以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の各実施形態では、本発明に係る無線伝送システムが、耐マルチパス性を有する変復調方式を用いてパケットを送受信する複数の無線局によって構成される場合について説明する。ここで、複数の無線局のうち、最初にパケットを送信する無線局を送信局と称す。また、送信局が送信したパケットの最終的な送信先である無線局を受信局と称す。また、送信局または受信局の通信エリア内に設置された無線局であり、送信局が送信したパケットを受信局まで中継する無線局を中継局と称す。
本発明に係る無線伝送システムの例としては、(A)送信局においてスペクトル拡散方式(例えば、DSSS方式、FHSS方式、THSS方式など)を用いてパケットが変調され、受信局においてスペクトル拡散方式を用いてパケットが復調されるシステム、(B)送信局においてOFDM方式を用いてパケットが変調され、受信局においてOFDM方式を用いてパケットが復調されるシステム、(C)送信局においてシンボル内に冗長波形を有する耐マルチパス変調方式(例えば、PSK−VP方式、PSK−RZ方式、DSK方式など)を用いてパケットが変調され、受信局において耐マルチパス変調方式に対応する復調方式を用いてパケットが復調されるシステム、(D)送信局においてシングルキャリア変調方式(例えば、PSK方式、QAM方式など)を用いてパケットが変調され、受信局においてタップ付き遅延線を用いた等化器を用いてパケットが復調されるシステム等がある。
さらに、本発明に係る無線伝送システムの例としては、上記(A)および(C)のシステムの原理を応用したシステムも考えられる。具体的には、上記(A)のシステムを応用したものとして、(E)複数の送信局の中には、異なる拡散符号(シンボル波形)で拡散する送信局が含まれており、受信局においてRAKE受信を行う、つまり、受信局において、複数の拡散符号に対応する逆拡散を施した後、各々の拡散符号を含めてパス素波の合成を行い、パケットを復調するシステムが考えられる。また、上記(C)のシステムを応用したものとして、(F)複数の送信局の中には、異なる冗長波形(位相冗長波形や振幅冗長波形などのシンボル波形)を加える送信局が含まれており、受信局において、耐マルチパス変調方式に対応する復調方式を用いて各々の冗長波形も含めてパスの合成を自動的に行い、パケットを復調するシステムが考えられる。
上記(A)〜(F)のシステムでは、複数の無線局が異なる遅延量をパケットに付加して送信することでパスダイバーシチ効果が得られる。このうち上記(E)および(F)のシステムでは、互いに相関の低い複数の異なるシンボル波形をさらに用いることで、より高いパスダイバーシチ効果が得られる。なお、上記(E)および(F)のシステムでは、遅延量を付加しなくても、送信側の複数の無線局が互いに相関の低いシンボル波形でデータ変調されたパケットを送信することでパスダイバーシチ効果が得られる。
なお、遅延量およびシンボル波形は、パケットを送信する際に用いられるパラメータであり、無線伝送システムにおいてパスダイバーシチ効果を得るためのパラメータである。以下、遅延量およびシンボル波形などのパラメータを送信パラメータと称す。
なお、本発明に係る無線伝送システムは、上記(A)〜(F)の例に限定されるものではなく、将来出現するシステムも、本発明の範囲に含まれる。
また、以下の各実施形態では、パスダイバーシチ効果が得られる到来時間差の下限を遅延分解能と称し、上限を遅延上限と称す。到来時間差の遅延分解能および遅延上限は、無線局に用いられる変復調方式の原理上定まる場合や、変復調方式のパラメータや実装上の制約から定まる場合がある。上記(A)および(E)のシステムでは、遅延分解能は拡散符号の1チップ長に相当することとなる。また遅延上限は、拡散符号長未満の時間に相当することとなる。
上記(B)のシステムでは、遅延上限はガード区間が示す時間に相当し、遅延分解能は複数のサブキャリアを含む周波数帯域幅の逆数程度の時間に相当することとなる。OFDM方式を用いた場合、各パス素波の到来時間差がガード区間内であればシンボル間干渉が生じないという効果がある。また、OFDM方式では、通常、複数のサブキャリアにまたがって誤り訂正処理が施される。誤り訂正処理によって、一部のサブキャリアにおいてマルチパスフェージングによる誤りが生じても、受信信号を正確に復調することができる。このように、OFDM方式を用いた場合、ガード区間による効果と、広い周波数帯に渡って信号を散在させて回収することによる周波数ダイバーシチ効果とによって、パスダイバーシチ効果が得られる。
上記(C)および(F)のシステムでは、遅延分解能はシンボル長の数分の1程度に相当し、遅延上限は1シンボル長未満の時間に相当することとなる。上記(D)のシステムでは、遅延分解能は1シンボル長に相当し、遅延上限はタップの数によって定まる時間に相当することとなる。
(第1の実施形態)
以下、本発明における第1の実施形態に係る無線伝送システム1について説明する。まず、図1を参照して、第1の実施形態に係る無線伝送システム1の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る無線伝送システム1の構成を示す図である。なお、本実施形態では、一例として、無線伝送システム1が上記(E)のシステムである場合について説明する。上記(E)のシステムは、スペクトル拡散方式の1つであるDSSS方式の原理を用いたシステムである。また、上記(E)のシステムでは、送信パラメータとして、シンボル波形(拡散符号)および遅延量を用いることができる。なお、以下の説明では、各無線局間におけるパケットの伝搬時間は、到来時間差の遅延分解能に対して十分小さく、無視できるものとする。
図1において、無線伝送システム1は、送信局11、各中継局121〜124、受信局13によって構成される。送信局11、各中継局121〜124、および受信局13は、共通の構成を有している。送信局11、各中継局121〜124、および受信局13の構成については、後述する。図1において、点線矢印は、送信局11が送信したパケットが、各中継局121〜124において受信されることを示している。また実線矢印は、各中継局121〜124が送信した各パケットが、受信局13においてそれぞれ受信されることを示している。具体的にいえば、送信局11は、図1の点線矢印が示すように、送信すべきパケットを送信パケットとして送信する。各中継局121〜124は、送信局11から送信された送信パケットをそれぞれ受信する。各中継局121〜124は、送信局11から送信パケットを受信すると、受信した送信パケットと同一のパケットを中継パケットとして生成する。各中継局121〜124は、図1の実線矢印が示すように、生成した中継パケットを送信する。受信局13は、各中継局121〜124から送信された各中継パケットを受信する。このように、送信局11から送信されたパケットは、最終的な送信先である受信局13に到着するまで、各中継局121〜124を介して無線伝送されていく。つまり、パケットはマルチホップ伝送される。
なお、図1において、無線伝送システム1は、4つの中継局で構成されているが、中継局の数はこれに限らない。無線伝送システム1は、3つ以下、または、5つ以上の中継局で構成されていてもよい。
次に、図2を参照して、パケットの構成について説明する。図2は、パケットの構成例を示す図である。図2において、各パケットP1〜P4は、プリアンブルPR1〜PR4、ユニークワードUW、送信元アドレス、宛先アドレス、情報データ、および、CRCにより構成される。
プリアンブルPR1〜PR4は、所定のデータ列(「1010…」や「1100…」等)が繰り返し配置された情報である。なお、ここでは、プリアンブルPR1〜PR4のデータ列は同じデータ列であるとする。つまり、ここでは、プリアンブルPR1〜PR4のデータ列は1種類であるとする。プリアンブルPR1〜PR4は、一般的に、AGC(Automatic Gain Control)による利得の制御や、クロックの再生、周波数の補正等のために用いられる。さらに、プリアンブルPR1〜PR4は、他局の選択した送信パラメータを推定するためにも用いられる。プリアンブルPR1はパケットP1の先頭部分に含まれている。プリアンブルPR2はパケットP2の先頭部分に含まれている。プリアンブルPR3はパケットP3の先頭部分に含まれている。プリアンブルPR4はパケットP4の先頭部分に含まれている。また、プリアンブルPR1〜PR4は、長さが互いに異なっている。図2の例では、プリアンブルPR1の長さが最も短く、プリアンブルPR4の長さが最も長い。
ユニークワードUWは、パケット種別の判定や、パケットの同期のために用いられる情報である。送信元アドレスは、パケットの送信元である送信局11のアドレスである。宛先アドレスは、パケットの最終的な送信先である受信局13のアドレスである。情報データは、送信局11から受信局13に送信すべきデータの本体である。CRCは、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号である。CRCは、誤り検出のために用いられる。ユニークワードUW以降のデータは、各パケットP1〜P4全てにおいて同一である。
次に、図3を参照して、第1の実施形態に係る無線局の構成について説明する。図3は、第1の実施形態に係る無線局の構成を示すブロック図である。ここで、送信局11、各中継局121〜124、および受信局13は、それぞれ異なる処理を行うが、それぞれの構成は同じ構成であり、図3に示す構成となる。
図3において、本実施形態に係る無線局は、アンテナ21、RF部22、復調部23、自局宛パケット判定部24、自局宛パケット処理部25、プリアンブル選択部26、送信パケット処理部27、シンボル波形/遅延量推定部28、シンボル波形/遅延量選択部29、送信タイミング制御部30、および変調部31により構成される。
RF部22は、アンテナ21が受信したRF(Radio Frequency)帯の信号をベースバンド信号に周波数変換し、受信ベースバンド信号として出力する。また、RF部22は、変調部31から出力された変調ベースバンド信号をRF帯の信号に周波数変換し、アンテナ21に出力する。RF部22から出力されたRF帯の信号は、アンテナ21から送信される。復調部23は、RF部22から出力された受信ベースバンド信号をディジタルデータに復調し、復調データとして出力する。
自局宛パケット判定部24は、復調部23から出力された復調データからユニークワードを検出すると、パケットを受信したと判定する。また、自局宛パケット判定部24は、復調データから検出されるCRCを用いて、受信したパケットにCRCチェックを施す。パケットに誤りがなかった場合、自局宛パケット判定部24は、パケットの受信が完了したことを示す受信完了信号を生成する。受信完了信号は、送信タイミング制御部30に出力される。また自局宛パケット判定部24は、復調データから検出される宛先アドレスを用いて、受信したパケットが自局宛であるか否かを判定する。具体的には、自局宛パケット判定部24は、宛先アドレスが自局のアドレスと一致するか否かを判定する。宛先アドレスが自局のアドレスと一致する場合、自局宛パケット判定部24は、受信したパケットが自局宛のパケット(以下、自局宛パケットと称す)であると判定する。この場合、自局宛パケット判定部24は、自局宛パケットを自局宛パケット処理部25に出力する。一方、宛先アドレスが自局のアドレスと一致しない場合、自局宛パケット判定部24は、受信したパケットが他局宛のパケット(以下、他局宛パケットと称す)であると判定する。この場合、自局宛パケット判定部24は、他局宛パケットを送信パケット処理部27に出力する。自局宛パケット処理部25は、自局宛パケット判定部24から出力された自局宛パケットに対し、所定の処理を行う。
