極である場合、電子注入輸送層は発光層と第1電極層との間に形成されるものであり、また、第2電極層が陰極である場合、電子注入輸送層は発光層と半導体緩衝層との間に形成されるものである。
本実施態様に用いられる電子注入層の形成材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定はされない。例えば、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミニウム、ストロンチウム、カルシウム、リチウム、セシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化セシウム、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のようにアルカリ金属またはアルカリ土類金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物、アルカリ金属の有機錯体等を挙げることができる。中でも、アルカリ土類金属のフッ化物を用いることが好ましい。アルカリ土類金属のフッ化物は、有機EL層の安定性および寿命を向上させることができるからである。これは、アルカリ土類金属のフッ化物が、上述したアルカリ金属の化合物やアルカリ土類金属の酸化物などに比べて水との反応性が低く、電子注入層の成膜中あるいは成膜後における吸水が少ないためである。さらに、アルカリ土類金属のフッ化物が、上述したアルカリ金属の化合物に比べて融点が高く耐熱安定性に優れるためである。
従来では、例えば電子注入層としてアルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類金属を用い、電子注入層が発光層と第2電極層との間に形成されている場合、上記の金属が酸化されやすいため、第2電極層成膜時における酸素導入またはターゲットからの酸素放出により電子注入層に用いた金属が酸化し、電子注入機能が失われる場合があった。一方、本実施態様においては、発光層と第2電極層との間に半導体緩衝層が形成されているため、発光層と半導体緩衝層との間に電子注入層が形成されている場合であっても、第2電極層成膜時において電子注入層が半導体緩衝層により保護されるので、電子注入層に用いた金属の酸化を防止することができる。
上記電子注入層の厚みとしては、上述したアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物等が絶縁性であることから、0.2nm〜10nm程度の範囲内であることが好ましい。
また、陰極としてIn−Zn−Oのような透明な導電性材料を用いた場合には、これらの仕事関数が4.6eV以上であることから、4.0eV以下の仕事関数を有する材料を用いて電子注入層を形成することが好ましい。低駆動電圧下では仕事関数が4.6eV以上のIn−Zn−Oからなる陰極から発光層へ直接電子を注入することは困難であるが、陰極と発光層との間に4.0eV以下の仕事関数を有する電子注入層を設けることにより、電子の注入が容易となるからである。このような4.0eV以下の仕事関数を有する材料としては、例えばBa、Ca、Li、Cs、Mg等が挙げられる。このような材料により電子注入層を形成した場合、電子注入層の厚みは、0.2nm〜50nm、中でも0.2nm〜20nmの範囲内とすることが好ましい。この場合、陰極として透明な導電性材料を用いているので陰極側から光を取出すことが可能であり、陰極側から光を取出す際には、電子注入層にも透明性が要求されるからである。電子注入層の厚みが厚すぎると、透明性が低下するおそれがある。
本実施態様に用いられる電子輸送層の形成材料としては、陰極からまたは上記電子注入層から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な材料であれば特に限定されない。例えば、電子輸送性の有機材料として、BCP(バソキュプロン)、Bpehn(バソフェナントロリン)、フェナントロリン誘導体、またはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等を挙げることができる。
また、本実施態様に用いられる電子注入輸送層が、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単層からなる場合には、電子輸送性の有機材料にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属をドープした金属ドープ層を用いることができる。上記電子輸送性の有機材料としては、例えばバソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(Bphen)等を挙げることができ、ドープする金属としては、Li、Cs、Ba、Sr等が挙げられる。上記金属ドープ層における電子輸送性の有機材料と金属とモル比率は、1:1〜3の範囲内、中でも1:1〜2の範囲内であることが好ましい。このような金属ドープ層の厚みとしては、5nm〜500nmの範囲内、中でも10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。金属ドープ層は電子移動度が大きく、かつ、光透過性が金属単体に比べて高いため、上記電子注入層と比較して厚みを厚くすることができる。
(iii)その他
本実施態様においては、上述した半導体緩衝層の態様(第1の態様〜第4の態様)、半導体緩衝層中に含有される金属の種類、および第2電極層の種類(陽極、陰極)により、電荷注入輸送層を形成することが好ましい場合がある。以下、半導体緩衝層の態様ごとに説明する。
(半導体緩衝層が第1の態様である場合)
本態様は、半導体緩衝層が混合半導体層である場合である。
本態様において、上記第2電極層が陰極である場合、上記混合半導体中に含有される金属として仕事関数が4.0eV以上であるCu、Ag、Au、Al等を用いると、混合半導体層と発光層との界面におけるエネルギー障壁が高くなり、低電圧下では混合半導体層から発光層へ直接電子を注入することが困難となる場合がある。このため、上記第2電極層が陰極であり、上記混合半導体層中に含有される金属の仕事関数が4.0eV以上である場合は、混合半導体層と発光層との間に電子注入輸送層を設けることが好ましい。この際、第2電極層側から光を取出す場合は、上記電子注入輸送層は、十分な光透過性を有することが好ましい。
