JP4906337B2 - 細胞またはウイルス溶解用の電気分解素子を備える微小流体素子、およびそれを用いた細胞またはウイルスの溶解方法 - Google Patents
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Description
本実施例では、カソードチャンバ、アノードチャンバ、および前記カソードチャンバと前記アノードチャンバとの間に設置されている分割膜を有する電気分解素子を用い、電気分解を行った後で得られるカソードチャンバ溶液およびアノードチャンバ溶液を用いて細胞を溶解させ、その結果を観察した。
電気分解は、前記カソードチャンバおよび前記アノードチャンバに、100mMのNaCl水溶液300mlを添加し、室温で5分間、10Vの直流電圧を印加することにより実施された。その結果、前記アノードチャンバで得られた電気分解された酸性溶液(EAS:Electrolyzed Acid Solution)、前記カソードチャンバで得られた電気分解されたアルカリ性溶液(EBS:Electrolyzed Alkaline Solution)、および前記EASおよびEBSを同じ体積で混合した溶液(ETS:Electrolyzed Total Solution)が得られた。それらの溶液を用いて細胞溶解実験を行った。各溶液のpHは、pHセンサー(AR15;米国、Fisher scientific社製)を用いて測定した。
大腸菌(ATCC#45020)を100mlのLB培地中で、37℃、250rpmで撹拌しながら、6〜8時間フラスコで培養した。細胞を、4℃および6,000×gで10分間、エッペンドルフ5810R遠心分離機(ドイツ、Eppendorf AG社製)を用いて回収した。前記大腸菌をリン酸緩衝液(PBS)中に懸濁させ、大腸菌細胞濃度(OD600値)を0.8とした。前記細胞懸濁液を室温で5分間、前記電気分解された溶液、すなわちEAS、EBS、およびETSでそれぞれ処理した。反応後、試料を4℃および10,000×gで10分間、エッペンドルフ5810R遠心分離機(ドイツ、Eppendorf AG社製)を用いてスピンダウンさせた。その結果として得られた、試料の上澄液および下層液をそれぞれ分析に用いた。
細胞溶解の発生を確認するために、試料の上澄液および下層液をテンプレートとしてリアルタイムPCRを行った。その結果、間接的に細胞溶解が起こっていることが推定された。PCR標的配列は、大腸菌ゲノムに組み換えされているHBVゲノムコア領域の一部分であった。
可視化のために、1μlの増幅産物をAgilent 2100 Bioanalyzer systemで分析した。PCR産物およびダイマーの比率を検出するために、DNA 500 Labchips(米国、Agilent Technologies社製)が用いられた。簡単に説明すれば、9μlのゲルと染料との混合物を適当なウェルにピペットで取った後、前記混合物を1mlのシリンジを通して1分間前記ウェルに圧力を加えることにより、マイクロチャンネル内を混合物で満たした。次に、ラダーウェルおよび試料ウェルを、5μlのDNAサイズのマーカ混合物+1μlの分子サイズラダー、または試料にロードした。ボルテキシングによって混合した後直ちに、前記チップを前記Agilent 2100 Bioanalyzer systemに注入し、メーカーの指示書に従って処理した。PCR産物の量は、ダイマーおよび野生型DNA断片の2個のピークの相対的な面積比によって決定された。
電気分解された溶液が大腸菌細胞の溶解に及ぼす影響を調べた。コントロールとして、煮沸試料および処理されていない試料を用いた。煮沸試料は、95℃で5分間加熱し、処理していない試料は、PBS(pH7)中に細胞を懸濁させた。上記で調製された3種類の電気分解された溶液で細胞懸濁液をそれぞれ処理した。処理された細胞を回収し、LB寒天プレート上で一晩培養した後、細胞溶解が起こっているかを観察した。
本実施例では、細胞を電気分解用の装置に注入し、in situで電気分解された溶液を生成させた後で細胞溶解効率を測定した。
図1A、図1E、および図1Fに図示した電気分解素子を用いた。図1Aの電気分解素子は、実施例1で説明した通りである。細胞溶解のための水酸化物イオンを発生させるために、大腸菌を含む12mlの10mMまたは100mM塩化ナトリウム溶液を、5Vの直流電圧を使用し、室温で1分間または3分間電気分解した。
電気分解直後に収集した細胞溶解液を、リアルタイムPCRおよび増幅産物の分析を通して、実施例1に記載したように観察した。顕微鏡分析は、デジタルカメラ(米国、Photometrics社製)が装着されているNikon Eclipse TE 300蛍光顕微鏡(日本、ニコン社製)を用いて、画像をキャプチャーした。
図6は、用いた塩濃度、電流、および時間の条件下で、電気分解によって得られた細胞溶解液をテンプレートとして用いて実施されたリアルタイムPCR増幅の結果を表すグラフである。図6で、[1]から[4]は、Nafion(登録商標)膜を有する電気分解素子を用いて得られた結果であり、[5]から[8]は、膜のない電気分解素子を用いて得られた結果である。[1]は100mM NaCl溶液を1分間電気分解したもの、[2]は100mM NaCl溶液を3分間電気分解したもの、[3]は10mM NaCl溶液を1分間電気分解したもの、[4]は10mM NaCl溶液を3分間電気分解したもの、[5]は100mM NaCl溶液を1分間電気分解したもの、[6]は100mM NaCl溶液を3分間電気分解したもの、[7]は10mM NaCl溶液を1分間電気分解したもの、[8]は10mM NaCl溶液を3分間電気分解したもの、[9]はコントロールである。