このように、無線局において自局宛パケットが受信された場合に自局宛パケット判定部24および自局宛パケット処理部25で行われる一連の処理は、無線局が受信局13として用いられた場合に行われる処理である。また、後述するように、外部から情報データが入力されてから送信パケットを送信するまでの一連の処理は、無線局が送信局11として用いられた場合に行われる処理である。また、無線局において他局宛パケットが受信された場合に、他局宛パケットが受信されてから、中継パケットを送信するまでの一連の処理は、無線局が各中継局121〜124として用いられた場合に行われる処理である。なお、無線局が中継局として用いられた場合、他局宛パケットは、送信局11から送信された送信パケットとなる。
プリアンブル選択部26には、複数のプリアンブルの長さに関する情報が予め設定されている。以下、プリアンブルの長さをPR長と称す。複数のPR長は、互いに長さが異なっている。プリアンブル選択部26は、複数のPR長の中から、1つのPR長をランダムに選択する。換言すれば、プリアンブル選択部26は、複数のPR長の中からどのPR長を選択するかを等確率で選択する。プリアンブル選択部26は、選択したPR長を示すプリアンブル信号を生成し、送信パケット処理部27および送信タイミング制御部30に出力する。
なお、プリアンブル選択部26がプリアンブル長を選択する際、必ずしも、複数のPR長の中からどのPR長を選択するかを等確率で選択する必要はない。異なる確率でPR長を選択するようにしてもよい。ただし、以下では、プリアンブル選択部26は、複数のPR長の中からどのPR長を選択するかを等確率で選択するものとして説明する。
送信パケット処理部27は、外部から情報データが入力された場合、情報データに対し、任意のプリアンブル、ユニークワード、送信元アドレス、宛先アドレス、およびCRCを付加して、送信パケットを生成する。なお、送信パケットに含まれる宛先アドレスは、図2で説明したように、パケットの最終的な送信先である受信局13のアドレスである。送信パケットは、送信パケット処理部27に保存される。送信パケット処理部27は、自局宛パケット判定部24から入力された他局宛パケットである送信パケットに含まれるプリアンブルを、プリアンブル信号が示すPR長を有するプリアンブルに入れ替える。つまり、送信パケット処理部27は、他局宛パケットのPR長を、プリアンブル信号が示すPR長に変える。プリアンブルが入れ替えられたパケットは、中継パケットとして送信パケット処理部27に保存される。
シンボル波形/遅延量推定部28は、受信ベースバンド信号に含まれる、他の無線局が送信したパケットのプリアンブルに基づいて、他の無線局が選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせを推定する。シンボル波形/遅延量推定部28は、自局宛パケット判定部24において受信完了信号が出力されたタイミングから推定終了タイミングまで、推定処理を行う。推定終了タイミングは、組み合わせの推定を終了するタイミングである。シンボル波形/遅延量推定部28は、推定終了タイミングまで推定結果が得られた場合、推定した組み合わせを示す推定結果信号を生成する。生成された推定結果信号は、シンボル波形/遅延量選択部29に出力される。シンボル波形/遅延量推定部28の詳細については、後述する。
シンボル波形/遅延量選択部29には、シンボル波形および遅延量からなる複数の組み合わせが予め記憶されている。複数の組み合わせは、互いに異なっている。シンボル波形/遅延量選択部29は、推定結果信号が得られた場合には推定結果信号が示す組み合わせを除いた複数の組み合わせの中から、1つの組み合わせをランダムに選択する。推定結果信号が得られない場合には、シンボル波形/遅延量選択部29は、複数の組み合わせの中から、1つの組み合わせをランダムに選択する。シンボル波形/遅延量選択部29は、選択した組み合わせのシンボル波形を示すシンボル波形信号を生成する。シンボル波形信号は、変調部31に出力される。また、シンボル波形/遅延量選択部29は、選択した組み合わせの遅延量を示す遅延量信号を生成する。遅延量信号は、送信タイミング制御部30に出力される。
送信タイミング制御部30は、自局宛パケット判定部24から出力された受信完了信号に基づいて、基準タイミングを決定する。ここで、基準タイミングとは、中継パケットの送信が開始する送信開始タイミングの基準となるタイミングをいう。ここでは、一例として、受信完了信号が入力された時点から、所定の待ち時間が経過したタイミングを基準タイミングとする。送信タイミング制御部30は、決定した基準タイミングと、シンボル波形/遅延量選択部29から出力された遅延量信号が示す遅延量と、プリアンブル選択部26から出力されたプリアンブル信号が示すPR長と、プリアンブル選択部26が選択し得る複数のPR長のうちの最も短いPR長とを用いて、送信開始タイミングを決定する。送信開始タイミングは、遅延量信号が示す遅延量の分だけ、基準タイミングから遅延させたタイミングに対して、プリアンブル選択部26が選択し得る最も短いPR長とプリアンブル信号が示すPR長との差分だけ早いタイミングである。送信タイミング制御部30は、送信開始タイミングになった時点で、送信開始を指示するための送信開始信号を生成し、生成した送信開始信号を変調部31に出力する。
変調部31は、外部からの情報データに基づく送信パケットに対しては、外部からの指示に基づくタイミングに従って送信パケット処理部27から読み出す。変調部31は、読み出した送信パケットを、外部からの指示に基づくシンボル波形に従って変調し、変調ベースバンド信号として出力する。また、変調部31は、送信開始信号が入力された場合、送信パケット処理部27から中継パケットを読み出す。変調部31は、読み出した中継パケットを、シンボル波形信号が示すシンボル波形に従って変調し、変調ベースバンド信号として出力する。変調ベースバンド信号は、RF部22においてRF帯の信号に周波数変換された後、アンテナ21から送信される。
次に、図4を参照して、シンボル波形/遅延量推定部28について詳細に説明する。なお、ここでは、送信パラメータとして、シンボル波形と遅延量の2つのパラメータを用いるとする。また、シンボル波形がw1とw2の2種類あり、遅延量が0とTの2種類あるとする。この場合、シンボル波形と遅延量の組み合わせは2×2の4種類、つまり送信パラメータが4種類となり、最大有効ブランチ数は4となる。つまり、最大で4ブランチのパスダイバーシチ効果を得ることが可能である。なお、最大有効ブランチ数とは、パスダイバーシチ効果に寄与し得る有効なブランチの最大数を意味する。また、本実施形態では、上記(E)のシステムを適用しているので、各遅延量差(T−0=T)を1チップ長以上、かつ、拡散符号長未満とする。
図4は、シンボル波形/遅延量推定部28の詳細な構成を示すブロック図である。図4において、シンボル波形/遅延量推定部28は、相関部281aおよび281b、参照波形R1保持部282a、参照波形R2保持部282b、および、タイミング判定部283aおよび283bにより構成される。
参照波形R1保持部282aは、シンボル波形w1で変調されたプリアンブル部分の波形データを参照波形R1として保持している。参照波形R2保持部282bは、シンボル波形w2で変調されたプリアンブル部分の波形データを参照波形R2として保持している。受信ベースバンド信号は、相関部281aおよび281bにそれぞれ入力される。相関部281aは、受信ベースバンド信号と、参照波形R1保持部に保持されている参照波形R1との相互相関をとる。相関部281aは、この相関結果と所定のしきい値とを比較することでピークを検出し、相関信号c1として出力する。シンボル波形w1で変調されたプリアンブルを含む中継パケットが受信された場合、相関信号c1として、参照波形R1の長さに等しい周期のピークが出力される。また、シンボル波形w1で変調されたプリアンブルを含む中継パケットが異なる時間で複数重畳して受信された場合、相関信号c1として、各中継パケットに対応するピークがそれぞれ重畳して出力される。シンボル波形w1以外のシンボル波形で変調されたプリアンブルを含む中継パケットが受信された場合、相関信号c1として、ノイズのような信号が出力される。つまり、この場合、ピークは出力されない。同様に、相関部281bは、受信ベースバンド信号と、参照波形R2保持部に保持されている参照波形R2との相関をとり、最終的に相関信号c2を出力する。
タイミング判定部283aは、相関信号c1と参照タイミングとを比較することで、シンボル波形w1で変調された中継パケットの遅延量を推定する。ここで、参照タイミングとは、自局宛パケット判定部24において受信完了信号が出力されたタイミングをトリガーとして、参照波形R1またはR2と等しい周期でカウントするカウンタによって生成されるタイミングである。なお、参照波形R1の周期は、参照波形R2の周期と同じである。また、上述したように、遅延量は2通り(0、T)だけ用いられるとした。したがって、タイミング判定部283aは、相関信号c1に含まれるピークと参照タイミングとを比較して、ピークが示す遅延量が0かTかを判定する。より具体的な判定方法については後述する。タイミング判定部283aは、遅延量が0であると判定した場合、その判定結果を推定結果信号d11として生成し出力する。またタイミング判定部283aは、遅延量がTであると判定した場合、その判定結果を推定結果信号d12として生成し出力する。
なお、推定結果信号d11およびd12は、相関信号c1に含まれるピークに基づいて判定された結果を示す信号である。したがって、例えば、推定結果信号d11が出力された場合、受信ベースバンド信号には、シンボル波形w1で変調され、かつ、遅延量が0である中継パケットが含まれていることがわかる。また、推定結果信号d12が出力された場合、受信ベースバンド信号には、シンボル波形w1で変調され、かつ、遅延量がTである中継パケットが含まれていることがわかる。
同様に、タイミング判定部283bは、相関信号c2と参照タイミングとを比較することで、シンボル波形w2で変調された中継パケットの遅延量を推定する。具体的には、タイミング判定部283bは、相関信号c2に含まれるピークと参照タイミングとを比較して、ピークが示す遅延量が0かTかを判定する。タイミング判定部283bは、遅延量が0であると判定した場合、その判定結果を推定結果信号d21として生成し出力する。またタイミング判定部283bは、遅延量がTであると判定した場合、その判定結果を推定結果信号d22として生成し出力する。
なお、シンボル波形/遅延量推定部28は、自局宛パケット判定部24において受信完了信号が出力されたタイミングから推定終了タイミングまで、推定処理を行う。ここで、推定終了タイミングは、プリアンブル選択部26に予め設定された最も短いPR長とプリアンブル選択部26が選択したPR長との時間差の分だけ、基準タイミングよりも早いタイミングである。ここでは、基準タイミングは、最も短いPR長で、かつ、遅延量0で中継パケットを送信する場合において、送信を開始するタイミングとしている。シンボル波形/遅延量推定部28は、基準タイミングや、各PR長を送信タイミング制御部30から読み出すことによって、推定終了タイミングを決定する。また、シンボル波形/遅延量推定部28は、受信完了信号が出力されたタイミングを送信タイミング制御部30から読み出すことによって、受信完了信号が出力されたタイミングを、推定を開始するタイミングに決定する。
なお、タイミング判定部283aおよび283bが出力する推定結果信号の数は、それぞれ、無線伝送システム1で用いられる遅延量の数に相当する。よって、無線伝送システム1において遅延量が3つ用いられる場合、タイミング判定部283aが出力する推定結果信号の数は3本となり、タイミング判定部283bが出力する推定結果信号の数も3本となる。なお、この場合、各遅延量差を1チップ長以上とし、かつ、最大遅延量と最小遅延量との差を、拡散符号長未満となるようにすればよい。