一方、上記混合半導体中に含有される金属としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いると、これらの金属は仕事関数が4.0eV以下と小さいため、第2電極層から注入された電子を発光層へ安定に注入することができる。このため、上記第2電極層が陰極であり、上記混合半導体層中に含有される金属がアルカリ金属またはアルカリ土類金属である場合は、混合半導体層と発光層との間に電子注入輸送層を設けなくてもよい。
また、本態様において、上記第2電極層が陽極である場合、上記混合半導体層中に含有される金属としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いると、これらの金属は仕事関数が4.0eV以下と小さいため、混合半導体層と発光層との界面におけるエネルギー障壁が高くなり、低電圧下では混合半導体層から発光層へ直接正孔を注入することが困難となる場合がある。このため、上記第2電極層が陽極であり、上記混合半導体層中に含有される金属がアルカリ金属またはアルカリ土類金属である場合は、混合半導体層と発光層との間に正孔注入輸送層を設けることが好ましい。この際、第2電極層側から光を取出す場合は、上記正孔注入輸送層は、十分な光透過性を有することが好ましい。
一方、上記混合半導体層中に含有される金属として仕事関数が4.0eV以上であるCu、Ag、Au、Al等を用いると、第2電極層から注入された正孔を発光層へ安定に注入することができる。このため、上記第2電極層が陽極であり、上記混合半導体層中に含有される金属の仕事関数が4.0eV以上である場合は、混合半導体層と発光層との間に正孔注入輸送層を設けなくてもよい。
(半導体緩衝層が第2の態様である場合)
本態様は、半導体緩衝層が無機層と金属層とを有する場合である。本態様においては、発光層と半導体緩衝層との間に電荷注入層を設けることが好ましい。この場合、金属層が有機EL層と接しないように形成されているので、電荷の注入が不十分となる可能性があるが、発光層と半導体緩衝層との間に電荷注入層を設けることにより、発光層に電荷を効率的に注入することができるからである。この際、第2電極層側から光を取出す場合は、上記電荷注入輸送層は、十分な光透過性を有することが好ましい。
(半導体緩衝層が第3の態様である場合)
本態様は、半導体緩衝層が混合半導体層と無機層とを有する場合である。
本態様においては、無機層が有機EL層と接するように形成されている場合、発光層と無機層との間に電荷注入層を設けることが好ましい。この場合、混合半導体層中に含有される金属が有機EL層と接しないので、電荷の注入が不十分となる可能性があるが、発光層と無機層との間に電荷注入層を設けることにより、発光層に電荷を効率的に注入することができるからである。この際、第2電極層側から光を取出す場合は、上記電荷注入輸送層は、十分な光透過性を有することが好ましい。
また、本態様において、混合半導体層が有機EL層と接するように形成されている場合であって、第2電極層が陰極であり、混合半導体層中に含有される金属がアルカリ金属またはアルカリ土類金属である場合は、混合半導体層と発光層との間に電子注入輸送層を設けなくてもよい。これらの金属は仕事関数が4.0eV以下と小さいため、第2電極層から注入された電子を発光層へ安定に注入することができるからである。
さらに、本態様において、混合半導体層が有機EL層と接するように形成されている場合であって、第2電極層が陽極であり、混合半導体層中に含有される金属が上述したようなCu、Ag、Au、Al等である場合は、混合半導体層と発光層との間に正孔注入輸送層を設けなくてもよい。これらの金属は仕事関数が4.0eV以上と大きいため、第2電極層から注入された正孔を発光層へ安定に注入することができるからである。
(半導体緩衝層が第4の態様である場合)
本態様は、半導体緩衝層が混合半導体層と金属層とを有する場合である。
本態様において、第2電極層が陰極であり、混合半導体層および金属層のうちの有機EL層と接している層中に含有される金属がアルカリ金属またはアルカリ土類金属である場合は、半導体緩衝層と発光層との間に電子注入輸送層を設けなくてもよい。これらの金属は仕事関数が4.0eV以下と小さいため、第2電極層から注入された電子を有機EL層へ安定に注入することができるからである。
さらに、本態様において、第2電極層が陽極であり、混合半導体層および金属層のうちの有機EL層と接している層中に含有される金属が、仕事関数が4.0eV以上であるCu、Ag、Au、Al等である場合は、半導体緩衝層と発光層との間に正孔注入輸送層を設けなくてもよい。第2電極層から注入された正孔を有機EL層へ安定に注入することができるからである。
(7)その他
本実施態様においては、第2電極層上にカラーフィルタ層および/または色変換層を形成してもよい。これにより、有機EL層中の発光層の各色の光を色補正して色純度を高めることができる。
上記カラーフィルタ層は、例えば赤色着色層、緑色着色層および青色着色層とすることができ、各カラーフィルタ層はアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系等の顔料の1種または2種以上を感光性樹脂に分散して調製した感光性樹脂組成物を用いて形成することができる。
また、上記色変換層は、例えば赤色変換層、緑色変換層および青色変換層とすることができ、各色変換層は所望の蛍光色素と樹脂とを分散または可溶化させた塗工液をスピンコート法、ロールコート法、キャストコート法等により塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィ法によりパターニングする方法などを用いて形成することができる。
2.第2実施態様
次に、本発明の有機EL素子の第2実施態様について説明する。本発明の有機EL素子の第2実施態様は、基材と、上記基材上に形成された電極層と、上記電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機EL層と、上記有機EL層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体電極層とを有することを特徴とするものである。
本実施態様の有機EL素子について図面を参照しながら説明する。図5は、本実施態様の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図5において、有機EL素子は、基材21と、上記基材21上に形成された電極層22と、上記電極層22上に形成され、少なくとも発光層を有する有機EL層23と、上記有機EL層23上に形成された電子注入層26と、上記電子注入層26上に形成された半導体電極層24とを有している。