本実施例では、図1Aに図示したようなアノードチャンバ、カソードチャンバ、および前記アノードチャンバと前記カソードチャンバとの間に設置された分離膜を有する電気分解素子を用い、それぞれ前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバ中でさまざまな溶解液を電気分解し、そこから得られる溶液のpHの変化を観察した。
本実施例では、図1Aに表した電気分解素子を用い、カソードチャンバに100mM NaCl溶液中に108cell/mlの大腸菌細胞を含む溶液を入れ、アノードチャンバには、それぞれ10mlの100mM NaCl溶液および100mM Na2SO4溶液を入れ、直流電圧5Vを3分間加えて電気分解を実施した。電気分解後、アノードチャンバおよびカソードチャンバから同量の試料を採取して混合した。その混合物をテンプレートとしてPCRを行った。PCRは、実施例1の(3)に示した方法によって行い、ポリメラーゼとして、Hot−start Taq DNA polymerase(Roche Diagnostics社製)を用いた。
20 分割膜、
30 アノードチャンバ、
40 Au電極、
50 Pt電極、
60 チャンバ溶液、
70 マイクロポンプ。
Claims (7)
- アノードチャンバと、カソードチャンバと、電流を通過させるが、水素イオンを通過させ、かつ水酸化物イオンを通過させない特性を有する分割膜とを備える細胞またはウイルス溶解用の電気分解素子を備え、
前記アノードチャンバは、アノードチャンバ溶液が流入する流入口、アノードチャンバ溶液が流出する流出口、および前記アノードチャンバの電極を備え、前記カソードチャンバは、カソードチャンバ溶液が流入する流入口、カソードチャンバ溶液が流出する流出口、および前記カソードチャンバの電極を備え、
前記分割膜は、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバは共通の前記分割膜で区画されて、かつ前記分割膜は、前記カソードチャンバ溶液のpHをアルカリ性側とし、前記アノードチャンバ溶液のpHを酸性側とするように、前記アノードチャンバの電極と前記カソードチャンバの電極との間に設置されている、微小流体素子を用いて細胞またはウイルスを溶解する方法であって、
(a)前記アノードチャンバの流入口を介して、Cl−、NO3 −、F−、SO4 2−、PO4 3−、またはCO3 2−を含む化合物を含むアノードチャンバ溶液を、前記アノードチャンバに流入させる工程と、
(b)前記カソードチャンバの流入口を介して、細胞またはウイルスを含み、Na+、
K+、Ca2+、Mg2+、もしくはAl3+を含む化合物を含むカソードチャンバ溶液を、前記カソードチャンバに流入させる工程と、
(c)前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバに備わっている電極を介して電流を印加し、前記アノードチャンバおよび前記カソードチャンバで電気分解を行って細胞またはウイルスを溶解する工程と、
を含む、細胞またはウイルスを溶解する方法。 - 前記電極は、Pt、Au、Cu、およびPdからなる群より選択される金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 電気分解後に、前記アノードチャンバ中の酸性溶液を、前記アノードチャンバの流出口を介して前記アノードチャンバから流出させ、前記カソードチャンバ中のアルカリ性の細胞またはウイルスの溶解液を、前記カソードチャンバの流出口を介して前記カソードチャンバから流出させ、互いに混合し、前記細胞またはウイルスの溶解液を中和する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記酸性溶液、および前記アルカリ性の細胞またはウイルスの溶解液が、1:1の体積比で混合されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
- 前記微小流体素子が、前記アノードチャンバに溶液を流入させるおよび前記アノードチャンバから溶液を流出させるためのポンプ、ならびに前記カソードチャンバに溶液を流入させるおよび前記カソードチャンバから溶液を流出させるためのポンプを、それぞれ別個にさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記微小流体素子が、前記アノードチャンバに溶液を流入させるおよび前記アノードチャンバから溶液を流出させるためのポンプ、ならびに前記カソードチャンバに溶液を流入させるおよび前記カソードチャンバから流出させるための共通のポンプをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記微小流体素子は、電気分解素子を備える細胞溶解区画、核酸分離区画、核酸増幅区
画、および検出区画から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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