このように、図4に示すシンボル波形/遅延量推定部28を用いた場合、シンボル波形と遅延量の推定を波形相関により行うので、複数の重畳したパケットそれぞれのシンボル波形と遅延量を推定することができる。なお、波形相関によってシンボル波形と遅延量の推定をする場合、推定するために必要な受信ベースバンド信号のプリアンブルの長さは、最低1シンボル長程度と短くて済む。したがって、図2に示すパケットP1〜P4の各PR長の差分を短くできるので、伝送効率を低下させなくてもよいという効果がある。また、図4に示すシンボル波形/遅延量推定部28は、シンボル波形が2種類ある場合について説明したが、3種類以上のシンボル波形を用いてもよい。この場合、図4に示すシンボル波形/遅延量推定部28は、相関部、参照波形保持部、タイミング判定部をシンボル波形の種類数だけ有していればよい。
次に、図5および図6を参照して、変調部31および復調部23の構成について詳細に説明する。本実施形態では、無線伝送システム1として、上記(E)で示したシステムを適用するとした。よって、図5には、上記(E)のシステムを適用した場合の変調部31の構成を示す。図6には、上記(E)のシステムを適用した場合の復調部23の構成を示す。
図5において、変調部31は、大略的に、1次変調部311、2次変調部314、D/A変換器317により構成される。1次変調部311は、読み出し制御部312および波形出力部313により構成される。2次変調部314は、拡散符号制御部315および拡散部316により構成される。
読み出し制御部312は、ベースクロックで動作するカウンタで構成される。読み出し制御部312は、送信タイミング制御部30から送信開始信号が入力されると、カウンタ値に基づいて、中継パケットを読み出すための読み出しクロックを生成する。読み出し制御部312は、生成した読み出しクロックを送信パケット処理部27に出力する。送信パケット処理部27は、入力された読み出しクロックにしたがって、中継パケットを読み出し、変調部31の読み出し制御部312に出力する。読み出し制御部312は、送信パケット処理部27から中継パケットを読み出すと、中継パケットに対して必要に応じて差動符号化を行う。その後、読み出し制御部312は、波形出力部313の変調波形のデータを読み出すためのアドレスを示すアドレス信号を生成し、生成したアドレス信号を波形出力部313に出力する。波形出力部313は、波形メモリを有している。波形メモリには、予め変調波形のデータが格納されている。波形出力部313は、アドレス信号に応じた変調波形のデータを波形メモリから読み出し、読み出した変調波形のデータを1次変調信号として出力する。拡散符号制御部315は、シンボル波形/遅延量選択部29から出力されたシンボル波形信号に応じた拡散符号を生成する。拡散部316は、1次変調信号を、拡散符号制御部315で生成された拡散符号で拡散する。D/A変換器317は、拡散された1次変調信号をディジタル信号からアナログ信号に変換し、変調ベースバンド信号として出力する。
以上のように、図5に示す変調部31は、送信開始信号を受け取ると、シンボル波形/遅延量選択部29において決定されたシンボル波形に応じた拡散符号で中継パケットを変調する。また、図5に示す変調部31は、シンボル波形/遅延量選択部29において決定された遅延量を中継パケットに付加して送信することができる。なお、変調ベースバンド信号を出力するタイミングは、送信開始信号を受け取ったタイミングに応じてベースクロック単位で変化する。また、ベースクロックは、通常、シンボル周波数(シンボル長の逆数)の数倍から十数倍の周波数が用いられることが多い。したがって、変調部31は、シンボル長の数分の1から十数分の1の単位で、変調ベースバンド信号を出力するタイミングを調整することができる。その結果、中継パケットに対して、シンボル波形/遅延量選択部29において決定された遅延量を付加して送信することができる。
なお、外部からの情報データに基づく送信パケットに対しては、変調部31は、外部からの指示に基づくタイミングで送信パケット処理部27から読み出す。変調部31は、読み出した送信パケットを、外部からの指示に基づくシンボル波形で変調し、変調ベースバンド信号として出力する。読み出し制御部312は、外部からの指示に基づくタイミングで、カウンタ値に基づいて、送信パケットを読み出すための読み出しクロックを生成する。読み出し制御部312は、生成した読み出しクロックを送信パケット処理部27に出力する。送信パケット処理部27は、入力された読み出しクロックにしたがって、送信パケットを読み出し、変調部31の読み出し制御部312に出力する。読み出し制御部312は、送信パケット処理部27から送信パケットを読み出すと、送信パケットに対して必要に応じて差動符号化を行う。その後、読み出し制御部312は、波形出力部313の変調波形のデータを読み出すためのアドレスを示すアドレス信号を生成し、生成したアドレス信号を波形出力部313に出力する。波形出力部313は、アドレス信号に応じた変調波形のデータを波形メモリから読み出し、読み出した変調波形のデータを1次変調信号として出力する。拡散符号制御部315は、外部からの指示に基づくシンボル波形に応じた拡散符号を生成する。拡散部316は、1次変調信号を、拡散符号制御部315で生成された拡散符号で拡散する。D/A変換器317は、拡散された1次変調信号をディジタル信号からアナログ信号に変換し、変調ベースバンド信号として出力する。
図6において、復調部23は、相関部231aおよび231b、拡散符号S1保持部232a、拡散符号S2保持部232b、検波部233aおよび233b、振幅/位相検出部234aおよび234b、合成部235、および、判定部236により構成される。
受信ベースバンド信号は、相関部231aおよび231bにそれぞれ入力される。相関部231aは、受信ベースバンド信号と、拡散符号S1保持部232aに保持された拡散符号S1との相関をとることで、受信ベースバンド信号を逆拡散する。逆拡散された受信ベースバンド信号は、逆拡散信号として検波部233aに出力される。検波部233aは、相関部231aから出力された逆拡散信号を検波し、検波信号を生成する。振幅/位相検出部234aは、検波部233aにおいて生成された検波信号から振幅と位相とを検出し、それぞれを振幅情報および位相情報として出力する。同様に、相関部231bは、受信ベースバンド信号と、拡散符号S2保持部232bに保持された拡散符号S2との相関をとることで、受信ベースバンド信号を逆拡散する。逆拡散された受信ベースバンド信号は、逆拡散信号として検波部233bに出力される。検波部233bは、相関部231bから出力された逆拡散信号を検波し、検波信号を生成する。振幅/位相検出部234bは、検波部233bにおいて生成された検波信号から振幅と位相とを検出し、それぞれを振幅情報および位相情報として出力する。
合成部235は、振幅/位相検出部234aおよび234bから出力された各検波信号を、それぞれの振幅情報と位相情報をもとに合成し、合成信号を生成する。判定部236は、合成信号を符号判定する。判定部236において符号判定された信号は、復調データとして自局宛パケット判定部24に出力される。
このように、図6に示す復調部23は、受信ベースバンド信号と、複数の拡散符号の各々との相関をとることで、各無線局から送信されたパケットが重畳した信号(パス)を分離、合成することができる。これにより、パスダイバーシチ効果が得られる。また、図6に示す復調部23は、拡散符号が2種類ある場合について説明したが、3種類以上の拡散符号を用いてもよい。この場合、図6に示す復調部23は、相関部、拡散符号保持部、検波部、および振幅/位相検出部を拡散符号の種類数だけ有していればよい。
次に、図7および図8を参照して、第1の実施形態に係る無線局の動作について説明する。図7および図8は、第1の実施形態に係る無線局の動作を示すフローチャートである。
図7において、送信パケット処理部27は、外部から情報データが入力された否かを判断する(ステップS11)。情報データが入力されたと判断した場合(ステップS11でYes)、送信パケット処理部27は、情報データに任意のプリアンブル等を付加して送信パケットを生成し、生成した送信パケットを保存する(ステップS12)。ステップS12の次にステップS13において、変調部31は、送信パケット処理部27から送信パケットを読み出し、外部からの指示に基づくシンボル波形で変調し、変調ベースバンド信号として出力する。また変調ベースバンド信号は、RF部22においてRF帯の信号に周波数変換された後、アンテナ21から送信される。以上のステップS11〜S13の処理は、無線局が送信局11として用いられた場合に行われる処理である。
一方、情報データが入力されなかったと判断された場合(ステップS11でNo)において、他の無線局から送信されたパケットがアンテナ21で受信されると、復調部23は、受信されたパケットを復調し、復調データを出力する(ステップS14)。自局宛パケット判定部24は、復調データから検出されるCRCを用いて、パケットの受信が完了したか否かを判定する(ステップS15)。パケットの受信が完了したと判定した場合(ステップS15でYes)、自局宛パケット判定部24は、復調データから検出される宛先アドレスを用いて、受信されたパケットが自局宛パケットであるか否かを判定する(ステップS16)。なお、この場合においてさらに、自局宛パケット判定部24は、パケットの受信が完了したことを示す受信完了信号を送信タイミング制御部30に出力する。受信されたパケットが自局宛パケットである判断された場合(ステップS16でYes)、自局宛パケット処理部25は、自局宛パケットに対して所定の処理を行う(ステップS17)。以上のステップS14〜S17の処理は、無線局が受信局13として用いられた場合に行われる処理である。一方、受信されたパケットが他局宛パケットである判断された場合(ステップS16でNo)、処理はAを介して図8のステップS18に進む。なお、この場合、他局宛とは受信局13宛を意味するので、ステップS18以降の処理は、無線局が各中継局121〜124として用いられた場合のみに行われる処理である。したがって、以上のステップS14〜S16、S18〜S29の処理は、無線局が各中継局121〜124として用いられた場合に行われる処理である。
図8において、送信タイミング制御部30は、自局宛パケット判定部24から出力された受信完了信号に基づいて、基準タイミングを決定する(ステップS18)。ステップS18の次に、プリアンブル選択部26は、予め設定された複数のPR長の中から、1つのPR長をランダムに選択する(ステップS19)。ステップS19の次に、送信パケット処理部27は、他局宛パケットである送信パケットに含まれるプリアンブルを、ステップS19で選択されたPR長を有するプリアンブルに入れ替えることで、中継パケットを生成し、生成した中継パケットを保存する(ステップS20)。ステップS20の次に、シンボル波形/遅延量選択部29は、ステップS19で選択されたPR長が最も長いPR長であるか否かを判断する(ステップS21)。ここで、PR長が最も長い場合、送信開始タイミングが各中継局121〜124の中で最も早いタイミングとなる。つまり、最も長いPR長を選択した中継局は、最初に中継パケットを送信する。よって、ステップS21においてPR長が最も長いPR長であると判断された場合、他の中継局からは中継パケットが受信されないので、シンボル波形/遅延量推定部28は、他の中継局が選択したシンボル波形および遅延量の推定処理を行わない。つまり、シンボル波形/遅延量推定部28から推定結果信号が得られない。よって、この場合、シンボル波形/遅延量選択部29は、シンボル波形および遅延量からなる複数の組み合わせの中から、1つの組み合わせをランダムに選択する(ステップS22)。一方、ステップS21においてPR長が最も長いPR長ではないと判断された場合、他の中継局からは中継パケットが受信される可能性があるので、シンボル波形/遅延量推定部28は、他の中継局が選択したシンボル波形および遅延量の推定処理を行う。つまり、シンボル波形/遅延量推定部28から推定結果信号が得られる可能性がある。よって、この場合、処理は、ステップS23に進む。