本実施態様によれば、半導体電極層は例えば真空蒸着法により成膜されるものであるので、半導体電極層形成時に有機EL層は衝撃を受けることがなく、有機EL素子の発光特性の低下を回避することができる。また、発光層と半導体電極層との間に電子注入層が形成されている場合であっても、真空蒸着法では通常酸素導入が行われないため、電子注入層に含有される金属の酸化を回避することができる。
以下、このような有機EL素子の各構成について説明する。なお、有機EL層および基材については、上記第1実施態様に記載したものと同様であり、また、電極層については、上記第1実施態様に記載した第1電極層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(1)半導体電極層
まず、本実施態様に用いられる半導体電極層について説明する。本実施態様に用いられる半導体電極層は、有機EL層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有するものである。また、上記半導体電極層は、電極層に対向する電極として形成されるものである。本実施態様に用いられる半導体電極層は、陽極であっても陰極であってもよく、また、透明または半透明であっても透明または半透明でなくてもよい。例えば半導体電極層側から光を取出す場合は、半導体電極層が透明または半透明であることが要求され、基材側から光を取出す場合には、半導体電極層は透明または半透明でなくてもよい。また、基材側および半導体電極層側の両側から光を取出す場合は、半導体電極層および電極層の両方が透明または半透明であることが要求される。
本実施態様に用いられる半導体電極層は、この半導体電極層の構成により4つの態様に分けることができる。すなわち、上記半導体電極層が、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層である場合(第5の態様)、上記半導体電極層が、無機化合物からなる無機層と金属からなる金属層とを有する場合であって、この金属層が無機層中あるいは有機EL層が形成されている面と反対の面に形成されている場合(第6の態様)、上記半導体電極層が、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層と無機化合物からなる無機層とを有する場合(第7の態様)、および、上記半導体電極層が、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層と金属からなる金属層とを有する場合(第8の態様)である。
以下、このような半導体電極層の各態様について説明する。
(i)第5の態様
本実施態様に用いられる半導体電極層の第5の態様は、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層であるものである。
以下、このような混合半導体層の構成材料について説明する。
(無機化合物)
本態様に用いられる無機化合物は、そのバンドギャップが2.0eV以上であるものである。本態様に用いられる無機化合物としては、電極としての機能を有する層とすることが可能なものであれば特に限定はされなく、上述した「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第1の態様の欄に記載したものと同様のものを用いることができる。また、本態様においては、中でも、ZnS、ZnSe、GaN、およびGaSから選択される少なくとも1種の無機半導体化合物を用いることが好ましい。
(金属)
本態様に用いられる金属としては、電極としての機能を有する層とすることが可能なものであれば特に限定はされないが、酸化されにくく、かつ、仕事関数が4.0eV以上である金属を用いることが好ましい。このような金属としては、例えばAg、Al、Au、Be、Co、Cr、Cu、Ga、Fe、In、Ir、Mn、Mo、Nb、Ni、Os、Pb、Pt、Re、Ru、Sb、Sn、Ta、Ti、およびWを挙げることができる。これらの金属は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本態様においては、中でも、仕事関数が4.2eV以上である金属を用いることが好ましく、具体的にはAg、Al、Au、Be、Co、Cr、Cu、Ga、Fe、Ir、Mo、Nb、Ni、Os、Pb、Pt、Re、Ru、Sb、Sn、W等が好ましく用いられる。
また、混合半導体層中に含有される金属を、金属のみからなる層とした場合、この金属のみからなる層の厚みは100nm以下であることが好ましく、中でも1nm〜50nm、さらには1nm〜30nm、特に1nm〜20nmの範囲内であることが好ましい。上記金属のみからなる層の厚みが厚すぎると、混合半導体層の光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、上記金属のみからなる層の厚みが薄すぎると、半導体緩衝層の導電性が低くなる可能性があるからである。なお、上記金属のみからなる層の厚みは、上述した第1実施態様に記載した方法により算出することができる。
(半導体電極層)
本態様における半導体電極層の厚みとしては、所定の平均光透過率および電気抵抗率を満たすような厚みであれば特に限定はされないが、具体的に1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも10nm〜200nm、特に10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。半導体電極層の厚みが厚すぎると、光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、半導体電極層の厚みが薄すぎると、電極としての機能が得られない可能性があるからである。
なお、半導体電極層の平均光透過率、電気抵抗率、および形成方法等ついては、上述した「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第1の態様の欄に記載した半導体緩衝層のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(ii)第6の態様
本実施態様に用いられる半導体電極層の第6の態様は、無機化合物からなる無機層と、金属からなる金属層とを有するものであって、この金属層が無機層中あるいは有機EL層が形成されている面と反対の面に形成されているものである。