ステップS23において、シンボル波形/遅延量推定部28は、受信ベースバンド信号に含まれる、他の中継局が送信した中継パケットのプリアンブルに基づいて、他の中継局が選択したシンボル波形と遅延量を推定する。ステップS23の次に、シンボル波形/遅延量推定部28は、推定終了タイミングになったか否かを判断する(ステップS24)。推定終了タイミングになったと判断された場合(ステップS24でYes)、シンボル波形/遅延量推定部28は、推定結果が得られたか否かを判断する(ステップS25)。つまり、シンボル波形/遅延量推定部28は、推定結果信号を生成することができたか否かを判断する(ステップS25)。ステップS25において推定結果が得られた場合、シンボル波形/遅延量選択部29は、推定結果信号が示す他の中継局が選択した組み合わせを除いた複数の組み合わせの中から、1つの組み合わせをランダムに選択する(ステップS26)。なお、シンボル波形及び遅延量の組み合わせとは異なる選択可能な組み合わせが複数存在する場合、シンボル波形/遅延量選択部29は、その中からランダムに1つの組み合わせを選択すればよい。一方、ステップS25において推定結果が得られなかった場合、処理はステップS22に進む。ステップS22において、シンボル波形/遅延量選択部29は、シンボル波形及び遅延量の組み合わせをランダムに選択する。
ステップS22およびS26の次に、送信タイミング制御部30は、基準タイミングと、ステップS19で選択されたPR長と、ステップS22およびS26で選択された遅延量と、プリアンブル選択部26が選択し得る複数のPR長のうちの最も短いPR長と用いて、送信開始タイミングを決定する(ステップS27)。ここで、送信開始タイミングは、上述したように、選択した遅延量の分だけ基準タイミングから遅延させたタイミングに対して、プリアンブル選択部26が選択し得る最も短いPR長と自局が選択したPR長との差分だけ早いタイミングとした。このような送信開始タイミングを決定することで、プリアンブル以降のデータに対して、ステップS22またはS26で選択された遅延量を付加することができる。ステップS27の次に、送信タイミング制御部30は、送信開始タイミングになったか否かを判断する(ステップS28)。ステップS28において送信開始タイミングになったと判断された場合、変調部31は、ステップS20で保存された中継パケットを送信パケット処理部27から読み出し、ステップS22またはS26で選択されたシンボル波形で変調し、変調ベースバンド信号として出力する。変調ベースバンド信号は、RF部22においてRF帯の信号に周波数変換された後、アンテナ21から送信される(ステップS29)。
以上のステップにより、無線局が中継局である場合、最も長いPR長を選択した中継局が最初に送信を開始し、次に長いプリアンブルを選択した中継局から順に、送信を開始していく。また、送信開始タイミングを決定することで、プリアンブル以降のデータに対して、選択可能な遅延量を付加することができる。これにより、受信局ではパスダイバーシチ効果が得られ、受信したパケットを誤り無く復調することができる。また、最も長いPR長を選択した中継局は、最初に中継パケットを送信することとなる。したがって、最も長いPR長以外を選択した中継局は、他の中継局が最初に送信した中継パケットのプリアンブルに基づいて、他の中継局が選択しているシンボル波形及び遅延量の組み合わせを推定することができる。これにより、最も長いPR長以外を選択した中継局は、他の中継局が選択しているシンボル波形及び遅延量の組み合わせとは異なる組み合わせを選択することができる。その結果、最大有効ブランチ数に近いパスダイバーシチ効果が得られる。
次に、図9を参照して、第1の実施形態に係る各中継局121〜124の処理例について説明する。図9は、第1の実施形態に係る各中継局121〜124の処理の概要を示した図である。図9には、送信局11が送信した送信パケットおよび各中継局121〜124が送信した中継パケットのタイミングと、各中継局121〜124が参照する参照タイミングと、各中継局122〜124における相関信号とが示されている。図9の例では、中継局121が最も長いPR長(図2のPR4の長さに相当)を選択している。中継局122は2番目に長いPR長(図2のPR3の長さに相当)を選択している。中継局123は3番目に長いPR長(図2のPR2の長さに相当)を選択している。中継局124は最も短いPR長(図2のPR1の長さに相当)を選択している。また図9の例では、送信パラメータとして、2通りのシンボル波形(w1、w2)と、2通りの遅延量(0、T)とから得られる組み合わせの中から1つの組み合わせが選択されるとする。ここでは、中継局121が(シンボル波形w1、遅延量0)を選択し、中継局122が(シンボル波形w1、遅延量T)を選択し、中継局123が(シンボル波形w2、遅延量T)を選択し、中継局124が(シンボル波形w2、遅延量0)を選択する場合を考える。また図9の例では、説明を簡単にするために、各プリアンブル(PR)にハッチングが描かれている。斜線状のハッチングは、プリアンブルがシンボル波形w1で変調されていることを示している。格子状のハッチングは、プリアンブルがシンボル波形w2で変調されていることを示している。
ここで、上述した、受信完了信号が入力されたタイミング、基準タイミング、推定終了タイミング、送信開始タイミング、参照タイミングについて、図9の例を用いて再度説明する。図9に示すt1は、受信完了信号が入力されたタイミング、つまり、送信局11から送信された送信パケットの受信が完了したタイミングである。また図9に示す基準タイミングは、受信完了信号が入力された時点(t1)から、所定の待ち時間が経過したタイミングである。また図9に示すt2は、中継局122における推定終了タイミングである。t3は、中継局123における推定終了タイミングである。t4は、中継局124における推定終了タイミングである。例えば、推定終了タイミングt2は、中継局122が選択し得る最も短いPR長(中継局124のPR長)と中継局122が選択したPR長との時間差の分だけ、基準タイミングよりも早いタイミングである。また例えば、推定終了タイミングt4は、中継局124が選択し得る最も短いPR長(中継局124のPR長)と中継局124が選択したPR長との時間差の分だけ、基準タイミングよりも早いタイミングである。よって、推定終了タイミングt4は、基準タイミングと一致することとなる。このように、推定終了タイミングは、選択したPR長に応じて変わるタイミングであり、選択したPR長が短いほど推定終了タイミングは遅くなる。
また図9において、各中継パケットの先頭の時間は、送信開始タイミングを示している。ここで、例えば、中継局122の中継パケットには遅延量Tが付加されている。この場合、送信開始タイミングは、中継局122で選択された遅延量Tの分だけ、基準タイミングから遅延させたタイミングに対して、中継局122で選択し得る最も短いPR長(中継局124のPR長)と中継局122で選択されたPR長との差分だけ早いタイミングである。よって、中継局122の送信開始タイミングは、図9に示す推定終了タイミングt2よりも遅延量Tだけ遅れたタイミングとなる。また例えば、中継局124では遅延量が0であるので、中継局124の中継パケットには遅延量が付加されていない。この場合、送信開始タイミングは、図9に示すように、基準タイミングと一致することとなる。このように推定終了タイミングは、遅延量が0およびTのいずれであっても、送信開始タイミングより遅くなることはない。これにより、推定終了タイミングまでにシンボル波形及び遅延量の推定が終了することにより、選択された遅延量を付加した送信を正常に行うことができる。
また、図9に示す参照タイミングは、t1をトリガーとして、参照波形R1またはR2と同じ周期でカウントするカウンタによって生成されるタイミングである。参照タイミングは、各中継局121〜124においてそれぞれ生成される。なお、送信局11から各中継局121〜124までの伝搬時間がほぼ同じであれば、各中継局121〜124が生成する参照タイミングは、ほぼ一致する。
次に、図9の例を用いて、各中継局121〜124がどのように送信パラメータの推定を行うかについて説明する。最も長いPR長を選択した中継局121は、図9に示すように、送信開始タイミングが各中継局121〜124の中で最も早いタイミングとなる。つまり、中継局121は、最初に中継パケットを送信する。よって、中継局121は、他の中継局122〜124から中継パケットを受信することができないので、相関信号(図9では図示せず)においてもピークが生じない。その結果、中継局121は、他の中継局122〜124が選択したシンボル波形および遅延量を推定することができない。このため、中継局121は、シンボル波形および遅延量からなる複数の組み合わせの中から、1つの組み合わせをランダムに選択する。図9では、中継局121は、(シンボル波形w1、遅延量0)を選択している。
中継局122は、中継局121の送信したプリアンブルを受信する。中継局122は、受信した中継局121のプリアンブルに基づいて、シンボル波形と遅延量の組み合わせを推定する。中継局122は、t1から推定終了タイミングt2まで推定を行う。
まず、中継局122におけるシンボル波形の推定について説明する。図9に示す中継局122の相関信号c1は、シンボル波形w1で変調されたプリアンブルに対してピークが出力される信号である。中継局122の相関信号c2は、シンボル波形w2で変調されたプリアンブルに対してピークが出力される信号である。また、中継局121の送信したプリアンブルはシンボル波形w1で変調されている。ここで、中継局122においては、相関信号c1のみピークが出力される。これにより、中継局122は、中継局121が選択したシンボル波形がw1であると推定できる。
ここで、遅延量の推定方法について詳細に説明する。相関信号(c1およびc2)のピークが出力されるタイミングの周期は、参照波形R1またはR2の周期と一致する。参照波形R1またはR2の周期は、通常、送信パラメータとして選択可能な遅延量よりも大きくなる。よって、相関信号のピークが出力されるタイミングの周期も、送信パラメータとして選択可能な遅延量よりも大きくなる。例えば、変復調方式としてDSSS方式を用いた場合、送信パラメータとして選択可能な遅延量は拡散符号の1チップ以上の長さ、かつ、拡散符号長未満の長さである。一方、参照波形R1またはR2の1周期は、通常、1拡散符号長(1シンボル長)以上である。ここで、参照波形R1またはR2の周期は、相関信号のピークが出力されるタイミングの周期と一致する。よって、相関信号のピークが出力されるタイミングの周期は、1拡散符号長(1シンボル長)以上となり、送信パラメータとして選択可能な遅延量よりも大きくなる。その結果、例えば、遅延量として0で送信された中継パケットを受信した場合のピークが出力されるタイミングと、遅延量としてTで送信されたパケットを受信した場合のピークが出力されるタイミングとを比較したとき、各タイミングの時間差はピークの1周期よりも大きくならない。このため、各タイミングの時間差を遅延量Tとして推定することができる。なお、相関信号のピークが示す遅延量が1種類しかない場合、遅延量を求めるためのタイミングが必要となる。そこで、図9の例では、参照タイミングを用いている。また、図9に示す参照タイミングは、遅延量として0で送信された中継パケットを受信した場合の相関信号のピークと同位相となるように設定されている。したがって、図9の例では、遅延量が0の場合、相関信号のピークが出力されるタイミングと、参照タイミングとが同じタイミングとなる。また、遅延量がTの場合、相関信号のピークが出力されるいずれか1つのタイミングと、そのいずれか1つのタイミングよりも早く、かつ、最も近い参照タイミングとの時間差がTとなる。また、図9の例では、参照タイミングの周期が、送信パラメータとして選択可能な最大の遅延量(この場合はT)の2倍になるようにしている。このようにすることで、クロックのジッタ等の原因によって相関信号のピークのタイミングが揺らいだ場合にも、遅延量の推定を正しく行うことができる。