本態様における無機層および金属層の形成位置としては、例えば図6に示すように金属層34bが、無機層34aに挟まれるように形成されていてもよく、図7に示すように金属層34bが、無機層34a上に形成されている、すなわち有機EL層23が形成されている面と反対の面に形成されていてもよい。また、金属層が有機EL層と接しないような構成となっていればよいことから、複数の金属層および複数の無機層が積層されたものであってもよい。
また、本態様における金属層の厚みとしては、100nm以下であることが好ましく、中でも1nm〜50nm、さらには1nm〜30nm、特に1nm〜20nmの範囲内であることが好ましい。上記金属層の厚みが厚すぎると、半導体電極層の光透過率が低下する可能性があるからである。逆に、上記金属層の厚みが薄すぎると、半導体電極層の導電性が低くなる可能性があるからである。
なお、金属層のその他の点、および無機層については、上述した「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第2の態様の欄に記載したものと同様であり、また、半導体電極層の平均光透過率や電気抵抗率等については、「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第1の態様の欄に記載した半導体緩衝層のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。さらに、半導体電極層の厚み、および好ましく用いられる無機化合物および金属については、上記第5の態様と同様である。
(iii)第7の態様
本実施態様に用いられる半導体電極層の第7の態様は、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層と、無機化合物からなる無機層とを有するものである。
本態様における混合半導体層および無機層の形成位置としては、特に限定されるものではなく、有機EL層側から混合半導体層および無機層の順に積層されていてもよく、無機層および混合半導体層の順に積層されていてもよい。また、混合半導体層および無機層が複数積層されていてもよい。
なお、混合半導体層については、上述した「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第1の態様の欄に記載したものと同様であり、無機層については、上述した「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第2の態様の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、半導体電極層の平均光透過率や電気抵抗率等については、上述した「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第1の態様の欄に記載した半導体緩衝層のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。さらに、半導体電極層の厚み、および好ましく用いられる無機化合物および金属については、上記第5の態様と同様である。
(iv)第8の態様
本実施態様に用いられる半導体電極層の第8の態様は、無機化合物中に金属が分散された混合半導体層と、金属からなる金属層とを有するものである。
本態様における混合半導体層および金属層の形成位置としては、特に限定されるものではなく、有機EL層側から混合半導体層および金属層の順に積層されていてもよく、金属層および混合半導体層の順に積層されていてもよい。また、混合半導体層および金属層が複数積層されていてもよい。
なお、混合半導体層については、上述した「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第1の態様の欄に記載したものと同様であり、金属層については、上述した「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第4の態様の欄に記載したものと同様であり、また、半導体電極層の光透過率や電気抵抗率等については、「1.第1実施態様 (1)半導体緩衝層」の第1の態様の欄に記載した半導体緩衝層のものと同様であるので、ここでの説明は省略する。さらに、半導体電極層の厚み、金属層の厚み、および好ましく用いられる無機化合物および金属については、上記第5の態様と同様である。
(v)その他
本実施態様における半導体電極層は、上述した構成の他に、混合半導体層、金属層および無機層が積層されたものであってもよい。この場合、混合半導体層、金属層および無機層の形成位置としては特に限定されるものではない。例えば有機EL層側から混合半導体層、金属層および無機層の順に積層されたもの、無機層、混合半導体層および金属層の順に積層されたものなどが挙げられる。
(6)電荷注入輸送層
本実施態様においては、例えば図8に示すように、上記有機EL層23中の発光層と電極層22との間、あるいは上記有機EL層23中の発光層と半導体電極層24との間に電荷注入輸送層26を形成することもできる。電荷注入輸送層とは、上記発光層に電極層または半導体電極層からの電荷を安定に輸送する機能を有するものであり、このような電荷注入輸送層を発光層と電極層との間あるいは発光層と半導体電極層との間に設けることにより、発光層への電荷の注入が安定化し、発光効率を高めることができる。
なお、電荷注入輸送層については、上述した第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本実施態様においては、上述した半導体電極層の態様(第5の態様〜第8の態様)、半導体電極層中に含有される金属の種類、および半導体電極層の種類(陽極、陰極)により、電荷注入輸送層を形成することが好ましい場合がある。以下、半導体電極層の態様ごとに説明する。
(半導体電極層が第5の態様である場合)
本態様は、半導体電極層が混合半導体層である場合である。
本態様において、半導体電極層が陰極であり、半導体電極層である混合半導体層中に含有される金属の仕事関数が4.0eV以上である場合は、混合半導体層と発光層との間に電子注入輸送層を設けることが好ましい。金属の仕事関数の値が大きいと、混合半導体層と発光層との界面におけるエネルギー障壁が高くなり、低電圧下では混合半導体層から発光層へ直接電子を注入することが困難となる場合があるが、混合半導体層と発光層との間に電子注入輸送層を設けることにより、発光層に電子を効率的に注入することができるからである。この際、混合半導体層側から光を取出す場合は、上記電子注入輸送層は、十分な光透過性を有することが好ましい。
さらに、半導体電極層が陽極であり、半導体電極層である混合半導体層中に含有される金属の仕事関数が4.0eV以上である場合は、混合半導体層と発光層との間に正孔注入輸送層を設けなくてもよい。金属の仕事関数の値が大きいので、正孔を発光層へ安定に注入することができるからである。
(半導体電極層が第6の態様である場合)
本態様は、半導体電極層が無機層と金属層とを有する場合である。本態様においては、発光層と半導体電極層との間に電荷注入輸送層を設けることが好ましい。この場合、金属層が有機EL層と接しないように形成されているので、電荷の注入が不十分となる可能性があるが、発光層と半導体電極層との間に電荷注入輸送層を設けることにより、発光層に電荷を効率的に注入することができるからである。この際、半導体電極層側から光を取出す場合は、上記電荷注入輸送層は、十分な光透過性を有することが好ましい。
(半導体電極層が第7の態様である場合)
本態様は、半導体電極層が混合半導体層と無機層とを有する場合である。
本態様においては、無機層が有機EL層と接するように形成されている場合、発光層と無機層との間に電荷注入輸送層を設けることが好ましい。この場合、混合半導体層中に含有される金属が有機EL層と接しないので、電荷の注入が不十分となる可能性があるが、発光層と無機層との間に電荷注入輸送層を設けることにより、発光層に電荷を効率的に注入することができるからである。この際、半導体電極層側から光を取出す場合は、上記電荷注入輸送層は、十分な光透過性を有することが好ましい。
さらに、本態様において、混合半導体層が有機EL層と接するように形成されている場合であって、半導体電極層が陽極であり、混合半導体層中に含有される金属の仕事関数が4.0eV以上である場合は、混合半導体層と発光層との間に正孔注入輸送層を設けなくてもよい。金属の仕事関数の値が大きいので、正孔を発光層へ安定に注入することができるからである。
(半導体緩電極層が第8の態様である場合)
本態様は、半導体電極層が混合半導体層と金属層とを有する場合である。
本態様において、半導体電極層が陽極であり、混合半導体層および金属層のうちの有機EL層と接している層中に含有される金属の仕事関数が4.0eV以上である場合は、半導体電極層と発光層との間に正孔注入輸送層を設けなくてもよい。金属の仕事関数の値が大きいので、正孔を発光層へ安定に注入することができるからである。
なお、有機EL素子のその他の点については、上述した第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
(第1電極層の形成)
基材として、大きさ40mm×40mm、厚み0.7mmの透明ガラス基板(NHテクノグラス(株)製 無アルカリガラスNA35)を準備し、この透明ガラス基板を定法にしたがって洗浄した後、上記透明ガラス基板上に陽極として酸化インジウム亜鉛化合物(IZO)の薄膜(厚み130nm)をスパッタリング法により形成した。上記IZO薄膜を形成する際には、スパッタガスとしてArおよびOの混合ガス(体積比Ar:O=100:1)を使用し、圧力0.1Pa、DC出力150Wとした。さらに、上記IZO薄膜(陽極)上に感光性レジスト(東京応化工業(株)製 OFPR−800)を塗布し、マスク露光、現像(東京応化工業(株)製 NMD3を使用)、エッチングを行って、IZO薄膜(陽極)をパターン形成した。
(正孔注入輸送層の形成)
上記IZO薄膜(陽極)を備えた透明ガラス基板を洗浄し、UVオゾン処理を施した後、大気中にて、IZO薄膜(陽極)を覆うように透明ガラス基板上に下記化学式(1)で示されるポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホネート(PEDOT−PSS)をスピンコート法により塗布し、乾燥して、正孔注入輸送層(厚み80nm)を形成した。
Figure 0004907714
ここで、式(1)中、nは10,000〜500,000である。
(発光層の形成)
低酸素(酸素濃度1ppm以下)、低湿度(水蒸気濃度1ppm以下)状態のグローブボックス中にて、上記正孔注入輸送層上に下記化学式(2)で示されるポリ(9,9ジオクチルフルオレン−co−ベンゾチアゾール)(F8BT)およびポリ(9,9ジオクチルフルオレン)(PF8)からなるポリマー(5BTF8)をスピンコート法により塗布し、乾燥して、発光層(厚み80nm)を形成した。上記のポリマー(5BTF8)は、F8BTおよびPF8を重量比5:95としてブレンドした発光材料である。
Figure 0004907714
ここで、式(2)中、nは100,000〜1,000,000である。
(電子注入層の形成)
上記発光層上にCaを3nmの厚みで蒸着して電子注入層を形成した。蒸着条件は、真空度5×10−5Pa、成膜速度1Å/秒とした。
(半導体緩衝層の形成)
上記電子注入層上にZnSeおよびCaを共蒸着し、膜厚30nmの半導体緩衝層を形成した。蒸着条件は、ZnSeおよびCaの体積比を10:1として、真空度5×10−5Pa、ZnSeの成膜速度1Å/秒、Caの成膜速度0.1Å/秒とした。
(第2電極層の形成)
さらに、上記半導体緩衝層上に対向ターゲットスパッタリング法によりIZO薄膜(厚み100nm)を成膜して陰極とした。上記IZO薄膜を成膜する際には、スパッタガスとしてArを使用し、圧力7.0×10−2Pa、DC出力150W、RF出力100Wとした。
(有機EL素子の作製)
上記第2電極層形成後、低酸素(酸素濃度1ppm以下)、低湿度(水蒸気濃度1ppm以下)状態のグローブボックス中にて、無アルカリガラスで封止を行った。上述した一連の操作により、幅2mmのライン状にパターニングされた陽極と、この陽極のパターンと直交するように幅2mmのライン状にパターニングされた電子注入層、半導体緩衝層および陰極とを備え、4ヶ所の発光エリア(面積4mm)を有する有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約215mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約4000cd/mであった。この結果から、上記発光エリアでは、ZnSeおよびCaの混合半導体層である半導体緩衝層が存在することにより、陰極形成時の発光層や電子注入層の酸化、スパッタリングにおけるダメージが防止されていることが確認された。