中継局122は、上記推定方法を用いて、相関信号c1、c2を元に遅延量を推定する。中継局122において、相関信号c1のピークが出力されるタイミングは、参照タイミングと同位相となっている。よって、中継局122は、中継局121が選択した遅延量が0であることを推定できる。以上より、中継局122は、中継局121によって選択された組み合わせが(シンボル波形w1、遅延量0)であると推定することができる。そして、中継局122は、中継局121とは異なる組み合わせの中から、1つの組み合わせをランダムに選択する。図9の例では、中継局122は、(シンボル波形w1、遅延量T)を選択している。
中継局123は、中継局121および122の送信したプリアンブルをそれぞれ受信する。中継局123は、受信した中継局121および122のプリアンブルに基づいて、シンボル波形と遅延量の組み合わせを推定する。中継局123は、t1から推定終了タイミングt3まで推定を行う。図9では、中継局123の相関信号c1のみにピークが出力されている。これにより、中継局123は、中継局121および122が選択したシンボル波形がともにw1であると推定できる。また、中継局123の相関信号c1には、参照タイミングと同位相のピーク(実線)が出力されている。これにより、中継局123は、遅延量0が選択されていると推定することができる。さらに、中継局123の相関信号c1には、参照タイミングに対してTだけ遅れたピーク(点線)が出力されている。これにより、中継局123は、遅延量Tが選択されていると推定することができる。以上より、中継局123は、中継局121および122によって選択された組み合わせが(シンボル波形w1、遅延量0)と(シンボル波形w1、遅延量T)であると推定することができる。そして、中継局123は、推定した組み合わせとは異なる組み合わせの中から、1つの組み合わせをランダムに選択する。図9の例では、中継局123は、(シンボル波形w2、遅延量T)を選択している。
中継局124は、中継局121〜123の送信したプリアンブルをそれぞれ受信する。中継局124は、受信した中継局121〜123のプリアンブルに基づいて、シンボル波形と遅延量の組み合わせを推定する。中継局124は、t1から推定終了タイミングt4まで推定を行う。図9では、中継局124の相関信号c1およびc2にピークが出力されている。これにより、中継局124は、中継局121〜123が選択したシンボル波形がw1とw2であると推定できる。また、中継局124の相関信号c1には、参照タイミングと同位相のピーク(実線)が出力されている。これにより、中継局124は、シンボル波形w1において、遅延量0が選択されていると推定することができる。さらに、中継局124の相関信号c1には、参照タイミングに対してTだけ遅れたピーク(点線)が出力されている。これにより、中継局124は、シンボル波形w1において、遅延量Tが選択されていると推定することができる。また、中継局124の相関信号c2には、参照タイミングに対してTだけ遅れたピーク(実線)が出力されている。これにより、中継局124は、シンボル波形w2において、遅延量Tが選択されていると推定することができる。以上より、中継局124は、中継局121〜123によって選択された組み合わせが(シンボル波形w1、遅延量0)、(シンボル波形w1、遅延量T)、(シンボル波形w2、遅延量T)であると推定することができる。そして、中継局124は、推定した組み合わせとは異なる組み合わせ(シンボル波形w2、遅延量0)を選択する。
このように、各中継局121〜124が互いに異なるプリアンブルを選択した場合には、各中継局121〜124は、互いに異なる組み合わせを選択することができる。これにより、確実に4ブランチのパスダイバーシチ効果が得られる。なお、仮に、図9において、中継局123と中継局124が同じ長さのプリアンブル(例えば、最も短いプリアンブル)を選択したとする。この場合、中継局123および中継局124は、中継局121および中継局122が選択した組み合わせを推定する。また、中継局123および中継局124は、推定した組み合わせとは異なる組み合わせの中から、ランダムに組み合わせを選択する。したがって、中継局123と中継局124が同じ長さのプリアンブルを選択した場合であっても、4ブランチのパスダイバーシチ効果を得られる可能性がある。
なお、図9の例では、参照タイミングを用いて遅延量を推定したが、これに限定されない。遅延量0か遅延量Tかは、送信局からのパケットを受信完了したタイミングt1と相関信号のピークが出力されるタイミングとの時間差を測定することで推定することができる。例えば、相関信号のピークが出力されるタイミングとt1との時間差を、当該相関信号のピークが出力されるタイミングの周期で除算する。この除算した結果のうち、割り切れない数(余り)が遅延量に応じた値となる。よって、この余りを求めることで、遅延量を推定することができる。
また、図9の例では、参照タイミングの位相は遅延量0の場合の相関信号と同位相になるようにしてあるが、これに限定されない。それぞれの遅延量に対して、相関信号のピークが出力されるタイミングと参照タイミングとの位相関係をあらかじめ把握しておけば、参照タイミングの位相は、遅延量0の場合の相関信号と同位相にする必要はない。
次に、図10を参照して、パスダイバーシチ効果が得られる確率の計算結果を示す。なお、図10において、一番左の列は、各中継局121〜124が選択する各PR長の選択パターンを、8通りに場合分けした列である。(a)の列は、(1)〜(8)の各パターンとなる確率を求めた列である。(b)〜(e)の各列は、(1)〜(8)の各パターンとなった場合に、1〜4ブランチのパスダイバーシチ効果が得られる確率をそれぞれ求めたものである。一番下の行の平均確率は、(a)列と(b)〜(e)列の確率を乗算して平均化したものである。また図10では、例えば、最大有効ブランチ数が4(例えば、2通りのシンボル波形と、2通りの遅延量とから選択される場合の最大有効ブランチ数)、PR長が4種類、中継局が4局の場合に、パスダイバーシチ効果が得られる確率を計算している。
(1)は、全ての中継局121〜124が同じPR長を選択したパターンを示す。ここで、4局が同じPR長を選択するパターンは、4通りある。また、(1)において、各PR長は同じ長さであるので、各中継局121〜124は中継パケットを同時に送信する。このため、各中継局121〜124は、送信パラメータの推定を行うことができないので、ランダムに送信パラメータの組み合わせを決定する。よって、送信パラメータの組み合わせの選択パターンについて、起こりうるパターンは44通り(256通り)である。よって、(1)となる確率は、(1)の(a)の欄に示すように、4/256(=1/64)となる。また(1)の場合において、(b)の1ブランチとなる確率は1/64であり、(c)の2ブランチとなる確率は21/64であり、(d)の3ブランチとなる確率は9/16であり、(e)の4ブランチとなる確率は3/32である。例えば(b)において、1種類の送信パラメータの組み合わせを各中継局121〜124が選択するパターンは1通りであり、送信パラメータが4つある。よって、(b)の1ブランチとなる確率は、4/256(=1/64)となる。また(c)において、2種類の送信パラメータを各中継局121〜124が選択するパターンは、全部で14通りである。よって、(c)の2ブランチとなる確率は、6×14/256=21/64となる。
(2)は、中継局121〜124のうち、3局が同じPR長(長PR)を選択し、長PRより短いPR長(短PR)を残りの1局が選択した場合のパターンを示す。(2)となる確率は、(2)の(a)の欄に示すように、3/32となる。(2)の場合、短PRを選択した1局が、他の3局が選択した送信パラメータを推定できるので、必ず2ブランチ以上のパスダイバーシチ効果が得られる。よって、(b)の1ブランチとなる確率は0であり、(c)の2ブランチとなる確率は1/64であり、(d)の3ブランチとなる確率は9/16であり、(e)の4ブランチとなる確率は3/8である。
(3)は、中継局121〜124のうち、2局が同じPR長(長PR)を選択し、長PRより短いPR長(短PR)を残りの2局が選択した場合のパターンを示す。(3)となる確率は、(3)の(a)の欄に示すように、9/64となる。(3)の場合、短PRを選択した2局が、他の2局が選択した送信パラメータを推定できるので、必ず2ブランチ以上のパスダイバーシチ効果が得られる。よって、(b)の1ブランチとなる確率は0であり、(c)の2ブランチとなる確率は1/12であり、(d)の3ブランチとなる確率は13/24であり、(e)の4ブランチとなる確率は3/8である。
(4)は、中継局121〜124のうち、1局がPR長(長PR)を選択し、長PRより短いPR長(短PR)を残りの3局が選択した場合のパターンを示す。(4)となる確率は、(4)の(a)の欄に示すように、3/32となる。(4)の場合、短PRを選択した3局が、他の1局が選択した送信パラメータを推定できるので、必ず2ブランチ以上のパスダイバーシチ効果が得られる。よって、(b)の1ブランチとなる確率は0であり、(c)の2ブランチとなる確率は1/9であり、(d)の3ブランチとなる確率は2/3であり、(e)の4ブランチとなる確率は2/9である。
(5)は、中継局121〜124のうち、2局が同じPR長(長PR)を選択し、他の1局が長PRより短いPR長(中PR)を選択し、残りの1局が中PRより短いPR長(短PR)を選択した場合のパターンを示す。(5)となる確率は、(5)の(a)の欄に示すように、3/16となる。(5)の場合、中PRを選択した1局が、長PRを選択した2局の送信パラメータを推定できる。また、短PRを選択した1局が、長PRを選択した2局と中PRを選択した1局の送信パラメータを推定できる。これにより、(5)の場合、必ず3ブランチ以上のパスダイバーシチ効果が得られる。よって、(b)の1ブランチとなる確率は0であり、(c)の2ブランチとなる確率は0であり、(d)の3ブランチとなる確率は1/4であり、(e)の4ブランチとなる確率は3/4である。
(6)は、中継局121〜124のうち、1局が同じPR長(長PR)を選択し、他の2局が長PRより短いPR長(中PR)を選択し、残りの1局が中PRより短いPR長(短PR)を選択した場合のパターンを示す。(6)となる確率は、(6)の(a)の欄に示すように、3/16となる。また、(6)の場合、(b)の1ブランチとなる確率は0であり、(c)の2ブランチとなる確率は0であり、(d)の3ブランチとなる確率は1/3であり、(e)の4ブランチとなる確率は2/3である。また、(7)は、中継局121〜124のうち、1局が同じPR長(長PR)を選択し、他の1局が長PRより短いPR長(中PR)を選択し、残りの2局が中PRより短いPR長(短PR)を選択した場合のパターンを示す。(7)となる確率は、(7)の(a)の欄に示すように、3/16となる。また、(7)の場合、(b)の1ブランチとなる確率は0であり、(c)の2ブランチとなる確率は0であり、(d)の3ブランチとなる確率は1/2であり、(e)の4ブランチとなる確率は1/2である。また、(8)は、各中継局121〜124が互いに異なるPR長を選択したパターンを示す。(8)となる確率は、(8)の(a)の欄に示すように、3/32となる。(8)の場合、各中継局121〜124が互いに異なるPR長を選択しているので、必ず4ブランチ以上のパスダイバーシチ効果が得られる。
また、図10に示す平均確率において、例えば、最大有効ブランチ数に等しい4ブランチのパスダイバーシチ効果が得られる確率は、「3461/6144=0.5633・・・」となる。つまり、半分以上の確率で最大有効ブランチ数に等しいパスダイバーシチ効果が得られることがわかる。また、2ブランチ以上のパスダイバーシチ効果が得られる確率は、「407/12288+413/1024+3461/6144=0.9997・・・」と高い確率となる。したがって、本実施形態に係る無線伝送システム1では、ほぼ確実に2ブランチ以上のパスダイバーシチ効果が得られるといえる。
以上のように、本実施形態では、各中継局121〜124が異なる長さのPR長を選択するように処理を行っている。これにより、例えば、中継局121が選択したPR長が中継局122の選択したPR長よりも長い場合、中継局122は、中継パケットを送信するまでの間に、中継局121の中継パケットを受信することができる。そして、中継局122は、中継局121の中継パケットのプリアンブルに基づいて、中継局121が選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせを推定し、推定した組み合わせとは異なる組み合わせを選択することができる。これにより、本実施形態によれば、各中継局121〜124が互いに異なるシンボル波形と遅延量の組み合わせで中継パケットを送信する確率を高めることができる。その結果、受信局13においてパスダイバーシチ効果を得ることが可能となる。また、本実施形態によれば、最大有効ブランチ数に等しいパスダイバーシチ効果を得る可能性を向上させることができ、無線伝送システム1の有するパスダイバーシチ効果を最大限に発揮することができる。
なお、上述では、プリアンブル選択部26が選択するPR長は、図2に示すように、予め決められた4種類の長さ(プリアンブルPR1〜PR4の長さ)の中から選択されるとしたが、PR長の種類は4種類に限られない。PR長の種類は、3種類以下でもよいし、5種類以上でもよい。各中継局121〜124がより多くの、長さの異なるPR長を選択できるようにすることで、各中継局121〜124が選択するPR長が互いに異なる確率が高くなる。これにより、他の中継局が選択した送信パラメータと異なる送信パラメータを選択する確率が高くなり、最大有効ブランチ数に等しいパスダイバーシチ効果を得る可能性が向上する。また、プリアンブル選択部26が選択するPR長を極端に長くすると、情報データではないプリアンブル部分が増大することになるので、伝送効率が低下する。したがって、PR長の上限値は適切な長さに設定するのがよい。また、プリアンブル選択部26が選択するPR長は、あらかじめ決められた範囲内でランダムに選択してもよい。例えば、最短のPR長を32シンボル長、最長のPR長を64シンボル長とした場合、プリアンブル選択部26は、シンボル長単位で任意のPR長(32、33、34、〜、63、64の中の任意のPR長)を選択することになる。
なお、上述では、プリアンブルのデータ列が1種類であるとした。したがって、上述では、1種類のプリアンブルのデータ列を2種類のシンボル波形w1およびw2で変調することで、2種類のプリアンブルの波形が得られていた。つまり、シンボル波形の種類数と、プリアンブルの波形の種類数とが1対1の関係にあった。これに対し、送信パラメータの種類数とプリアンブル波形の種類数を1対1に対応させてもよい。つまり、上述では送信パラメータが4種類((シンボル波形w1、遅延量0)、(シンボル波形w1、遅延量T)、(シンボル波形w2、遅延量0)、(シンボル波形w2、遅延量T))ある例を示したが、それぞれの送信パラメータに対して4種類のプリアンブル波形を対応させてもよい。プリアンブルの波形を4種類にするには、プリアンブルのデータ列を1種類とし、シンボル波形の種類を4種類とする方法と、プリアンブルのデータ列を2種類とし、シンボル波形の種類を2種類とする方法がある。例えば、プリアンブルのデータ列を「1010…」と「1100…」の2種類を用意しておき、それぞれのデータ列をシンボル波形w1、w2で変調する。これにより、4種類の異なるプリアンブル波形を生成することができる。ここでは、4種類のプリアンブル波形をプリアンブル波形pwA〜pwDとする。また、プリアンブル波形pwAおよびpwBは、シンボル波形w1に基づく波形とし、プリアンブル波形pwCおよびpwDは、シンボル波形w2に基づく波形とする。なお、プリアンブルのデータ列を2種類とする場合、プリアンブル選択部26がPR長を選択するとともに、プリアンブルのデータ列についても選択するようにすればよい。このとき、送信パケット処理部27は、他局宛パケットである送信パケットに含まれるプリアンブルのデータ列を、プリアンブル選択部26が選択したデータ列を有するプリアンブルに入れ替える。
このようにして得られた4種類のプリアンブル波形pwA〜pwDを、それぞれ4種類の送信パラメータ(シンボル波形w1、遅延量0)、(シンボル波形w1、遅延量T)、(シンボル波形w2、遅延量0)、(シンボル波形w2、遅延量T)と1対1に対応付けておく。例えば、送信パラメータとして(シンボル波形w1、遅延量0)を選択した場合には、プリアンブル波形pwAをもつプリアンブルでパケットを生成し、プリアンブルより後ろの部分については、シンボル波形w1でデータを変調する。
ここで、送信パラメータとプリアンブル波形を1対1に対応させる場合、図4に示したシンボル波形/遅延量推定部28の構成は図11に示すシンボル波形/遅延量推定部28aの構成になる。図11は、送信パラメータとプリアンブル波形を1対1に対応させる場合のシンボル波形/遅延量推定部28aの構成を示すブロック図である。図11において、シンボル波形/遅延量推定部28aは、相関部281a〜281d、参照波形RA保持部282c、参照波形RB保持部282d、参照波形RC保持部282e、参照波形RD保持部282f、および、タイミング判定部283cにより構成される。相関部281a〜281dは、図4に示した相関部281a、281bと同じ機能を有する。参照波形RA保持部282cは、プリアンブル波形pwAの波形データを参照波形RAとして保持している。参照波形RB保持部282dは、プリアンブル波形pwBの波形データを参照波形RBとして保持している。参照波形RC保持部282eは、プリアンブル波形pwCの波形データを参照波形RCとして保持している。参照波形RD保持部282fは、プリアンブル波形pwDの波形データを参照波形RDとして保持している。タイミング判定部283cは、各相関部281a〜281dから出力される相関信号c1〜c4を元に推定結果信号を出力する。どの相関信号c1〜c4にピークが出力されたかで、どの送信パラメータが他の中継局に選択されたかを判断することができる。
上述のように、送信パラメータのうちのシンボル波形と、プリアンブル波形とが1対1に対応する場合、実質的には、2つの相関信号c1およびc2それぞれに対してピークが出力されるか否かと、相関信号c1およびc2にピークが出力されるタイミングとによって、シンボル波形と遅延量を推定していた。これに対し、送信パラメータとプリアンブル波形が1対1に対応する場合、4つの相関信号c1〜c4それぞれにピークが出力されるか否かのみで、シンボル波形と遅延量を推定することができる。これにより、2つの相関信号c1およびc2を用いて推定する場合に比べて、推定の精度を上げることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明における第2の実施形態に係る無線伝送システム2について説明する。第1の実施形態では、送信局11が最初に送信パケットを送信した後は、各中継局121〜124のみが中継パケットを送信していた。これに対し、本実施形態では、各中継局121〜124が中継パケットを送信する際に、送信局11も中継パケットを送信することを特徴とする。なお、第1の実施形態に係る送信局11と区別するために、本実施形態に係る送信局の参照符号を11aとしている。
図12は、第2の実施形態に係る無線伝送システム2の構成を示す図である。図12に示す無線伝送システム2の構成は、図1に示した構成に対し、送信局11が送信局11aに入れ代わった点で異なる構成である。それ以外の構成については、図1に示した構成と同様であるため、図1と同様の符号を付し、説明を省略する。図12において、点線矢印は、送信局11aが1回目に送信した送信パケットが、各中継局121〜124において受信されることを示している。また実線矢印は、各中継局121〜124が中継パケットを送信すると共に、送信局11aも中継パケットを再送することを示している。つまり、送信局11aは、送信パケットを送信する場合と、中継パケットを送信する場合の2回、送信処理を行っている。
送信局11aは、送信パケットを送信した後、中継パケットを送信するための基準タイミングを算出する。基準タイミングは、送信パケットを送信したタイミングに、各中継局121〜124までの伝搬時間および所定の待ち時間を加算したタイミングとなる。本実施形態では、送信局11aおよび各中継局121〜124の間の伝搬時間は無視できる程度に小さいものとして説明する。したがって、送信局11aは、送信パケットを送信したタイミングから所定の待ち時間経過後を基準タイミングとして算出する。なお、所定の待ち時間は、各中継局121〜124が基準タイミングを決定するための所定時間に等しいものとする。送信局11aは、中継パケットを送信する際、各中継局121〜124と同様に、複数のPR長の中から1つのPR長をランダムに選択する。そして、送信局11aは、各中継局121〜124が送信した中継パケットに基づいて、各中継局121〜124が選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせを推定する。そして、送信局11aは、推定されたシンボル波形と遅延量の組み合わせとは異なる組み合わせを選択する。
図13は、第2の実施形態に係る送信局11aおよび各中継局121〜124の処理の概要を示した図である。図9に示した処理の概要とは、送信局11aが中継パケットを送信している点と、参照タイミングや各相関信号を省略している点だけが異なる。よって、各中継局121〜124の処理については説明を省略する。図13において、送信局11aは、2番目に長いプリアンブル長を選択している。したがって、送信局11aは、中継局121の送信した中継パケットのプリアンブル(PR)部分から、中継局121が選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせを推定する。そして、送信局11aは、中継局121とは異なるシンボル波形と遅延量の組み合わせ(図13では、シンボル波形w2、遅延量0)を選択し、選択した組み合わせに基づいて中継パケットを生成する。送信局11aは、自身が決定した再送信開始タイミングで、生成した中継パケットを送信する。再送信開始タイミングの決定方法は、各中継局121〜124の送信開始タイミングと同様の方法を用いる。
以上のように、本実施形態によれば、各中継局121〜124が中継パケットを送信する際に、送信局11aも中継パケットを送信する。これにより、中継パケットを送信する無線局の数が増加することとなり、より高い確率でパスダイバーシチ効果を得ることができる。
なお、図13において、中継局124は、最も短いプリアンブル長を選択している。したがって、中継局124は、送信局11aおよび中継局121〜123が選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせを推定する。このとき、図13に示すように、送信局11aおよび中継局121〜123によって、全てのシンボル波形と遅延量の組み合わせが選択されている。したがって、中継局124は、推定処理によって全てのシンボル波形と遅延量の組み合わせが選択されていることを認識する。このとき、中継局124は、ランダムにシンボル波形と遅延量の組み合わせを1つ選択してもよい。あるいは、中継局124は、全てのシンボル波形と遅延量の組み合わせが選択されていることを認識した場合、中継パケットの送信を行わないようにしてもよい。この場合の具体的な処理としては、中継局124において、シンボル波形/遅延量選択部29は、予め記憶された複数の組み合わせの全てが、シンボル波形/遅延量推定部28において推定された組み合わせのいずれかに該当する場合、選択処理を中止する。このとき、シンボル波形/遅延量選択部29は、変調部31に選択中止信号を出力する。変調部31は、選択中止信号が入力された場合、送信タイミング制御部30から送信開始信号が入力されても、変調処理を行わないように動作する。送信局11aおよび中継局121〜123の4局で送信した中継パケットによって、すでに最大有効ブランチ数(=4)に等しいパスダイバーシチ効果が得られているので、中継局124が中継パケットを送信しなくても、パスダイバーシチ効果の大きさにはさほど影響はない。ただし、中継局124が中継パケットを送信することで、受信局13における受信電力は増大する。このため、中継局124が中継パケットを送信することで、受信電力の増大による伝送特性が改善されるという効果がある。一方で、中継局124が中継パケットを送信することを中止する場合、中継局124の消費電力を低減できるという効果がある。