(光透過率および固有抵抗値の評価)
また、透明ガラス基板上に、上述した形成方法により電子注入層、半導体緩衝層および第2電極層を順次形成し、積層体を作製した。この積層体について、下記の条件で固有抵抗値および可視領域380〜780nmにおける光透過率を測定した。その結果、可視領域における平均光透過率は約60%であり、波長500nmにおける光透過率は約70%であった。また、上記の積層体(厚み130nm)の平均固有抵抗値は、8×10−3Ω・cmであった。
<膜厚の測定>
膜厚はセイコーインスツルメンツ(株)製 Nanopics1000を用い、膜断面を計測した。
<光透過率の測定>
紫外可視分光光度計((株)島津製作所製 UV−2200A)を用い、室温、大気中で測定した。
<固有抵抗値の測定>
固有抵抗値は、ダイヤインスツルメンツLoresta−GP(MCP−T600)を用いて四探針法により測定した。
[実施例2]
半導体緩衝層として、ZnSおよびCaを共蒸着し、膜厚30nmの半導体緩衝層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。上記半導体緩衝層を形成する際の蒸着条件は、ZnSおよびCaの体積比を10:1として、真空度5×10−5Pa、ZnSの成膜速度1Å/秒、Caの成膜速度0.1Å/秒とした。
上記の有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約230mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約4500cd/mであった。この結果から、ZnSおよびCaの混合半導体層である半導体緩衝層が存在することにより、陰極形成時の発光層や電子注入層の酸化、スパッタリングにおけるダメージが防止されていることが確認された。
[実施例3]
(第1電極層の形成)
基材として、大きさ40mm×40mm、厚み0.7mmの透明ガラス基板(NHテクノグラス(株)製 無アルカリガラスNA35)を準備し、この透明ガラス基板を定法にしたがって洗浄した後、上記透明ガラス基板上に陽極として、膜厚150nmのクロムからなる薄膜をマグネトロンスパッタリング法により成膜した。上記クロム薄膜を形成する際には、スパッタガスとしてArを用い、圧力0.3Pa、DC出力200Wとした。その後、フォトリソグラフィ法(レジスト:東京応化工業社製 OFPR‐800、エッチング液:関東化学株式会社製 Cr−01N)により、2mm幅ライン×2本のパターンとなるようにクロム薄膜(陽極)のパターニングを行った。
さらに、上記クロム薄膜(陽極)を備えた透明ガラス基板のプラズマ処理を行った。始めスパッタガスとしてArを用い、圧力1.0Pa、RF出力100Wとした。自然酸化されているクロム薄膜表面の酸化層を除去後、スパッタガスとしてAr、Oを用い、ガス分圧Ar:O=1:1、圧力1.0Pa、RF出力100Wで1分間プラズマ処理を行った。
(正孔注入輸送層、発光層、電子注入層、および半導体緩衝層の形成)
実施例1と同様にして、上記クロム薄膜(陽極)上に正孔注入輸送層、発光層、電子注入層、および半導体緩衝層を順次形成した。
(第2電極層の形成)
さらに、上記半導体緩衝層上に対向ターゲットスパッタリング法によりIZO薄膜(厚み100nm)を成膜して陰極とした。上記IZO薄膜を成膜する際には、スパッタガスとしてArを使用し、圧力0.07Pa、RF出力100W、DC出力5Wとした。
(有機EL素子の作製)
実施例1と同様にして封止を行い、有機EL素子を作製した。
上記の有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約220mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約9000cd/mであった。この結果から、ZnSeおよびCaの混合半導体層である半導体緩衝層が存在することにより、陰極形成時の発光層や電子注入層の酸化、スパッタリングにおけるダメージが防止されていることが確認された。
[比較例1]
半導体緩衝層を形成しないで、電子注入層上にIZO薄膜を陰極として形成した以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
上記の有機EL表示素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約0.18mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約0.2cd/mであった。この結果から、半導体緩衝層が形成されていない有機EL素子では、陰極形成時の酸素による電子注入層の酸化により発光特性が低下することが確認された。
[比較例2]
半導体緩衝層として、ZnSeのみを用いて30nmの半導体緩衝層を形成した以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
上記の有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約19mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約1000cd/mであった。この結果から、半導体緩衝層中に金属が含まれていない有機EL素子では、半導体緩衝層中の電荷輸送機能が低下し発光特性が低下することが確認された。
[比較例3]
半導体緩衝層として、ZnSのみを用いて30nmの半導体緩衝層を形成した以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
上記の有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約50mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約1480cd/mであった。この結果から、半導体緩衝層中に金属が含まれていない有機EL素子では、半導体緩衝層中の電荷輸送機能が低下し発光特性が低下することが確認された。
[実施例4]
(第1電極層の形成)
実施例1と同様にして、透明ガラス基板上にIZO薄膜を陽極として形成した。
(正孔注入層および正孔輸送層の形成)
上記IZO薄膜(陽極)を備えた透明ガラス基板を酸素プラズマ下に曝し、その後、真空加熱蒸着法により、IZO薄膜(陽極)を覆うように透明ガラス基板上に下記化学式(3)で示されるトリス[ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)からなる正孔注入層(厚み30nm)を形成した。この正孔注入層の成膜条件は、真空度5×10−5Pa、成膜速度2Å/秒、加熱温度350℃とした。