(第3の実施形態)
以下、本発明における第3の実施形態に係る無線伝送システム3について説明する。第2の実施形態では、送信局11aは、送信パケットと中継パケットを送信していた。これに対し、本実施形態では、送信局11aは、中継パケットを送信する際に、各中継局121〜124が選択できるシンボル波形と遅延量の組み合わせとは異なるシンボル波形と遅延量の組み合わせを選択して中継パケットを送信することを特徴とする。なお、本実施形態に係る無線伝送システム3の構成は、第2の実施形態と同様であるため、図12を援用する。また、各中継局121〜124および受信局13の動作は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
送信局11aは、送信パケットを送信した後、再送信開始タイミングで中継パケットを送信する。再送信開始タイミングは、基準タイミングから、選択した遅延量だけ遅延させたタイミングである。このとき、送信局11aは、各中継局121〜124が選択可能なシンボル波形と遅延量の組み合わせとは異なるシンボル波形と遅延量の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて中継パケットを生成する。送信局11aは、自身が決定した再送信開始タイミングで、生成した中継パケットを送信する。
ここで、シンボル波形と遅延量の組み合わせが、2種類のシンボル波形w1、w2と、2種類の遅延量0、Tとからなる場合を例に説明する。例えば、送信局11aが選択可能なシンボル波形と遅延量の組み合わせを、シンボル波形w1と遅延量0と設定しておく。また、各中継局121〜124が選択可能なシンボル波形と遅延量の組み合わせを、シンボル波形w1と遅延量T、シンボル波形w2と遅延量0、シンボル波形w2と遅延量Tの3つと設定しておく。つまり、送信局11aでは、シンボル波形w1と遅延量0の組み合わせが選択され、各中継局121〜124ではシンボル波形w1と遅延量T、シンボル波形w2と遅延量0、シンボル波形w2と遅延量Tの3つの組み合わせのうちの少なくとも1つが選択されることとなる。したがって、本実施形態では、確実に2ブランチのパスダイバーシチ効果を得ることができる。なお、この場合、送信局11aでは、予め設定された組み合わせ(シンボル波形w1と遅延量0)を用いて、中継パケットを受信局13に送信することとなる。つまり、この場合、送信局11aでは、各中継局121〜124が選択した組み合わせを推定する必要がない。また、送信局11aが中継パケットを送信する際には、長いプリアンブルを用いて送信する必要がない。これは、送信局11aが選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせを、各中継局121〜124に推定させる必要が無いからである。したがって、送信局11aは、最も短いPR長を選択してもよい。この場合、送信局11aの中継パケットは、各中継局121〜124の中継パケットよりも遅いタイミングで送信されることとなる。これにより、各中継局121〜124の送信パラメータの推定に与える影響を少なくすることができる。
以上のように、本実施形態では、送信局11aが中継パケットを送信する場合に、送信局11aが選択できるシンボル波形と遅延量の組み合わせと、各中継局121〜124が選択できるシンボル波形と遅延量の組み合わせとを予め分けておく。これにより、本実施形態では、確実に2ブランチのパスダイバーシチ効果を得ることができる。さらに、送信局11aが選択できるシンボル波形と遅延量の組み合わせを1つに限定しておけば、各中継局121〜124が選択できる送信パラメータが増えることとなる。これにより、パスダイバーシチ効果が得られる確率をさらに高めることができる。
なお、上述では、一例として、送信局11aが所定の組み合わせを1つ選択する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、送信局11aおよび各中継局121〜124が選択できるシンボル波形と遅延量の組み合わせを、シンボル波形で分けておいてもよいし、遅延量で分けておいてもよい。前者の場合、送信局11aは所定のシンボル波形を選択し、各中継局121〜124は送信局11aが選択するシンボル波形以外のシンボル波形を選択するように設定しておく。また遅延量については、送信局11aおよび各中継局121〜124は、どれでも選択できるように設定しておく。この場合、送信局11aと各中継局121〜124とは、互いに同じ遅延量を選択する可能性はあるが、必ず異なるシンボル波形を選択できる。これにより、確実に2ブランチのパスダイバーシチ効果を得ることができる。また、後者の場合、送信局11aは所定の遅延量を選択し、各中継局121〜124は送信局11aが選択する遅延量以外の遅延量を選択するように設定しておく。またシンボル波形については、送信局11aおよび各中継局121〜124は、どれでも選択できるように設定しておく。この場合、送信局11aと各中継局121〜124とは、互いに同じシンボル波形を選択する可能性はあるが、必ず異なる遅延量を選択できる。これにより、確実に2ブランチのパスダイバーシチ効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明における第4の実施形態に係る無線伝送システム4について説明する。第1の実施形態では、各中継局121〜124は、他の中継局から送信された中継パケットが入力される度に、シンボル波形と遅延量の組み合わせを推定していた。これに対し、本実施形態では、各中継局121〜124は、自局が受信した送信パケットを送信した送信局11が過去に受信した送信局と同じである場合、推定を行わずに、そのときに選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせを用いることを特徴とする。
図14は、第4の実施形態に係る無線局の構成を示す図である。図14に示す無線局の構成は、図3に示した無線局の構成に対し、自局宛パケット判定部24がアドレス判定部32に入れ代わった点で異なる構成である。それ以外の構成については、図3に示した構成と同様であるため、図3と同一の符号を付し、説明を省略する。なお、処理については、シンボル波形/遅延量選択部29およびプリアンブル選択部26の処理が図3に示した無線局の処理と異なる。
アドレス判定部32は、図1に示した自局宛パケット判定部24の処理に加えて、さらに、受信中の送信パケットから送信元アドレスを検出する。そして、アドレス判定部32は、検出した送信元アドレスをシンボル波形/遅延量選択部29に出力する。シンボル波形/遅延量選択部29には、過去に受信した送信局11を示す送信元アドレスと、そのときに選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせとが対応付けされた対応情報がさらに記憶されている。シンボル波形/遅延量選択部29は、対応情報を参照して、アドレス判定部32で検出された送信元アドレスが過去に受信した送信局11と一致するか否かを判断する。検出された送信元アドレスが過去に受信した送信局11と一致する場合、シンボル波形/遅延量選択部29は、対応情報を参照して、検出された送信元アドレスと対応するシンボル波形と遅延量の組み合わせを選択する。なお、対応情報は、過去に受信した送信局11を示す送信元アドレスと、そのときに選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせとの対応を少なくとも1つ含む情報であればよい。また、シンボル波形/遅延量選択部29は、送信パケットを受信する度に対応情報を更新するようにしてもよい。また、シンボル波形/遅延量選択部29は、第1の実施形態におけるシンボル波形/遅延量選択部29に対し、対応情報がさらに記憶される点と、対応情報を用いた処理をさらに行う点で異なる。
次に、図15を参照して、第4の実施形態に係る無線局の動作について説明する。図15は、第4の実施形態に係る無線局の動作を示すフローチャートである。なお、図15に示すAは、図7に示したAに接続されるものである。図15に示すAより前の処理は、図7に示した処理と同様である。図7において、受信されたパケットが他局宛パケットである判断された場合(ステップS16でNo)、処理はAを介して図15のステップS30に進む。図15において、シンボル波形/遅延量選択部29は、対応情報を参照して、アドレス判定部32で検出された送信元アドレスが過去に受信した送信局11と一致するか否かを判断する(ステップS30)。検出された送信元アドレスが過去に中継した送信局11と一致する場合(ステップS30でYes)、シンボル波形/遅延量選択部29は、対応情報を参照して、検出された送信元アドレスと対応するシンボル波形と遅延量の組み合わせを選択する(ステップS31)。ステップS31の次に、送信タイミング制御部30は、アドレス判定部32から出力された受信完了信号に基づいて、基準タイミングを決定する(ステップS32)。ステップS32の次に、プリアンブル選択部26は、所定のPR長を選択する(ステップS33)。ステップS33の次に、送信パケット処理部27は、他局宛パケットである送信パケットに含まれるプリアンブルを、ステップS33で選択されたPR長を有するプリアンブルに入れ替えることで、中継パケットを生成し、生成した中継パケットを保存する(ステップS34)。
一方、検出された送信元アドレスが過去に受信した送信局11と一致しない場合(ステップS30でNo)、処理はステップS18に進む。ステップS18〜S26は、図8に示したステップS18〜S26と同じ処理であるため、説明を省略する。ステップS34の次に、送信タイミング制御部30は、基準タイミングと、ステップS33で選択されたPR長と、ステップS31、S22、またはS26で選択された遅延量と、プリアンブル選択部26が選択し得る複数のPR長のうちの最も短いPR長と用いて、送信開始タイミングを決定する(ステップS35)。ステップS35の次に、送信タイミング制御部30は、送信開始タイミングになったか否かを判断する(ステップS36)。ステップS36において送信開始タイミングになったと判断された場合、変調部31は、ステップS20またはS34で保存された中継パケットを送信パケット処理部27から読み出し、ステップS31、S22、またはS26で選択されたシンボル波形で変調し、変調ベースバンド信号として出力する。変調ベースバンド信号は、RF部22においてRF帯の信号に周波数変換された後、アンテナ21から送信される(ステップS37)。ステップS37の次に、シンボル波形/遅延量選択部29は、ステップS26で選択されたシンボル波形および遅延量を記憶する(ステップS38)。
なお、ステップS33で選択された所定のPR長は、いずれの長さであってもよい。例えば、図2に示したプリアンブル長の中で最も短いプリアンブル長を選択した場合、シンボル波形と遅延量の組み合わせを推定する場合に比べて、送信局11から受信局13までの中継時間を短縮することができる。
次に、図16を参照して、第4の実施形態に係る送信局11および各中継局121〜124の処理例について説明する。図16は、第4の実施形態に係る送信局11および各中継局121〜124の処理の概要を示した図である。図16において、送信パケットC1は、送信局11から1回目に送信された送信パケットである。送信パケットC2は、送信局11から2回目に送信された送信パケットである。ここで、送信パケットC1が送信された場合の処理は、図9で説明した処理と同様であるため、説明を省略する。2回目に送信局11から送信パケットC2が送信された場合、各中継局121〜124は、前回受信した送信局11から送信パケットが送信されたことを認識する。各中継局121〜124は、シンボル波形と遅延量の組み合わせの推定を行わずに、前回選択した組み合わせに従って中継パケットを送信する。図16では、中継局121はシンボル波形w1と遅延量0を選択し、中継局122はシンボル波形w1と遅延量Tを選択し、中継局123はシンボル波形w2と遅延量Tを選択し、中継局124はシンボル波形w2と遅延量0を選択する。さらに、各中継局121〜124は、選択可能なPR長のうち、最も短いPR長を選択している。
以上のように、本実施形態によれば、シンボル波形/遅延量選択部29には、過去に受信した送信局11を示す送信元アドレスと、そのときに選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせとが対応付けされた対応情報が記憶されている。これにより、各中継局121〜124は、自局が受信した送信パケットを送信した送信局11が過去に受信した送信局と同じである場合、推定を行わずに、そのときに選択したシンボル波形と遅延量の組み合わせを用いることができる。
なお、上述した各実施形態においては、送信パラメータが、2種類のシンボル波形(シンボル波形w1、w2)と2種類の遅延量(遅延量0、T)とで構成される場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、送信パラメータは、3種類以上のシンボル波形と3種類以上の遅延量とで構成されてもよい。一般的に、送信パラメータがk種類のシンボル波形と、m種類の遅延量とで構成される場合には、最大有効ブランチ数は(k×m)になる。なお、パスダイバーシチ効果を得るための送信パラメータは、複数種類のシンボル波形と、1種類の遅延量とで構成されてもよい。この場合、パスダイバーシチ効果を得るための送信パラメータは、複数種類のシンボル波形のみとなる。なお、パスダイバーシチ効果を得るための送信パラメータは、1種類のシンボル波形と、複数種類の遅延量とで構成されてもよい。この場合、パスダイバーシチ効果を得るための送信パラメータは、複数種類の遅延量のみとなる。パスダイバーシチ効果を得るための送信パラメータとして複数種類のシンボル波形を用いる場合には、互いに相関の低いシンボル波形を用いればよい。また、複数種類の遅延量を用いる場合には、各遅延量の差が遅延分解能以上となり、かつ、最大の遅延量と最小の遅延量との差が遅延上限以下となるように遅延量を設定すればよい。
なお、上述した各実施形態においては、上記(E)のシステムを適用した場合を例に説明したが、これ以外のシステムを用いてもよい。これ以外のシステムを適用する場合には、適用するシステムに応じた変調部31と復調部23を用いればよい。このため、変調部31と復調部23以外の構成は図3に示す無線局の構成をそのまま援用することができる。例えば、上記(E)に示したシステムは、上記(A)に示したスペクトル拡散方式の1つであるDSSS方式の原理を利用したシステムである。このため、DSSS方式の拡散方法、および逆拡散方法を変えることで、同じスペクトル拡散方式である、FHSS方式、THSS方式へも適用することが可能である。
また、送信パラメータとして遅延量のみを用いる場合、上記(B)のシステムを適用することも可能である。OFDM方式を用いる場合、各遅延量差を複数のサブキャリアを含む周波数帯域幅の逆数以上とし、かつ、最大遅延量と最小遅延量との差をガード区間長未満となるようにすればよい。また、上記(C)のシステムを適用することも可能である。PSK−VP方式、PSK−RZ方式を用いる場合、各遅延量差を遅延分解能であるシンボル長の数分の1以上とし、かつ、最大遅延量と最小遅延量との差を1シンボル長未満となるように、中継局が選択できる遅延量を設定すればよい。また、DSK方式を用いる場合、各遅延量差を遅延分解能であるシンボル長の数分の1以上とし、かつ、最大遅延量と最小遅延量との差を0.5シンボル長未満となるようにすればよい。また、上記(D)のシステムを適用することも可能である。等化器を用いる場合、各遅延量差を1シンボル長以上とし、かつ、最大遅延量と最小遅延量との差をタップ数で決まる遅延上限以下となるようにすればよい。
なお、上記(F)のシステムを適用することも可能である。上記(F)のシステムを適用した場合の変調部31の構成を図17に示す。図17は、上記(F)のシステムに適用した場合の変調部31の詳細な構成を示すブロック図である。図17において、変調部31は、読み出し制御部312と、波形1生成部318a、波形2生成部318b、セレクタ319、およびD/A変換器317により構成される。なお、波形生成部の数は、無線伝送システムで用いられるシンボル波形の数に対応する。
読み出し制御部312は、ベースクロックで動作するカウンタで構成されている。読み出し制御部312は、送信開始信号を受け取ると、カウンタ値に基づいて、送信パケットまたは中継パケットを読み出すためのデータ読み出しクロックを生成する。読み出し制御部312は、生成したデータ読み出しクロックを送信パケット処理部27に渡す。送信パケット処理部27は、受け取ったデータ読み出しクロックにしたがって、送信パケットまたは中継パケットを読み出して変調部31の読み出し制御部312に渡す。読み出し制御部312は、送信パケット処理部27から送信パケットまたは中継パケットを受け取ると、送信パケットまたは中継パケットに対して差動符号化を行う。そして、読み出し制御部312は、波形生成部のデータを読み出すためのアドレスを示すアドレス信号を生成する。アドレス信号は、波形1生成部318aおよび波形2生成部318bに出力される。
波形1生成部318aおよび波形2生成部318bは、送信パケットまたは中継パケットに応じたシンボル波形のデータを、入力されたアドレス信号に基づいて波形メモリから読み出す。これにより、波形1生成部318aおよび波形2生成部318bは、差動符号化したデータに対して位相変調した、変調ベースバンド信号を生成する。なお、波形1生成部318aおよび波形2生成部318bの波形メモリには、予め、それぞれ別々のシンボル波形のデータが格納されている。波形1生成部318aおよび波形2生成部318bに格納するシンボル波形のデータについては、後で詳述する。セレクタ319は、シンボル波形/遅延量選択部29から出力されたシンボル波形選択信号にしたがって、波形1生成部318aおよび波形2生成部318bが出力する信号のうち、いずれかを選択してD/A変換器317へ出力する。D/A変換器317は、セレクタ319から出力される信号をアナログ信号に変換し、変調ベースバンド信号として出力する。
図18は、波形1生成部318aおよび波形2生成部318bが記憶するシンボル波形の位相遷移の一例を示した模式図である。例えば、波形1生成部318aが任意のシンボルとして記憶するシンボル波形w1の位相遷移は、図18における実線で示されるようになる。1シンボル長Tにおいて、シンボル波形w1の位相遷移は、位相について時間方向に増加傾向にある。また、シンボル波形w1において、位相の時間変化量は非負であり、かつ、位相の時間変化量の絶対値は、シンボル波形の前半は減少傾向にあり、後半は増加傾向にある。また例えば、波形2生成部318bが任意のシンボルとして記憶するシンボル波形w2の移相遷移は、図18における点線で示されるようになる。1シンボル長Tにおいて、シンボル波形w2の移相遷移は、位相について時間方向に減少傾向にある。また、位相の時間変化量は非正であり、かつ、位相の時間変化量の絶対値はシンボル波形の前半は減少傾向にあり、後半は増加傾向にある。なお、波形1生成部318aおよび波形2生成部318bが記憶するシンボル波形としては、互いに相関の低いシンボル波形であれば、この2つに限られない。また、波形1生成部318aおよび波形2生成部318bが3つ以上の互いに相関の低いシンボル波形を記憶して用いることも可能である。
以上のように、図17に示す変調部31は、送信開始信号を受け取ってから、シンボル波形を波形メモリから読み出すためのアドレス信号を生成する。これにより、変調ベースバンド信号を出力するタイミングは、送信開始信号を受け取ったタイミングに応じてベースクロック単位で変化する。また、ベースクロックは、通常、シンボル周波数(シンボル長の逆数)の数倍から十数倍の周波数が用いられることが多い。したがって、シンボル長の数分の1から十数分の1の単位で、変調ベースバンド信号を出力するタイミングを調整することができる。また、図17に示す変調部31は、複数の波形生成部(波形1生成部318a、波形2生成部318b)を備えることで、シンボル波形選択信号に応じて、所望のシンボル波形で変調された変調ベースバンド信号を生成することができる。
図19は、上記(F)に示したパスダイバーシチのシステムを用いた場合の復調部23の構成を示すブロック図である。図19に示す復調部23は、遅延検波部237、検波後フィルタ238、データ判定部239により構成される。遅延検波部237は、受信ベースバンド信号を遅延検波する。検波後フィルタ238は遅延検波した信号を合成し、検波信号を出力する。データ判定部239は、検波信号を判定して復調データを出力する。複数の送信局から互いに異なる位相冗長波形で変調された信号が送信された場合に、図19に示す復調部23で復調することで、正しく復調できる理由を以下に説明する。受信局には、複数の異なる位相冗長波形が重なった信号が入力される。このとき、隣接するシンボルでも同様の重なった信号が得られ、隣接するシンボル間の位相関係は維持される。これにより、この信号に対し、遅延検波を行うことで、隣接するシンボル間の位相差を検出することができる。遅延検波後の信号は、異なる位相冗長波形の重なりによってシンボル内で変動しているが、符号が反転することはない。よって、検波後フィルタ238で遅延検波後の信号を合成することで、シンボル内での信号の変動は無くなる。その結果、データ判定部239で極性を判定することで復調することができる。このように、図19に示す復調部23により、異なる位相冗長波形が重なった信号を正しく復調することができる。
また、フェージング環境下においては、複数の送信局から互いに異なる位相冗長波形で変調された信号が、それぞれ異なるフェージングを受けて、受信される。同位相で重なった場合は信号が強め合い、逆位相で重なった場合には信号が弱め合うので、元の位相冗長波形とは全く別の波形となる。ただし、異なる位相冗長が加わった波形が重なるので、1シンボル内全てにおいて逆位相となって信号が弱め合うことはない。つまり、1シンボル内に必ず同位相または同位相付近になる期間がある。これにより、遅延検波により復調することで正しく復調でき、パスダイバーシチ効果を得ることができる。
なお、上述した各実施形態では、基準タイミングは、パケットの受信が完了したことを示す受信完了信号に基づいて決定されていたが、基準タイミングを決定する方法はこれに限られない。基準タイミングは、例えば、パケット中のユニークワードが検出された時点を基準にして決定されてもよい。また、無線局間で同期をとるためのビーコン局が存在する場合には、ビーコン局から送信されるビーコンに基づいて、基準タイミングが決定されてもよい。また、GPS(Global Positioning System)信号に含まれる時刻情報や、電波時計から得られる時刻情報などから基準タイミングが決定されてもよい。
なお、上述した各実施形態では、送信開始タイミングは、送信タイミング制御部30によって決定されていた。また、送信タイミング制御部30は、基準タイミング、選択したPR長、選択した遅延量に基づいて、送信開始タイミングを決定していた。この送信開始タイミングを決定することにより、各無線局がパケットを送信するタイミングを所望のタイミングに設定できる。しかしながら、各無線局が送信するタイミングを設定する方法は、これに限定されない。別の方法として、例えば、変調部31が出力する変調ベースバンド信号に遅延を付加することで、各無線局が送信するタイミングを設定してもよい。
なお、上述した各実施形態に係る無線局を構成する各機能ブロックは、典型的には、集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術(バイオ技術への適応等)が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。