Figure 0004907714
さらに、上記正孔注入層上に、真空蒸着法により下記化学式(4)で示されるビス(N−ナフチル)−N−フェニルベンジジン(α−NPD)からなる正孔輸送層(厚み30nm)を形成した。この正孔輸送層の成膜条件は、真空度5×10−5Pa、成膜速度2Å/秒、加熱温度350℃とした。
Figure 0004907714
(発光層の形成)
上記正孔輸送層上に、下記化学式(5)で示されるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)と下記化学式(6)で示されるクマリン6(C6)とを共蒸着により成膜して発光層(厚み40nm)を形成した。この発光層の成膜条件は、Alq3中にC6が1%の重量比となるようC6をドーピングし、真空度5×10−5Pa、Alq3の成膜速度2Å/秒とした。
Figure 0004907714
(電子輸送層および電子注入層の形成)
上記発光層上に、真空蒸着法により、下記化学式(7)で示されるバソキュプロイン(BCP)からなる電子輸送層(厚み20nm)を形成した。この電子輸送層の成膜条件は、真空度5×10−5Pa、成膜速度2Å/秒とした。
Figure 0004907714
さらに、上記電子輸送層上に、真空蒸着法により、Liからなる電子注入層(厚み3nm)を形成した。この電子注入層の成膜条件は、真空度5×10−5Pa、成膜速度0.2Å/秒とした。
(半導体緩衝層および第2電極層の形成)
実施例2と同様にして、半導体緩衝層および第2電極層を形成し、封止を行い、有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約150mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約3300cd/mであった。この結果から、ZnSおよびCaの混合半導体層である半導体緩衝層が存在することにより、陰極形成時の電子注入層の酸化、スパッタリングにおける発光層、電子注入層のダメージが防止されていることが確認された。
[実施例5]
(第1電極層の形成)
実施例1と同様にして、透明ガラス基板上にIZO薄膜を陰極として形成した。
(電子注入層および電子輸送層の形成)
上記IZO薄膜(陰極)を備えた透明ガラス基板をアルゴンプラズマ下に曝し、その後、真空加熱蒸着法により、IZO薄膜(陰極)を覆うように透明ガラス基板上にBCPとLiとを共蒸着して電子注入層(厚み20nm)を形成した。この電子注入層の成膜条件は、真空度5×10−5Pa、BCP成膜速度2Å/秒、BCPおよびLiのモル比が1:2となるように共蒸着した。
さらに、実施例4と同様にして、上記電子注入層上にBCPからなる電子輸送層(厚み20nm)を形成した。
(発光層の形成)
実施例4と同様にして、上記電子輸送層上に、Alq3とC6とからなる発光層(厚み40nm)を形成した。
(正孔輸送層および正孔注入層の形成)
実施例4と同様にして、上記発光層上に、α−NPDからなる正孔輸送層(厚み30nm)、および1−TNATAからなる正孔注入層(厚み30nm)を順次形成した。
(半導体緩衝層の形成)
上記正孔注入層上に、ZnSおよびAuを共蒸着して膜厚30nmの半導体緩衝層を形成した。この半導体緩衝層の成膜条件は、ZnSおよびAuの体積比を10:1として、真空度5×10−5Pa、ZnSの成膜速度1Å/秒、Auの成膜速度0.1Å/秒とした。
(第2電極層の形成)
上記半導体緩衝層上に、陽極としてIZO薄膜(厚み100nm)を成膜し、封止を行い、有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約101mA/cmであり、上面(陽極)側から測定した発光エリアの輝度は約2800cd/mであった。この結果から、ZnSおよびAuの混合半導体層である半導体緩衝層が存在することにより、陽極形成時のスパッタリングにおける発光層、正孔輸送層および正孔注入層のダメージが防止されていることが確認された。
[比較例4]
半導体緩衝層を形成しないで、電子注入層上にIZO薄膜を陰極として形成した以外は、実施例4と同様にして、有機EL素子を作製した。
上記の有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約1.2mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約4.6cd/mであった。この結果から、半導体緩衝層が形成されていない有機EL素子では、陰極形成時の電子注入層の酸化、スパッタリングによる発光層や電子輸送層のダメージによりリーク電流が多く発光特性が低下することが確認された。
[比較例5]
半導体緩衝層として、ZnSのみからなる半導体緩衝層(厚み30nm)を形成した以外は、実施例4と同様にして、有機EL素子を作製した。
上記の有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約80mA/cmで、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約4100cd/mであった。この結果から、半導体緩衝層中に金属が含まれない有機EL素子では、半導体緩衝層中の電荷輸送機能が低下し発光特性が低下することが確認された。
[実施例6]
半導体緩衝層として、ZnSを30nmの厚みとなるように蒸着し、その後、Auを5nmとなるように蒸着し、さらにZnSを30nmとなるように蒸着して、無機層(ZnS)、金属層(Au)および無機層(ZnS)からなる半導体緩衝層を形成した以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約190mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約4000cd/mであった。この結果から、ZnS/Au/ZnSの積層構成からなる半導体緩衝層が存在することにより、陰極形成時の発光層や電子注入層の酸化、スパッタリングにおけるダメージが防止されていることが確認された。
[実施例7]
実施例1と同様にして、透明ガラス基板上にIZO薄膜(陰極)、正孔注入輸送層、発光層、および電子注入層を順次形成した。その後、上記電子注入層上に、ZnSeおよびAuを共蒸着し、膜厚100nmの半導体電極層(陽極)を形成し、有機EL素子を作製した。半導体電極層の成膜条件は、ZnSeおよびAuの体積比を10:1として、真空度5×10−5Pa、ZnSeの成膜速度1Å/秒、Auの成膜速度0.1Å/秒とした。
この有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約210mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約4300cd/mであった。この結果から、ZnSeおよびAuの混合半導体層である半導体電極層を形成することにより、スパッタリングを行わずに陽極を成膜できるので、発光層や電子注入層の酸化、スパッタリングにおけるダメージを回避して、良好な特性が得られることが確認された。
[実施例8]
半導体緩衝層として、CaFおよびAuを共蒸着し、膜厚30nmの半導体緩衝層を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。蒸着条件は、CaFおよびAuの体積比を2:1として、真空度5×10−5Pa、CaFの成膜速度1Å/秒、Auの成膜速度0.5Å/秒とした。ここで、膜厚30nmの半導体緩衝層のみの光透過率は、波長510nmにおいて約65%であった。
この有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約190mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約3500cd/mであった。この結果から、CaFおよびAuの混合半導体層である半導体緩衝層が存在することにより、陰極形成時の発光層や電子注入層の酸化、スパッタリングにおけるダメージが防止されていることが確認された。
[実施例9]
実施例1と同様にして、透明ガラス基板上に陽極、正孔注入輸送層、発光層および電子注入層を形成した。この電子注入層上に、CaFおよびAuを共蒸着し、膜厚50nmの半導体電極層を形成した。蒸着条件は、CaFおよびAuの体積比を2:1として、真空度5×10−5Pa、CaFの成膜速度1Å/秒、Auの成膜速度0.5Å/秒とした。ここで、膜厚50nmの半導体電極層のみの光透過率は、波長510nmにおいて約52%であった。
この有機EL素子の陽極および陰極に電圧6Vを印加した時の電流密度は約160mA/cmであり、上面(陰極)側から測定した発光エリアの輝度は約3000cd/mであった。この結果から、CaFおよびAuの混合半導体層である半導体電極層を真空蒸着法を用いて形成することにより、発光層にダメージを与えることなく陰極を形成することができ、また、電子注入層の酸化が防止されていることが確認された。
1、21 … 基材
2 … 第1電極層
3、23 … 有機EL層
4 … 半導体緩衝層
5 … 第2電極層
6、26 … 電荷注入輸送層
14a、34a … 無機層
14b、34b … 金属層
22 … 電極層
24 … 半導体電極層

Claims (11)

  1. 基材と、前記基材上に形成された電極層と、前記電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体電極層とを有し、
    前記半導体電極層は、前記無機化合物中に前記金属が分散された混合半導体層であり、
    前記無機化合物は、無機半導体化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 基材と、前記基材上に形成された電極層と、前記電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体電極層とを有し、
    前記半導体電極層は、前記無機化合物中に前記金属が分散された混合半導体層と、前記無機化合物からなる無機層とを有し、
    前記無機化合物は、無機半導体化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 基材と、前記基材上に形成された電極層と、前記電極層上に形成され、かつ少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成され、バンドギャップが2.0eV以上である無機化合物および金属を含有する半導体電極層とを有し、
    前記半導体電極層は、前記無機化合物中に前記金属が分散された混合半導体層と、前記金属からなる金属層とを有し、
    前記無機化合物は、無機半導体化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記金属の電気抵抗率ρが、1×10−5Ω・cm未満であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記半導体電極層中に含有される金属の仕事関数が4.2eV以上であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記無機半導体化合物は、18族型元素周期律表の12族から16族までの元素から選択される少なくとも1種の元素を含有する化合物であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 記半導体電極層は、厚みが1nm〜500nmの範囲内であり、可視領域における平均光透過率が30%以上であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 記半導体電極層中の前記金属の含有量は、0.0001体積%〜90体積%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 前記金属は、前記半導体電極層中に含有される金属を、金属のみからなる層とした場合、前記金属のみからなる層の厚みが100nm以下となるように、前記半導体電極層中に含有されていることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 記半導体電極層は、真空蒸着法により成膜されたものであることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 前記発光層と前記半導体電極層との間に電荷注入輸送層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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